説明

ファイバレーザの出力安定化方法及びファイバレーザ

【課題】ファイバレーザにおいてファーストパルスの問題を解決する方法及び該方法によってファーストパルスを生じ難いファイバレーザの提供。
【解決手段】種光となるパルス光を発生する種光パルス光源と、該種光パルス光源の出力端に接続され種光パルスを増幅して出力する光ファイバ増幅器とからなるファイバレーザのパルス出力を安定化させる方法であって、種光パルス光源から安定な出力パルスが出力されるようになった後に、光ファイバ増幅器による増幅を開始することによりファイバレーザから出力されるパルスを安定化することを特徴とするファイバレーザの出力安定化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバレーザのパルス出力を安定化させる方法及び安定なパルス出力が可能なファイバレーザに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光は、加工機や医療機器、測定器など様々な分野で利用されるようになってきた。加工機の分野においてはレーザが集光性に優れパワー密度の高い大変小さなビームスポットが得られるために精密加工が可能なこと、また、非接触加工であり、かつレーザ光の吸収可能な硬い物質への加工も可能であることから、急速に用途が拡大している。
このような分野において、連続光レーザは出力パワーが数kW以上のもの、パルスレーザも尖頭値がkW以上のものがあるが、加工性能のよさなどからパルスレーザが利用されることが多い。従来より炭酸ガスレーザや固体レーザ(Nd:YAGレーザなど)が使用されており、加工の種類(溶接、切断、マーキング、穴開けなど)や加工対象の材質などによって適当な出力を有するレーザが選択されている。また、希土類添加光ファイバをレーザ媒質としたファイバレーザは、従来の固体レーザに比べて高効率で装置がコンパクトにでき、レーザ発振媒質と伝播媒質が同じにできるといった特徴を有していることから、出力も非常に高出力なkW級のファイバレーザなども開発されている。
【0003】
近年、特に性能の向上が著しいのが固体レーザである。図1に代表的な固体レーザ(Nd:YAGレーザ)の構成を示す。
図1において符号10はレーザ発振器であり、このレーザ発振器10は、励起用レーザダイオード(以下、LDと記す)11と、集光レンズ12と、リヤミラー13と、Nd:YAG結晶(以下、YAG結晶と記す)14と、Qスイッチ(AO)素子15と、出力ミラー16とから構成されている。ここでは、励起用LD11からの励起光が集光レンズ12によってYAG結晶端面に集光される端面励起方式を採用しており、出力ミラー15とリヤミラー13間で共振器が構成される。
上記構成において、LD11からの励起光によってYAG結晶14を励起すると、YAG結晶14内のNd3+イオンが励起状態となり、自然放出光を発生する。このとき、Qスイッチ素子15が低損失状態であればYAG結晶14から放出された自然放出光はYAG結晶14内で増幅されながらリヤミラー13、出力ミラー16間を往復することでレーザ発振し、その一部が連続光のレーザ光18として外部に取り出されることになる。すなわちQスイッチ素子15がレーザをON/OFFするスイッチのような役割を果たす。
一方、Qスイッチ素子15が周期的に低損失状態と高損失状態を繰り返すようにした場合には、Qスイッチ素子15が高損失状態の時には自然放出光を発生するのみでレーザ発振はせず、励起エネルギーがYAG結晶14内に蓄積された状態となる。この状態でQスイッチ素子15を低損失状態にすると、YAG結晶14内に蓄積されたエネルギーが一気にレーザ出力として放出される。すなわちQスイッチ素子15が高損失状態の時にはレーザ光18は出力されず、Qスイッチ素子15が低損失状態の時にレーザ光が出力され、パルス状の出力が得られる。このパルス出力によって加工が行われる。
【0004】
前述したように、Qスイッチ素子15のON/OFFでレーザ光のON/OFFが行われるようなレーザにおいては、Qスイッチ素子15が周期的に低損失状態(ON)と高損失状態(OFF)を繰り返すような定常状態となっている場合(図2(a)参照)には、Qスイッチ素子15が高損失状態の間にYAG結晶14内に蓄積されるエネルギーはいつも一定であり、安定したパルス出力が得られる。
