ファン式害虫防除装置
【課題】使用者の身につけて使用するのに好ましいと共に、害虫防除性能に優れたファン式害虫防除装置とする。
【解決手段】軸流ファン3を駆動することで吸気口6から空気を吸い込み、その空気を薬剤担持体2に流通させて害虫防除成分を含有した空気とし、その空気を排気口7から排出して害虫防除成分を気中に放散するようにし、前記吸気口6は軸流ファン3の上流側において軸方向に向けて開口し、前記排気口7は軸流ファン3の下流側で径方向に向けて開口し、前記軸流ファン3を囲む環状壁8と、前記排気口7と軸流ファン3の吐出部を連通する空気流通路9を設けることで、軸流ファン3からその軸方向に吐出された空気が径方向に向きを変化して排気口7から排出されるようにしたファン式害虫防除装置。
【解決手段】軸流ファン3を駆動することで吸気口6から空気を吸い込み、その空気を薬剤担持体2に流通させて害虫防除成分を含有した空気とし、その空気を排気口7から排出して害虫防除成分を気中に放散するようにし、前記吸気口6は軸流ファン3の上流側において軸方向に向けて開口し、前記排気口7は軸流ファン3の下流側で径方向に向けて開口し、前記軸流ファン3を囲む環状壁8と、前記排気口7と軸流ファン3の吐出部を連通する空気流通路9を設けることで、軸流ファン3からその軸方向に吐出された空気が径方向に向きを変化して排気口7から排出されるようにしたファン式害虫防除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除成分を担持した薬剤担持体に、ファンを用いて空気を流通させ、空気とともに害虫防除成分を気中に放散するファン式害虫防除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬剤担持体にファンを用いて空気を流通させ、空気とともに害虫防除成分を気中に放散するファン式害虫防除装置が、種々提案されている。
例えば、特許文献1に開示されたファン式害虫防除装置が提案されている。
このファン式害虫防除装置は、チャンバの一端に吸気口、他端に排気口を設け、そのチャンバ内にファンと、害虫防除成分を保持した薬剤担持体を設け、そのファンをモータで回転するようにしたもので、前記ファンを回転することで吸気口から気中の空気を吸い込み、その空気を薬剤担持体に流通させ、その薬剤担持体を流通した空気を、害虫防除成分を含む空気とし、その空気を排気口から排出して害虫防除成分を気中に放散するようにしたものである。
【0003】
また、特許文献2に開示されたファン式害虫防除装置が提案されている。
このファン式害虫防除装置は、チャンバ内に設けた薬剤担持体と、ファンと、このファンを回転するモータと、電池を備え、前記ファンを回転することで前記薬剤担持体に空気を流通させ、その薬剤担持体を流通した空気を害虫防除成分を含む空気とし、その空気をチャンバ内に吸い込むと共に、その空気を排気口から気中に排出し、害虫防除成分を気中に放散するようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開平11−028040号公報
【特許文献2】特開2001−197856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1に記載したファン式害虫防除装置は、吸気口と排気口が、それぞれファンの軸方向に向かっているので、その吸気口と排気口が一直線状に位置する。
このようであるから、ファン式害虫防除装置を使用者の腰、手などの身につけて使用すると、吸気口あるいは排気口が使用者の身によって閉じられ、空気の流れが悪くなる恐れがあるので、使用者の身につけて使用するファン式害虫防除装置として好ましくない。
【0006】
また、前述した特許文献2に記載されたファン式害虫防除装置は、ファンの軸方向から気中の空気を吸い込み、その空気を害虫防除成分に流通させることで害虫防除成分を含む空気とし、その空気をファンの径方向に排出して気中に放散するので、空気の吸い込み方向と害虫防除成分を含む空気の排出方向が90度異なる。
このようであるから、ファン式害虫防除装置を使用者の腰、手などの身につけて使用する場合に、吸気口、排気口の一方が使用者の身で閉じられることがないので、使用者の身につけて使用するファン式害虫防除装置として好ましい。
【0007】
