ピッチ変調による車両制御
【課題】下地表面上の特定方向への運動に対する車両の前後安定化の方法を提供すること。
【解決手段】車両は、少なくとも1つの前輪と少なくとも1つの後輪とを有し、前輪は車両の運動の瞬間的な方向に垂直である力により特徴付けられる。モーター作動器は各々の後輪を駆動し、コントローラは一律の制御規則に従い該前輪が該下地表面と接触していてもなくても、該車両を動的に安定化させるように、1つ以上のモーター作動器を支配する。トルクは、車両ピッチまたは運動方向に垂直な前輪にかかる力を基礎として、後輪に適用される。さらに周期的な回転変調は、後輪に適用され得、車両ピッチまたは前輪にかかる垂直な力のどちらかについて検出された応答に基づいて安定しているトルクが提供される。左右のモーター作動器は、別個に左後輪および右後輪を制御し得、前輪がグランドに接触していてもなくても、ユーザーの操縦により支配される通りにターンを続ける。
【解決手段】車両は、少なくとも1つの前輪と少なくとも1つの後輪とを有し、前輪は車両の運動の瞬間的な方向に垂直である力により特徴付けられる。モーター作動器は各々の後輪を駆動し、コントローラは一律の制御規則に従い該前輪が該下地表面と接触していてもなくても、該車両を動的に安定化させるように、1つ以上のモーター作動器を支配する。トルクは、車両ピッチまたは運動方向に垂直な前輪にかかる力を基礎として、後輪に適用される。さらに周期的な回転変調は、後輪に適用され得、車両ピッチまたは前輪にかかる垂直な力のどちらかについて検出された応答に基づいて安定しているトルクが提供される。左右のモーター作動器は、別個に左後輪および右後輪を制御し得、前輪がグランドに接触していてもなくても、ユーザーの操縦により支配される通りにターンを続ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の前輪と1つ以上の後輪を備える車両の運動の、安定性および制御を能動的に維持する方法に関し、これにより、前輪がグランドとの接触を失ったりグランドから離れたりしてもバランスのとれた動作が可能になり得る。
【背景技術】
【0002】
人間輸送デバイスは、表面上で人を運ぶのに役立ち、異なる形状を取り得る。例えば、人間輸送デバイスは、その用語が本明細書にて用いられる場合、車椅子と、自動車化カートと、全地形用車両と、自転車と、自動二輪車と、自動車と、ホバークラフトとなどを含み得るが、それだけに限定されるものではない。人間輸送のいくつかの種類は、デバイスが転倒して該輸送デバイスのユーザーが怪我をしないことを確実にすることに役立つ安定化機構を含み得る。
【0003】
一般的な4輪車椅子は、グランドに4輪全てで接触する。車椅子とユーザーとの組み合わせの重心が車輪間のエリアにあり続ける場合、該車椅子は倒れないはずである。重心が輸送デバイスの部材に接触しているグランドより上で外側に位置する場合、該輸送デバイスは不安定になり倒れ得る。
【0004】
図1Aを以下に参照すると、一般的な車椅子100が示される。該車椅子100とユーザー102は、フレームを定義する。フレームは、表面106の上に垂直に配置された位置にある重心104を有する。本明細書に用いられる用語「表面」とは、人間輸送デバイスが位置し得るか、動き回り得るあらゆる表面をいう。表面の例は、平らなグランドと、傾斜路のような傾いた面と、砂利で覆われた街路とを含み、お互いが垂直に離れている2つの実質的に並行な表面を垂直に接続する縁石(例えば街路縁石)を含み得る。
【0005】
表面106は、水平軸108(地方水平線を横切る平面の線)と比較すると傾き得る。表面106の水平軸108からのオフセット角度は、表面ピッチと呼ばれ、θsという記号の角度により表され得る。
【0006】
車椅子100の前輪112と後輪110とは、距離dにより分離されている。2つの車輪間の距離dは、線形的な(例えば、直線)距離として測定され得る。車輪110および112は、通常、車椅子の反対側に向かい合う対応物(不表示)を有する。向かい合う対応物は、各々が車輪110および112と、それぞれ軸を共有し得る。これら4輪がグランドに触れる点(または、グランドに接触している部分が点以上を覆い得るときのグランドに接触している部分の外側部分)を接続する多角形で覆われたエリアは、車椅子が安定している間、重心104が位置し得るエリアを提供する。このエリアは、デバイスのフットプリントと参照され得る。デバイスのフットプリントは、本明細書に用語として用いられる場合、水平面に投影された車輪間のエリアの投影により定義される。重心がこの位置より上にある場合、輸送デバイスは安定しているはずである。
【0007】
重心104が表面106の上、およびフットプリントの外側(すなわち、水平面上への車輪110と112との間のエリアの投影)に垂直に転置される場合、車椅子100は倒れ得る。この事態は、例えば、車椅子が急勾配の表面にあるときか、あるいは、例えばユーザーが、縁石を越えるために「急に後輪走行をする」場合に起こり得る。急勾配上にいるとき、重心104は後方にシフトし、車椅子100は後方に向かってひっくり返り得る。これは図1Bに示され、図中では、重心104は、車椅子100のフットプリントの外側の位置にある。重心104は、重心104を下方向に直線的に移動させる重力加速度ベクトル(g)を含んで示される。車椅子100は、移動表面に接触するまで、後輪110の軸を中心に回転し得る。
【0008】
ユーザー102は、車椅子100に乗りながら前方に上体を曲げることにより、重心104を車輪110と112との間のエリアの上の位置に戻すことを促し得る。この重心104の位置に対する限定された制御では、車椅子のような人間輸送デバイスが、縁石や段などの平坦でない表面を移動するとき、非常に困難な状況にぶつかり得ることは明確である。
【0009】
車両の中には、その重量分配や動作の一般的な方式のせいで、前後間の不安定性があり、転倒型(「endo」)転覆が起こり得る。例えば、全地形用車両(ATV)の動作において、該車両の全ての車輪を常に下地表面に接触させておくことは、いつも可能でも望ましいことでもない。それでも、車両の制御を失うことや、転倒型転覆をなくすことが望ましい。ATVは、特に、車輪の安定数以下がグランドと接触しているような状況下で、1つ以上の前後面、または左右面における安定化からの利点があり得る。この種の車両は、先行技術に記述された制御方式への補充の制御方式を用いて、より効率的で安全に動作され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい実施形態により、下地表面上の特定方向の運動に対する車両の前後安定化のための方法が提供され、該車両は前輪と後輪を含む複数の車輪を有し、該前輪は、該車両の運動の瞬間的方向に垂直な力により特徴付けられる。該方法は、該運動の方向に垂直な該前輪にかかる該力、および/または該車両の瞬間的に検知された傾斜に基づいて、該後輪にトルクを適用するステップを有する。
【0011】
本発明の他の実施形態により、該方法は、小ピッチ変調を誘導するために該車輪うちの少なくとも1つに周期的トルクを適用する追加ステップと、該適用された周期的トルクに応答して該車両のピッチ変動を検出する追加ステップと、該後輪に安定化トルクを適用する追加ステップとを有し得る。安定化トルクの適用は、該適用された周期的トルクに応答して、少なくとも、あらゆる検出されたピッチ変動を基礎としている。
【0012】
本発明のさらなる実施形態により少なくとも1つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを有する車両の運動のピッチ安定化のための装置が提供される。該装置は、該車両の運動の瞬間的方向に垂直な該前輪にかかる力を検知するセンサと、該後輪を駆動するモーター作動器と、少なくとも該前輪にかかる該垂直な力に基づいた、制御規則を基礎として、該後輪にトルクを適用するコントローラとを有する。
【0013】
本発明の別の側面により、安定化車両は、提供され、該車両は少なくとも1つの前輪と少なくとも1つの後輪とを有する。付加的に、該車両は、該車両の運動の瞬間的方向に垂直な該前輪にかかる力、および/または該車両の瞬間的ピッチ、および/または該瞬間的ピッチの関数を検知するセンサを有する。該車両は、また、該後輪を駆動するモーター作動器と、少なくとも該前輪にかかる該垂直な力に基づいた、制御規則を基礎として、該後輪にトルクを適用するコントローラとを有する。該車両は、ペダル駆動の自転車、自動二輪車、または車椅子を含み得る。
【0014】
本発明のさらなる実施形態により、複数の車輪を有する車両が提供され、該車両は、少なくとも1つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを含む。モーター作動器は、各々の後輪を駆動し、コントローラは、該前輪が下地表面と接触していないときに該車両を動的に安定化させるように、1つ、または複数のモーター作動器を支配する。詳細には、左後方作動器は左後輪を駆動し、この駆動は該右後輪からは独立しており、これにより該コントローラは、前輪がグランドと接触していても、そうでなくても、該車両のヨーを制御する左右後輪の差動回転を支配し得る。
【0015】
本発明のさらなる実施形態により、該コントローラは、該前輪が下地表面と接触しているか否かに関係ない、制御規則に従ってモーター作動器を支配するようなものである。該車両は、さらに、スロットル出力信号を提供するユーザー入力デバイスと、ピッチ信号を提供するピッチセンサとを有し得る。該コントローラは、それから、少なくとも、該スロットル出力信号、該ピッチ信号、または、ピッチレート信号に基づいた、制御規則に従って、モーター作動器を支配し得る。詳細には、該コントローラは、該車両ピッチ角度が特定の値を超えるときは、少なくとも該ピッチ信号に基づいた、制御規則に従って、該モーター作動器を支配し得る。
