説明

ピリド[2,3−d]ピリミジンの誘導体、その調製法およびその治療的適用

本発明は、ピリド[2,3−d]ピリミジンの誘導体、その調製法およびその治療的適用に関する。前記化合物は、細胞増殖障害の治療に潜在的に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリド[2、3−d]ピリミジン誘導体、その調製法およびその治療上の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ピリド[2、3−d]ピリミジンから誘導される化合物は、特許出願WO01/55147およびWO03/000011ならびに特許EP−B−790997およびUS5733913に記載されている。
【0003】
これらの化合物は、細胞増殖状態の治療に潜在的に有用である。
【発明の開示】
【0004】
したがって、および第1の態様によれば、本発明の対象は、式(I)に相当する化合物である。
【0005】
【化10】

(式中、Rは、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)シクロアルキル、CHCOR、フェニルまたは(ヒドロキシルおよび/もしくはハロゲンおよび/もしくは(C〜C)アルキルによって)置換されたフェニルを含む群から選択され;
は、ヒドロキシル、(C〜C)アルコキシ、アミノ、(C〜C)アルキルアミノまたはジ(C〜C)アルキルアミノ基であり;
Arは、以下から選択される基であり、
【0006】
【化11】

ここで、Xは、OまたはSであり、Yは、CHまたはNHであり、Rは、H、(C〜C)アルキルまたは(CHNRを含む群から選択され、R’は、(CHNRであり;
およびRは、それぞれ互いに独立に、H、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)シクロアルキル、C(=NH)NH、およびSO(C〜C)アルキルから選択される置換基であり、またRは、CO−(C〜C)アルキル、CO−(C〜C)シクロアルキル、CO−アリール、SO−アリール、tert−ブトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニル基であり得;または
およびRは、結合している窒素原子と一緒になって、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルまたはモルホリニル基を構成し、前記基は、非置換であるか、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−OHまたはCOO(C〜C)アルキル基で1回または複数回置換されており;
Arは、置換されていないまたはハロゲン原子、(C〜C)アルキル基、トリフルオロメチル基または(C〜C)アルコキシ基から選択される同じまたは異なる置換基で1回から5回置換されているフェニル基であり;
nは、1、2または3である。)
【0007】
好ましい形によれば、式(I)の化合物は、以下から選択される基である置換基Arを有し、
【0008】
【化12】

ここで、Rは、CHまたは(CHNRであり、R’は、CHNRであり、ここで、RおよびRは、独立に、Hおよび(C〜C)アルキルから選択され、Yは、CHまたはNHである。
【0009】
本発明による生成物は、以下の基である置換基Arを有利には有し、
【0010】
【化13】

ここで、各R、Rは、独立に、H、CH、OCH、F、Cl、Brを含む群から選択される。RおよびRは、有利には2−および6−位置にある。
【0011】
本発明による化合物は、フェニル、2−メトキシフェニル、2,6−ジクロロフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、2,6−ジブロモフェニル、2−ブロモ−6−クロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、2,6−ジメチルフェニルおよび2,6−ジフルオロフェニルから選択される置換基Arを有利には有する。
【0012】
好ましい変形によれば、式(I)の化合物は、以下から選択される基である置換基Arを有する。
【0013】
【化14】

【0014】
本発明による特に好ましい化合物は、以下のものである。
【0015】
【化15】

(N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素)。
【0016】
以下の例の化合物は、本発明の対象である。
【0017】
本発明による化合物は、(i)非キラル形、またはラセミ形、または1種の立体異性体に富むもしくは1種の鏡像異性体に富む形にすることができ、(ii)場合によって塩にすることができ、(iii)場合によって水和物または溶媒和物とすることができる。
【0018】
式(I)の化合物は、1個または複数の不斉炭素原子を含むことができる。したがって、これらは鏡像異性体またはジアステレオ異性体の形で存在することができる。これらの鏡像異性体およびジアステレオ異性体、更にはラセミ混合物を含むその混合物は、本発明の一部である。
【0019】
式(I)の化合物は、塩基または酸付加塩の形で存在することができる。式(I)の化合物が、例えば、カルボン酸、スルホン酸またはホスホン酸などの遊離酸機能を含む場合、これら酸機能を、塩基を用いて塩化させ、付加塩を形成させることができる。そのような付加塩は、本発明の一部である。
【0020】
この酸付加塩または塩基付加塩は、それぞれ薬学的に許容される酸または塩基により有利には調製されるが、例えば、式(I)の化合物の精製または単離に有用な他の酸または塩基の塩も本発明の一部である。
【0021】
式(I)の化合物は、水和物または溶媒和物の形で(すなわち、1個もしくは複数の水分子または溶媒との会合または結合の形)存在することもできる。そのような水和物および溶媒和物も本発明の一部である。
【0022】
本発明の文脈では、
「ハロゲン原子」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味することを意図しており;
「アルキル基」という用語は、直鎖または分枝の飽和脂肪族基を意味することを意図しており、例として、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、1−メチルエチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、1,1−ジメチルペンチル、1,2−ジメチルペンチル、1,3−ジメチルペンチル、1,4−ジメチルペンチル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、2,4−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルペンチル、3,4−ジメチルペンチル、4,4−ジメチルペンチル、1,1,2−トリメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、1,2,2−トリメチルブチル、1,2,3−トリメチルブチル、1,3,3−トリメチルブチル、2,2,3−トリメチルブチル、2,3,3−トリメチルブチル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、1−エチルペンチル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル、1−エチル−1−メチルブチル、1−エチル−2−メチルブチル、1−エチル−3−メチルブチル、2−エチル−1−メチルブチル、2−エチル−2−メチルブチル、2−エチル−3−メチルブチル、1−プロピルブチル、1−(1−メチルエチル)ブチルおよび1−(1−メチルエチル)−2−メチルプロピル基について言及することができ;
「シクロアルキル基」という用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、アダマンチルを意味することを意図している。
【0023】
式(I)の化合物を、式(II)の化合物
【0024】
【化16】

