説明

ピレン化合物の導入された伝導性高分子及びそれを用いた有機太陽電池

本発明は、下記化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子及びそれを光電変換材料として用いた有機太陽電池を提供する。本発明は、多様な種類の芳香族単量体が1種以上含まれたドナー官能基のみから構成された高分子、またはドナー官能基に反復的なアクセプター基を導入したドナー‐アクセプタータイプの高分子に所定量のピレン化合物を導入することによって正孔移動度を向上させた伝導性高分子を提供することによって、有機光センサー、有機発光ダイオード、有機薄膜トランジスター、有機太陽電池などの有機光電子素子用の材料として活用されることができる。さらに、本発明は、ピレン化合物の導入された伝導性高分子を電子供与体として活用した有機太陽電池を提供することによって、高いエネルギー変換効率を実現することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子及びそれを有機光電子素子用の材料として用いた有機太陽電池に係り、さらに詳細には、多様な種類の芳香族単量体が1種以上含まれたドナー(donor)官能基のみから構成された高分子またはドナー官能基に反復的なアクセプター基(acceptor)を導入したドナー‐アクセプタータイプの高分子にピレン化合物を導入することによって正孔移動度を向上させた伝導性高分子を製造し、それを有機光電子素子用の材料として用いてエネルギー変換効率(power conversion efficiency;PCE)を改善させた有機太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池は、有機物を光活性層として使用するものであって、数百nm以内の薄い厚さと相対的に安価な光活性層の材料、特に、容易に曲げられるフレキシブルな素子が製作できるという長所によって、研究が活発に行われている。
【0003】
一般的に光活性層は、電子親和度の異なる二つの物質を混合して使用するが、光活性物質の一方が光を吸収して励起されることによって励起子(exiton)を形成し、励起子は電子親和度の低い物質(ドナー)と電子親和度の高い物質(アクセプター)との境界面で、電子親和度の低い物質に含まれた電子が電子親和度の高い物質に移動して正孔(hole)と電子(electron)とに分離される。このとき、励起子の移動可能な距離は物質によって異なるが、おおよそ数nmないし10nmであるため、光の吸収された位置と電子親和度の異なる二つの物質間の境界面との距離が数nmないし10nmである場合に電子と正孔が最も効率的に分離されるため、ドナーとアクセプター物質を混合して使用するバルク異種接合(bulk heterojuction)方法を主に使用する。
【0004】
有機太陽電池は、ドナー及びアクセプター物質を蒸着法によって薄膜を製造する方法と、溶液工程を使用して薄膜を製造する方法とに大別される。
【0005】
さらに詳細には、蒸着を利用する方法では、ドナーとアクセプター両方とも単分子を使用することに対し、溶液工程を使用する方法では、一般的にドナー物質として高分子を使用し、アクセプターとしては高分子、フラーレン誘導体、ペリレン誘導体、量子ドット無機ナノ粒子などを使用する。したがって、単分子を蒸着して使用する場合より、高分子を用いた溶液工程を使用すれば、大面積の素子を低コストで製作することができるため、最近では高分子を用いた溶液工程に対する研究が集中している実情にある。
【0006】
これまではフラーレン誘導体をアクセプターとして使用することが最大の効率を示しており[J. Am. Chem. Soc., 2008, 130(48), 16144]、さらに高いエネルギー変換効率を図るために、相異なる領域の光を吸収する二つの高分子間に中間電極を挟み、順次に導入したタンデム式の素子に対する開発も行われている[Science, 2007, 317, 222]。
【0007】
有機太陽電池は、高いエネルギー変換効率を満たさなければならないが、高いエネルギー変換効率を得るためには、第一に、多量の光子を光吸収層で吸収し、第二に、吸収されて励起された励起子がドナーとアクセプターとの界面に移動して正孔と電子とに効果的に分離され、第三に、分離された正孔と電子が陽極と陰極に損失なしで移動しなければならない。
【0008】
バルク異種接合の構造を使用し、アクセプターとしてフラーレン誘導体を使用する場合、前記励起子の分離は定量的に行われると言えるため、有機薄膜太陽電池の高いエネルギー変換効率を得るためには、ドナーとして使用される高分子が多量の光子を吸収する性質と、正孔を良好に移動させる性質をいずれも満たさなければならない。
【0009】
したがって、本発明者らは、有機太陽電池の高いエネルギー変換効率を得るために、有機太陽電池に適用可能な新規な高分子を開発しようと努力した結果、多様な種類の芳香族単量体が1種以上含まれたドナー官能基のみから構成された高分子、またはドナー官能基に反復的なアクセプター基を導入したドナー‐アクセプタータイプの高分子にピレン化合物を導入して正孔移動度を向上させた新規な分子の設計を導出することによって本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、正孔移動度の向上した新規な伝導性高分子及びそれを用いた有機光電子素子用の材料としての用途を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、前記伝導性高分子を有機光電子素子用の材料として用いることによってエネルギー変換効率を向上させた有機太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子を提供する。
【0013】
【化1】

【0014】
(前記式中、lは単量体Xのモル分率として
【数1】

であり、mは単量体Yのモル分率として
【数2】

であり、nはピレン化合物のモル分率として
【数3】

であり、XとYは電子ドナー、アクセプターまたは光吸収機能を有する何れか一つの単量体である。)
【0015】
前記全体の伝導性高分子で、ピレン化合物の含量は
【数4】