【0016】
本発明のさらなる実施形態により、車両が提供され、該車両は、第1支柱により第1旋回点に連結された第1前輪と、第2支柱により該第1旋回点に連結された第2車輪とを有する。この実施形態の該車両は、また、該第1旋回点に連結された少なくとも1つの後輪を含む。この実施形態において、該第1、および第2支柱は、お互いから間隔を取って位置され、該第1前輪と該第2前輪との両方を、少なくともそれぞれの垂直軸の周りで旋回させることにより、該車両にその運動の方向を変えるように配置および構成される。
【0017】
本発明のさらなる実施形態により、車両が提供され、該車両は中央ピボットを含む。該車両は、また、第1支柱により該中央旋回点に連結された第1前輪を含み、該第1支柱は動作中に該中央ピボットの周りを回転するように配置および構成され、また、該車両は、第2支柱により該中央ピボットに連結された第2前輪を含み、該第2支柱は動作中に該中央ピボットの周りを回転するように配置および構成される。この実施形態の該車両は、また、該中央ピボットに関して固定配向を維持するように配置および構成された接続部材により、該中央ピボットに連結された少なくとも1つの後輪を含む。
【0018】
本発明のさらなる実施形態により、車両が提供され、該車両は複数の車輪を含み、該車輪には少なくとも1つの前輪と、少なくとも2つの後輪とを含む。この実施形態の該車両は、また、各々の後輪と少なくとも1つのヨーコントローラとを駆動する、少なくとも1つのモーター作動器を含む。この実施形態の該車両は、また、少なくとも1つの該モーター作動器を制御するコントローラを含み、その結果、該ヨーコントローラにより少なくとも1つの前輪に伝えられた方向は、該少なくとも2つの後輪の差動回転により繰り返されるようになる。
本発明のさらなる実施形態により、車両が提供され、該車両は複数の車輪を含み、該車輪は少なくとも1つの前輪と少なくとも2つの後輪とを含む。この実施形態の該車両は、また、各々の後輪と少なくとも1つのヨーコントローラとを駆動するモーター作動器を含む。この実施形態の該車両は、また、スロットルと、該複数の車輪の全てが移動表面と接触しているとき、該スロットルが回転されると該車両に加速させ、かつ、該少なくとも1つの前輪が移動表面と接触していないとき、該スロットルが回転されるとピッチ制限からのオフセットに調整させるコントローラとを含み得る。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
下地表面上の特定方向の運動に対する車両の前後安定化のための方法であって、
該車両は前輪と後輪とを含む複数の駆動車輪を有し、
該前輪は該車両の運動の瞬間的方向に垂直な力により特徴付けられ、
該方法は、
該運動の方向に垂直な該前輪にかかる該力に基づいて該後輪にトルクを適用すること
を含む、方法。
(項目2)
小ピッチ変調を誘導するために周期的トルクを前記車輪のうちの少なくとも1つに適用することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記適用された周期的トルクに応答して、前記車両のピッチ変動を検出することと、
該適用された周期的トルクに応答して、少なくとも、あらゆる検出されたピッチ変動を基礎として前記後輪に安定化トルクを適用することと
をさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
下地表面上の特定方向の運動に対する車両の前後安定化のための方法であって、
該車両は前輪と後輪とを含む複数の駆動車輪を有し、該前輪は該車両の運動の瞬間的方向に垂直な力により特徴付けられ、該方法は、
該車両の瞬間的に検知された傾斜に垂直な、該前輪にかかる該力に基づいて該後輪にトルクを適用すること
を含む、方法。
(項目5)
小ピッチ変調を誘導するために周期的トルクを前記車輪のうちの少なくとも1つに適用することをさらに含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記適用された周期的トルクに応答して、前記車両のピッチ変動を検出することと、
該適用された周期的トルクに応答して、少なくとも、あらゆる検出されたピッチ変動を基礎として前記後輪に安定化トルクを適用することと
をさらに含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
少なくとも1つの前輪と少なくとも1つの後輪とを有する車両の運動のピッチ安定化のための装置であって、
該車両の運動の瞬間的方向に垂直な該前輪にかかる力を検知するセンサと、
該後輪を駆動するモーター作動器と、
少なくとも該前輪にかかる該垂直な力に基づいた、制御規則を基礎として、該後輪にトルクを適用するコントローラと
を含む、装置。
(項目8)
前記車両の運動の瞬間的方向に垂直な前記前輪にかかる力を検知する第2センサをさらに含む、項目7に記載の装置。
(項目9)
前記コントローラは、前記モーター作動器に前記少なくとも1つの後輪に周期的トルクを適用させ、小ピッチ変調を誘導する、項目7に記載の装置。
(項目10)
前記周期的トルクに応答して前記車両のピッチ変動を検出するためのピッチ検出器
をさらに含み、
前記コントローラは、該適用された周期的トルクに応答して、少なくとも、あらゆる検出されたピッチ変動を基礎として、前記モーター作動器に、前記少なくとも1つの後輪に安定化トルクを適用させる、項目9に記載の装置。
(項目11)
安定化車両であって、
少なくとも1つの前輪と、
少なくとも1つの後輪と、
該車両の運動の瞬間的方向に垂直な該前輪にかかる力を検知する、少なくとも1つのセンサと、
該車両の瞬間的ピッチを検知する少なくとも1つのセンサと、
該後輪を駆動するモーター作動器と、
少なくとも該前輪にかかる該垂直な力に基づいた、制御規則を基礎として、該後輪にトルクを適用するコントローラと
を含む、安定化車両。
(項目12)
前記車両は、ペダル駆動の自転車である、項目11に記載の安定化車両。
(項目13)
前記車両は自動二輪車である、項目11に記載の安定化車両。
(項目14)
前記車両は全地形用車両である、項目11に記載の安定化車両。
(項目15)
前記車両は車椅子である、項目11に記載の安定化車両。
(項目16)
前記コントローラは、前記前輪が移動表面と接触しているか否かに関わらず、同様に該車両の動作を制御する、項目11に記載の安定化車両。
(項目17)
安定化車両であって、
少なくとも1つの前輪と、
少なくとも1つの後輪と、
該車両の瞬間的ピッチを検知する少なくとも1つのセンサと、
該後輪を駆動するモーター作動器と、
該車両の該瞬間的ピッチの関数に少なくとも基づいた制御規則を基礎として、該後輪にトルクを適用するコントローラと
を含む、安定化車両。
(項目18)
前記車両はペダル駆動の自転車である、項目17に記載の安定化車両。
(項目19)
前記車両は自動二輪車である、項目17に記載の安定化車両。
(項目20)
前記車両は全地形用車両である、項目17に記載の安定化車両。
(項目21)
前記車両は車椅子である、項目17に記載の安定化車両。
(項目22)
前記制御規則は少なくとも前記車両の前記瞬間的ピッチに基づく、項目17に記載の安定化車両。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1Aと図1Bとは、本発明の実施形態が有利に用いられ得る種類の、先行技術にある個人用車両の該略側面図である。
【図2】図2は、本発明の特定の実施形態の記述に使われる変数を示し、本発明の実施形態が有利に用いられ得る種類の個人用車両の一般的な構成要素の図である。
【図3】図3は、車輪増幅器命令の発生のためのピッチとヨーコントローラ出力との連結を図示するブロック図である。
【図4A】図4Aは、本発明の実施形態により、ピッチ命令の構成上の入力を示すブロック図である。
【図4B】図4Bは、本発明の実施形態により、一面的な制限を伴ったピッチ命令の構成上の入力を示すブロック図である。
【図5】図5Aは、本発明の実施形態により、ヨー命令の構成上の入力を示すブロック図である。図5Bと図5Cとは、本発明の実施形態により、ヨーコントローラの異なる実施形態のブロック図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態により、バランスのとれた動作が可能な全地形用車両の側面図である。
【図7】図7は、図6の本発明の実施形態の上からの斜視図である。
【図8】図8は、立っているユーザーによる動作を示す、図6の全地形用車両のさらなる側面図である。
【図9】図9は、着座したユーザーによる動作を示す、図6の全地形用車両のさらなる側面図である。
【図10】図10は、本発明の好ましい実施形態により、前輪の操縦のためのハンドルバーの上部プッシュロッドへの連結を示す。
【図11】図11は、図10の実施形態により、前輪を操縦するための下部プッシュロッドの連結を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、添付の図面とともに、以下の記述を参照することにより、より容易に理解される。
【0021】
(定義)
車両が「バランスのとれた状態」で動いていると言えるのは、車輪の動作を支配する制御ループの動作を別にすれば、1つ以上の車輪での動作が可能で、しかしそれらの車輪のみでは静止した状態でいられない場合である。バランスのとれた車両は、バランスのとれたモードでの動作中、静安定に欠けるが、動的にはバランスがとれている。そのような車両と、グランドまたは他の下地表面との間の接触を提供し、かつ、定常動作中にチッピングに関するトランスポータを最小限にサポートする、車輪または他のグランドに接触する素子は、本明細書において「主要な車輪」という。本明細書中、およびあらゆる添付の請求項中に用いられる「安定性」とは、システムがいかなる点においても、動作位置から外れて不安定になった場合、システムが自然に戻る動作位置の機械的状態をいう。用語「システム」とは、車両が動いている表面に関して、車輪の動きによって動かされる全ての質量をいい、従って、車両およびライダの両方を含む。
