説明

ファスナ及びその装着方法

【課題】スウェージング法またはトルキング法によりワークに装着でき、従って製造業者が使用する種類を低減できるファスナを提供することにある。
【解決手段】スウェージング作業またはトルキング作業により、ワーク(28)内に装着されるファスナ(20)。ファスナは、実質的に円筒状の円滑シャンク部分(30)より近位側の拡大突出ヘッド(22)を有している。円滑シャンク部分の遠位側に配置されたねじ付シャンク部分(38)は雄ねじを有し、該雄ねじは、この上にスウェージカラー(46)をスウェージングさせることができる充分な強度を有する。ねじ付シャンク部分の遠位側には、工具が係合できる形状の表面をもつピン・テール部分(48)が設けられている。ねじ付シャンク部分とピン・テール部分との間には、ファスナの他のどの部分よりも小さい引張り強度を有する細頚溝(50)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くはファスナ(緊締具)に関し、より詳しくは、カラーをスウェージングできるか、ねじナットまたはねじカラー等の雌ねじ具をトルキング(トルク締め)できるプル・ステムファスナに関する。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙産業で使用される種類のファスナとして、スウェージング作業により装着されるファスナ、およびねじナットまたはねじカラー等の雌ねじ具をトルキングすることにより装着されるファスナがある。スウェージングとは、部品の外面に圧縮力を加えるハンマー型またはラム型工具を使用して部品の断面積を減少させる方法である。ファスナのスウェージング作業として、一連のロック溝を備えたファスナの一部上でスウェージカラーを摺動させる作業がある。スウェージカラーは、一般に円滑でかつすきま嵌めによりファスナのロック溝上に嵌合されるのに充分な大きさを有する内面を有する。スウェージカラーはまた、スウェージング作業が遂行されるときにスウェージカラーからの材料がファスナのロック溝内に押込まれて、スウェージカラーをファスナにロックできる充分な厚さを有する。スウェージカラー材料はロック溝内に押込まれなくてはならないので、スウェージカラーの材料は、一般に、ロック溝に合体される材料よりも軟らかい。
【0003】
スウェージング作業により装着されるファスナには、一般に、プル・ステム部分を備えたファスナおよびプル・ステム部分を備えていないファスナがある。プル・ステム部分を備えたファスナは、ファスナの近位端に拡大突出ヘッドを備えたピンを有し、ヘッドは、ワークの表面に接触する遠位側表面を有している。ヘッドの遠位側には、一連のワイヤの実質的に整合した孔内に受入れられる形状を有する円滑シャンク部分が設けられている。円滑シャンク部分は、ワークの整合孔に対してすきま嵌めまたは締り嵌めを形成できる。円滑シャンク部分の遠位側には、周方向に延びている複数の環状ロック溝を備えたロックシャンク部分が設けられている。別の構成として、或るピンは、環状パターンではなく、螺旋パターンをもつロック溝を有している。これらのロック溝は、スウェージング作業によりスウェージカラーと係合するように構成されている。ロックシャンク部分の遠位側には、細頚溝によりロックシャンク部分から分離されたプル・ステム部分が設けられている。
【0004】
ピンを装着するには、プル・ステム部分は、これがワークの反対側で一連のワークの整合孔から突出するまで該孔内に挿入される。円滑シャンク部分が締り嵌めされるピンの場合には、ヘッドの遠位側表面がワークの表面に接触するまで、プル・ステム部分を引張ることにより円滑シャンク部分を孔内に引入れる工具が使用される。締り嵌めがなされると、ピンは、少なくとも1つの整合孔から円滑シャンク部分に加えられる圧縮力によりワーク内に保持される。この時点で、工具は、プル・ステム部分を細頚溝でピンの残部から切断するのに充分な引張り力が得られるまで、プル・ステム部分を引張り続けることができる。次に、スウェージカラーがロックシャンク部分上で摺動されて、所定位置にスウェージングされる。
【0005】
すきま嵌めを形成する円滑シャンク部分を備えたピンを装着するには、プル・ステム部分は、ヘッドの遠位側表面がワークの表面に接触するまで、整合孔内に挿入されかつ該孔を通って前進される。次に、スウェージカラーがスウェージング作業の準備としてロックシャンク部分上で摺動される。スウェージング作業中に、工具が小さい引張り荷重をプル・ステム部分に加えて、ピンを所定位置に保持することができる。或いは、スウェージング作業後に、ピンを張力が付与された状態に維持するため、スウェージング作業中に、工具によりプル・ステム部分に比較的大きい引張り荷重を加えて、ファスナを予負荷状態にロックすることができる。スウェージカラーがロック溝上にスウェージングされたならば、プル・ステム部分が細頚溝でピンの残部から切断されるまで、プル・ステム部分に張力を付与してこれを引張ることができる。
【0006】
スウェージング作業により装着される、プル・ステム部分を備えていないファスナは、拡大突出ヘッドを備えたピンと、円滑シャンク部分と、ロックシャンク部分とを有している。プル・ステム部分を備えたファスナによれば、円滑シャンク部分は、一連のワークの整合孔内に受け入れられかつすきま嵌めまたは締り嵌めのいずれかを形成することができる。また、プル・ステム部分を備えたファスナと同様に、ロックシャンク部分には、周方向に延びる環状ロック溝または螺旋パターンを有するロック溝を設けることができる。
【0007】
締り嵌めを形成する円滑シャンク部分を備えているがプル・ステム部分は備えていないファスナを装着するには、ロックシャンク部分は、これが一連のワークの反対側から突出するまで、ワークの一方側からワークの整合孔内に挿入される。工具は、ヘッドの遠位側表面がワークに接触するまでロックシャンク部分を引張ることにより、円滑シャンク部分を整合孔内に引き入れるのに使用できる。ピンは、円滑シャンク部分に加えられる、少なくとも1つの整合孔の圧縮力によりワーク内に保持される。かくしてピンが保持されると、スウェージカラーがロック溝上で摺動され、かつ次に工具によりカラーをロックシャンク部分のロック溝上にスウェージングすることができる。
【0008】
