説明

ピペット装置の正確な位置決めのための方法および装置

【課題】 自動分析装置の一部であるピペット針についての基準位置を決定するための方法を提供する。
【解決手段】(i)移送装置によりもたらされるピペット針(72)の変位の第1の変位誤差(ΔX)を測定するための第1の測定ステップと、(ii)該ピペット針の初期角位置の誤差(φ)と対応する修正により前記第1の変位誤差(ΔX)を修正するための第1の修正ステップと、(iii)垂直面に対し垂直な第2の方向(Y軸)でのピペット針の変位における第2の変位誤差(ΔY)を測定するための第2の測定ステップと、(iv)円形路に沿うピペット針の角位置の対応する角度変化(α)により第2の変位誤差(ΔY)を修正するための第2の修正ステップと、(v)垂直基準ラインの位置を決定するための第3の測定ステップと、(vi)前記基準ラインに沿う基準点(X、YおよびZ)の位置を決定するための第4の測定ステップとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置の一部であるピペット針の基準位置を判定するための方法に関する。更に、本発明は、この方法を実施するための手段を有する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置、特に臨床化学分析装置は、自動ピペットユニットを有し、これを用いてピペット操作を複数の所定位置において行うようになっている。この分析装置の製造においてピペット針の位置の完全な機械的調整を行った後においても、この分析装置の種々の部材の製造許容誤差の和および針の経時的変形によりピペット針の位置にずれを生じさせ、そのため、自動ピペットユニットの搬送装置によりピペット針を予定されている所定のピペット操作位置に正しく整合させることが困難になってしまう。従って、ピペット針を所定のピペット操作位置に正しく整合させるために、この分析装置の操作には初期化プロセスが必要であり、これを分析装置の操作の開始毎に行う必要があり、これはピペット針を基準、初期又はホームポジションに位置決めするのに適している。このホームポジションはデカルト系においては、ピペット針の先端の座標、X、YおよびZにより表され、更にピペット針のゼロポジションとも呼ばれるものである。この後者の基準位置がいったん決定されると、ピペット針の搬送システムがこの針を各ピペット操作位置に正確に位置決めされるようになっている。
【0003】
特に、ピペット針を比較的小さな断面を有する容器に導入する必要があり、かつ、ピペット操作位置相互間の距離が比較的大きなコンパクトな分析装置においては、上述のような初期化プロセスの高信頼性のものが強く望まれている。
【0004】
このような高信頼性の初期化プロセスを提供するための仕事は、搬送装置を直線、例えばX方向のみに沿って移動させる場合に、更に、全てのピペット操作位置がピペット針のこのような直線的移動路に位置している場合に特に困難である。更に、ピペット操作を行うために容器内に導入されるピペット針の部分を、この容器に導入された複数の液体を混合するためこの容器内の円形路に沿って移動させるようにする場合は、この高信頼性の初期化プロセスの達成は、いっそうより困難となる。この後者の場合、ピペット針および装置の極めて正確な整合が求められる。
【0005】
公知の初期化法は比較的高価な手段を必要とするものである。従って、上述のような状況下でも信頼性を確保することができ、しかも安価に達成することができるような初期化法が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は自動分析装置の一部であるピペット針の基準位置を決定するための方法を提供することである。
【0007】
本発明の第2の目的は本発明の方法を実施するための手段を含む分析装置を提供することである。
【0008】
本発明の第3の目的は本発明の方法を実施するための手段を含む分析装置の使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による自動分析装置の一部であるピペット針の基準位置を決定するための方法は、自動分析装置の一部であるピペット針の基準位置を決定するための方法であって、この自動分析装置が、(a)反応用キュベット(31)を円形路に沿って移送するための回転自在なコンベア(11)と、(b)該コンベアを段階的に回転させるためのコンベア駆動手段(22)と、(c)サンプルおよび試薬をピペットにより反応用キュベット(31)へ移し、サンプル−試薬混合物を形成するためのピペット針(72)を備えた自動ピペットユニット(71)であって、この自動ピペットユニット(71)が針移送装置を有し、これが前記ピペット針をまっすぐなラインに沿って第1の方向(X軸)に、複数のピペット操作位置まで移動させるものであり、これらのピペット操作位置の全てが、前記のまっすぐなラインを通る1つの同一の垂直面内(X−Z面)にあり、前記針移送装置が、ピペット針を円形路に沿って移動させ、かつ、該針の長手方向軸を垂直軸と平行に保つための偏心機構を有するものと、(d)前記ピペット針の、容器内の液面との接触、又は分析装置の金属部分との接触を検出するためのレベル検出手段と、(e)基準位置を決定するための基準部材(321)と、を具備してなり;前記方法が、(i)前記移送装置によりもたらされるまっすぐなラインに沿う第1の方向(X軸)におけるピペット針の変位の第1の変位誤差(ΔX)を測定するための第1の測定ステップであって、この第1の変位誤差(ΔX)が、前記偏心機構により決定される円形路に沿うピペット針の最初の角位置の対応する第1の角誤差(φ)に起因するものであり、該第1の測定ステップがピペット針の前記偏心機構を作動させ、該針を前記基準部材と接触させることを含むものと、(ii)該ピペット針の初期角位置の誤差(φ)と対応する修正により前記変位誤差(ΔX)を修正するための第1の修正ステップと、(iii)前記垂直面に対し垂直な第2の方向(Y軸)でのピペット針の変位における第2の変位誤差(ΔY)を測定するための第2の測定ステップであって、この第2の変位誤差(ΔY)が、偏心機構により決定される円形路に沿うピペット針の最初の角位置の対応する第2の角誤差(α)に起因するものであり、該第2の測定ステップがピペット針の前記偏心機構を作動させ、該ピペット針を前記基準部材と接触させることを含むものと、(iv)円形路に沿うピペット針の角位置の対応する角度変化(α)により第2の変位誤差(ΔY)を修正するための第2の修正ステップと、(v)垂直基準ラインの位置を決定するための第3の測定ステップであって、この基準ラインが、装置内の固定した第1の基準面にピペット針が接触するラインであり、この第1の基準面が、前記第1の方向(X軸)での前記直線に垂直な面(Y−Z)内にあるものと、(vi)前記基準ラインに沿う基準点(X、YおよびZ)の位置を決定するための第4の測定ステップであって、この基準点が、前記ピペット針の先端が装置内の固定した第2の基準面に接触する点であり、この第2の基準面が、前記基準線に垂直な面(X−Z面と平行な面)内にあるものと、を具備してなることを特徴とする、自動分析装置の一部であるピペット針の基準位置を決定するための方法である。この本発明の方法により、上記する第1の目的が達成される。
