説明

ピペリジン−3−イルカーバメート化合物の光学分割方法およびその中間体

【課題】光学純度の高い3−アミノピペリジンを得る方法を提供すること。
【解決手段】式(1)


(式中、Rはエチル基またはt−ブチル基を表わす。)
で示されるピペリジン−3−イルカーバメート化合物のRS混合物と光学活性なマンデル酸とを接触させることを特徴とするピペリジン−3−イルカーバメート化合物の光学分割方法およびその中間体である光学活性なエチルピペリジン−3−イルカーバメートと光学活性なマンデル酸とのジアステレオマー塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペリジン−3−イルカーバメート化合物の光学分割方法およびその中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性な3−アミノピペリジンの製造方法として、例えば、3−アミノピペリジンの光学分割による方法が知られている(特許文献1参照。)。しかしながら、かかる方法では、得られる3−アミノピペリジンの光学純度の点で、工業的に満足できるものではなかった。
【特許文献1】国際公開第2007/75630号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような状況のもと、本発明者らは、より光学純度の高い3−アミノピペリジンを得る方法について鋭意検討したところ、3−アミノピペリジンの3位のアミノ基がエトキシカルボニル基またはt−ブトキシカルボニル基で保護された構造を有するエチルピペリジン−3−イルカーバメートまたはt−ブチルピペリジン−3−イルカーバメートを、光学活性なマンデル酸で光学分割すれば、光学純度の高いピペリジン−3−イルカーバメート化合物またはその塩が得られることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は、下記〔1〕〜〔8〕に記載の発明を提供するものである。
〔1〕式(1)

(式中、Rはエチル基またはt−ブチル基を表わす。)
で示されるピペリジン−3−イルカーバメート化合物のRS混合物と光学活性なマンデル酸とを接触させることを特徴とするピペリジン−3−イルカーバメート化合物の光学分割方法。
〔2〕光学活性なマンデル酸がR−マンデル酸である〔1〕項に記載の光学分割方法。
〔3〕式(1)

(式中、Rはエチル基またはt−ブチル基を表わす。)
で示されるピペリジン−3−イルカーバメート化合物のRS混合物と光学活性なマンデル酸とを接触させて光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物と光学活性なマンデル酸とのジアステレオマー塩を晶出させ、次いで、該ジアステレオマー塩に、酸または塩基を作用させる式(2)

(式中、Rは上記と同じ意味を表わし、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを表わす。)
で示される光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物またはその塩の製造方法。
〔4〕光学活性なマンデル酸がR−マンデル酸であり、得られる式(2)で示される光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物がR体である〔3〕項に記載の製造方法。
〔5〕光学活性なエチルピペリジン−3−イルカーバメートと光学活性なマンデル酸とのジアステレオマー塩。
〔6〕光学活性なt−ブチルピペリジン−3−イルカーバメートと光学活性なマンデル酸とのジアステレオマー塩。
〔7〕(R)−エチルピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸とのジアステレオマー塩。
〔8〕(R)−t−ブチルピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸とのジアステレオマー塩。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、光学純度の高いピペリジン−3−イルカーバメート化合物またはその塩が得られる。得られた光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物を脱保護すれば、光学純度の高い3−アミノピペリジンが得られるため、工業的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0007】
本発明において、上記式(1)で示されるピペリジン−3−イルカーバメート化合物(以下、ピペリジン−3−イルカーバメート化合物(1)と略記する。)のRS混合物とは、その鏡像異性体のうちR体とS体の両方を含む混合物であればよいが、通常、ラセミ体である。ピペリジン−3−イルカーバメート化合物(1)のRS混合物は、任意の公知の方法に準じて製造することができる。例えば、3−アミノピリジンの3位のアミノ基をエチルカーバメート化またはt−ブチルカーバメート化して得られるエチルピリジン−3−イルカーバメートまたはt−ブチルピリジン−3−イルカーバメートを核還元したり、3−アミノピペリジンのRS混合物の3位のアミノ基をエチルカーバメート化またはt−ブチルカーバメート化したりすることにより製造して用いればよい。本発明に用いるピペリジン−3−イルカーバメート化合物(1)のRS混合物は、マンデル酸以外の任意の酸との塩であってもよい。ピペリジン−3−イルカーバメート化合物(1)のRS混合物を塩として用いる場合は、該塩と塩基とを接触させる等の処理により、ピペリジン−3−イルカーバメート化合物(1)のRS混合物をフリー化して用いることが好ましい。
【0008】
