説明

ファイバカップリング装置

【課題】X軸スライド45をZ軸スライド35に対して固定する際に、調整済みの2つのレンズ23,29の微小な芯ずれを十分に防止すること。
【解決手段】Z軸スライド35のXY平面にロック片99をZ軸スライド35のXY平面側に押圧するロックねじ103が螺合して設けられ、ロックねじ103はロック片99の貫通穴99hにY軸方向及びX軸方向に相対的に変位可能に挿通し、ロックねじ103の回転操作によってロック片99をZ軸スライド35のXY平面側に押圧すると、ロック片99がZ軸方向のクリアランスC分だけ溝99s側を起点として弾性変形してZ軸スライド35のXY平面に圧接するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィーディングファイバとプロセスファイバを光学的に接続するファイバカップリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザ発振器にはファイバカップリング装置が用いられており、一般的なファイバカップリング装置の構成は、次のようになる。
【0003】
ファイバカップリング装置は、ファイバレーザ発振器の筐体に設置されてあって、本体ケースをベースとして具備している。また、本体ケースは、一側(Z軸方向の一側)に、フィーディングファイバの端部を接続可能な第1ファイバ接続部を有してあって、他側(Z軸方向の他側)に、プロセスファイバの端部を接続可能な第2ファイバ接続部を有している。
【0004】
本体ケース内における第1ファイバ接続部側には、第1鏡筒が設けられており、この第1鏡筒の内部には、フィーディングファイバからのレーザ光を平行光に変換するコリメートレンズが設置されている。また、本体ケース内における第2ファイバ接続部側には、第2鏡筒が設けられており、この第2鏡筒の内部には、前記プロセスファイバに向かってレーザ光を集光する集光レンズが設置されている。
【0005】
本体ケース内における第1ファイバ接続部側には、Z軸方向(光軸方向であって、左右方向)へ変位可能なZ軸スライドが設けられており、このZ軸スライドには、前述の第1鏡筒が一体的に連結されている。また、本体ケース内における第2ファイバ接続部側には、Y軸方向(上下方向)へ変位可能なY軸スライドが設けられている。更に、Y軸スライドには、X軸方向(前後方向)へ変位可能なX軸スライドが設けられており、このX軸スライドには、前述の第2鏡筒が一体的に連結されている。
【0006】
本体ケースにおける第2ファイバ接続部の近傍には、Y軸スライドのY軸方向の位置、換言すれば、第2鏡筒のY軸方向の位置を調整するY軸調整ねじが設けられており、本体ケースにおけるY軸調整ねじに隣接する位置には、Y軸スライドをY軸方向から本体ケースに対してY軸方向に移動不能に固定するY軸ロックねじが設けられている。同様に、本体ケースにおける第2ファイバ接続部の近傍には、X軸スライドのX軸方向の位置、換言すれば、第2鏡筒のX軸方向の位置を調整するX軸調整ねじが設けられており、本体ケースにおけるX軸調整ねじに隣接する位置には、X軸スライドをX軸方向からY軸スライドに対してX軸方向に移動不能に固定するX軸ロックねじが設けられている。
【0007】
従って、プロセスファイバ等の交換等を行った後に、Y軸調整ねじを回転操作して第2鏡筒のY軸方向の位置を調整すると共に、X軸調整ねじを回転操作して第2鏡筒のX軸方向の位置を調整することにより、集光レンズをコリメートレンズに対してX軸方向及びY軸方向に変位させて、コリメートレンズと集光レンズの芯出し調整を行う。続いて、Y軸ロックねじを回転操作してY軸スライドをY軸方向から本体ケースに対してY軸方向に移動不能に固定すると共に、X軸ロックねじを回転操作してX軸スライドをX軸方向からY軸スライドに対してX軸方向に移動不能に固定することにより、第2鏡筒を本体ケースに対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に固定することができる。
【0008】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1及び特許文献2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−52023号公報
