説明

ファクシミリ装置

【課題】 ファクシミリ伝送手順により公衆通信回線を介して送信されてきた画像データに対応する画像が正規の受信者以外の者に見られるのを抑制しつつ、記憶領域が圧迫されるのも抑制することのできるファクシミリ装置の提供。
【解決手段】 回線が接続されると(S1)、送信元の電話番号等に基づき、データベースをもとに受信者が判別される(S2)。その受信者の連絡先に通知設定がある場合は(S3:Y)、その連絡先に通知がなされ(S4)、その通知に対して制限時間内に受信OKの旨の返答があると(S7:Y)、FAX画データが受信される(S8)。このように、正規の受信者から受信OKの返答がなされるのを待ってFAX画データを受信しているので(S7,S8)、FAX画データが蓄積されたまま放置されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ伝送手順により公衆通信回線を介して送信されてくる画像データを受信して、その画像データに基づく画像を被記録媒体に印刷するファクシミリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファクシミリ伝送手順により公衆通信回線を介して送信されてくる画像データを受信して、その画像データに基づく画像を被記録媒体に印刷するファクシミリ装置では、上記画像データが親展通信によるものである場合は印刷せずにメモリに記憶することがなされている。すなわち、このような親展通信の画像データはパスワード等を付して送信され、受信側のファクシミリ装置では、そのパスワードが入力されたときに、上記記憶された画像データの印刷を可能にしている。また、このような親展通信を扱うファクシミリ装置では、上記パスワードを原稿毎に付与できるように構成して、そのパスワードを知る正規の受信者のみがその原稿を印刷できるようにすることも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−187242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この場合、正規の受信者が例えば海外出張等で長期間不在であると、その受信者しか印刷できない画像データが多量にファクシミリ装置に蓄積されて記憶領域を圧迫する可能性がある。親展通信を利用しなければ上記画像データに対応する画像は即座に印刷され、印刷後の画像データは破棄されるので記憶領域が圧迫されることはないが、この場合、印刷後の画像が正規の受信者以外の者にも見られてしまう。
【0004】
そこで、本発明は、ファクシミリ伝送手順により公衆通信回線を介して送信されてきた画像データに対応する画像が正規の受信者以外の者に見られるのを抑制しつつ、記憶領域が圧迫されるのも抑制することのできるファクシミリ装置の提供を目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達するためになされた本発明のファクシミリ装置は、ファクシミリ伝送手順により公衆通信回線を介して送信されてくる画像データの送信元を識別する送信元識別手段と、上記送信元と、上記画像データの受信者の電話番号またはメールアドレスとを対応付けて記憶する記憶手段と、上記画像データの受信要求があったとき、上記送信元識別手段が識別した送信元に対応して上記記憶手段に記憶された電話番号またはメールアドレスに通知を行う受信要求通知手段と、該受信要求通知手段による通知に対して受信を許可する旨の返信がなされた場合、上記画像データを受信する受信手段と、該受信手段が受信した画像データに基づき、被記録媒体に画像を印刷する印刷手段と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
このように構成された本発明のファクシミリ装置では、ファクシミリ伝送手順により公衆通信回線を介して画像データの受信要求があったとき、送信元識別手段はその画像データの送信元を識別する。すると、受信要求通知手段は、上記送信元識別手段が識別した送信元に対応して記憶手段に記憶された電話番号またはメールアドレスに通知を行う。そして、その通知に対して受信を許可する旨の返信がなされた場合、受信手段は上記画像データを受信し、その画像データに基づいて印刷手段が被記録媒体に画像を印刷する。
【0007】