光学活性なマンデル酸は、通常、市販のものが利用できる。R−マンデル酸やS−マンデル酸のみならず、いずれか一方が有意に多く含まれていれば、それらの混合物であってもよい。その光学純度は、90%ee以上であることが好ましく、95%ee以上であることがより好ましく、98%ee以上であることがさらに好ましく、100%ee以上であることが最も好ましい。上記式(2)で示される光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(以下、光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)と略記する。)のR体を所望する場合は、光学活性なマンデル酸としてR−マンデル酸を用いることが好ましく、光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)のS体を所望する場合は、光学活性なマンデル酸としてS−マンデル酸を用いることが好ましい。
【0009】
光学活性なマンデル酸の使用量は、ピペリジン−3−イルカーバメート化合物(1)のRS混合物のうち、光学活性なマンデル酸との塩形成を所望する側の化合物(R−マンデル酸を用いる場合はR体、S−マンデル酸を用いる場合はS体)に対して1モル倍以上であれば、特に限定されない。ピペリジン−3−イルカーバメート化合物(1)のRS混合物としてラセミ体を用いるときの光学活性なマンデル酸の使用量は、該ラセミ体1モルに対して、通常0.5モル以上であればよい。収率および経済性の観点から、0.9〜2モルであることが好ましく、1.0〜1.5モルであることがより好ましい。
【0010】
ピペリジン−3−イルカーバメート化合物(1)のRS混合物と光学活性なマンデル酸との接触は、通常、溶媒の存在下で行われる。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、デカン、イソデカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、モノフルオロベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等の芳香族溶媒;テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル等のエーテル溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、イソヘキシルアルコール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、イソペプチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノt−ブチルエーテル等のアルコール溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の塩素化脂肪族炭化水素溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピルなどのエステル溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリジノン、アセトン等の非プロトン性極性溶媒;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸溶媒;水;等が挙げられる。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を同時に用いてもよい。ケトン溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒およびエーテル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒が好ましく、ケトン溶媒、アルコール溶媒またはエーテル溶媒がより好ましく、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはテトラヒドロフランがさらに好ましく、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールまたはテトラヒドロフランが特に好ましい。
【0011】
溶媒の使用量は、得られる光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)と光学活性なマンデル酸とからなる塩(以下、ジアステレオマー塩と略記することもある。)の溶解度に応じて適宜選択すればよい。ピペリジン−3−イルカーバメート化合物(1)のRS混合物1kgに対して、通常1〜50L、好ましくは3〜30Lである。
【0012】
ピペリジン−3−イルカーバメート化合物(1)のRS混合物と光学活性なマンデル酸との接触は、溶媒の存在下で、それらを混合することにより実施され、混合順序は特に限定されない。得られた混合物中にジアステレオマー塩の結晶が存在していない場合は、そのまま該混合物を冷却処理することにより、ジアステレオマー塩を晶出させればよい。また、上記接触により得られた混合物中にジアステレオマー塩の結晶が存在する場合には、そのまま該混合物を冷却処理してもよいが、最終的に得られる光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)またはその塩の化学純度や光学純度の観点から、該混合物を加熱することによりジアステレオマー塩の結晶を溶解させた後に冷却処理することにより、ジアステレオマー塩を晶出させることが好ましい。かかるジアステレオマー塩の晶出において、該ジアステレオマー塩の種晶を用いてもよい。
【0013】
ピペリジン−3−イルカーバメート化合物(1)のRS混合物と光学活性なマンデル酸とを混合する温度は特に限定されず、通常0℃以上、溶媒の沸点以下の範囲である。それらを混合した後に加熱する場合は、上記30℃以上、溶媒の沸点以下の範囲に加熱する。冷却温度は、通常0〜25℃の範囲であり、得られるジアステレオマー塩の化学純度や光学純度の観点から、徐々に冷却することが好ましい。
【0014】
かくして得られる混合物に、例えばろ過やデカンテーション等の固液分離処理を施すことにより、ジアステレオマー塩を固体として取り出すことができる。かかるジアステレオマー塩は新規化合物である。また、上記の固液分離処理により得られる液体には、通常、ジアステレオマー塩を構成するものとは逆の鏡像異性体に富むピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)が含まれており、該液体から常法により光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)またはその塩を取り出すこともできる。
