説明

ファンモータ駆動制御装置

【課題】 ファンモータが複数台動作している場合において、その一部のファンモータが故障停止したときであっても、空冷能力の低下を抑えて熱暴走等を防止し、ひいては空冷機能の信頼性を向上させることが可能なファンモータ駆動制御装置を提供することにある。
【解決手段】 ファンモータを駆動する駆動回路11,12と、駆動回路11,12に対してファンモータの回転数を切り替える制御信号を送信する回転数切替制御回路13と、を有するファンモータ駆動制御装置10であって、回転数切替制御回路13は、駆動回路11,12に設けられ、駆動対象となっているファンモータFM1,FM2の停止を検出する停止検出端子(RD端子)から受信する信号に基づき、上述の制御信号を送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報機器,家電製品又は車等の空冷装置として使用されるファンモータを駆動制御するファンモータ駆動制御装置に関するものであって、特に、空冷機能の信頼性を向上させることが可能なファンモータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筐体内に発熱源をもっている情報機器や家電製品、エンジンを搭載した車などでは、熱的悪影響を少しでも抑えるために、冷却用のファンモータをモータ駆動して空冷する場合が多い。モータ駆動する態様としては、例えば、一定の風量を得るためにファンモータを一定電圧で駆動する無制御方式、発熱源の温度を検出し、検出温度に応じた風量を得ることができるようにモータ駆動する温度センシング方式などがある。
【0003】
近年、情報機器の高性能化,高機能化に伴い、その情報機器の内部にある電子部品の発熱が増加してきており、効率の良い空冷の重要度が益々増してきている。例えば、ホストコンピュータとしてのサーバ等では、高実装,高速化を実現するため、複数のCPUやメモリ等が配設されており、ファンモータも複数台配設して空冷効率を上がるような構成となっている。
【0004】
ここで、複数台配設されたファンモータのうち、一部のファンモータが故障して停止した場合、空冷能力が低下し、場合によっては熱暴走が発生し、最悪のケースでは電子情報の読み出しが不可能になってしまう虞がある。このため、ファンモータが故障停止した場合の故障検出として、ファンモータの回転数や拘束保護信号等がファンモータ側から得られるようになっている。そして、サーバ側では、これらの信号を解析することで、どのファンモータが故障停止しているかを検出することができるようになっている。
【0005】
例えば、特許文献1に開示された2重冷却ファン装置によれば、ファンモータの故障に備えて予備ファンモータを予め配設しておき、ファンモータ側からの送られてくる所定の信号に基づき、サーバ側でメインファンモータの故障停止を検出したとき、予備のファンモータに切り替えて、空冷能力の低下や熱暴走を防ぐことができる。
【0006】
【特許文献1】実開平5−2570号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された考案では、2個のファンモータがメイン−予備の関係ではなく、両者ともメインの関係になっているときには、以下のような問題が生ずる。
【0008】
すなわち、空冷効率を良くするために、例えばホストコンピュータとしてのサーバに、2台のファンモータを配設して、それら2台のファンモータを同時に動作させる場合がある。かかる場合において、片方のファンモータが故障停止すると、当然のことながら風量が半分になる。このとき、サーバ側では、上述のとおり、所定の信号に基づき、この故障停止を検出することができるが、結局、故障したファンモータを人為的に交換しなければ風量は半分のままである。このように、片方のファンモータが故障停止した場合、その故障停止したファンモータが人為的に交換されるまで風量は半分のままであることから、空冷能力が低下し、サーバ内の電子部品の放熱を十分にすることができず、熱暴走が発生したり電子情報の読み出しが不可能になったりする虞がある。
【0009】