すきま嵌めを形成する円滑シャンク部分を備えているがプル・ステム部分は備えていないファスナには、ファスナの遠位端の表面にねじ孔を設けるか、他の何らかの手段であって、該手段を介して工具とピンのロックシャンク部分とを係合させ、スウェージング作業用ピンを保持する手段を設けることができる。このようなファスナを装着するには、ロックシャンク部分は、これが一連のワークの反対側から突出しかつヘッドの遠位側表面がワークに接触するまで、ワークの一方側から整合孔内に挿入される。次に、スウェージングの準備のために、スウェージカラーをロックシャンク部分上で摺動させることができる。スウェージング作業中にピンを所定位置に保持するため、ねじ孔または他の工具係合手段を介して小さい引張り荷重をピンに加えることができる。或いは、スウェージング作業後にピンを引張り状態に維持するため、スウェージング作業中に、ねじ孔または他の係合手段を介して工具により比較的大きい引張り荷重を加えて、ファスナを予負荷状態にロックすることができる。
【0009】
ねじナットまたはねじカラーにトルクを加えることにより装着されるファスナにも、プル・ステム部分を備えたファスナおよびプル・ステム部分を備えていないファスナがある。プル・ステム部分を備えたファスナは、ファスナの近位端の拡大突出ヘッドと、ワークの表面と接触する遠位側表面とを備えたピンを有している。ヘッドに隣接して円滑シャンク部分が設けられており、該円滑シャンク部分は、一連のワークの整合孔内に受入れられるようになっている。円滑シャンク部分は、ワークの整合孔に対してすきま嵌めまたは締り嵌めを形成できる。円滑シャンク部分の遠位側にはねじ付シャンク部分が設けられ、該ねじ付シャンク部分には、ねじナットまたはねじカラーを受入れる標準ねじを設けることができる。ねじ付シャンク部分の遠位側には、細頚溝によりねじ付シャンク部分から分離されたプル・ステム部分が設けられている。
【0010】
トルクが加えられるねじナットまたはねじカラーを使用するように構成されかつプル・ステム部分が設けられたピンの装着方法は、スウェージング作業により装着されるように構成されかつプル・ステム部分を備えているピンの装着方法と同じである。プル・ステム部分は、これがワークの反対側から突出するまで、ワークの整合孔内に挿入される。円滑シャンク部分での締り嵌めを形成するピンには、ヘッドの遠位側表面がワークの表面と接触するまで、プル・ステム部分を引張ることにより円滑シャンク部分を整合孔内に引入れる工具が使用される。締り嵌めにより、円滑シャンク部分に加えられる少なくとも1つの整合孔からの圧縮力を受けて、ピンがワーク内に保持される。工具は、プル・ステム部分を細頚溝でピンの残部から切断するのに充分な引張り力が得られるまで、プル・ステム部分を引張り続ける。次に、ピンのねじ付シャンク部分上でねじナットまたはねじカラーにトルクが加えられる。
【0011】
すきま嵌めを形成する円滑シャンク部分を備えたねじピンを装着するには、ヘッドの遠位側表面がワークの表面に接触するまで、プル・ステム部分が整合孔内に挿入されかつ前進される。次に、ねじナットまたはねじカラーがプル・ステム部分上を摺動される。次に、プル・ステム部分に小さい引張り荷重を加えながら、ねじ付シャンク部分上でねじナットまたはねじカラーにトルクが加えられる。或いは、ファスナを予負荷状態にするため、トルキング作業中に、工具により、プル・ステム部分に比較的大きい引張り荷重を加えることができる。ねじ付シャンク部分上でねじナットまたはねじカラーにトルクが加えられたならば、プル・ステム部分が細頚溝でピンの残部から切断されるまで、プル・ステム部分を更に引張って張力を付与する。
【0012】
ねじナットまたはねじカラーにトルクを加えることにより装着される、プル・ステム部分を備えていないファスナは、拡大突出ヘッドを備えたピンと、円滑シャンク部分と、ねじ付シャンク部分とを有している。プル・ステム部分を有するファスナでは、円滑シャンク部分は、一連のワークの整合孔内に受入れられかつすきま嵌めまたは締り嵌めを形成する。
【0013】
締り嵌めを形成する円滑シャンク部分を備えているがプル・ステム部分は備えていないねじピンを装着するには、ねじ付シャンク部分は、これがワークの反対側から突出するまで、一連のワークの一方側からワークの整合孔内に挿入される。ヘッドの遠位側表面がワークに接触するまで、ねじ付シャンク部分を引張ることにより、整合孔内に円滑シャンク部分を引入れるには工具が使用される。ピンは、円滑シャンク部分に加えられる、少なくとも1つの整合孔の圧縮力によりワーク内に保持される。かくしてピンが保持されたならば、ねじ付シャンク部分のねじ上でねじナットまたはねじカラーにトルクが加えられる。
【0014】
すきま嵌めを形成する円滑シャンク部分を備えているがプル・ステム部分は備えていないねじピンには、ファスナの遠位端の表面にねじ孔、または他の何らかの手段であって、該手段を介して工具がピンのねじ付シャンク部分と係合して、トルキング作業用ピンを保持する手段を設けることができる。これらのファスナを装着するには、ねじ付シャンク部分は、これがワークの反対側から突出しかつヘッドの遠位側表面がワークに接触するまで、一連のワークの一方側からワークの整合孔内に挿入される。次に、ねじ付シャンク部分上で、ねじナットまたはねじカラーにトルクが加えられる。ピン上でねじナットおよびねじカラーにトルクを加えるため、ピンには、ねじ孔または他の工具係合手段を介して、工具により小さい引張り荷重が加えられ、ピンを所定位置に保持する。或いは、トルキング作業中にピンを予負荷状態におくため、工具により、ねじ孔または他の係合手段を介して比較的大きい引張り荷重を加えることができる。
【0015】
スウェージング作業により装着されるファスナ、およびナットまたはねじカラーにトルクを加えることにより装着されるファスナの両ファスナは、例えば航空機産業等の産業でポピュラーであるので、製造業者は両形式のファスナの在庫を用意している。多形式のファスナの在庫を用意しかつ使用することは、航空機の製造に多大のコスト増を招く。従って、当業者は、多数の装着手段に使用できるファスナであって、航空機製造業者が使用するファスナ形式の量を減少できるファスナに対する要望を認識している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
簡単にかつ概略的にいえば、本発明は、スウェージング法またはトルキング法のいずれの方法によってもワークに装着でき、従って製造業者が使用するファスナの種類を減少できるファスナに関する。
【0017】
