説明

ピッキング方法およびピッキングシステム

【課題】サイクルタイムを向上することができるピッキング方法およびピッキングシステムを提供する。
【解決手段】複数の収容部310のなかで開状態にある一の収容部からロボット100により現在のワークを取り出す取り出し段階と、次のワークが収容されている他の収容部を複数の収容部のなかから特定する特定段階と、ロボットが他の収容部から次のワークを取り出す際に、当該取り出し時点で開状態にある一の収容部と当該ロボットとが干渉するか否かを判断する判断段階と、開状態にある一の収容部とロボットとが干渉しないと判断される場合には、開状態にある一の収容部を開状態に維持したままロボットが他の収容部から次のワークを取り出す一方、干渉すると判断される場合には、ロボットが他の収容部から前記次のワークを取り出す前に、一の収容部をロボットにより閉状態に戻すように制御する制御段階と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッキング方法およびピッキングシステムに関する。本発明は、特に、サイクルタイムを向上することができるピッキング方法およびピッキングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の組立工程において、サプライヤからの供給部品を生産順序にしたがって並べ替え、組立ラインに同期させて供給するロットピッキングが実施されている。
【0003】
挿脱自在な部品棚からワークが取り出されるピッキング技術では、部品棚側にアクチェータが設けられ、ピッキングされるワークが収容される部品棚が開閉される(たとえば、特許文献1)。しかしながら、このように部品棚側のアクチュエータによって部品棚を開閉する構成は、設備が大掛かりで高価となる可能性がある。
【0004】
これに対して、ピッキングロボットが部品棚を開閉する技術が知られている。しかしながら、ピッキングロボットが部品棚を開閉する場合、ピッキングロボットが部品棚を開閉する動作のために、サイクルタイムが長くなるという問題がある。
【特許文献1】特開2004−131212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものである。したがって、本発明の目的は、サイクルタイムを向上することができるピッキング方法およびピッキングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0007】
本発明のピッキング方法は、同一種類のワークを複数収容した収容部を複数備え、前記収容部それぞれは異なる種類のワークが収容された収容部群から予め決められた順序でワークを取り出すピッキング方法であって、前記複数の収容部のなかで開状態にある一の収容部からロボットにより現在のワークを取り出す取り出し段階と、次のワークが収容されている他の収容部を前記複数の収容部のなかから特定する特定段階と、前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す際に、当該取り出し時点で開状態にある前記一の収容部と当該ロボットとが干渉するか否かを判断する判断段階と、前記開状態にある一の収容部と前記ロボットとが干渉しないと判断される場合には、前記開状態にある一の収容部を開状態に維持したまま前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す一方、干渉すると判断される場合には、前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す前に、前記一の収容部を前記ロボットにより閉状態に戻すように制御する制御段階と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のピッキングシステムは、同一種類のワークを複数収容した収容部を複数備え、前記収容部それぞれは異なる種類のワークが収容され、前記複数の収容部のなかで開状態にある一の収容部から現在のワークを取り出すロボットと、次のワークが収容されている他の収容部を前記複数の収容部のなかから特定する特定手段と、前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す際に、当該取り出し時点で開状態にある前記一の収容部と当該ロボットとが干渉するか否かを判断する判断手段と、前記開状態にある一の収容部と前記ロボットとが干渉しないと判断される場合には、前記開状態にある一の収容部を開状態に維持したまま前