ピット梯子装置
【課題】梯子を収納位置から使用位置に移動させる作業を、手間をかけず容易に行なうことができるピット梯子装置を提供する。
【解決手段】ピット梯子装置において、昇降路1の壁面1aに取付けられた梯子保持体3と、梯子保持体3に上下方向移動可能に係合される係合部10を上部に有し、ピット2の底部に当接されて梯子保持体3が取付けられた壁面1aに対し接離する方向へ移動可能なガイドローラ11を下部に有し、ガイドローラ11を梯子保持体3が取付けられた壁面1aに接近させた収納位置とガイドローラ11を梯子保持体3が取付けられた壁面1aから離反させた使用位置とに移動可能であり、収納位置から使用位置へ自重により移動可能な梯子9と、収納位置に位置する梯子9を梯子保持体3にロックするロック機構16と、を備える。
【解決手段】ピット梯子装置において、昇降路1の壁面1aに取付けられた梯子保持体3と、梯子保持体3に上下方向移動可能に係合される係合部10を上部に有し、ピット2の底部に当接されて梯子保持体3が取付けられた壁面1aに対し接離する方向へ移動可能なガイドローラ11を下部に有し、ガイドローラ11を梯子保持体3が取付けられた壁面1aに接近させた収納位置とガイドローラ11を梯子保持体3が取付けられた壁面1aから離反させた使用位置とに移動可能であり、収納位置から使用位置へ自重により移動可能な梯子9と、収納位置に位置する梯子9を梯子保持体3にロックするロック機構16と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピット梯子装置に関し、特に、作業のためにピットに降りる場合に使用するピット梯子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、ピットに降りる場合に使用するピット梯子装置が設けられており、例えば、下記特許文献1に記載されたピット梯子装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載されたピット梯子装置は、梯子の上端を固定具により保持することで、使用時の梯子の転倒を防止している。
【特許文献1】実開平4−24576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のピット梯子装置においては、梯子を収納位置から使用位置に移動させる場合に手間がかかっている。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的は、梯子を収納位置から使用位置に移動させる作業を、手間をかけず容易に行なうことができるピット梯子装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、ピット梯子装置において、昇降路の壁面に取付けられた梯子保持体と、前記梯子保持体に上下方向移動可能に係合される係合部を上部に有し、ピットの底部に当接されて前記梯子保持体が取付けられた壁面に対し接離する方向へ移動可能なガイドローラを下部に有し、前記ガイドローラを前記梯子保持体が取付けられた前記壁面に接近させた収納位置と前記ガイドローラを前記梯子保持体が取付けられた前記壁面から離反させた使用位置とに移動可能であり、前記収納位置から前記使用位置へ自重により移動可能な梯子と、収納位置に位置する前記梯子を前記梯子保持体にロックするロック機構と、を備えることである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、梯子を収納位置から使用位置に移動させる作業を、手間をかけず容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0009】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態のピット梯子装置は、図1に示すように、乗りかご(図示せず)が昇降する昇降路1の壁面1aであって、ピット2の近傍に取付けられて上下方向に延出した梯子保持体3を備えている。図1において、4はピット2に出入りする最下階の階床のホールシル、5は最下階の階床において乗りかごに乗り降りするための出入口、6は出入口5を開閉するホールドア、7はフィッシャープレートを示している。
【0010】
梯子保持体3は、一対の梯子保持片3a、3bを平行に対向させて構成されており、梯子保持片3a、3bの上部には上下方向に長い長穴8が形成されている。
【0011】
梯子保持体3には、収納位置と使用位置とに移動可能に梯子9が取付けられている。図1及び図2は収納位置に位置する梯子9を示し、図3は使用位置に位置する梯子9を示している。
【0012】
梯子9の上部には一対の係合部10が取付けられ、これらの係合部10を梯子保持片3a、3bに形成された長穴8に上下方向移動可能に係合させることにより、梯子保持体3への梯子9の取付けが行なわれている。
【0013】
梯子9の下部には、ピット2の底部に当接され、梯子保持体3が取付けられた壁面1aに対して接離する方向へ移動可能な一対のガイドローラ11が回転可能に取付けられている。
【0014】
梯子9には、一端を支軸12により軸支されてこの支軸12の軸心回りに回動可能なアーム13が取付けられている。アーム13の他端には、操作ハンドルを兼ねるロックピン14が取付けられている。
【0015】
梯子保持片3bには、ロックピン14が係合されるロック溝15が形成されている。ロック溝15は、係合部10を長穴8に沿って上方へ移動させることにより梯子9を収納位置に位置させ、アーム13とロックピン14とを支軸12を支点として回動させた場合にロックピン14が係合される位置に形成されている。これらのアーム13、ロックピン14、ロック溝15により、梯子9を収納位置で梯子保持体3にロックするロック機構16が構成されている。
【0016】
また、梯子9が収納位置に位置してロック機構16がロックされている場合に、ロックピン14をロック溝15との係合を解除する位置に回動させてロック機構16のロック状態を解除すると、梯子9は自重で使用位置に向けて移動する。
【0017】
このような構成において、梯子9を使用しない場合には、梯子9は図1及び図2に示すように収納位置でロック機構16によりロックされている。梯子9が収納位置でロックされている場合、ロックピン14がロック溝15に係合され、梯子9は昇降路1における梯子保持体3が取付けられた壁面1aに沿って略起立状態に維持されている。
【0018】
ピット2内での作業を行なうためにピット2内に降りる場合には、図3に示すように梯子9を斜めに傾いた使用位置に移動させる。梯子9が使用位置に位置する場合、ガイドローラ11は壁面1aから離反する位置に移動し、係合部10が長穴8に沿って下方位置へ移動している。
【0019】
収納位置に位置する梯子9を使用位置に移動させる場合には、ホールドア6を開け、ホールシル4と略同じ高さ位置に位置しているロックピン14を回動操作してロック溝15との係合を解除する。