本発明の現に好ましい態様では、ファスナは、長手方向軸線の回りに実質的に中心をもちかつファスナの近位端に配置された拡大突出ヘッドを有している。ファスナはまた、ヘッドの遠位側に隣接して配置されかつ長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ実質的に円筒状の円滑シャンク部分を有している。該円滑シャンク部分は第一直径を有している。円滑シャンク部分の遠位側には、長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつねじ付シャンク部分が配置されている。ねじ付シャンク部分は雄ねじを備え、該雄ねじは、これより軟らかい材料からなるスウェージカラーを、雄ねじに目立つほどの損傷を引起こすことなく雄ねじ上にスウェージングさせることができる充分な強度を有している。雄ねじは、円滑シャンク部分の第一直径より小さい第二直径を有している。ファスナはまた、ピン・テール部分を有している。該ピン・テール部分は、ねじ付シャンク部分の遠位側に配置されかつ長手方向軸線の回りに実質的に中心を有している。ピン・テール部分は、工具がピン・テール部分に係合しかつファスナを引張って張力を付与する手段を備えている。またピン・テール部分は、ねじ付シャンク部分の第二直径より小さい第三直径を有している。更に、ファスナのねじ付シャンク部分と係合されることを意図したスウェージカラーまたは雌ねじ具は、ピン・テール部分に全く干渉することなく該ピン・テール部分上に嵌合できる。ファスナはまた、ピン・テール部分の第三直径より小さい第四直径をもつ細頚溝を更に有し、該細頚溝はねじ付シャンク部分とピン・テール部分との間に配置されかつ長手方向軸線の回りに実質的に中心を有している。細頚溝は、該細頚溝がファスナの他のいかなる部分よりも小さい引張り強度を有しかつ所定範囲の張力をファスナのピン・テール部分に加えたときにファスナが細頚溝で切断することを確保するように調整されている。
【0018】
本発明の現に好ましい実施形態の詳細な態様では、円滑シャンク部分は、ヘッドの遠位側表面が少なくとも1つのワークの第一側の表面に接触しているときに、少なくとも1つのワークの第二側の表面から突出するのに充分な長さを有している。現に好ましい他の実施形態では、円滑シャンク部分は、ヘッドの遠位側表面が少なくとも1つのワークの第一側の表面に接触しているときに、少なくとも1つのワークの第二側の表面から突出するのに不充分な長さを有している。工具がピン・テール部分に係合することを可能にする手段は、周方向に延びている複数の環状溝で形成できる。現に好ましい他の実施形態では、細頚溝の引張り強度は、細頚溝の第四直径および細頚溝の領域のファスナ材料の強度により調整される。現に好ましい更に別の実施形態では、細頚溝は、ねじ付シャンク部分からファスナの長手方向軸線に向かって遠位側にテーパしている第一円錐状テーパ面を有している。また細頚溝は、ピン・テール部分からファスナの長手方向軸線に向かって近位側にテーパしている第二円錐状テーパ面を有している。第一円錐状テーパ面と第二円錐状テーパ面との間には実質的に周方向の交差部が配置されている。また、調整できる寸法を有する半径が、第一円錐状テーパ面と第二円錐状テーパ面との交差部に位置している。
【0019】
本発明の現に好ましい第二態様では、ファスナはスウェージング作業により装着される。スウェージングによりファスナを装着する方法は、ファスナおよび少なくとも1つのワークを設ける段階を有している。少なくとも1つのワークは、これを貫通する孔を有し、該孔は、ファスナの円滑シャンク部分に対してすきま嵌めを形成する。ファスナのピン・テール部分は、少なくとも1つのワークの第一側から少なくとも1つのワークの孔内に挿入される。ファスナは、ピン・テール部分が少なくとも1つのワークの第二側の表面から突出しかつファスナのヘッドの遠位側表面が少なくとも1つのワークの第一側の表面に接触するまで、遠位側に前進される。他の段階はスウェージカラーを用意する段階を有し、スウェージカラーは、実質的に円滑な内面を有しかつスウェージカラーとねじ付シャンク部分との間にすきま嵌めを形成する。スウェージカラーは、該スウェージカラーが少なくとも1つのワークの第二側より近位側に配置されるまで、ファスナのピン・テール部分およびねじ付シャンク部分上を近位側に摺動される。工具はピン・テール部分と係合してファスナを近位側に引張り、張力を付与する。工具はまた、スウェージカラーを少なくとも1つのワークの第二側に当接させて近位側に引張り、かつスウェージカラーがねじ付シャンク部分のねじを実質的に充満するまで、スウェージカラーをファスナのねじ付シャンク部分上にスウェージングする。スウェージカラーがファスナのねじ付シャンク部分上にスウェージングされたならば、工具は、所定範囲の張力に到達しかつファスナが細頚溝で切断されるまで、ファスナのピン・テール部分での張力を増大させる。
【0020】
本発明の現に好ましい第三態様では、ファスナはトルキング作業により装着される。この方法は、ファスナおよび少なくとも1つのワークを用意する段階を有している。少なくとも1つのワークは、これを貫通する孔を有し、該孔は、ファスナの円滑シャンク部分に対してすきま嵌めを形成する。ファスナのピン・テール部分は、少なくとも1つのワークの第一側から少なくとも1つのワークの孔内に挿入される。ファスナは、ピン・テール部分が少なくとも1つのワークの第二側の表面から突出しかつファスナのヘッドの遠位側表面が少なくとも1つのワークの第一側の表面に接触するまで、遠位側に前進される。他の段階は雌ねじ具を用意して、ピン・テール部分上を近位側に摺動させる段階を有している。工具はピン・テール部分と係合し、かつファスナが回転しないように防止しながらファスナを遠位側に引張って張力を付与する。工具はまた、所望の捩り荷重に到達するまで、ねじ付シャンク部分上で雌ねじ具にトルクを加える。ファスナ上で雌ねじ具にトルクが加えられたならば、工具は、所定範囲の張力に到達しかつファスナが細頚溝で切断されるまで、ファスナのピン・テール部分での張力を増大させる。
【0021】
本発明の現に好ましい第四態様では、ファスナはトルキング作業により装着される。この方法は、ファスナおよび少なくとも1つのワークを用意する段階を有している。少なくとも1つのワークは、これを貫通する孔を有し、該孔は、ファスナの円滑シャンク部分に対して締り嵌めを形成する。ファスナのピン・テール部分は、少なくとも1つのワークの第一側から少なくとも1つのワークの孔内に挿入され、かつピン・テール部分が少なくとも1つのワークの第二側の表面からするまで遠位側に前進される。工具はピン・テール部分と係合し、かつファスナのヘッドの遠位側表面が少なくとも1つのワークの第一側の表面に接触するまで、ファスナの円滑シャンク部分を少なくとも1つのワークの孔内に引入れる。工具はまた、所定の張力範囲に到達しかつファスナが細頚溝で切断するまで、ファスナのピン・テール部分での張力を増大させる。更に、雌ねじ具を用意する段階を有している。雌ねじ具には、所望の捩り荷重に到達するまで、工具を用いてねじ付シャンク部分上でトルクが加えられる。