【特許文献2】特開2008−258523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前述のように、Y軸ロックにねじのロック力の働く方向とY軸ロックねじによって固定される方向が同じであって、X軸ロックねじのロック力の働く方向とX軸ロックねじによって固定される方向が同じであるため、Y軸スライドを本体ケースに対して固定したり、X軸スライドをY軸スライドに対して固定したりする際に、第2鏡筒に偏荷重又はモーメントが局所的に生じ易く、調整済みの2つのレンズ(コリメートレンズと集光レンズ)の微小な芯ずれを招くことがあるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のファイバカップリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特徴は、フィーディングファイバとプロセスファイバを光学的に接続するファイバカップリング装置において、
一側(Z軸方向の一側)に前記フィーディングファイバの端部を接続可能な第1ファイバ接続部を有し、他側(Z軸方向の他側)に前記プロセスファイバの端部を接続可能な第2ファイバ接続部を有した本体ケースと、
前記本体ケース内における前記第1ファイバ接続部側に設けられ、内部に前記フィーディングファイバからのレーザ光を平行光に変換するコリメートレンズが設置された第1鏡筒と、
前記本体ケース内における前記第2ファイバ接続部側に設けられ、内部に前記プロセスファイバに向かってレーザ光を集光する集光レンズが設置された第2鏡筒と、
前記本体ケース内にZ軸方向へ変位可能に設けられたZ軸スライドと、前記Z軸スライドにY軸方向及びX軸方向へ変位可能に設けられかつ前記第1鏡筒と前記第2鏡筒のうちのいずれかの鏡筒が一体的に連結されたXY軸スライドとを備えたスライド機構と、
前記いずれかの鏡筒のZ軸方向、Y軸方向、及びX軸方向の位置を調整する調整機構と、
前記Z軸スライドをZ軸方向に直交する方向から前記本体ケースに対してZ軸方向に移動不能に固定するZ軸ロック機構と、
前記XY軸スライドをZ軸方向から前記Z軸スライドに対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に固定するXY軸ロック機構と、を具備し、
前記XY軸ロック機構は、
前記XY軸スライドに設けられ、前記Z軸スライドのXY平面(Z軸方向に直交する平面)に対向してあって、貫通穴が形成されたロック片と、
前記Z軸スライドのXY平面に螺合して設けられ、前記ロック片の前記貫通穴にY軸方向及びX軸方向に相対的に変位可能に挿通し、前記ロック片を前記Z軸スライドのXY平面側に押圧するロックねじと、を備えたことを要旨とする。
【0013】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたこと、及び一体形成されたことを含む意である。また、「Z軸方向」とは、前記プロセスファイバのコアを通るレーザ光の光軸方向のことをいい、「Y軸方向」とは、Z軸方向(光軸方向)に対して垂直な方向のことをいい、「X軸方向」とは、Z軸方向及びY軸方向に対してに対して垂直な方向のことをいう。
【0014】
第1の特徴によると、前記調整機構によって前記いずれかの鏡筒のZ軸方向の位置を調整することにより、前記集光レンズをコリメートレンズに対して相対的にZ軸方向へ変位させて、前記集光レンズの焦点位置調整を行う。続いて、前記Z軸ロック機構によって前記Z軸スライドをZ軸方向に直交する方向から前記本体ケースに対してZ軸方向に移動不能に固定することにより、前記いずれかの鏡筒を前記本体ケースに対してZ軸方向に移動不能に固定する。
【0015】
前記いずれかの鏡筒を前記本体ケースに対してZ軸方向に移動不能に固定した後に、前記調整機構によって前記いずれかの鏡筒のY軸方向及びX軸方向の位置を調整することにより、前記集光レンズを前記コリメートレンズに対して相対的にX軸方向及びY軸方向に変位させて、前記コリメートレンズと前記集光レンズの芯出し調整を行う。続いて、前記ロックねじを回転操作して、前記ロック片を前記Z軸スライドのXY平面側に押圧することにより、前記XY軸スライドをZ軸方向から前記Z軸スライドに対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に固定して、前記いずれかの鏡筒を前記本体ケースに対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に固定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記ロックねじの押圧方向、換言すれば、前記ロックねじのロック力の働く方向がZ軸方向であって、前記ロックねじによって固定される方向がY軸方向及びX軸方向であるため、前記XY軸スライドを前記Z軸スライドに対して固定する際に、前記いずれかの鏡筒に偏荷重又はモーメントが局所的に生じることを抑えて、調整済みの2つのレンズ(前記コリメートレンズと前記集光レンズ)の微小な芯ずれを十分に防止することができる。