しかし、前述の特許文献1に記載されたファン式害虫防除装置と特許文献2に記載されたファン式害虫防除装置を、同一条件で害虫防除性能テストを実施した結果、特許文献2に記載されたファン式害虫防除装置の方が特許文献1に記載されたものより害虫防除性能が劣っていた。
【0008】
本発明の目的は、使用者の身につけて使用するのに好ましいと共に、害虫防除性能が優れているファン式害虫防除装置とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前述の害虫防除性能の優劣について鋭意研究実験した結果、次のことを見出した。
すなわち、特許文献1に開示されたファン式害虫防除装置は、ファンとして軸流ファンを用いていると共に、吸込口と排気口がファンの軸方向にそれぞれ向かうと共に、一直線状に位置しているので、吸気口から排気口までの空気流れがスムーズで空気流通抵抗が少ないから、そのファンによって吸い込まれた空気が排気口からスムーズに排出されることになり、薬剤担持体を流通する空気の量が多く、保持している害虫防除成分に多量の空気が触れ、その薬剤担持体を通過した空気中に含有される害虫防除成分の量が多いので、害虫防除性能が優れたものとなる。
【0010】
これに対して、特許文献2に記載されたファン式害虫防除装置は、チャンバのファン軸方向に吸気口が形成され、そのチャンバの周面におけるファンの径方向に排気口が形成され、その排気口はファンと対峙しているので、ファンの回転によって吸気口から吸い込まれた空気は排気口から直ちに排出されるから、その吸い込まれた空気は翼端からの漏れ、四方への拡散を伴い、体積効率、特に流量が激減するので、薬剤担持体を流通する空気の量が少なく、保持している害虫防除成分に触れる空気の量が少なく、その薬剤担持体を流通した空気中に含有される害虫防除成分の量が少ないから、害虫防除性能が劣ると考えられる。
【0011】
本発明者等は前述のことから、使用者の身につけて使用するのに好ましいと共に、害虫防除性能の優れたファン式害虫防除装置を発明するに到った。
【0012】
本発明は、軸流ファン3を駆動することで吸気口6から空気を吸い込み、その空気を害虫防除成分を担持した薬剤担持体2を流通させることで害虫防除成分を含有した空気とし、その空気を排気口7から排出して害虫防除成分を気中に放散するファン式害虫防除装置であって、
前記吸気口6は軸流ファン3よりも上流側において当該軸流ファン3の軸方向に向けて開口し、
前記排気口7は軸流ファン3よりも下流側において当該軸流ファン3の径方向に向けて開口し、
前記軸流ファン3の空気流れをガイドする環状壁8と、前記軸流ファン3の吐出部3dと排気口7を連通する空気流通路9をそれぞれ設け、
前記環状壁8は、前記軸流ファン3の翼端3cと相対向した内周面を有し、
前記内周面は、略円形状で軸流ファン3の翼端3cとの間にクリアランスを有して相対向した空気ガイド部8aを有し、
前記空気流通路9は、前記軸流ファン3から吐出された当該軸流ファン3の軸方向に向かう空気を、径方向に向けて変化させる形状としたことを特徴とするファン式害虫防除装置である。
【0013】
本発明においては、前記空気流通路9は外周側ガイド面9aと、この外周側ガイド面9aと径方向に対峙し軸流ファン3のボス3aから排気口7まで連続した内周側ガイド面9bを有し、
前記外周側ガイド面9aと内周側ガイド面9bの少なくともいずれか一方は空気が乱れることなくスムーズに流れる形状であることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、軸流ファン3から吐出された軸方向に向かう空気は、外周側ガイド面9a、内周側ガイド面9bの少なくとも一方にガイドされてスムーズに流れ、その流通抵抗が著しく小さいので、より多量の空気を吐き出すことができ、害虫防除性能がより優れたものとなる。
【0015】
本発明においては、環状壁8の内周面における空気ガイド部8aよりも吸込側に、吸気口6に向けて順次大径となる漏斗状の空気吸込み部10を形成することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、流入側のケーシング境界層の渦発生による損失が減るため、環状壁8の内周面及び軸流ファン3への空気のスムーズな受け渡しが可能となり、損失低減によりファン効率が高まるので、軸流ファン3の吸い込み効率が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吸気口6が軸流ファン3の軸方向に向けて開口し、排気口7は軸流ファン3の径方向に向けて開口しているので、空気吸い込み方向と害虫防除成分を含有した空気の排出方向が異なり、また全周方向への排出が可能であるため、使用者の腰、手などの身につけて使用するファン式害虫防除装置は勿論のこと、屋内、屋外の様々な場面で使用するファン式害虫防除装置として好適である。