【0020】
これにより、梯子9が使用位置に向けて自重により自動的に移動し、ガイドローラ11が壁面1aから離反する方向に移動するとともに係合部10が長穴8内を下方へ移動する。
【0021】
したがって、収納位置に位置する梯子9を使用位置に移動させる場合には、ロック機構16のロック状態を解除するだけでよく、梯子9は自重によって自動的に使用位置に移動する。このため、収納位置に位置する梯子9を使用位置に移動させる作業を手間をかけずに容易に行なうことができる。
【0022】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態のピット梯子装置を、図4及び図5に基づいて説明する。なお、第2の実施の形態及びこれ以降の他の実施の形態において、第1の実施の形態において説明した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0023】
第2の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、ピット2の底部に、ガイドローラ11を移動方向に沿ってガイドする一対のガイドレール21が設けられている点である。
【0024】
ガイドレール21は、断面形状がL字型に形成され、ガイドローラ11により踏圧される底面部21aと、ガイドローラ11の外側面を覆う側面部21bとを有している。
【0025】
このような構成において、梯子9を収納位置から使用位置に移動させる場合には、ガイドローラ11はガイドレール21の側面部21bに沿って案内されるため、梯子9を使用位置に移動させる場合、及び、作業員が梯子9を使用してピット2に降りる場合、ガイドローラ11の横揺れが防止され、及び、ガイドローラ11の横揺れが原因となる梯子9のぐらつきを抑えることができる。
【0026】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態のピット梯子装置を、図6及び図7に基づいて説明する。
【0027】
第3の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第3の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1の実施の形態で説明したガイドローラ11に代えて、ガイドシュー31が用いられている点と、ガイドシュー31の溝31aが係合するガイドレール32がピット2の底部に設けられけている点である。
【0028】
このような構成において、梯子9を収納位置から使用位置に移動させる場合には、溝31aをガイドレール32に係合させたガイドシュー31がガイドレール32に沿って移動する。このため、梯子9を使用位置に移動させる場合、及び、作業員が梯子9を使用してピット2に降りる場合、梯子9のぐらつきをより一層抑えることができる。
【0029】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態のピット梯子装置を、図8に基づいて説明する。
【0030】
第4の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第4の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1の実施の形態に対し、梯子9の上端部に連結されたロープであるワイヤロープ41と、このワイヤロープ41を巻き取ることにより使用位置に位置する梯子9を収納位置に移動させる巻取装置42とが設けられている点である。
【0031】
このような構成において、収納位置に位置する梯子9を使用位置に移動させる場合には、第1の実施の形態で説明したように、ロックピン14を回動操作してロック溝15との係合を解除し、略起立状態となっている梯子9をガイドローラ11が壁面1aから離反する方向へ移動させる。
【0032】
ピット2内での作業が終了した後、使用位置に位置する梯子9を収納位置に戻す場合には、巻取装置42を操作してワイヤロープ41を巻き取る。ワイヤロープ41を巻き取ることにより、使用位置に位置する梯子9が収納位置に向けて次第に移動する。梯子9が収納位置に移動した後、ロックピン14をロック溝15に係合させ、梯子9を収納位置で梯子保持体3にロックする。
【0033】
したがって、ワイヤロープ41と巻取装置42とを設けることにより、梯子9を使用位置から収納位置へ移動させる作業を、手間をかけず容易に行なうことができ、しかも、梯子9を収納する作業の安全性を高めることができる。
【0034】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態のピット梯子装置を、図9及び図10に基づいて説明する。
【0035】
第5の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第5の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、昇降路1内に設けられた可動体の移動、例えば、乗りかごやつり合い重りの昇降を規制する安全装置51と、梯子9が使用位置に位置する場合に安全装置51を規制状態に切換える切換部材である安全装置作動用フック52とが設けられている点である。
【0036】
安全装置51は、梯子保持片3a、3bの上端部を連結して設けられた安全装置設置フレーム53に取付けられている。この安全装置51にはオン・オフ切換え用のスイッチ部51aが設けら、スイッチ部51aの押圧が解除されて安全装置51がオンに切換えられた場合には、昇降路1内に設けられた可動体である乗りかごやつり合い重りが昇降することを規制する規制信号が安全装置51からエレベータ制御装置(図示せず)に出力される。また、スイッチ部51aが押圧されて安全装置51がオフに切換えられた場合には、安全装置51からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止される。
【0037】
安全装置作動用フック52は、梯子9の上端部の横梁部54に上下方向回動可能に取付けられている。梯子9が収納位置に位置する場合に安全装置作動用フック52を上方へ回動させると、安全装置作動用フック52は安全装置51のスイッチ部51aを押圧し、安全装置51がオフになる。
【0038】
図10は、梯子9が収納位置に位置し、安全装置作動用フック52を上方(矢印A方向)へ回動させてスイッチ部51aを押圧した状態を示している。スイッチ部51aが押圧されることにより、安全装置51がオフとなり、安全装置51からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止されている。
【0039】