ここで、上記画像データの送信元とその画像データの正規の受信者との間には一定の関係がある場合がある。そこで、上記各送信元に対してその送信元に対応する受信者の電話番号またはメールアドレスを上記記憶手段に記憶しておけば、次のような効果が生じる。すなわち、この場合、正規の受信者から受信を許可する旨の返信がなされるのを待って受信手段が画像データを受信する。このため、ファクシミリ装置の記憶領域に多量の画像データが蓄積されたまま放置され、記憶領域が圧迫されるのを良好に抑制することができる。また、正規の受信者は、自身が当該ファクシミリ装置の近くにいる場合にのみ上記返信を行ってもよく、この場合、親展通信によらなくても、ファクシミリ伝送手順により公衆通信回線を介して送信されてきた画像データに対応する画像が正規の受信者以外の者に見られるのを抑制することができる。
【0008】
なお、本発明は以下の構成に限定されるものではないが、上記受信手段は、上記受信要求通知手段による通知後、一定時間以内に上記返信がなされない場合は、上記受信要求に対して回線を切断してもよい。この場合、長時間回線が接続されたままとなって多大な回線使用料が必要となるのを抑制することができる。
【0009】
また、上記記憶手段は、少なくとも1つの上記送信元に対して複数の上記電話番号またはメールアドレスを記憶可能であってもよい。この場合、1つの送信元に対して複数の電話番号またはメールアドレスが記憶されているので、1つの電話番号またはメールアドレスが使用不能なときも正規の受信者に上記通知が行える場合がある。
【0010】
そして、この場合、上記記憶手段は、上記1つの送信元に対して記憶された複数の電話番号またはメールアドレスに対して優先順位を設定可能に構成されてもよい。この場合、上記複数の電話番号またはメールアドレスに、所望の順に通知を行うことが可能となる。
【0011】
そして、更にこの場合、上記受信要求通知手段は、上記送信元識別手段が識別した送信元に対して複数の電話番号またはメールアドレスが上記記憶手段に記憶されている場合、優先順位の高い順に上記通知を行い、通知後一定時間以内に上記返信がなされない場合は次に優先順位の高い電話番号またはメールアドレスに通知を行ってもよい。この場合、上記複数の電話番号またはメールアドレスに、所望の順に円滑に通知がなされる。
【0012】
また更に、本発明のファクシミリ装置において、上記受信手段による上記画像データの受信が正常になされた場合、上記電話番号またはメールアドレスに通知を行う受信通知手段を、更に備えてもよい。この場合、画像データの受信が正常になされたことを受信者が容易に知ることができる。
【0013】
また、上記目的を達するためになされた本発明のファクシミリ装置は、個々にIDが付与された複数のメモリボックスと、ファクシミリ伝送手順により公衆通信回線を介して送信されてくる画像データが、上記メモリボックスに格納すべき親展通信によるものである場合、その格納先のメモリボックスを識別する格納先識別手段と、上記各メモリボックスと、上記画像データの受信者の電話番号またはメールアドレスとを対応付けて記憶する記憶手段と、上記親展通信による画像データの受信要求があったとき、上記格納先識別手段が識別したメモリボックスに対応して上記記憶手段に記憶された電話番号またはメールアドレスに通知を行う受信要求通知手段と、該受信要求通知手段による通知に対して受信を許可する旨の返信がなされた場合、上記画像データを受信して対応する上記メモリボックスに格納する受信手段と、を備えたものであってもよい。
【0014】
このように構成された本発明のファクシミリ装置では、個々にIDが付与された複数のメモリボックスが設けられ、親展通信によってそのメモリボックスに格納すべき画像データの受信要求があったとき、格納先識別手段がその格納先のメモリボックスを識別する。すると、受信要求通知手段は、上記格納先識別手段が識別したメモリボックスに対応して記憶手段に記憶された電話番号またはメールアドレスに通知を行う。そして、その通知に対して受信を許可する旨の返信がなされた場合、受信手段は上記画像データを受信し、その画像データを対応する上記メモリボックスに格納する。
【0015】