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す一方、干渉すると判断される場合には、前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す前に、前記一の収容部を前記ロボットにより閉状態に戻すように制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のピッキング方法およびピッキングシステムによれば、開状態の収容部とロボットとが干渉しないと判断される場合には、ロボットにより収容部を閉状態に戻す制御が省略されるため、サイクルタイムを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態におけるピッキングシステムの概略構成を示す図である。図1に示されるとおり、本発明の一実施の形態におけるピッキングシステムは、ピッキングロボット100および制御部200を有する。ピッキングロボット100の前方には、複数段かつ複数列に配置される複数の部品棚(収容部)310を備えた部品供給部300が設けられており、部品供給部300の側部には取出されたワークが収容される2次供給箱400が設けられている。部品供給部300の一の部品棚310には同一種類のワークが複数収容されており、部品棚310毎に異なる種類のワークが収容された部品供給部300から予め決められた順序でワークが取り出される。本実施の形態における部品棚310は、上部が開口されており、部品供給部300に対して挿脱自在な構造を有している。
【0012】
ピッキングロボット100は、部品棚310の開閉状態を制御するとともに、開状態の部品棚310からワークを取り出すものである。本実施の形態におけるピッキングロボット100は、ロボット本体部110およびハンド部120を有する。
【0013】
ロボット本体部110は、3軸直交型のロボットであって、複数列配置される部品棚に沿って左右に移動可能なX軸ロボット111と、X軸ロボット111上に設けられ、複数段配置される部品棚に沿って上下に移動可能なZ軸ロボット112と、Z軸ロボット112上に設けられ、部品棚の奥行き方向に沿って前後に移動可能なY軸ロボット113と、を有する。各単軸ロボット111,112,113は、たとえば、リニアガイド、ボールネジ、およびモータなどから構成され、制御部200によって制御される。なお、本発明のロボット本体部は、3軸直交型のロボットに限定されず、回転駆動軸を備える多軸ロボットであることもできる。
【0014】
ハンド部120は、Y軸ロボット113の端部に設けられ、ワークWを把持するものである。また、ハンド部120は、部品棚310を開閉する際に、当該部品棚310を把持することができる。ハンド部120の近傍にはピッキングロボット100のピッキング動作を補助するためのカメラ(不図示)が設けられおり、制御部200によって制御される。
【0015】
制御部200は、ピッキングロボット100を制御するためのロボットコントローラ(制御手段)であるとともに、ピッキングシステムの一部の役割を担っているものである。制御部200は、マイクロプロセッサからなる中央演算処理装置(CPU)、CPUにバス結合されたROMメモリ、RAMメモリ、不揮発性メモリ、および通信インターフェイスなどの構成要素を備えている。ROMメモリには、たとえば、ピッキングロボット100を制御するシステムプログラムなどのプログラムが格納される。RAMメモリは、CPUが実行する処理のためのデータの一時記憶などに使用される。不揮発性メモリには、たとえば、動作プログラムのデータ、ピッキングロボット100の教示データ、およびピッキングロボット100の動作に必要な各種設定値が格納される。通信インターフェイスは、ピッキングロボット100、ピッキング動作を補助するためのカメラ、および上位の生産指示システムと制御部200とを通信可能に接続する。
【0016】
また、制御部200は、ピッキングロボット100が一の部品棚310から次のワークを取り出す際に、当該取り出し時点で開状態にある他の部品棚310とピッキングロボット100とが干渉するか否かを判断する判断部(判断手段)、かつ、ワークが収容されている部品棚を複数の部品棚のなかから特定する特定部(特定手段)として機能する。
【0017】