【0010】
また、本発明による自動分析装置は、(a)反応用キュベット(31)を円形路に沿って移送するための回転自在なコンベア(11)と、(b)該コンベアを段階的に回転させるためのコンベア駆動手段(22)と、(c)サンプルおよび試薬をピペットにより反応用キュベット(31)へ移し、サンプル−試薬混合物を形成するためのピペット針(72)を備えた自動ピペットユニット(71)であって、この自動ピペットユニット(71)が針移送装置を有し、これが前記ピペット針をまっすぐなラインに沿って、複数のピペット操作位置まで移動させるものであり、これらのピペット操作位置の全てが、前記のまっすぐなラインを通る1つの同一の垂直面内にあり、前記針移送装置が、ピペット針を円形路に沿って移動させ、かつ、該針の長手方向軸を垂直軸と平行に保つための偏心機構を有するものと、(d)前記ピペット針の、容器内の液面との接触、又は分析装置の金属部分との接触を検出するためのレベル検出手段と、(e)請求項1記載の方法により、前記ピペット針のための基準位置を決定し、該ピペット針を該基準位置に位置決めするための基準部材(321)と、(f)前記コンベア駆動手段、前記針移送装置、前記レベル検出手段、および前記ピペット針のための基準位置を決定し、該ピペット針を該基準位置に位置決めするための手段、の各操作を制御するための電子回路手段と、を具備してなることを特徴とする。この本発明の装置により、上記する第2の目的は達成される。
【0011】
さらに、本発明による前記自動分析装置の使用方法は、前記自動分析装置の使用方法であって、前記方法により前記ピペット針を該基準位置に位置決めしたのち、前記コンベア(11)上の反応用キュベット(31)の位置との関連で該ピペット針の位置の変化を考慮して該コンベア(11)の角位置を変更すること、ここで、該位置の変化は請求項1に記載の方法を実施するときに導入されるものである;前記コンベア(11)の角位置の変更が、該コンベアの角位置の変化(δ)であり、該変化(δ)が前記第1の変位誤差(ΔX)および第2の変位誤差(ΔY)を考慮して計算されるものである;ことを特徴とする。この本発明の装置の使用方法により、上記する第3の目的は達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明による方法および装置で得られる主な利点は、以下のことを可能にすることである。すなわち、信頼性を有する初期化方法を低コストで達成することができることである。なぜならば、他の目的のために分析装置で利用可能な手段、すなわち、ピペット針を円形路に沿って移動させることにより液体の混合を行うのに主として使用される偏心機構を使用するとともに、ピペット操作の間にピペット針の液体表面との接触を感知するために主に使用される液面検出手段を使用するからである。更に、複数のピペット位置にピペット針を正確に位置させることができることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、図面を参照して好ましい実施例について説明する。これら実施例は本発明の理解を助けるためのものであり、限定を意図するものと解釈されるべきではない。
【0014】
(本発明にかかる分析装置の例)
図1には、本発明にかかる分析装置、例えば、反応用キュベットに収容されているサンプル−試薬混合物のための臨床化学分析装置が示されている。この図1に示す分析装置は、対応するキャビティにそれぞれ挿入された反応用キュベット31を円形路に沿って搬送するための回転可能なコンベア11と、反応用キュベット31の少なくとも1列と、前記コンベアの中心部に配置された中空体51(図13に示されている)と、中空体51のキャビティ54内に設置された試薬容器アッセンブリー61と、コンベア11に隣接して設けられた試料管領域18と、自動ピペットユニット71と、コンベア11に隣接して設けられた光度計21と、コンベア11を回転させるためのコンベア駆動手段22と、を具備している。
【0015】
図3はコンベア11の回転軸25を示している。
【0016】
反応用キュベット31はコンベア11の前記キャビティ内に挿入され、特に図4ないし7を参照して以下に説明するキュベットホルダー41によりゆるく保持されている。すなわち、このキュベットホルダー41は複数の反応用キュベット31をゆるく保持している。このキュベットホルダー41およびこのキュベットホルダー41により保持された反応用キュベット31により、キュベット列が形成されている。この分析装置は、少なくとも1つのこのような列を含むものである。通常、複数のこのようなキュベット列の反応用キュベットはコンベア11の対応するキャビティ内に設置される。図1に示す例においては、コンベア11は、6個のキュベット列に配設された60個の反応用キュベットを受理するためのキャビティを有し、各キュベット列は10個の反応用キュベットを有する。
【0017】
キュベットホルダー41は反応用キュベット31の列を保持するのに使用される。このキュベットホルダー41は接続部44を有し、これはコンベアの壁部15の開口部16内に挿入されるようになっていて、それによりキュベットホルダー41をコンベア11に接続するようになっている。図2に示すように、この接続部44と、壁部15の開口部16との相対的位置は、接続部44がこの開口部16内に挿入されたとき、キュベットホルダー41により保持された複数の反応用キュベット31がコンベア11の第1のリング状本体12の対応するキャビティ13内にそれぞれ挿入されるようになっている。
【0018】
図2および3に示すように、コンベア11は第1のリング状本体12と、第2のリング状本体14とを有する。第1のリング状本体12はキャビティ13の円形配列を有し、そのキャビティ13の夫々が図8ないし10を参照して以下に記載するタイプの単一の反応用キュベット31を受理するようになっている。第1のリング状本体12は、好ましくは適当な金属から作られる。
【0019】
第2のリング状本体14は第1のリング状本体12の内壁から上方に延びた壁部15を有する。この壁部15は開口部16を有し、その夫々がキュベットホルダー41の対応する接続部44を受理するようになっている。この第2のリング状本体14は、その内部にチャンバー17を画成している。
【0020】
図12は、試薬容器アッセンブリー61を取り出したときの図1に示す分析装置のコンベア部分の平面図を示している。図13は、図12のH−H面に沿う断面図である。
【0021】
図13に示すように、中空体51が、第2のリング状本体14内のチャンバー17内に配置されている。この中空体51は、例えばバケツの形状をなし、底面52と、側壁53とを有し、それによりチャンバー54が画成されている。
【0022】
図11は、図1に示す分析装置から取り出した状態の試薬容器アッセンブリー61の斜視図を示している。この試薬容器アッセンブリー61は、中空体51のチャンバー54内にその下部が位置するようになっている。
【0023】