ここで、メモリボックスとそのメモリボックスを使用する受信者との間には一定の関係がある場合がある。そこで、上記各メモリボックスに対してそのメモリボックスに対応する受信者の電話番号またはメールアドレスを上記記憶手段に記憶しておけば、次のような効果が生じる。すなわち、この場合、正規の受信者から受信を許可する旨の返信がなされるのを待って受信手段が画像データを受信する。このため、ファクシミリ装置の記憶領域に多量の画像データが蓄積されたまま放置され、記憶領域が圧迫されるのを良好に抑制することができる。また、正規の受信者は、自身が当該ファクシミリ装置の近くにいる場合にのみ上記返信を行ってもよく、この場合、ファクシミリ伝送手順により公衆通信回線を介して送信されてきた画像データに対応する画像が正規の受信者以外の者に見られるのを極めて良好に抑制することができる。すなわち、本発明では、親展通信によって画像データをメモリボックスに格納することによっても上記画像が正規の受信者以外の者に見られるのが抑制できるが、上記返信があったときのみ画像データを受信することにより一層安全性を向上させることができる。
【0016】
なお、前者の発明も親展通信の機能を備えることによって本発明と同様に安全性を向上させてもよいことはいうまでもない。また、本発明も以下の構成に限定されるものではないが、前者の発明と同様の形態を考えることができる。すなわち、上記受信手段は、上記受信要求通知手段による通知後、一定時間以内に上記返信がなされない場合は、上記受信要求に対して回線を切断してもよい。この場合、長時間回線が接続されたままとなって多大な回線使用料が必要となるのを抑制することができる。
【0017】
また、上記記憶手段は、少なくとも1つの上記メモリボックスに対して複数の上記電話番号またはメールアドレスを記憶可能であってもよい。この場合、1つのメモリボックスに対して複数の電話番号またはメールアドレスが記憶されているので、1つの電話番号またはメールアドレスが使用不能なときも正規の受信者に上記通知が行える場合がある。
【0018】
そして、この場合、上記記憶手段は、上記1つのメモリボックスに対して記憶された複数の電話番号またはメールアドレスに対して優先順位を設定可能に構成されてもよい。この場合、上記複数の電話番号またはメールアドレスに、所望の順に通知を行うことが可能となる。
【0019】
そして、更にこの場合、上記受信要求通知手段は、上記格納先識別手段が識別したメモリボックスに対して複数の電話番号またはメールアドレスが上記記憶手段に記憶されている場合、優先順位の高い順に上記通知を行い、通知後一定時間以内に上記返信がなされない場合は次に優先順位の高い電話番号またはメールアドレスに通知を行ってもよい。この場合、上記複数の電話番号またはメールアドレスに、所望の順に円滑に通知がなされる。
【0020】
また更に、本発明のファクシミリ装置においても、上記受信手段による上記画像データの受信が正常になされた場合、上記電話番号またはメールアドレスに通知を行う受信通知手段を、更に備えてもよい。この場合、画像データの受信が正常になされたことを受信者が容易に知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[複合機の全体構成]
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明が適用されたファクシミリ装置の一例としての複合機1の構成を表す外観図である。図1に示すように、複合機1は、画像が形成される被記録媒体の一例としての記録紙(図示省略)を給紙する給紙トレー2と、給紙トレー2から供給された記録紙に画像を形成する本体3と、本体3の上面を完全に覆うように、本体3に開閉可能に支持された本体カバー4と、を備えている。
【0022】
本体3は、図示省略した読み取り用の原稿に記載された画像を読み取る原稿読取部5(図2参照)と、給紙トレー2から供給された記録紙に画像を形成する印刷手段の一例としての画像形成部6(図2参照)とを内部に備えている。原稿読取部5は、本体3の上面に設けられ本体カバー4によって開閉可能に覆われたカバーガラス(図示省略)の上に載置された原稿、または、原稿自動搬送装置7によって搬送される原稿の画像を、イメージセンサ等によって読み取る周知のものである。また、画像形成部6は、イエロー,マゼンタ,シアン,及びブラックのトナーにて電子写真方式によって画像を形成する周知のプリンタエンジンとして構成され、給紙トレー2から供給された記録紙に1枚ずつ画像を形成して排出部8から排出する。
【0023】
更に、複合機1はLAN,インターネット等のネットワークWを介してパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)300に接続され、電話回線にも接続されている。パソコン300は、CPU,ROM,RAM,HDD(ハードディスク装置)等を内蔵した本体310に、CRTディスプレイ320,キーボード330,マウス340を接続した周知の構成を有している。また、本体310にはUSBメモリ105(図2参照)を接続可能な接続部350も設けられている。なお、図1では、パソコン300を1台だけ図示しているが、ネットワークWには、後述の受信者等にそれぞれ対応する複数のパソコン300が接続可能である。更に、複合機1の本体3の上面には、液晶ディスプレイ9A及び各種キーを備え、各種設定や指示を行うための操作パネル9が設けられている。