図9は、梯子9が収納位置に位置する場合に、梯子9を使用位置に移動させるために安全装置作動用フック52を下方(矢印B方向)へ回動させてスイッチ部51aの押圧を解除した状態を示している。スイッチ部51aの押圧が解除されることにより、安全装置51がオンとなり、安全装置51からエレベータ制御装置へ規制信号が出力される。
【0040】
このような構成において、梯子9を収納位置から使用位置に移動させる場合には、梯子9が収納位置に位置している状態において、安全装置作動用フック52を図10に示す位置から下方(矢印B方向)へ回動させなればならない。安全装置作動用フック52がスイッチ部51aを押圧している状態では、ロック機構16(図1〜図3参照)を解除しても、安全装置作動用フック52が安全装置51のスイッチ部51aに引っ掛かっているために梯子9を使用位置へ移動させることができないためである。安全装置作動用フック52を下方へ回動させることにより、図9に示すようにスイッチ部51aの押圧が解除され、安全装置51がオンになる。
【0041】
安全装置51がオンになると、安全装置51からエレベータ制御装置に規制信号が出力され、乗りかごやつり合い重り等の昇降が規制される。
【0042】
このため、梯子9を使用位置に移動させてピット2内での作業を行なっている最中には、乗りかご等が昇降するということを防止することができ、ピット2内での作業の安全性を高めることができる。
【0043】
ピット2内での作業が終了して梯子9を収納位置に移動させた場合には、安全装置作動用フック52を図10において矢印Aで示すように上方へ回動させ、安全装置51のスイッチ部51aを押圧して安全装置51をオフにすることができる。安全装置51がオフになると、安全装置51からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止され、乗りかご等が昇降可能となる。
【0044】
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態のピット梯子装置を、図11に基づいて説明する。
【0045】
第6の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第6の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第5の実施の形態で説明したように、昇降路1内に設けられた可動体の移動、例えば、乗りかごやつり合い重りの昇降を規制する安全装置61が設けられ、梯子9が使用位置に位置する場合に安全装置61を規制状態に切換える切換部材としてガイドローラ11が用いられている点である。
【0046】
安全装置61は、ピット2の底部に取付けられている。この安全装置61はオン・オフ切換え用のスイッチ部61aが設けられ、スイッチ部61aの押圧が解除されて安全装置61がオンに切換えられた場合には、昇降路1内に設けられた可動体である乗りかごやつり合い重りが昇降することを規制する規制信号が安全装置61からエレベータ制御装置(図示せず)に出力される。また、スイッチ部61aが押圧されて安全装置61がオフに切換えられた場合には、安全装置61からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止される。
【0047】
図11において、仮想線で示すガイドローラ11は梯子9が収納位置に位置する場合を示し、実線で示すガイドローラ11は梯子9が使用位置に位置する場合を示している。
【0048】
梯子9が収納位置に位置する場合には、ガイドローラ11が安全装置61のスイッチ部61aを押圧し、安全装置61がオフになり、安全装置61からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止される。
【0049】
梯子9が使用位置に位置する場合には、ガイドローラ11による安全装置61のスイッチ部61aの押圧が解除され、安全装置61がオンになり、安全装置61からエレベータ制御装置へ規制信号が出力される。
【0050】
このような構成において、梯子9を使用位置に移動させた場合には、ガイドローラ11が実線で示す位置に移動し、ガイドローラ11による安全装置61のスイッチ部61aの押圧が解除され、安全装置61がオンになる。
【0051】
安全装置61がオンになると、安全装置61からエレベータ制御装置に規制信号が出力され、乗りかごやつり合い重り等の昇降が規制される。
【0052】
このため、梯子9を使用位置に移動させてピット2内での作業を行なっている最中には、乗りかご等が昇降するということを防止することができ、ピット2内での作業の安全性を高めることができる。
【0053】
ピット2内での作業が終了して梯子9を収納位置に移動させた場合には、ガイドローラ11が仮想線で示す位置に移動し、安全装置61のスイッチ部61aが押圧されて安全装置61がオフになる。安全装置61がオフになると、安全装置61からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止され、乗りかご等が昇降可能となる。
【0054】
本実施の形態によれば、梯子9を使用位置と収容位置とに移動させることにより安全装置61のオン・オフ切換を自動的に行うことができ、安全装置61のオン・オフ切換を忘れるということが発生しない。
【0055】
なお、本実施の形態では、梯子9を使用位置に移動させた場合に、ガイドローラ11による安全装置61のスイッチ部61aの押圧が解除され、安全装置61がオンになり、安全装置61からエレベータ制御装置に規制信号が出力される場合を例に挙げて説明している。しかし、これとは逆に、梯子9を使用位置に移動させた場合にガイドローラ11により押圧される位置に安全装置を設置し、ガイドローラ11により押圧された安全装置からエレベータ制御装置に規制信号を出力する構成としてもよい。
【0056】
図12は、第6の実施の形態の変形例を示すもので、安全装置62をピット2の底部である昇降路1の壁面1aに取付けたものである。この変形例においても、梯子9を使用位置に移動させた場合には、ガイドローラ11が実線で示す位置に移動し、ガイドローラ11による安全装置61のスイッチ部61aの押圧が解除され、安全装置61がオンになる。安全装置61がオンになると、安全装置61からエレベータ制御装置に規制信号が出力され、乗りかごやつり合い重り等の昇降が規制される。
【0057】
ピット2内での作業が終了して梯子9を収納位置に移動させた場合には、ガイドローラ11が仮想線で示す位置に移動し、安全装置62のスイッチ部62aが押圧されて安全装置62がオフになる。安全装置62がオフになると、安全装置62からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止され、乗りかご等が昇降可能となる。
【0058】
(第7の実施の形態)
本発明の第7の実施の形態のピット梯子装置を、図13及び図14に基づいて説明する。
【0059】