【0018】
また、前記環状壁8の内周面、特に空気ガイド部8aによって軸流ファン3による軸方向の空気流れが助長され、吸い込みされた空気が翼端から漏れたり四方へ拡散することがないので、軸流ファン3で多量の空気を流通させることができる。また、このクリアランスの低減は、軸流ファン翼端からの上流側への漏れ流れ、漏れ渦発生の低減をもたらし、より効率的に多量の空気を流通させることができる。
したがって、薬剤担持体2が担持している害虫防除成分に多量の空気が触れ、その薬剤担持体2を流通した空気中に含有される害虫防除成分の量が多く、害虫防除性能が優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図1、図2、図3、図4に基づいて説明する。
装置本体1と、この装置本体1に設けた薬剤担持体2、軸流ファン3、モータ4と、電源部5でファン式害虫防除装置を構成している。前記薬剤担持体2は軸流ファン3の上流側(吸込側)に位置している。
前記装置本体1は吸気口6と排気口7を備えている。
前記吸気口6は、軸流ファン3の上流側で軸方向に向けて開口し、軸流ファン3を回転することで、当該軸流ファン3の軸方向から気中の空気を矢印aで示すように吸い込む。
前記排気口7は、軸流ファン3の径方向に向けて開口していると共に、軸流ファン3よりも下流寄りに位置し、軸流ファン3を回転することで、当該軸流ファン3の径方向に向けて空気を矢印bで示すように排出する。
前記薬剤担持体2は害虫防除成分を担持している。
前記軸流ファン3はボス3aに複数の翼3bを放射状に設けたものである。そのボス3aがモータ4の回転軸4aに連結され、そのモータ4を駆動することで軸流ファン3が回転する。
【0020】
前記装置本体1には、前記軸流ファン3の軸方向の空気流れをガイドする環状壁8が設けてある。
この環状壁8は軸流ファン3の翼端3c(各翼3bの先端面)の周囲を囲み、軸流ファン3の回転による軸方向の空気流れを助長する内周面を有している。
この内周面は、略円形状で軸流ファン3の翼端3cとの間にはクリアランス(隙間)が周方向に連続して有する空気ガイド部8aを備えている。
前記環状壁8の内周面、特に空気ガイド部8aによって軸流ファン3による軸方向の空気流れが助長され、吸い込みされた空気が翼端から漏れたり、四方へ拡散することがないので、軸流ファン3で多量の空気を流通させることができる。
この環状壁8がない場合、例えば前述した従来のように軸流ファン3の翼端と対向して径方向の排気口が形成されている場合には、空気流れは軸流ファン3の翼端からの漏れ、四方への拡散を伴い、流れる空気の量が減少する。
【0021】
前記軸流ファン3の下流側(つまり、吐出側)には空気流通路9が設けてある。
この空気流通路9は、軸流ファン3の吐出部3d(翼3bの下端面)と排気口7を連通し、軸流ファン3から吐出した空気を前記排気口7に流通するための導風路の役目を果たすものである。
そして、前記軸流ファン3から吐出した空気は、当該軸流ファン3の軸方向に向かい、前記排気口7は軸流ファン3の径方向に向いているので、前記空気流通路9は軸方向に向けて流入した空気を径方向に向かう流れに変化させる形状としてある。
【0022】
このようであるから、モータ4を駆動して軸流ファン3を回転することで、吸気口6から空気が矢印aで示すように吸い込まれ、その空気は薬剤担持体2を流通し、その薬剤担持体2を流通した空気は害虫防除成分を含有する。
この害虫防除成分を含有した空気は、環状壁8の内周面(空気ガイド部8a)によって軸流ファン3の軸方向に向かう空気流れとして空気流通路9に流入し、その空気流通路9に沿って流通することで軸流ファン3の径方向に向かう流れに変化し、排気口7から排出される。
【0023】
したがって、空気の吸い込み方向(吸気口6の開口方向)と害虫防除成分を含有した空気の排出方向(排気口7の開口方向)が異なり、また全周方向への排出が可能であるため、使用者の腰、手などの身につけて使用するファン式害虫防除装置としては勿論のこと、屋内、屋外の様々な場面で使用するファン式害虫防除装置として好適である。