しかし、前述のような一定期間よりも長い時間、Qスイッチ素子15が高損失状態となり、その後再び低損失状態となるような場合には、定常状態の場合よりも多くのエネルギーがYAG結晶内に蓄積されるため、低損失状態となった直後のパルスは非常に高い尖頭値のパルスが出力される(図2(b)参照)。
すなわち、パルス出力が安定しない問題があり、特に加工開始時にレーザをONにした後、最初に出力されるパルス(ファーストパルス)においてこの問題が顕著になり、加工品質を低下させる要因となっている。
この問題を解決する方法として、例えば、特許文献1〜3に開示されているような方法が提案されている。
【特許文献1】特許第2919139号公報
【特許文献2】特許第3132555号公報
【特許文献3】特許第2885209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法では、レーザ出力がONになった瞬間には加工エリア外にレーザが照射され、その後レーザ光を加工対象物に影響ないスピードで走査し、レーザ光が安定するタイミングで加工開始地点へと照射するものである。
しかし、照射される各パルスごとに加工対象物にマーキングが施されるのであるから、いかなる高速で走査しようともレーザ光が照射された場所には点状の加工が施されることになる。さらに高速でレーザ光が走査されている状態から、加工可能な速度まで減速する必要があり、マーキング開始時のマーキングの均一性に問題がある。また、レーザ共振器からの出力自体はファーストパルスを有するため根本的な解決とはならない。
【0006】
特許文献2に開示された方法では、共振器内に偏波ビームスプリッタを配置して偏波の直交する2つのビームに分波後、各偏波毎に共振器を構成し、片方の偏波のビームのみを出力として取り出すようになっている。レーザを出力しないときには出力として取り出されるビームと直交した偏波のビームをレーザ発振させておくことで、レーザ媒質が過剰に励起される状態をなくし、ファーストパルスを抑制するものである。
しかし、この方法では共振器を偏波毎に構成するために、部品が多く必要となり、装置が大型になり、コストも高くなるといった問題がある。また、片方の偏波しかレーザ出力として取り出さないため効率が悪い。
【0007】
特許文献3に開示された方法では、十分な励起時間が取れる場合にはファーストパルスの問題は発生しないことから、レーザ媒質にレーザ上準位の蛍光寿命が短い物質を選択することでより高い周波数までファーストパルスが発生しないレーザを構成したものである。
しかし、蛍光寿命よりも短い周期でパルス発振させる場合は、ファーストパルスが発生してしまう。レーザ加工などの分野では、処理速度が非常に重要となるため、より高い周波数で動作可能な方がよいが、ここに開示されている方法を用いても10kHz程度の周波数までしか対応できない。
【0008】
さらに、前述した従来技術は、レーザ共振器が空間伝播系で構成される固体レーザでの解決法を示したものであり、光学系を全て光ファイバおよび光ファイバ用光部品を用いることで、光部品内部を除いては空間をレーザ光や励起光が伝播することがないファイバレーザを構成した場合には、前述のような方法を採用することは難しい。すなわち、ファイバレーザにおいてファーストパルスの問題を解決する方法を見出すことが重要である。
本発明は前記事情に鑑みてなされ、ファイバレーザにおいてファーストパルスの問題を解決する方法及び該方法によってファーストパルスを生じ難いファイバレーザの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、種光となるパルス光を発生する種光パルス光源と、該種光パルス光源の出力端に接続され種光パルスを増幅して出力する光ファイバ増幅器とからなるファイバレーザのパルス出力を安定化させる方法であって、種光パルス光源から安定な出力パルスが出力されるようになった後に、光ファイバ増幅器による増幅を開始することによりファイバレーザから出力されるパルスを安定化することを特徴とするファイバレーザの出力安定化方法を提供する。
【0010】