【0017】
前記ロック片を前記Z軸スライドのXY平面側に押圧するだけで、前記いずれかの鏡筒を前記ケース本体に対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に固定できるため、2つのレンズの一連の調整作業を簡略化して、その作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るファイバカップリング装置の正断面図である。
【図2】図2は、図3におけるII-II線に沿った図である。
【図3】図3は、図1におけるIII-III線に沿った図である。
【図4】図4は、図1におけるIV-IV線に沿った図である。
【図5】図5は、図2におけるV-V線に沿った図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係るファイバカップリング装置の左側面図である。
【図7】図7は、図1における矢視部VIIの拡大図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係るファイバカップリング装置におけるXY軸ロック機構の別態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図1から図8を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「U」は、上方向、「D」は、下方向をそれぞれを指してある。
【0020】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係るファイバカップリング装置1は、ファイバ径の異なるフィーディングファイバ3とプロセスファイバ5を光学的に接続するものであって、ファイバレーザ発振器の筐体(図示省略)内に設置される。そして、ファイバカップリング装置1の構成の詳細は、以下のようになる。
【0021】
ファイバカップリング装置1は、本体ケース7をベースとして具備しており、この本体ケース7の内部には、密閉空間Sが区画形成されている。また、本体ケース7のZ軸方向(光軸方向であって、左右方向)の一側(右側)には、支持筒9が設けられており、この支持筒9には、フィーディングファイバ3の端部をコネクタ11を介して接続可能な第1ファイバ接続部としての第1レセプタ13が設けられており、換言すれば、本体ケース7は、右側に、第1レセプタ13を有している。更に、本体ケース7のZ軸方向の他側(左側)には、支持リング15が設けられており、この支持リング15には、プロセスファイバ5の端部をコネクタ17を介して接続可能な第2ファイバ接続部としての第2レセプタ19が設けられており、換言すれば、本体ケース7は、左側に、第2レセプタ19を有している。
【0022】
支持筒9には、第1鏡筒21が設けられており、換言すれば、本体ケース7内における第1レセプタ13側には、第1鏡筒21が設けられており、この第1鏡筒21の内部には、フィーディングファイバ3からのレーザ光を平行光に変換するコリメートレンズ23が設置されている。また、第1鏡筒21は、先端側に、コリメートレンズ23を保持するレンズホルダ25を有している。
【0023】
本体ケース7内における第2レセプタ19側には、第2鏡筒27が設けられており、この第2鏡筒27の内部には、プロセスファイバ5に向かってレーザ光を集光する集光レンズ29が設置されている。また、第2鏡筒27は、先端側に、集光レンズ29を保持するレンズホルダ31を有している。
【0024】
図1、図2、図3、及び図5に示すように、本体ケース7内には、第2鏡筒27をZ軸方向、Y軸方向(上下方向)、及びX軸方向(前後方向)へ変位させるためのスライド機構33が設けられており、このスライド機構33の具体的な構成は、次のようになる。