【0024】
また、環状壁8の内周面、特に空気ガイド部8aで軸流ファン3による軸方向の空気流れが助長され、吸い込みされた空気が翼端から漏れたり四方へ拡散することがないので、軸流ファン3により多量の空気が流通する。
したがって、薬剤担持体2が担持している害虫防除成分に多量の空気が触れ、その薬剤担持体2を流通した空気中に含有される害虫防除成分の量が多く、害虫防除性能が優れたものである。
【0025】
次に、各部の好ましい実施の形態を説明する。
前記空気流通路9は、環状壁8の内周面における吐出側に設けた外周側ガイド面9a、例えば前記空気ガイド部8aの吐出側端部8b(軸流ファン3の吐出部3dと対向した下流部分)と前記排気口7と連続する外周側ガイド面9aと、この外周側ガイド面9aと径方向に対向し軸流ファン3のボス3aと前記排気口7を連続する内周側ガイド面9bを有している。
この外周側ガイド面9a、内周側ガイド面9bは、軸流ファン3から吐出された空気(軸流ファン3の軸方向に向かう空気)を、軸流ファン3の径方向に向けて変化すると共に、その空気流れが乱れの少ないスムーズに流れる形状としてある。
例えば、略円弧形状又は、単一もしくは複数の直線からなるテーパ形状、またはテーパ形状と略円弧形状を組み合わせた形状、好ましくは、流線形状である。
すなわち、前記軸流ファン3によって軸方向に流れている空気を半径方向に転向させる場合、下流側端面への衝突損失や境界層の流れによる損失が発生する。これをできる限る少なくするために、流出方向に沿った方向へ向け、テーパや円弧にて空気を導いてやることで、衝突損失や渦発生による損失を低減することができる。
また、外周側ガイド面9aは、半径方向への空気の広がりを司ることでディフューザとしての役目もあり、渦損失のない圧力回復をさせる(つまり、この圧力で空気を遠くまで飛ばす)効果が大きい。
【0026】
この実施の形態では、環状壁8の内周面における空気ガイド部8aよりも吐出側(空気ガイド部8aの吐出側端部8bよりも吐出側に突出した部分)に前記外周側ガイド面9aを形成している。
つまり、環状壁8の内周面は、空気ガイド部8aと、この空気ガイド部8aの吐出側に外周面ガイド面9aを有している。
【0027】
前記環状壁8の内周面における吸込側に空気吸込み部10が形成してある。例えば、前記空気ガイド部8aの吸込側端部8cよりも吸込側に空気吸込み部10が形成してある。
この空気吸込み部10は、吸気口6に向けて順次大径となる漏斗状で、吸込口6から空気がスムーズに吸い込みされるようにしてある。
【0028】
具体的には、内周面の空気ガイド部8aの径よりも吸気口6の径を大きくし、環状壁8の内周面における空気ガイド部8aの吸込側端部8cよりも吸気口6側に突出した部分の内周面を吸気口6に向けてテーパ形状に拡径して漏斗状の空気吸込み部10としてある。
この空気吸込み部10は略円弧形状でも良い。
すなわち、前記空気吸込み部10のテーパや円弧による流入角を適切に設定することで流入側のケーシング境界層の渦発生による損失が減るため、環状壁8の内周面及び軸流ファン3への空気のスムーズな受け渡しが可能となり、損失低減によりファン効率が高まるので、軸流ファン3の吸い込み効率が向上する。
【0029】
前述のように、環状室8の内周面は、空気ガイド部8aと、吐出側の外周側ガイド面9aと、吸込側の空気吸込み部10を備え、その外周側ガイド面9aをテーパ部9a−1を有する形状、空気吸込み部10をテーパ形状としているが、これに限ることはなく、図5(a)に示すように空気ガイド部8aと、テーパ部9a−1を有した外周側ガイド面9aを有する形状、図5(b)に示すように空気ガイド部8aと外周側ガイド面9aと空気吸込み部10を有する形状、図5(c)に示すように空気ガイド部8aが環状壁8の全長と同一長さの形状としても良い。
また、前述の環状壁8は空気ガイド部8a、外周側ガイド面9a、空気吸込み部10を有した一体形状としてあるが、前記環状壁8は空気ガイド部8a、外周側ガイド面9a、空気吸込み部10をそれぞれ別部材で形成しても良い。
【0030】
図6に示すように、軸流ファン3の翼端3cと環状壁8の空気ガイド部8aとの間が最も近接するクリアランス寸法cは、軸流ファン3の外径D1の3%以下が好ましい。このクリアランスの低減は、軸流ファン翼端側からの上流側への漏れ流れ、漏れ渦発生の低減をもたらし、本来は限りなく零に近い方が良いが、ファン軸の振れや環状面の成形誤差、あるいは組み立て誤差などの原因で、最小でも軸流ファン3の外径D1の0.5〜1%程度である。