この点、サーバ側でファンモータの故障停止を検出したとき、もう片方の正常なファンモータの回転数を上げて、十分な風量及び風圧を確保する方法も考えられる。しかしながら、一般的にファンモータ自身は回転数を自発的に上げる機能を有していないため、かかる方法では、サーバ側に機能追加が必要となり、煩雑化及びコスト上昇は避けられない。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ファンモータが複数台動作している場合において、その一部のファンモータが故障停止したときであっても、空冷能力の低下を抑えて熱暴走等を防止し、ひいては空冷機能の信頼性を向上させることが可能なファンモータ駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような課題を解決するために、本発明は、ファンモータを駆動する駆動回路と、駆動回路に対してファンモータの回転数を切り替える制御信号を送信する回転数切替制御回路と、を有するファンモータ駆動制御装置であって、回転数切替制御回路は、駆動回路に設けられ、駆動対象となっているファンモータの停止を検出する停止検出端子から受信する信号に基づき、上述の制御信号を送信することを特徴とする。
【0012】
より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0013】
(1) 複数のファンモータのそれぞれを駆動する複数の駆動回路と、前記複数の駆動回路に対し、ファンモータの回転数を切り替える制御信号を送信する回転数切替制御回路と、を有するファンモータ駆動制御装置であって、前記駆動回路は、駆動対象となっているファンモータの停止を検出する停止検出端子を備え、前記回転数切替制御回路は、前記複数の駆動回路における前記停止検出端子から受信する信号に基づき、前記制御信号を送信することを特徴とするファンモータ駆動制御装置。
【0014】
本発明によれば、駆動対象となっているファンモータの停止を検出する停止検出端子を備え、複数のファンモータのそれぞれを駆動する複数の駆動回路と、それら複数の駆動回路に対して、ファンモータの回転数を切り替える制御信号(例えばHレベルとLレベルの電圧信号など)を送信する回転数切替制御回路と、を有するファンモータ駆動制御装置であって、回転数切替制御回路は、複数の駆動回路における停止検出端子から受信する信号に基づき、上述の制御信号を送信することとしたから、ファンモータの停止を検出(異常検出)してから、ファンモータの回転数を切り替えるまでを自動化して、空冷機能の信頼性を向上させることができる。
【0015】
すなわち、従来は、ファンモータ自身は回転数を自発的に上げる機能を有しておらず、一のファンモータが故障停止したとき、他の正常なファンモータの回転数を上げて熱暴走等を防ぐためには、サーバ側に機能追加が必要となっていた。しかし、本発明によれば、サーバ側に機能追加しなくても、ファンモータ側で自発的に回転数を上げ、十分な風量及び風圧を自動的に確保することができるので、熱暴走の発生や電子情報の読み出しエラーの危険性も少なくなり、ひいては空冷機能の信頼性を向上させることができる。
【0016】
ここで、「前記複数の駆動回路における前記停止検出端子から受信する信号」としては、駆動対象となっているファンモータの停止を検出しうる信号であれば、その種類の如何を問わない。例えば、駆動回路において、ファンモータが停止したことを契機として生成される何らかの信号であってもよい。
【0017】
また、回転数切替制御回路は、この「前記複数の駆動回路における前記停止検出端子から受信する信号」に基づいて、ファンモータの回転数を切り替える制御信号を駆動回路に対して送信する。例えば、この信号が直流電圧信号であって、直流電圧レベルがHレベルからLレベル(或いはLレベルからHレベル)になったときに制御信号が送信されるようにしてもよいし、また、この信号が周期的な信号であって、その周波数が変化したときに制御信号が送信されるようにしてもよい。
【0018】
(2) 前記回転数切替制御回路において、前記停止検出端子から受信する信号は、駆動対象となっているファンモータの拘束保護を検出する拘束保護検出信号であることを特徴とする(1)記載のファンモータ駆動制御装置。
【0019】
本発明によれば、上述した回転数切替制御回路において、停止検出端子から受信する信号は、駆動対象となっているファンモータの拘束保護を検出する拘束保護検出信号(いわゆるRD信号)であることとしたから、一般的なICに付加されている拘束保護機能を活用することによって、コスト上昇を抑えつつ、空冷機能の信頼性を向上させることができる。
【0020】
なお、拘束保護機能とは、ファンモータがロックされた(停止した)場合に働く機能であって、ファンモータや駆動回路を保護するものである。そして、拘束保護が解除されれば、ファンモータは自動復帰して定常動作をすることになる。拘束保護機能の一例としては、例えば、モータ駆動ON期間を0.4秒とし、モータ駆動OFF期間を6.7秒とし、両期間が交互に繰り返されることによって、消費電流を抑えてファンモータや駆動回路を保護しつつ、自動復帰のタイミングを監視する等が挙げられる。