【0025】
即ち、本体ケース7の底面には、正面視T字形状のZ軸スライド35がZ軸方向へ延びたZ軸LMガイド37を介してZ軸方向へ変位可能に設けられており、このZ軸スライド35は、左側に、当接ピン39を有してあって、Z軸スライド35には、第2鏡筒27の先端部を挿入可能な開口部35mが形成されている。また、Z軸スライド35には、Y軸スライド41がY軸方向へ延びた一対のY軸LMガイド43を介してY軸方向へ変位可能に設けられており、このY軸スライド41には、第2鏡筒27を挿通可能な開口部43mが形成されている。更に、Y軸スライド41には、X軸スライド45がX軸方向へ延びたX軸LMガイド47を介してX軸方向へ変位可能に設けられており、このX軸スライド45は、前側(X軸方向の一側)に、ブラケット(支持板)49を有してあって、X軸スライド45には、第2鏡筒27が一体的に連結されている。
【0026】
図2から図6に示すように、ファイバカップリング装置1は、第2鏡筒27をZ軸方向、Y軸方向、及びX軸方向の位置を調整する調整機構51を具備しており、この調整機構51の具体的な構成は、次のようになる。
【0027】
即ち、本体ケース7の左側部(Z軸方向の一方の側部)には、Z軸マイクロメータヘッド53が設けられており、このZ軸マイクロメータヘッド53は、本体ケース7の左方側(Z軸方向の一方側)から回転操作可能であって、先端側に、Z軸方向へ変位可能かつZ軸スライド35の当接ピン39に当接可能なZ軸スピンドル55を有している。また、Z軸スライド35の下面に形成された収容溝(収容凹部35gには、Z軸スライド35の当接ピン39をZ軸スピンドル55に当接する方向(左方向)へ付勢するZ軸付勢部材としてのスプリング57が設けられおり、このスプリング57の付勢力は、適宜に調節可能になっている。
【0028】
本体ケース7の左側部には、Y軸マイクロメータヘッド59が設けられており、このY軸マイクロメータヘッド59は、本体ケース7の左方側から回転操作可能であって、先端側に、Z軸方向へ変位可能なY軸スピンドル61を有している。また、本体ケース7内の上部には、支持ブロック63が設けられており、この支持ブロック63には、Y軸揺動レバー65がX軸方向に平行な軸心周りに揺動可能に設けられている。換言すれば、本体ケース7内の上部には、Y軸揺動レバー65が支持ブロック63を介してX軸方向に平行な軸心周りに揺動可能に設けられている。そして、Y軸揺動レバー65は、一端側に、Y軸スピンドル61に当接可能なY軸主動当接子としてY軸主動ローラ67を有しており、他端側に、Y軸スライド41のXZ平面(Y軸方向に直交する平面)に当接可能なY軸従動当接子としてY軸従動ローラ69を有しており、Y軸主動ローラ67及びY軸従動ローラ69は、X軸方向に平行な軸心周りにそれぞれ回転可能になっている。更に、Y軸スライド41の上面には、Y軸スライド41をY軸従動ローラ69に当接する方向(上方向)へ付勢するY軸付勢部材としてY軸スプリングプランジャ71が設けられており、このY軸スプリングプランジャ71は、先端側に、Z軸スライド35の上面に当接可能なY軸当接ピン73を有している。
【0029】
本体ケース7の左側部には、X軸マイクロメータヘッド75が設けられており、このX軸マイクロメータヘッド75は、本体ケース7の左方側から回転操作可能であって、先端側に、Z軸方向へ変位可能なX軸スピンドル77を有している。また、支持ブロック63には、X軸揺動レバー79がY軸方向に平行な軸心周りに揺動可能に設けられており、換言すれば、本体ケース7内の上部には、X軸揺動レバー79が支持ブロック63を介してY軸方向に平行な軸心周りに揺動可能に設けられている。そして、X軸揺動レバー79は、一端側に、X軸スピンドル77に当接可能なX軸主動当接子としてX軸主動ローラ81を有しており、他端側に、X軸スライド45のYZ平面(X軸方向に直交する平面)に当接可能なX軸従動当接子としてX軸従動ローラ83を有してあって、X軸主動ローラ81及びX軸従動ローラ83は、Y軸方向に平行な軸心周りにそれぞれ回転可能である。更に、X軸スライド45のブラケット49の前面には、X軸スライド45をX軸従動ローラ83に当接する方向(前方向)へ付勢するX軸付勢部材としてX軸スプリングプランジャ85が設けられており、このX軸スプリングプランジャ85は、先端側に、Y軸スライド41の前端面に当接可能なX軸当接ピン87を有している。