【0024】
[制御系に関する説明]
次に、図2は、複合機1の制御系の構成を表すブロック図である。図2に示すように、複合機1には、ネットワークWに接続するためのネットワークインタフェース(ネットワークI/F)108と、電話回線に接続するための受信手段の一例としてのファクシミリインタフェース(ファクシミリI/F)104と、USBメモリ105が着脱される接続部106(図1参照)と、各種プログラムを記憶するROM101と、処理結果等を一時的に記憶するRAM102と、電源がOFFになっても記憶が保持されるHDD107と、ROM101に記憶されたプログラムを実行するCPU103とが備えられている。
【0025】
CPU103には、これらの構成の他、前述の原稿読取部5、画像形成部6、原稿自動搬送装置7、及び、操作パネル9が接続され、更に、原稿自動搬送装置7に原稿が載置されていることを検知する原稿検知センサ24が接続されている。
【0026】
[制御系における制御]
次に、CPU103がROM101に記憶されたプログラムに基づいて実行する処理について説明する。図3は、電話回線を介して、ファクシミリ伝送手順による画像データの受信要求があった場合に実行されるFAX受信処理を表すフローチャートである。図3に示すように、この処理では、先ずS1(Sはステップを表す:以下同様)にて、回線が接続される。続く送信元識別手段または格納先識別手段の一例としてのS2では、HDD107に画定された記憶手段の一例としてのデータベースをもとに、次のように受信者が判別される。
【0027】
ここで、データベースとしては、例えば図4(A),(B)に例示するように種々の形態が考えられる。例えば、画像データの送信元とその画像データの正規の受信者との間には一定の関係がある場合がある。そこで、図4(A)に例示するデータベースでは、相手先電話番号、すなわちFAX送信元の電話番号(a),(b),(c),(d)に対して、それぞれ受信者が対応付けられている。そして、データベースには、受信者の連絡先が、1つまたは複数登録され、複数の連絡先が登録されている場合にはその連絡先に優先順位が付けられている。連絡先としては、受信者が所有する携帯電話やPHSの電話番号,携帯電話またはパソコン300のメールアドレスなど、所望のものを登録することができる。また、各連絡先には、後述の処理で使用される設定、すなわち、常に受信するか否かの設定及び通知設定の有無が登録されている。
【0028】
一方、複合機1がFコード等を利用した親展通信の機能を備えている場合、HDD107にはメモリボックスの一例としての親展ボックスが画定され、各親展ボックスにはIDが指定されている。親展通信によって上記画像データが受信された場合は、その画像データは印刷されることなく該当する親展ボックスに格納される。そして、操作パネル9から所定のパスワードが入力されたときにその画像データの印刷が可能となる。そこで、図4(B)に例示するデータベースでは、親展ボックス番号(ID)に対して、図4(A)と同様に受信者の連絡先が登録されている。
【0029】
なお、親展通信の機能を備えた複合機1であっても、図4(A)に例示したデータベースを使用してもよいことはいうまでもない。また、親展通信で画像データを受信した場合は図4(B)のデータベースが使用され、親展通信でない場合は図4(A)のデータベースが使用されるようにしてもよい。
【0030】
図3に戻って、S2では、上記のようなデータベースに基づき、優先順位が「1」の連絡先が抽出され、S3にて、その連絡先に通知設定があるか否かが判断される。そして、通知設定がある場合は(S3:Y)、受信要求通知手段の一例としてのS4にて、その連絡先に電子メールまたは携帯メールや電話を介したトーキー等による通知がなされる。なお、S1にて回線が接続された後に、電話を介して通知を行うためには、ファクシミリインタフェース104が2回線以上使用可能である必要がある。
【0031】
続くS5では、当該連絡先から返答があったか否かが判断される。この返答は、電子メールや携帯メールによってなされてもよく、携帯電話等からの所定のPB信号を返すことによってなされてもよい。返答がない場合は(S5:N)、処理はS6へ移行し、S4の通知がなされてから制限時間内であるか否かが判断され、制限時間内の場合は(S6:Y)、処理は前述のS5へ移行する。