本発明のファイバレーザの出力安定化方法において、種光パルスが発生してから、光ファイバ増幅器による増幅を開始するまでの遅延時間を変化させることによってファイバレーザから出力されるパルスを安定化させることが好ましい。
【0011】
また本発明は、種光となるパルス光を発生する種光パルス光源と、該種光パルス光源の出力端に接続され種光パルスを増幅して出力する光ファイバ増幅器とからなるファイバレーザであって、種光パルスが発生してから、光ファイバ増幅器による増幅を開始するまでの遅延時間を変化させてファイバレーザから出力されるパルスを安定化させる遅延時間調整手段を有することを特徴とするファイバレーザを提供する。
【0012】
本発明のファイバレーザにおいて、種光パルス光源がQスイッチによってパルス発振しているパルスレーザ光源であることが好ましい。
【0013】
本発明のファイバレーザにおいて、パルスレーザ光源は、少なくとも励起光源と、WDMカプラと、希土類添加光ファイバと、出力カプラと、Qスイッチ素子とを有してなり、WDMカプラ、希土類添加光ファイバ、出力カプラ及びQスイッチ素子がリング状に接続されてなるファイバリングレーザであることが好ましい。
【0014】
本発明のファイバレーザにおいて、Qスイッチ素子が音響光学素子であることが好ましい。
【0015】
本発明のファイバレーザにおいて、Qスイッチ素子が可変光減衰器であることが好ましい。
【0016】
本発明のファイバレーザにおいて、ファイバリングレーザ内に、レーザ出力の波長を固定するバンドパスフィルタが設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明のファイバレーザにおいて、光ファイバ増幅器は少なくともマルチポートカプラと、励起光源と、希土類添加ダブルクラッドファイバとを有してなることが好ましい。
【0018】
本発明のファイバレーザにおいて、パルスレーザ光源の希土類添加光ファイバのコア及び光ファイバ増幅器の希土類添加ダブルクラッドファイバのコアに添加されている希土類イオンがYbであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ファイバレーザのパルス出力を安定化させることができ、加工品質を低下させることがない高性能なファイバレーザを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図3は、本発明のファイバレーザの一実施形態を示す構成図である。本実施形態のファイバレーザ300は、全光ファイバ型のファイバレーザであり、ファイバリングレーザ310と、光ファイバ増幅器320と、段間アイソレータ330と、出力コリメータ340とから構成されている。
【0021】
このファイバリングレーザ310は、励起光源301と、励起光とレーザ光を合波するWDMカプラ302と、利得媒質であるYb添加光ファイバ303と、アイソレータ304と、バンドパスフィルタ306と、AOM307と、出力カプラ305とから構成されている。励起光源301から出射された励起光は、WDMカプラ302を介してYb添加光ファイバ303へと入射される。本実施形態では、利得媒質としてYb添加光ファイバを用いているので、励起光源301は波長976nmでレーザ発振する半導体レーザを使用した。また、Yb添加光ファイバ303はコア径6.8μm、Yb添加量1800ppmのものを使用した。
【0022】
Yb添加光ファイバ303に入射した励起光は、Yb添加光ファイバ303のコアに添加されたYbイオンに吸収され、Ybイオンは励起状態となる。励起状態となったYbイオンは、およそ1050nm〜1100nmの波長の自然放出光を放出し、この自然放出光は増幅されながらYb添加光ファイバ303のコア内を伝播し、ASE(Amplified Spontaneous Emission)として出力される。
【0023】