第7の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第6の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、梯子9が使用位置に位置する場合、ピット2に出入りする階床(最下階の階床)のホールドア6が閉止されることを防止するホールドア閉止防止装置71が設けられている点である。
【0060】
ホールドア閉止防止装置71は、ホールシル4の下側に設けられた保持体72と、保持体72上にスプリング73を介して保持されたストッパ74と、梯子9を梯子保持体3にロックするためのロックピン14とにより構成されている。
【0061】
梯子9が使用位置に位置する場合には、図14に示すように、ストッパ74はスプリング73により付勢されてホールシル4の上面部から上方へ突出する。これにより、ホールドア6がホールシル4上を閉止位置に移動することを規制することができる。なお、ホールシル4には、ストッパ74が上方へ突出するための開口(図示せず)が形成されている。
【0062】
梯子9が収納位置に位置する場合には、図13に示すように、梯子保持片3bに形成されたロック溝15に係合されたロックピン14の先端部がストッパ74に当接する。ロックピン14がストッパ74に当接することにより、ストッパ74がスプリング73の付勢力に抗して下向きに押し下げられ、ストッパ74がホールシル4の上面部から上方へ突出しないように維持される。
【0063】
このような構成において、梯子9を収納位置に移動し、梯子9を収納位置でロックするためにロックピン14をロック溝15に係合させると、ロックピン14はストッパ74に当接してストッパ74を押し下げ、ストッパ74はホールシル4の上面部から上方へ突出しない状態に維持される。このため、ホールドア6はストッパ74に規制されることなくホールシル4上を移動し、ホールドア6が開閉される。
【0064】
梯子9を使用位置に移動させる場合には、ロックピン14をロック溝15への係合が解除される位置へ回動させる。
【0065】
ロックピン14をロック溝15への係合が解除される位置へ回動させると、ストッパ74へのロックピン14の当接が解除され、ストッパ74はスプリング73の付勢力によりホールシル4の上面部から上方へ突出する。
【0066】
ストッパ74がホールシル4の上面部から上方へ突出することにより、このストッパ74によってホールドア6の閉止位置に移動することが規制される。これにより、ピット2内での作業中にホールドア6が閉止されることを防止することができる。また、ピット2内での作業が終了した後、梯子9を収納位置に移動させることを忘れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態のピット梯子装置を示す正面図である。
【図2】梯子が収納位置に位置する場合のピット梯子装置を示す側面図である。
【図3】梯子が使用位置に位置する場合のピット梯子装置を示す側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態のピット梯子装置の一部を示す正面図である。
【図5】その側面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態のピット梯子装置の一部を示す正面図である。
【図7】その側面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態のピット梯子装置を示す正面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態のピット梯子装置の一部を示す正面図である。
【図10】その側面図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態のピット梯子装置の一部を示す側面図である。
【図12】第6の実施の形態の変形例のピット梯子装置の一部を示す側面図である。
【図13】本発明の第7の実施の形態のピット梯子装置の一部であって、梯子を収納位置に位置させた場合を示す正面図である。
【図14】本発明の第7の実施の形態のピット梯子装置の一部であって、梯子を使用位置に位置させた場合を示す正面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 昇降路
1a 壁面
2 ピット
3 梯子保持体
8 梯子
9 係合部
10 ガイドローラ
15 ロック機構
21 ガイドレール
31 ガイドシュー
32 ガイドレール
41 ワイヤロープ(ロープ)
42 巻取装置
51 安全装置
52 安全装置作動用フック(切換部材)
61 安全装置
71 ホールドア閉止防止装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピット梯子装置に関し、特に、作業のためにピットに降りる場合に使用するピット梯子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、ピットに降りる場合に使用するピット梯子装置が設けられており、例えば、下記特許文献1に記載されたピット梯子装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載されたピット梯子装置は、梯子の上端を固定具により保持することで、使用時の梯子の転倒を防止している。
【特許文献1】実開平4−24576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のピット梯子装置においては、梯子を収納位置から使用位置に移動させる場合に手間がかかっている。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的は、梯子を収納位置から使用位置に移動させる作業を、手間をかけず容易に行なうことができるピット梯子装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、ピット梯子装置において、昇降路の壁面に取付けられた梯子保持体と、前記梯子保持体に上下方向移動可能に係合される係合部を上部に有し、ピットの底部に当接されて前記梯子保持体が取付けられた壁面に対し接離する方向へ移動可能なガイドローラを下部に有し、前記ガイドローラを前記梯子保持体が取付けられた前記壁面に接近させた収納位置と前記ガイドローラを前記梯子保持体が取付けられた前記壁面から離反させた使用位置とに移動可能であり、前記収納位置から前記使用位置へ自重により移動可能な梯子と、収納位置に位置する前記梯子を前記梯子保持体にロックするロック機構と、を備えることである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、梯子を収納位置から使用位置に移動させる作業を、手間をかけず容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0009】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態のピット梯子装置は、図1に示すように、乗りかご(図示せず)が昇降する昇降路1の壁面1aであって、ピット2の近傍に取付けられて上下方向に延出した梯子保持体3を備えている。図1において、4はピット2に出入りする最下階の階床のホールシル、5は最下階の階床において乗りかごに乗り降りするための出入口、6は出入口5を開閉するホールドア、7はフィッシャープレートを示している。