また、図6に示すように、空気流通路9における排気口側部分9cの軸流ファン軸方向の寸法(高さ)H1は、軸流ファン3の外径D1の5%〜40%であることが好ましい。
【0031】
また、図6に示すように、前記環状壁8の軸方向の長さL1は、軸流ファン3の翼端3cの軸方向長さL2(ファン高さ)の0.5〜1.7倍であることが好ましい。
すなわち、環状壁8は、その空気ガイド部8aの軸方向の長さの最小の値は軸流ファン3の軸方向の長さL2の1/2で、この空気ガイド部8aは軸流ファン3の軸方向中央部(L2/2)と吐出部との間(軸方向半分の吐出側部分)で翼端3cと対向することが好ましい。
そして、内周面が空気ガイド部8aと外周側ガイド部9aと空気吸込み部10を有する形状の時は、その環状壁8の最大長さを軸流ファン3の長さL2の1.7倍とする。
要するに、空気ガイド部8aは、少なくとも軸流ファン3の軸方向半分の吐出側部分の翼端3cと対向していれば良い。
【0032】
前記軸流ファン3のボス3aは周壁11と上板12で有底の下向きに筒形状で、その周壁11に翼3bが設けてあると共に、上板12にモータ4の回転軸4aが連結されている。
前記周壁11は上流から下流側に向けて順次大径となるテーパ形状で、図6に示すように、そのテーパ角度θは0.5°〜30°が好ましい。ボスに軸方向流入側に広がるテーパを付けることで軸に直角な断面積を縮小し、軸流ファン3内での中心流線上における絶対速度(流体の流速)を加速させることができる。これにより、下流側で運動エネルギーの圧力回復ができればファン効率を増加させることが可能となる。特に、本願では軸流方向から半径方向へ空気の流れを変化させる必要があるので、ボステーパを付けることで渦損失を低減しながらこの変化をスムーズに行えるメリットは大きい。
前記周壁11と上板12を連続するコーナー部分13は滑らかな形状、例えば円弧形状、テーパ形状、又は円弧形状とテーパ形状を組み合わせた形状とすることが好ましい。
【0033】
次に、図示のファン式害虫防除装置を詳細に説明する。
前記装置本体1は、上部本体20と中間部本体30と下部本体40を備えている。
前記上部本体20は内側筒体21に外側筒体22を着脱自在に取付け、その内側筒体21の先端面に薬剤担持体2を設け、外側筒体22で保持している。
前記内側筒体21が前記環状壁8を構成している。
前記外側筒体22に前記吸気口6と排気口7が形成してある。
前記中間部本体30はモータ取付穴31を有する。この中間部本体30と内側筒体21は周方向に間隔を置いた複数の連結部32で上下方向に離隔して連結され、両者の間に前記軸流ファン3の翼3bが位置していると共に、前記空気流通路9を構成している。
前記外側筒体22の下端開口は中間部本体30の連結部32に嵌まり合い、その外側筒体22の下端寄り部分を切欠きして排気口7としてある。
【0034】
前記連結部32は空気の流れに触れるため、その形状は水平断面形状で、水滴形、翼形等、空気の流れを阻害しない形状にして、案内翼の役割を持たせても良い。
また、前記案内翼は連結部32とは別に設けても良い。例えば内周側ガイド面9bに設けることで、ファン効率が高まる。
さらに、連結部32の設置間隔は、指などが外部からファンをさわり怪我をしないような間隔で設定すると良い。
【0035】
前記薬剤担持体2は、害虫防除成分を担持したシート23を保持枠24で保持したものとしてある。
これに限ることはなく、空気が流通する容器内に害虫防除成分を担持した粒状物を多数収容したもの等でも良い。
【0036】
前記下部本体40は、本体41とカバー42を備え、その本体41には電池収容部43が形成され、電池44が収容されてカバー42で脱落しないように保持している。
前記下部本体40の本体41には一対のバンド取付部45が設けてあり、そのバンド取付部45に図示しないバンドを取付けるようにしてある。
この下部本体40の本体41が中間部本体30にビス等で固着して取付けてある。
【0037】
このようであるから、図1〜図3に示すファン式害虫防除装置はバンドを用いて使用者の手や胴に取付けて使用することができる。
【0038】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