(式中、RおよびArは、(I)の定義の通りである。)と式Ar’NH(III)のアミン(式中、Ar’は、(I)の定義の通りのArでありまたはArの前駆体であり;必要に応じて、このように得られた化合物のAr’基をAr基に変換する。)との間の反応により調整する。
【0025】
本発明に従って、式(I)の化合物を、以下の
(i)式(IIb)の化合物
【0026】
【化17】

(式中、R10は、(a)ハロゲン(特にClもしくはBr)または(b)アルキル−S(O)m−(m=0、1または2)などの脱離基であり;R11は、NHC(O)−NH−Rである。);および
(ii)式Ar’NH(III)のアミン(式中、Ar’は、(I)の定義の通りのArであるりまたはArの前駆体であり;必要に応じて、このように得られた化合物のAr’基をAr基に変換する。)を反応させることを特徴とする工程によって調製することができる。
【0027】
10がハロゲンまたはアルキル−S(O)m−(m=2)である場合、反応を、溶媒、好ましくは極性溶媒、
(i)例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドもしくはエタノール(場合によって、塩酸などの微量の酸の存在下);または
(ii)ジメチルスルホキシド(tBuOKなどの強塩基の存在下)
の中において、周囲温度と溶媒の還流温度の間の温度で実施する。
【0028】
10がアルキル−S(O)m−(m=0または1)である場合、反応を、触媒なしに好ましくは約200℃の温度で、溶融状態のAr’NH(III)により実施することができる。
【0029】
必要に応じて、化合物(III)のAr’基に存在するアミン官能基を、前もって塩化または保護する。
【0030】
式(II)の化合物を、以下のスキーム1に記載のように、欧州特許790997および米国特許5733913に記載の以下の手順により調製する。
【0031】
【化18】

【0032】
式(III)Ar’NHのアミンは、公知であるか、相当する硝酸誘導体Ar’NO(IV)による公知の方法によって調製する。これは(i)粉末亜鉛もしくは鉄などの金属の存在下の酸性媒質中で、または(ii)Pd/Cなどの触媒の存在下において水素によるかのいずれかの還元によって調製する。Ar’は、ArまたはArの前駆体である。
【0033】
式(IV)の化合物は、公知であるか、公知の方法によって調製する。
【0034】
本発明による化合物を、ラセミ形で得る。次に、光学的に純粋な異性体を、キラル物質を用いた塩形成による結晶化などの当業者に公知の分解法を用いて調製することができる。また、光学的に純粋な形における本発明による化合物を、非対称的または立体特異的な合成法(キラル相を用いたクロマトグラフィー技術の使用)を用いて調製することができる。さらに、本発明の生成物を、ジアステレオ異性体の形成、その分離、そして薬剤的に有用なジアステレオ異性体の分離を通して、その鏡像異性的に純粋な活性生成物に分離することができる。また酵素的技術を使用することができる。更なる公知の分離技術を使用することができる。これらはEnantiomers,Racemates,and Resolutions,John Wiley and Sons,New York(1981)に記載の技術を含む。
【0035】
また、本発明による化合物を、合成中間体の調製があるとすぐに、1種の立体異性体に富む形で調製することができる。したがって、式(III)のアミンまたは硝酸にされた前駆体(IV)の鏡像異性体の分離を、上記の方法の1つによって実施することができる。
【0036】
以下の例では、特定の中間体および本発明による化合物の調製について述べる。これらの例は、本発明を制限するものではなく、単に本発明を例示するものである。
【0037】
この例では、以下の略語を使用する。
Boc:tert−ブトキシカルボニル、
BOP:ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩
THF:テトラヒドロフラン
AT:周囲温度
TFA:トリフルオロ酢酸
DCM:ジクロロメタン
DMSO:ジメチルスルホキシド
DMF:ジメチルホルムアミド
MeOH:メタノール
DCCI:ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
KHSO/KSO:KHSO/KSOの5%溶液
【0038】
プロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、特に明記しない限り、DMSO−dでの200または250MHzで記録する。DMSO−dシグナルは2.5ppmで、標準として用いられる。スペクトルの解釈のために、以下の略語を使用する。s:一重線(singlet)、d:二重線(doublet)、t:三重線(triplet)、m:未解決ピーク(unresolved peak)、mt:多重線(multiplet)、bs:幅広一重線(broad singlet)、dd:二重の二重線(doublet of a doublet)、qd:四重線(quadruplet)、qt:五重線(quintuplet)。
【0039】
Mp:1℃/分の気温傾度を用いて、Biuchi B545装置で測定した融点(摂氏温度)。
【0040】
MH+:質量スペクトル。化合物を、HPLC−UV−MS(液体クロマトグラフィー−UV検出−質量分析)の組み合わせによって分析する。使用される装置は、Agilent社により販売され、Agilentダイオードアレイ検出器およびMSD Quad四重極質量分析計が装備されたHP1100クロマトグラフから成る。
【0041】
分析条件は、以下の通りである。
カラム:C18シンメトリー(50×2.1mm;3.5μm)
溶離剤A:HO+0.005%TFA(pH3.15)
溶離剤B:CHCN+0.005%TFA
勾配:
時間(分) %B
0 0
10 90
15 90
16 0
20 0
カラム温度:30℃
流速:0.4ml/分
検出:λ=210nm
tr:保持時間
v:容量。
【0042】
式(II)の化合物の調製法
調製法1
N−(t−ブチル)−N’−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(メチルスルホニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]尿素。
【0043】
【化19】

