説明

ピリドベンズオキサジン誘導体

グラム陽性菌、グラム陰性菌に抗菌活性が強力で、かつ高い安全性のキノロン系抗菌薬を提供する。下記式(1):
【化1】


[式中、R:水素、アルキル、シクロアルキル、あるいはアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド由来置換カルボニル;R:水素、アルキル、シクロアルキル;R:水素、アミノ、ハロゲン、アルキル;R:水素、フェニル、アセトキシメチル、ピバロイルオキシメチル、エトキシカルボニル、コリン、ジメチルアミノエチル、5−インダニル、フタリジニル、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル、3−アセトキシ−2−オキソブチル、アルキル、アルコキシメチル、フェニルアルキル;X、X、X:水素、ハロゲン]で表される化合物、その塩、それらの水和物;これを含有する抗菌薬、感染症治療薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、医薬、動物薬、水産用薬、または抗菌性の保存剤として有用なキノロン系合成抗菌薬に関する。
【背景技術】
【0002】
キノロン系合成抗菌薬(ピリドベンズオキサジン骨格の化合物を含む)は、ノルフロキサシンの発見以来、抗菌活性や体内動態が改善され、ほぼ全身の感染症に有効な化学療法薬に発展し、多くの化合物が臨床の場に供されている。
近年、キノロン系合成抗菌薬に対して低感受性菌が増加しつつある。例えば、グラム陽性菌において、β−ラクタム系抗生物質に非感受性菌の黄色ブドウ球菌(MRSA)や肺炎球菌(PRSP)、およびアミノ配糖体系抗菌薬に非感受性の腸球菌(VRE)などのグラム陽性球菌の如く、キノロン系合成抗菌薬以外の薬剤に耐性の菌であって、さらにキノロン系合成抗菌薬にも低感受性となった菌も増加している。したがって、臨床の場で、特に、グラム陽性球菌に対する有効性がさらに高い薬剤が望まれている。
また、キノロン系合成抗菌薬のいくつかは、非ステロイド性の抗炎症薬との併用によって痙攣が誘発される副作用、あるいは、光毒性、肝毒性、心毒性(致死的不整脈を誘発する心電図異常として観察される異常)、血糖値異常等の副作用が明らかとなっており、より安全性の高いキノロン系合成抗菌薬の開発も求められている。
一方、ピリドベンズオキサジン誘導体の代表薬としてレボフロキサシン(LVFX)が知られており、安全性に優れた抗菌化学療法薬として臨床の場で広く使用されている。このレボフロキサシンは、ピリドベンズオキサジン母核の10位に4−メチルピペラジン−1−イル基を有することを構造上の特徴としている。
【0003】
キノロン系合成抗菌薬の抗菌活性、体内動態、安全性には、キノロン骨格の7位(あるいは、ピリドベンズオキサジン母核の場合は10位)に存在する置換基の構造が大きく影響することが知られている。そのなかで、ピリドベンズオキサジン母核の10位の置換基として3−アミノピロリジニル基を有するキノロン誘導体は、例えば、ピペラジニル基を置換基として有するキノロン誘導体よりも、グラム陰性菌およびグラム陽性菌に対して強い抗菌活性を有することが知られている(非特許文献1・2参照)。
しかしながら、上記の3−アミノメチルピロリジン−1−イル基等を置換基として有するキノロン誘導体は強い抗菌活性を示すものの、これらの化合物の多くは、選択毒性が低い(非特許文献2参照)ために、細菌だけではなく、真核生物の細胞に対しても作用し、医薬または動物薬として使用するためには、選択毒性を高めたドラッグデザインが必要である。そのような強い抗菌活性と高い選択毒性を兼ね備えた化合物の登場が臨床の場では求められている。
【0004】
一方、3−アミノ−4−アルキル置換ピロリジン−1−イル基を7位の置換基として有するピリドベンズオキサジン誘導体は、例えば、ピリドベンズオキサジン母核の10位の置換基として、シス−3−アミノ−4−メチルピロリジン−1−イル基を有するキノロンカルボン酸誘導体(A)が特許文献1に記載されている。しかしながら、その10位の置換基がシス−3−アミノ−4−フッ素置換メチルピロリジン−1−イル基の化合物であるピリドベンズオキサジン誘導体類の具体的な記載はない。
【0005】
【化1】

【0006】
さらに、シス−3−アミノ−4−フルオロメチルピロリジン−1−イル基を7位の置換基として有するキノロンカルボン酸誘導体(B)が特許文献2・非特許文献3に開示されている。(尚、この式(B)における置換基の定義は、特許文献2において定義されたものであって、同じ記号であっても本願明細書における置換基の定義とは無関係である。)
【0007】
【化2】

このキノロン骨格8位の置換基は、メトキシ基に代表される炭素数1から6のアルコキシ基、またはハロゲノメトキシ基に限定されている。
さらに、キノロン骨格1位および8位のそれぞれの置換基を結合させた型の誘導体は全く記載されておらず、特許文献2には、ピリドベンズオキサジン類において、母核の10位の置換基がシス−3−アミノ−4−フッ素置換メチルピロリジン−1−イル基である化合物の具体的な記載はない。
【0008】
また、シス−3−アミノ−4−フルオロ置換メチルピロリジン−1−イル基を7位の置換基として有するキノロンカルボン酸誘導体が非特許文献4に開示され、その具体的な例として、シス−3−アミノ−4−トリフルオロメチルピロリジン−1−イル基を置換基として有する8−メトキシキノロン誘導体(C)が記載されている。しかしながら、非特許文献4に記載された化合物はキノロンカルボン酸誘導体のみであり、ピリドベンズオキサジン類において、母核の10位の置換基がシス−3−アミノ−4−フッ素置換メチルピロリジン−1−イル基である化合物の具体的な記載はない。
【0009】
【化3】

一方、シス−3−アミノ−4−フッ素置換ピロリジン誘導体が特許文献2および非特許文献3・4に例示されたが、本発明に包含されるシス−3−アミノ−4−ジフルオロピロリジン置換基を有するキノロン誘導体に関する記載は全くない。さらに本発明に関わるシス−3−アミノ−4−ジフルオロメチルピロリジン誘導体の製造方法および製造中間体に関する具体的な記述や実施例の記載は全くない。
【特許文献1】欧州特許208291号明細書(特開昭62−4284号公報)
【特許文献2】国際公開第98/58923パンフレット
【非特許文献1】インターナショナル ジャーナル オブ アンチミクロビアル エージェンツ,第16巻,5頁(2000年)
【非特許文献2】ジャーナル オブ アンチミクロビアル ケモセラピー,第33巻,685頁(1994年)
【非特許文献3】ケミカル ファーマシューティカル ブレタン,第48巻(第11号),1667頁(2000年)
【非特許文献4】バイオオーガニック メディシナル ケミストリー レターズ,第8巻,2833頁(1998年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して強力な抗菌活性を示し、しかも高い安全性を有するキノロン系抗菌薬および感染症治療薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、本発明の式(1)で表わされる化合物が、グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して幅広く、且つ、強力な抗菌活性を示すこと、とりわけMRSAおよびPRSPを含む耐性グラム陽性球菌に代表される耐性菌に対して強い抗菌活性を示し、さらにヒト用抗菌医薬として安全に使用可能な安全性を見出し、本願発明を完成させた。
すなわち本願発明は、次の式(1)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に関するものである。
【0012】
【化4】