【0032】
こうして、S5,S6のループ処理により、返答があるまで待機がなされ、制限時間内に返答があると(S5:Y)、処理はS7へ移行する。S7では、その返答が受信OKの旨の返答であったか否かが判断され、受信OKの場合は(S7:Y)、S8にて画像データの本体としてのFAX画データが受信される。なお、このS8の処理では、親展通信による受信の場合は上記FAX画データが親展ボックスに格納され、そうでない場合は画像形成部6を介して印刷がなされる。続く受信通知手段の一例としてのS9では、正常に受信したことがS4と同様に受信者の連絡先に通知され、続いてS10にて送信元との回線が切断されて、処理が一旦終了する。また、S7にて、返答が受信OKでないと判断された場合は(S7:N)、FAX画データを受信することなく処理はS10へ直接移行し、送信元との回線が切断されて処理が一旦終了する。
【0033】
また、S5,S6のループ処理中に、返答がないまま制限時間が経過してしまった場合は(S6:N)、処理はS11へ移行し、その連絡先が常に受信する設定になっているか否かが判断される。そして、常に受信する設定の場合は(S11:Y)、S12にてS8と同様にFAX画データが受信された後、処理は前述のS10へ移行する。一方、上記連絡先が常に受信する設定でない場合は(S11:N)、S13にて、受信者の次の連絡先があるか否かが判断される。そして、次の連絡先がない場合は(S13:N)、処理は前述のS10へ移行し、次の連絡先がある場合は(S13:Y)、処理はS3へ移行して、当該次の連絡先に対して前述の処理が実行される。また、連絡先に通知設定がない場合は(S3:N)、処理はS3から前述のS11へ直接移行し、受信者に通知がなされることはない。
【0034】
このように、本実施の形態では、正規の受信者から受信OKの返答がなされるのを待ってFAX画データを受信しているので(S7,S8)、HDD107に親展通信による多量の画像データが蓄積されたまま放置され、記憶領域が圧迫されるのを良好に抑制することができる。また、受信者は自身が複合機1の近くにいる場合にのみ受信OKの返答をしてもよく、この場合、そのFAX画データに対応する画像が正規の受信者以外の者に見られるのを一層良好に抑制することができる。なお、後者の効果は親展通信によらずにFAX画データが送られた場合にも発生する。
【0035】
また、上記実施の形態では、常に受信する設定の連絡先が1つもない場合(S11:N)、制限時間が経過する毎に(S6:N)、次の連絡先に対して通知がなされ(S3)、最後の連絡先に通知がなされて制限時間が経過したときには回線が切断される(S13:N)。このため、1つの連絡先に連絡が付かない場合でも複数の連絡先に所望の順で通知を行うことができ、しかも、長時間に亘って返答待ちとなって多大な回線使用量が必要となるのも抑制することができる。
【0036】
また更に、上記実施の形態では、受信OKの返答を受けてFAX画データが正常に受信されたときには受信者に通知がなされるので(S9)、受信者はFAX画データが正常に受信されたことを容易に知ることができる。更に、上記実施の形態では、受信が拒否された場合などには(S7:N)、FAX画データの受信が全くなされない。この場合、送信側のファクシミリ装置にも周知の機構によりエラーが通知されるので、FAX画データが正常に受信されたか否かを送信側でも知ることができる。特に、常に受信する設定の連絡先が1つもない場合は(S11:N)、受信者が受信OKの返答をしたときにのみFAX画データが受信されるので(S8)、受信者側の認知度も含めたFAX画データの受信状況を送信側で一層良好に知ることができる。
【0037】
[本発明の他の実施の形態]
また、本発明は上記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、上記実施の形態では、図4に例示したように通知設定の有無を連絡先毎に設定しているが、図5に例示するデータベースのように受信者毎に一括して設定可能であってもよい。なお、図5(A),(B)に例示するデータベースは、通知設定の項目以外は図4(A),(B)と同様に構成されているので、詳細な説明は省略する。
【0038】