が好ましく、さらに好ましくは、
【数5】

である。
【0016】
また、前記XまたはYのうち一方がドナー単量体の構造を有するとき、他方がアクセプター単量体の構造を有する。
【0017】
また、本発明は、化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子を有機光センサー(OPD)、有機発光ダイオード(OLED)、有機薄膜トランジスター(OTFT)及び有機太陽電池からなる群から選択される何れか一つの分野に適用される有機電子素子用の材料としての用途を提供する。
【0018】
このとき、全体の伝導性高分子で、ピレン化合物の含量は
【数6】

が好ましく、さらに好ましくは、
【数7】

である。
【0019】
さらに、本発明は、基板、第1電極、バッファー層、光電変換層及び第2電極からなるが、前記光電変換層が、本発明の化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子を電子供与体として使用し、C60フラーレン誘導体またはC70フラーレン誘導体を電子受容体として配合した光電変換物質を含む溶液からなる有機光電子素子(organic photovoltaic device)を備える有機太陽電池を提供する。このとき、伝導性高分子で、ピレン化合物の含量は
【数8】

が好ましく、さらに好ましくは、
【数9】

である。
【0020】
本発明の有機太陽電池において、光電変換層は、化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子を電子供与体とし、C60フラーレン誘導体またはC70フラーレン誘導体を電子受容体として使用するが、その配合比が1:0.5〜1:4重量比で配合された光電変換物質からなる。
【0021】
また、前記光電変換物質を含む溶液は、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン及びクロロホルムからなる群から選択される何れか一つの溶媒に光電変換物質1.0ないし3.0重量%が溶解した溶液相を基盤とした有機太陽電池である。このとき、前記光電変換物質が溶解した溶液は、インクジェットプリンティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、及びドクターブレード法のうち選択される一つの方法で塗布またはコーティングされることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、有機太陽電池のエネルギー変換効率を向上させた新規な伝導性高分子を提供することができる。すなわち、多様な種類の芳香族単量体が1種以上含まれたドナー官能基のみから構成された高分子、またはドナー官能基に反復的なアクセプター基を導入したドナー‐アクセプタータイプの高分子に所定量のピレン化合物を導入して正孔移動度を向上させた本発明の伝導性高分子は、光電変換材料として有用である。
【0023】
したがって、本発明は、ピレン化合物の導入された伝導性高分子を電子供与体として活用した、有機光電子素子を用いた有機太陽電池を提供することによって高いエネルギー変換効率を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施例によって製造された有機光電子素子の模式図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい第1実施形態によって製造された有機太陽電池の電流密度−電圧(J−V)の測定結果である。
【図3】図3は、本発明の好ましい第2実施形態によって製造された有機太陽電池の電流密度−電圧(J−V)の測定結果である。
【図4】図4は、本発明の好ましい第3実施形態によって製造された有機太陽電池の電流密度−電圧(J−V)の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明は、下記化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子を提供する。
【0027】
【化2】

【0028】
(前記式中、lは単量体Xのモル分率として
【数10】

であり、mは単量体Yのモル分率として
【数11】

であり、nはピレン化合物のモル分率として
【数12】

であり、XとYは電子ドナー、アクセプターまたは光吸収機能を有する何れか一つの単量体である。)
【0029】
前記化学式1の伝導性高分子は、多様な種類の芳香族単量体が1種以上含まれたドナー官能基のみから構成された高分子、またはドナー官能基に反復的なアクセプター基を導入したドナー‐アクセプタータイプの高分子に正孔移動度の高いピレン化合物を導入したものである。
【0030】
このとき、本発明の化学式1の伝導性高分子において、ピレン化合物の含量は
【数13】

が好ましく、さらに好ましくは、
【数14】

を満たすとき、正孔移動度を向上させ得るとともに、高い光吸収度が実現可能な伝導性高分子を得ることができる。前記ピレン化合物の含量が0.10を超えれば、伝導性高分子を光電変換材料として使用できない程度に溶解度が低下し、エネルギー変換効率が低下する。
【0031】
また、本発明の化学式1の伝導性高分子において、光吸収度を高めるための機能と高分子の自己組立が可能である機能を同時に導入するために、X、YまたはX及びYの組合わせが重要である。このとき、XまたはYのうち何れか一方がドナー単量体の構造を有する場合、他方はアクセプター単量体の構造を有さなければならない。
【0032】
好ましいドナー単量体は、化学式2ないし化学式10で示される化合物のうち選択される何れか一つを使用する。
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
(前記式中、RまたはRは、C〜C20の直鎖または側鎖のアルキル基、C〜C20のヘテロシクロアルキル、C〜C20のアリールまたはそのヘテロアリールである。)
【0043】
また、好ましいアクセプター単量体は、下記化学式11ないし化学式17で示される化合物のうち選択される何れか一つを使用する。
【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
【化18】

【0051】
(前記式中、RまたはRは、C〜C20の直鎖または側鎖のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、C〜C20のアリール基、C〜C20のヘテロシクロアルキル、C〜C20のアリールまたはそのヘテロアリールであり、RまたはRは同じであってもよく、異なっていてもよい。)
【0052】
本発明の化学式1の伝導性高分子において、XとYは、前記ドナー単量体またはアクセプター単量体以外にも、公知された多様な伝導性官能基または光吸収機能を有する何れか一つの単量体の構造を有することも可能である。好ましくは、XとYは、いずれも結晶性を有するチオフェン誘導体になることも可能である。さらに好ましくは、Xはドナー官能基を有し、Yはアクセプター官能基を有し、ドナー‐アクセプタータイプの低いバンドギャップの高分子を構成することができる。
【0053】
本発明は、下記化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子が電子供与体として使用される、有機光電子素子用の材料としてのその用途を提供する。
【0054】
【化19】