【0015】
取り出されたジアステレオマー塩に、そのまま酸または塩基を作用させてもよいが、最終的に得られる光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)の化学純度や光学純度の観点から、洗浄処理を施した後に、酸または塩基で処理することが好ましい。かかる洗浄処理には、通常、上記と同じ溶媒を用いることができる。洗浄後は、さらに乾燥処理することが好ましい。乾燥処理の条件としては、常圧もしくは減圧条件下で、通常20〜80℃の範囲である。
【0016】
かくして得られるジアステレオマー塩は、通常、R−マンデル酸を用いた場合には(R)−エチルピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸からなる塩または(R)−t−ブチルピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸からなる塩であり、S−マンデル酸を用いた場合には(S)−エチルピペリジン−3−イルカーバメートとS−マンデル酸からなる塩または(S)−t−ブチルピペリジン−3−イルカーバメートとS−マンデル酸からなる塩である。
【0017】
該ジアステレオマー塩に、通常、酸または塩基を作用させれば、光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)またはその塩が得られる。
【0018】
ジアステレオマー塩に作用させる酸は、マンデル酸よりも酸性度の強いものであればよく、例えば、塩酸、リン酸、硫酸等の鉱酸や、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機酸が挙げられる。好ましくは塩酸である。これらの酸は、市販のものをそのまま用いることもできるし、後述する溶媒の溶液として用いることもできる。
【0019】
酸の使用量は、ジアステレオマー塩を構成する光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)1モルに対して、1モル以上であれば、特に限定されない。
【0020】
通常、溶媒の存在下で、ジアステレオマー塩に酸を作用させる。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、デカン、イソデカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、モノフルオロベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等の芳香族溶媒;テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル等のエーテル溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、イソヘキシルアルコール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、イソペプチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノt−ブチルエーテル等のアルコール溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の塩素化脂肪族炭化水素溶媒;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸溶媒;水;等が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を同時に用いてもよい。なかでも、芳香族溶媒、アルコール溶媒または水が好ましく、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノールまたは水がより好ましく、水がさらに好ましい。
【0021】
溶媒の使用量は、ジアステレオマー塩1kgに対し、通常1〜50L、好ましくは3〜30Lである。
【0022】
ジアステレオマー塩と酸とを通常0〜40℃、好ましくは0〜30℃で混合すればよく、それらの混合順序は特に限定されない。
【0023】
作用時間は特に限定されず、通常1分〜24時間の範囲である。
【0024】
得られた混合物中に、光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)と用いた酸との塩が析出している場合は、該混合物をそのまま、例えばろ過やデカンテーション等の固液分離処理に付すことにより、該塩を取り出すことができる。また、該塩の析出が不十分であったり、該塩が析出しない場合は、該混合物を、例えば、濃縮したり、該塩を溶解し難い溶媒と混合したり、あるいは、加熱したり、冷却したりすることにより、該塩を結晶化させ、得られた混合物を、例えばろ過やデカンテーション等の固液分離処理に付すことにより、該塩を取り出せばよい。得られた塩は、例えば再結晶等の通常の手段により、さらに精製されてもよいし、さらに後述する塩基を作用させる場合と同様にして、フリー化されてもよい。また、上述した固液分離処理により得られるろ液には、通常、光学活性なマンデル酸が含まれており、該ろ液から常法により光学活性なマンデル酸を回収して、本発明にリサイクル使用することができる。
【0025】
ジアステレオマー塩に作用させる塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラート等のアルカリ金属アルコラート;等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。これらの塩基は、市販のものをそのまま用いることもできるし、後述する溶媒の溶液として用いることもできる。
【0026】
塩基の使用量は、ジアステレオマー塩を構成する光学活性なマンデル酸1モルに対して、1モル以上であれば、特に限定されない。
【0027】