[式中、Rは、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数3から6のシクロアルキル基を表わすか、あるいはアミノ酸、ジペプチド、またはトリペプチド由来の置換カルボニル基を表わすが、このアルキル基は、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキルチオ基、または炭素数1から6のアルコキシ基からなる群の基から選ばれる1以上の基を置換基として有していてもよく、
は、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数3から6のシクロアルキル基を表わすが、このアルキル基は、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキルチオ基、または炭素数1から6のアルコキシ基からなる群の基から選ばれる1以上の基を置換基として有していてもよく、
は、水素原子、アミノ基、ハロゲン原子、または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数2から6のアシル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有していてもよく、
は、水素原子、フェニル基、アセトキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、エトキシカルボニル基、コリン基、ジメチルアミノエチル基、5−インダニル基、フタリジニル基、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル基、3−アセトキシ−2−オキソブチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から7のアルコキシメチル基、または炭素数1から6のアルキレン基とフェニル基から構成されるフェニルアルキル基を表わし、
およびXは、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表わし、
Xは、水素原子またはハロゲン原子を表わす。]
さらに、本願発明は、式(1)の化合物が、立体化学的に単一な化合物である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(1)で表わされる化合物が、下記式で表わされる構造である化合物、その塩、またはそれらの水和物;
【0013】
【化5】

[式中、R、R、R、R、X、X、およびXは先の定義に等しい。]
式(1)において、XおよびXが、水素原子である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(1)において、XおよびXのどちらか一方が、フッ素原子であり、他方が、水素原子である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(1)において、RおよびRが、水素原子である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(1)において、Rがアミノ酸、ジペプチド、またはトリペプチド由来の置換カルボニル基であって、Rが水素原子である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(1)において、RおよびRのどちらか一方が、水素原子であり、他方が、シクロプロピル基である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(1)において、Xがフッ素原子である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(1)において、Rが、水素である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;式(1)において、Rが、水素原子である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
10−[3−(S)−アミノ−4−(S)−フルオロメチルピロリジン−1−イル]−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸、その塩、またはそれらの水和物;
10−[3−(S)−アミノ−4−(S)−ジフルオロメチルピロリジン−1−イル]−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸、その塩、またはそれらの水和物;
上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物を有効成分として含有する医薬;
上記の化合物、その塩、または水和物を有効成分として含有する抗菌薬、抗菌性製剤;
上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物を有効成分として含有する感染症の治療薬、感染症治療製剤;
上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物の有効量を投与する疾病の治療方法;
上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物の有効量を投与する感染症の治療方法;
上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物を有効成分として配合させる医薬の生産方法;
上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物を有効成分として配合させる抗菌薬の生産方法;
上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物を有効成分として配合させる感染治療薬の生産方法;
等に関するものである。
【0014】
また本願発明は、下記式(3)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に関するものである。
【0015】
【化6】

[式中、R11は、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数3から6のシクロアルキル基を表わすか、あるいはアミノ基の保護基を表わし、さらに、無置換であるかあるいは保護されてもよいアミノ基を有するアミノ酸、ジペプチド、またはペプチド由来の置換カルボニル基を表わすが、このアルキル基は、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキルチオ基、または炭素数1から6のアルコキシ基からなる群の基から選ばれる1以上の基を置換基として有していてもよい。
は、式(1)において定義したものと同じである。
Q'は、アミノ基の保護基または水素原子を意味する。];
式(3)で表わされる化合物が、下記の式で表わされる構造である化合物、その塩、またはそれらの水和物;
【0016】
【化7】

[式中、R11、RおよびQ'は先の定義に等しい。]
そして本願発明はさらに、
アミノ基の保護基が、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、および置換シリル基からなる群の基から選ばれる基である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
アミノ基の保護基が、第三級ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パラニトロベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、ベンゾイル基、第三級ブチル基、ベンジル基、パラニトロベンジル基、パラメトキシベンジル基、(R)−1−フェニルエチル基、(S)−1−フェニルエチル基、トリフェニルメチル基、メトキシメチル基、第三級ブトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、トリメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、第三級ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、第三級ブチルジフェニルシリル基からなる群から選ばれる保護基である、上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
11およびQ'がアミノ基の保護基であって、同一の保護基ではない、上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
11およびQ'がアミノ基の保護基であって、異なる反応条件で脱保護もしくは切断される保護基である、上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(3)の化合物が、立体化学的に単一な化合物である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
3−(S)−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−(S)−ジフルオロメチル−1−(R)−フェニルメチルピロリジン、その塩、またはそれらの水和物;
3−(S)−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−(S)−ジフルオロメチル−ピロリジン、その塩、またはそれらの水和物;
上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物の、式(1)で表わされる化合物の製造のための使用;
等にも関するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のピリドベンズオキサジン誘導体は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して極めて優れた抗菌活性を有する。従って、本発明のピリドベンズオキサジン誘導体は抗菌薬および感染症治療薬として有用である。また、本発明のピリドベンズオキサジン誘導体は、急性毒性が弱く、安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本願発明の式(1)
【0019】
【化8】