【0055】
(前記式中、l、m、及びnは前記明細書で定義した通りである。)
【0056】
前記式中、好ましいピレン化合物の含量は
【数15】


であり、さらに好ましくは、
【数16】

である。
【0057】
本発明の好ましい第1実施形態として、本発明の実施例1ないし実施例3では、フルオレン及びジチエニルベンゾチアジアゾールの共重合体にピレン化合物が含まれて製造された伝導性高分子を下記反応式1によって提供する。
【0058】
【化20】

【0059】
また、本発明の好ましい第2実施形態として、本発明の実施例5及び実施例6では、ジチオフェンシロール及びベンゾチアジアゾールの共重合体にピレン化合物が含まれて製造された伝導性高分子を下記反応式2によって提供する。
【0060】
【化21】

【0061】
このとき、本発明は、伝導性高分子の主鎖に10モル%以下、好ましくは、5モル%以下の少量のピレン化合物を導入することによって、正孔伝達性能の向上した伝導性高分子を提供することができる。
【0062】
前記実施例で示す伝導性高分子は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであり、前記実施例からこの技術分野の通常の知識を有する者なら、本発明で前記定義されたドナーまたはアクセプタータイプの組合わせによって、本発明が実現しようとする多様な伝導性高分子を容易に合成することができる。
【0063】
本発明のピレン化合物の導入された伝導性高分子を電子供与体として使用し、フラーレン誘導体をアクセプターとして使用する場合、有機太陽電池の高いエネルギー変換効率を確認することによって(表1及び表2)、高い光子吸収能及び正孔移動度を同時に満たす。
【0064】
したがって、本発明の化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子は、有機光センサー(OPD)、有機発光ダイオード(OLED)、有機薄膜トランジスター(OTFT)、有機太陽電池などの非線形光学材料として有用な有機電子素子用の材料として有用である。
【0065】
また、本発明は、基板、第1電極、バッファー層、光電変換層及び第2電極からなるが、前記光電変換層が化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子が電子供与体として使用され、C60フラーレン誘導体またはC70フラーレン誘導体が電子受容体として配合された光電変換物質からなる有機光電子素子を備える有機太陽電池を提供する。
【0066】
本発明の有機太陽電池は、下部から基板110、第1電極120、バッファー層130、光電変換層140及び第2電極150が積層された構造において、前記光電変換層140が化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子が電子供与体として使用され、C60フラーレン誘導体またはC70フラーレン誘導体が電子受容体として配合された光電変換物質を含む溶液から形成された有機光電子素子を備えることを特徴とする。本発明の好ましい実施例によって製造された有機光電子素子を備える有機太陽電池の模式図は図1に示す。
【0067】
また、本発明の有機光電子素子は、前記光電変換層140と第2電極150との間に電子伝達層、正孔阻止層またはオプティカルスペース(optical space)層を導入することができる。
【0068】
本発明の有機光電子素子は、電子供与体として使用される伝導性高分子がピレン化合物を導入することによって高い光子吸収能及び正孔移動度の向上により、最終的に有機太陽電池の高いエネルギー変換効率を実現することができる(表1及び表2)。
【0069】
このとき、本発明の有機光電子素子に電子供与体として使用される伝導性高分子が含むピレン化合物の含量は
【数17】

が好ましく、さらに好ましくは、
【数18】

を満たす。
【0070】
本発明の有機太陽電池に使用される基板110の素材としては透明物質が好ましく、その一例としては、ガラスまたはPET(polyethylene terephthalate)、PEN(polyethylene naphthelate)、PP(polypropylene)、PI(polyamide)、TAC(triacetyl cellulose)などのプラスチックであり、さらに好ましくは、ガラスを使用する。
【0071】
また、第1電極120は、前記基板110の一面にスパッタリング、スピンコーティングなどの方法を利用して透明物質を塗布するか、またはフィルムタイプとしてコーティングして形成することができる。第1電極120は、アノードとして機能する部分であって、後述する第2電極150に比べて仕事関数の小さい物質として、透明性及び導電性を有するものであれな特別に制限されずに使用され得るが、その好ましい一例としては、ITO(indium−tin oxide)、FTO(Fluorine doped tin oxide)、ZnO−(GaまたはAl)、SnO−Sbなどが使用されることができ、さらに好ましくは、ITOを使用する。
【0072】
前記第1電極120の上部に形成されるバッファー層130は、ポリスチレンスルホン酸でドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)[PEDOT:PSS]を使用して正孔移動度を向上させることができる。このとき、バッファー層130は、スピンコーティングなどの方法によって導入されることができる。
【0073】
一方、前記バッファー層130の上部には光電変換層140が積層される。前記光電変換層140は、電子供与体と電子受容体の接合構造を有し、電子供与体と電子受容体間の非常に速い電荷移動現象によって光起電力の効果を提供する。
【0074】
このとき、本発明は、光電変換層140の材料として、電子供与体としては本発明の化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子を使用し、電子受容体としてはC60フラーレン誘導体またはC70フラーレン誘導体を使用する。
【0075】
また、本発明の光電変換層140の光電変換物質は、化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子とC60フラーレン誘導体またはC70フラーレン誘導体間の混合割合が1:0.5〜1:4の重量比で配合されることが好ましい。このとき、本発明のピレン化合物の導入された伝導性高分子に対して、フラーレン誘導体が0.5重量比未満で配合されれば、結晶化したフラーレン誘導体の含量が不十分であり、生成された電子の移動に障害が発生し、4重量比を超えれば、光を吸収する伝導性高分子の量が相対的に減少して光の効率的な吸収が行われないため好ましくない。
【0076】
本発明のピレン化合物の導入された伝導性高分子とC60フラーレン誘導体またはC70フラーレン誘導体とが配合される光電変換物質は、単一の有機溶媒または沸点の相異なる2種以上の有機溶媒に溶解させて溶液を製造するが、この際に使用される有機溶媒としては、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン及びクロロホルムからなる群から選択される何れか一つの溶媒に1.0ないし3.0重量%の固形粉(光電変換物質)が含まれるように製造される。このとき、固形粉の含量が1.0重量%未満であれば、導入された薄膜の厚さを60nm以上に維持し難く、3.0重量%を超えれば、伝導性高分子及びC70フラーレン誘導体が溶解しない部分が多くなって好ましくない。
【0077】
その後、前記光電変換物質が溶解した溶液は、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、インクジェットプリンティング法及びドクターブレード法のうち選択される一つの方法で塗布またはコーティングされて、約60nm以上、好ましくは65ないし200nmの厚さを有する光電変換層140が形成される。
【0078】
第2電極150は、光電変換層140が導入された状態で約10−7torr以下の真空度で、アルミニウムなどの金属物質を100〜200nmの厚さに真空熱蒸着して、光電変換層140の上部に積層されることができる。
【0079】
前記第2電極150として使用され得る物質は、金、アルミニウム、銅、銀またはそれらの合金、カルシウム/アルミニウム合金、マグネシウム/銀合金、アルミニウム/リチウム合金などを含み、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム/カルシウム合金である。
【0080】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。
【0081】
本実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
<実施例1:伝導性高分子−2の合成>
高分子−2:
【化22】