通常、溶媒の存在下で、ジアステレオマー塩に塩基を作用させる。かかる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール溶媒;ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、1,2−ジメトキシメタン等のエーテル溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸t−ブチル等のエステル溶媒;ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒;水;等が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を同時に用いてもよい。塩基としてアルカリ金属水酸化物やアルカリ金属炭酸塩等の無機塩基を用いる場合は、水単独または水との相溶性が低い有機溶媒(上記のエーテル溶媒、芳香族溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒)と水とを同時に用いることが好ましい。アルコール溶媒または水あるいはそれらの混合溶媒が好ましく、1−ブタノールまたは水あるいはそれらの混合溶媒が好ましい。
【0028】
溶媒の使用量は、ジアステレオマー塩1kgに対し、通常1〜50L、好ましくは3〜30Lである。
【0029】
ジアステレオマー塩と塩基とを通常0〜60℃、好ましくは10〜30℃で混合すればよく、それらの混合順序は特に限定されない。
【0030】
作用時間は特に限定されず、通常1分〜24時間の範囲である。
【0031】
例えば、水とジアステレオマー塩との混合物に塩基を加えて、混合物の水層を塩基性(通常、pH8.5以上)とし、所定の温度で作用させた後、得られた混合物に、水との相溶性が低い有機溶媒を加え、分液処理することにより、光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)を含む有機層を得ることができ、該有機層を、必要により水洗処理した後、濃縮処理すれば、光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)を単離することができる。また、塩基としてアルカリ金属アルコラートを用い、溶媒としてアルコール溶媒を用いれば、通常、光学活性なマンデル酸のアルカリ金属塩が析出し、これをろ別して、得られた溶液を濃縮処理することにより、光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)を単離することができる。得られた光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)は、例えば精留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の通常の手段により、さらに精製されてもよい。光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)は、酸付加塩として取り出すこともできる。上記分液処理により得られる水層には、光学活性なマンデル酸が含まれており、該水層から常法により光学活性なマンデル酸を回収して、本発明にリサイクル使用することができる。また、上記でろ別された光学活性なマンデル酸のアルカリ金属塩から、常法により光学活性なマンデル酸を回収して、本発明にリサイクル使用することもできる。
【0032】
かくして得られる光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物(2)の光学純度は、用いた光学活性なマンデル酸の光学純度にもよるが、通常90%ee以上である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0034】
製造例1−1:t−ブチル ピリジン−3−イルカーバメートの製造
3−アミノピリジン80.0g(0.85mol)および5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液100mLをメタノール100mlに溶解させた溶液に、二炭酸ジt−ブチル213g(0.98mol)とメタノール80mLとの混合溶液と、20重量%炭酸ナトリウム水溶液230mlを並行して2時間かけて滴下した。滴下中の混合物の内温は0〜10℃、pHは7〜8を保持した。滴下終了後、得られた混合物を室温で12時間攪拌した後、減圧下に濃縮処理した。濃縮残渣に水300mLを加え、析出した結晶をろ過して水200mlで洗浄した。得られた結晶を乾燥することにより、t−ブチル ピリジン−3−イルカーバメート146gを得た。収率88.4%。
【0035】
製造例1−2:t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメート(ラセミ体)の製造
製造例1−1で得たt−ブチル ピリジン−3−イルカーバメート100g(0.52mol)を酢酸400g(6.66mol)に溶解させた溶液にパラジウム炭素(5%)30gを仕込み、水素圧0.6MPa、65℃で12時間攪拌した。反応終了後、パラジウム炭素をろ別して、反応溶液を得、パラジウム炭素を水250mlで洗浄して洗浄液を得、前記反応溶液と洗浄液とを混合した。得られた溶液を、あらかじめ水酸化ナトリウム266g(6.65mol)を水500mlに溶解させておいた溶液中に滴下した。滴下中の混合物の内温は、10〜20℃を保持した。そこに、さらに水200mLを加えた後、析出した結晶をろ過して水400mlで洗浄した。得られた結晶を乾燥することにより、t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメート76.2gを白色結晶として得た。収率73.8%。
【0036】
製造例2−1:t−ブチル ピリジン−3−イルカーバメートの製造