図6は、このようなデータベースを利用した場合のFAX受信処理を表すフローチャートである。なお、この処理は大部分が図3の処理と同様に構成されているので、以下、相違点のみについて説明し、図3の処理と同様に構成された箇所は図3と同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
図6に示すように、この処理では、回線が接続され(S1)、データベースをもとに受信者が判別された後(S2)、S103にて、その受信者に対して一括して通知設定があか否かが判断される。そして、通知設定がある場合は、図3と同様のS4〜S13の処理が実行される。但し、本処理では、通知設定の有無が1回判断された後は(S103)、S10にて回線が切断されるまで通知設定の有無を判断する必要がない。そこで、受信者から制限時間内に返答がなく(S6:N)、その連絡先が常に受信する設定でなく(S11:N)、かつ、次の連絡先がある場合は(S13:Y)、処理はそのまま前述のS4へ移行して即座に当該次の連絡先へ通知がなされる。
【0040】
一方、一括して通知設定がない場合は(S103:N)、処理はS111へ移行し、その連絡先が常に受信する設定になっているか否かが判断される。そして、常に受信する設定の場合は(S111:Y)、S112にてFAX画データが受信された後、処理は前述のS10へ移行して回線が切断される。また、上記連絡先が常に受信する設定でない場合は(S111:N)、S113にて、受信者の次の連絡先があるか否かが判断される。そして、次の連絡先がない場合は(S113:N)、処理は前述のS10へ移行し、次の連絡先がある場合は(S113:Y)、処理は前述のS111へ移行して当該次の連絡先が常に受信する設定であるか否かが判断される。このように、本実施の形態では、通知設定の有無を受信者毎に一括して設定することができる。
【0041】
また、通知設定の有無を設定せず、常に通知を行ってもよい。図7は、そのような実施の形態に対応したFAX受信処理を表すフローチャートである。本処理は、図3または図6のフローチャートにおいて、S3またはS103にて常に肯定判断される場合と同様である。すなわち、この処理では、回線が接続され(S1)、データベースをもとに受信者が判別された後は(S2)、処理はそのままS4へ移行して即座に受信者に通知がなされる。また、受信者から制限時間内に返答がなく(S6:N)、その連絡先が常に受信する設定でなく(S11:N)、かつ、次の連絡先がある場合も(S13:Y)、処理は前述のS4へ移行して即座に当該次の連絡先へ通知がなされる。このような処理を採用した場合、データベースに通知設定の項目が必要なく、そのデータベースを簡略化することができる。
【0042】
更に、上記各実施の形態では、S4による通知に対して受信OKか否かのみを返答しているが、それ以外の返答も可能にしてもよい。例えば、受信者が複合機1から離れた場所にいる場合に、携帯電話等から上記制限時間を延長するように指示可能にしてもよい。また更に、本発明は、電話回線のみを経由して画像データを送受信する装置に限定されるものではなく、いわゆるIPファックス等にも同様に適用することができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明が適用された複合機の構成を表す外観図である。
【図2】その複合機の制御系の構成を表すブロック図である。
【図3】その制御系によるFAX受信処理を表すフローチャートである。
【図4】その処理で使用されるデータベースの構成を例示する説明図である。
【図5】そのデータベースの変形例の構成を例示する説明図である。
【図6】そのデータベースを使用した上記FAX受信処理の変形例を表すフローチャートである。
【図7】上記FAX受信処理の他の変形例を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1…複合機 5…原稿読取部 6…画像形成部 7…原稿自動搬送装置
9…操作パネル 9A…液晶ディスプレイ 24…原稿検知センサ
104…ファクシミリインタフェース 101…ROM 102…RAM
103…CPU 105…USBメモリ 107…HDD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファクシミリ伝送手順により公衆通信回線を介して送信されてくる画像データの送信元を識別する送信元識別手段と、
上記送信元と、上記画像データの受信者の電話番号またはメールアドレスとを対応付けて記憶する記憶手段と、