前述の実施の形態では排気口7から排出される空気の方向が90度としてあるが、これに限ることはなく任意の角度の方向に排出することが可能である。
例えば、図7(a)に示す空気流通路9の形状として直角よりも小さい角度(80度)の方向に排出する。
図7(b)に示す空気流通路9の形状として直角よりも大きな角度(120度)の方向の排出する。
【0039】
この排気口7から空気を排出する方向は、そのファン式害虫防除装置の使用目的、場所によって設定することができる。
例えば、使用者の腰につけて使用する場合には、吸気口6が横向き(水平)となるから、80度〜100度の範囲で使用者に沿った方向に排出するようにする。
また、天井に吊り下げて使用する場合には、吸気口6が縦向き(垂直)となるから、100度〜70度の範囲で下向きに排出する。
また、床面に設置して使用する場合には、100度から160度の範囲で上向きに排出する。
【0040】
前記空気流通路9の形状は、図8(a)に示すように内周側ガイド面9bをスムーズに空気が流れる形状とし、外周側ガイド面9aは直線形状としても良い。
また、図8(b)に示すように外周側ガイド面9aをスムーズに空気が流れる形状とし、内周側ガイド面9bは鉤形状としても良い。
要するに、空気流通路9に空気が乱れが少なくスムーズに流れるようにするには、外周側ガイド面9a、内周側ガイド面9bを空気がスムーズに流れる形状とすることが最も好ましいが、どちらか一方のガイド面のみを空気がスムーズに流れる形状としても良い。
【0041】
また、前述のようにした場合に漏斗状の空気吸込み部10を形成すれば、空気の吸い込み効率がより一層向上するが、図9に示すように空気流通路9の外周側ガイド面9a、内周側ガイド面9bを直線形状、鉤形状とした場合でも、漏斗状の空気吸込み部10を形成することで空気の吸い込み効率を向上できる。
【0042】
前述の実施の形態では薬剤担持体2を吸気口6側に設けたが、図10、図11に示すように排気口7側に設けても良い。
この実施の形態の薬剤担持体2は、リング形状のハニカム構造体25に薬剤を担持し、そのハニカム構造体25の上下面にプレート26をそれぞれ固着したリング形状で、空気流通路9の排気口側部分9cに取付けてある。
また、吸気口6側と排気口7側に薬剤担持体2をそれぞれ設けても良い。
【0043】
要するに、薬剤担持体2は、吸気口6と軸流ファン3との間、又は排気口7と軸流ファン3との少なくともいずれか一方に設ければ良い。
【0044】
前述の実施の形態では、空気流通路9の排気口側部分9cと排気口7を別としたが、その排気口側部分9cから空気を直接排出し、その排気口側部分9cと排気口7を同一としても良い。
【0045】
次に、本発明に係るファン式害虫防除装置の試験例を説明する。
軸流ファン3については、表1に示すように、ファン高さL2、ボス径D2、ボステーパ角度θの異なる3種類を準備した
【0046】
【表1】
【0047】
環状壁8については、表2に示すように、その軸方向の長さL1、クリアランス寸法c、空気吸込み部10のテーパの大きさ、外周側ガイド面9aのテーパの大きさの異なる12種類を準備した。
【0048】
【表2】
【0049】
下部構造については、表3に示すように、排出口側部分高さH1、内周側ガイド面の形状の異なる4種類を準備した。
【0050】
【表3】
【0051】
なお、表2、表3における型番STD(スタンダード)とは比較対照装置である。
この比較対照装置は、前述した特許文献2に記載されたと同様のファン式害虫防除装置である。
例えば、図12に示すように、本発明に係るファン式害虫防除装置における軸流ファン3の翼3bと対峙した部分に排気口7を形成し、軸流ファン3の回転によって吸気口6から吸い込んだ空気を、その軸流ファン3の翼3bと対峙した部分から径方向に排出するファン式害虫防除装置を比較対照装置とした。
【0052】
そして、表4に示すように、軸流ファンと下部構造をそれぞれ型番1とし、環状壁を型番1〜12と変えてNO.1〜NO.12の試験装置とした。
【0053】
【表4】
【0054】
同様に、表5に示すように、軸流ファンと環状壁を型番1とし、下部構造を変えてNO.13〜NO.15の試験装置とした。
【0055】
【表5】
【0056】
さらに、表6に示すように、環状壁と下部構造を型番1とし、軸流ファンを変えてNO.16,NO.17の試験装置とした。
【0057】
【表6】
【0058】