【0030】
図2及び図6に示すように、ファイバカップリング装置1は、Z軸スライド35をZ軸方向から本体ケース7に対して固定するZ軸ロック機構89を具備しており、このZ軸ロック機構89の具体的な構成は、次のようになる。
【0031】
即ち、Z軸スライド35の左端面には、Z軸方向へ延びた連結ロッド91が一体的に設けられており、この連結ロッド91は、本体ケース7の左側部に挿通してある。また、本体ケース7の左側部には、連結ロッド91をZ軸方向に直交する方向から把持(保持)するクランプ部材93が設けられており、このクランプ部材93は、本体ケース7の左側方から回転操作可能なクランプねじ95を備えている。
【0032】
図1、図6、及び図7に示すように、ファイバカップリング装置1は、X軸スライド45をZ軸方向からZ軸スライド35に対して固定するXY軸ロック機構97を具備しており、このXY軸ロック機構97の具体的な構成は、次のようになる。
【0033】
即ち、X軸スライド45の下部(下側)には、ロック片99が一体形成されており、このロック片99は、Z軸スライド35のXY平面(Z軸方向に直交する平面)に対向してあって、第2鏡筒27の下側に位置している。また、ロック片99には、貫通穴99hが形成されており、ロック片99の基端側には、溝(横溝)99sがX軸方向に沿って形成されている。ここで、X軸スライド45をZ軸スライド35に対して固定する前において、ロック片99とZ軸スライド35との間には、Z軸方向のクリアランスCが区画形成されている。更に、Z軸スライド35のXY平面には、ロック片99を座金101を介してZ軸スライド35のXY平面側に押圧するロックねじ103が螺合して設けられており、このロックねじ103は、本体ケース7の左方側から回転操作可能であって、ロック片99の貫通穴99hにY軸方向及びX軸方向に相対的に変位可能に挿通してある。そして、XY軸ロック機構97は、ロックねじ103の回転操作によってロック片99をZ軸スライド35のXY平面側に押圧すると、ロック片99がZ軸方向のクリアランスC分だけ溝99s側を起点として弾性変形してZ軸スライド35のXY平面に圧接するように構成されている。ここで、ロック片99の圧接力は、X軸スライド45がZ軸スライド35に対してX軸方向及びY軸方向に変位しない程度に設定されている。なお、ロック片99の押圧状態が解除されると、ロック片99が弾性復帰して、X軸スライド45をZ軸スライド35に対して固定する前の状態に復帰するようになっている。
【0034】
更に、X軸スライド45の下部にロック片99が一体形成される代わりに、図8に示すように、板バネ105が別のロック片として設けられかつ板バネ105に貫通穴105hが形成されるようにしても構わない。この場合にも、ロックねじ103は、板バネ105の貫通穴105hにY軸方向及びX軸方向に相対的に変位可能に挿通してあって、XY軸ロック機構97は、ロックねじ103の回転操作によって板バネ105をZ軸スライド35のXY平面側に押圧すると、板バネ105がZ軸方向のクリアランスC分だけ弾性変形してZ軸スライド35のXY平面に圧接するするように構成されている。
【0035】
次に、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0036】
本体ケース7の左方側からZ軸マイクロメータヘッド53を回転操作して、Z軸スピンドル55をZ軸方向へ変位させることにより、Z軸スライド35をスプリング57の付勢力に抗してZ軸方向へ変位させて、第2鏡筒27のZ軸方向の位置を調整する。これにより、集光レンズ29をコリメートレンズ23に対してZ軸方向へ変位させて、集光レンズ29の焦点位置調整を行うことができる。
【0037】
続いて、本体ケース7の左方側からクランプねじ95を回転操作して、クランプ部材93によって連結ロッド91をZ軸方向に直交する方向から把持することにより、Z軸スライド35をZ軸方向に直交する方向から本体ケース7に対してZ軸方向に移動不能に固定する。これにより、第2鏡筒27を本体ケース7に対してZ軸方向に移動不能に固定することができる。
【0038】