以上のとおり構成される本実施の形態のピッキングシステムによれば、まず、ピッキングロボット100により開状態の部品棚310aからワークWが取り出される。そして、次のワークWが先読みされて、次のワークWが収容される部品棚310bからワークWを取り出す際に当該取り出し時点で開状態にある部品棚310aとピッキングロボット100とが干渉するか否かが判断される。部品棚310aとピッキングロボット100とが干渉しないと判断される場合、部品棚310aが開状態に維持されたままピッキングロボット100によって部品棚310bから次のワークWが取り出される。一方、開状態にある部品棚310aとピッキングロボット100とが干渉すると判断される場合、ピッキングロボット100によって部品棚310bから次のワークWが取り出される前に、開状態にある部品棚310aがピッキングロボット100により閉状態に戻される。以下、本実施の形態のピッキングシステムによるピッキング処理について、詳細に説明する。
【0018】
図2および図3は、本実施の形態のピッキングシステムにおけるピッキング処理を示すフローチャートである。本実施の形態のピッキング処理では、各部品棚の位置、各部品棚に収容されるワーク、および各部品棚の開閉状態などの情報がデータベースとして制御部200に予め記憶されている。また、本実施の形態のピッキング処理では、ピッキングロボット100と開状態の部品棚とが干渉する干渉領域を超える部品棚の段数が予め設定されている。本実施の形態では、開状態の部品棚の2段下の部品棚からはワークを取り出すことができる一方、1段下の部品棚からはワークを取り出すことはできない場合、すなわち、干渉領域を超える部品棚の段数が1段の場合を例にとって説明する。このような干渉領域は、部品棚、ピッキングロボット、およびワークの寸法ならびに部品棚同士の間隔などによって決定される。
【0019】
図2に示されるとおり、本実施の形態のピッキング処理によれば、まず、上位の生産指示システムからピッキング対象であるワークWについての指示を受け付ける(ステップS101)。本実施の形態では、たとえば、生産指示としてピッキング対象のワークWの部品番号を受け付ける。
【0020】
次に、受け付けた部品番号のワークWが収容されている部品棚が特定される(ステップS102)。本実施の形態では、上述したデータベースに基づいて、部品番号から対応する部品棚310aが特定される。
【0021】
次に、特定された部品棚310aの1段上の部品棚310cが開いているか否かが判断される(ステップS103)。具体的には、上述したデータベースに基づいて、1段上の部品棚310cが開いているか否かが判断される。1段上の部品棚310cが開いていない場合(ステップS103:NO)、ステップS106以下の処理に移行する。一方、1段上の部品棚310cが開いている場合(ステップS103:YES)、対象の部品棚310aからピッキング対象のワークWを取り出す際にピッキングロボット100が1段上の部品棚310cと干渉してしまうため、ピッキングロボット100により1段上の部品棚310cが閉じられる(ステップS104)。具体的には、たとえば、Y軸ロボット113の端部またはハンド部120で部品棚310cを押圧することによって、挿脱自在な部品棚310cが部品供給部300に押し込まれる。
【0022】
そして、ピッキングロボット100により閉じられた部品棚310cが記憶される(ステップS105)。具体的には、予め記憶されているデータベースにおいて部品棚310cが開状態であることを示すフラグが解除される。
【0023】
次に、ピッキング対象のワークWが収容されている対象の部品棚310aが開いているか否かが判断される(ステップS106)。対象の部品棚310aが開いている場合(ステップS106:YES)、ステップS109以下の処理に移行する。一方、対象の部品棚310aが開いていない場合(ステップS106:NO)、ピッキングロボット100により対象の部品棚310aが開かれる(ステップS107)。具体的には、たとえば、ハンド部120が部品棚310aの把手などを把持した状態、あるいは、Y軸ロボット113の端部に設けられた係合手段(不図示)によってY軸ロボット113と部品棚310aとが係合された状態で、Y軸ロボット113が後方に移動することにより、部品供給部300から部品棚310aが引き出される。そして、ピッキングロボット100によって引き出された部品棚310aが記憶される(ステップS108)。その後、開いている部品棚310aからピッキングロボット100によりワークWが取り出される(ステップS109)。なお、ピッキングロボット100が部品棚310aからワークWを取り出す処理自体は、一般的なピッキング技術であるため、説明は省略する。
【0024】
以上のとおり、ステップS101〜S109に示す処理によれば、上位の生産指示システムから指示を受けたワークがピッキングロボット100により部品棚310aから取り出されることができる。