3−アミノピリジン100.0g(1.06mol)を2−プロパノール300mlと水100mLの混合溶媒に溶解させた溶液に、二炭酸ジt−ブチル266.7g(1.22mol)と2−プロパノール100mLの混合溶液を3時間かけて滴下した。滴下中の混合物の内温は5〜20℃を保持した。滴下終了後、得られた混合物を室温で3時間攪拌した後、減圧下に濃縮処理した。濃縮残渣に水200mLを加え、さらに濃縮処理した後、濃縮残渣に水200mLを加え、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水200mlで洗浄することにより、t−ブチル ピリジン−3−イルカーバメートの含水結晶234.2gを得た。該含水結晶をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、t−ブチル ピリジン−3−イルカーバメートの含量は79.5重量%であった。収率90.2%。
【0037】
製造例2−2:t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメート(ラセミ体)の製造
製造例2−1で得たt−ブチル ピリジン−3−イルカーバメートの含水結晶のうち195.2g(純分155.2g、0.799mol)を1−ブタノール450mLに溶解させ、得られた溶液を減圧下に濃縮処理することにより、溶媒を160g留去した。得られた濃縮残渣に酢酸310mLとパラジウム炭素(10%)17.4gを加え、得られた混合物を水素圧0.5MPa、70℃で7時間攪拌した。反応終了後、パラジウム炭素をろ別して、反応溶液を得、パラジウム炭素を1−ブタノール93mlで洗浄して洗浄液を得、前記反応溶液と洗浄液とを混合した。得られた溶液に、30重量%水酸化ナトリウム水溶液723g(5.43mol)を滴下した。滴下中の混合物の内温は、10〜30℃を保持した。分液処理により有機層を取得した。水層を1−ブタノール310mlで抽出し、得られた有機層と先に取得した有機層とを合一した後、水155mLで2回洗浄した。得られた有機層を減圧下に濃縮し、t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートの1−ブタノール溶液489gを得た。該溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートの含量は32.7%であった。収率99.7%。
【0038】
実施例1:t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートの光学分割
製造例1−2で得たt−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメート2.00g(10.0mmol)とR−マンデル酸1.55g(10.2mmol)とエタノール10mlとを混合した。得られた混合物を70℃で攪拌したところ、均一な溶液となった。該溶液を室温まで冷却したところ、結晶が析出した。該結晶をろ取し、得られた結晶を冷エタノール5mlで洗浄した。得られた結晶を乾燥することにより、白色結晶として(R)−t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸とのジアステレオマー塩1.28gを得た。収率36.6%。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:7.36(2H,d,J=7.2Hz),7.25−7.13(4H,m),7.00(1H,br),4.59(1H,s),3.53(1H,br),3.09−2.97(2H,m),2.64−2.49(2H,m),1.78−1.69(2H,m),1.53−1.21(11H,m)
13C−NMR(DMSO−d、400MHz)δppm:175.1,154.6,143.1,127.3,126.2,126.1,78.0,73.3,47.0,44.6,42.8,28.7,28.2,21.1
【0039】
トリエチルアミンを用いてジアステレオマー塩からt−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートを取り出し、これを3,5−ジニトロベンゾイルクロライドで誘導体化して、高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、該ジアステレオマー塩中のt−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートの光学純度は、91.9%ee(R体)であった。
<光学純度分析条件>
カラム :CHIRALCEL(登録商標)AS−RH(4.6×150mm,5μm)
移動相 :A=水、B=アセトニトリル、A/B=60/40
流量 :1.0ml/分
検出器 :UV254nm
保持時間:S体=10.4分、R体=15.6分
【0040】
実施例2、比較例1〜6:t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートの光学分割
製造例1−2と同様の方法で得たt−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメート100mg(0.5mmol)と、表1に記載の光学活性酸0.55mmolと、表1に記載の溶媒2mlとを室温で混合して、t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートと光学活性酸とのジアステレオマー塩を製造した。ジアステレオマー塩が結晶化した場合には析出した結晶をろ取し、乾燥して得られたジアステレオマー塩を実施例1に記載の光学純度分析方法にて分析した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例3−1:t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートの光学分割