【0022】
用語「傾き」は、完全に剛体の部材の単一点上でバランスのとれたシステムに関して、しばしば用いられる。その場合、部材と下地表面との間の接触の点(または線)は、理論上のゼロ幅を有する。その場合、さらに、傾きは、車輪のグランド接触に対する理論上の線を介した、システムの重心(CG)からの線の垂直面(すなわち、地球の中心を通過する想像上の線)に関する配向を表す量をいい得る。実際の車輪のタイヤは完全に剛体ではないということを認識した上で、用語「傾き」は、本明細書において、硬いグランドと接触している部材の理論上の範囲の常識において用いられる。
【0023】
(本発明の実施形態に従った動作)
本発明による安定化車両の一実施形態は、図2に図示されており、通常、数字10により指定される。ユーザー8は、図2に示されるように、車両10のユーザー支持具12上に着座した姿勢である。理解され得ることであるが、ユーザー8はシートに座ること以外によっても支えられ得、例えば、本発明の範囲内において、プラットフォームの形状でユーザー支持具上に立ち得る。
【0024】
後部輪21(図2の側面図では1つのみが見える)は、Y軸と定義された軸に対して同軸である。後輪21の各々は、パワーベース24内に配置されたモーター作動器(不図示)によって駆動され、その結果、操縦は、異なるトルクをそれぞれの後輪21に適用することによって実施され得るようにする。旋回中の、外輪の増加した回転動程に対する後輪の異なる作動により補正することは、本明細書において「アクティブ差動」として参照され得る。ライダ8は、車両10上で様々な体位で支持され得、それによって、積荷、すなわちユーザーの重量の分配によって影響されるように車両の質量の中心位置を制御している。例えば、ユーザー8は、図2に示されるように、足を足置き26に乗せてシート12上に着座し得る。
【0025】
車両10の表示の実施形態は、さらに、2つの前輪13(図2の側面図中に1つ見える)を有し、一般的に、通常の動作中はグランドと接触している。前輪13と1つ以上の他の前輪は、共通した車軸に取り付けられ得るか、またはそうでない場合もあり得、任意の前輪が旋回することは本発明の範囲内である。操縦性および安全性の向上のために設計された個人用車両は、また、車輪の1つ以上のクラスタを含み得、クラスタおよび各々のクラスタ内の車輪は、お互いから独立してモーター駆動可能である。そのような車両は、米国特許第5,701,965号、同第5,971,091号、同第6,302,230号、同第6,311,794号、および同第6,553,271号に記述されており、それら全ての特許は本明細書に参考として援用される。
【0026】
コントローラ30は、以下に詳述されるように、車両の配向および命令された速度を継続的に検知することと、訂正動作を決定して安定性を維持することと、車輪モーターに命令してあらゆる必要な訂正動作を行うこととによって、車両の安定性を提供する。
【0027】
本発明の好ましい実施形態により、同一の制御規則は、車両の前輪がグランドと接触していても、そうでなくても、適用される。
【0028】
操縦または他の制御は、ユーザー入力デバイス18により提供され得、それらは、ジョイスティック、ハンドルバー、またはあらゆるその他のユーザー入力機構であり得る。様々な操縦デバイスは、本発明の範囲内で用いられ得るユーザー入力機構のさらなる例であり、米国特許第6,581,714号、および同第6,789,640号に記述されており、それらは本明細書に参考として援用される。
【0029】
センサユニット28は、コントローラ30に1つ以上の信号を提供するパワーベース24の一部として提供される。センサユニット28は、ピッチレートおよび/または車両のピッチの測定を提供し得、かつ、米国特許第6,332,103号に詳述されたタイプの慣性検知を用い得、この特許は本明細書に参考として援用される。代替的に、または付加的に、センサユニット28は、車輪13により下地表面上にかかる(および、相反的に、下地表面により車輪13にかかる)、下地表面には垂直な(矢印32によって表される)力を測定する力センサを含み得る。ピエゾ抵抗素子に基づいているもののような、力センサは、当該技術分野において周知であり、あらゆる種類の力センサは本発明の範囲内である。
【0030】
バランスを達成する簡略化された制御アルゴリズムは、本発明の実施形態において、図2により、以下に記述される。制御アルゴリズムは、インライン自転車または自動二輪車の安定化のために用いられ得るような、単一駆動輪の場合に対して記述される。複数駆動輪の場合への一般化は、以下に詳細に議論される。
【0031】
動的制御を達成してシステムの安定性を保証するために、この実施形態において、車輪トルクTは以下の簡略化された制御方程式により支配される。
【0032】
【数1】
ここでは、
・Tは回転軸に対するグランド接触素子に適用されるトルクを意味する。
・K1(θ)は、以下に論議されるように、傾きθの瞬間値に依存し得るゲイン関数である。
・θは、後輪の共通軸Yの下のグランド接触領域についての、全体のシステムの傾きに対応する量であり、θ0はシステムピッチオフセットの大きさを表し、全ては以下において詳細に論議される。
・vは表面に沿った前後の速度を識別し、vcommandはユーザー入力(例えば、ジョイスティック)18によって構成された、スロットルのようなユーザー入力の大きさを表す。
・文字の上の点は、時間に関して微分された変数を意味する。
・下付きの変数は、以下に記述されるように、システムに入力され得る特定のオフセットを意味する。
・K1、K2、K3およびK4は、ゲイン関数、または係数であり、システムの設計または実時間のいずれかにおいて、現在の動作モードおよび動作条件、およびユーザーの好みに基づいて構成され得る。ゲイン係数は、正の、負の、またはゼロの大きさであり得る。ゲインK1、K2、K3およびK4は、システムの物理的パラメータおよび重力のような他の効果に依存する。方程式1の簡略化された制御アルゴリズムは、ライダの体の動き、または下にある地形によるシステムの質量中心の変化がある中、車両のバランスを維持する。
【0033】
方程式(1)の最終項は、駆動輪に適用されるトルクへの、周期2π/ωおよび(適用される変調がない場合はゼロであり得る)振幅Aの周期的な駆動成分の適用を考慮している。周期的関数f(ωt)は、例えば、シヌソイド関数であり得る。
【0034】
増幅器制御は、モーター電流を制御するように構成され(その場合はトルクTが命令される)得るか、あるいは、モーターに印加される電圧は制御され(その場合は命令されるパラメータは速度である)得ることに留意されたい。
【0035】
上記の制御方程式(方程式1)のθ0の効果は、非ピッチ位置θ=0から特定のオフセットθ0を生成することである。θ0の調整は、非ピッチ位置からの車両のオフセットを調整し得る。いくつかの実施形態において、ピッチオフセットは、ユーザーにより調整され得る。代替的に、θ0は、車両のスピードおよび/または性能を制限する方法として、車両の制御システムにより設定され得る。本発明の好ましい実施形態において、後方傾斜限度が課せられ、ゲイン関数K1は傾斜限度に近づくまで実質的にゼロである。従って、ライダは、体重をシフトすることにより車両を後方に自由に傾かせ、これにより傾斜限度に近づくまで、車両システムの質量中心は後方になる。その次に、K1は非ゼロ値と仮定し、項は、車両のさらなる後方への傾きを防止する傾向がある制御方程式(1)に現れる。
【0036】
K3の大きさは、ユーザー入力のゲインを決定し、都合よく非線形の関数であり得、例えば、ゼロ速度付近でより高い感度を提供する。K2項は、ピッチレートセンサにより、または測定されたピッチの微分により測定されるように、瞬間的なピッチレート、つまり車両の
【0037】
【数2】
に基づいて制御を提供する。
【0038】
適用されたピッチ変調Af(ωt)に応答したセンサ28により測定された垂直の力32の応答は、本発明の実施形態により、車両がさらに後方に傾くことを防止し、かつ、前輪のグランドとの接触を維持するか、あるいは、後方傾斜に制限を課すように用いられ得る。
【0039】
方程式1に関して記述されてきた1輪システムの代わりに2輪を適応させるために、個別のモーターが車両の左右の車輪に提供され得、左のモーターから所望されるトルクと、右のモーターから適用されるトルクとは、上述の一般的な方法で支配され得る。さらに、左車輪の運動と右車輪の運動の両方のトラッキングは、調整がなされることを可能とし、車両の不要なターニングを防ぎ、かつ、2つの駆動モーター間の性能の相違を補償する。
【0040】
本発明の好ましい実施形態により、2つの後輪の差動駆動は、機械的リンケージを介して前輪に適用されるものと同じヨー入力に従ってターンを追跡する。この動作は以下に記述され、図10および図11を参照する。
【0041】
以下に図3を参照すると、車両の操縦、またはヨー制御は、車輪増幅器にターニング命令を加えることにより達成され得、以下の形式を有し得る。車両パラメータの値に対応する(以下に記述される)入力は、ピッチコントローラ500およびヨーコントローラ502により用いられ、以下の段落において論議されるアルゴリズムに従って、バランス制御信号BalCmdおよびヨー制御信号YawCmdを引き出す。
LeftCmd=BalCmd+YawCmd (2)
RightCmd=BalCmd−YawCmd (3)