【0025】
次に、図3に示されるとおり、ピッキングロボット100により部品棚310aから取り出された現在のワークWの次に取り出されるワークWについての指示を受け付ける(ステップS110)。そして、受け付けた次のワークWが収容されている部品棚310bが特定される(ステップS111)。次に、特定された部品棚310bがステップS109に示す処理においてピッキングロボット100によりワークWが取り出された部品棚310aと同じ列の部品棚であるか否かが判断される(ステップS112)。具体的には、たとえば、上述したデータベースに記憶されている部品棚310aと部品棚310bの位置情報が比較されて、部品棚310aと部品棚310bとが同じ列にあるか否かが判断される。特定された部品棚310bが同じ列の部品棚であると判断される場合(ステップS112:YES)、ステップS113以下の処理に移行する。一方、特定された部品棚310bが同じ列の部品棚でないと判断される場合(ステップS112:NO)、ステップS110以下の処理が繰り返される。
【0026】
以上のとおり、ステップS110〜S112に示す処理によれば、現在のワークWが収容されている部品棚310aと同じ列の部品棚に収容されるワークWが先読みされる。
【0027】
次に、次のワークWが収容されている部品棚310bが、ステップS109に示す処理においてワークWが取り出された部品棚310aと同じ部品棚であるか否かが判断される(ステップS113)。具体的には、たとえば、部品棚310aと部品棚310bの位置情報を比較して、部品棚310aと部品棚310bとが同じ部品棚であるか否かが判断される。次のワークWが収容されている部品棚310bが部品棚310aと同じ部品棚である場合(ステップS113:YES)、ステップS117以下の処理に移行する。一方、次のワークWが収容されている部品棚310bが部品棚310aと同じ部品棚でない場合(ステップS113:NO)、次のワークWが収容されている部品棚310bが部品棚310aの1段下の部品棚であるか否かが判断される(ステップS114)。次のワークWが収容されている部品棚310bが開いている部品棚310aの1段下の部品棚でない場合(ステップS114:NO)、ステップS117以下の処理に移行する。一方、次のワークWが収容されている部品棚310bが開いている部品棚310aの1段下の部品棚である場合(ステップS114:YES)、ピッキングロボット100が部品棚310bから次のワークWを取り出す際に当該ピッキングロボット100と開いている部品棚310aとが干渉するため、ピッキングロボット100により部品棚310aが閉じられる(ステップS115)。具体的には、ハンド部120がワークWを保持した状態で、たとえば、Y軸ロボット113の端部で部品棚310aを押圧することによって、部品棚310aが部品供給部300に押し込まれる。そして、閉じられた部品箱310aが記憶される(ステップS116)。
【0028】
以上のとおり、ステップS113〜S116に示す処理によれば、次のワークWが収容される部品棚310bからワークWを取り出す際に、部品棚310aとピッキングロボット100とが干渉しないと判断される場合、ピッキングロボット100により部品棚310aを閉じる制御が省略されることができる。
【0029】
次に、ピッキングロボット100によりワークWが2次供給箱400に収容される(ステップS117)。そして、上位の生産指示システムからピッキング処理を終了する指示を受け付けたか否かが判断される(ステップS118)。ピッキング処理の終了指示を受け付けていない場合(ステップS118:NO)、終了指示を受け付けるまでステップS103以下の処理が繰り返される。一方、終了指示を受け付けている場合(ステップS118:YES)、処理が終了される。
【0030】
以上のとおり、図2および図3に示すフローチャートによれば、次のワークWが先読みされて、次の部品棚310bからピッキングロボット100によりワークWを取り出す際にピッキングロボット100と現在の部品棚310aとが干渉しないと判断される場合には、現在の部品棚310aを開状態に維持したままピッキングロボット100が次の部品棚から次のワークWを取り出すように制御される。一方、ピッキングロボット100と現在の部品棚310aとが干渉すると判断される場合には、ピッキングロボット100が次の部品棚310bから次のワークWを取り出す前に、ピッキングロボット100が部品棚310aを閉状態に戻すように制御される。その結果、ピッキングロボット100が部品棚310aを開閉する動作が省略されることができ、ワークが取り出される際に部品棚が必ず開閉される一般的なピッキング処理と比較して、サイクルタイムが向上されることができる。