第2鏡筒27を本体ケース7に対してZ軸方向に移動不能に固定した後に、本体ケース7の左方側からY軸マイクロメータヘッド59を回転操作して、Y軸スピンドル61をZ軸方向へ変位させることにより、Y軸揺動レバー65をX軸方向に平行な軸心周りに揺動させつつ、Y軸スライド41をY軸スプリングプランジャ71の付勢力に抗してY軸方向へ変位させて、第2鏡筒27のY軸方向の位置を調整する。また、本体ケース7の左方側からX軸マイクロメータヘッド75を回転操作して、X軸スピンドル77をZ軸方向へ変位させることにより、X軸揺動レバー79をY軸方向に平行な軸心周りに揺動させつつ、X軸スライド45をX軸スプリングプランジャ85の付勢力に抗してX軸方向へ変位させて、第2鏡筒27のX軸方向の位置を調整する。これにより、集光レンズ29をコリメートレンズ23に対して相対的にX軸方向及びY軸方向に変位させて、コリメートレンズ23と集光レンズ29の芯出し調整(2つのレンズ23,29の芯出し調整)を行うことができる。
【0039】
続いて、本体ケース7の左方側からロックねじ103を回転操作して、ロック片99又は板バネ105をZ軸方向からZ軸スライド35のXY平面側に押圧することにより、ロック片99又は板バネ105がZ軸方向のクリアランスC分だけ弾性変形しながらZ軸スライド35のXY平面に圧接して、X軸スライド45をZ軸方向からZ軸スライド35に対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に固定する。これにより、第2鏡筒27を本体ケース7に対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に固定することができる。
【0040】
従って、本発明の実施形態によれば、ロックねじ103の押圧方向、換言すれば、ロックねじ103のロック力の働く方向がZ軸方向であって、ロックねじ103によって固定される方向がY軸方向及びX軸方向であるため、X軸スライド45をZ軸スライド35に対して固定する際に、第2鏡筒27に偏荷重又はモーメントが局所的に生じることを抑えることができる。また、XY軸ロック機構97は、ロックねじ103の回転操作によって板バネ105をZ軸スライド35のXY平面側に押圧すると、ロック片99又は板バネ105がZ軸方向のクリアランスC分だけ弾性変形するように構成されているため、X軸スライド45をZ軸スライド35に対して固定する際に、第2鏡筒27が変位することがない。よって、調整済みの2つのレンズ23,29の微小な芯ずれを十分に防止することができる。
【0041】
前記ロック片をZ軸方向から前記Z軸スライドのXY平面側に押圧するだけで、前記いずれかの鏡筒を前記ケース本体に対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に固定できるため、2つのレンズの一連の調整作業を簡略化して、その作業時間を短縮することができる。
【0042】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、次のように、種々の態様で実施可能である。
【0043】
即ち、X軸スライド45に第2鏡筒27が一体的に連結される代わりに、X軸スライド45に第1鏡筒21が一体的に連結されるようにしても構わない。また、Z軸スライド35にY軸スライド41がY軸方向へ変位可能に設けられ、かつY軸スライド41にX軸スライド45がX軸方向へ変位可能に設けられる代わりに、Z軸スライド35に別のX軸スライド(図示省略)がX軸方向へ変位可能に設けられ、かつ別のX軸スライドに別のY軸スライド(図示省略)がY軸方向へ変位可能に設けられるようにしても構わない。
【0044】
そして、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0045】
1 ファイバカップリング装置
3 フィーディングファイバ
5 プロセスファイバ
7 本体ケース
9 支持筒
13 第1レセプタ
15 支持リング
19 第2レセプタ
21 第1鏡筒
23 コリメートレンズ
27 第2鏡筒
29 集光レンズ
33 スライド機構
35 Z軸スライド
37 Z軸LMガイド
39 当接ピン
41 Y軸スライド
43 Y軸LMガイド
45 X軸スライド
47 X軸LMガイド
49 ブラケット
51 調整機構
53 Z軸マイクロメータヘッド
55 Z軸スピンドル
57 スプリング
59 Y軸マイクロメータヘッド
61 Y軸スピンドル
65 Y軸揺動レバー
67 Y軸主動ローラ
69 Y軸従動ローラ
71 Y軸スプリングプランジャ
73 Y軸当接ピン
75 X軸マイクロメータヘッド