LeftCmdおよびRightCmdは、微分または他の適切な条件付けの後、コントローラ500および502により、それぞれ、左右のモーター増幅器に送られる命令である。例えば、図3に例として示されるように、LeftCmdおよびRightCmdは、微分回路504および506により、それぞれ、条件付きであり得る。LeftCmdおよびRightCmdは、増幅器が電圧制御モードの場合は電圧を表し、増幅器が電流制御モードの場合は電流を表し、増幅器がデューティサイクル制御モードの場合はデューティサイクルを表す。BalCmdはピッチコントローラ500により、各増幅器に送られる命令であり、移動中または静止中にバランスのとれた状態でトランスポータを維持する。YawCmdは、車輪のうちの1つへの命令を減らす一方で、もう片方の車輪への命令を増やすことにより、トランスポータをターンさせる。例えば、正のYawCmdは左の車輪への命令を増やし、その一方で、右の車輪への命令を減らし、これによって、トランスポータが右ターンを実行するようになる。YawCmdは、上述のヨー入力デバイスにより生成され得、米国特許第6,288,505号に記載されているように、フィードバックループなしで、またはクローズトサイクルループを用いて、ヨー位置エラーを修正する。
【0042】
ピッチコントローラ500は、図4Aおよび図4Bを参照して詳細に記述される。入力は、所望されるピッチθdesiredと、実際の計測ピッチθと、ピッチレート
【0043】
【数3】
と、2つの主要な車輪に共通する車輪回転速度の成分、ωcomとを含む。θと
【0044】
【数4】
とは両方、米国特許第6,332,103号に記載されるように、慣性検知から引き出され得、上記特許は本明細書に参考として援用される。
【0045】
所望されるピッチθdesiredおよび現在の瞬間的なピッチθは、加算器520内で差を計算され、ピッチエラーθerrを生成する。本発明の特定の実施形態により、ピッチを制限することは一面的であり、その結果、制限は、ピッチの許容値範囲の一端に提供されるようにする。そのピッチが超えている場合、復原トルクが車両をピッチ制限方向に動かす。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態により、ユーザーは、自分の体重を後方にシフトし得、これにより車両を2輪でバランスのとれている状態に「ポッピング」させ、ユーザーが、自分の体重を前方にシフトして全ての車輪での動作に戻すまで安定性は維持される。
【0047】
ピッチエラーθerrの二次の項(実際のピッチエラーの符号を保存)は、また、図4Bに示されるように提供され得、これによって、例えば障害に遭ったときに起こるようなピッチの大きなずれに対してより強い応答を提供する。電圧制御モードにおいて、車輪回転速度に比例する追加の項を提供し、モーターの回転速度に比例して発生された逆起電力の全てか、一部かを補正することが望ましい。
【0048】
ヨーコントローラ502は、図5A〜図5Cを参照して詳細に記述される。図5Aは、加算器522において、現在のヨーエラーΨerrを得るために、所望されるヨー値Ψdesiredに対する現在のヨー値Ψの差分を計算することを図示する。所望されるヨー値Ψdesiredは、ジョイスティック18、または上記で論じられたような、方向入力のために用いられる他のユーザー入力デバイスのようなユーザー入力から得られる。ヨーの現在の値は、差車両速度、慣性検知、などのような様々な状態推定から導き出される。ヨーエラーからのヨー命令の導出は、様々な処理アルゴリズムに従ってコントローラ524により提供される。
【0049】
ヨー制御アルゴリズムの2例が図5Bと図5Cとに示される。特に、図5Bは、インプリメントされた制御規則を示し、入力信号Ψerrが加算器560により該制御規則の微分(微分器562の出力)と積分(積分器564の出力)とに加えられる。勿論、図5Bによって示されるように、各々の信号は、該信号に(例えば、ゲインブロック568と、569と、570とにより)適用されたゲイン、またはスムーザ566のような他の信号処理を有し得る。
【0050】
別の可能性は、図5Cに示されるように、単に微分信号を省略することである。
【0051】
勿論、様々なコントローラ転送方策が、図示されるように、比例と、微分と、「3項」「PID」機能とを用いて実行され得る。
【0052】
本発明は、また、図6に図示されるようにバランスのとれた全地形用車両に具体化され得、通常、数字10により指定される。ユーザー8は、図6に示されるように、全地形用車両10のユーザー支持具12上に着座した姿勢でいる。後輪21と22とは、Y軸として定義された軸について同軸として示される。図7に示される全地形用車両10の上面からの斜視図を以下に参照すると、後輪21と22との各々は、操縦が後輪21と22とに適用される差動トルクを介してもたらされ得るように、モーター作動器24により駆動される。ターンにおいての外輪の増加された回転動程に対する後輪の差動作動による補正は、本明細書において「アクティブ差動」として参照され得る。ライダ8は、様々な体位によって車両10上で支持され得、それによって、積荷、すなわちユーザーの重量の分配によって影響されるように車両の質量の中心位置を制御している。例えば、ユーザー8は、図6に示されるように、足をプラットフォーム26(図7に示される)に乗せてシート12上に着座し得、シート12の丈に沿って自分自身の位置を適切な場所に定めることにより、車両に対して体重をシフトし得る。あるいは、ユーザー8は、図8に示されるように足がシート12に対して横切るように、プラットフォーム26上に立ち得るか、図9に示されるように足を足置き28に置いて、シート12上に着座し得る。
【0053】
図6を再び参照すると、示される車両10の実施形態は、さらに、前輪13と14とを有し、一般的に、通常の動作中はグランドと接触している。示される本発明の実施形態において、図7の例を用いて、前輪13と14の各々とは、各前輪がお互いから独立してサスペンドされるように、個別のサスペンション支柱29に取り付けられる。
【0054】
コントローラ30(図7に示される)は、上述されるように、車両の配向および命令された速度を継続的に検知することと、訂正動作を決定して安定性を維持することと、車輪モーターに命令してあらゆる必要な訂正動作を行うこととによって、車両の安定性を提供する。本発明の好ましい実施形態により、同一の制御規則は、車両10の前輪13と14とがグランドと接触していても、そうでなくても、適用され得る。
【0055】
操縦、または他の制御は、ピボット17のまわりのハンドルバー18(図7に示される)のユーザーによる回転、またはあらゆる他のユーザー入力機構により提供され得る。本発明の範囲内に用いられ得るユーザー入力機構のさらなる例である、様々な操縦デバイスは、米国特許第6,581,714号、および同第6,789,640号に記述されており、これらの特許は本明細書に参考として援用される。ハンドルバー18は、また、本発明の範囲内において、ユーザー器具、および、スロットルのような他のユーザー制御をサポートし得る。
【0056】
2輪か、4輪かのいずれかで動作し得る車両の動作において、ターンが1つのモードで開始される場合、車輪がグランドを離れるか再びグランドに接触するかのいずれかにつれて、ターンがなめらかに継続され得るということは有益であり得る。これを受けて、本発明の好ましい実施形態により、機械的リンケージは、ユーザーヨー入力と前輪との間に提供され、その一方で後輪は、車輪の差動回転を用いて、ユーザー入力により開始されたあらゆるターンと同調して制御される。図10を参照すると、車両の操縦は、示される実施形態により、ピボット17のまわりでハンドルバー18を回転することによりインプリメントされる。これは2つの機能に役立ち、それらは、前輪を操縦することと、電気的入力を提供し後輪の差動回転を起こすこととである。前輪を操縦するために、図7において矢印83により示されるように、運動は、ベルクランク80を介して、上部プッシュロッド82の前後軸の運動に転送される。ベルクランク80は、固定された角度を形成する2つのアームを伴うレバーであり、該角度の頂点において支点である。これは、グランドに対して実質的に横向きの(ハンドルバーピボットの)回転運動が、グランドに平行である有意な成分を有する(上部プッシュロッドの)運動に転送されることを可能にする。上部プッシュロッド82は、図11に示されるように、次に中央ベルクランク84を介して、下部プッシュロッド90に運動を転送し、これによって前輪13と14とを垂直ピボット軸92のまわりで旋回させることによって該前輪13と14とをターンさせる。ユーザー入力と前輪13および14の角度との間の、あらゆる他の機械的または電動化された連結は、また、本発明の範囲内に用いられるということを理解されたい。
【0057】
上述されるように、ハンドルバーのようなユーザーヨー入力が前輪の操縦を支配すると同時に、信号は、回転のトランスデューサーを用いて発生され、またはそうではなかろうと、(図3に示される)ヨーコントローラ502に対する入力として役立ち、後輪の差動作動を支配する。これによって、本発明により、前輪がグランドに接触していても、そうでなくても、ユーザーの意図する操縦が達成される。ハンドルバー回転角度のような機械的ユーザー入力をコントローラ70へのヨー信号入力に変換する様々な手段は、例えば米国特許第6,581,714号に記述されているもののように、当該技術分野において既知であり、そのようなあらゆる手段は、本発明の範囲内に包含される。
【0058】