【0083】
反応フラスコに2,7−ビス(4’,4’,5’,5’−テトラメチル−1’,3’,2’−ジオキサボロラン(dioxaborolan)−2’−イル)−9,9−ジデシルフルオレン0.300g(0.429mmol)、4,7−ジ−2’−(5’−ブロモ)−チエニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール0.191g(0.416mmol)、1,6−ジブロモピレン0.00464g(0.0129mmol)を入れて1時間真空状態を維持した後、トルエン7mlを入れて30分間撹拌した。エチルアルコール1.5ml及び20重量%のEtNOH1.5mlを入れた後、窒素でバブリングして、溶媒中に溶解している溶存酸素を除去した。その後、Pd(OAc) 2.9mg(0.0129mmol)及びトリシクロヘキサホスフィン10.8mg(0.0386mmol)を入れて、窒素雰囲気で外部のオイル・バスの温度を120℃に維持して2日間還流させた。
【0084】
フェニルボロン酸(phenylboronic acid)0.05gを入れて3時間反応させた後、ブロモベンゼン0.12gを入れ、さらに4時間反応させた。反応溶液を300mlのメタノールに落として得られた未精製の固体高分子をメタノールで24時間ソックスレーを利用して洗浄した。溶媒をクロロホルムに変えて高分子を溶解させ、最小量の溶媒のみを残して蒸発させた後、300mlのメタノールに沈澱させた。固体を濾過した後、溶媒を除去し、さらに最小量のクロロホルムに溶解させた後、300mlのメタノールに再沈澱させて濾過し、真空下で乾燥して高分子−2 200mgを得た[Mw=19,000g/mol(PDI=2.4)]。
【0085】
<実施例2:伝導性高分子−3の合成>
高分子−3:
【化23】

【0086】
反応フラスコに2,7−ビス(4’,4’,5’,5’−テトラメチル−1’,3’,2’−ジオキサボロラン−2’−イル)−9,9−ジデシルフルオレン0.300g(0.429mmol)、4,7−ジ−2’−(5’−ブロモ)−チエニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール0.187g(0.409mmol)、1,6−ジブロモピレン0.00774g(0.0215mmol)を入れて1時間真空状態を維持した後、トルエン7mlを入れて30分間撹拌した以外は、前記実施例1と同様の方法で高分子−3 200mgを得た[Mw=26,400g/mol(PDI=2.1)]。
【0087】
<実施例3:伝導性高分子−4の合成>
高分子−4:
【化24】

【0088】
反応フラスコに2,7−ビス(4’,4’,5’,5’−テトラメチル−1’,3’,2’−ジオキサボロラン−2’−イル)−9,9−ジデシルフルオレン0.300g(0.429mmol)、4,7−ジ−2’−(5’−ブロモ)−チエニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール0.177g(0.386mmol)、1,6−ジブロモピレン0.0155g(0.043mmol)を入れて1時間真空状態を維持した後、トルエン7mlを入れて30分間撹拌した以外は、前記実施例1と同様の方法で高分子−4 200mgを得た[Mw=25,000g/mol(PDI=2.3)]。
【0089】
<比較例1:伝導性高分子−1の合成>
高分子−1:
【化25】

【0090】
反応フラスコに2,7−ビス(4’,4’,5’,5’−テトラメチル−1’,3’,2’−ジオキサボロラン−2’−イル)−N−9”−ヘプタデカニルカルバゾール0.263g(0.400mmol)、4,7−ジ−2’−(5’−ブロモ)−チエニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール0.183g(0.400mmol)を入れて1時間真空状態を維持した後、トルエン4mlを入れて30分間撹拌した以外は、前記実施例1と同様の方法で高分子−1 300mgを得た。[Mw=31,000g/mol(PDI=3.9)]。元素分析。C4752に対する理論値:C 75.96; H 7.32; N 3.77; S 12.94。測定値:C 75.84; H 7.25; N 3.71; S 12.98。
【0091】
<比較例2:伝導性高分子−5の合成>
高分子−5:
【化26】