【0022】
以上から、本発明は、スウェージング作業またはトルキング作業のいずれかにより装着できるファスナの構成を提供することが理解されよう。また、本発明は、スウェージング作業およびトルキング作業を用いた装着方法を含むものである。本発明の上記および他の特徴および長所は、以下の詳細な説明および本発明の特徴を例示する添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のファスナの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のファスナをスウェージング作業により装着する連続段階を示す部分破断平面図である。
【図3】図1のファスナをねじナットを用いて装着する連続段階を示す部分破断平面図である。
【図4】図1のファスナをねじナットを用いて装着する連続段階を示す部分破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示を目的とする図面に示すように、本発明は、ねじ付シャンク部分およびプル・ステム部分を備えたファスナとして具現されている。ファスナは、ねじ付シャンク部分上にカラーをスウェージングするか、ねじ付シャンク部分上で例えばねじナットまたはねじカラー等の雌ねじ具にトルクを加えることにより少なくとも1つのワークに装着できる。図面(幾つかの図面において同一または同類の構成要素は同一の参照番号で示されている)を参照すると、図1には、本発明のプル・ステムファスナ20が示されている。ファスナ20は拡大突出ヘッド22を有し、該ヘッド22は、ファスナ20の長手方向軸線23回りに実質的に中心を有しかつファスナの近位端に位置している。ヘッドは、ワーク28(図2)の表面26と接触する遠位側表面24を有している。図1には、皿頭形状を備えたヘッド22が示されているが、本発明はこのような形状に限定されるものではなく、当業界で良く知られた他のヘッド形状にすることができる。
【0025】
ヘッド22の遠位側に隣接して、長手方向軸線23の回りに実質的に中心を有する実質的に円筒状の円滑シャンク部分30が設けられており、該シャンク部分30は第一直径を有している。本明細書で使用するとき、用語「隣接」とは、「近接」または「密接」を意味し、従って「密接」のみに限定されるものではない。円滑シャンク部分30は、一連のワーク28の第一側34から、ワーク28内の実質的に整合した孔32(図2)内に受入れられるように構成されている。一連のワーク28の実質的に整合した孔32は、ファスナ20の円滑シャンク部分30に対してすきま嵌め(図2および図3)または締り嵌め(図4)を形成する。締り嵌め(図4)を望む場合には、一連のワーク28の少なくとも1つの整合孔32が締り嵌めを形成することが要求される。円滑シャンク部分30は、種々の長さに構成できる。一実施形態では、円滑シャンク部分30の長さは、ファスナ20のヘッド22の遠位側表面24が一連のワークの第一側34の表面26と接触しているときに、一連のワーク28の第二側36の表面から突出すれば充分である。しかしながら、他の実施形態では、円滑シャンク部分30の長さは、ヘッド22の遠位側表面24が一連のワークの第一側34の表面26と接触しているときに、一連のワーク28の第二側36の表面から突出するだけでは不充分である。円滑シャンク部分30は、鍛造または機械加工のような当業界で良く知られた製造方法により形成できる。
【0026】
円滑シャンク部分30の遠位側には、長手方向軸線23の回りに実質的に中心を有するねじ付シャンク部分38が設けられ、該ねじ付シャンク部分38は、ねじナット42またはねじカラー44等の雌ねじ具41(図3および図4)を受入れる標準雄ねじ40を有している。締り嵌め孔内へのファスナ20の装着を容易にするため、ねじ40の第二直径は円滑シャンク部分30の第一直径より小さく、このため、ねじ付シャンク部分38と一連のワーク28内の実質的な整合孔32との間にすきま嵌めが形成される。ねじ付シャンク部分38のねじ40は、該ねじより軟らかい材料からなるスウェージカラー46(図2)を、ねじ40に目立つほどの変形を引起こすことなくねじ40上にスウェージングするのに耐える充分な強度を有している。充分な強度のねじ40を得るため、ファスナ20は、例えば熱処理法その他の当業界で良く知られた技術により硬化できる。或いは、ファスナ20は、スウェージング作業に耐えるべく、スウェージカラー46より充分に強い材料から作ることもできる。ねじ40は、例えば旋盤による機械加工またはねじ転造等の当業界で良く知られた製造方法により形成できる。ねじ転造とは、ねじ加工すべきファスナの部分を、ファスナ材料内に進入してファスナ材料を押し退けるねじ状隆起部を備えたダイス間に入れる方法である。ファスナは、ダイス間で転造されて、ファスナの全周にねじが形成される。
【0027】
ねじ付シャンク部分38の遠位側には、長手方向軸線23の回りに実質的に中心をもつピン・テール部分48が設けられ、該ピン・テール部分48は、細頚溝50によりねじ付シャンク部分38から分離できる。一実施形態では、ピン・テール部分48は周方向に延びている複数の環状溝52を有し、該環状溝52は、工具(図示せず)がピン・テール部分48と係合してファスナ30を引張り、張力を付与することを可能にする。ピン・テール部分48の溝52は、例えば機械加工、鍛造または転造のような当業界で良く知られた方法により形成される。ピン・テール部分48は、ファスナ20のねじ付シャンク部分38と係合することを意図したスウェージカラー46または雌ねじ具41が、ピン・テール部分48と全く干渉することなくピン・テール部分上を摺動できるほど充分に小さい第三直径を有する。
【0028】