77 X軸スピンドル
79 X軸揺動レバー
81 X軸主動ローラ
83 X軸従動ローラ
85 X軸スプリングプランジャ
87 X軸当接ピン
89 Z軸ロック機構
91 連結ロッド
93 クランプ部材
95 クランプねじ
97 XY軸ロック機構
99 ロック片
99h 貫通穴
99s 溝
101 座金
103 ロックねじ
105 板バネ
105h 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィーディングファイバとプロセスファイバを光学的に接続するファイバカップリング装置において、
一側に前記フィーディングファイバの端部を接続可能な第1ファイバ接続部を有し、他側に前記プロセスファイバの端部を接続可能な第2ファイバ接続部を有した本体ケースと、
前記本体ケース内における前記第1ファイバ接続部側に設けられ、内部に前記フィーディングファイバからのレーザ光を平行光に変換するコリメートレンズが設置された第1鏡筒と、
前記本体ケース内における前記第2ファイバ接続部側に設けられ、内部に前記プロセスファイバに向かってレーザ光を集光する集光レンズが設置された第2鏡筒と、
前記本体ケース内にZ軸方向へ変位可能に設けられたZ軸スライドと、前記Z軸スライドにY軸方向及びX軸方向へ変位可能に設けられかつ前記第1鏡筒と前記第2鏡筒のうちのいずれかの鏡筒が一体的に連結されたXY軸スライドとを備えたスライド機構と、
前記いずれかの鏡筒のZ軸方向、Y軸方向、及びX軸方向の位置を調整する調整機構と、
前記Z軸スライドをZ軸方向に直交する方向から前記本体ケースに対してZ軸方向に移動不能に固定するZ軸ロック機構と、
前記XY軸スライドをZ軸方向から前記Z軸スライドに対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に固定するXY軸ロック機構と、を具備し、
前記XY軸ロック機構は、
前記XY軸スライドに設けられ、前記Z軸スライドのXY平面に対向してあって、貫通穴が形成されたロック片と、
前記Z軸スライドのXY平面に螺合して設けられ、前記ロック片の前記貫通穴にY軸方向及びX軸方向に相対的に変位可能に挿通し、前記ロック片を前記Z軸スライドのXY平面側に押圧するロックねじと、を備えたことを特徴とするファイバカップリング装置。
【請求項2】
前記XY軸ロック機構は、前記ロックねじの回転操作によって前記ロック片を前記Z軸スライドのXY平面側に押圧すると、前記ロック片と前記Z軸スライドとの間のZ軸方向のクリアランス分だけ前記ロック片が弾性変形して前記Z軸スライドのXY平面を圧接するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のファイバカップリング装置。
【請求項3】
前記ロック片の基端側に溝がX軸方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項2に記載のファイバカップリング装置。
【請求項4】
前記ロック片は板バネであることを特徴とする請求項2に記載のファイバカップリング装置。
【請求項5】
前記Z軸ロック機構は、
前記Z軸スライドに一体的に設けられ、Z軸方向へ延びてあって、前記本体ケースを挿通した連結ロッドと、
前記本体ケースに設けられ、Z軸方向に直交する方向から前記連結ロッドを把持するクランプ部材と、を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載のファイバカップリング装置。
【請求項6】
前記スライド機構は、前記Z軸スライドの他に、前記Z軸スライドにY軸方向へ変位可能に設けられたY軸スライドと、前記Y軸スライドにX軸方向へ変位可能に設けられたX軸スライドとを備え、前記X軸スライドが前記XY軸スライドであることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれかの請求項に記載のファイバカップリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−97244(P2013−97244A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241122(P2011−241122)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】