図14は、分析装置に装着されたときの試薬容器アッセンブリー61の斜視図であって、カバーが取り除かれ、試薬容器も収容されていない状態を示す。図15は、図14に示す装置の一部の拡大図である。図16および17から明らかなように、試薬容器アッセンブリー61は試薬容器を受理するための2つの同心チャンバー列を有するハウジングを備えている。
【0024】
図16は、図1に示す分析装置のコンベア部分、更に、特に試薬容器を装填する前の試薬容器アッセンブリー61の平面図を示している。
【0025】
図17は試薬容器62の斜視図を示している。
【0026】
図18は図16のI−I面に沿う断面図を示している。
【0027】
図18に示すように、試薬容器アッセンブリー61は、図17に示す試薬容器62と同様の試薬容器63,64を受理するための複数のチャンバー65,66を有している。これら試薬容器は夫々、特定の液状試薬を収容するものである。各試薬容器は自動読み取り可能なラベル(例えばバーコードラベル)(不図示)を貼付しており、それにより試薬容器内に収容されている特定の試薬を識別できるようにしている。
【0028】
試料管領域18は、分析装置内に恒久的に設置された架台を備えている。この架台には数個のキャビティ19が形成されていて、その夫々が分析すべき液体サンプルを収容した試料管を受理するようになっている。
【0029】
自動ピペットユニット71は、この分析装置における、あらゆるピペット操作を行うのに適したものであり、例えば、試料管領域18中の試料管から分取したサンプルをピペットを用いてコンベア11内の反応用キュベット31へ移すこと、試薬容器アッセンブリー61中の試薬容器62から分取した試薬をピペットを用いてコンベア11内の反応用キュベット31へ移すことなどである。これらのピペット操作の後において、反応用キュベットには、サンプル−試薬混合物が収容されたものとなる。
【0030】
自動ピペットユニット71は、着脱自在に装着されたピペット針72と、図1に示すX方向に延びたレール73上に装着された移送装置とを具備している。この移送装置はピペット針72を2つの様式で移動させる。すなわち、例えば、ピペット針72をピペット操作位置に持っていくためX方向の直線路に沿う移動、および例えば、反応用キュベット内に収容された液体にピペット針72の先端を浸漬させる場合の円形路に沿う移動である。ピペット針72の後者の円形移動は、ピペット針72の前記移送装置の一部である偏心機構により達成される。この偏心機構はピペット針の先端を円形路に沿って移動させるようになっているが、ピペット針72の長手方向軸は図1に示すZ方向に維持される。このピペット針72の円形移動は、例えば、液体サンプルと、反応用キュベットへピペットにより移された試薬とを反応用キュベット31内で混合するために行われる。この混合の目的のため、このピペット針72の円形移動は、ピペット針72の先端を、反応用キュベット31内に収容されたサンプル−試薬混合物中に部分的に浸漬させた状態で行われる。
【0031】
前記偏心機構には、その最初の位置を粗く調整するための遮光装置が含まれ、それにより、この偏心機構により画成された円形路における、例えば、12時の位置にピペット針72が最初の位置として確定されるようになっている。
【0032】
図19は、コンベア11のキャビティ13内に挿入された反応用キュベット31およびその中に配設されたピペット針72の断面図を示している。
【0033】
図1,13,15,17,23に示すように、光度計21がコンベア11近傍に配置されていて、反応用キュベット31内に収容された液体サンプル−試薬混合物の光度測定を行うようになっている。この目的のため、コンベア11の駆動手段22によりコンベア11を段階的に回転させ、光度計21の光線の光路24に各反応用キュベット31が正確に位置決めされ、この光線が、光度計で測定されるべきサンプル−試薬混合物を収容したキュベットの下部の中心を通過するようにしている。
【0034】
このコンベア駆動手段は、コンベア11を段階的に回転させるための手段を含んでいる。このコンベア駆動手段は、例えば、コンベア11の歯車22を駆動させるベルト駆動(図示しない)および反応用キュベット31の夫々に収容されたサンプル−試薬混合物の正確な光度測定を行うのに適した正確な角位置にコンベア11を位置決めするための他の適当な手段を含むものである。
【0035】
図1に示す分析装置は更に、分析装置の操作を制御するため、並びに操作の制御および調整を要する分析装置の全ての部材を制御するための電気および電子部材、並びにハードウエアおよびソフトウエアを有する。例えば、自動ピペットユニット71、光度計21、分析装置内に存在するサンプルおよび試薬の管理、分析結果および関連する情報の評価および表示の制御のための電気および電子部材、並びにハードウエアおよびソフトウエアである。
【0036】
図1に示す分析装置の好ましい例のものは、ピペット針72のための基準位置を決定するため、および分析装置の操作の各開始時点でピペット針72をこの基準位置に配置するための後述の初期化方法を実施するための手段を有している。
【0037】
(反応用キュベットの例)
図8は、上述のタイプの分析装置で使用されるに好ましいタイプの反応用キュベット31の斜視図を示している。図9は、図8の反応用キュベット31の第1の側面図を示している。図10は、図8の反応用キュベット31の第2の側面図を示している。この反応用キュベット31は、プラスチック材料の射出成形により成形された一個構成の使い捨て部材であり、このプラスチック材料は反応用キュベット31に収容されたサンプル−試薬混合物の光度測定を行うのに適したものが使用される。
【0038】
反応用キュベット31がコンベア11のキャビティ内に挿入されたとき、反応用キュベット31は垂直状態に維持される。
【0039】
図8ないし10に示すように、反応用キュベット31は、その両端に存在する下端部33と、上端部34との間に延びた直線状管体32を有する。この下端部33は底面35により閉塞されている。上端部34は開口部36で終わっていて、この開口部36に隣接した2つの舌片37,38を有する。これら舌片37,38は管体32の第2の端部34から外側に向けて互いに反対方向に延びている。反応用キュベット31は長手方向の対称軸39を有する。
【0040】
(キュベット列の例)
上述のタイプの分析装置での使用に適したキュベット列の例を図4ないし7を参照して以下説明する。
【0041】
図4は、本発明に係わるキュベット列の斜視図を示すものであって、これはキュベットホルダー41と、図8〜10に図示したタイプの複数のキュベット31とを具備している。図5は図4に示すキュベット列の平面図を示している。図6は図5のC−C面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーおよびこのチャンバーにより保持されたキュベット31を示している。図7は図5のD−D面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーおよびこのチャンバーにより保持されたキュベット31を示している。
【0042】
特に図4から明らかなように、本発明によるキュベット列は、上述のタイプのキュベットホルダー41と、上述のタイプの反応用キュベット31とを具備している。