[R、R、R、R、X、XおよびXの定義は前の通りである。]
で表わされる化合物の各置換基について述べる。
【0020】
置換基Rは、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数3から6のシクロアルキル基を表わすか、あるいはアミノ酸、ジペプチド、またはトリペプチド由来の置換カルボニル基を表わす。また、置換基Rは、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数3から6のシクロアルキル基を表わす。
ここでRまたはRがアルキル基であるときこれらは、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群の基から選ばれる1以上の基を置換基として有していてもよい。
【0021】
またはRがアルキル基であるときには、直鎖状または分枝状のいずれでもよいが、メチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基であることが好ましく、これらのうちではメチル基およびエチル基が好ましく、さらにメチル基が好ましい。
このアルキル基が水酸基またはアミノ基を置換基として有する場合、これらはアルキル基の末端の炭素原子上に置換したものがより好ましい。水酸基を有するアルキル基としては炭素数3までのものがよく、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基等が好ましい。また、アミノ基を有するアルキル基としては炭素数3までのものがよく、アミノメチル基、2−アミノエチル基、2−アミノプロピル基、3−アミノプロピル基等が好ましい。
アルキル基がハロゲン原子を置換基として有する場合、アルキル基は、炭素数1から6の直鎖状または分枝状のいずれでもよく、ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。またフッ素原子の数は、モノ置換からパーフルオロ置換までのいずれでもよい。モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基等を例示することができる。
【0022】
アルキル基がアルキルチオ基またはアルコキシ基を置換基として有する場合、アルキル基は直鎖状または分枝状のいずれでもよく、アルキルチオ基またはアルコキシ基もアルキル基は直鎖状または分枝状のいずれでもよい。アルキルチオ基を有するアルキル基としてはアルキルチオメチル基、アルキルチオエチル基、アルキルチオプロピル基が好ましく、さらにはアルキルチオ基も炭素数1から3までのものが好ましい。さらに好ましいものとして、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、メチルチオエチル基を挙げることができる。また、アルコキシ基を有するアルキル基としてはアルコキシメチル基、アルコキシエチル基、アルコキシプロピル基が好ましく、さらにはアルコキシ基も炭素数1から3までのものが好ましい。さらに好ましいものとして、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基を挙げることができる。
【0023】
またはRがシクロアルキル基であるときは、シクロプロピル基、シクロブチル基が好ましく、シクロプロピル基がより好ましい。
およびRの好ましい組み合わせとしては、Rが水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、またはアミノ酸、ジペプチド、もしくはトリペプチド由来の置換カルボニル基であって、Rが水素原子である場合が好ましい。これらのうちより好ましい組み合わせとしては、Rが水素原子、アルキル基、またはシクロアルキル基であって、Rが水素原子である場合である。このアルキル基としては、メチル基またはエチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基またはシクロブチル基が好ましく、特にシクロプロピル基が好ましい。さらに、RおよびRのより好ましい組み合わせとしては、RおよびRがいずれも水素原子であるか、Rがメチル基であって、Rが水素原子である組み合わせである。
置換基Rがアミノ酸、ジペプチド、またはトリペプチド由来の置換カルボニル基であって、Rが水素原子であるキノロン誘導体はプロドラッグとして特に有用である。これに関する具体的な例は後述する。
【0024】
置換基Rは、水素原子、アミノ基、ハロゲン原子、または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、および炭素数2から6のアシル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有していてもよい。
がアルキル基であるときには、炭素数1から6の直鎖状または分枝状のいずれでもよいが、メチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基であることが好ましく、これらのうちではメチル基およびエチル基が好ましく、さらにメチル基が好ましい。
置換基Rは、水素原子、アルキル基、またはアミノ基が好ましく、これらのうちでは、特に、水素原子、メチル基、または無置換のアミノ基(−NH)が好ましく、さらに水素原子がより好ましい。
【0025】
置換基Rは、水素原子、フェニル基、アセトキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、エトキシカルボニル基、コリン基、ジメチルアミノエチル基、5−インダニル基、フタリジニル基、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル基、3−アセトキシ−2−オキソブチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から7のアルコキシメチル基、または炭素数1から6のアルキレン基とフェニル基から構成されるフェニルアルキル基を表わす。
【0026】
本願発明の化合物を抗菌目的で使用する場合、置換基Rが水素原子であるカルボン酸化合物を使用するのが好ましい。一方、カルボン酸部分がエステルとなったキノロン誘導体は合成中間体やプロドラッグとして有用である。これらについては後に詳しく述べる。
【0027】
置換基XおよびXは、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表わし、ハロゲン原子としては、特にフッ素原子が好ましい。
およびXの組み合わせとしては、XおよびXがいずれも水素原子であるか、または一方が水素原子であって、もう一方がフッ素原子である場合が好ましい。
【0028】
置換基Xは、水素原子またはハロゲン原子を表わし、ハロゲン原子としては、特にフッ素原子が好ましい。Xとしては、フッ素原子がより好ましい。
【0029】
本願発明化合物は、次の式(5)に示す構造の基を、
【0030】
【化9】

9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸骨格の10位に有し、さらに、9位にフッ素原子が置換することによって優れた特徴を示す。
式(5)で示される置換基において、ピロリジン環上の3位のアミノ置換基と4位のフルオロメチル基とがシス配置であることが特徴であり、さらにシス体のうちでは、(3S,4S)−体の絶対配置であるものがより好ましい。
【0031】
すなわち、9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸骨格の10位の置換基が、3−(S)−アミノ−4−(S)−フルオロメチルピロリジン−1−イル基または3−(S)−アミノ−4−(S)−ジフルオロメチルピロリジン−1−イル基であること、且つ、9位にフッ素原子を置換させることにより、本願発明化合物は優れた抗菌活性や体内動態、安全性を兼ね備えた特性を示すことが明らかになった。
【0032】
本願発明化合物である式(1)の化合物がジアステレオマーの存在する構造である場合、本願発明化合物をヒトや動物に投与する際は単一のジアステレオマーからなるものを投与することが好ましい。この、『単一のジアステレオマーからなる』とは、他のジアステレオマーを全く含有しない場合だけでなく、化学的に純粋程度の場合を含むと解される。
つまり、物理定数や、生理活性に対して影響がない程度であれば他のジアステレオマーが含まれていてもよいと解釈されるのである。
【0033】
また『立体化学的に単一な』とは、化合物等において不斉炭素原子が含まれるために、異性体関係となる複数種が存在する場合にそれらのうちの一種のみにて構成されたものであることを意味する。この場合においてもこの『単一性』に関しても上記と同様に考える。
【0034】
本願発明の9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸誘導体は遊離体のままでもよいが、酸付加塩としてあるいはカルボキシ基の塩としてもよい。酸付加塩とする場合の例としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩類;あるいは、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルオン酸塩、トルエンスルホン酸塩(スルホン酸塩類);酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩(カルボン酸塩類);等の有機酸塩類を挙げることができる。
【0035】
またカルボキシ基の塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩類;アンモニウム塩、またトリエチルアミン塩やN−メチルグルカミン塩、トリス−(ヒドロキシメチルヒドロキシメチルアミノメタン塩;等を例示することができるがこれらのうちの無機塩類、有機塩類の何れでもよい。
【0036】
またこれらの9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸誘導体の遊離体や酸付加塩、カルボキシ基の塩は水和物として存在することもある。
【0037】
本願発明の化合物を抗菌目的で使用する場合、置換基Rが水素原子であるカルボン酸化合物を使用するのが好ましいが、一方、カルボン酸部分がエステルとなったピリドベンズオキサジン誘導体は合成中間体やプロドラッグとして有用である。例えば、アルキルエステル類やベンジルエステル類、アルコキシアルキルエステル類、フェニルアルキルエステル類およびフェニルエステル類は合成中間体として有用である。
【0038】
また、プロドラッグとして用いられるエステルとしては、生体内で容易に切断されて遊離のカルボン酸化合物を生成するようなエステルであり、例えば、アセトキシメチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステル、エトキシカルボニルエステル、コリンエステル、ジメチルアミノエチルエステル、5−インダニルエステルおよびフタリジニルエステル、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチルエステル、3−アセトキシ−2−オキソブチルエステル等のオキソアルキルエステルを挙げることができる。
【0039】
さらに、置換基Rがアミノ酸、ジペプチド、またはトリペプチド由来の置換カルボニル基であって、Rが水素原子であるピリドベンズオキサジン誘導体もプロドラッグとして有用である。
【0040】
この様なプロドラッグを得るために用いられるアミノ酸、ジペプチド、およびトリペプチドとしては、これらのカルボキシル基とピリドベンズオキサジン誘導体の10位の置換基に存在するアミノ基から形成されるペプチド結合が生体内で切断されて遊離のアミン化合物を生成するものである。このようなプロドラッグを得るための置換基としては、例えば、グリシン、アラニン、アスパラギン酸等のアミノ酸類、グリシン−グリシン、グリシン−アラニン、アラニン−アラニン等のジペプチド類、およびグリシン−グリシン−アラニン、グリシン−アラニン−アラニン等のトリペプチド類から導かれる置換カルボニル基を挙げることができる。
【0041】
式(1)で表わされる本願発明の化合物は種々の方法により製造されるが、その好ましい一例を挙げれば、例えば、式(6)
【0042】
【化10】