【0044】
1.1 エチル4−アミノ−2−(メチルチオ)ピリミジン−5−カルボキシレート
20%NHOH溶液140mlを、エチル4−クロロ−2−(メチルチオ)ピリミジン−5−カルボキシレート50.7gのEtOH(400ml)懸濁液に、約20℃の温度を維持しながら、20分間で加える。周囲温度で20時間撹拌した後、反応媒質を、真空下で、ほぼ乾燥するまで濃縮し、次に、残渣を水350mlに溶解し、20分間撹拌し、ろ過し、水で洗浄し(3×60ml)、次に、Pの存在下の真空下で乾燥させる。白色の固体を得る(Mp=134〜135℃、m=39.9g)。
【0045】
1.2 [4−アミノ−2−(メチルチオ)ピリミジン−5−イル]メタノール
1MのLiAlHのTHF溶液210mlを、THF1Lに溶解した前工程で得られたエステル39.68gに、30℃未満の温度で維持しながら、45分間で加える。この混合物を、更に1時間撹拌し、温度を5℃に下げ、水9ml、5N水酸化ナトリウム6.5ml、次に水32mlを連続して1滴ずつ加える。10分間撹拌した後、固体をろ過し、次にTHFですすぐ。ろ液を真空下で乾燥するまで濃縮し、次に煮沸トルエン(600ml)で再融解し、生成物を、高温条件下において迅速にろ過し、一部の不溶性物質を除去し、ろ液を終夜放置して冷却する。得られた白色の結晶をろ過し、少量のトルエン、次にエーテルで洗浄し、乾燥させる(Mp=124〜127℃、m=23.9g)。
【0046】
1.3 4−アミノ−2−(メチルチオ)ピリミジン−5−カルバルデヒド
活性MnO79.5gを、前工程で得られたアルコール23.8gのクロロホルム(1600ml)懸濁液に2分間で加え、この混合物を周囲温度で終夜撹拌し;固体をろ過し、CHClで洗浄し(3×75ml)、ろ液を真空下で乾燥するまで濃縮し;白色の固形残渣をエーテルに溶解し、ろ過し、乾燥させる(Mp=184〜186℃、m=21.05g)。
【0047】
1.4 6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(メチルチオ)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−アミン
60%NaH5.47gを、前工程で得られたアルデヒド21gに5分間で加え、DMF240mlに溶解し、5℃まで冷却し、引き続き、2,6−ジクロロフェニルアセトニトリル29.05gを、少量ずつ20分間で加える。撹拌を5℃で30分間、次に周囲温度で終夜続ける。反応媒質を5℃まで冷却し、NHCl溶液65ml、次に水/氷の混合液500mlを加えて;赤色の沈殿物(ろ過する)を、水で2回洗浄し、最大限ろ過乾燥させ、エーテル、クロロホルム100ml、そして再度エーテルで洗浄し;乾燥後、ベージュ色の固体を得る(Mp=250〜253℃、m=29.92g)。
【0048】
エーテルおよびクロロホルムによる洗浄段階では、乾燥するまで濃縮し、生成物を少量のクロロホルム(エーテルが加えられている)に溶解する。第2の生成物3.15gを得る(総m=33.07g)。
【0049】
1.5 N−(t−ブチル)−N’−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(メチルチオ)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]尿素
60%NaH4.6gを、上記で得られたアミン29.9gのDMF(300ml)溶液に、25℃未満の温度を維持しながら、10分間で加え;この混合物を更に20分間撹拌し、次にtert−ブチルイソシアネート12.2mlを、20分間で加え、混合物を終夜撹拌する。反応媒質を、水/氷の混合液800ml+6NのHCL100mlに徐々に注ぎ;形成された沈殿物をろ過し、水で洗浄し、ろ過乾燥し、次にエーテル300ml中で1時間撹拌し、次にろ過し、エーテルで洗浄し、乾燥させる。ベージュ色の固体を得る(Mp=195〜196℃(分解)、m=26.5g)。
【0050】
1.6 N−(t−ブチル)−N’−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(メチルスルホニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]尿素
メタ−クロロ過安息香酸(77%)27gを、上記で得られた尿素21.95gのクロロホルム(300ml)溶液に、25℃未満の温度を維持しながら、25分間で加える。沈殿物が形成する。2時間後、反応媒質を1LのジクロロメタンおよびNaSOで希釈し、続いてCa(OH)14gを加える。30分間撹拌した後、固体をろ過し、ジクロメタンで洗浄し、次にろ液を乾燥するまで濃縮する。残渣を、高温条件下においてエーテル80ml中において粉砕し;生成物を冷却するまで放置し、次に白色の固体をろ過し、エーテルで洗浄し、乾燥させる(Mp=138〜140℃、m=20.5g)。
【0051】
調製法1に記載の化合物と同じ方法で、以下の式(II)の化合物を調製することができる。
【0052】
【表1】