【0043】
このキュベットホルダー41は図8〜10に図示したタイプの複数のキュベット31をゆるく保持するべく構成され、かつ、大きさのものとなっている。
【0044】
このキュベットホルダー41はプラスチック材料の射出成形によって作製された本体42を有する。この本体42は円弧状に延び、この円弧に沿って配列されたチャンバー43の列を画成している。これらチャンバー43は夫々、反応用キュベット31の上端部34並びにこの上端部の舌片37,38を受理し、かつ、ゆるく保持するようになっている。
【0045】
このキュベットホルダー41の本体42は、適当なプラスチック材料を射出成形することで一体的に形成された一個構成の使い捨て部材である。この本体42は以下の部分からなる。すなわち、(1)上方フレーム45、(2)下方フレーム46、(3)側壁47,48であり、その夫々が上方フレーム45の端部を下方フレーム46の一端と接続するようにしている、(4)複数の中間壁部49であり、これは隣接するチャンバー43相互を分離するものである、(5)可撓性舌片40,50であり、これらは上方フレーム45から下向きに延び、チャンバー43の中心を貫通する垂直軸との関係で傾斜している。
【0046】
この中間壁部49の夫々は径方向に配向している。すなわち、コンベア11の回転軸25を貫通する面に存在し、上方フレーム45を下方フレーム46と接続している。
【0047】
上方フレーム45および下方フレーム46の形状および寸法は、キュベットホルダー41のチャンバー43の列がコンベア11のキャビティ13の列に密接して対応するものとなっている。
【0048】
キュベットホルダー41の各チャンバー43内の反応用キュベット31の上端部34のための空間は、各チャンバー43の両側壁である中間壁部49により、更に、このチャンバーの上方開口部に反応用キュベットを挿入させるがキュベットの上端がいったんチャンバー43内に導入されたときはこのキュベットの離脱を防止する可撓性舌片40,50により画定されている。
【0049】
各チャンバー43内の反応用キュベット31の上端部34のための空間の大きさは、チャンバー43内、並びにチャンバー43のサイズにより規定される限界内で、反応用キュベットの上端部34がX方向、Y方向およびZ方向に変位できる十分な大きさに選択される。反応用キュベット31の上端部34、従って反応用キュベット31全体が、チャンバー43のサイズにより規定される角度の制限内でその長手方向軸39を中心として回転自在となっている。
【0050】
好ましい実施例において、キュベットホルダー41の本体42は更に、キュベットホルダー41の本体42を、図1に示す分析装置のコンベア11に接続させるための接続部44を有する。
【0051】
特に、図6から明らかなように、キュベットホルダー41のチャンバー43における反応用キュベット31の上端部34のための空間は、各チャンバー43の両側壁である中間壁部49により画定されるとともに、更に、このチャンバー43の上方開口部に反応用キュベットを挿入させるがキュベットの上端がいったんチャンバー43内に導入されたときはこのキュベットの離脱を防止する可撓性舌片40,50により画定されている。
【0052】
コンベア11の各キャビティ13への反応用キュベット31の挿入の間において、キュベット31はキュベットホルダー41によりゆるく保持されているが、このキュベットホルダー41は、キャビティ13内における各キュベット31の位置に対して応力または影響を何ら与えていない。各キュベット31の自重のみが、キュベットがキャビティ13内に挿入されたときに作用する唯一の応力である。キャビティ13内における反応用キュベット31の正確、かつ、規定された位置決めは、基本的にキャビティ13の底面の内面のエッジ部および反応用キュベット31とキャビティ13との形状および寸法の精密な合致により決定される。
【0053】
(自動ピペットユニット71の一部である針移送装置の例)
先に既に述べたように、図1に示す分析装置は、反応用キュベット31を円形路に沿って移送するための回転自在なコンベア11と、該コンベアを段階的に回転させるためのコンベア駆動手段22と、サンプルおよび試薬をピペットにより反応用キュベット31へ移し、サンプル−試薬混合物を形成するためのピペット針72を備えた自動ピペットユニット71と、を具備してなるものである。
【0054】
この自動ピペットユニット71は針移送ヘッド74を有し、これが図1に示すレール73に沿って移動しピペット針72をまっすぐなラインに沿って第1の方向(例えば、図1のX軸に平行な方向)に、複数のピペット操作位置まで移動させる。これらのピペット操作位置の全ては1つの同一の垂直面内(例えば、図1に示すX−Z面に平行で前記のまっすぐなラインを通る面内)に中心を有する。
【0055】
上述のピペット操作位置の部位が図20に示されている。すなわち、これは図1の分析装置の斜視図を示すものであって、3つのカバー部316,317,318からなるカバーを有する。これらのカバー部はピペット針72でピペット操作を行うための以下のような開口部を有する。すなわち、試薬容器から試薬分を取り出すための第1の開口部312と、試薬容器から試薬分を取り出すための第2の開口部313と、コンベア11上の反応用キュベットの1つに対しピペット操作を行うための第3の開口部314と、初期化方法のため基準部材321と接触し、更に洗浄ステーション23にアクセスするための第4の開口部319と、ISE装置のチャンバー内でピペット操作を行うための第5の開口部315とを有する。
【0056】
カバー部316,317,318の前記開口部の中心は、移送ヘッド74によりピペット針72が移送されるべきピペット操作位置の部位を画定するものである。
【0057】
カバー部316,317,318の前記開口部は更に、図21に示した平面図にも示されている。この図は更に、その右側にサンプル領域18およびキャビティ19の上方開口部を示している。この上方開口部の夫々は試料管を受理するためのものである。これらキャビティ19の開口部の中心は更に、移送ヘッド74によりピペット針72が移送されるべきピペット操作位置を表すものである。
【0058】
図20,21に示すように、前記ピペット操作位置は全てその中心が1つの同一の垂直面内、つまり、X−Z面に平行で、かつ、移送ヘッド74によりピペット針72が移動されるX方向のまっすぐなラインを通る面内にある。図21において、前記ピペット操作位置の全ての中心が横たわる面が直線で表され、これを説明上、ピペット軸320と呼ぶことにする。
【0059】
針移送ヘッド74は、ピペット針72を円形路に沿って移動させ、かつ、針72の長手方向軸を垂直軸と平行(例えば、図1のZ軸に平行)に保つための偏心機構を有する。
【0060】
図22は、ピペット針72を保持し、それを反応用キュベット31内に収容された液体を混合するため円形路に沿って移動させるための移送ヘッド74の構造を示す斜視図である。図22に示すように、この移送ヘッド74はモータ332により駆動される偏心シャフト331を有し、これら偏心シャフト331およびモータ332はフレーム部分に装着されている。この移送ヘッド74は更に、ガイド333内で摺動する接続プレート334を有する。ピペット針72は接続片335により接続プレート334の端部に接続されている。