【0092】
反応フラスコに2,7−ビス(4’,4’,5’,5’−テトラメチル−1’,3’,2’−ジオキサボロラン−2’−イル)−9,9−ジデシルフルオレン0.300g(0.429mmol)、4,7−ジ−2’−(5’−ブロモ)−チエニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール0.148g(0.322mmol)、1,6−ジブロモピレン0.0385g(0.107mmol)を入れて1時間真空状態を維持した後、トルエン7mlを入れて30分間撹拌した以外は、前記実施例1と同様の方法で高分子−5 200mgを得た[Mw=27,000g/mol(PDI=2.7)]。
【0093】
<比較例3:伝導性高分子−6の合成>
高分子−6:
【化27】

【0094】
反応フラスコに2,7−ビス(4’,4’,5’,5’−テトラメチル−1’,3’,2’−ジオキサボロラン−2’−イル)−9,9−ジデシルフルオレン0.300g(0.429mmol)、4,7−ジ−2’−(5’−ブロモ)−チエニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール0.0985g(0.215mmol)、1,6−ジブロモピレン0.0774g(0.215mmol)を入れて1時間真空状態を維持した後、トルエン7mlを入れて30分間撹拌した以外は、前記実施例1と同様の方法で高分子−6 200mgを得た[Mw=45,000g/mol(PDI=2.8)]。
【0095】
<実施例4:有機太陽電池の製造1>
前記スズキ法によって合成された実施例1〜3及び比較例1〜3のピレン基を含む伝導性高分子を電子供与体として使用し、C70−PCBMを電子受容体として使用するが、その配合比を1:3重量比で混合して製造された光電変換層の材料をクロロベンゼン溶媒に1.5%の重量比で含まれるように溶解させた後、アルゴン雰囲気下でPEDOT層の導入されたITOガラス基板にスピンコーティングして60〜120nmの厚さを有する光電変換層を導入し、120℃の熱板で5分間熱処理した。次いで、10−7torr以下の真空度を有する真空チャンバでLiF 0.6nmとアルミニウム100〜200nmを順次に熱蒸着して有機太陽電池を製造した。
【0096】
<実験例1:有機光電子素子を採用した有機太陽電池の電気光学的特性>
下記反応式1に示すように、製造された実施例1〜3及び比較例1〜3の高分子とC70−PCBMを1:3重量比で混合して光電変換層の材料を製造し、それを用いた有機太陽電池に対して、電気光学的特性の結果を下記表1に示す。
【0097】
また、図2は、前記実施例1〜3及び比較例1〜3で製造された伝導性高分子とC70−PCBMを1:3重量比で混合して製造された、光電変換層の材料を用いた有機太陽電池の電流密度−電圧(J−V)の測定結果を示すグラフである。
【0098】
電気光学的特性のうち、フィルファクター(Fill Factor)及びエネルギー変換効率は下記数式1及び数式2によって算出された。
【0099】
【数19】

【0100】
(前記式中、Vmpは、最大電力点における電圧値であり、Impは電流密度であり、Vocは光開放電圧であり、Iscは光短絡電流である。)
【0101】
【数20】