【0021】
(3) 前記回転数切替制御回路において、前記停止検出端子から受信する信号は、駆動対象となっているファンモータの回転数に応じて周期的に変化するFG信号であることを特徴とする(1)記載のファンモータ駆動制御装置。
【0022】
本発明によれば、上述した回転数切替制御回路において、停止検出端子から受信する信号は、駆動対象となっているファンモータの回転数に応じて周期的に(例えば正弦波や矩形波のように)変化するFG(Frequency Generator)信号であることとしたから、一般的なICに付加されている周波数発電機能を活用することによって、コスト上昇を抑えつつ、空冷機能の信頼性を向上させることができる。
【0023】
(4) 前記回転数切替制御回路は、前記複数の駆動回路における前記停止検出端子から受信する信号を入力とするORゲートと、
【0024】
前記複数の駆動回路のそれぞれと電気的に接続され、前記ORゲートの出力信号に基づき前記制御信号を送信する複数の速度切替回路と、から構成されることを特徴とする(1)から(3)のいずれか記載のファンモータ駆動制御装置。
【0025】
本発明によれば、上述した回転数切替制御回路は、複数の駆動回路における停止検出端子から受信する信号を入力とするORゲートと、上述した複数の駆動回路のそれぞれと電気的に接続され、ORゲートの出力信号に基づき上述した制御信号を送信する複数の速度切替回路と、から構成されることしたから、コスト上昇を抑えつつ、簡易な構成で空冷機能の信頼性を向上させることができる。
【0026】
(5) 前記速度切替回路は、前記ORゲートの出力信号に基づきHレベルの電圧信号を送信する第1の切替スイッチと、前記ORゲートの出力信号に基づきLレベルの電圧信号を送信する第2の切替スイッチと、を含む2速切替回路であることを特徴とする(4)記載のファンモータ駆動制御装置。
【0027】
本発明によれば、上述した速度切替回路は、ORゲートの出力信号に基づきHレベルの電圧信号を送信する第1の切替スイッチ(例えば半導体スイッチなど)と、ORゲートの出力信号に基づきLレベルの電圧信号を送信する第2の切替スイッチ(例えば半導体スイッチなど)と、を含む2速切替回路であることとしたから、コスト上昇を抑えつつ、簡易な構成で空冷機能の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るファンモータ駆動制御装置は、以上説明したように、複数のファンモータが動作しているときに、一部のファンモータが故障停止したとき、他の正常なファンモータの回転数を自動的に上げることで、十分な風量及び風圧を確保して熱暴走の発生や電子情報の読み出しエラーの危険性を下げることができ、ひいては空冷機能の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
[概要]
図1は、本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置10の概要を示すブロック図である。
【0031】
図1において、本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置10は、ファンモータFM1を駆動する駆動回路11と、ファンモータFM2を駆動する駆動回路12と、ファンモータの回転数を切り替える制御信号を送信する回転数切替制御回路13と、を有している。
【0032】
また、駆動回路11は、モータI/F11aとして、回転数切替制御回路13から送られてくる制御信号を受信するVsp端子と、ファンモータFM1の拘束保護を検出するRD端子と、を有しており、駆動回路12は、モータI/F12aとして、回転数切替制御回路13から送られてくる制御信号を受信するVsp端子と、ファンモータFM2の拘束保護を検出するRD端子と、を有している。
【0033】
なお、図1では、駆動回路11及び駆動回路12と、回転数切替制御回路13とは有線で電気的に接続されているが、本発明はこれに限られず、無線で電磁的に接続されていてもよいし、赤外線やレーザ等で光接続されていてもよい。また、図1では、駆動回路11及び駆動回路12と、回転数切替制御回路13とを別々の回路として捉えているが、例えば、1基板中に埋め込んで1回路として捉えることも可能である。さらに、駆動回路11及び駆動回路12と回転数切替制御回路13とが発揮する機能を、CPU等の中央処理装置(図示せず)にもたせてもよい。
【0034】