ねじ付シャンク部分38とピン・テール部分48との間の細頚溝50は、長手方向軸線23の回りに実質的に中心を有し、かつピン・テール部分48の第三直径より小さい第四直径54を有している。この第四直径54は、細頚溝50の引張り強度が、ファスナ20の他の全ての部分の引張り強度より小さくなるようにするサイズを有している。細頚溝50の引張り強度は、ファスナ20のピン・テール部分48に所定範囲の張力を加えたときに、ファスナが確実に細頚溝50で切断されるように調整される。細頚溝50の引張り強度は、該細頚溝50の第四直径および細頚溝の領域のファスナ材料の強度により調整される。一実施形態では、細頚溝50には、ねじ付シャンク部分38からファスナ20の長手方向軸線23に向かって遠位側にテーパしている第一円錐状テーパ面56を設けることができる。また、ピン・テール部分48からファスナ20の長手方向軸線に向かって近位側にテーパしている第二円錐状テーパ面58を設けることができる。細頚溝50の第一円錐状テーパ面56と第二円錐状テーパ面58は、これらの間に実質的に周方向の交差部60が形成されるように傾斜しており、周方向交差部60は、ファスナ20の引張り強度の調整を容易にする調整寸法の半径62を細頚溝50内に有している。
【0029】
図2には、スウェージング作業によるファスナ20の装着が示されており、このスウェージング作業では、ファスナは、該ファスナの円滑シャンク部分30とのすきま嵌めを形成する孔32を介して少なくとも1つのワーク28内に装着される。スウェージング作業によりファスナ20を装着するため、スウェージカラー46がファスナのねじ付シャンク部分38上にスウェージングされる。スウェージカラー46には、実質的に円滑な内面64およびスウェージカラー46とねじ付シャンク部分38との間にすきまを形成する内径を設けることができる。スウェージカラー46は、ねじ付シャンク部分38のねじ40に目立つほどの変形を引起こすことなく該ねじ40内に食い込むことができる充分な展性と、スウェージング作業後に所定位置に保持されるのに充分な強度とを有する材料から作ることができる。
【0030】
スウェージング法を用いたファスナ20のこの装着法は、ファスナのピン・テール部分48を、少なくとも1つのワーク28の第一側34からワークの孔32内に挿入する段階を有している。ファスナ20は、ピン・テール部分48が少なくとも1つのワーク28の第二側36から突出しかつファスナのヘッド22の遠位側表面24が少なくとも1つのワークの第一側34の表面26に接触するまで、遠位側に前進される。例示の目的で、少なくとも1つのワーク28が、互いに隣接して重ねられた2つのワークとして示されているが、より多くのワークを設けることもできる。この装着法はまた、スウェージカラー46を、これが少なくとも1つのワーク28の第二側36に近接するまで、ファスナ20のピン・テール部分48およびねじ付シャンク部分38上で近位側に摺動させる段階を有する。工具(図示せず)がピン・テール部分48と係合し、張力を付与してファスナ20を遠位側に引張る。ファスナ20に張力を付与すると、工具が、スウェージカラー46を少なくとも1つのワーク28の第二側36に当接させた状態で近位側に押付けて、スウェージカラーをファスナのねじ付シャンク部分38上にスウェージングさせ、これにより、スウェージカラーがファスナのねじ40を実質的に充満する。スウェージカラー46がファスナ20のねじ付シャンク部分38上にスウェージングされたならば、所定範囲の張力に到達するまで工具がピン・テール部分48の張力を増大させ、これにより、ファスナが細頚溝50で切断し、ピン・テール部分をファスナの残部から除去する。
【0031】
図3は、トルクを加える作業によりファスナ20を装着するところを示す。この装着法では、ファスナ20は、この円滑シャンク部分30とのすきま嵌めを形成する孔32を通って少なくとも1つのワーク28内に装着される。この装着法は、ファスナのピン・テール部分48を、少なくとも1つのワーク28の第一側34から、少なくとも1つのワークの孔32内に挿入する段階を有している。ファスナ20は、ピン・テール部分48が少なくとも1つのワーク28の第二側36から突出しかつファスナのヘッド22の遠位側表面24が少なくとも1つのワークの第一側34の表面26に接触するまで、遠位側に前進される。例示の目的で、少なくとも1つのワーク28が、互いに隣接して重ねられた2つのワークとして示されているが、より多くのワークを設けることもできる。ねじナット42またはねじカラー44等の雌ねじ具41が、ピン・テール部分48上で近位側に摺動される。工具(図示せず)がピン・テール部分と係合してファスナ20を遠位側に引張り、ファスナが回転することを防止する。これと同時に、所望の捩りトルクに到達するまで、ねじ付シャンク部分38上で雌ねじ具41にトルクを加える。ファスナ20のねじ付シャンク部分38上で雌ねじ具41にトルクが加えられたならば、所定範囲の張力に到達するまで工具がピン・テール部分48の張力を増大させ、これにより、ピン・テール部分がファスナの残部から除去される。
【0032】
図4は、トルクを加える作業により、ファスナ20を装着する他の方法を示す。しかしながら、この装着法では、ファスナ20は、この円滑シャンク部分30との締り嵌めを形成する孔32を通って少なくとも1つのワーク28内に装着される。この装着法は、ファスナのピン・テール部分48を、一連のファスナの第一側34から、少なくとも1つのワークの孔32内に挿入する段階を有している。ファスナ20は、ピン・テール部分48が少なくとも1つのワーク28の第二側36の表面から突出するまで遠位側に前進される。例示の目的で、少なくとも1つのワーク28が、互いに隣接して重ねられた2つのワークとして示されているが、より多くのワークを設けることもできる。工具(図示せず)がピン・テール部分48と係合して、ファスナ20の円滑シャンク部分30が少なくとも1つのワーク28の孔と係合しかつファスナのヘッド22の遠位側表面24が少なくとも1つのワークの第一側の表面26と接触するまで、ファスナを遠位側に引張る。工具は所定範囲の張力に到達するまでピン・テール部分48を遠位側に引張り、ファスナは細頚溝50で切断し、これにより、ピン・テール部分がファスナの残部から除去される。少なくとも1つのワーク28による締り嵌めがなされると、ファスナ20は、円滑シャンク部分30に加えられる締り嵌め孔32からの圧縮力により、少なくとも1つのワーク内に保持される。少なくとも1つのワークが、互いに隣接して重ねられた一連のワークからなる構成では、各ワークの孔は実質的に整合される。実質的に整合した少なくとも1つの孔32は、ファスナ20の円滑シャンク部分30との締り嵌めを形成する。このようにしてファスナ20が保持されると、ねじナット42またはねじカラー44のような雌ねじ具41が、ファスナのねじ付シャンク部分38上でトルクが加えられる。