【0031】
以上のとおり、上述した本実施の形態のピッキングシステムでは、ピッキングロボットによる部品棚の開閉動作が省略されることにより、ピッキング処理のサイクルタイムが向上される。しかしながら、複数段かつ複数列に配置される部品棚にワークを適切に配置することによって、サイクルタイムをさらに向上することもできる。以下、部品棚に収容されるワークの好ましい配置形態について説明する。
【0032】
図4は、本実施の形態のピッキングシステムにおいて、複数段かつ複数列に設けられている部品棚に収容されるワークの好ましい配置形態を示す図である。本実施の形態において、部品棚毎にそれぞれ収容される種々のワークは、第1のワーク群である量産部品と、量産部品よりも使用される頻度が低い第2のワーク群である非量産部品とに分類されることができる。
【0033】
本実施の形態では、量産部品が収容される部品棚同士は、ピッキングロボット100と開状態の部品棚310とが干渉する干渉領域を超える段数を隔てて配置される。具体的には、干渉領域を超える1段の部品棚を隔てて、量産部品が収容される部品棚が配置される。より具体的には、図4(A)に示されるとおり、たとえば、1〜N列(Nは自然数)の各列の奇数番目(1,3,5)に量産部品が収容される部品棚が配置され、各列の偶数番目(2,4,6)に非量産部品が収容される部品棚が配置される。
【0034】
このような構成にすると、使用される頻度の高い量産部品が収容される部品棚が互いに干渉しないように配置されるため、量産部品が収容される部品棚がピッキングロボットにより閉じられる頻度が低減される。その結果、ピッキングロボットによる部品棚の開閉動作が省略されて、ピッキング処理のサイクルタイムがさらに向上される。
【0035】
また、上述した配置形態と異なって、量産部品が収容される部品棚が、非量産部品が収容される部品棚よりも2次供給箱に近い列に配置されることもできる。具体的には、図4(B)に示されるとおり、2次供給箱400に最も近い第1列の部品棚310から優先的に量産部品が収容され、2次供給箱400から遠い列の部品棚(たとえば、第N列の部品棚)に非量産部品が収容される。
【0036】
このような構成にすると、部品棚から頻繁に取り出される量産部品を2次供給箱にセットする際のピッキングロボットの動作距離が短縮されるため、ピッキング処理のサイクルタイムがさらに向上される。
【0037】
なお、本実施の形態のピッキングシステムの変形例によれば、上述したワークの配置形態にしたがって、部品供給部300の各部品棚310に収容されるワークの配置を決定して指示することができる。
【0038】
本実施の形態の変形例によるピッキングシステムは、ピッキングロボット100によって取り出されたワークを記憶する記憶部と、記憶されたワークを集計して、ワーク毎に使用頻度を算出する集計部と、集計結果に基づいて部品棚310に収容するワークの配置を演算する演算部と、演算結果を表示する表示部と、をさらに有する。演算部は、たとえば、図4(A)に示すようなワークの配置形態になるように、使用頻度の集計結果に基づいて、ワークの配置を決定する。
【0039】
このような構成のピッキングシステムによれば、ワークの使用頻度に基づいて当該ワークが収容される部品棚の位置が演算され、表示部によって作業者に指示される。具体的には、たとえば、使用頻度に基づいて部品棚310に収容されるワークの配置が決定され、部品供給部300のそれぞれの部品棚に収容されるワークの部品番号がディスプレイに表示される。そして、ディスプレイに表示されるワークの配置形態にしたがって、作業者がワークを収容している部品箱の配置を変更する。その結果、最新のワーク使用頻度に基づいて、最適な配置形態にワークが配置され、ピッキング処理のサイクルタイムがさらに向上される。
【0040】
以上のとおり、説明した本実施の形態は、以下の効果を奏する。
【0041】