【0053】
式(III)の化合物の調製法
使用した調製法の番号は、下文の表2の化合物の番号を指す。
【0054】
調製法17および18
市販製品。
【0055】
調製法19
J.Hetero.Chem.1986,23,1645−1649に従って調製し、塩酸塩の形で分離する。
【0056】
調製法20
J.Chem.Soc.1928,121に従って調製する。
【0057】
調製法21
21.1
【0058】
【化20】

【0059】
NaBH2.27gを、THF50ml中のエチル5−ニトロベンゾ[b]フラン−2−カルボキシレート1.12gに、少量ずつ、8時間にわたり加え、次に混合液を40時間撹拌する。メタノール5ml、次に水5mlを加える。反応媒質を、EtOAcで抽出し、有機相を水、5%KHSO/KSO溶液、水、次にNaCl溶液で洗浄する。減圧下で、乾燥および濃縮後、予期した生成物0.74gを固形で回収する。
【0060】
21.2
【0061】
【化21】

【0062】
工程21.1で得られた生成物730mgを、DCM9mlに溶解し、5℃で維持する。トリエチルアミン1mlを、5℃で加え、次に塩化メタンスルホニル536mgを15分間で加える。温度を5℃で15分間維持し、次に反応媒質を周囲温度に55分間戻す。次に、反応媒質をDCMおよび水で希釈する。有機相を、沈降させることにより分離し、水および飽和NaCl溶液で洗浄し、減圧下で乾燥および蒸発させる。メシレート(予期した生成物)および塩化物(ベンゾ[b]フランの2位におけるCHOHのCHClとの置換による生成物)の混合物を含む油0.98gを得る。
【0063】
21.3
【0064】
【化22】

【0065】
DMF10ml中の工程21.2で得られた生成物0.97gを、ジエチルアミン1.05gで18時間処理する。反応媒質を、EtOAcで抽出し、有機相を水および飽和NaCl溶液で洗浄し、乾燥させ、次に溶媒を減圧下で蒸発させる。油0.93gを得る。
【0066】
21.4
【0067】
【化23】

【0068】
粉末Zn4.48gを、THF40ml中の工程21.3で得られた生成物1.16gに加え、続いて、酢酸5mlを−5℃で25分間にわたり加える。1時間15分の反応後、残る固体を、ろ過により反応媒質から除去し、固体を少量のTHFで洗浄し、有機相を合わせ、EtOAcおよび水で希釈し、次に10NのNaOHによりpH=9にする。沈降による分離後、有機相を単離し、15%NaCO溶液、水および飽和NaCl溶液で洗浄し、乾燥および蒸発させる。油900gを得る。
【0069】
調製法22
22.1
【0070】
【化24】

【0071】
アジ化ナトリウム1.26gを、DMF25ml中の2−クロロメチル−5−ニトロベンゾキサゾール(Synth.Communications 1989,19,2921−2924に従って調製)1.64gに加え、混合液を周囲温度で終夜撹拌する。反応媒質を、EtOAc150mlに注ぎ、氷冷水で2回、次に飽和NaCl溶液で洗浄する。有機相を、減圧下で乾燥および濃縮させる。黒色の油1.42gを回収する。
【0072】
22.2
【0073】
【化25】

【0074】
トリフェニルホスフィン2.84gを、EtOAc30ml中の工程22.1で得られた生成物1.40gに10分間で加え、次に、10分後、水1.16mlを2分間で加える。60℃で24時間撹拌した後、次に冷却し、反応媒質をEtOAcで希釈し、有機相を、水、次に飽和NaCl溶液で洗浄する。有機相を、減圧下で乾燥および濃縮させる。残渣をEtOに溶解し、1NのHClで2回抽出する。酸相を合わせ、EtOAcと接触させ、10NのNaOHでpH=10にする。沈降による分離後、有機相を、水、次に飽和NaCl溶液で洗浄する。有機相を、減圧下で乾燥および濃縮させ、油の形で予期した生成物468mgを得る。
【0075】
22.3
【0076】
【化26】

【0077】
工程22.2で得られた生成物を、DCM10mlに溶解し、次に0.4当量のトリエチルアミン、続いて1.1当量のBOCOを加える。5時間後に、反応媒質をCHClで希釈し、次に5%KHSO/KSO溶液、水および飽和NaCl溶液で連続的に洗浄する。粗生成物を減圧下で乾燥および蒸発させ、予期した生成物388gを得る。
【0078】
22.4
【0079】
【化27】

【0080】
工程19.3で得られた生成物を、調製法18.4に記載の方法に従って、Zn/AcOHにより量的に還元させ、油を得る。
【0081】
調製法23
23.1
J.Hetero.Chem.1973,10,755に従って調製する。
【0082】
23.2
Chem.Abstr.1950,4474に従ったSn/HBr水溶液による、工程23.1で得られた生成物の還元。
【0083】
調製法24
J.Hetero.Chim.1970,7,1019−1027に従って調製する。
【0084】
調製法25
Boll.Sci.Fac.Chim.Ind.Bologna 1964 vol.22 pages 33−37に従って調製する。
【0085】
調製法26
特許出願WO92/05164に記載の手順に従って調製する。
【0086】
式(III)の化合物を下表2において特性決定する。
【0087】
【表2】