記述された本発明の実施形態は、単に例示的であるように意図され、多くの変化、および修正は、当業者に明白であり得る。そのような全ての変化、および修正は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の範囲内であるように意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の前輪と1つ以上の後輪を備える車両の運動の、安定性および制御を能動的に維持する方法に関し、これにより、前輪がグランドとの接触を失ったりグランドから離れたりしてもバランスのとれた動作が可能になり得る。
【背景技術】
【0002】
人間輸送デバイスは、表面上で人を運ぶのに役立ち、異なる形状を取り得る。例えば、人間輸送デバイスは、その用語が本明細書にて用いられる場合、車椅子と、自動車化カートと、全地形用車両と、自転車と、自動二輪車と、自動車と、ホバークラフトとなどを含み得るが、それだけに限定されるものではない。人間輸送のいくつかの種類は、デバイスが転倒して該輸送デバイスのユーザーが怪我をしないことを確実にすることに役立つ安定化機構を含み得る。
【0003】
一般的な4輪車椅子は、グランドに4輪全てで接触する。車椅子とユーザーとの組み合わせの重心が車輪間のエリアにあり続ける場合、該車椅子は倒れないはずである。重心が輸送デバイスの部材に接触しているグランドより上で外側に位置する場合、該輸送デバイスは不安定になり倒れ得る。
【0004】
図1Aを以下に参照すると、一般的な車椅子100が示される。該車椅子100とユーザー102は、フレームを定義する。フレームは、表面106の上に垂直に配置された位置にある重心104を有する。本明細書に用いられる用語「表面」とは、人間輸送デバイスが位置し得るか、動き回り得るあらゆる表面をいう。表面の例は、平らなグランドと、傾斜路のような傾いた面と、砂利で覆われた街路とを含み、お互いが垂直に離れている2つの実質的に並行な表面を垂直に接続する縁石(例えば街路縁石)を含み得る。
【0005】
表面106は、水平軸108(地方水平線を横切る平面の線)と比較すると傾き得る。表面106の水平軸108からのオフセット角度は、表面ピッチと呼ばれ、θsという記号の角度により表され得る。
【0006】
車椅子100の前輪112と後輪110とは、距離dにより分離されている。2つの車輪間の距離dは、線形的な(例えば、直線)距離として測定され得る。車輪110および112は、通常、車椅子の反対側に向かい合う対応物(不表示)を有する。向かい合う対応物は、各々が車輪110および112と、それぞれ軸を共有し得る。これら4輪がグランドに触れる点(または、グランドに接触している部分が点以上を覆い得るときのグランドに接触している部分の外側部分)を接続する多角形で覆われたエリアは、車椅子が安定している間、重心104が位置し得るエリアを提供する。このエリアは、デバイスのフットプリントと参照され得る。デバイスのフットプリントは、本明細書に用語として用いられる場合、水平面に投影された車輪間のエリアの投影により定義される。重心がこの位置より上にある場合、輸送デバイスは安定しているはずである。
【0007】
重心104が表面106の上、およびフットプリントの外側(すなわち、水平面上への車輪110と112との間のエリアの投影)に垂直に転置される場合、車椅子100は倒れ得る。この事態は、例えば、車椅子が急勾配の表面にあるときか、あるいは、例えばユーザーが、縁石を越えるために「急に後輪走行をする」場合に起こり得る。急勾配上にいるとき、重心104は後方にシフトし、車椅子100は後方に向かってひっくり返り得る。これは図1Bに示され、図中では、重心104は、車椅子100のフットプリントの外側の位置にある。重心104は、重心104を下方向に直線的に移動させる重力加速度ベクトル(g)を含んで示される。車椅子100は、移動表面に接触するまで、後輪110の軸を中心に回転し得る。
【0008】
ユーザー102は、車椅子100に乗りながら前方に上体を曲げることにより、重心104を車輪110と112との間のエリアの上の位置に戻すことを促し得る。この重心104の位置に対する限定された制御では、車椅子のような人間輸送デバイスが、縁石や段などの平坦でない表面を移動するとき、非常に困難な状況にぶつかり得ることは明確である。
【0009】
車両の中には、その重量分配や動作の一般的な方式のせいで、前後間の不安定性があり、転倒型(「endo」)転覆が起こり得る。例えば、全地形用車両(ATV)の動作において、該車両の全ての車輪を常に下地表面に接触させておくことは、いつも可能でも望ましいことでもない。それでも、車両の制御を失うことや、転倒型転覆をなくすことが望ましい。ATVは、特に、車輪の安定数以下がグランドと接触しているような状況下で、1つ以上の前後面、または左右面における安定化からの利点があり得る。この種の車両は、先行技術に記述された制御方式への補充の制御方式を用いて、より効率的で安全に動作され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい実施形態により、下地表面上の特定方向の運動に対する車両の前後安定化のための方法が提供され、該車両は前輪と後輪を含む複数の車輪を有し、該前輪は、該車両の運動の瞬間的方向に垂直な力により特徴付けられる。該方法は、該運動の方向に垂直な該前輪にかかる該力、および/または該車両の瞬間的に検知された傾斜に基づいて、該後輪にトルクを適用するステップを有する。
【0011】
本発明の他の実施形態により、該方法は、小ピッチ変調を誘導するために該車輪うちの少なくとも1つに周期的トルクを適用する追加ステップと、該適用された周期的トルクに応答して該車両のピッチ変動を検出する追加ステップと、該後輪に安定化トルクを適用する追加ステップとを有し得る。安定化トルクの適用は、該適用された周期的トルクに応答して、少なくとも、あらゆる検出されたピッチ変動を基礎としている。
【0012】
本発明のさらなる実施形態により少なくとも1つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを有する車両の運動のピッチ安定化のための装置が提供される。該装置は、該車両の運動の瞬間的方向に垂直な該前輪にかかる力を検知するセンサと、該後輪を駆動するモーター作動器と、少なくとも該前輪にかかる該垂直な力に基づいた、制御規則を基礎として、該後輪にトルクを適用するコントローラとを有する。
【0013】
本発明の別の側面により、安定化車両は、提供され、該車両は少なくとも1つの前輪と少なくとも1つの後輪とを有する。付加的に、該車両は、該車両の運動の瞬間的方向に垂直な該前輪にかかる力、および/または該車両の瞬間的ピッチ、および/または該瞬間的ピッチの関数を検知するセンサを有する。該車両は、また、該後輪を駆動するモーター作動器と、少なくとも該前輪にかかる該垂直な力に基づいた、制御規則を基礎として、該後輪にトルクを適用するコントローラとを有する。該車両は、ペダル駆動の自転車、自動二輪車、または車椅子を含み得る。
【0014】
本発明のさらなる実施形態により、複数の車輪を有する車両が提供され、該車両は、少なくとも1つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを含む。モーター作動器は、各々の後輪を駆動し、コントローラは、該前輪が下地表面と接触していないときに該車両を動的に安定化させるように、1つ、または複数のモーター作動器を支配する。詳細には、左後方作動器は左後輪を駆動し、この駆動は該右後輪からは独立しており、これにより該コントローラは、前輪がグランドと接触していても、そうでなくても、該車両のヨーを制御する左右後輪の差動回転を支配し得る。
【0015】
本発明のさらなる実施形態により、該コントローラは、該前輪が下地表面と接触しているか否かに関係ない、制御規則に従ってモーター作動器を支配するようなものである。該車両は、さらに、スロットル出力信号を提供するユーザー入力デバイスと、ピッチ信号を提供するピッチセンサとを有し得る。該コントローラは、それから、少なくとも、該スロットル出力信号、該ピッチ信号、または、ピッチレート信号に基づいた、制御規則に従って、モーター作動器を支配し得る。詳細には、該コントローラは、該車両ピッチ角度が特定の値を超えるときは、少なくとも該ピッチ信号に基づいた、制御規則に従って、該モーター作動器を支配し得る。
【0016】
本発明のさらなる実施形態により、車両が提供され、該車両は、第1支柱により第1旋回点に連結された第1前輪と、第2支柱により該第1旋回点に連結された第2車輪とを有する。この実施形態の該車両は、また、該第1旋回点に連結された少なくとも1つの後輪を含む。この実施形態において、該第1、および第2支柱は、お互いから間隔を取って位置され、該第1前輪と該第2前輪との両方を、少なくともそれぞれの垂直軸の周りで旋回させることにより、該車両にその運動の方向を変えるように配置および構成される。
【0017】
本発明のさらなる実施形態により、車両が提供され、該車両は中央ピボットを含む。該車両は、また、第1支柱により該中央旋回点に連結された第1前輪を含み、該第1支柱は動作中に該中央ピボットの周りを回転するように配置および構成され、また、該車両は、第2支柱により該中央ピボットに連結された第2前輪を含み、該第2支柱は動作中に該中央ピボットの周りを回転するように配置および構成される。この実施形態の該車両は、また、該中央ピボットに関して固定配向を維持するように配置および構成された接続部材により、該中央ピボットに連結された少なくとも1つの後輪を含む。
【0018】
本発明のさらなる実施形態により、車両が提供され、該車両は複数の車輪を含み、該車輪には少なくとも1つの前輪と、少なくとも2つの後輪とを含む。この実施形態の該車両は、また、各々の後輪と少なくとも1つのヨーコントローラとを駆動する、少なくとも1つのモーター作動器を含む。この実施形態の該車両は、また、少なくとも1つの該モーター作動器を制御するコントローラを含み、その結果、該ヨーコントローラにより少なくとも1つの前輪に伝えられた方向は、該少なくとも2つの後輪の差動回転により繰り返されるようになる。