【0102】
(前記式中、Jscは光短絡電流密度であり、Vocは光開放電圧である。)
【0103】
【化28】

【0104】
【表1】

【0105】
前記表1及び図2の結果から、フルオレン及びジチエニルベンゾチアジアゾールの共重合体に少量のピレンが含まれて製造された実施例1〜3の高分子(高分子−2ないし高分子−4)を用いた有機太陽電池は、ピレン化合物が含まれていない比較例1の高分子(高分子−1)に対して、エネルギー変換効率がそれぞれ55%、59%、38%向上した。
【0106】
また、フルオレンに対して、12.5%以上の単量体を添加した比較例2の場合、ピレン化合物が含まれていない比較例1の高分子−1に対して類似した効率を示し、25%以上の単量体を添加した比較例3の場合には、比較例1の高分子−1に対して、エネルギー変換効率が約27%減少した。
【0107】
<実施例5:伝導性高分子−8の合成>
反応フラスコに4,4’−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5,5’−ビス(トリメチルシリル)−ジチエノシロール(4,4’−bis(2−ethyl−hexyl)−5,5’−bis(trimethylsilyl)−dithieno[3,2−b:2’,3’−d]silole)0.325g(0.436mmol)、4,7−ブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール0.122g(0.414mmol)、1,6−ジブロモピレン0.00784g(0.0218mmol)及びトルエン2mlを入れた後、10分間窒素でバブリングして、溶媒中に溶解している溶存酸素を除去した。窒素を流しつつPd(dba) 11.8mg(0.0129mmol)及びP(o−tolyl) 11.7mg(0.0386mmol)を入れてさらに5分間窒素でバブリングした。窒素雰囲気で外部のオイル・バスの温度を120℃に維持して2日間還流させた。トリブチルフェニルスズ(Tributhylphenyl tin)0.05gを入れて3時間反応させた後、ブロモベンゼン0.12gを入れ、さらに4時間反応させた。反応溶液を300mlのメタノールに落として得られた未精製の固体高分子をメタノールで24時間ソックスレーを利用して洗浄した。溶媒をクロロホルムに変えて高分子を溶解させた後、最小量の溶媒のみを残して蒸発させ、300mlのメタノールに沈澱させた。固体を濾過した後、溶媒を除去し、さらに最小量のクロロホルムに溶解させた後、300mlのメタノールに再沈澱させて濾過し、真空下で乾燥して高分子−8 130mgを得た[Mw=67,000g/mol(PDI=1.8)]。
【0108】
<実施例6:伝導性高分子−9の合成>
反応フラスコに4,4’−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5,5’−ビス(トリメチルシリル)−ジチエノシロール0.325g(0.436mmol)、4,7−ブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール0.180g(0.392mmol)、1,6−ジブロモピレン0.0157g(0.0436mmol)及びトルエン2mlを入れた後、10分間窒素でバブリングして、溶媒中に溶解している溶存酸素を除去した。
【0109】
窒素を流しつつPd(dba) 11.8mg(0.0129mmol)及びP(o−tolyl) 11.7mg(0.0386mmol)を入れてさらに5分間窒素でバブリングした。窒素雰囲気で外部のオイル・バスの温度を120℃に維持して日間還流させ、その後の実験は前記実施例4と同様の方法で行って高分子−9 180mgを得た[Mw=60,000g/mol(PDI=1.7)]。
【0110】
<比較例4:伝導性高分子−7の合成>
反応フラスコに4,4’−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5,5’−ビス(トリメチルシリル−ジチエノシロール0.325g(0.436mmol)、4,7−ブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール0.200g(0.436mmol)及びトルエン2mlを入れた後、10分間窒素でバブリングして、溶媒中に溶解している溶存酸素を除去した。
【0111】
窒素を流しつつPd(dba) 11.8mg(0.0129mmol)及びP(o−tolyl) 11.7mg(0.0386mmol)を入れ、さらに5分間窒素でバブリングした。窒素雰囲気で外部のオイル・バスの温度を120℃に維持して2日間還流させ、その後の実験は前記 実施例4と同様の方法で行って高分子−7 180mgを得た[Mw=40,000g/mol(PDI=1.3)]。
【0112】
<実施例7:有機光電子素子の製造2>
前記スティーリー方法によって合成された実施例5〜6及び比較例4のピレン基を含む伝導性高分子を電子供与体として使用し、C70−PCBMを電子受容体として使用するが、その配合比を1:3重量比で混合して製造された光電変換層の材料をクロロベンゼン溶媒に1.5%の重量比で含まれるように溶解させた後、前記実施例4と同様の方法で有機太陽電池を製造した。
【0113】
<実験例2:有機光電子素子を採用した有機太陽電池の電気光学的特性>
下記反応式2に示すように、製造された実施例5〜6及び比較例4の高分子とC70−PCBMを1:3重量比で混合して光電変換層の材料を製造し、それを用いた有機太陽電池に対して、電気光学的特性の結果を下記表2に示す。
【0114】
また、図3は、前記実施例5〜6及び比較例4で製造された伝導性高分子とC70−PCBMを1:3重量比で混合して製造された、光電変換層の材料を用いた有機太陽電池の電流密度−電圧(J−V)の測定結果を示すグラフである。
【0115】
【化29】

【0116】
【表2】

【0117】
前記表2及び図3の結果から、ジチオフェンシロール及びベンゾチアジアゾールの共重合体に少量のピレンが含まれて製造された実施例5〜6の高分子(高分子−8及び高分子−9)を含む有機太陽電池の場合、ピレンが含まれていない比較例4の高分子(高分子−7)に対して、エネルギー変換効率がそれぞれ15%、28%向上した。
【0118】
<実施例8:伝導性高分子−11の合成>
【化30】