【0061】
図23は、図22に示す構造の斜視図を示している。この図23には、ガイド333の上方プレートが長孔336を有することが示されている。
【0062】
図24は、図23に示す構造の概略的部分断面図を示している。この図24には、接続プレート334に接続され、長孔336に沿って摺動するようにしたボールベアリングピン337が示されている。
【0063】
図25は、図23に示す構造の断面図を示している。
【0064】
図26は、図23に示す構造の概略的平面図であって、接続プレート334が第1の位置にあり、ピペット針がガイド333の対称軸342上にある状態を示している。図26には、矢線343で示した感覚での偏心シャフト331の回転がピペット針72を、矢線344で示した反対方向で円形路に沿って移動させることを示している。
【0065】
図27は、図23に示す構造の概略的平面図であって、接続プレート334が第2の位置にあり、ピペット針がガイド333の対称軸342の外側にある状態を示している。
【0066】
針移送ヘッド74は、図1に示す分析装置の一部であるレベル検出装置(図示しない)と連動している。このレベル検出装置はピペット針72の容器内の液面との接触、又は分析装置の金属部分との接触を検出するために使用される。
【0067】
(自動ピペットユニット71の針移送装置を初期化するための方法の具体例)
図1に示す分析装置の自動ピペットユニット71の針移送装置74を初期化するための方法を図28ないし41を参照して以下に説明する。この初期化方法は、この分析装置の各開始直後に自動的に行われる。
【0068】
ピペット針72のための基準位置は、この分析装置の各開始直後に、自動ピペットユニット71の針移送装置74を初期化するための下記方法で決定される。
【0069】
上述の初期化のため、図1で示した基準部材321が、分析装置内の明確、かつ、正確に画定された位置に装着される。
【0070】
図28は、図1に示す基準部材321の平面図を示している。この基準部材321は小さな金属プレートであり、図28に示す形状と、約5ないし10mmの厚みを有する。
【0071】
この基準部材321は、1側に、開口部322を有し、これは図1に示す分析装置を工場で組立てたときピペット針の位置の機械的調整のための基準位置として使用される。この目的のため、図29に示すように、ピペット針72が手動で開口部322内に導入され、針72をこの位置にした状態で、関連する全ての機械的部分が、例えばネジを用いて、分析装置の所定位置に固定される。この調製は、分析装置の通常の使用時においては繰り返されない。
【0072】
分析装置の操作の各開始時に繰り返される下記の初期化方法の目的のため、図28に示すように、開口部323が基準部材321に設けられている。
【0073】
図28の平面図に示すように、開口部323は例えば、五角形ABCDEのもので、矩形領域ABCEと、三角形領域CDEとからなる。これら領域はピペット操作軸320に一致する共通対称軸328を有する。点MおよびNがこの共通対称軸328上に存在する。三角形領域CDEは二等辺直角三角形であり、2つの二等辺直角三角形DNEおよびDNCからなっている。
【0074】
開口部323は内側面345を有し、これは図28のセグメントABに相当し、対称軸328に対し垂直となっている。内側面345の一方の半分346(図28中のセグメントAM)が対称軸328の一方の側に横たわり、他方の半分347(図28中のセグメントMB)が対称軸328の反対側に横たわっている。
【0075】
開口部323は更に、2つの内側面348(図28中のセグメントDE)および349(図28中のセグメントDC)を有し、それぞれが対称軸328に対し時計方向で測定して45度の角度をなしている。内側面348が対称軸328の一方の側に横たわり、内側面349が対称軸328の反対側に横たわっている。これら側面348,349は、対称軸328上の点Dで合致している。
【0076】
上述のタイプの針移送装置を有する自動ピペットユニットのピペット針72のための基準点(X、Y、Z)を決定するため本発明の初期化方法を実施する前に、ピペット針72の位置の粗調整が行われ、これはピペット針の移送ヘッド74をレール73に沿って図21に示す第1のリミットストップ324に向けて自動的に駆動し針72についての第1のリミット位置を確定し、ついで、ピペット針の移送ヘッド74をレール73に沿って図21に示す第2のリミットストップ325に向けて反対方向に駆動しピペット操作軸に沿う針72についての第2のリミット位置を確定する。これらのリミット位置の決定により得られたデータをベースとして、この自動的に制御された移送ヘッド74が、以下に記載する初期化方法を実施するためピペット操作軸320に沿う或る所望の位置に針72を位置決めすることができる。更に、偏心機構の初期の位置の粗調整が上述の遮光装置により行われる。
【0077】
このような初期の粗調整に続いて、上述のタイプの針移送装置を有する自動ピペットユニットのピペット針72のための基準点(X、Y、Z)を決定するため、以下に記載する本発明の初期化方法が行われる。この方法は図30ないし37を参照して説明するが、以下のステップ(段階)からなる。
【0078】
(i)前記移送装置によりもたらされたまっすぐなラインに沿う第1の方向(ピペット操作軸320であり、これは例えば、X軸に平行である)におけるピペット針72の変位の第1の変位誤差ΔXを測定するための第1の測定ステップである。この第1の変位誤差ΔXは、偏心機構により決定される円形路に沿うピペット針の最初の角位置の対応する第1の角誤差φに起因するものである。
【0079】
この第1の測定ステップは、図30,31および35で説明する以下のステップからなる。
【0080】
(1)ピペット針72を軸320上で、開口部323のほぼ中心に自動的に配置させ、偏心機構を作動させて針72を図30で示す12時の位置に移動させ、針移送ヘッド74を用いて針72を開口部323の内面346に向けて変位させ、それとの接触が検出されたときの針72の位置に相当する値X12xを決定するため、針72の変位を針72と連動するレベル検出手段が検出するまで継続すること;
(2)ピペット針72を再び軸320上で、開口部323のほぼ中心に自動的に配置させ、偏心機構を作動させて針72を図31で示す6時の位置に移動させ、針移送ヘッド74を用いて針72を開口部323の内面347に向けて変位させ、それとの接触が検出されたときの針72の位置に相当する値X6xを決定するため、針72の変位を針72と連動するレベル検出手段が検出するまで継続することである。
【0081】
これらステップ(1)および(2)でそれぞれ測定された値X12xおよびX6xを用いて、前記の変位誤差ΔXを以下の式により計算する。
【0082】
ΔX=X12x−X6x
更に、ピペット針72の最初の角位置の前記誤差φを以下の式により計算する。
【0083】
φ=arcsin[|X12x−X6x|/2r]
【0084】