本実施の形態のピッキング方法は、複数の部品棚のなかで開状態にある一の部品棚からピッキングロボットにより現在のワークを取り出す取り出し段階と、次のワークが収容されている他の部品棚を複数の部品棚のなかから特定する特定段階と、ピッキングロボットが他の部品棚から次のワークを取り出す際に、当該取り出し時点で開状態にある一の部品棚と当該ピッキングロボットとが干渉するか否かを判断する判断段階と、開状態にある一の部品棚とピッキングロボットとが干渉しないと判断される場合には、開状態にある一の部品棚を開状態に維持したままピッキングロボットが他の部品棚から次のワークを取り出す一方、干渉すると判断される場合には、ピッキングロボットが他の部品棚から次のワークを取り出す前に、一の部品棚をピッキングロボットにより閉状態に戻すように制御する制御段階と、を有する。したがって、開状態の部品棚とピッキングロボットとが干渉しないと判断される場合には、部品棚をロボットにより閉状態に戻す制御が省略されるため、ワークが取り出される際に部品棚が必ず開閉される一般的なピッキング処理と比較して、サイクルタイムを向上することができる。加えて、後続する処理において、部位棚をロボットにより開状態にする制御も省略され、サイクルタイムがさらに向上される。
【0042】
本実施の形態において、部品棚は複数段かつ複数列に配置されており、判断段階は、他の部品棚が一の部品棚と同じ列に配置されているか否かを判断する段階と、他の部品棚が一の部品棚と同じ列に配置されている場合、一の部品棚とピッキングロボットとが干渉するか否かを判断する段階と、を有する。したがって、上部が開口された部品棚に対して、ピッキングロボットにより現在のワークが取り出され部品棚と同じ列の部品棚に収容される次のワークを先読みすることができる。
【0043】
量産部品が収容される部品棚同士は、ピッキングロボットと開状態の部品棚とが干渉する干渉領域を超える段数を隔てて配置される。したがって、頻繁に開閉される部品棚に対するピッキングロボットによる開閉動作が省略されるため、サイクルタイムがさらに向上される。
【0044】
制御段階は、ピッキングロボットが他の部品棚から次のワークを取り出す前に、当該ピッキングロボットにより現在のワークを2次部品棚に収容する段階を有し、量産部品が収容される部品棚は、非量産部品が収容されるワークよりも2次供給箱に近い列に配置される。したがって、頻繁に部品棚から取り出されるワークを2次供給箱に収容する際のピッキングロボットの動作距離が低減されるため、サイクルタイムがさらに向上される。
【0045】
以上のとおり、一実施の形態において、本発明のピッキング方法およびピッキングシステムを説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、省略することができることはいうまでもない。
【0046】
たとえば、本実施の形態では、先読みした次のワークが収容される次の部品棚からワークを取り出す際にピッキングロボットと現在の部品棚とが干渉する場合、ピッキングロボットがワークを保持した状態で現在の部品棚を閉じるようにピッキングロボットが制御された。しかしながら、現在の部品棚は、ピッキングロボットが次の部品棚から次のワークを取り出す前に閉じられればよい。具体的には、ピッキングロボットが現在のワークを2次供給箱に収容した後、次の部品棚に向かう過程で現在の部品棚を閉じるように制御されることもできる。
【0047】
また、本実施の形態では、所定の干渉領域を超える部品棚の段数が1段であって、1段下の部品棚から次のワークを取り出す際にピッキングロボットと対象の部品棚とが干渉すると判断される場合、ピッキングロボットにより対象の部品棚が閉じられた。しかしながら、所定の干渉範囲を超える部品棚の段数が複数段であって、たとえば、2段下の部品棚から次のワークを取り出す際にピッキングロボットと対象の部品棚とが干渉する場合、対象の部品棚がピッキングロボットにより閉じられる。このとき、対象の部品棚の1段下の部品棚が開状態である場合、当該1段下の部品棚は、ワークを保持した状態のピッキングロボットによって対象の部品棚とともに閉じられることもでき、あるいは、次のワークが収容されている2段下の部品棚に向かう過程のワークを保持していない状態のピッキングロボットによって閉じられることもできる。
【0048】
また、本実施の形態では、収容部として、上部が開口された挿脱自在な部品棚がピッキングロボットによって出し入れされた。しかしながら、収容部は、上部が開口された挿脱自在な部品棚に限定されず、側部が開口された挿脱自在な部品棚、あるいは、前面に開口部が設けられたものであって、当該開口部を閉鎖する閉鎖体が下端を中心に回動することによって開閉される部品棚であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態におけるピッキングシステムの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すピッキングシステムにおけるピッキング処理を示すフローチャートである。