で表わされる化合物を、式(7)
【0043】
【化11】

[式中、R11は、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数3から6のシクロアルキル基を表わすか、あるいはアミノ基の保護基を表わし、さらに、無置換であるかあるいはアミノ基の保護基で保護されたアミノ基を有するアミノ酸、ジペプチド、またはトリペプチド由来のカルボニル基を表わすが、
このアルキル基は、保護されていてもよい水酸基およびアミノ基、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキルチオ基、または炭素数1から6のアルコキシ基からなる群の基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。
は、式(1)において定義したものと同じである。
また、XおよびXは、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表わす。]
で表わされる化合物あるいはその付加塩と反応させる(付加塩の場合には塩を遊離体にする試剤の存在下において反応を実施する。)ことによって製造することができる。
酸付加塩の例としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩類;あるいは、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩(スルホン酸塩類);酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩(カルボン酸塩類);等の有機酸塩類を挙げることができる。
【0044】
反応は、溶媒を使用して、または溶媒を使用せず行うことができる。反応に使用する溶媒は、反応に対して悪影響を与えないものであればよく、例えばジメチルスルホキシド、ピリジン、アセトニトリル、エタノール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、水、3−メトキシブタノール、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0045】
反応は、無機塩基または有機塩基のような酸受容体、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩または炭酸水素塩素塩等の無機塩基性化合物、あるいはトリエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロウンデセン、N−メチルピペリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基性化合物の存在下で行うのが好ましい。
【0046】
反応温度は、通常、室温ないし200℃の温度範囲であればよく、好ましくは、25から150℃の範囲である。反応時間は30分から48時間の範囲でよく、通常は30分から8時間程度で完結する。
【0047】
式(7)で表わされる化合物は、式(6)で表わされる化合物に対して、塩基性化合物の存在下で、0.5から3.0当量の範囲で使用することが好ましく、このうち1.0から2.0当量の範囲が好ましく、さらに、1.0から1.2当量の範囲で使用することが好ましい。
【0048】
置換基R11がアミノ基の保護基でない場合およびRは、式(1)で示したものと同じであるが、R11がアルキル基で、さらにこのアルキル基が水酸基またはアミノ基を置換基として有する場合、これらは無置換であるかあるいは保護されていてもよい水酸基またはアミノ基を表わす。また、R11がアミノ酸、ジペプチド、またはトリペプチド由来の置換カルボニル基のときは、ここに存在するアミノ基は保護基によって保護されていることが好ましく、この目的で保護される保護基としては、R11で示すものと同じでよい。
置換基XおよびXは、式(1)で示したものと同じである。
【0049】
アミノ基の保護基としては、この分野で通常使用されている保護基であればよく、例えば、第三級ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基等の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基類;ベンジルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パラニトロベンジルオキシカルボニル基等の置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基類;アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、ベンゾイル基等の置換基を有していてもよいアシル基類;第三級ブチル基、ベンジル基、パラニトロベンジル基、パラメトキシベンジル基、トリフェニルメチル基等の置換基を有していてもよいアルキル基類、または置換基を有していてもよいアラルキル基類;メトキシメチル基、第三級ブトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基等の置換基を有していてもよいエーテル類;トリメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、第三級ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、第三級ブチルジフェニルシリル基等の置換シリル基類;を挙げることができる。
【0050】
また、脱保護が必要な場合は、保護基に対応した適切な反応条件を選択して保護基を除去することで式(1)で示される目的化合物を得ることができる。
式(7)に示す化合物は、次の式(8)
【0051】
【化12】