製造例2−2で得たt−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートの1−ブタノール溶液489g(純分159.7g、0.797mol)に1−ブタノール80mLと酢酸エチル160mLを加えた後、R−マンデル酸123.7g(0.813mmol)を添加した。62℃まで昇温したところ、均一溶液となった。該溶液を50℃まで冷却したところ、結晶の析出が見られた。該混合物を50℃で3時間撹拌した後、10℃まで冷却し、同温度で5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、該結晶を酢酸エチル160mlで洗浄した。得られた結晶を乾燥することにより、白色結晶として(R)−t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸とのジアステレオマー塩109.0gを得た。収率38.8%。
実施例1と同様の方法で、高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、該ジアステレオマー塩中のt−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートの光学純度は、88.5%ee(R体)であった。
【0043】
実施例3−2:ジアステレオマー塩の精製
実施例3−1で得た(R)−t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸とのジアステレオマー塩107g(0.304mol、光学純度88.5%ee(R体))を1−ブタノール160mLと酢酸エチル160mLとの混合溶媒に加え、得られた混合物を75℃で3時間攪拌し、均一溶液を得た。該溶液を10℃まで冷却し、その温度で3時間撹拌したところ、結晶が析出した。該結晶をろ取し、酢酸エチル107mlで洗浄した。得られた結晶を乾燥することにより、白色結晶として(R)−t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸とのジアステレオマー塩98.5gを得た。収率92.1%。
実施例1と同様の方法により分析したところ、該ジアステレオマー塩中のt−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートの光学純度は、97.4%ee(R体)であった。
【0044】
実施例3−3:(R)−t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートの製造
実施例3−2で得た、(R)−t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸とのジアステレオマー塩96.5g(0.274mol、光学純度97.4%ee(R体))を塩化ナトリウム12.5g、水97mlおよび1−ブタノール193mlと混合し、得られた混合物を10〜30℃に保ちながら、そこに10重量%水酸化ナトリウム水溶液115g(0.287mol)を加えて攪拌し、分液処理により有機層を取得した。水層を1−ブタノール97mlで抽出し、得られた有機層と先に取得した有機層とを合一した。得られた有機層を水97mLで2回洗浄し、得られた有機層を減圧下に濃縮した。濃縮残渣に4−メチル−2−ペンタノン297mLを加え、得られた混合物を部分濃縮したところ、結晶が析出した。該結晶をろ取し、酢酸エチル107mlで洗浄した。得られた結晶を乾燥することにより、白色結晶として(R)−t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメート43.7gを得た。収率79.7%。
【0045】
得られたt−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートを3,5−ジニトロベンゾイルクロライドで誘導体化して、高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、該t−ブチル ピペリジン−3−イルカーバメートの光学純度は、99.8%ee(R体)であった。
<光学純度分析条件>
カラム :CHIRALCEL(登録商標)AS−RH(4.6×150mm,5μm)
移動相 :A=水、B=アセトニトリル、A/B=70/30
流量 :1.0ml/分
検出器 :UV254nm
保持時間:S体=10.4分、R体=15.6分
【0046】
製造例3−1:エチル ピリジン−3−イルカーバメートの製造
3−アミノピリジン30.0g(0.32mol)と炭酸カリウム48.5g(0.35mol)とアセトン100mlとを混合し、得られた懸濁液を氷冷しながら、そこにクロロ炭酸エチル36.3g(0.34mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた混合物を室温で終夜攪拌した。反応混合物から無機塩をろ別して反応溶液を得、該無機塩をアセトン100mlで洗浄して洗浄液を得、前記反応溶液と洗浄液とを混合した。得られた溶液に水100mlを加えて、アセトンを減圧留去した後、酢酸エチル100mlで抽出処理を行い、有機層を得た。得られた有機層を濃縮することにより、褐色の固体としてエチル ピペリジン−3−イルカーバメート38.2gを得た。収率72.1%。
【0047】
製造例3−2:エチル ピペリジン−3−イルカーバメート(ラセミ体)の製造
製造例3−1で得たエチル ピリジン−3−イルカーバメート38.2g(0.23mol)を酢酸124g(2.07mol)に溶解させた溶液にパラジウム炭素(5%)13gを加え、得られた混合物を水素圧0.5MPa、65℃で16時間攪拌した。反応終了後、パラジウム炭素をろ別して、反応溶液を得、パラジウム炭素を水200mlで洗浄して洗浄液を得、前記反応溶液と洗浄液とを混合した。得られた溶液を、あらかじめ水酸化ナトリウム92g(2.30mol)を水200mlに溶解させておいた溶液中に滴下した。滴下中の混合物の内温は、0〜10℃を保持した。滴下終了後、トルエン200mlで抽出処理することにより有機層を得た。水層をテトラヒドロフラン200mlで抽出処理し、得られた有機層と前記有機層とを合一した。得られた溶液を減圧下に濃縮し、得られた油状物をテトラヒドロフラン150mlに溶解し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた混合物をろ過処理し、得られた溶液を減圧下に溶媒を濃縮することにより、褐色の固体としてエチル ピペリジン−3−イルカーバメート30.9gを得た。収率78.1%。