図2は、本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置10の動作概要を示すブロック図である。
【0035】
図2において、まず、何らかの要因でファンモータFM2が故障停止して、ファンモータFM2がロックされたとする(図中×印)。そうすると、駆動回路12中の拘束保護機能が働き、RD端子では、直流電圧レベルがLレベルからHレベルに遷移する拘束保護検出信号Sが検出される。そして、回転数切替制御回路13は、この拘束保護検出信号Sに基づいて、ファンモータFM1の回転数を上げる回転数切替制御信号Sを駆動回路11に対して送信する。その結果、駆動回路11によって、ファンモータFM1の回転数は自動的に上げられることになる。
【0036】
このように、ファンモータ駆動制御装置10によれば、サーバ側に機能追加しなくても、ファンモータ側で自発的に回転数を上げ、十分な風量及び風圧を自動的に確保することができ、ひいては空冷機能の信頼性を向上させることができる。
【0037】
以下、駆動回路11,12や回転数切替制御回路13の回路構成について詳述する。
【0038】
[回路構成]
図3は、本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置10が有する駆動回路11の回路図である。なお、図3で示す駆動回路11の駆動方式は、3相全波ブラシレスモータの駆動方式を採用している。また、図3では、駆動回路11の回路図を示したが、駆動回路12の回路図も基本的に同様である。
【0039】
図3において、駆動回路11は、主として、回路全体を統合的にファンモータ用駆動IC111と、3個のホールIC(HU,HV,HW)を含み、ファンモータFM1の位置検出を行う位置検出部112と、6個の電界効果トランジスタ(MOSFET)を含み、ファンモータFM1に駆動電力を供給するための電力供給部113と、RD端子及びVsp端子を含むモータI/F11aと、ファンモータFM1のホールIC(HU,HV,HW)を合成したFG信号端子と、ファンモータFM1の回転開始時にHレベルからLレベルに遷移するスタートストップ端子(S/S端子)などから構成される。
【0040】
ファンモータ用駆動IC111は、ファンモータFM1が故障停止すると、位置検出部112で検出された位置情報等に基づき、直流電圧レベルがLレベルからHレベルに遷移する拘束保護検出信号をRD端子に送信する。一方で、ファンモータ用駆動IC111は、Vsp端子において、回転数切替制御回路13からの回転数切替制御信号を受信すると、電力供給部113を介してファンモータFM1の回転数を上昇させることができる。
【0041】
図4は、本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置10が有する回転数切替制御回路13を示すブロック図である。図4(a)は回転数切替制御回路13の概要を示すブロック図であり、図4(b)は回転数切替制御回路13のうちの2速切替回路131の概要を示すブロック図であり、図4(c)は回転数切替制御回路13のうちの2速切替回路131aを具現化したときの一例を示す回路図である。
【0042】
図4(a)において、回転数切替制御回路13は、駆動回路11のVsp端子に対して回転数切替制御信号を送信する2速切替回路131と、駆動回路12のVsp端子に対して回転数切替制御信号を送信する2速切替回路132と、駆動回路11及び駆動回路12のRD端子から送られてくる拘束保護検出信号を入力とするORゲート133と、から構成される。なお、ORゲート133の出力信号は、2速切替回路131及び2速切替回路132に送られる。
【0043】
なお、図4(a)では、駆動回路11及び駆動回路12のRD端子から送られてくる拘束保護検出信号を入力するものとしてORゲート133を用いることとしたが、例えば機械式リレー,半導体リレー又はハイブリッドリレーなど、多入力一出力の機能を発揮しうるものであれば、如何なるものであってもよい。
【0044】
図4(b)において、図4(a)に示す2速切替回路131は、Hレベルの直流電圧信号が出力され、ファンモータFM1を高速設定で運転させるための高速設定部131aと、Lレベルの直流電圧信号が出力され、ファンモータFM1を定常設定で運転させるための定常設定部131bと、ORゲート133の出力に基づき、高速設定部131aで出力されたHレベルの直流電圧信号を駆動回路11のVsp端子に送信する半導体スイッチ131cと、NOTゲート131eを介して得られるORゲート133の出力に基づき、定常設定部131bで出力されたLレベルの直流電圧信号を駆動回路11のVsp端子に送信する半導体スイッチ131dと、NOTゲート131eと、から構成される。