[式中、R11、R、XおよびXは、式(7)において定義したものと同じである。
Q'は、アミノ基の保護基を表わす。
このアミノ基の保護基は、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、および置換シリル基からなる群の基から選ばれるものでよい。]
で表わされる化合物からQ'を除去して生成させることができる。
【0052】
この上記の化合物は、塩、水和物、または塩の水和物としても存在し得る。酸付加塩の例としては、無機酸塩および有機酸塩を挙げることができる。これらの具体例としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩類;あるいはメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩(スルホン酸塩類);酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩(カルボン酸塩類);等の有機酸塩類を挙げることができる。
【0053】
11がアミノ酸、ジペプチド、またはトリペプチド由来の置換カルボニル基である場合、これらは式(7)または(8)の段階で導入されていてもよいが、式(1)でRおよびRが水素原子である化合物を得たのちに導入してもよい。
【0054】
11とQ'がいずれもアミノ基の保護基である場合、これらは同一でも異なっていてもよいが、それぞれが異なる反応条件によって除去される、すなわち一方は選択的に除去されるが、もう一方は除去されずに残るような保護基であることが化合物(1)を製造するためには好都合である。
アミノ基の保護基である、R11とQ'としては、以下のものを挙げることができる。すなわち、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、および置換シリル基である。
【0055】
具体的には、第三級ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基等の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基類;ベンジルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パラニトロベンジルオキシカルボニル基等の置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基類;アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、ベンゾイル基等の置換基を有していてもよいアシル基類;第三級ブチル基、ベンジル基、パラニトロベンジル基、パラメトキシベンジル基、トリフェニルメチル基等の置換基を有していてもよいアルキル基類または置換基を有していてもよいアラルキル基類;メトキシメチル基、第三級ブトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基等のエーテル類、トリメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、第三級ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、第三級ブチルジフェニルシリル基等の置換シリル基類である。
【0056】
式(1)の化合物の製造のためには、式(6)で表わすBFキレート化合物の代わりにB(OAc)キレート化合物も使用することができ、また、このようなホウ素キレート化合物の代わりにCOOH化合物も使用することができる。
【0057】
本願発明化合物は、強い抗菌作用を有することから人体、動物、および魚類用の医薬としてあるいは農薬、食品の保存剤として使用することができる。
【0058】
本願発明化合物を人体用の医薬として使用する場合、投与量は、投与対象の年齢、体重、感染した病原菌の種類、感染の程度によって異なるが、成人一日あたり50mgから1gの範囲でよく、好ましくは100mgから500mgの範囲である。
また、動物用としての投与量は、投与の目的(治療あるいは予防であるか等)、処置すべき動物の種類や大きさ、感染した病原菌の種類、感染の程度によって異なるが、一日量として一般的には動物の体重1kg当たり1mgから200mgの範囲でよく、好ましくは5mgから100mgの範囲である。
この一日量を一日1回、あるいは2から4回に分けて投与する。なお、一日量は必要によっては上記の量を超えてもよい。
【0059】
本願発明化合物は、各種の感染症の原因となる広範囲の微生物類に対して活性であり、これらの病原体によって引き起こされる疾病を治療し、予防し、または軽減することができる。
【0060】
本願発明化合物が有効なバクテリア類又はバクテリア様微生物類として、ブドウ球菌属、化膿レンサ球菌、溶血レンサ球菌、腸球菌、肺炎球菌、ペプトストレプトコッカス属、淋菌、大腸菌、シトロバクター属、シゲラ属、肺炎桿菌、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、緑膿菌、インフルエンザ菌、アシネトバクター属、カンピロバクター属、トラコーマクラミジア等を例示することができる。
【0061】
またこれらの病原体によって引き起こされる疾病としては、毛のう炎、せつ、よう、丹毒、蜂巣炎、リンパ管(節)炎、ひょう疸、皮下膿瘍、汗腺炎、集簇性ざ瘡、感染性粉瘤、肛門周囲膿瘍、乳腺炎、外傷・熱傷・手術創などの表在性二次感染、咽喉頭炎、急性気管支炎、扁桃炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、慢性呼吸疾患の二次感染、肺炎、腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、副睾丸炎、淋菌性尿道炎、非淋菌性尿道炎、胆のう炎、胆管炎、細菌性赤痢、腸炎、子宮付属器炎、子宮内感染、バルトリン腺炎、眼瞼炎、麦粒腫、涙のう炎、瞼板腺炎、角膜潰瘍、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、腹膜炎、心内膜炎、敗血症、髄膜炎、皮膚感染症等を例示することができる。
【0062】
さらに、本願発明化合物が有効な抗酸菌類として、結核菌群[マイコバクテリウム(以下M.と略す)チュバクロシス、M.ボビウス、M.アフリカナム]や非定型抗酸菌群[M.カンサシイ、M.マライナム、M.スクロファセウム、M.アビウム、M.イントラセルラーレ、M.キセノビ、M.フォーチュイタム、M.チュロネー]等を例示することができる。
【0063】
また、これらの病原体によって引き起こされる抗酸菌感染症は、その起因菌別に、結核症、非定型抗酸菌症、らいの3つに大きく分類される。結核菌感染症は、肺の他に、胸腔、気管・気管支、リンパ節、全身播種性、骨関節、髄膜・脳、消化器(腸・肝臓)、皮膚、乳腺、眼、中耳・咽頭、尿路、男性性器、女性性器等にみられる。非定型抗酸菌症(非結核性抗酸菌性)の主な羅患臓器は肺であり、その他にも局所リンパ節炎、皮膚軟部組織、骨関節、全身播種性型等を例示することができる。
また、動物の感染症の原因となる各種の微生物、例えば、エシエリキア属、サルモネラ属、パスツレラ属、ヘモフィルス属、ボルデテラ属、スタヒロコッカス属、マイコプラズマ属等に有効である。
【0064】
具体的な疾病名を例示すると、鳥類では大腸菌症、ひな白痢、鶏パラチフス症、家禽コレラ、伝染性コリーザ、ブドウ球菌症、マイコプラズマ感染症等、豚では大腸菌症、サルモネラ症、パスツレラ症、ヘモフィルス感染症、萎縮性鼻炎、滲出性表皮炎、マイコプラズマ感染症等、牛では大腸菌症、サルモネラ症、出血性敗血症、マイコプラズマ感染症、牛肺疫、乳房炎等、犬では大腸菌性敗血症、サルモネラ感染症、出血性敗血症、子宮蓄膿症、膀胱炎等、そして猫では滲出性胸膜炎、膀胱炎、慢性鼻炎、ヘモフィルス感染症、仔猫の下痢、マイコプラズマ感染症等を挙げることができる。
【0065】
本願発明化合物を含む抗菌製剤は、投与法に応じて適当な製剤を選択し、通常用いられている各種製剤の調製法にて調製できる。本願発明化合物を含む抗菌製剤の剤型としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、油性ないし水性の懸濁液等を経口用製剤として例示できる。抗菌製剤は、製剤学上許容される担体、又は、希釈剤を含んでよい。
製剤化は、公知の製剤技術により行うことができ、製剤中には適当な製剤学上許容される添加物を加えることができる。製剤添加物は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜加えればよい。製剤添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等を挙げることができる。
【0066】
賦形剤としては、結晶セルロース、粉末セルロース、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、乳酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、乳糖、白糖、D−マンニトール、トレハロース、ブドウ糖、果糖等を挙げることができる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、アルギン酸、部分アルファー化デンプン、ベントナイト等を挙げることができる。
結合剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニールアルコール、ポビドン、マクロゴール、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニールポリマー、ゼラチン、デキストリン、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、プルラン等を挙げることができる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、硬化油等を挙げることができる。 これら製剤添加物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0067】
注射剤としては、製剤中に安定剤、防腐剤、溶解補助剤を使用することもあり、これらの補助剤を含むこともある溶液を容器に収納後、凍結乾燥等によって固形製剤として用時調製の製剤としても良い。また一投与量を容器に収納しても良く、また多投与量を同一の容器に収納しても良い。
【0068】
また外用製剤として、溶液剤、懸濁液、乳濁液、軟膏、ゲル、クリーム、ローション、スプレー等を例示できる。
【0069】
固形製剤としては、活性化合物とともに製剤学上許容されている添加物を含み、例えば、充填剤類や増量剤類、結合剤類、崩壊剤類、溶解促進剤類、湿潤剤類、潤滑剤類等を必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。
【0070】
液体製剤としては、溶液、懸濁液、乳液剤等を挙げることができるが、添加剤として懸濁化剤、乳化剤等を含むこともある。
【0071】
本願発明化合物を動物に投与する方法としては、直接あるいは飼料中に混合して経口的に投与する方法、また一旦溶液とした後、直接もしくは飲水、飼料中に添加して経口的に投与する方法、注射によって投与する方法等を例示することができる。
【0072】
本願発明化合物を動物に投与するための製剤としては、この分野において通常用いられている技術によって、適宜、散剤、細粒剤、可溶散剤、シロップ剤、溶液剤、あるいは注射剤とすることができる。
【0073】
次に製剤処方例を示す。
【0074】
製剤例1. [カプセル剤] :
実施例1の化合物 100.0mg
コーンスターチ 23.0mg
CMCカルシウム 22.5mg
ヒドロキシメチルセルロース 3.0mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg
計 150.0mg

製剤例2. [溶液製剤] :
実施例1の化合物 1〜10g
酢酸又は水酸化ナトリウム 0.5〜2g
パラオキシ安息香酸エチル 0.1g
精製水 88.9〜98.4g
計 100g
製剤例3. [飼料混合用散剤] :
実施例1の化合物 1〜10g
コーンスターチ 98.5〜89.5g
軽質無水ケイ酸 0.5g
計 100g
【実施例】
【0075】
次に本願発明を実施例と参考例により説明するが、本願発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
参考例1:3−ジフルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン−2−オン(光学異性体A, 光学異性体B)
【0077】
【化13】

【0078】
塩化オキサリル(958μl,10.98mmol)の塩化メチレン(40ml)溶液に−78℃にてジメチルスルホキシド(1.56ml,21.98mmol)を滴下し、同温で30分間攪拌した。ついで4−(S)−ヒドロキシメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン−2−オン(2.19g,9.99mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液をここに滴下し、同温で2時間攪拌した。その後、トリエチルアミン(6.96ml,49.93mmol)を加え室温で1時間攪拌した。反応液に水を加え、塩化メチレンで抽出し、抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残留物を塩化メチレン(50ml)に溶解し、−78℃にてジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(3.30ml,24.98mmol)を加えた後、ゆっくり昇温しながら室温で3日間攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1の溶出部より標記化合物の低極性化合物(光学異性体A)818mg(34%)、次いで高極性化合物(光学異性体B)795mg(33%)を得た。