本発明のさらなる実施形態により、車両が提供され、該車両は複数の車輪を含み、該車輪は少なくとも1つの前輪と少なくとも2つの後輪とを含む。この実施形態の該車両は、また、各々の後輪と少なくとも1つのヨーコントローラとを駆動するモーター作動器を含む。この実施形態の該車両は、また、スロットルと、該複数の車輪の全てが移動表面と接触しているとき、該スロットルが回転されると該車両に加速させ、かつ、該少なくとも1つの前輪が移動表面と接触していないとき、該スロットルが回転されるとピッチ制限からのオフセットに調整させるコントローラとを含み得る。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
下地表面上の特定方向の運動に対する車両の前後安定化のための方法であって、
該車両は前輪と後輪とを含む複数の駆動車輪を有し、
該前輪は該車両の運動の瞬間的方向に垂直な力により特徴付けられ、
該方法は、
該運動の方向に垂直な該前輪にかかる該力に基づいて該後輪にトルクを適用すること
を含む、方法。
(項目2)
小ピッチ変調を誘導するために周期的トルクを前記車輪のうちの少なくとも1つに適用することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記適用された周期的トルクに応答して、前記車両のピッチ変動を検出することと、
該適用された周期的トルクに応答して、少なくとも、あらゆる検出されたピッチ変動を基礎として前記後輪に安定化トルクを適用することと
をさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
下地表面上の特定方向の運動に対する車両の前後安定化のための方法であって、
該車両は前輪と後輪とを含む複数の駆動車輪を有し、該前輪は該車両の運動の瞬間的方向に垂直な力により特徴付けられ、該方法は、
該車両の瞬間的に検知された傾斜に垂直な、該前輪にかかる該力に基づいて該後輪にトルクを適用すること
を含む、方法。
(項目5)
小ピッチ変調を誘導するために周期的トルクを前記車輪のうちの少なくとも1つに適用することをさらに含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記適用された周期的トルクに応答して、前記車両のピッチ変動を検出することと、
該適用された周期的トルクに応答して、少なくとも、あらゆる検出されたピッチ変動を基礎として前記後輪に安定化トルクを適用することと
をさらに含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
少なくとも1つの前輪と少なくとも1つの後輪とを有する車両の運動のピッチ安定化のための装置であって、
該車両の運動の瞬間的方向に垂直な該前輪にかかる力を検知するセンサと、
該後輪を駆動するモーター作動器と、
少なくとも該前輪にかかる該垂直な力に基づいた、制御規則を基礎として、該後輪にトルクを適用するコントローラと
を含む、装置。
(項目8)
前記車両の運動の瞬間的方向に垂直な前記前輪にかかる力を検知する第2センサをさらに含む、項目7に記載の装置。
(項目9)
前記コントローラは、前記モーター作動器に前記少なくとも1つの後輪に周期的トルクを適用させ、小ピッチ変調を誘導する、項目7に記載の装置。
(項目10)
前記周期的トルクに応答して前記車両のピッチ変動を検出するためのピッチ検出器
をさらに含み、
前記コントローラは、該適用された周期的トルクに応答して、少なくとも、あらゆる検出されたピッチ変動を基礎として、前記モーター作動器に、前記少なくとも1つの後輪に安定化トルクを適用させる、項目9に記載の装置。
(項目11)
安定化車両であって、
少なくとも1つの前輪と、
少なくとも1つの後輪と、
該車両の運動の瞬間的方向に垂直な該前輪にかかる力を検知する、少なくとも1つのセンサと、
該車両の瞬間的ピッチを検知する少なくとも1つのセンサと、
該後輪を駆動するモーター作動器と、
少なくとも該前輪にかかる該垂直な力に基づいた、制御規則を基礎として、該後輪にトルクを適用するコントローラと
を含む、安定化車両。
(項目12)
前記車両は、ペダル駆動の自転車である、項目11に記載の安定化車両。
(項目13)
前記車両は自動二輪車である、項目11に記載の安定化車両。
(項目14)
前記車両は全地形用車両である、項目11に記載の安定化車両。
(項目15)
前記車両は車椅子である、項目11に記載の安定化車両。
(項目16)
前記コントローラは、前記前輪が移動表面と接触しているか否かに関わらず、同様に該車両の動作を制御する、項目11に記載の安定化車両。
(項目17)
安定化車両であって、
少なくとも1つの前輪と、
少なくとも1つの後輪と、
該車両の瞬間的ピッチを検知する少なくとも1つのセンサと、
該後輪を駆動するモーター作動器と、
該車両の該瞬間的ピッチの関数に少なくとも基づいた制御規則を基礎として、該後輪にトルクを適用するコントローラと
を含む、安定化車両。
(項目18)
前記車両はペダル駆動の自転車である、項目17に記載の安定化車両。
(項目19)
前記車両は自動二輪車である、項目17に記載の安定化車両。
(項目20)
前記車両は全地形用車両である、項目17に記載の安定化車両。
(項目21)
前記車両は車椅子である、項目17に記載の安定化車両。
(項目22)
前記制御規則は少なくとも前記車両の前記瞬間的ピッチに基づく、項目17に記載の安定化車両。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1Aと図1Bとは、本発明の実施形態が有利に用いられ得る種類の、先行技術にある個人用車両の該略側面図である。
【図2】図2は、本発明の特定の実施形態の記述に使われる変数を示し、本発明の実施形態が有利に用いられ得る種類の個人用車両の一般的な構成要素の図である。
【図3】図3は、車輪増幅器命令の発生のためのピッチとヨーコントローラ出力との連結を図示するブロック図である。
【図4A】図4Aは、本発明の実施形態により、ピッチ命令の構成上の入力を示すブロック図である。
【図4B】図4Bは、本発明の実施形態により、一面的な制限を伴ったピッチ命令の構成上の入力を示すブロック図である。
【図5】図5Aは、本発明の実施形態により、ヨー命令の構成上の入力を示すブロック図である。図5Bと図5Cとは、本発明の実施形態により、ヨーコントローラの異なる実施形態のブロック図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態により、バランスのとれた動作が可能な全地形用車両の側面図である。
【図7】図7は、図6の本発明の実施形態の上からの斜視図である。
【図8】図8は、立っているユーザーによる動作を示す、図6の全地形用車両のさらなる側面図である。
【図9】図9は、着座したユーザーによる動作を示す、図6の全地形用車両のさらなる側面図である。
【図10】図10は、本発明の好ましい実施形態により、前輪の操縦のためのハンドルバーの上部プッシュロッドへの連結を示す。
【図11】図11は、図10の実施形態により、前輪を操縦するための下部プッシュロッドの連結を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、添付の図面とともに、以下の記述を参照することにより、より容易に理解される。
【0021】
(定義)
車両が「バランスのとれた状態」で動いていると言えるのは、車輪の動作を支配する制御ループの動作を別にすれば、1つ以上の車輪での動作が可能で、しかしそれらの車輪のみでは静止した状態でいられない場合である。バランスのとれた車両は、バランスのとれたモードでの動作中、静安定に欠けるが、動的にはバランスがとれている。そのような車両と、グランドまたは他の下地表面との間の接触を提供し、かつ、定常動作中にチッピングに関するトランスポータを最小限にサポートする、車輪または他のグランドに接触する素子は、本明細書において「主要な車輪」という。本明細書中、およびあらゆる添付の請求項中に用いられる「安定性」とは、システムがいかなる点においても、動作位置から外れて不安定になった場合、システムが自然に戻る動作位置の機械的状態をいう。用語「システム」とは、車両が動いている表面に関して、車輪の動きによって動かされる全ての質量をいい、従って、車両およびライダの両方を含む。
【0022】
用語「傾き」は、完全に剛体の部材の単一点上でバランスのとれたシステムに関して、しばしば用いられる。その場合、部材と下地表面との間の接触の点(または線)は、理論上のゼロ幅を有する。その場合、さらに、傾きは、車輪のグランド接触に対する理論上の線を介した、システムの重心(CG)からの線の垂直面(すなわち、地球の中心を通過する想像上の線)に関する配向を表す量をいい得る。実際の車輪のタイヤは完全に剛体ではないということを認識した上で、用語「傾き」は、本明細書において、硬いグランドと接触している部材の理論上の範囲の常識において用いられる。
【0023】
(本発明の実施形態に従った動作)
本発明による安定化車両の一実施形態は、図2に図示されており、通常、数字10により指定される。ユーザー8は、図2に示されるように、車両10のユーザー支持具12上に着座した姿勢である。理解され得ることであるが、ユーザー8はシートに座ること以外によっても支えられ得、例えば、本発明の範囲内において、プラットフォームの形状でユーザー支持具上に立ち得る。
【0024】