【0088】
例示される化合物の番号は、下文の表3に記載の番号を指しており、本表では、本発明による一部の化合物の化学構造および物理的性質を図解している。これらが不斉炭素を含む場合、これらの化合物を、ラセミ形で得る。
【実施例】
【0089】
実施例1
(化合物番号1)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
t−BuOK3.21g(28.6mmol)を、DMSO45ml中の表2の調製法17のアミン3.32g(20mmol)に15分間で加え、次に表1の調製法1の尿素7.71g(16.5mmol)を20分間で加える。2時間後、t−BuOK1gを再び加え、2時間後、t−BuOK1gを再び加える。6時間の反応後、反応媒質を氷冷水で希釈し、次にEtOAcで抽出する。有機相を、水で2回、飽和NaCl溶液で1回洗浄し、減圧下で乾燥および濃縮させる。粗生成物を、EtO/ヘプタン混合液中で粉砕し、沈殿物をろ過し、次にシリカゲルクロマトグラフィーを行った(溶離剤88/12(v/v)CHCl/EtOAc)。予期した生成物5gを得る。MH=539。
【0090】
実施例2
(化合物番号2)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
化合物2を、表2の調製法18のアミンから始めて、化合物1と同様に調製する。
【0091】
実施例3
(化合物番号3)N−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−[(1,3−ジヒドロ−2,2−ジオキシド−2,1−ベンジソチアゾール−5−イル)アミノ]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
表2の調製法19のアミン437mg(塩酸塩の形)と表1の調製法1の尿素750mgの混合物を、エタノール15ml中で5時間加熱する。反応媒質を蒸発乾固し、次にCHCl50mlおよび飽和NaHCO溶液20mlに溶解する。有機相を、沈降させることにより分離し、水、次に飽和NaCl溶液で洗浄する。有機相を、減圧下で乾燥および飽和させる。残渣を、クロロホルム中のEtOAcの0から20%(v/v)の勾配で、フラッシュクロマトグラフィーにより精製する。黄色の固体275mgを得る。MH:572。
【0092】
実施例4
(化合物番号4)N−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−[(2−メチル−6−ベンゾキサゾリル)アミノ]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
表2の調製法20のアミン210mgおよび表1の調製法1の尿素562mgを、濃縮HCl0.02mlを含むエタノール20ml中で、45℃で8時間加熱する。減圧下で濃縮後、残渣に、シリカゲルクロマトグラフィーを行った(溶離剤CHCl/MeOH:98/2(v/v))。黄色の個体の形で、生成物300mgを分離する。MH:536。
【0093】
実施例5
(化合物番号5)N−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−[[2−[(ジエチルアミノ)メチル]−5−ベンゾフラニル]アミノ]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
化合物5を、表2の調製法21のアミン21.4から始めて、化合物4と同様に調製する。
【0094】
実施例6
(化合物番号6)1、1−ジメチルエチル[[5−[[6−(2,6−ジクロロフェニル)−7−[[[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]カルボニル]アミノ]ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−2−ベンゾキサゾリル]メチル]カルバメート
化合物6を、表2の調製法22のアミン22.4から始めて、化合物4と同様に調製する。
【0095】
実施例7
(化合物番号7)N−[2−[[2−(アミノメチル)−5−ベンゾキサゾリル]アミノ]−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
190mgの化合物6を、DCM2ml中のTFA3mlで1時間処理する。減圧下で濃縮後、残渣をDCM/水混合液に溶解し、次に15%NaCO溶液を加えることによってpHを9にする。沈降による分離後、有機相を、水、次に飽和NaCl溶液で洗浄し、減圧下で乾燥および濃縮させる。粗生成物を、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製する(溶離剤:DCM中のメタノールの0から10%(v/v))。黄色の固体100mgを分離する。MH:551。
【0096】
実施例8
(化合物番号8)N−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−6−イルアミノ)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
化合物8を、表2の調製法23のアミン23.2から始めて、化合物4と同様に調製する。
【0097】
実施例9
(化合物番号9)N−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−([1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン−6−イルアミノ)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
化合物9を、表2の調製法24のアミンから始めて、化合物4と同様に調製する。
【0098】
実施例10
(化合物番号10)N−[2−(2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
tBuOK0.168gを、DMSO6ml中の調製法1の生成物0.468gと表2の調製法25のアミン(III)0.202gの混合物に25分間で加え、さらに0.168gを1時間で加える。2時間撹拌した後、反応媒質を酢酸エチルで抽出し、これを水および飽和NaCl溶液で連続的に洗浄する。NaSOでの乾燥および酢酸エチルの蒸発後、粗生成物を、ジクロロメタン中の酢酸エチルの0から8%(v/v)の勾配で、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。ベージュ色の粉末を得る(m=0.22g)。MH=523。
【0099】
実施例11
(化合物番号11)N−[2−(1,3−ジヒドロ−2,2−ジオキシド−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
化合物11を、表2の調製法26のアミンから始めて、化合物4と同様に調製する。
【0100】
実施例12−21
(化合物番号12〜21)
化合物12〜21を、表2の調製法17のアミン(III)および表1の調製法の式(II)の生成物から選択される適切な尿素から始めて、化合物1と同様に調製する。
実施例12:(化合物番号12)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2−ブロモ−6−クロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
実施例13:(化合物番号13)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−エチル尿素
実施例14:(化合物番号14)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジブロモフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
実施例15:(化合物番号15)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジブロモフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−エチル尿素
実施例16:(化合物番号16)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−フェニル尿素
実施例17:(化合物番号17)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(3,5−ジメトキシフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
実施例18:(化合物番号18)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−フェニルピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
実施例19:(化合物番号19)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジメチルフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
実施例20:(化合物番号20)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジフルオロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素
実施例21:(化合物番号21)N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−ジピリミジン−7−イル]−N’−(1−メチルエチル)尿素。
【0101】
以下の表3および表4は、本発明によるいくつかの実施例の化学構造および物理的性質を図解している。これらの表では、Me、Et、iPrおよびtBuは、それぞれメチル、エチル、イソプロピルおよびtert−ブチル基であり、Boc(またはBOC)は、tert−ブトキシカルボニル基である。
【0102】
【表3】