【0033】
以上より、本発明の一実施形態の特徴により、単一設計のファスナを、スウェージング技術またはトルキング技術のいずれかにより装着可能にすることが理解されよう。スウェージング装着およびトルキング装置の両者に同じファスナ設計を用いることにより、製造業者は、在庫として保有しなければならないファスナの種類を低減でき、従って在庫管理コストおよび製造コストを低減できる。
【0034】
以上から、本発明の特定形態を例示しかつ説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは明らかであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲の記載を除き制限を受けるものではない。
尚、本発明は、下記の構成によっても実現することができる。
(1)スウェージング法またはトルキング法により少なくとも1つのワークに装着できるファスナにおいて、
該ファスナの近位端に配置されかつ長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ拡大突出ヘッドと、
該ヘッドの遠位側に隣接して配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ実質的に円筒状の円滑シャンク部分とを有し、該円滑シャンク部分は第一直径を有し、 円滑シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつねじ付シャンク部分を有し、該ねじ付シャンク部分は雄ねじを備え、該雄ねじは、これより軟らかい材料からなるスウェージカラーを、雄ねじに目立つほどの損傷を引起こすことなく雄ねじ上にスウェージングさせることができる充分な強度および円滑シャンク部分の第一直径より小さい第二直径を有し、
ねじ付シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつピン・テール部分を有し、ピン・テール部分は、工具がピン・テール部分に係合しかつファスナを引張って張力を付与する手段を備え、かつねじ付シャンク部分の第二直径より小さい第三直径を有し、ファスナのねじ付シャンク部分と係合されることを意図したスウェージカラーまたは雌ねじ具が、ピン・テール部分に全く干渉することなく該ピン・テール部分上に嵌合でき、
ピン・テール部分の第三直径より小さい第四直径をもつ細頚溝を更に有し、該細頚溝はねじ付シャンク部分とピン・テール部分との間に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心を有し、細頚溝は、該細頚溝がファスナの他のいかなる部分よりも小さい引張り強度を有しかつ所定範囲の張力をファスナのピン・テール部分に加えたときにファスナが細頚溝で切断することを確保するように調整されていることを特徴とするファスナ。
(2)前記円滑シャンク部分は、ヘッドの遠位側表面が少なくとも1つのワークの第一側の表面に接触しているときに、少なくとも1つのワークの第二側の表面から突出するのに充分な長さを有していることを特徴とする上記(1)記載のファスナ。
(3)前記円滑シャンク部分は、ヘッドの遠位側表面が少なくとも1つのワークの第一側の表面に接触しているときに、少なくとも1つのワークの第二側の表面から突出するのに不充分な長さを有していることを特徴とする上記(1)記載のファスナ。
(4)前記工具がピン・テール部分に係合することを可能にする手段は、周方向に延びている複数の環状溝を有していることを特徴とする上記(1)記載のファスナ。
(5)前記細頚溝の引張り強度は、細頚溝の第四直径および細頚溝の領域のファスナ材料の強度により調整されることを特徴とする上記(1)記載のファスナ。
(6)前記細頚溝は、
ねじ付シャンク部分からファスナの長手方向軸線に向かって遠位側にテーパしている第一円錐状テーパ面と、
ピン・テール部分からファスナの長手方向軸線に向かって近位側にテーパしている第二円錐状テーパ面と、
第一円錐状テーパ面と第二円錐状テーパ面との間の実質的に周方向の交差部と、
第一円錐状テーパ面と第二円錐状テーパ面との交差部の半径とを有し、該半径の寸法は調整できることを特徴とする上記(1)記載のファスナ。
(7)スウェージング法またはトルキング法により少なくとも1つのワークに装着できるファスナにおいて、
該ファスナの近位端に配置されかつ長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ拡大突出ヘッドと、
該ヘッドの遠位側に隣接して配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ実質的に円筒状の円滑シャンク部分とを有し、該円滑シャンク部分は第一直径を有し、 円滑シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつねじ付シャンク部分を有し、該ねじ付シャンク部分は雄ねじを備え、該雄ねじは、これより軟らかい材料からなるスウェージカラーを、雄ねじに目立つほどの損傷を引起こすことなく雄ねじ上にスウェージングさせることができる充分な強度および円滑シャンク部分の第一直径より小さい第二直径を有し、
ねじ付シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつピン・テール部分を有し、ピン・テール部分は、工具が係合しかつファスナを引張って張力を付与するための複数の周方向に延びる環状溝を備え、かつねじ付シャンク部分の第二直径より小さい第三直径を有し、ファスナのねじ付シャンク部分と係合されることを意図したスウェージカラーまたは雌ねじ具が、ピン・テール部分に全く干渉することなく該ピン・テール部分上に嵌合でき、
ねじ付シャンク部分とピン・テール部分との間に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心を有する細頚溝を更に有し、細頚溝は、
ねじ付シャンク部分からファスナの長手方向軸線に向かって遠位側にテーパしている第一円錐状テーパ面と、
ピン・テール部分からファスナの長手方向軸線に向かって近位側にテーパしている第一円錐状テーパ面と、
第一円錐状テーパ面と第二円錐状テーパ面との間の実質的に周方向の交差部と、
第一円錐状テーパ面と第二円錐状テーパ面との交差部の半径とを有し、該半径の寸法は調整でき、