図36は、誤差ΔXおよびφを決定する場合に関係するパラメータを示す模式図である。図36中、r=ピペット針72の半径である。
【0085】
誤差ΔXおよび角誤差φの前記決定の後に以下のことが行われる。
(ii)ピペット針72の初期角位置の誤差φと対応する修正により前記変位誤差ΔXを修正するための第1の修正ステップである。この修正の後、ピペット針がピペット操作軸320上のX方向の修正位置であって開口部323のほぼ中央部に配置されることになる。
【0086】
この第1の修正ステップの後に以下のステップがおこなわれる。
(iii)前記垂直面(X−Z面と平行)に対し垂直な第2の方向(Y軸)でのピペット針72の変位における第2の変位誤差ΔYを測定するための第2の測定ステップである。この第2の変位誤差ΔYは、偏心機構により決定される円形路に沿うピペット針72の最初の角位置の対応する第2の角誤差αに起因するものである。
【0087】
この第2の測定ステップは、図32,33および35で説明する以下のステップからなる。
【0088】
(3)ピペット針72を軸320上で、開口部323のほぼ中心に自動的に配置させ、偏心機構を作動させて針72を図32で示す12時の位置に移動させ、針移送ヘッド74を用いて針72を開口部323の内面348に向けて変位させ、それとの接触が検出されたときの針72の位置に相当する値X12yを決定するため、針72の変位を針72と連動するレベル検出手段が検出するまで継続すること;
(4)ピペット針72を再び軸320上で、開口部323のほぼ中心に自動的に配置させ、偏心機構を作動させて針72を図33で示す6時の位置に移動させ、針移送ヘッド74を用いて針72を開口部323の内面349に向けて変位させ、それとの接触が検出されたときの針72の位置に相当する値X6yを決定するため、針72の変位を針72と連動するレベル検出手段が検出するまで継続することである。
【0089】
これらステップ(3)および(4)でそれぞれ測定された値X12yおよびX6yを用いて、前記の変位誤差ΔYを以下の式により計算する。
【0090】
ΔY=(X12y−X6y)/2
この値はΔYが図35に示すX軸の上にあるときは負となる。更に、ピペット針72の最初の角位置の前記誤差αを以下の式により計算する。
【0091】
α=−arcsin(ΔY/r
ここで、r=ピペット針の円形路の半径である。
【0092】
図37は、誤差ΔYおよびαを決定する場合に関係するパラメータを示す模式図である。図37中、r=ピペット針72の円形路の半径である。
【0093】
図39は、洗浄位置23の中央におけるピペット針72の概略的平面図であって、ピペット針の位置のX方向およびY方向のずれ、およびそれに対応する修正角度αを示している。図39は更に、針72を円形路に沿って移動させる偏心機構381、洗浄位置23の内径382および外径383を模式的に表している。
【0094】
誤差ΔYおよび角誤差αの前記決定の後に以下のことが行われる。
(iv)円形路に沿うピペット針72の角位置の対応する角度変化αにより第2の変位誤差ΔYを修正するための第2の修正ステップである。
【0095】
この第2の修正ステップの後に以下のことが行われる。
(v)垂直基準ラインの位置を決定するための第3の測定ステップである。この基準ラインは、装置内の固定した第1の基準面にピペット針が接触するラインであり、この第1の基準面は、前記第1の方向(X軸)での前記直線に垂直な面(Y−Z)内にある。
【0096】
この第3の測定ステップは、図34により説明する以下のステップからなる。
(5)ピペット針72を軸320上で、開口部323のほぼ中心に自動的に配置させ、偏心機構を作動させて針72を図34で示す3時の位置に移動させ、針72をピペット操作軸320内に置き、針移送ヘッド74を用いて針72を開口部323の内面348に向けて変位させ、それと針72との接触が検出されたときの針72の位置に相当する座標X、Yを有する基準線を決定するため、針72と連動するレベル検出手段が前記接触を検出するまで前記変位を継続することである。
【0097】
この第3の測定ステップの後に以下のことが行われる。
(vi)前記基準ラインに沿う基準点(X、YおよびZ)の位置を決定するための第4の測定ステップである。この基準点は、前記ピペット針の先端が装置内の固定した第2の基準面に接触する点であり、この第2の基準面は、前記基準線に垂直な面(X−Z面と平行な面)内にある。この基準点の座標Zを決定するため、例えば、針72を、図20に示すように基準部材321の近傍に設けられた洗浄ステーション23の水平上面に向けて自動的に駆動させ、針72と連動するレベル検出手段により前記水平上面と、針72の先端との接触を検出することが好便である。
【0098】
(自動ピペットユニット71の針移送装置の前記初期化の後、コンベアの角位置の微調整を行う方法の例)
図40は、反応用キュベット31を、図21で示すコンベア上のピペット操作位置314に配置させるためのコンベア11の所定角位置βを示している。図40は更に、ピペット軸320およびキュベット31の軸351を示している。
【0099】
ピペット針72のための基準位置を自動的に決定するための上述の初期化プロセスを実行したのちにおいて、針72の位置の修正ΔXおよびΔYのため、コンベア11の段階的回転により配置された反応用キュベットの中心部から、或る程度の針のずれが図21で示すピペット位置314で生じることになる。この反応用キュベット31との関係におけるピペット針72の相対位置のずれを補償するため、更に、本発明の更なる形態と調和させるため、コンベア11の所定角位置βが角度δで修正され、それにより、コンベアが修正された角位置βに置かれる。
【0100】
βの要求値およびδは、以下の式により計算することができる。
β=arcsin[(a−ΔY)/r]
δ=β−β
【0101】
この修正により得られる修正値ΔXは以下の式により与えられる。
ΔX=r・cos(α)+r(cos(β)−cos(β))
【0102】
図38は、前記初期化方法の実行により導入されたX方向およびY方向のずれを補償するのに必要なコンベア11の修正角位置βの計算に関係するパラメータを示す模式図である。図38において、実線円は、コンベア11の角位置が角度δで修正される前のピペット針72の位置を示しており、円373はこの修正後のこの針の位置を示している。図38において、実線円372は、コンベア11の角位置が角度δで修正される前のピペット針72の円形路を示しており、円374はこの修正後のピペット針72の円形路を示している。図38において、rはコンベア11の半径を表している。
【0103】
図41は、コンベア11の概略的平面図であって、キュベット31が修正角位置にある際に、ピペット操作軸320に沿うピペット針72の直線的移動路と、コンベア11のキャビティ内に配置された反応用キュベット31のキュベット軸の修正角位置352との間の修正角度βを示している。この図41は更に、コンベア11の上記修正の後における、ピペット針72のキュベット31との関係での位置を示している。
【0104】