【0103】
【表4】


【0104】
本発明による化合物について、これらの抗癌活性を判定するために薬理学的分析を実施した。
【0105】
本発明による式(I)の化合物を、以下に由来するヒト起源の腫瘍系の一群についてインビトロで試験した。
【0106】
乳癌:MDA−MB231(米国培養コレクション[American Type culture collection:ATCC]米国メリーランド州ロックビル、ATCC−HTB26)、MDA−A1またはMDA−ADR(多剤耐性MDR系と呼ばれる、E.Collombら、in Cytometry,12(1):15−25,1991に記載)、およびMCF7(ATCC−HTB22)、
前立腺癌:DU145(ATCC−HTB81)およびPC3(ATCC−CRL1435)、
大腸癌:HCT116(ATCC−CCL247)およびHCT15(ATCC−CCL225)、
肺癌:H460(Carmichael in Cancer Research 47(4):936−942,1987に記載、および米国国立癌研究所[National Cancer Institute]、フレデリック癌研究開発センター[Frederick Cancer Research and Development Center]米国メリーランド州フレデリックにより提供)、
グリア芽細胞腫:SF268(Westphal in Biochemical & Biophysical Research Communications 132(1):284−289,1985に記載、米国国立癌研究所、フレデリック癌研究開発センター、米国メリーランド州フレデリックにより提供)、
白血病:CMLT1(Kuriyamaら、in Blood,74:1989,1381−1387、Sodaら、in British Journal of Haematology,59:1985,671−679およびDrexler,in Leukemia Research,18:1994,919−927に記載、ならびにDSMZ社(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)ドイツ、ブラウンシュヴァイク、Mascheroder Weg 1b、38124により提供)、K−562(Lozzioら、J Natl Cancer Inst 50:535(1973)、Lozzioら、Blood 45:321(1975)に記載、およびDSMZ No.ACC10により提供)、KG−1a(Koefflerら、Blood 56:265(1980)に記載、およびDSMZ No.ACC421により提供)、およびKasumi−1(Asouら、Blood 77:2031(1991)により記載、およびDSMZ No.ACC220により提供)。
【0107】
細胞の増殖および生存率を、Fujishita T.ら、Oncology,2003,64(4),399−406に従って、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)を用いた試験で測定した。本試験では、MTSを有色の化合物に変換する生細胞のミトコンドリア能力(mitochondrial ability)を、本発明による式(I)の化合物の72時間の温置後に測定する。細胞増殖および細胞生存率の50%の減少(IC50)をもたらす、本発明による化合物の濃度は、腫瘍系および試験を行った化合物によって1nMと10μMの間である。例えば、化合物番号1では、K−562系に対するIC50が40nM、KG−1a系に対するIC50が50nMおよびKasumi―1系に対するIC50が40nMである。K−562系に対しては、化合物番号5のIC50は5nM、化合物番号9のIC50は19nM、および化合物番号13のIC50は74nMである。SF268に対する化合物番号7のIC50は43nMである。
【0108】
したがって、本発明によれば、式(I)の化合物は、腫瘍細胞の増殖および生存率の減少を引き起こすと思われる。したがって、本発明による化合物は、抗癌活性を有し、ならびに例えば、乾癬、再狭窄、アテローム性動脈硬化症またはAIDSなどの他の増殖性疾患の治療において、さらに血管平滑筋細胞増殖を引き起こす疾患およびリウマチ様関節炎においても活性を有すると思われる。
【0109】
したがって、別の態様によれば、本発明の対象は、式(I)の化合物、あるいは薬学的に許容される酸による後者の付加塩または式(I)の化合物の水和物もしくは溶媒和物を含む、薬物である。
【0110】
これらの薬物は、治療学、特に細胞増殖(特に腫瘍細胞増殖)によって引き起こされるか、増悪される疾患の治療または予防において、使用が見出される。本発明による生成物は、病理学的状態の特に癌の治療に有用な薬物の製造に使用することができる。
【0111】
腫瘍細胞増殖抑制剤として、これら化合物は、白血病、原発性および転移性充実性腫瘍、癌腫および癌、特に、乳癌;肺癌;小腸癌、大腸癌および直腸癌;気道、中咽頭および下咽頭の癌;食道癌;肝臓癌、胃癌、胆管癌、胆嚢癌、膵癌;腎臓、尿路上皮および膀胱を含む尿路癌;子宮癌、子宮頚癌、卵巣癌、絨毛癌および栄養膜腫瘍を含む女性生殖器癌;前立腺癌、精嚢癌、精巣癌、胚細胞腫瘍を含む男性生殖器癌;甲状腺、下垂体および副腎の癌を含む内分泌腺癌;血管腫、黒色腫、肉腫(カポジ肉腫を含む)を含む皮膚癌;脳腫瘍、神経腫瘍、眼腫瘍、神経膠星状細胞腫を含む髄膜腫瘍、神経膠腫、グリア芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経鞘腫、神経芽細胞腫、シュワン腫、髄膜腫;悪性造血器腫瘍;白血病、(急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL))、緑色腫、形質細胞腫、T細胞またはB細胞白血病、非ホジキンリンパ腫またはホジキンリンパ腫、様々な悪性血液疾患の予防および治療に有用である。
【0112】