光学異性体A:
H−NMR(CDCl)δ:1.55(3H,2s),2.46−2.72(3H,m),3.10(1H,dd,J=8.30,10.30Hz),3.35(1H,dd,J=5.37,10.26Hz),5.52(1H,q,J=6.83Hz),5.79(1H,ddd,J=3.90,54.15,112.30Hz),7.27−7.38(5H,m).
光学異性体B:
H−NMR(CDCl)δ:1.54(3H,2s),2.46(1H,dd,J=6.35,17.09Hz),2.63(1H,dd,J=9.63,17.09Hz),2.72−2.81(1H,m),2.96(1H,dd,J=5.37,10.74Hz),3.44(1H,dd,J=8.79,10.74Hz),5.48−5.77(2H,m),7.26−7.37(5H,m).
【0079】
参考例2:トランス−4−ジフルオロメチル−3−ヒドロキシ−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリジン−2−オン(光学異性体A, 光学異性体B)
【0080】
【化14】

ジイソプロピルアミン(423μl,3.02mmol)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液に窒素雰囲気下−78℃にて、1.66mol/l n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.82ml)を滴下し、0℃にて15分間攪拌した。その後、−78℃に冷却し、この溶液を3−ジフルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン−2−オン(光学異性体A;555mg,2.32mmol)のテトラヒドロフラン(5ml)溶液に、窒素雰囲気下−78℃にて滴下した。この反応液を同温で1時間攪拌した後、酸素雰囲気下、同温で1時間攪拌した。反応終了後、反応液に5%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、テトラヒドロフランを減圧留去した。残留物をクロロホルムで抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、3%メタノール−クロロホルムの溶出部より標記化合物(光学異性体A)357mg(60%)を得た。
【0081】
尚、同様の反応、操作により、3−ジフルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン−2−オン(光学異性体B;555mg,2.32mmol)から、標記化合物(光学異性体B)411mg(69%)を得た。

光学異性体A:
H−NMR(CDCl)δ:1.55(3H,2s),2.56−2.66(1H,m),3.07(1H,dd,J=8.79,10.25Hz),3.30−3.33(1H,m),3.50(1H,brs),4.39(1H,d,J=8.8Hz),5.48(1H,q,J=6.84Hz),5.90(1H,ddd,J=3.90,52.24,108.39Hz),7.27−7.38(5H,m).
光学異性体B:
H−NMR(CDCl)δ:1.58(3H,2s),2.71−2.80(1H,m),2.93(1H,t,J=10.79Hz),3.40(1H,dd,J=8.81,10.26Hz),3.89(1H,brs),4.34(1H,d,J=8.79Hz),5.47(1H,q,J=7.33Hz),6.00(1H,J=ddd,3.41,56.15,111.32Hz),7.26−7.38(5H,m).
【0082】
参考例3:シス−3−アジド−4−フルオロメチル−N−[1―(R)−フェニルエチル]−2−ピロリジン−2−オン(光学異性体A, 光学異性体B)
【0083】
【化15】

トランス−4−ジフルオロメチル−3−ヒドロキシ−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリジン−2−オン(光学異性体A;1.30g,5.09mmol)の塩化メチレン(20ml)溶液にトリエチルアミン(1.42ml,10.19mmol)を加え、氷冷下、塩化メタンスルホニル(591μl,7.64mmol)を滴下し、同温で30分間攪拌した。反応終了後、反応液を10%クエン酸水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をN,N−ジメチルホルムアミド(40ml)に溶解し、アジ化ナトリウム(1.32g,20.3mmol)を加え、100℃にて3時間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル:ヘキサン=1:4の溶出部より標記化合物(光学異性体A)563mg(39%)を得た。
【0084】
尚、同様の反応、操作により、トランス−4−ジフルオロメチル−3−ヒドロキシ−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリジン−2−オン(光学異性体B;1.00g,3.91mmol)から、標記化合物(光学異性体B)433mg(39%)を得た。

光学異性体A:
H−NMR(CDCl)δ:1.58(3H,2s),2.68−2.75(1H,m),3.00(1H,dd,J=7.81,10.74Hz),3.41(1H,dd,J=5.37,10.25Hz),4.30(1H,d,J=8.30Hz),5.48(1H,q,J=7.33Hz),5.99(1H,ddd,J=3.89,55.67,110.84Hz),7.26−7.38(5H,m).
光学異性体B:
H−NMR(CDCl)δ:1.56(3H,2s),2.75−2.85(1H,m),3.00(1H,dd,J=5.86,10.25Hz),3.32(1H,dd,J=7.81,10.25Hz),4.31(1H,d,J=8.30Hz),5.49(1H,q,J=6.84Hz),5.86(1H,J=ddd,5.37,56.66,110.84Hz),7.26−7.39(5H,m).
【0085】
参考例4:シス−3−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン(光学異性体A)
【0086】
【化16】

【0087】
シス−3−アジド−4−フルオロメチル−N−[1―(R)−フェニルエチル]−2−ピロリジン−2−オン(光学異性体A;563mg,2.00mmol)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液に氷冷下にてリチウムアルミニウムヒドリド(762mg,20.08mmol)を徐々に加えた後、1.5時間加熱還流した。氷冷下、反応液に水(762μl)、15%水酸化ナトリウム水溶液(762μl)、水(762μl)の順に滴下、室温で1晩攪拌した。不溶物をセライトでろ別して溶媒を減圧留去した。残留物をテトラヒドロフラン(50ml)に溶解し、二炭酸ジ第三級ブチル(873mg,4.00mmol)を加え室温で3時間攪拌した。溶媒を減圧留去後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル:ヘキサン=1:4の溶出部より標記化合物(光学異性体A)439mg(64%)を得た。

光学異性体A:
H−NMR(CDCl)δ:1.43(3H,s),1.56(9H,s),2.63−2.78(5H,m),3.24−3.29(1H,m),4.38−4.46(1H,m),4.84(1H,d,J=9.28Hz),5.70−5.98(1H,m),7.26−7.37(5H,m).
【0088】
参考例5:シス−3−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン(光学異性体B)
【0089】
【化17】

【0090】
シス−3−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン(光学異性体B;835mg,2.98mmol)のエタノール(20ml)溶液に二炭酸ジ第三級ブチル(1.30g,5.96mmol)と10%パラジウム炭素(800mg)を加え、室温で一晩接触水素添加を行った。触媒をろ別後、溶媒を減圧留去して得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル:ヘキサン=1:2の溶出部より標記化合物(光学異性体B)764mg(72%)を得た。

光学異性体B:
H−NMR(CDCl)δ:1.45(9H,s),1.55(3H,2s),2.97−3.14(1H,m),3.22(1H,d,J=10.75Hz),3.36(1H,dd,J=7.33,10.74Hz),4.43−4.52(1H,m),5.13(1H,brs),5.48(1H,q,J=7.32Hz),5.61−5.89(1H,m),7.26−7.36(5H,m).
【0091】
参考例6:シス−3−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン(光学異性体B)
【0092】
【化18】