後部輪21(図2の側面図では1つのみが見える)は、Y軸と定義された軸に対して同軸である。後輪21の各々は、パワーベース24内に配置されたモーター作動器(不図示)によって駆動され、その結果、操縦は、異なるトルクをそれぞれの後輪21に適用することによって実施され得るようにする。旋回中の、外輪の増加した回転動程に対する後輪の異なる作動により補正することは、本明細書において「アクティブ差動」として参照され得る。ライダ8は、車両10上で様々な体位で支持され得、それによって、積荷、すなわちユーザーの重量の分配によって影響されるように車両の質量の中心位置を制御している。例えば、ユーザー8は、図2に示されるように、足を足置き26に乗せてシート12上に着座し得る。
【0025】
車両10の表示の実施形態は、さらに、2つの前輪13(図2の側面図中に1つ見える)を有し、一般的に、通常の動作中はグランドと接触している。前輪13と1つ以上の他の前輪は、共通した車軸に取り付けられ得るか、またはそうでない場合もあり得、任意の前輪が旋回することは本発明の範囲内である。操縦性および安全性の向上のために設計された個人用車両は、また、車輪の1つ以上のクラスタを含み得、クラスタおよび各々のクラスタ内の車輪は、お互いから独立してモーター駆動可能である。そのような車両は、米国特許第5,701,965号、同第5,971,091号、同第6,302,230号、同第6,311,794号、および同第6,553,271号に記述されており、それら全ての特許は本明細書に参考として援用される。
【0026】
コントローラ30は、以下に詳述されるように、車両の配向および命令された速度を継続的に検知することと、訂正動作を決定して安定性を維持することと、車輪モーターに命令してあらゆる必要な訂正動作を行うこととによって、車両の安定性を提供する。
【0027】
本発明の好ましい実施形態により、同一の制御規則は、車両の前輪がグランドと接触していても、そうでなくても、適用される。
【0028】
操縦または他の制御は、ユーザー入力デバイス18により提供され得、それらは、ジョイスティック、ハンドルバー、またはあらゆるその他のユーザー入力機構であり得る。様々な操縦デバイスは、本発明の範囲内で用いられ得るユーザー入力機構のさらなる例であり、米国特許第6,581,714号、および同第6,789,640号に記述されており、それらは本明細書に参考として援用される。
【0029】
センサユニット28は、コントローラ30に1つ以上の信号を提供するパワーベース24の一部として提供される。センサユニット28は、ピッチレートおよび/または車両のピッチの測定を提供し得、かつ、米国特許第6,332,103号に詳述されたタイプの慣性検知を用い得、この特許は本明細書に参考として援用される。代替的に、または付加的に、センサユニット28は、車輪13により下地表面上にかかる(および、相反的に、下地表面により車輪13にかかる)、下地表面には垂直な(矢印32によって表される)力を測定する力センサを含み得る。ピエゾ抵抗素子に基づいているもののような、力センサは、当該技術分野において周知であり、あらゆる種類の力センサは本発明の範囲内である。
【0030】
バランスを達成する簡略化された制御アルゴリズムは、本発明の実施形態において、図2により、以下に記述される。制御アルゴリズムは、インライン自転車または自動二輪車の安定化のために用いられ得るような、単一駆動輪の場合に対して記述される。複数駆動輪の場合への一般化は、以下に詳細に議論される。
【0031】
動的制御を達成してシステムの安定性を保証するために、この実施形態において、車輪トルクTは以下の簡略化された制御方程式により支配される。
【0032】
【数1】
ここでは、
・Tは回転軸に対するグランド接触素子に適用されるトルクを意味する。
・K1(θ)は、以下に論議されるように、傾きθの瞬間値に依存し得るゲイン関数である。
・θは、後輪の共通軸Yの下のグランド接触領域についての、全体のシステムの傾きに対応する量であり、θ0はシステムピッチオフセットの大きさを表し、全ては以下において詳細に論議される。
・vは表面に沿った前後の速度を識別し、vcommandはユーザー入力(例えば、ジョイスティック)18によって構成された、スロットルのようなユーザー入力の大きさを表す。
・文字の上の点は、時間に関して微分された変数を意味する。
・下付きの変数は、以下に記述されるように、システムに入力され得る特定のオフセットを意味する。
・K1、K2、K3およびK4は、ゲイン関数、または係数であり、システムの設計または実時間のいずれかにおいて、現在の動作モードおよび動作条件、およびユーザーの好みに基づいて構成され得る。ゲイン係数は、正の、負の、またはゼロの大きさであり得る。ゲインK1、K2、K3およびK4は、システムの物理的パラメータおよび重力のような他の効果に依存する。方程式1の簡略化された制御アルゴリズムは、ライダの体の動き、または下にある地形によるシステムの質量中心の変化がある中、車両のバランスを維持する。
【0033】
方程式(1)の最終項は、駆動輪に適用されるトルクへの、周期2π/ωおよび(適用される変調がない場合はゼロであり得る)振幅Aの周期的な駆動成分の適用を考慮している。周期的関数f(ωt)は、例えば、シヌソイド関数であり得る。
【0034】
増幅器制御は、モーター電流を制御するように構成され(その場合はトルクTが命令される)得るか、あるいは、モーターに印加される電圧は制御され(その場合は命令されるパラメータは速度である)得ることに留意されたい。
【0035】
上記の制御方程式(方程式1)のθ0の効果は、非ピッチ位置θ=0から特定のオフセットθ0を生成することである。θ0の調整は、非ピッチ位置からの車両のオフセットを調整し得る。いくつかの実施形態において、ピッチオフセットは、ユーザーにより調整され得る。代替的に、θ0は、車両のスピードおよび/または性能を制限する方法として、車両の制御システムにより設定され得る。本発明の好ましい実施形態において、後方傾斜限度が課せられ、ゲイン関数K1は傾斜限度に近づくまで実質的にゼロである。従って、ライダは、体重をシフトすることにより車両を後方に自由に傾かせ、これにより傾斜限度に近づくまで、車両システムの質量中心は後方になる。その次に、K1は非ゼロ値と仮定し、項は、車両のさらなる後方への傾きを防止する傾向がある制御方程式(1)に現れる。
【0036】
K3の大きさは、ユーザー入力のゲインを決定し、都合よく非線形の関数であり得、例えば、ゼロ速度付近でより高い感度を提供する。K2項は、ピッチレートセンサにより、または測定されたピッチの微分により測定されるように、瞬間的なピッチレート、つまり車両の
【0037】
【数2】
に基づいて制御を提供する。
【0038】
適用されたピッチ変調Af(ωt)に応答したセンサ28により測定された垂直の力32の応答は、本発明の実施形態により、車両がさらに後方に傾くことを防止し、かつ、前輪のグランドとの接触を維持するか、あるいは、後方傾斜に制限を課すように用いられ得る。
【0039】
方程式1に関して記述されてきた1輪システムの代わりに2輪を適応させるために、個別のモーターが車両の左右の車輪に提供され得、左のモーターから所望されるトルクと、右のモーターから適用されるトルクとは、上述の一般的な方法で支配され得る。さらに、左車輪の運動と右車輪の運動の両方のトラッキングは、調整がなされることを可能とし、車両の不要なターニングを防ぎ、かつ、2つの駆動モーター間の性能の相違を補償する。
【0040】
本発明の好ましい実施形態により、2つの後輪の差動駆動は、機械的リンケージを介して前輪に適用されるものと同じヨー入力に従ってターンを追跡する。この動作は以下に記述され、図10および図11を参照する。
【0041】
以下に図3を参照すると、車両の操縦、またはヨー制御は、車輪増幅器にターニング命令を加えることにより達成され得、以下の形式を有し得る。車両パラメータの値に対応する(以下に記述される)入力は、ピッチコントローラ500およびヨーコントローラ502により用いられ、以下の段落において論議されるアルゴリズムに従って、バランス制御信号BalCmdおよびヨー制御信号YawCmdを引き出す。
LeftCmd=BalCmd+YawCmd (2)
RightCmd=BalCmd−YawCmd (3)
LeftCmdおよびRightCmdは、微分または他の適切な条件付けの後、コントローラ500および502により、それぞれ、左右のモーター増幅器に送られる命令である。例えば、図3に例として示されるように、LeftCmdおよびRightCmdは、微分回路504および506により、それぞれ、条件付きであり得る。LeftCmdおよびRightCmdは、増幅器が電圧制御モードの場合は電圧を表し、増幅器が電流制御モードの場合は電流を表し、増幅器がデューティサイクル制御モードの場合はデューティサイクルを表す。BalCmdはピッチコントローラ500により、各増幅器に送られる命令であり、移動中または静止中にバランスのとれた状態でトランスポータを維持する。YawCmdは、車輪のうちの1つへの命令を減らす一方で、もう片方の車輪への命令を増やすことにより、トランスポータをターンさせる。例えば、正のYawCmdは左の車輪への命令を増やし、その一方で、右の車輪への命令を減らし、これによって、トランスポータが右ターンを実行するようになる。YawCmdは、上述のヨー入力デバイスにより生成され得、米国特許第6,288,505号に記載されているように、フィードバックループなしで、またはクローズトサイクルループを用いて、ヨー位置エラーを修正する。
【0042】
ピッチコントローラ500は、図4Aおよび図4Bを参照して詳細に記述される。入力は、所望されるピッチθdesiredと、実際の計測ピッチθと、ピッチレート
【0043】
【数3】
と、2つの主要な車輪に共通する車輪回転速度の成分、ωcomとを含む。θと
【0044】
【数4】