別の態様によれば、本発明は、活性成分としての、本発明による化合物を含む、医薬組成物に関する。これらの医薬組成物は、本発明による少なくとも1種の化合物の有効量、または薬学的に許容される塩、前記化合物の水和物もしくは溶媒和物、さらに少なくとも1種の薬学的に許容される賦形を含む。さらに、医薬組成物は、別の抗癌成分も含むことができる。
【0113】
前記賦形は、薬剤形状および所望の投与法によって、当業者に公知の通常の賦形から選択される。
【0114】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、表面、局所、気管内、鼻腔内、経皮または直腸内投与のための本発明の医薬組成物において、上記の状態または疾患の予防または治療のために、上記の式(I)の活性成分、場合によってこの塩、溶媒和物または水和物を、従来の医薬品賦形剤と混合して、単位投与形態で、動物およびヒトに投与することができる。
【0115】
適切な単位投与形態は、経口投与形態(例えば、錠剤、軟もしくは硬ゼラチンカプセル、粉末、顆粒および経口溶剤または懸濁液など)による形態、舌下、口腔、気管内、眼内および鼻腔内投与形態、吸入による投与形態、表面、経皮、皮下、筋肉内または静脈内投与形態、直腸内投与形態、ならびにインプラントを含む。表面塗布では、本発明による化合物を、クリーム、ゲル、軟膏またはローションで使用することができる。
【0116】
例として、錠剤形態における本発明による化合物の単位投与形態は、以下の成分を含むことができる。
本発明による化合物 50.0mg
マンニトール 223.75mg
クロスカルメロースナトリウム 6.0mg
コーンスターチ 15.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.25mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg。
【0117】
上記の式(I)の化合物を、治療する哺乳類の体重のkgあたり0.002〜2000mgの一日量、好ましくは0.1〜300mg/kgの一日量で使用することができる。ヒトでは、用量は、治療する個人の年齢または治療の種類(予防または治療)によって、好ましくは0.02〜10000mg/日、より好ましくは1〜3000mgの範囲にすることができる。
【0118】
より高用量またはより低用量が適切である特定の症例が存在することがある。そのような用量は、本発明の範囲を逸脱しない。一般の慣例によれば、各患者に適した用量は、投与方法、前記患者の体重および反応によって医師により決定される。
【0119】
また、別の態様によれば、本発明は、上記で示した病態の治療法に関し、この治療法は、本発明による化合物の有効量、または薬学的に許容されるその塩または水和物もしくは溶媒和物の1つの患者への投与を含む。
【0120】
本発明によれば、式(I)の化合物を、抗癌活性成分の1種(または複数)と組み合わせて投与することができ、特に、例えば、スルホン酸アルキル(ブスルファン)、ダカルバジン、プロカルバジン、窒素マスタード(クロロメチン、メルファラン、クロラムブシル)、シクロホスファミド、イホスファミドなどのアルキル化剤;カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシンなどのニトロソ尿素;ビンクリスチン、ビンブラスチンなどの抗腫瘍アルカロイド;パクリタキセルまたはタキソテールなどのタキサン;アクチノマイシンなどの抗腫瘍性抗生物質;挿入剤、抗腫瘍アンチメタボライト、葉酸拮抗剤、メトトレキセート;プリン合成阻害剤;メルカプトプリン、6−チオグアニンなどのプリン類似体;ピリミジン合成阻害剤、アロマターゼ阻害薬、カペシタビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、シタラビンおよびシトシンアラビノシドなどのピリミジン類似体;ブレキナル;カンプトセシンまたはエトポシドなどのトポイソメラーゼ阻害剤;抗癌ホルモンアゴニストおよびアンタゴニスト(タモキシフェンなど);キナーゼ阻害剤、イマチニブ;増殖因子阻害剤;ポリ硫酸ペントサン、コルチコステロイド、プレドニゾン、デキサメサゾンなどの抗炎症薬;エトポシド、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンおよびミトラマイシンなど)などの抗トポイソメラーゼ;抗癌金属複合体、白金複合体、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン;インターフェロンα、トリフェニルチオホスホラミド、アルトレタミン;血管新生阻害剤;サリドマイド;免疫療法アジュバント;ワクチンなどの抗腫瘍化合物と組み合わせて投与することができる。
【0121】
本発明によれば、式(I)の化合物を、上記に示した病態の1つにおいて有用な1種または複数の他の活性成分、例えば、制吐剤、鎮痛剤、抗炎症剤または抗悪液質剤(anti−cachexia agent)と組み合わせて投与することもできる。
【0122】
本発明の化合物を、放射線治療と組み合わせることも可能である。これらの治療は、同時に、別にまたは連続して、実施することができる。治療は、治療する疾患によって、実施医師により適応される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に相当する化合物
【化1】

(式中、Rは、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)シクロアルキル、CHCOR、フェニルまたは(ヒドロキシルおよび/もしくはハロゲンおよび/もしくは(C〜C)アルキルによって)置換されたフェニルを含む群から選択され;
は、ヒドロキシル、(C〜C)アルコキシ、アミノ、(C〜C)アルキルアミノまたはジ(C〜C)アルキルアミノ基であり;
Arは、以下から選択される基であり、
【化2】