【0045】
なお、半導体スイッチ131c,131dとしては、一般的には、アナログスイッチ(半導体スイッチ)が挙げられるが、本発明はこれに限られず、例えば上述した機械式リレー,半導体リレー又はハイブリッドリレー等を用いることもできる。
【0046】
ここで、図4(b)に示す高速設定部131a及び定常設定部131bは、例えば図4(c)に示す回路図によって具現化される。図4(c)では、抵抗Raと抵抗Rcの直列回路と、抵抗Rbと抵抗Rdの直列回路とが並列に接続され、抵抗Raと抵抗Rbそれぞれの一端が+5V電源に接続され、抵抗Rcと抵抗Rdそれぞれの一端がアースに接続されている。そして、抵抗Raと抵抗Rcの節点から定常設定出力としてLレベルの直流電圧信号が出力され、抵抗Rbと抵抗Rdの節点から高速設定出力としてHレベルの直流電圧信号が出力される。
【0047】
図5は、本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置10における処理動作を示すフローチャートである。
【0048】
図5において、まず、ファンモータFM1及びファンモータFM2は、定常設定運転が行われているものとする(ステップS1)。より具体的には、駆動回路11(図3参照)において、ファンモータ用駆動IC111は、回転数切替制御回路13からLレベルの直流電圧信号をVsp端子で受信しており、電力供給部113を介して、ファンモータFM1を定常設定(定常速度)で駆動しているものとする。同様に、駆動回路12においても、ファンモータFM2が定常設定(定常速度)で駆動されているものとする。
【0049】
次いで、ファンモータFM2が何らかの要因で故障停止したとき、RD信号切替検出が行われる(ステップS2)。より具体的には、駆動回路12において、ファンモータFM2が何らかの要因で故障停止すると、駆動回路12中の拘束保護機能が働き、直流電圧レベルがLレベルからHレベルに遷移する拘束保護検出信号がRD端子で検出される。
【0050】
最後に、故障停止していないファンモータFM1において、高速設定運転が行われる(ステップS3)。より具体的には、回転数切替制御回路13は、駆動回路12のRD端子で拘束保護検出信号が検出されると、それをORゲート133の一入力として取り込む(図4(a)参照)。そうすると、ORゲート133の出力は、LレベルからHレベルに遷移する。
【0051】
そして、このORゲート出力は2速切替回路131及び2速切替回路132に入力される。2速切替回路131(図4(b)参照)において、半導体スイッチ131cには、LレベルからHレベルに遷移するORゲート出力がそのまま入力され、半導体スイッチ131dには、NOTゲート131eを介してHレベルからLレベルに遷移するORゲート出力が入力される。そうすると、半導体スイッチ131cはONして、半導体スイッチ131dはOFFすることから、高速設定部131aから出力されるHレベルの直流電圧信号が駆動回路11のVsp端子に出力される。その結果、ファンモータ用駆動IC111は、Vsp端子において、回転数切替制御信号として回転数切替制御回路13から上述の直流電圧信号を受信すると、電力供給部113を介してファンモータFM1の回転数を上昇させる。このように、ファンモータ駆動制御装置10は、故障していない正常なファンモータFM1の回転数を自動的に上昇させることができる。
【0052】
なお、2速切替回路132では、2速切替回路131と同様に、Vsp端子において、回転数切替制御回路13から上述の直流電圧信号を受信するが、拘束保護機能(拘束保護回路)が働いていることから、結果として、ファンモータFM2は故障停止したままである。
【0053】
図6は、本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置10における処理動作の動作タイミングを示す説明図である。
【0054】
図6(a)において、ファンモータFM1及びファンモータFM2が回転を開始すると、駆動回路11中のS/S端子(図3参照)では、直流電圧レベルがHレベルからLレベルに遷移する。このとき、駆動回路11のRD端子では、直流電圧レベルがHレベルからLレベルに遷移する。なお、駆動回路12においても同様である。
【0055】