とは両方、米国特許第6,332,103号に記載されるように、慣性検知から引き出され得、上記特許は本明細書に参考として援用される。
【0045】
所望されるピッチθdesiredおよび現在の瞬間的なピッチθは、加算器520内で差を計算され、ピッチエラーθerrを生成する。本発明の特定の実施形態により、ピッチを制限することは一面的であり、その結果、制限は、ピッチの許容値範囲の一端に提供されるようにする。そのピッチが超えている場合、復原トルクが車両をピッチ制限方向に動かす。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態により、ユーザーは、自分の体重を後方にシフトし得、これにより車両を2輪でバランスのとれている状態に「ポッピング」させ、ユーザーが、自分の体重を前方にシフトして全ての車輪での動作に戻すまで安定性は維持される。
【0047】
ピッチエラーθerrの二次の項(実際のピッチエラーの符号を保存)は、また、図4Bに示されるように提供され得、これによって、例えば障害に遭ったときに起こるようなピッチの大きなずれに対してより強い応答を提供する。電圧制御モードにおいて、車輪回転速度に比例する追加の項を提供し、モーターの回転速度に比例して発生された逆起電力の全てか、一部かを補正することが望ましい。
【0048】
ヨーコントローラ502は、図5A〜図5Cを参照して詳細に記述される。図5Aは、加算器522において、現在のヨーエラーΨerrを得るために、所望されるヨー値Ψdesiredに対する現在のヨー値Ψの差分を計算することを図示する。所望されるヨー値Ψdesiredは、ジョイスティック18、または上記で論じられたような、方向入力のために用いられる他のユーザー入力デバイスのようなユーザー入力から得られる。ヨーの現在の値は、差車両速度、慣性検知、などのような様々な状態推定から導き出される。ヨーエラーからのヨー命令の導出は、様々な処理アルゴリズムに従ってコントローラ524により提供される。
【0049】
ヨー制御アルゴリズムの2例が図5Bと図5Cとに示される。特に、図5Bは、インプリメントされた制御規則を示し、入力信号Ψerrが加算器560により該制御規則の微分(微分器562の出力)と積分(積分器564の出力)とに加えられる。勿論、図5Bによって示されるように、各々の信号は、該信号に(例えば、ゲインブロック568と、569と、570とにより)適用されたゲイン、またはスムーザ566のような他の信号処理を有し得る。
【0050】
別の可能性は、図5Cに示されるように、単に微分信号を省略することである。
【0051】
勿論、様々なコントローラ転送方策が、図示されるように、比例と、微分と、「3項」「PID」機能とを用いて実行され得る。
【0052】
本発明は、また、図6に図示されるようにバランスのとれた全地形用車両に具体化され得、通常、数字10により指定される。ユーザー8は、図6に示されるように、全地形用車両10のユーザー支持具12上に着座した姿勢でいる。後輪21と22とは、Y軸として定義された軸について同軸として示される。図7に示される全地形用車両10の上面からの斜視図を以下に参照すると、後輪21と22との各々は、操縦が後輪21と22とに適用される差動トルクを介してもたらされ得るように、モーター作動器24により駆動される。ターンにおいての外輪の増加された回転動程に対する後輪の差動作動による補正は、本明細書において「アクティブ差動」として参照され得る。ライダ8は、様々な体位によって車両10上で支持され得、それによって、積荷、すなわちユーザーの重量の分配によって影響されるように車両の質量の中心位置を制御している。例えば、ユーザー8は、図6に示されるように、足をプラットフォーム26(図7に示される)に乗せてシート12上に着座し得、シート12の丈に沿って自分自身の位置を適切な場所に定めることにより、車両に対して体重をシフトし得る。あるいは、ユーザー8は、図8に示されるように足がシート12に対して横切るように、プラットフォーム26上に立ち得るか、図9に示されるように足を足置き28に置いて、シート12上に着座し得る。
【0053】
図6を再び参照すると、示される車両10の実施形態は、さらに、前輪13と14とを有し、一般的に、通常の動作中はグランドと接触している。示される本発明の実施形態において、図7の例を用いて、前輪13と14の各々とは、各前輪がお互いから独立してサスペンドされるように、個別のサスペンション支柱29に取り付けられる。
【0054】
コントローラ30(図7に示される)は、上述されるように、車両の配向および命令された速度を継続的に検知することと、訂正動作を決定して安定性を維持することと、車輪モーターに命令してあらゆる必要な訂正動作を行うこととによって、車両の安定性を提供する。本発明の好ましい実施形態により、同一の制御規則は、車両10の前輪13と14とがグランドと接触していても、そうでなくても、適用され得る。
【0055】
操縦、または他の制御は、ピボット17のまわりのハンドルバー18(図7に示される)のユーザーによる回転、またはあらゆる他のユーザー入力機構により提供され得る。本発明の範囲内に用いられ得るユーザー入力機構のさらなる例である、様々な操縦デバイスは、米国特許第6,581,714号、および同第6,789,640号に記述されており、これらの特許は本明細書に参考として援用される。ハンドルバー18は、また、本発明の範囲内において、ユーザー器具、および、スロットルのような他のユーザー制御をサポートし得る。
【0056】
2輪か、4輪かのいずれかで動作し得る車両の動作において、ターンが1つのモードで開始される場合、車輪がグランドを離れるか再びグランドに接触するかのいずれかにつれて、ターンがなめらかに継続され得るということは有益であり得る。これを受けて、本発明の好ましい実施形態により、機械的リンケージは、ユーザーヨー入力と前輪との間に提供され、その一方で後輪は、車輪の差動回転を用いて、ユーザー入力により開始されたあらゆるターンと同調して制御される。図10を参照すると、車両の操縦は、示される実施形態により、ピボット17のまわりでハンドルバー18を回転することによりインプリメントされる。これは2つの機能に役立ち、それらは、前輪を操縦することと、電気的入力を提供し後輪の差動回転を起こすこととである。前輪を操縦するために、図7において矢印83により示されるように、運動は、ベルクランク80を介して、上部プッシュロッド82の前後軸の運動に転送される。ベルクランク80は、固定された角度を形成する2つのアームを伴うレバーであり、該角度の頂点において支点である。これは、グランドに対して実質的に横向きの(ハンドルバーピボットの)回転運動が、グランドに平行である有意な成分を有する(上部プッシュロッドの)運動に転送されることを可能にする。上部プッシュロッド82は、図11に示されるように、次に中央ベルクランク84を介して、下部プッシュロッド90に運動を転送し、これによって前輪13と14とを垂直ピボット軸92のまわりで旋回させることによって該前輪13と14とをターンさせる。ユーザー入力と前輪13および14の角度との間の、あらゆる他の機械的または電動化された連結は、また、本発明の範囲内に用いられるということを理解されたい。
【0057】
上述されるように、ハンドルバーのようなユーザーヨー入力が前輪の操縦を支配すると同時に、信号は、回転のトランスデューサーを用いて発生され、またはそうではなかろうと、(図3に示される)ヨーコントローラ502に対する入力として役立ち、後輪の差動作動を支配する。これによって、本発明により、前輪がグランドに接触していても、そうでなくても、ユーザーの意図する操縦が達成される。ハンドルバー回転角度のような機械的ユーザー入力をコントローラ70へのヨー信号入力に変換する様々な手段は、例えば米国特許第6,581,714号に記述されているもののように、当該技術分野において既知であり、そのようなあらゆる手段は、本発明の範囲内に包含される。
【0058】
記述された本発明の実施形態は、単に例示的であるように意図され、多くの変化、および修正は、当業者に明白であり得る。そのような全ての変化、および修正は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の範囲内であるように意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−178975(P2012−178975A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−133037(P2012−133037)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【分割の表示】特願2007−535917(P2007−535917)の分割
【原出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(594010009)デカ・プロダクツ・リミテッド・パートナーシップ (62)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133037(P2012−133037)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【分割の表示】特願2007−535917(P2007−535917)の分割
【原出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(594010009)デカ・プロダクツ・リミテッド・パートナーシップ (62)
【Fターム(参考)】
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