【0048】
実施例4:エチル ピペリジン−3−イルカーバメートの光学分割
製造例3−2で得たエチル ピペリジン−3−イルカーバメート1.00g(5.81mmol)とR−マンデル酸0.97g(6.39mmol)とテトラヒドロフラン5mlとを混合した。得られた混合物を室温で攪拌したところ、均一溶液となった。該溶液を0〜5℃で20日間静置したところ、結晶が析出した。得られた懸濁液を室温で5時間攪拌した後、結晶をろ取した。該結晶をテトラヒドロフラン5mlで洗浄し、得られた結晶を乾燥することにより、白色結晶として(R)−エチル ピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸とのジアステレオマー塩0.44gを得た。収率23.3%。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:7.32(2H,d,J=7.8Hz),7.27−7.08(4H,m),4.55(1H,s),3.93(2H,q,J=3.9,12.2Hz),3.58−3.46(1H,m),3.08−2.90(2H,m),2.62−2.42(2H,m),1.78−1.63(2H,m),1.55−1.43(1H,m),1.37−1.25(1H,m),1.10(3H,t,J=7.3Hz)
13C−NMR(DMSO−d、400MHz)δppm:175.0,155.3,143.0,127.3,126.2,126.1,73.3,59.7,47.0,45.0,42.8,28.7,21.1,14.6
【0049】
トリエチルアミンを用いてジアステレオマー塩からエチル ピペリジン−3−イルカーバメートを取り出し、これを3,5−ジニトロベンゾイルクロライドで誘導体化して、高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、該ジアステレオマー塩中のエチル ピペリジン−3−イルカーバメートの光学純度は、95.8%ee(R体)であった。
<光学純度分析条件>
カラム :CHIRALCEL(登録商標)AS−RH(4.6×150mm,5μm)
移動相 :A=水、B=アセトニトリル、A/B=65/35
流量 :1.0ml/分
検出器 :UV254nm
保持時間:S体=8.1分、R体=16.8分
【0050】
実施例5:エチル ピペリジン−3−イルカーバメートの光学分割
製造例3−2で得たエチル ピペリジン−3−イルカーバメート1.00g(5.81mmol)とR−マンデル酸0.97g(6.39mmol)と2−プロパノール5mlとを混合した。得られた混合物を室温で攪拌したところ、均一溶液となった。該溶液を0〜5℃で21日間静置したところ、結晶が析出した。得られた懸濁液を室温で終夜攪拌した後、結晶をろ取した。該結晶を2−プロパノール5mlで洗浄し、得られた結晶を乾燥することにより、白色結晶として(R)−エチル ピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸とのジアステレオマー塩0.32gを得た。収率17.0%。
実施例4と同様の方法により分析したところ、該ジアステレオマー塩中のエチル ピペリジン−3−イルカーバメートの光学純度は、91.0%ee(R体)であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により得られるピペリジン−3−イルカーバメート化合物は、例えば、糖尿病治療薬の合成中間体(国際公開第2005/085246号、国際公開第2006/112331号参照。)として有用であり、本発明は、かかる中間体の製造方法として工業的に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、Rはエチル基またはt−ブチル基を表わす。)
で示されるピペリジン−3−イルカーバメート化合物のRS混合物と光学活性なマンデル酸とを接触させることを特徴とするピペリジン−3−イルカーバメート化合物の光学分割方法。
【請求項2】
光学活性なマンデル酸がR−マンデル酸である請求項1に記載の光学分割方法。
【請求項3】
式(1)

(式中、Rはエチル基またはt−ブチル基を表わす。)
で示されるピペリジン−3−イルカーバメート化合物のRS混合物と光学活性なマンデル酸とを接触させて光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物と光学活性なマンデル酸とのジアステレオマー塩を晶出させ、次いで、該ジアステレオマー塩に、酸または塩基を作用させる式(2)

(式中、Rは上記と同じ意味を表わし、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを表わす。)
で示される光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物またはその塩の製造方法。
【請求項4】
光学活性なマンデル酸がR−マンデル酸であり、得られる式(2)で示される光学活性なピペリジン−3−イルカーバメート化合物がR体である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
光学活性なエチルピペリジン−3−イルカーバメートと光学活性なマンデル酸とのジアステレオマー塩。
【請求項6】
光学活性なt−ブチルピペリジン−3−イルカーバメートと光学活性なマンデル酸とのジアステレオマー塩。
【請求項7】
(R)−エチルピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸とのジアステレオマー塩。
【請求項8】
(R)−t−ブチルピペリジン−3−イルカーバメートとR−マンデル酸とのジアステレオマー塩。

【公開番号】特開2009−256298(P2009−256298A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130407(P2008−130407)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】