このファイバリングレーザ310において、WDMカプラ302、Yb添加光ファイバ303、アイソレータ304、出力カプラ305、バンドパスフィルタ306及びAOM307は、リング状に接続されている。Yb添加光ファイバ303から出力されたASEは、アイソレータ304を通過し、出力カプラ305へ入射する。出力カプラ305に入射したASEの一部はリング外へと放出されるが、残部はバンドパスフィルタ306へと入射する。バンドパスフィルタ306は特定の波長の光を透過する特性を有し、本実施形態で使用したバンドパスフィルタ306は、波長1064nmの光を透過する。したがって、バンドパスフィルタ306に入射したASEのうち、波長が1064nmの成分のみが透過し、そのほかの波長成分は遮断される。バンドパスフィルタ306を通過したASEは、AOM307、WDMカプラ302を通過して再びYb添加光ファイバ303で増幅される。このとき、周回してきたASEがYb添加光ファイバ303で受ける利得が、周回した際に受ける損失よりも大きい場合はレーザ発振し、その一部が出力カプラ305を介してレーザ光として出力される。AOM307を低損失な状態と高損失な状態を周期的に繰り返すように動作させればパルス発振し、パルス状のレーザ出力が得られる。
【0024】
なお、本実施形態において、励起光源301としては発振波長が976nmの半導体レーザを使用しているが、励起波長はこれに限定されるものではなく、Yb添加光ファイバに添加されているYbイオンの吸収波長域であればよいので、およそ900nm〜1000nmの励起光であれば利用可能であり、特に、吸収量が大きいことから、波長915nm、976nm近傍を励起波長とするのが好ましい。
【0025】
さらに、希土類添加光ファイバに添加されている希土類イオンはYbに限られるものではなく、他の希土類イオンであってもよい。その場合にも、添加されている希土類イオンの吸収波長域に応じた励起波長が選択される。
【0026】
上記光ファイバ増幅器320は、励起光源321と、マルチポートカプラ322と、Yb添加ダブルクラッドファイバ323と、出力アイソレータ324とからなっている。マルチポートカプラ322は、コア直径105μm、クラッド外径125μmのマルチモードファイバからなる励起ポートを6本と、コア直径6.4μm、クラッド外径125μmのシングルモードファイバからなる信号ポートとを有しており、各励起ポートには励起光源321が接続され、信号ポートにはファイバリングレーザ310のレーザ出力が入力されるように段間アイソレータ330が接続されている。出力ポートは、コア径20μm、第1クラッド径400μm、第2クラッド径440μmのダブルクラッドファイバであり、励起光源321より励起ポートに入力された励起光は出力ポートの第1クラッドへと出力され、信号ポートに入力されたレーザ光は出力ポートのコアへと出力される。
【0027】
マルチポートカプラ322の出力端には、Yb添加ダブルクラッドファイバ323が接続されている。Yb添加ダブルクラッドファイバ323は、コアの周囲に設けられた第1クラッドと第1クラッドの周りに設けられた第2クラッドと、第2クラッドの周囲に設けられた被覆樹脂層からなるダブルクラッド構造を有しており、コアにはYbイオンがおよそ3000ppmの濃度で添加されている。マルチポートカプラ322とYb添加ダブルクラッドファイバ323とは、マルチポートカプラ322の出力ポートのコアから出力されるレーザ光がYb添加ダブルクラッドファイバ323のコアに、マルチポートカプラ322の出力ポートの第1クラッドから出力される励起光がYb添加ダブルクラッドファイバ323の第1クラッドに入射するように接続されている。
【0028】
Yb添加ダブルクラッドファイバ323の第1クラッドに入射された励起光は、第1クラッド内をコアを横切りながら伝播し、コアを横切る際にコアに添加されたYbイオンに吸収され、誘導放出が生じることで、コア内を伝播するレーザ光が増幅される。増幅されたレーザ光は、出力アイソレータ324、コリメータ340を通過してレーザ出力として外部へ出力される。
【0029】
段間アイソレータ330は、光ファイバ増幅器320から出力されるパルスレーザ光からファイバリングレーザ310を保護するために挿入されている。例えば、実際に加工を行うときには、レーザ光が加工対象物によって反射されるが、この反射光が光ファイバ増幅器320に入射した場合は、出力アイソレータ324でその強度は弱くなるものの、Yb添加ダブルクラッドファイバで再び増幅され、高強度のパルス光がファイバリングレーザ310へと入射し、ファイバリングレーザの各構成部品、特に励起光源301を破壊する恐れがある。段間アイソレータ330を挿入することで、ファイバリングレーザ310へ入射するパルス光の強度を低下させることができる。