細頚溝は、ファスナの他のいかなる部分よりも小さい引張り強度を有しかつ所定範囲の張力をファスナのピン・テール部分に加えたときにファスナが細頚溝で切断することを確保するように調整され、細頚溝の引張り強度は、細頚溝の第四直径および細頚溝の領域のファスナ材料の強度により調整され、第四直径はピン・テール部分の第三直径より小さいことを特徴とするファスナ。
(8)ファスナを設ける段階を有し、ファスナは、
該ファスナの近位端に配置されかつ長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ拡大突出ヘッドと、
該ヘッドの遠位側に隣接して配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ実質的に円筒状の円滑シャンク部分とを有し、該円滑シャンク部分は第一直径を有し、 円滑シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつねじ付シャンク部分を有し、該ねじ付シャンク部分は雄ねじを備え、該雄ねじは、これより軟らかい材料からなるスウェージカラーを、雄ねじに目立つほどの損傷を引起こすことなく雄ねじ上にスウェージングさせることができる充分な強度および円滑シャンク部分の第一直径より小さい第二直径を有し、
ねじ付シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつピン・テール部分を有し、ピン・テール部分は、工具がピン・テール部分に係合しかつファスナを引張って張力を付与する手段を備え、かつねじ付シャンク部分の第二直径より小さい第三直径を有し、ファスナのねじ付シャンク部分と係合されることを意図したスウェージカラーが、ピン・テール部分に全く干渉することなく該ピン・テール部分上に嵌合でき、
ピン・テール部分の第三直径より小さい第四直径をもつ細頚溝を更に有し、該細頚溝はねじ付シャンク部分とピン・テール部分との間に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心を有し、細頚溝は、該細頚溝がファスナの他のいかなる部分よりも小さい引張り強度を有しかつ所定範囲の張力をファスナのピン・テール部分に加えたときにファスナが細頚溝で切断することを確保するように調整され、細頚溝の引張り強度は、細頚溝の第四直径および細頚溝の領域のファスナ材料の強度により調整され、
少なくとも1つのワークを設ける段階を有し、少なくとも1つのワークは、ファスナの円滑シャンク部分との間にすきま嵌めを形成する孔を備え、
ファスナのピン・テール部分を少なくとも1つのワークの第一側から少なくとも1つのワークの前記孔内に挿入し、かつピン・テール部分が少なくとも1つのワークの第二側の表面から突出しかつファスナのヘッドの遠位側表面が少なくとも1つのワークの第一側の表面に接触するまでファスナを遠位側に前進させる段階と、
スウェージカラーを設ける段階とを有し、該スウェージカラーは、これとねじ付シャンク部分との間にすきま嵌めを形成する実質的に円滑な内面を備え、
スウェージカラーが少なくとも1つのワークの第二側に近接して配置されるまで、ファスナのピン・テール部分およびねじ付シャンク部分上でスウェージカラーを近位側に摺動させる段階と、
ピン・テール部分と工具とを係合させる段階と、
工具を用いて、ファスナを遠位側に引張って張力を付与する段階と、
工具を用いて、スウェージカラーを少なくとも1つのワークの第二側に当接させた状態で近位側に押す段階と、
工具を用いて、スウェージカラーがねじ付シャンク部分のねじを実質的に充満するまで、スウェージカラーをファスナのねじ付シャンク部分上にスウェージングする段階と、
工具を用いて、所定範囲の張力に到達しかつファスナが細頚溝で切断されるまで、ファスナのピン・テール部分の張力を増大させる段階とを更に有することを特徴とする少なくとも1つのワーク内にファスナを装着する方法。
(9)ファスナを設ける段階を有し、ファスナは、
該ファスナの近位端に配置されかつ長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ拡大突出ヘッドと、
該ヘッドの遠位側に隣接して配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ実質的に円筒状の円滑シャンク部分とを有し、該円滑シャンク部分は第一直径を有し、 円滑シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつねじ付シャンク部分を有し、該ねじ付シャンク部分は円滑シャンク部分の第一直径より小さい第二直径をもつ雄ねじを備え、
ねじ付シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつピン・テール部分を有し、ピン・テール部分は、工具がピン・テール部分に係合しかつファスナを引張って張力を付与する手段を備え、かつねじ付シャンク部分の第二直径より小さい第三直径を有し、ファスナのねじ付シャンク部分と係合されることを意図した雌ねじ具が、ピン・テール部分に全く干渉することなく該ピン・テール部分上に嵌合でき、 ピン・テール部分の第三直径より小さい第四直径をもつ細頚溝を更に有し、該細頚溝はねじ付シャンク部分とピン・テール部分との間に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心を有し、細頚溝は、該細頚溝がファスナの他のいかなる部分よりも小さい引張り強度を有しかつ所定範囲の張力をファスナのピン・テール部分に加えたときにファスナが細頚溝で切断することを確保するように調整され、細頚溝の引張り強度は、細頚溝の第四直径および細頚溝の領域のファスナ材料の強度により調整され、
少なくとも1つのワークを設ける段階を有し、少なくとも1つのワークは、ファスナの円滑シャンク部分との間にすきま嵌めを形成する孔を備え、
ファスナのピン・テール部分を少なくとも1つのワークの第一側から少なくとも1つのワークの前記孔内に挿入し、かつピン・テール部分が少なくとも1つのワークの第二側の表面から突出しかつファスナのヘッドの遠位側表面が少なくとも1つのワークの第一側の表面に接触するまでファスナを遠位側に前進させる段階と、
雌ねじ具を設ける段階と、
ピン・テール部分上で雌ねじ具を近位側に摺動させる段階と、
ピン・テール部分と工具とを係合させる段階と、
工具を用いて、ファスナを遠位側に引張って張力を付与する段階と、