【図3】図2から続くフローチャートである。
【図4】図1に示すピッキングシステムにおいて、複数段かつ複数列に設けられている部品棚に収容されるワークの好ましい配置形態を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
100 ピッキングロボット、
200 制御部、
300 部品供給部、
400 2次供給箱。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一種類のワークを複数収容した収容部を複数備え、前記収容部それぞれは異なる種類のワークが収容された収容部群から予め決められた順序でワークを取り出すピッキング方法であって、
前記複数の収容部のなかで開状態にある一の収容部からロボットにより現在のワークを取り出す取り出し段階と、
次のワークが収容されている他の収容部を前記複数の収容部のなかから特定する特定段階と、
前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す際に、当該取り出し時点で開状態にある前記一の収容部と当該ロボットとが干渉するか否かを判断する判断段階と、
前記開状態にある一の収容部と前記ロボットとが干渉しないと判断される場合には、前記開状態にある一の収容部を開状態に維持したまま前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す一方、干渉すると判断される場合には、前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す前に、前記一の収容部を前記ロボットにより閉状態に戻すように制御する制御段階と、を有することを特徴とするピッキング方法。
【請求項2】
前記複数の収容部は、複数段かつ複数列に配置されており、
前記判断段階は、
前記他の収容部が前記一の収容部と同じ列に配置されているか否かを判断する段階と、
前記他の収容部が前記一の収容部と同じ列に配置されている場合、前記一の収容部と前記ロボットとが干渉するか否かを判断する段階と、を有することを特徴とする請求項1に記載のピッキング方法。
【請求項3】
前記ワークは、第1のワーク群と当該第1のワーク群よりも使用される頻度が低い第2のワーク群とに分類され、
前記第1のワーク群のワークが収容される収容部同士は、前記ロボットと開状態の収容部とが干渉する干渉領域を超える段数を隔てて配置されることを特徴とする請求項2に記載のピッキング方法。
【請求項4】
前記ワークは、第1のワーク群と当該第1のワーク群よりも使用される頻度が低い第2のワーク群とに分類され、
前記制御段階は、前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す前に、当該ロボットにより前記現在のワークを2次収容部に収容する段階を有し、
前記第1のワーク群のワークが収容される収容部は、前記第2のワーク群のワークが収容される収容部よりも前記2次収容部に近い列に配置されることを特徴とする請求項2に記載のピッキング方法。
【請求項5】
同一種類のワークを複数収容した収容部を複数備え、前記収容部それぞれは異なる種類のワークが収容され、
前記複数の収容部のなかで開状態にある一の収容部から現在のワークを取り出すロボットと、
次のワークが収容されている他の収容部を前記複数の収容部のなかから特定する特定手段と、
前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す際に、当該取り出し時点で開状態にある前記一の収容部と当該ロボットとが干渉するか否かを判断する判断手段と、
前記開状態にある一の収容部と前記ロボットとが干渉しないと判断される場合には、前記開状態にある一の収容部を開状態に維持したまま前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す一方、干渉すると判断される場合には、前記ロボットが前記他の収容部から前記次のワークを取り出す前に、前記一の収容部を前記ロボットにより閉状態に戻すように制御する制御手段と、を有することを特徴とするピッキングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−120519(P2008−120519A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305889(P2006−305889)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】