【0010】
梯子保持体3は、一対の梯子保持片3a、3bを平行に対向させて構成されており、梯子保持片3a、3bの上部には上下方向に長い長穴8が形成されている。
【0011】
梯子保持体3には、収納位置と使用位置とに移動可能に梯子9が取付けられている。図1及び図2は収納位置に位置する梯子9を示し、図3は使用位置に位置する梯子9を示している。
【0012】
梯子9の上部には一対の係合部10が取付けられ、これらの係合部10を梯子保持片3a、3bに形成された長穴8に上下方向移動可能に係合させることにより、梯子保持体3への梯子9の取付けが行なわれている。
【0013】
梯子9の下部には、ピット2の底部に当接され、梯子保持体3が取付けられた壁面1aに対して接離する方向へ移動可能な一対のガイドローラ11が回転可能に取付けられている。
【0014】
梯子9には、一端を支軸12により軸支されてこの支軸12の軸心回りに回動可能なアーム13が取付けられている。アーム13の他端には、操作ハンドルを兼ねるロックピン14が取付けられている。
【0015】
梯子保持片3bには、ロックピン14が係合されるロック溝15が形成されている。ロック溝15は、係合部10を長穴8に沿って上方へ移動させることにより梯子9を収納位置に位置させ、アーム13とロックピン14とを支軸12を支点として回動させた場合にロックピン14が係合される位置に形成されている。これらのアーム13、ロックピン14、ロック溝15により、梯子9を収納位置で梯子保持体3にロックするロック機構16が構成されている。
【0016】
また、梯子9が収納位置に位置してロック機構16がロックされている場合に、ロックピン14をロック溝15との係合を解除する位置に回動させてロック機構16のロック状態を解除すると、梯子9は自重で使用位置に向けて移動する。
【0017】
このような構成において、梯子9を使用しない場合には、梯子9は図1及び図2に示すように収納位置でロック機構16によりロックされている。梯子9が収納位置でロックされている場合、ロックピン14がロック溝15に係合され、梯子9は昇降路1における梯子保持体3が取付けられた壁面1aに沿って略起立状態に維持されている。
【0018】
ピット2内での作業を行なうためにピット2内に降りる場合には、図3に示すように梯子9を斜めに傾いた使用位置に移動させる。梯子9が使用位置に位置する場合、ガイドローラ11は壁面1aから離反する位置に移動し、係合部10が長穴8に沿って下方位置へ移動している。
【0019】
収納位置に位置する梯子9を使用位置に移動させる場合には、ホールドア6を開け、ホールシル4と略同じ高さ位置に位置しているロックピン14を回動操作してロック溝15との係合を解除する。
【0020】
これにより、梯子9が使用位置に向けて自重により自動的に移動し、ガイドローラ11が壁面1aから離反する方向に移動するとともに係合部10が長穴8内を下方へ移動する。
【0021】
したがって、収納位置に位置する梯子9を使用位置に移動させる場合には、ロック機構16のロック状態を解除するだけでよく、梯子9は自重によって自動的に使用位置に移動する。このため、収納位置に位置する梯子9を使用位置に移動させる作業を手間をかけずに容易に行なうことができる。
【0022】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態のピット梯子装置を、図4及び図5に基づいて説明する。なお、第2の実施の形態及びこれ以降の他の実施の形態において、第1の実施の形態において説明した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0023】
第2の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、ピット2の底部に、ガイドローラ11を移動方向に沿ってガイドする一対のガイドレール21が設けられている点である。
【0024】
ガイドレール21は、断面形状がL字型に形成され、ガイドローラ11により踏圧される底面部21aと、ガイドローラ11の外側面を覆う側面部21bとを有している。
【0025】
このような構成において、梯子9を収納位置から使用位置に移動させる場合には、ガイドローラ11はガイドレール21の側面部21bに沿って案内されるため、梯子9を使用位置に移動させる場合、及び、作業員が梯子9を使用してピット2に降りる場合、ガイドローラ11の横揺れが防止され、及び、ガイドローラ11の横揺れが原因となる梯子9のぐらつきを抑えることができる。
【0026】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態のピット梯子装置を、図6及び図7に基づいて説明する。
【0027】
第3の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第3の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1の実施の形態で説明したガイドローラ11に代えて、ガイドシュー31が用いられている点と、ガイドシュー31の溝31aが係合するガイドレール32がピット2の底部に設けられけている点である。
【0028】
このような構成において、梯子9を収納位置から使用位置に移動させる場合には、溝31aをガイドレール32に係合させたガイドシュー31がガイドレール32に沿って移動する。このため、梯子9を使用位置に移動させる場合、及び、作業員が梯子9を使用してピット2に降りる場合、梯子9のぐらつきをより一層抑えることができる。
【0029】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態のピット梯子装置を、図8に基づいて説明する。
【0030】
第4の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第4の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1の実施の形態に対し、梯子9の上端部に連結されたロープであるワイヤロープ41と、このワイヤロープ41を巻き取ることにより使用位置に位置する梯子9を収納位置に移動させる巻取装置42とが設けられている点である。
【0031】