次に、ファンモータFM2が何らかの要因で故障停止すると、ファンモータFM2はロックされ、RD端子の直流電圧レベルがLレベルからHレベルに遷移する(上から2段目)。このとき、回転数切替制御回路13では、駆動回路12のRD端子から送られてきたHレベルの拘束保護検出信号がORゲート133に入力され、ORゲート133の出力がLレベルからHレベルに遷移する(上から3段目)。なお、ORゲート133は、図6(b)の真理値表に基づき動作する。すなわち、駆動回路11のRD端子又は駆動回路12のRD端子のいずれか一方又は双方がHレベルになったとき、ORゲート133の出力もLレベルからHレベルに遷移する。
【0056】
そして、ORゲート133の出力(Hレベル)は、半導体スイッチ131cにはそのまま入力され(上から4段目)、半導体スイッチ131dにはNOTゲート131eを介して(Lレベルになって)入力される(上から5段目)。そうすると、半導体スイッチ131cがONされ半導体スイッチ131dがOFFされることから、駆動回路11のVsp端子に対し、Lレベルの直流電圧信号(Vsp1)に代わってHレベルの直流電圧信号(Vsp2)が出力されることになる(上から6段目)。その結果、上述のとおり、ファンモータ用駆動IC111は、ファンモータFM1の回転数を上昇させることができる。
【0057】
[変形例]
図7は、本発明の他の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置10'の概要を示すブロック図である。特に、図7では、駆動対象となっているファンモータの停止を検出する停止検出端子として、RD端子ではなくFG信号(図3参照)を用いることとしている。また、駆動回路12のFG端子において得られるFG信号は、回転数切替制御回路13中のORゲート133にそのまま入力されるのではなく、F/V変換器14及びNOTゲート16を経由して入力され、駆動回路11のFG端子において得られるFG信号も、回転数切替制御回路13中のORゲート133にそのまま入力されるのではなく、F/V変換器15及びNOTゲート17を経由して入力される。図7に示すファンモータ駆動制御装置10'における処理動作の動作タイミングについて以下に説明する。
【0058】
図8は、本発明の他の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置10'における処理動作の動作タイミングを示す説明図である。
【0059】
図8(a)において、ファンモータFM1及びファンモータFM2が回転を開始すると、駆動回路11中のS/S端子(図3参照)では、直流電圧レベルがHレベルからLレベルに遷移する。このとき、駆動回路11のFG端子では、矩形波状の周期信号(FG信号)が得られる(上から2段目参照)。なお、FG信号は、ファンモータ用駆動IC111のピンを選択することによって、様々な周波数のものが得られる。
【0060】
次に、ファンモータFM2が何らかの要因で故障停止すると、ファンモータFM2はロックされることから、FG信号の周波数は0となる。そうすると、F/V変換器14の出力は0(Lレベル)となる。より具体的には、図8(b)に示すように、ファンモータFM2の故障停止前は、FG信号が周波数fであることに起因してF/V変換器14の出力はVであったが、ファンモータFM2の故障停止後は、FG信号が周波数0であることに起因してF/V変換器14の出力は0(Lレベル)となる(上から3段目)。
【0061】
このとき、回転数切替制御回路13では、NOTゲート16を介して、駆動回路12のFG端子から送られてきたLレベルの拘束保護検出信号がORゲート133に入力され、ORゲート133の出力がLレベルからHレベルに遷移する(上から5段目)。以下、図6で説明したとおり、半導体スイッチ131cがONされ、ファンモータFM1は、高速設定運転を行うことになる。
【0062】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置10,10'によれば、複数のファンモータのうちの一部が故障停止したとしても、他の正常なファンモータを高速回転させることで、空冷能力の低下を抑えて熱暴走等を防止し、ひいては空冷機能の信頼性を向上させることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、モータ構造は3相を採用したが、これに限らず、単相や2相を採用することもできる。また、本発明は、単相全波駆動方式のファンモータや、2相半波駆動方式のファンモータなどにも適用可能である。