【0119】
ステップ1:2,5−ビス(5−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾールの製造
【0120】
反応フラスコに2,5−ビス(3−ヘキシルチオフェン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール0.720g(1.52mmol)及びN−ブロモコハク酸イミド(NBS)0.541g(3.04mmol)を入れてクロロホルム35mlに溶解させた後、3時間還流反応させた。反応温度を室温に下げ、水で約2回洗浄した後、有機層に溶解している物質をMgSOを利用して微量の水を除去した後、溶媒を除去した。
【0121】
その後、ヘキサン/クロロホルム(50:1)の展開溶媒でコラムクロマトグラフィーを利用して目的化合物である2,5−ビス(5−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール0.3g(31%)を得た。
【0122】
H NMR (300 MHz, C)(ppm): 6.96(s, 2H), 2.91(t, 4H), 1.67(q, 4H), 1.34(br, 12H), 0.91(t, 6H).
【0123】
ステップ2:2,7−ビス(4’,4’,5’,5’−テトラメチル−1’,3’,2’−ジオキサボロラン−2’−イル)−N−9”−ヘプタデカニルカルバゾールの製造
【0124】
反応フラスコにN−9’−ヘプタデカニル−2,7−ジブロモカルバゾール5.000g(8.87mmol)をTHF 100mlに溶解させて−78℃に維持した後、n−BuLi(2.5Mのヘキサン溶液)7.27ml(18.18mmol)をゆっくり適下した。1時間同一の温度で撹拌した後、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン3.63ml(19.51mmol)を溶液に適下した。同一の温度でさらに1時間撹拌し、反応容器の温度を常温に上げた後、16時間撹拌して反応させた。前記反応物を水に添加してジエチルエーテルで抽出し、MgSOを利用して微量の水を除去した後、溶媒を除去した。
【0125】
その後、メタノール/アセトン(10:1)溶液を利用して再結晶によって目的化合物である2:2,7−ビス(4’,4’,5’,5’−テトラメチル−1’,3’,2’−ジオキサボロラン−2’−イル)−N−9”−ヘプタデカニルカルバゾール2.5g(50%)を精製して得た 。
【0126】
H NMR (300 MHz, C)(ppm): 8.44(br, 1H), 8.19(d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.15(t, J= 8.1 Hz, 2H), 8.10(d, J=7.7 Hz, 1H), 4.50(m, 1H), 2.33(m, 2H), 1.61(m, 2H), 1.22(br, 4H), 1.19(br, 12H), 1.17(br, 12H), 1.03(br, 20H), 0.87(t, J = 7.1 Hz, 6H).
【0127】
ステップ3:伝導性高分子の製造
【0128】
反応フラスコにステップ1で製造された2,5−ビス(5−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール0.240g(0.380mmol)、1,6−ジブロモピレン0.0072(0.020mmol)と、ステップ2で製造された2,7−ビス(4’,4’,5’,5’−テトラメチル−1’,3’,2’−ジオキサボロラン−2’−イル)−N−9”−ヘプタデカニルカルバゾール0.263g(0.400mmol)を入れて1時間真空状態を維持した後、トルエン4mlを入れた後、30分間撹拌した。20重量%のEtNOH 1.296gを添加した後、窒素でバブリングして、溶媒中に溶解している溶存酸素を除去した。
【0129】
その後、Pd(OAc) 5.4mg(0.008mmol)とトリシクロヘキサホスフィン3.4mg(0.0386mmol)を入れて、窒素雰囲気で外部オイル・バスの温度を90℃に維持して24時間還流反応させた。反応溶液を300mlのメタノールに落として得られた未精製の固体高分子をメタノールとアセトンでそれぞれ24時間ソックスレーを利用して洗浄した。溶媒をクロロホルムに変えて高分子を溶解させた後、最小量の溶媒のみを残して蒸発させた後、300mlのメタノールに沈澱させた。固体を濾過した後、溶媒を除去し、再び最小量のクロロホルムに溶解させた後、300mlのメタノールに再沈澱させた後に濾過し、真空下で乾燥して伝導性高分子210mgを製造した[Mw=57,000g/mol(PDI=2.2)]。
【0130】
<比較例5:伝導性高分子−10の合成>
反応フラスコにステップ1で製造された2,5−ビス(5−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール0.253g(0.400mmol)と、ステップ2で製造された2,7−ビス(4’,4’,5’,5’−テトラメチル−1’,3’,2’−ジオキサボロラン−2’−イル)−N−9”−ヘプタデカニルカルバゾール0.263g(0.400mmol)を入れて1時間真空状態を維持した後、トルエン4mlを入れて30分間撹拌した。20重量%のEtNOH 1.296gを添加した後、窒素でバブリングして、溶媒中に溶解している溶存酸素を除去した。
【0131】
その後、Pd(OAc) 5.4mg(0.008mmol)とトリシクロヘキサホスフィン3.4mg(0.0386mmol)を入れ、窒素雰囲気で外部のオイル・バスの温度を90℃に維持しつつ、24時間還流反応させた。反応溶液を300mlのメタノールに落として得られた未精製の固体高分子を、メタノールとアセトンでそれぞれ24時間ソックスレーを利用して洗浄した。溶媒をクロロホルムに変えて高分子を溶解させた後、最小量の溶媒のみを残して蒸発させ、300mlのメタノールに沈澱させた。固体を濾過した後、溶媒を除去し、さらに最小量のクロロホルムに溶解させた後、300mlのメタノールに再沈澱させて濾過し、真空下で乾燥して伝導性高分子320mgを製造した[Mw=58,000g/mol(PDI=2.9)]。
【0132】
元素分析。C5369に対する理論値:C 72.63; H 7.94; N 4.79; S 14.63。測定値:C 72.46; H 7.82; N 4.58; S 14.20。
【0133】
<実施例9:有機光電子素子の製造3>
前記スズキ方法によって、前記実施例8及び比較例5で製造された高分子を電子供与体として使用し、C70−PCBMを電子受容体として使用するが、その配合比を1:3重量比で混合して製造された光電変換層の材料をクロロベンゼン溶媒に1.5%の重量比で含まれるように溶解させた後、アルゴン雰囲気下でPEDOT層の導入されたITOガラス基板にスピンコーティングして70〜120nmの厚さを有する光電変換層を導入し、120℃の熱板で5分間熱処理した。
【0134】
次いで、10−7torr以下の真空度を有する真空チャンバで、LiF 0.6nm及びアルミニウム100〜200nmを順次に熱蒸着して有機光電子素子を製造した。
【0135】
<実験例3:有機光電子素子を採用した有機太陽電池の電気光学的特性>
前記実施例8及び比較例5で製造された高分子とC70−PCBMを1:3重量比で混合して光電変換層の材料を製造し、それを用いた有機太陽電池素子に対して電気光学的特性の結果を下記表4に示す。
【0136】
図4は、前記実施例8及び比較例5で製造された伝導性高分子とC70−PCBMを1:3重量比で混合して製造された、光電変換層の材料を用いた有機太陽電池の電流密度−電圧(J−V)の測定結果を示すグラフである。
【0137】
【表4】