このような構成において、収納位置に位置する梯子9を使用位置に移動させる場合には、第1の実施の形態で説明したように、ロックピン14を回動操作してロック溝15との係合を解除し、略起立状態となっている梯子9をガイドローラ11が壁面1aから離反する方向へ移動させる。
【0032】
ピット2内での作業が終了した後、使用位置に位置する梯子9を収納位置に戻す場合には、巻取装置42を操作してワイヤロープ41を巻き取る。ワイヤロープ41を巻き取ることにより、使用位置に位置する梯子9が収納位置に向けて次第に移動する。梯子9が収納位置に移動した後、ロックピン14をロック溝15に係合させ、梯子9を収納位置で梯子保持体3にロックする。
【0033】
したがって、ワイヤロープ41と巻取装置42とを設けることにより、梯子9を使用位置から収納位置へ移動させる作業を、手間をかけず容易に行なうことができ、しかも、梯子9を収納する作業の安全性を高めることができる。
【0034】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態のピット梯子装置を、図9及び図10に基づいて説明する。
【0035】
第5の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第5の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、昇降路1内に設けられた可動体の移動、例えば、乗りかごやつり合い重りの昇降を規制する安全装置51と、梯子9が使用位置に位置する場合に安全装置51を規制状態に切換える切換部材である安全装置作動用フック52とが設けられている点である。
【0036】
安全装置51は、梯子保持片3a、3bの上端部を連結して設けられた安全装置設置フレーム53に取付けられている。この安全装置51にはオン・オフ切換え用のスイッチ部51aが設けら、スイッチ部51aの押圧が解除されて安全装置51がオンに切換えられた場合には、昇降路1内に設けられた可動体である乗りかごやつり合い重りが昇降することを規制する規制信号が安全装置51からエレベータ制御装置(図示せず)に出力される。また、スイッチ部51aが押圧されて安全装置51がオフに切換えられた場合には、安全装置51からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止される。
【0037】
安全装置作動用フック52は、梯子9の上端部の横梁部54に上下方向回動可能に取付けられている。梯子9が収納位置に位置する場合に安全装置作動用フック52を上方へ回動させると、安全装置作動用フック52は安全装置51のスイッチ部51aを押圧し、安全装置51がオフになる。
【0038】
図10は、梯子9が収納位置に位置し、安全装置作動用フック52を上方(矢印A方向)へ回動させてスイッチ部51aを押圧した状態を示している。スイッチ部51aが押圧されることにより、安全装置51がオフとなり、安全装置51からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止されている。
【0039】
図9は、梯子9が収納位置に位置する場合に、梯子9を使用位置に移動させるために安全装置作動用フック52を下方(矢印B方向)へ回動させてスイッチ部51aの押圧を解除した状態を示している。スイッチ部51aの押圧が解除されることにより、安全装置51がオンとなり、安全装置51からエレベータ制御装置へ規制信号が出力される。
【0040】
このような構成において、梯子9を収納位置から使用位置に移動させる場合には、梯子9が収納位置に位置している状態において、安全装置作動用フック52を図10に示す位置から下方(矢印B方向)へ回動させなればならない。安全装置作動用フック52がスイッチ部51aを押圧している状態では、ロック機構16(図1〜図3参照)を解除しても、安全装置作動用フック52が安全装置51のスイッチ部51aに引っ掛かっているために梯子9を使用位置へ移動させることができないためである。安全装置作動用フック52を下方へ回動させることにより、図9に示すようにスイッチ部51aの押圧が解除され、安全装置51がオンになる。
【0041】
安全装置51がオンになると、安全装置51からエレベータ制御装置に規制信号が出力され、乗りかごやつり合い重り等の昇降が規制される。
【0042】
このため、梯子9を使用位置に移動させてピット2内での作業を行なっている最中には、乗りかご等が昇降するということを防止することができ、ピット2内での作業の安全性を高めることができる。
【0043】
ピット2内での作業が終了して梯子9を収納位置に移動させた場合には、安全装置作動用フック52を図10において矢印Aで示すように上方へ回動させ、安全装置51のスイッチ部51aを押圧して安全装置51をオフにすることができる。安全装置51がオフになると、安全装置51からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止され、乗りかご等が昇降可能となる。
【0044】
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態のピット梯子装置を、図11に基づいて説明する。
【0045】
第6の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第6の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第5の実施の形態で説明したように、昇降路1内に設けられた可動体の移動、例えば、乗りかごやつり合い重りの昇降を規制する安全装置61が設けられ、梯子9が使用位置に位置する場合に安全装置61を規制状態に切換える切換部材としてガイドローラ11が用いられている点である。
【0046】
安全装置61は、ピット2の底部に取付けられている。この安全装置61はオン・オフ切換え用のスイッチ部61aが設けられ、スイッチ部61aの押圧が解除されて安全装置61がオンに切換えられた場合には、昇降路1内に設けられた可動体である乗りかごやつり合い重りが昇降することを規制する規制信号が安全装置61からエレベータ制御装置(図示せず)に出力される。また、スイッチ部61aが押圧されて安全装置61がオフに切換えられた場合には、安全装置61からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止される。
【0047】
図11において、仮想線で示すガイドローラ11は梯子9が収納位置に位置する場合を示し、実線で示すガイドローラ11は梯子9が使用位置に位置する場合を示している。
【0048】
梯子9が収納位置に位置する場合には、ガイドローラ11が安全装置61のスイッチ部61aを押圧し、安全装置61がオフになり、安全装置61からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止される。