【0030】
以上のような構成において、ファイバリングレーザ310は、所定の周波数で先にレーザ発振させて定常状態とした後に、光ファイバ増幅器320で増幅を開始することでファーストパルスの発生を抑制することができる。
【0031】
ファイバリングレーザ310の励起光源301は、常に一定パワーの励起光を出力するようにし、AOM307の損失を所定の周波数で変化させた場合、ファイバリングレーザ310からは非常に安定したパルス出力が得られる。図4にAOM307の制御周波数が10kHzの場合のファイバリングレーザ310の出力を示す。
【0032】
これはファイバリングレーザ310を構成し、段間アイソレータ330を接続した後、光ファイバ増幅器320を接続する前に段間アイソレータ330から出力されるレーザ光を観測したものである。AOM307は、制御信号が入力されると低損失になるため、制御信号が入力されるたびにレーザ光が出力されており、その尖頭値は非常に安定していることが分かる。なお、図4には10kHzの場合だけを示したが、周波数が変化した場合も同様に安定したパルスが得られる。
【0033】
このような安定したパルスが光ファイバ増幅器320に入力されている状態で、光ファイバ増幅器320の励起光源321から励起光を出力したときのレーザ出力を図5に示す。AOM制御信号の周波数は10kHzとし、図4に示したようにファイバリングレーザ310の出力は安定したパルスが得られている状態になっている。このような状態で、AOM制御信号がAOM307に入力されたあと、80μsの遅延時間の後に励起光源321が励起光を出力するように、制御すると、次にAOM制御信号がAOM307に入力された時にはパルス状のレーザ出力が得られ、以降、最初のパルスとほぼ同程度の尖頭値を有するパルス出力が得られていることが分かる。ここで遅延時間とは、AOM制御信号がONされてから、光ファイバ増幅器320の励起光源321がONされるまでの時間差である。
すなわち、従来レーザのように最初のパルスが極端に大きな尖頭値のパルスとなってしまうファーストパルスの問題が起こることなく、かつ安定したパルス出力が得られている。
【0034】
また、AOM307の動作周波数や励起光源321の励起光出力が変化した場合には、1つ目に出力されるパルスの尖頭値が非常に大きくなったり、逆に非常に小さくなる場合があるが、遅延時間を調節することでファーストパルスを解消することができる。
【0035】
図6は、AOM制御信号の周波数を100kHzとして遅延時間を変化させたときに、1つ目に出力されるパルスの尖頭値を定常状態におけるパルスの尖頭値で規格化したものである。すなわち縦軸の値が1であれば定常状態におけるパルスの尖頭値と同じ尖頭値となる。
【0036】
図6より分かるように、遅延時間が短いときには定常状態に比べて非常に大きな尖頭値のパルスが1つ目に出力され、遅延時間が長い時には非常に小さくなることが分かる。すなわち、遅延時間を調節することで1つ目に出力されるパルスの尖頭値を変化させることができる。
【0037】
図7は、遅延時間を最適な値に制御した場合の光ファイバ増幅器320の出力パルスであり、ファーストパルスの尖頭値が定常状態の尖頭値とほぼ同じにすることができることが分かる。
【0038】
さらに、AOM307の動作周波数や励起光源の励起光出力を自由に変化させたい場合には、AOM307の動作周波数や励起光源の励起光出力に応じた遅延時間をあらかじめインプットした制御回路を付加し、動作条件が変化した際には、自動的に遅延時間が調節されるような制御を行うことで、出力パルスの安定したファイバレーザを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来の固体レーザの一例を示す構成図である。
【図2】Qスイッチ素子のON/OFFでレーザ光のON/OFFを行うレーザ装置において出力が不安定になる原因を説明するための図である。
【図3】本発明のファイバレーザの一実施形態を示す構成図である。