以上、本発明の好ましい具体例を特定の用語を用いて説明したが、これらの記述は説明を目的としたものに過ぎず、特許請求の範囲の趣旨又は範囲を逸脱することなく、種々、変更並びに変形も可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係わる分析装置を示す斜視図である。
【図2】図1のコンベア11の斜視図である。
【図3】図1のコンベア11の側面図である。
【図4】本発明に係わるキュベット列の斜視図であって、これはキュベットホルダー41と、図8−10に示すタイプの複数のキュベット31とを具備してなる図である。
【図5】図4に示すキュベット列の平面図である。
【図6】図5のC−C面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーおよびこのチャンバーにより保持されたキュベット31を示した図である。
【図7】図5のD−D面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーおよびこのチャンバーにより保持されたキュベット31を示した図である。
【図8】本発明によるキュベットホルダー41とともに好ましく使用されるタイプの反応用キュベット31の斜視図である。
【図9】図8の反応用キュベット31の第1の側面図である。
【図10】図8の反応用キュベット31の第2の側面図である。
【図11】図1に示す分析装置から取り出した状態の試薬容器アッセンブリー61を示す斜視図である。
【図12】試薬容器アッセンブリー61を取り出したときの図1に示す分析装置のコンベア部分を示す平面図である。
【図13】図12のH−H面に沿う断面図である。
【図14】分析装置に装着されたときの試薬容器アッセンブリー61の斜視図であって、カバーが取り除かれ、試薬容器も収容されていない状態を示す図である。
【図15】図14に示す装置の一部の拡大斜視図である。
【図16】図1に示す分析装置のコンベア部分、更に、特に試薬容器を装填する前の試薬容器アッセンブリーを示す平面図。
【図17】単一の試薬容器を示す斜視図。
【図18】図16のI−I面に沿う断面図。
【図19】反応用キュベット31およびその中に配設されたピペット針72の断面図。
【図20】ピペット針72を用いてピペット操作を行う際に使用される開口部を備えたカバー316,317,318を含めた図1の分析装置の斜視図。
【図21】分析装置、特に、ピペット用開口部の配列を模式的に示す平面図。
【図22】ピペット針72を保持し、それを反応用キュベット内に収容された液体を混合するため円形路に沿って移動させるための構造を示す斜視図。
【図23】図22に示す構造の斜視図であって、この構造の操作を説明する図。
【図24】図23に示す構造の概略的部分断面図。
【図25】図23に示す構造の断面図。
【図26】図23に示す構造の概略的平面図であって、接続プレート334が第1の位置にあり、ピペット針がガイド333の対称軸342上にある状態を示す図。
【図27】図23に示す構造の概略的平面図であって、接続プレート334が第2の位置にあり、ピペット針がガイド333の対称軸342の外側にある状態を示す図。
【図28】図1に示す基準部材321の平面図。
【図29】分析装置におけるピペット針の位置の機械的荒調整の過程を示す模式図。
【図30】ピペット針を基準、初期又はホームポジションを決定するための方法の第1の段階を示す模式図。
【図31】ピペット針を基準、初期又はホームポジションを決定するための方法の第2の段階を示す模式図。
【図32】ピペット針を基準、初期又はホームポジションを決定するための方法の第3の段階を示す模式図。
【図33】ピペット針を基準、初期又はホームポジションを決定するための方法の第4の段階を示す模式図。
【図34】ピペット針を基準、初期又はホームポジションを決定するための方法の第5の段階を示す模式図。
【図35】図25ないし図28で説明した方法の段階1ないし4に関係するパラメータを示す模式図。
【図36】偏心装置の初期の位置の不正確による針72の初期の角位置の誤差により生じた誤差ΔXを補償するため、偏心装置の角位置の修正に関係するパラメータを示す模式図。
【図37】針72の初期の角位置の誤差の修正の後に必要なピペット針の位置のY方向のずれに関係するパラメータを示す模式図。
【図38】X方向およびY方向のずれを補償するため、コンベア11の角位置の修正に関係するパラメータを示す模式図。
【図39】洗浄位置におけるピペット針の概略的平面図であって、ピペット針の位置のX方向およびY方向のずれ、およびそれに対応する修正角度αを示す図。
【図40】コンベア11の一部の概略的平面図であって、ピペット針の直線的移動路と、コンベア11のキャビティ内に配置された反応用キュベット31の中心を通る半径との間の理論的角度βを示す図。
【図41】コンベア11の一部の概略的平面図であって、ピペット針の直線的移動路と、コンベア11のキャビティ内に配置された反応用キュベット31の中心を通る半径との間の修正角度βを示す図。
【符号の説明】
【0106】
11 コンベア
12 第1のリング状本体
13 反応用キュベットを受理するためのキャビティ
14 第2のリング状本体
15 第2のリング状本体の壁部
16 開口部
17 第1のチャンバー(第2のリング状本体内)
18 試料管領域
19 試料管を受理するためのキャビティ
20 熱ブロック
21 光度計
22 コンベア駆動手段/歯車
23 洗浄ステーション
24 光度計の光線路
25 コンベア11の回転軸
26 図15の部分
27 図17の部分
28 図19の部分
29 断熱層
31 反応用キュベット
32 キュベット31の本体
33 キュベット31の下端部
34 キュベット31の上端部
35 キュベット31の底面
36 キュベット31の開口部
37 舌部
38 舌部
39 キュベット31の長手方向対称軸
40 舌部
41 キュベットホルダー
42 キュベットホルダーの本体
43 キュベットホルダーのチャンバー
44 接続部/案内リブ
45 上方フレーム
46 下方フレーム
47 側壁
48 側壁
49 中間壁部
50 舌部
51 バケット/中空体
52 バケットの底面
53 バケットの側壁
54 キャビティ/バケット内の第2のチャンバー
55 空隙
56 キャビティ13の底面
57 底面56の内面中の窪み
58 エッジ
59 エッジ
60 中間壁部
60a 中間壁部
61 試薬容器アッセンブリー
62 試薬容器
63 試薬容器
64 試薬容器
65 試薬容器を受理するためのチャンバー
66 試薬容器を受理するためのチャンバー
71 自動ピペットユニット/自動ピペット装置
72 ピペット針
73 ピペット針の移送装置のレール
74 ピペット針72を移送するための移送頭部
312 試薬をピペット操作するための第1の開口部
313 試薬をピペット操作するための第2の開口部
314 反応用キュベット内へのピペット操作のための開口部
315 ISE装置のチャンバーへのピペット操作のための開口部
316 カバー部分
317 カバー部分
318 カバー部分
319 基準部材321へのアクセスを可能にする開口部
320 ピペット操作軸
321 初期化プロセスのための基準部材
322 基準部材321の1側に設けられた開口部