【0049】
梯子9が使用位置に位置する場合には、ガイドローラ11による安全装置61のスイッチ部61aの押圧が解除され、安全装置61がオンになり、安全装置61からエレベータ制御装置へ規制信号が出力される。
【0050】
このような構成において、梯子9を使用位置に移動させた場合には、ガイドローラ11が実線で示す位置に移動し、ガイドローラ11による安全装置61のスイッチ部61aの押圧が解除され、安全装置61がオンになる。
【0051】
安全装置61がオンになると、安全装置61からエレベータ制御装置に規制信号が出力され、乗りかごやつり合い重り等の昇降が規制される。
【0052】
このため、梯子9を使用位置に移動させてピット2内での作業を行なっている最中には、乗りかご等が昇降するということを防止することができ、ピット2内での作業の安全性を高めることができる。
【0053】
ピット2内での作業が終了して梯子9を収納位置に移動させた場合には、ガイドローラ11が仮想線で示す位置に移動し、安全装置61のスイッチ部61aが押圧されて安全装置61がオフになる。安全装置61がオフになると、安全装置61からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止され、乗りかご等が昇降可能となる。
【0054】
本実施の形態によれば、梯子9を使用位置と収容位置とに移動させることにより安全装置61のオン・オフ切換を自動的に行うことができ、安全装置61のオン・オフ切換を忘れるということが発生しない。
【0055】
なお、本実施の形態では、梯子9を使用位置に移動させた場合に、ガイドローラ11による安全装置61のスイッチ部61aの押圧が解除され、安全装置61がオンになり、安全装置61からエレベータ制御装置に規制信号が出力される場合を例に挙げて説明している。しかし、これとは逆に、梯子9を使用位置に移動させた場合にガイドローラ11により押圧される位置に安全装置を設置し、ガイドローラ11により押圧された安全装置からエレベータ制御装置に規制信号を出力する構成としてもよい。
【0056】
図12は、第6の実施の形態の変形例を示すもので、安全装置62をピット2の底部である昇降路1の壁面1aに取付けたものである。この変形例においても、梯子9を使用位置に移動させた場合には、ガイドローラ11が実線で示す位置に移動し、ガイドローラ11による安全装置61のスイッチ部61aの押圧が解除され、安全装置61がオンになる。安全装置61がオンになると、安全装置61からエレベータ制御装置に規制信号が出力され、乗りかごやつり合い重り等の昇降が規制される。
【0057】
ピット2内での作業が終了して梯子9を収納位置に移動させた場合には、ガイドローラ11が仮想線で示す位置に移動し、安全装置62のスイッチ部62aが押圧されて安全装置62がオフになる。安全装置62がオフになると、安全装置62からエレベータ制御装置への規制信号の出力が停止され、乗りかご等が昇降可能となる。
【0058】
(第7の実施の形態)
本発明の第7の実施の形態のピット梯子装置を、図13及び図14に基づいて説明する。
【0059】
第7の実施の形態のピット梯子装置の基本的な構成は、第1の実施の形態のピット梯子装置と同じである。第6の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、梯子9が使用位置に位置する場合、ピット2に出入りする階床(最下階の階床)のホールドア6が閉止されることを防止するホールドア閉止防止装置71が設けられている点である。
【0060】
ホールドア閉止防止装置71は、ホールシル4の下側に設けられた保持体72と、保持体72上にスプリング73を介して保持されたストッパ74と、梯子9を梯子保持体3にロックするためのロックピン14とにより構成されている。
【0061】
梯子9が使用位置に位置する場合には、図14に示すように、ストッパ74はスプリング73により付勢されてホールシル4の上面部から上方へ突出する。これにより、ホールドア6がホールシル4上を閉止位置に移動することを規制することができる。なお、ホールシル4には、ストッパ74が上方へ突出するための開口(図示せず)が形成されている。
【0062】
梯子9が収納位置に位置する場合には、図13に示すように、梯子保持片3bに形成されたロック溝15に係合されたロックピン14の先端部がストッパ74に当接する。ロックピン14がストッパ74に当接することにより、ストッパ74がスプリング73の付勢力に抗して下向きに押し下げられ、ストッパ74がホールシル4の上面部から上方へ突出しないように維持される。
【0063】
このような構成において、梯子9を収納位置に移動し、梯子9を収納位置でロックするためにロックピン14をロック溝15に係合させると、ロックピン14はストッパ74に当接してストッパ74を押し下げ、ストッパ74はホールシル4の上面部から上方へ突出しない状態に維持される。このため、ホールドア6はストッパ74に規制されることなくホールシル4上を移動し、ホールドア6が開閉される。
【0064】
梯子9を使用位置に移動させる場合には、ロックピン14をロック溝15への係合が解除される位置へ回動させる。
【0065】
ロックピン14をロック溝15への係合が解除される位置へ回動させると、ストッパ74へのロックピン14の当接が解除され、ストッパ74はスプリング73の付勢力によりホールシル4の上面部から上方へ突出する。
【0066】
ストッパ74がホールシル4の上面部から上方へ突出することにより、このストッパ74によってホールドア6の閉止位置に移動することが規制される。これにより、ピット2内での作業中にホールドア6が閉止されることを防止することができる。また、ピット2内での作業が終了した後、梯子9を収納位置に移動させることを忘れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態のピット梯子装置を示す正面図である。
【図2】梯子が収納位置に位置する場合のピット梯子装置を示す側面図である。
【図3】梯子が使用位置に位置する場合のピット梯子装置を示す側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態のピット梯子装置の一部を示す正面図である。
【図5】その側面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態のピット梯子装置の一部を示す正面図である。
【図7】その側面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態のピット梯子装置を示す正面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態のピット梯子装置の一部を示す正面図である。