上記画像データの受信要求があったとき、上記送信元識別手段が識別した送信元に対応して上記記憶手段に記憶された電話番号またはメールアドレスに通知を行う受信要求通知手段と、
該受信要求通知手段による通知に対して受信を許可する旨の返信がなされた場合、上記画像データを受信する受信手段と、
該受信手段が受信した画像データに基づき、被記録媒体に画像を印刷する印刷手段と、
を備えたことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
上記受信手段は、上記受信要求通知手段による通知後、一定時間以内に上記返信がなされない場合は、上記受信要求に対して回線を切断することを特徴とする請求項1記載のファクシミリ装置。
【請求項3】
上記記憶手段は、少なくとも1つの上記送信元に対して複数の上記電話番号またはメールアドレスを記憶可能なことを特徴とする請求項1または2記載のファクシミリ装置。
【請求項4】
上記記憶手段は、上記1つの送信元に対して記憶された複数の電話番号またはメールアドレスに対して優先順位を設定可能に構成されたことを特徴とする請求項3記載のファクシミリ装置。
【請求項5】
上記受信要求通知手段は、上記送信元識別手段が識別した送信元に対して複数の電話番号またはメールアドレスが上記記憶手段に記憶されている場合、優先順位の高い順に上記通知を行い、通知後一定時間以内に上記返信がなされない場合は次に優先順位の高い電話番号またはメールアドレスに通知を行うことを特徴とする請求項4記載のファクシミリ装置。
【請求項6】
上記受信手段による上記画像データの受信が正常になされた場合、上記電話番号またはメールアドレスに通知を行う受信通知手段を、更に備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のファクシミリ装置。
【請求項7】
個々にIDが付与された複数のメモリボックスと、
ファクシミリ伝送手順により公衆通信回線を介して送信されてくる画像データが、上記メモリボックスに格納すべき親展通信によるものである場合、その格納先のメモリボックスを識別する格納先識別手段と、
上記各メモリボックスと、上記画像データの受信者の電話番号またはメールアドレスとを対応付けて記憶する記憶手段と、
上記親展通信による画像データの受信要求があったとき、上記格納先識別手段が識別したメモリボックスに対応して上記記憶手段に記憶された電話番号またはメールアドレスに通知を行う受信要求通知手段と、
該受信要求通知手段による通知に対して受信を許可する旨の返信がなされた場合、上記画像データを受信して対応する上記メモリボックスに格納する受信手段と、
を備えたことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項8】
上記受信手段は、上記受信要求通知手段による通知後、一定時間以内に上記返信がなされない場合は、上記受信要求に対して回線を切断することを特徴とする請求項7記載のファクシミリ装置。
【請求項9】
上記記憶手段は、少なくとも1つの上記メモリボックスに対して複数の上記電話番号またはメールアドレスを記憶可能なことを特徴とする請求項7または8記載のファクシミリ装置。
【請求項10】
上記記憶手段は、上記1つのメモリボックスに対して記憶された複数の電話番号またはメールアドレスに対して優先順位を設定可能に構成されたことを特徴とする請求項9記載のファクシミリ装置。
【請求項11】
上記受信要求通知手段は、上記格納先識別手段が識別したメモリボックスに対して複数の電話番号またはメールアドレスが上記記憶手段に記憶されている場合、優先順位の高い順に上記通知を行い、通知後一定時間以内に上記返信がなされない場合は次に優先順位の高い電話番号またはメールアドレスに通知を行うことを特徴とする請求項10記載のファクシミリ装置。
【請求項12】
上記受信手段による上記画像データの受信が正常になされた場合、上記電話番号またはメールアドレスに通知を行う受信通知手段を、更に備えたことを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載のファクシミリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−89161(P2009−89161A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257832(P2007−257832)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】