前述の試験装置と比較対照装置における軸流ファンの外径D1は55mm、翼枚数は7枚、薬剤担持体2の径は64mm、モータの印加電圧は3.0V、軸流ファンの回転数は1450rpmと共通とした。
【0059】
前述の試験装置と比較対照装置を用いて次のように試験した。
[供試虫]イエバエ(Musca domestica)雌成虫羽化後3〜5日目伝研系。
[供試薬剤]メトフルトリン(住友化学工業株式会社)を含浸した直径64mmの不織布フィルター。
[供試方法]図13に示すような試験機にて試験を行った。
試験装置、比較対象装置Aを内径110mmの吸気口50及び排気口51のある縦520mm、横410mm、高さ340mmのボックス52内に設置し、排気口51を内径200mmのシリンダー53の上手に接続した上で、シリンダー53の下手からファンで吸引することにより10L/secの強制的な空気の流れを起こし、シリンダー53上手(ボックス排気口側)より距離800mmの距離位置(シリンダー下手より50mm)に供試虫10匹を入れた両面を16メッシュのナイロン網54で覆ったガラスリング55(外径90mm、内径80mm、長さ60mm)を高さ50mmの架台56に載せ設置し、各試験器具装置、比較対象装置Aのモータに通電した。
通電開始からの時間経過に伴うノックダウン虫数を調査し、BlissのProbit法によりKT50値を算出した。得られたKT50値による推定薬剤蒸散量により効力を比較した。
【0060】
その結果を、表4、表5、表6に示す。
【0061】
表4の試験装置NO.1と比較対照装置の効力比から、環状壁を設けることで害虫防除性能が優れたものとなることが判明した。
【0062】
表4の試験装置NO.1、NO.2、NO.9、NO.10の結果から、クリアランス寸法Cは1.6mm以上であると効力比が悪くなるので、1.6mm以下、つまり軸流ファンの外径R1の3%以下が好ましいことが判る。
【0063】
表4の試験装置NO.1、NO.3、NO.4の結果から、外周側ガイド面9aのテーパが大であることが好ましいことが判る。
【0064】
表4の試験装置NO.1、NO.5、NO.6の結果から、空気吸込み部10のテーパが大であることが好ましいことが判る。
【0065】
表4の試験装置NO.1、NO.7、NO.11,NO12の結果から、環状壁8の軸方向の長さL1は、軸流ファン3の軸方向の長さL2の0.8倍〜1.7倍が好ましいことが判る。
【0066】
表5の結果から、内周側ガイド面9bの形状は、テーパ形状よりも略円弧形状(R形状)の方が好ましいことが判る。
【0067】
本発明において使用される害虫防除成分としては、殺ダニ剤、害虫あるいは害獣忌避剤、殺虫剤または害虫の成長制御剤、吸血行動阻止剤などで、揮散性のものが用いられる。
そして、殺虫を目的として使用する場合、従来より用いられている各種揮散性殺虫剤等を挙げることができる。一般に安全性が高いことからピレスロイド系殺虫剤が好適に用いられる。
さらに、微量で効力を発揮する高活性のメトフルトリン、トランスフルトリン、エムペントリン、テラレスリンが薬剤含浸体を薄く、また小さくできることからより好ましい。
【0068】
本発明に使用する害虫防除成分を含浸するシート25としては、通気性の大きい紙、布、織物、不織布やネットなどが例示される。また、載置状態の安定性のために、シート25を保持する保持材26の材質としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアセタール、ナイロン、アクリル、ABS、紙、AS、金属等が挙げられる。さらに携帯性を考えると、その厚みを2〜5mm、面積を700〜3000mm2と薄く小さくすることが好ましい。
【0069】
特に、不織布の目付け10〜100g/m2のものが好ましく、20〜50g/m2のものが更に好ましい。目付けが100g/m2を超えると、空気抵抗が大きくなり過ぎ、ファンによる風がシートを通過できなくなり、害虫防除成分を拡散することができなくなる。逆に目付けが10g/m2より下になると、シートに保持させることができる薬剤量が減り製造性が悪くなり、また薬量不足になる恐れがある。
【0070】