【図4】本発明のファイバレーザの出力安定化方法において、AOMの制御周波数が10kHzの場合のファイバリングレーザの出力を示す図である。
【図5】本発明のファイバレーザの出力安定化方法において、安定したパルスが光ファイバ増幅器に入力されている状態で励起光を出力した時のレーザ出力を示す図である。
【図6】本発明のファイバレーザの出力安定化方法において、AOMの制御周波数を100kHzとし遅延時間を変化させた時のファーストパルスの尖頭値変化を示す図である。
【図7】本発明のファイバレーザの出力安定化方法において、遅延時間を最適な値に制御した場合の光ファイバ増幅器の出力パルスを示す図である。
【符号の説明】
【0040】
300…ファイバレーザ、301…励起光源、302…WDMカプラ302、303…Yb添加光ファイバ303、304…アイソレータ、305…出力カプラ、306…バンドパスフィルタ、307…AOM、310…ファイバリングレーザ、320…光ファイバ増幅器、321…励起光源、322…マルチポートカプラ、323…Yb添加ダブルクラッドファイバ、324…出力アイソレータ、330…段間アイソレータ、340…出力コリメータ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
種光となるパルス光を発生する種光パルス光源と、該種光パルス光源の出力端に接続され種光パルスを増幅して出力する光ファイバ増幅器とからなるファイバレーザのパルス出力を安定化させる方法であって、
種光パルス光源から安定な出力パルスが出力されるようになった後に、光ファイバ増幅器による増幅を開始することによりファイバレーザから出力されるパルスを安定化することを特徴とするファイバレーザの出力安定化方法。
【請求項2】
種光パルスが発生してから、光ファイバ増幅器による増幅を開始するまでの遅延時間を変化させることによってファイバレーザから出力されるパルスを安定化させることを特徴とする請求項1に記載のファイバレーザの出力安定化方法。
【請求項3】
種光となるパルス光を発生する種光パルス光源と、該種光パルス光源の出力端に接続され種光パルスを増幅して出力する光ファイバ増幅器とからなるファイバレーザであって、
種光パルスが発生してから、光ファイバ増幅器による増幅を開始するまでの遅延時間を変化させてファイバレーザから出力されるパルスを安定化させる遅延時間調整手段を有することを特徴とするファイバレーザ。
【請求項4】
種光パルス光源がQスイッチによってパルス発振しているパルスレーザ光源であることを特徴とする請求項3に記載のファイバレーザ。
【請求項5】
パルスレーザ光源は、少なくとも励起光源と、WDMカプラと、希土類添加光ファイバと、出力カプラと、Qスイッチ素子とを有してなり、WDMカプラ、希土類添加光ファイバ、出力カプラ及びQスイッチ素子がリング状に接続されてなるファイバリングレーザであることを特徴とする請求項4に記載のファイバレーザ。
【請求項6】
Qスイッチ素子が音響光学素子であることを特徴とする請求項5に記載のファイバレーザ。
【請求項7】
Qスイッチ素子が可変光減衰器であることを特徴とする請求項5に記載のファイバレーザ。
【請求項8】
ファイバリングレーザ内に、レーザ出力の波長を固定するバンドパスフィルタが設けられていることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のファイバレーザ。
【請求項9】
光ファイバ増幅器は少なくともマルチポートカプラと、励起光源と、希土類添加ダブルクラッドファイバとを有してなることを特徴とする請求項8に記載のファイバレーザ。
【請求項10】
パルスレーザ光源の希土類添加光ファイバのコア及び光ファイバ増幅器の希土類添加ダブルクラッドファイバのコアに添加されている希土類イオンがYbであることを特徴とする請求項9に記載のファイバレーザ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−234943(P2007−234943A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56061(P2006−56061)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】