また、本実施形態ではファンモータの台数は2台としたが、これに限らず3台以上としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るファンモータ駆動制御装置は、複数のファンモータのうちの一部が故障しても、空冷能力の低下を抑えて熱暴走等を防止して、空冷機能の信頼性を向上させることがものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置の概要を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置の動作概要を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置が有する駆動回路の回路図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置が有する回転数切替制御回路を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置における処理動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置における処理動作の動作タイミングを示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置の概要を示すブロック図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置における処理動作の動作タイミングを示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ファンモータFM1
2 ファンモータFM2
10 ファンモータ駆動制御装置
11 駆動回路
11a モータI/F
12 駆動回路
12a モータI/F
13 回転数切替制御回路
14,15 F/V変換器
16,17 NOTゲート
111 ファンモータ用駆動IC
112 位置検出部
113 電力供給部
131,132 2速切替回路
131a 高速設定部
131b 定常設定部
131c,131d 半導体スイッチ
131e NOTゲート
133 ORゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のファンモータのそれぞれを駆動する複数の駆動回路と、
前記複数の駆動回路に対し、ファンモータの回転数を切り替える制御信号を送信する回転数切替制御回路と、を有するファンモータ駆動制御装置であって、
前記駆動回路は、駆動対象となっているファンモータの停止を検出する停止検出端子を備え、
前記回転数切替制御回路は、前記複数の駆動回路における前記停止検出端子から受信する信号に基づき、前記制御信号を送信することを特徴とするファンモータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記回転数切替制御回路において、前記停止検出端子から受信する信号は、駆動対象となっているファンモータの拘束保護を検出する拘束保護検出信号であることを特徴とする請求項1記載のファンモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記回転数切替制御回路において、前記停止検出端子から受信する信号は、駆動対象となっているファンモータの回転数に応じて周期的に変化するFG信号であることを特徴とする請求項1記載のファンモータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記回転数切替制御回路は、前記複数の駆動回路における前記停止検出端子から受信する信号を入力とするORゲートと、
前記複数の駆動回路のそれぞれと電気的に接続され、前記ORゲートの出力信号に基づき前記制御信号を送信する複数の速度切替回路と、から構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のファンモータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記速度切替回路は、前記ORゲートの出力信号に基づきHレベルの電圧信号を送信する第1の切替スイッチと、前記ORゲートの出力信号に基づきLレベルの電圧信号を送信する第2の切替スイッチと、を含む2速切替回路であることを特徴とする請求項4記載のファンモータ駆動制御装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−230121(P2006−230121A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41949(P2005−41949)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】