【0093】
シス−3−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン(光学異性体B;764mg,2.16mmol)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液に、氷冷下にてボラン−テトラヒドロフラン錯体の1molテトラヒドロフラン(6.47ml)溶液を滴下後、室温で一晩攪拌した。溶媒を減圧留去後、残留物にエタノール−水(4:1)の混合溶媒(40ml)を加え、トリエチルアミン(8ml)存在下、2時間加熱還流した。冷後、溶媒を減圧留去後、得られた残留物にクロロホルムを加えて飽和食塩水で洗い、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル:ヘキサン=1:4の溶出部より標記化合物(光学異性体B)519mg(71%)を得た。

光学異性体B:
H−NMR(CDCl)δ:1.36(3H,2s),1.43(9H,s),2.29−2.33(1H,m),2.53−2.90(4H,m),3.26(1H,q,J=6.35Hz),4.32−4.41(1H,m),4.82(1H,d,J=8.79Hz),5.74−6.02(1H,m),7.22−7.33(5H,m).
【0094】
参考例7:シス−3−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチルピロリジン(光学異性体A, 光学異性体B)
【0095】
【化19】

シス−3−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン(光学異性体A;439mg,1.29mmol)のエタノール(40ml)溶液に10%パラジウム炭素(440mg)を加え、50℃にて一晩接触水素添加を行った。触媒をろ別後、溶媒を減圧留去して粗標記化合物を定量的に得た。精製することなく次反応に用いた。
尚、同様の反応、操作により、シス−3−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン(光学異性体B;400mg,1.18mmol)から、粗標記化合物(光学異性体B)も同様にして得た(定量的)。
【0096】
実施例1:10−[3−(S)−アミノ−4−(S)−フルオロメチルピロリジン−1−イル]−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾキサジン−6−カルボン酸
【0097】
【化20】

9,10−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾキサジン−6−カルボン酸BFキレート(328mg,1.00mmol)のジメチルスルホキシド(4ml)溶液に3−(S)−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−(S)−フルオロメチルピロリジン(316mg,1.44mmol)、トリエチルアミン(300μl)を加え、室温で1日間攪拌した。
トリエチルアミンを減圧留去後、10%クエン酸水溶液を加え、析出物を濾取し、水で洗浄した後、80%含水エタノール(50ml)に溶解し、トリエチルアミン(5ml)を加え、一晩加熱還流した。溶媒を減圧留去後、残留物に濃塩酸を加え、室温で15分間攪拌した。クロロホルムで洗い、ついで氷冷下にて50%水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性とした。さらに濃塩酸でpH7.4としてこの水層をクロロホルム(300ml×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られた残留物を28%アンモニア水/エタノールから再結晶精製して、標記化合物189mg(50%)を得た。

mp:243−245℃.
H−NMR(0.1NNaOD)δ:1.49(3H,d,J=6.84Hz),2.68−2.74(1H,m),3.39−3.41(1H,m),3.65−3.68(3H,m),3.60−3.65(1H,m),3.92−3.95(1H,m),4.29−4.32(1H,m),4.46−4.49(1H,m),4.57−5.59(1H.m),7.50(1H,d,J=14.16Hz),8.31(1H,s).
Anal.: Calcd. C1819・0.25HOとして
C,56.32; H,5.12; N,10.95.
Found C,56.65; H,4.93; N,10.87.
【0098】
実施例2:10−(シス−3−アミノ−4−ジフルオロメチルピロリジン−1−イル)−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾキサジン−6−カルボン酸(光学異性体A)
【0099】
【化21】

【0100】
9,10−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾキサジン−6−カルボン酸BFキレート(221mg,0.67mmol)のジメチルスルホキシド(3ml)溶液にシス−3−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチルピロリジン(光学異性体A;159mg,0.67mmol)、トリエチルアミン(300μl)を加え、室温で一晩、40℃で1日間攪拌した。トリエチルアミンを減圧留去後、10%クエン酸水溶液を加え、析出物を濾取し、水で洗浄した後、80%含水エタノール(20ml)に溶解し、トリエチルアミン(2ml)を加え、2時間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、残留物に濃塩酸(5ml)を加え、室温で15分間攪拌した。クロロホルムで洗い、ついで氷冷下にて50%水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性とした。さらに濃塩酸でpH7.4としてこの水層をクロロホルム(300ml×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られた残留物を28%アンモニア水/エタノールから再結晶精製して、標記化合物(光学活性体A)127mg(48%)を得た。

mp:247−252℃.
H−NMR(0.1NNaOD)δ:1.50(3H,d,J=5.86Hz),2.73−2.84(1H,m),3.40−3.43(1H,m),3.62−3.68(2H,m),3.60−3.75(1H,m),3.88−3.91(2H,m),4.29−4.31(1H,m),4.45−4.48(1H,m),4.55−4.59(1H,m),6.18(1H,ddd,J=5.86,55.66,116.18Hz),7.48(1H,d,J=14.16Hz),8.31(1H,s).
Anal.: Calcd. C1818・0.25HOとして
C,53.80; H,4.64; N,10.46.
Found C,54.80; H,4.56; N,10.41.
【0101】
実施例3:10−(シス−3−アミノ−4−ジフルオロメチルピロリジン−1−イル)−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾキサジン−6−カルボン酸(光学異性体B)
【0102】
【化22】

【0103】
9,10−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾキサジン−6−カルボン酸BFキレート(292mg,0.89mmol)のジメチルスルホキシド(4ml)溶液にシス−3−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチルピロリジン(光学異性体B;210mg,0.89mmol)、トリエチルアミン(400μl)を加え、室温で一晩、40℃で1日間攪拌した。トリエチルアミンを減圧留去後、10%クエン酸水溶液を加え、析出物を濾取、水で洗浄した後、80%含水エタノール(20ml)に溶解し、トリエチルアミン(2ml)を加え、2時間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、残留物に濃塩酸(5ml)を加え、室温で15分間攪拌した。クロロホルムで洗い、ついで氷冷下にて50%水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性とした。さらに濃塩酸でpH7.4としてこの水層をクロロホルム(300ml×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られた残留物を28%アンモニア水/エタノールから再結晶精製して、標記化合物(光学異性体B)226mg(64%)を得た。

mp:264−268℃.
H−NMR(0.1NNaOD)δ:1.49(3H,d,J=6.84Hz),2.73−2.88(1H,m),3.38−3.41(1H,m),3.61−3.66(1H,m),3.73−3.77(1H,m),3.90−3.95(2H,m),4.31−4.34(1H,m),4.46−4.49(1H,m),4.57−4.58(1H.m),6.18(1H,ddd,J=5.35,55.67,111.82Hz),7.48(1H,dd,J=2.44,14.16Hz),8.31(1H,s).
Anal.: Calcd. C1818として
C,54.41; H,4.57; N,10.58.
Found C,54.18; H,4.49; N,10.57.
【0104】
試験例1:
本願発明化合物の抗菌活性の測定方法は日本化学療法学会指定の標準法に準じて行い、その結果をMIC(マイクログラム/ml)で次の表1に示す。尚、本発明化合物のMIC値の比較として、レボフロキサシン(LVFX)、シプロフロキサシン(CPFX)、比較化合物(特許文献2の実施例2の下記化合物)のMIC値を併せて示す。
【0105】
【化23】