工具を用いて、ファスナが回転しないように防止する段階と、
工具を用いて、所望の捩り荷重に到達するまで、ねじ付シャンク部分上で雌ねじ具にトルクを加える段階と、
工具を用いて、所定範囲の張力に到達しかつファスナが細頚溝で切断されるまで、ファスナのピン・テール部分の張力を増大させる段階とを更に有することを特徴とする少なくとも1つのワーク内にファスナを装着する方法。
(10)ファスナを設ける段階を有し、ファスナは、
該ファスナの近位端に配置されかつ長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ拡大突出ヘッドと、
該ヘッドの遠位側に隣接して配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ実質的に円筒状の円滑シャンク部分とを有し、該円滑シャンク部分は第一直径を有し、 円滑シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつねじ付シャンク部分を有し、該ねじ付シャンク部分は円滑シャンク部分の第一直径より小さい第二直径をもつ雄ねじを備え、
ねじ付シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつピン・テール部分を有し、ピン・テール部分は、工具がピン・テール部分に係合しかつファスナを引張って張力を付与する手段を備え、かつねじ付シャンク部分の第二直径より小さい第三直径を有し、ファスナのねじ付シャンク部分と係合されることを意図した雌ねじ具が、ピン・テール部分に全く干渉することなく該ピン・テール部分上に嵌合でき、 ピン・テール部分の第三直径より小さい第四直径をもつ細頚溝を更に有し、該細頚溝はねじ付シャンク部分とピン・テール部分との間に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心を有し、細頚溝は、該細頚溝がファスナの他のいかなる部分よりも小さい引張り強度を有しかつ所定範囲の張力をファスナのピン・テール部分に加えたときにファスナが細頚溝で切断することを確保するように調整され、細頚溝の引張り強度は、細頚溝の第四直径および細頚溝の領域のファスナ材料の強度により調整され、
少なくとも1つのワークを設ける段階を有し、少なくとも1つのワークは、ファスナの円滑シャンク部分との間にすきま嵌めを形成する孔を備え、
ファスナのピン・テール部分を少なくとも1つのワークの第一側から少なくとも1つのワークの前記孔内に挿入し、かつピン・テール部分が少なくとも1つのワークの第二側の表面から突出するまでファスナを遠位側に前進させる段階と、
ピン・テール部分と工具とを係合させる段階と、
ピン・テール部分と係合した工具を用いて、ファスナのヘッドの遠位側表面が少なくとも1つのワークの第一側の表面に接触するまで、ファスナの円滑シャンク部分を少なくとも1つのワークの孔内に遠位側に引張る段階と、
工具を用いて、所定範囲の張力に到達しかつファスナが細頚溝で切断されるまで、ファスナのピン・テール部分の張力を増大させる段階と、
雌ねじ具を設ける段階と、
工具を用いて、所望の捩り荷重に到達するまで、ねじ付シャンク部分上で雌ねじ具にトルクを加える段階とを更に有することを特徴とする少なくとも1つのワーク内にファスナを装着する方法。
【符号の説明】
【0035】
20 プル・ステムファスナ
22 ヘッド
28 ワーク
30 シャンク部分
40 雄ねじ
42 ねじナット
44 ねじカラー
46 スウェージカラー
48 ピン・テール部分
50 細頚溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スウェージング法またはトルキング法により少なくとも1つのワークに装着できるファスナにおいて、
該ファスナの近位端に配置されかつ長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ拡大突出ヘッドと、
該ヘッドの遠位側に隣接して配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつ実質的に円筒状の円滑シャンク部分とを有し、該円滑シャンク部分は第一直径を有し、
円滑シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつねじ付シャンク部分を有し、該ねじ付シャンク部分は雄ねじを備え、該雄ねじは、これより軟らかい材料からなるスウェージカラーを、雄ねじに目立つほどの損傷を引起こすことなく雄ねじ上にスウェージングさせることができる充分な強度および円滑シャンク部分の第一直径より小さい第二直径を有し、
ねじ付シャンク部分の遠位側に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心をもつピン・テール部分を有し、ピン・テール部分は、工具がピン・テール部分に係合しかつファスナを引張って張力を付与する手段を備え、かつねじ付シャンク部分の第二直径より小さい第三直径を有し、ファスナのねじ付シャンク部分と係合されることを意図したスウェージカラーまたは雌ねじ具が、ピン・テール部分に全く干渉することなく該ピン・テール部分上に嵌合でき、
ピン・テール部分の第三直径より小さい第四直径をもつ細頚溝を更に有し、該細頚溝はねじ付シャンク部分とピン・テール部分との間に配置されかつ前記長手方向軸線の回りに実質的に中心を有し、細頚溝は、該細頚溝がファスナの他のいかなる部分よりも小さい引張り強度を有しかつ所定範囲の張力をファスナのピン・テール部分に加えたときにファスナが細頚溝で切断することを確保するように調整されていることを特徴とするファスナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−231932(P2011−231932A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171214(P2011−171214)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【分割の表示】特願2004−505552(P2004−505552)の分割
【原出願日】平成15年4月29日(2003.4.29)
【出願人】(504421132)ハイ シァー コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】