323 基準部材321の中央部に設けられた開口部
324 制限停止部
325 制限停止部
328 開口部323の対称軸
331 偏心シャフト
332 偏心モータ
333 案内部
334 接続プレート
335 接続片
336 案内部333の長孔
337 ボールベアリングピン
338 フレーム部分
339 ブッシュ
341 偏心シャフト331の回転軸
342 案内部333の対称軸
343 偏心シャフト331の回転の感覚を示す矢線
344 円形路に沿う針72の動きの感覚を示す矢線
345 開口部323の内側面
346 開口部323の内側面
347 開口部323の内側面
348 開口部323の内側面
349 開口部323の内側面
351 理論的キュベット軸
352 キュベット軸の修正角位置/キュベット軸の修正角位置に一致する半径
353 ピペット針72の円形路の中心
361 針72の円形路
362 針72の円形路
363 針72の円形路
364 針72の円形路
365 針72の円形路
366 針72の円形路
372 ピペット針72の円形路
373 修正角度δでコンベアの角位置を修正した後のピペット針72の位置
374 修正角度δでコンベアの角位置を修正した後の円形路372の位置
381 円形路に沿って針72を移動させる偏心の概略的表示
382 洗浄ステーションの内側半径
383 洗浄ステーションの外側半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動分析装置の一部であるピペット針の基準位置を決定するための方法であって、この自動分析装置が、
(a)反応用キュベット(31)を円形路に沿って移送するための回転自在なコンベア(11)と、
(b)該コンベアを段階的に回転させるためのコンベア駆動手段(22)と、
(c)サンプルおよび試薬をピペットにより反応用キュベット(31)へ移し、サンプル−試薬混合物を形成するためのピペット針(72)を備えた自動ピペットユニット(71)であって、
この自動ピペットユニット(71)が針移送装置を有し、これが前記ピペット針をまっすぐなラインに沿って第1の方向(X軸)に、複数のピペット操作位置まで移動させるものであり、これらのピペット操作位置の全てが、前記のまっすぐなラインを通る1つの同一の垂直面内(X−Z面)にあり、
前記針移送装置が、ピペット針を円形路に沿って移動させ、かつ、該針の長手方向軸を垂直軸と平行に保つための偏心機構を有するものと、
(d)前記ピペット針の、容器内の液面との接触、又は分析装置の金属部分との接触を検出するためのレベル検出手段と、
(e)基準位置を決定するための基準部材(321)と、
を具備してなり;
前記方法が、
(i)前記移送装置によりもたらされるまっすぐなラインに沿う第1の方向(X軸)におけるピペット針の変位の第1の変位誤差(ΔX)を測定するための第1の測定ステップであって、この第1の変位誤差(ΔX)が、前記偏心機構により決定される円形路に沿うピペット針の最初の角位置の対応する第1の角誤差(φ)に起因するものであり、該第1の測定ステップがピペット針の前記偏心機構を作動させ、該針を前記基準部材と接触させることを含むものと、
(ii)該ピペット針の初期角位置の誤差(φ)と対応する修正により前記変位誤差(ΔX)を修正するための第1の修正ステップと、
(iii)前記垂直面に対し垂直な第2の方向(Y軸)でのピペット針の変位における第2の変位誤差(ΔY)を測定するための第2の測定ステップであって、この第2の変位誤差(ΔY)が、偏心機構により決定される円形路に沿うピペット針の最初の角位置の対応する第2の角誤差(α)に起因するものであり、該第2の測定ステップがピペット針の前記偏心機構を作動させ、該ピペット針を前記基準部材と接触させることを含むものと、
(iv)円形路に沿うピペット針の角位置の対応する角度変化(α)により第2の変位誤差(ΔY)を修正するための第2の修正ステップと、
(v)垂直基準ラインの位置を決定するための第3の測定ステップであって、この基準ラインが、装置内の固定した第1の基準面にピペット針が接触するラインであり、この第1の基準面が、前記第1の方向(X軸)での前記直線に垂直な面(Y−Z)内にあるものと、
(vi)前記基準ラインに沿う基準点(X、YおよびZ)の位置を決定するための第4の測定ステップであって、この基準点が、前記ピペット針の先端が装置内の固定した第2の基準面に接触する点であり、この第2の基準面が、前記基準線に垂直な面(X−Z面と平行な面)内にあるものと、
を具備してなることを特徴とする、自動分析装置の一部であるピペット針の基準位置を決定するための方法。
【請求項2】
自動分析装置であって:
(a)反応用キュベット(31)を円形路に沿って移送するための回転自在なコンベア(11)と、
(b)該コンベアを段階的に回転させるためのコンベア駆動手段(22)と、
(c)サンプルおよび試薬をピペットにより反応用キュベット(31)へ移し、サンプル−試薬混合物を形成するためのピペット針(72)を備えた自動ピペットユニット(71)であって、
この自動ピペットユニット(71)が針移送装置を有し、これが前記ピペット針をまっすぐなラインに沿って、複数のピペット操作位置まで移動させるものであり、これらのピペット操作位置の全てが、前記のまっすぐなラインを通る1つの同一の垂直面内にあり、
前記針移送装置が、ピペット針を円形路に沿って移動させ、かつ、該針の長手方向軸を垂直軸と平行に保つための偏心機構を有するものと、
(d)前記ピペット針の、容器内の液面との接触、又は分析装置の金属部分との接触を検出するためのレベル検出手段と、
(e)請求項1記載の方法により、前記ピペット針のための基準位置を決定し、該ピペット針を該基準位置に位置決めするための基準部材(321)と、
(f)前記コンベア駆動手段、前記針移送装置、前記レベル検出手段、および前記ピペット針のための基準位置を決定し、該ピペット針を該基準位置に位置決めするための手段、の各操作を制御するための電子回路手段と、
を具備してなることを特徴とする、自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置の使用方法であって、
請求項1記載の方法により前記ピペット針を該基準位置に位置決めしたのち、前記コンベア(11)上の反応用キュベット(31)の位置との関連で該ピペット針の位置の変化を考慮して該コンベア(11)の角位置を変更すること、ここで、該位置の変化は請求項1に記載の方法を実施するときに導入されるものである;
前記コンベア(11)の角位置の変更が、該コンベアの角位置の変化(δ)であり、該変化(δ)が前記第1の変位誤差(ΔX)および第2の変位誤差(ΔY)を考慮して計算されるものである;
ことを特徴とする、自動分析装置の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2007−86073(P2007−86073A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−253486(P2006−253486)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】