ここで、Xは、OまたはSであり、Yは、CHまたはNHであり、Rは、H、(C〜C)アルキルまたは(CHNRを含む群から選択され、R’は、(CHNRであり;
およびRは、それぞれ互いに独立に、H、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)シクロアルキル、C(=NH)NH、およびSO(C〜C)アルキルから選択される置換基であり、またRは、CO−(C〜C)アルキル、CO−(C〜C)シクロアルキル、CO−アリール、SO−アリール、tert−ブトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニル基であり得;または
およびRは、結合している窒素原子と一緒になって、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルまたはモルホリニル基を構成し、前記基は、非置換であるか、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−OHまたはCOO(C〜C)アルキル基で1回または複数回置換されており;
Arは、置換されていないまたはハロゲン原子、(C〜C)アルキル基、トリフルオロメチル基または(C〜C)アルコキシ基から選択される同じまたは異なる置換基で1回から5回置換されているフェニル基であり;
nは、1、2または3を表す。)。
【請求項2】
Arが以下から選択される基であることを特徴とする、請求項1に記載の式(I)の化合物
【化3】

(ここで、Rは、CHまたは(CHNRであり、R’は、CHNRであり、ここで、RおよびRは、独立に、Hおよび(C〜C)アルキルから選択され、Yは、CHまたはNHである。)。
【請求項3】
Arが以下であることを特徴とする、請求項1および2のいずれか一項に記載の式(I)の化合物
【化4】

(ここで、各R、Rは、独立に、H、CH、OCH、F、ClおよびBrを含む群から選択される。)。
【請求項4】
Arが以下であることを特徴とする、請求項3に記載の式(I)の化合物
【化5】

(ここで、各R、Rは、独立に、H、CH、OCH、F、ClおよびBrを含む群から選択される。)。
【請求項5】
Arが以下であることを特徴とする、請求項4に記載の式(I)の化合物。
【化6】

【請求項6】
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【化7】

【請求項7】
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−[(1,3−ジヒドロ−2,2−ジオキシド−2,1−ベンゾイソチアゾール−5−イル)アミノ]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−[(2−メチル−6−ベンゾオキサゾリル)アミノ]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−[[2−[(ジエチルアミノ)メチル]−5−ベンゾフラニル]アミノ]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
[[5−[[6−(2,6−ジクロロフェニル)−7−[[[(1,1−ジメチルエチル)−アミノ]カルボニル]アミノ]ピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−2−ベンゾオキサゾリル]メチル]カルバミン酸1,1−ジメチルエチル;
N−[2−[[2−(アミノメチル)−5−ベンゾオキサゾリル]アミノ]−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−6−イルアミノ)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−([1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン−6−イルアミノ)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[2−(2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[2−(1,3−ジヒドロ−2,2−ジオキシド−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2−ブロモ−6−クロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−エチル尿素;
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジブロモフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジブロモフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−エチル尿素;
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−フェニル尿素;
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(3,5−ジメトキシフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−フェニルピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジメチルフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジフルオロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素;
N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1−メチルエチル)尿素
であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
非キラル形、または
ラミセ形、または
1種の立体異性体に富む形、または
1種の鏡像異性体に富む形であること;および
場合によって塩にされていること;および
場合によって水和または溶媒和されていること
を特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の他の抗癌活性成分も含むことを特徴とする、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、薬学的に許容される酸との前記化合物の付加塩さもなければ式(I)の化合物の水和物もしくは溶媒を含むことを特徴とする薬物。
【請求項12】
細胞増殖によって引き起こされるまたは増悪される疾患の治療および予防用薬物の調製のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項13】
白血病、原発性および転移性充実性腫瘍、癌腫および癌の予防および治療のための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
次式の化合物
【化8】

(式中、RおよびArは、(I)の定義の通りである。)を、式Ar’NH(III)のアミン(式中、Ar’は、(I)の定義の通りのArでありまたはArの前駆体である。)と反応させ;必要に応じて、このように得られた化合物のAr’基をAr基に変換することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の調製法。
【請求項15】
(i)次式の化合物
【化9】

(式中、R10は、(a)ハロゲン、特にClもしくはBrまたは(b)アルキル−S(O)m−(m=0、1または2)などの脱離基であり;R11は、NHC(O)−NH−Rである。);および
(ii)式Ar’NH(III)のアミン(式中、Ar’は、(I)の定義の通りのArでありまたはArの前駆体であり;必要に応じて、このように得られた前記化合物のAr’基をAr基に変換し;
ここで、
(a)R10がハロゲンまたはアルキル−S(O)m−(m=2)である場合、反応を、溶媒、好ましくは極性溶媒:
(i)例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドもしくはエタノール(場合によって、塩酸などの微量の酸の存在下);または
(ii)ジメチルスルホキシド(tBuOKなどの強塩基の存在下);
中において、周囲温度と溶媒の還流温度の間の温度で実施し;
(b)R10がアルキル−S(O)m−(m=0または1)である場合、反応を、溶融状態のAr’NH(III)により200℃で実施する。);
を反応させ、必要に応じて、化合物(III)のAr’基に存在するアミン官能基を、前もって塩にしまたは保護することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の調製法。

【公表番号】特表2008−544975(P2008−544975A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518918(P2008−518918)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001518
【国際公開番号】WO2007/003765
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】