比較化合物
この結果から、実施例化合物は比較化合物と比べて、耐性菌を含めたグラム陰性菌およびグラム陽性菌のいずれに対しても幅広く強い抗菌活性を有することが判明した。とりわけ、黄色ブドウ球菌(MRSA)や肺炎球菌(PRSP)のグラム陽性菌に対して強い抗菌活性を有することが分かった。
【0106】
【表1】

【0107】
試験例2:
本願発明化合物のマウス静脈内単回投与毒性試験は、以下のように行った。化合物を0.1mol/1 NaOH/生理食塩水で溶解、希釈した。希釈液を、マイレックスGS0.22μmフィルターでろ過滅菌し、10ml/kg、0.2ml/minの投与速度で六週齢Slc:ddY系雄性マウスに単回静脈投与した。結果を表2に示す。尚、試験例1と同様に特許文献2の実施例2の化合物を比較化合物とした。
この結果から、150mg/kgの投与において、比較化合物は5匹中3匹が死亡しているのに対し、本願実施例化合物は5匹中1匹も死亡していないことから、本願発明化合物は急性毒性が弱いことが分かった。
【0108】
【表2】

【0109】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2004年2月2日出願の日本特許出願(特願2004−25982)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本願化合物はグラム陰性菌およびグラム陽性菌のいずれに対しても幅広い優れた抗菌力を有し、特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)等の耐性のグラム陽性菌、並びにキノロン耐性菌に対しても強力な抗菌活性を示すことから、細菌感染症に対する化学療法に用いる抗菌化合物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【化24】


[式中、Rは、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数3から6のシクロアルキル基を表わすか、あるいはアミノ酸、ジペプチド、またはトリペプチド由来の置換カルボニル基を表わすが、このアルキル基は、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキルチオ基、または炭素数1から6のアルコキシ基からなる群の基から選ばれる1以上の基を置換基として有していてもよく、
は、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数3から6のシクロアルキル基を表わすが、このアルキル基は、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキルチオ基、または炭素数1から6のアルコキシ基からなる群の基から選ばれる1以上の基を置換基として有していてもよく、
は、水素原子、アミノ基、ハロゲン原子、または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数2から6のアシル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有していてもよく、
は、水素原子、フェニル基、アセトキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、エトキシカルボニル基、コリン基、ジメチルアミノエチル基、5−インダニル基、フタリジニル基、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル基、3−アセトキシ−2−オキソブチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から7のアルコキシメチル基、または炭素数1から6のアルキレン基とフェニル基から構成されるフェニルアルキル基を表わし、
およびXは、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表わし、
Xは、水素原子またはハロゲン原子を表わす。]
【請求項2】
式(1)で表わされる化合物が、下記式で表わされる構造の化合物である請求項1に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【化25】


[式中、R、R、R、R、X、X、およびXは先の定義に等しい。]
【請求項3】
式(1)において、XおよびXが、水素原子である請求項1または2に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項4】
式(1)において、XおよびXのどちらか一方が、フッ素原子であり、他方が、水素原子である請求項1または2に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項5】
式(1)において、RおよびRが、水素原子である請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項6】
式(1)において、Rがアミノ酸、ジペプチド、またはトリペプチド由来の置換カルボニル基であって、Rが水素原子である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項7】
式(1)において、RおよびRのどちらか一方が、水素原子であり、他方が、シクロプロピル基である請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項8】
式(1)において、Xがフッ素原子である請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項9】
式(1)において、Rが、水素原子である請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項10】
式(1)において、Rが、水素原子である請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項11】
10−[3−アミノ−4−フルオロメチルピロリジン−1−イル]−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項12】
10−[3−アミノ−4−ジフルオロメチルピロリジン−1−イル]−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項13】
10−[シス−3−アミノ−4−フルオロメチルピロリジン−1−イル]−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項14】
10−[シス−3−アミノ−4−ジフルオロメチルピロリジン−1−イル]−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項15】
式(1)の化合物が立体化学的に単一な化合物である請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項16】
10−[3−(S)−アミノ−4−(S)−フルオロメチルピロリジン−1−イル]−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項17】
10−[3−(S)−アミノ−4−(S)−ジフルオロメチルピロリジン−1−イル]−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−(S)−メチル−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項18】
請求項1から17に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする医薬。
【請求項19】
請求項1から17に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする抗菌薬。
【請求項20】
請求項1から17に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする感染症の治療薬。
【請求項21】
請求項1から17に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物の有効量を投与することを特徴とする疾病の治療方法。
【請求項22】
請求項1から17に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物の有効量を投与することを特徴とする感染症の治療方法。
【請求項23】
請求項1から17に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物を有効成分として配合させることを特徴とする医薬の生産方法。
【請求項24】
請求項1から17に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物を有効成分として配合させることを特徴とする抗菌薬の生産方法。
【請求項25】
請求項1から17に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物を有効成分として配合させることを特徴とする感染治療薬の生産方法。
【請求項26】
下記式(3)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【化26】



[式中、R11は、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数3から6のシクロアルキル基を表わすか、あるいはアミノ基の保護基を表わし、さらに、無置換であるかあるいは保護されてもよいアミノ基を有するアミノ酸、ジペプチド、またはペプチド由来の置換カルボニル基を表わすが、このアルキル基は、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキルチオ基、または炭素数1から6のアルコキシ基からなる群の1以上の基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。
は、式(1)において定義したものと同じである。
Q'は、アミノ基の保護基または水素原子を意味する。]
【請求項27】
式(3)で表わされる化合物が、下記式(4)で表わされる構造の化合物である請求項26に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【化27】


[式中、R11、RおよびQ’は先の定義に等しい。]
【請求項28】
アミノ基の保護基が、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、および置換シリル基からなる群の基から選ばれる基である請求項26または27に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項29】
アミノ基の保護基が、第三級ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パラニトロベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、ベンゾイル基、第三級ブチル基、ベンジル基、パラニトロベンジル基、パラメトキシベンジル基、(R)−1−フェニルエチル基、(S)−1−フェニルエチル基、トリフェニルメチル基、メトキシメチル基、第三級ブトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、トリメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、第三級ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、第三級ブチルジフェニルシリル基からなる群から選ばれる保護基である、請求項26、27、または28に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項30】
11およびQ'がアミノ基の保護基であって、同一の保護基ではない、請求項26から29のいずれか一項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項31】
11およびQ'がアミノ基の保護基であって、異なる反応条件で脱保護もしくは切断される保護基である、請求項26から29のいずれか一項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項32】
シス−3−(第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチル)−1−(R)−フェニルメチルピロリジン、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項33】
シス−3−(第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−ジフルオロメチル)−ピロリジン、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項34】
式(3)の化合物が立体化学的に単一な化合物である請求項26から33のいずれか一項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項35】
3−(S)−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−(S)−ジフルオロメチル−1−(R)−フェニルメチルピロリジン、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項36】
3−(S)−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−(S)−ジフルオロメチル−ピロリジン、その塩、またはそれらの水和物。
【請求項37】
請求項26から36のいずれか一項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物の、式(1)で表わされる化合物の製造のための使用。

【国際公開番号】WO2005/073238
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517558(P2005−517558)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001400
【国際出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】