【図10】その側面図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態のピット梯子装置の一部を示す側面図である。
【図12】第6の実施の形態の変形例のピット梯子装置の一部を示す側面図である。
【図13】本発明の第7の実施の形態のピット梯子装置の一部であって、梯子を収納位置に位置させた場合を示す正面図である。
【図14】本発明の第7の実施の形態のピット梯子装置の一部であって、梯子を使用位置に位置させた場合を示す正面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 昇降路
1a 壁面
2 ピット
3 梯子保持体
8 梯子
9 係合部
10 ガイドローラ
15 ロック機構
21 ガイドレール
31 ガイドシュー
32 ガイドレール
41 ワイヤロープ(ロープ)
42 巻取装置
51 安全装置
52 安全装置作動用フック(切換部材)
61 安全装置
71 ホールドア閉止防止装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路の壁面に取付けられた梯子保持体と、
前記梯子保持体に上下方向移動可能に係合される係合部を上部に有し、ピットの底部に当接されて前記梯子保持体が取付けられた壁面に対し接離する方向へ移動可能なガイドローラを下部に有し、前記ガイドローラを前記梯子保持体が取付けられた前記壁面に接近させた収納位置と前記ガイドローラを前記梯子保持体が取付けられた前記壁面から離反させた使用位置とに移動可能であり、前記収納位置から前記使用位置へ自重により移動可能な梯子と、
収納位置に位置する前記梯子を前記梯子保持体にロックするロック機構と、
を備えることを特徴とするピット梯子装置。
【請求項2】
前記ピットの底部に、前記ガイドローラを移動方向に沿ってガイドするガイドレールを備えることを特徴とする請求項1記載のピット梯子装置。
【請求項3】
前記ガイドローラに代えてガイドシューを備えることを特徴とする請求項1又は2記載のピット梯子装置。
【請求項4】
前記梯子に連結されたロープと、このロープを巻き取ることにより前記梯子を前記使用位置から前記収納位置に移動させる巻取装置とを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のピット梯子装置。
【請求項5】
前記昇降路内に設けられた可動体の移動を規制する安全装置と、
前記梯子が前記使用位置に位置する場合に前記安全装置を規制状態に切換える切換部材と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のピット梯子装置。
【請求項6】
前記安全装置は前記梯子保持体に設けられ、
前記切換部材は、前記安全装置を押圧する位置とこの押圧を解除する位置とに回動可能に前記梯子に設けられ、前記梯子を使用位置に移動させる場合には前記安全装置の押圧を解除する位置へ回動されるとともにこの回動により前記安全装置を規制状態に切換える安全装置作動用フックであることを特徴とする請求項5記載のピット梯子装置。
【請求項7】
前記安全装置は前記ピットの底部に設けられ、
前記切換部材は、前記梯子が前記収納位置又は前記使用位置に移動した場合に前記安全装置を押圧し又は押圧を解除する位置へ移動するとともにこの移動により前記安全装置を規制状態に切換える前記ガイドローラ又は前記ガイドシューであることを特徴とする請求項5記載のピット梯子装置。
【請求項8】
前記梯子が使用位置に位置する場合に、前記ピットに出入りする階床のホールドアが閉止されることを防止するホールドア閉止防止装置を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載のピット梯子装置。
【請求項1】
昇降路の壁面に取付けられた梯子保持体と、
前記梯子保持体に上下方向移動可能に係合される係合部を上部に有し、ピットの底部に当接されて前記梯子保持体が取付けられた壁面に対し接離する方向へ移動可能なガイドローラを下部に有し、前記ガイドローラを前記梯子保持体が取付けられた前記壁面に接近させた収納位置と前記ガイドローラを前記梯子保持体が取付けられた前記壁面から離反させた使用位置とに移動可能であり、前記収納位置から前記使用位置へ自重により移動可能な梯子と、
収納位置に位置する前記梯子を前記梯子保持体にロックするロック機構と、
を備えることを特徴とするピット梯子装置。
【請求項2】
前記ピットの底部に、前記ガイドローラを移動方向に沿ってガイドするガイドレールを備えることを特徴とする請求項1記載のピット梯子装置。
【請求項3】
前記ガイドローラに代えてガイドシューを備えることを特徴とする請求項1又は2記載のピット梯子装置。
【請求項4】
前記梯子に連結されたロープと、このロープを巻き取ることにより前記梯子を前記使用位置から前記収納位置に移動させる巻取装置とを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のピット梯子装置。
【請求項5】
前記昇降路内に設けられた可動体の移動を規制する安全装置と、
前記梯子が前記使用位置に位置する場合に前記安全装置を規制状態に切換える切換部材と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のピット梯子装置。
【請求項6】
前記安全装置は前記梯子保持体に設けられ、
前記切換部材は、前記安全装置を押圧する位置とこの押圧を解除する位置とに回動可能に前記梯子に設けられ、前記梯子を使用位置に移動させる場合には前記安全装置の押圧を解除する位置へ回動されるとともにこの回動により前記安全装置を規制状態に切換える安全装置作動用フックであることを特徴とする請求項5記載のピット梯子装置。
【請求項7】
前記安全装置は前記ピットの底部に設けられ、
前記切換部材は、前記梯子が前記収納位置又は前記使用位置に移動した場合に前記安全装置を押圧し又は押圧を解除する位置へ移動するとともにこの移動により前記安全装置を規制状態に切換える前記ガイドローラ又は前記ガイドシューであることを特徴とする請求項5記載のピット梯子装置。
【請求項8】
前記梯子が使用位置に位置する場合に、前記ピットに出入りする階床のホールドアが閉止されることを防止するホールドア閉止防止装置を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載のピット梯子装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−64869(P2010−64869A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233735(P2008−233735)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
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