【0138】
前記 表4に示すように、高分子にドナー−アクセプターのセグメントが同時に含まれ、特に、ジチオフェン−チアゾロチアゾール基を導入することによって光子吸収能や正孔移動度を向上させるため、本発明の伝導性高分子は有機太陽電池用の高分子として適している。
【0139】
また、前記高分子に少量のピレンが含まれて製造された図4の実施例8(高分子11)及び比較例5(高分子10)で製造された伝導性高分子を用いて製造された有機太陽電池の電流密度−電圧の測定結果から、実施例8で製造された高分子は、ピレンが含まれていない比較例5の高分子(高分子−10)に対して、光短絡電流及びフィルファクターが向上し、有機太陽電池素子の高いエネルギー変換効率が確認された。特に、本発明の有機太陽電池素子が高分子を含む溶液型として製造されるため、大面積の素子を低コストで提供することができる経済的な利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0140】
以上で説明したように、第一に、多様な種類の芳香族単量体が1種以上含まれたドナー官能基のみから構成された高分子、またはドナー官能基に反復的なアクセプター基を導入したドナー‐アクセプタータイプの高分子に、所定量のピレン化合物を導入した伝導性高分子を提供することによって電荷移動速度が向上し、有機太陽電池の電子供与体として使用する場合、エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0141】
第二に、本発明の伝導性高分子の高い光子吸収能及び正孔移動度によって、有機光センサー、有機発光ダイオード、有機薄膜トランジスター、有機太陽電池の分野に適用することができる有機光電子素子用の材料として活用されることができる。
【0142】
第三に、本発明の伝導性高分子を有機光電子素子用の材料として利用してエネルギー変換効率を向上させた有機太陽電池を提供することができる。
【0143】
以上、本発明は、記載された具体例についてのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想範囲内で多様な変形及び修正が可能であるということは当業者にとっては明らかなものであり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属することは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子:
【化1】

前記式中、lは単量体Xのモル分率として
【数1】

であり、mは単量体Yのモル分率として
【数2】

であり、nはピレン化合物のモル分率として
【数3】

であり、XとYは電子ドナー、アクセプターまたは光吸収機能を有する何れか一つの単量体である。
【請求項2】
前記式中、
【数4】


が好ましく、さらに好ましくは、
【数5】

であることを特徴とする請求項1に記載の前記ピレン化合物の導入された伝導性高分子。
【請求項3】
前記XまたはYのうち何れか一方がドナー単量体の構造を有し、他方がアクセプター単量体の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の前記ピレン化合物の導入された伝導性高分子。
【請求項4】
前記ドナー単量体が下記化学式2ないし化学式10で示される化合物のうち選択される何れか一つであることを特徴とする請求項1に記載の前記ピレン化合物の導入された伝導性高分子:
【化2】

【化3】


【化4】

【化5】

【化6】


【化7】

【化8】


【化9】

【化10】

前記式中、RまたはRは、C〜C20の直鎖または側鎖のアルキル基であり、C〜C20のヘテロシクロアルキルであり、C〜C20のアリールまたはそのヘテロアリールである。
【請求項5】
前記アクセプター単量体が下記化学式11ないし化学式17で示される化合物のうち選択される何れか一つであることを特徴とする請求項1に記載の前記ピレン化合物の導入された伝導性高分子:
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】


【化17】

前記式中、RまたはRは、C〜C20の直鎖または側鎖のアルキル基、C〜C20のアルコキシ、C〜C20のアリール基、C〜C20のヘテロシクロアルキル、C〜C20のアリールまたはそのヘテロアリールであり、RまたはRは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【請求項6】
請求項1のピレン化合物の導入された伝導性高分子が有機光センサー、有機発光ダイオード、有機薄膜トランジスター、及び有機太陽電池のうち選択される何れか一つに適用される有機光電子素子用の材料:
【化18】

前記式中、X、Y、l、m及びnは請求項1で定義した通りである。
【請求項7】
前記式で、
【数6】

であることを特徴とする請求項6に記載の前記有機光電子素子用の材料。
【請求項8】
基板、第1電極、バッファー層、光電変換層及び第2電極からなるが、前記光電変換層が請求項1の化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子が電子供与体として使用され、C60のフラーレン誘導体またはC70のフラーレン誘導体が電子受容体として配合された光電変換物質を含む溶液からなる有機光電子素子を備える有機太陽電池:
【化19】

前記式中、X、Y、l、m及びnは請求項1で定義した通りである。
【請求項9】
前記式で、
【数7】

であることを特徴とする請求項8に記載の前記有機太陽電池。
【請求項10】
前記光電変換層が化学式1で示されるピレン化合物の導入された伝導性高分子の電子供与体と、C60のフラーレン誘導体またはC70のフラーレン誘導体の電子受容体が1:0.5〜1:4の重量比で配合された光電変換物質からなることを特徴とする請求項8に記載の前記有機太陽電池。
【請求項11】
前記光電変換物質を含む溶液は、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン及びクロロホルムからなる群から選択される何れか一つの溶媒に光電変換物質1.0ないし3.0重量%が溶解されたことを特徴とする請求項8に記載の前記有機太陽電池。
【請求項12】
前記光電変換物質が溶解された溶液は、インクジェットプリンティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法及びドクターブレード法から選択される何れか一つの方法で塗布またはコーティングされることを特徴とする請求項8に記載の前記有機太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−512985(P2013−512985A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541930(P2012−541930)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007003
【国際公開番号】WO2011/068305
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(505386867)コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー (6)
【Fターム(参考)】