軸流ファンの駆動電源として用いる電池としては、アルカリ単5電池、アルカリ単4電池、アルカリ単3電池、アルカリ単2電池、アルカリ単1電池、マンガン単5電池、マンガン単4電池、マンガン単3電池、マンガン単2電池、マンガン単1電池、角電池、リチウム電池、リチウムボタン電池等の電池を単一で、もしくは複数を直列および並列に組み合わせても良く、また充電式の2次電池を使用しても良く、さらには、電池ではなくACアダプターなどを用いて家庭用電源(AC100V)で使用できるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態を示すファン式害虫防除装置の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】軸流ファンの平面図である。
【図5】環状壁の異なる形状の説明図である。
【図6】各部の寸法の説明図である。
【図7】空気の排出方向を異なる方向とした断面図である。
【図8】空気流通路の異なる形状とした断面図である。
【図9】空気吸込み部のみを設けた実施の形態の断面図である。
【図10】薬剤担持体を排気口側に設けた実施の形態の断面図である。
【図11】図9のC−C断面図である。
【図12】比較対照装置の断面図である。
【図13】試験機の説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1…装置本体、2…薬剤担持体、3…軸流ファン、3a…ボス、3b…翼、3c…翼端、4…モータ、5…電源、6…吸気口、7…排気口、8…環状壁、8a…空気ガイド部、9…空気流通路、9a…外周側ガイド面、9b…内周側ガイド面、10…空気吸込み部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除成分を担持した薬剤担持体に、ファンを用いて空気を流通させ、空気とともに害虫防除成分を気中に放散するファン式害虫防除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬剤担持体にファンを用いて空気を流通させ、空気とともに害虫防除成分を気中に放散するファン式害虫防除装置が、種々提案されている。
例えば、特許文献1に開示されたファン式害虫防除装置が提案されている。
このファン式害虫防除装置は、チャンバの一端に吸気口、他端に排気口を設け、そのチャンバ内にファンと、害虫防除成分を保持した薬剤担持体を設け、そのファンをモータで回転するようにしたもので、前記ファンを回転することで吸気口から気中の空気を吸い込み、その空気を薬剤担持体に流通させ、その薬剤担持体を流通した空気を、害虫防除成分を含む空気とし、その空気を排気口から排出して害虫防除成分を気中に放散するようにしたものである。
【0003】
また、特許文献2に開示されたファン式害虫防除装置が提案されている。
このファン式害虫防除装置は、チャンバ内に設けた薬剤担持体と、ファンと、このファンを回転するモータと、電池を備え、前記ファンを回転することで前記薬剤担持体に空気を流通させ、その薬剤担持体を流通した空気を害虫防除成分を含む空気とし、その空気をチャンバ内に吸い込むと共に、その空気を排気口から気中に排出し、害虫防除成分を気中に放散するようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開平11−028040号公報
【特許文献2】特開2001−197856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1に記載したファン式害虫防除装置は、吸気口と排気口が、それぞれファンの軸方向に向かっているので、その吸気口と排気口が一直線状に位置する。
このようであるから、ファン式害虫防除装置を使用者の腰、手などの身につけて使用すると、吸気口あるいは排気口が使用者の身によって閉じられ、空気の流れが悪くなる恐れがあるので、使用者の身につけて使用するファン式害虫防除装置として好ましくない。
【0006】
また、前述した特許文献2に記載されたファン式害虫防除装置は、ファンの軸方向から気中の空気を吸い込み、その空気を害虫防除成分に流通させることで害虫防除成分を含む空気とし、その空気をファンの径方向に排出して気中に放散するので、空気の吸い込み方向と害虫防除成分を含む空気の排出方向が90度異なる。
このようであるから、ファン式害虫防除装置を使用者の腰、手などの身につけて使用する場合に、吸気口、排気口の一方が使用者の身で閉じられることがないので、使用者の身につけて使用するファン式害虫防除装置として好ましい。
【0007】
しかし、前述の特許文献1に記載されたファン式害虫防除装置と特許文献2に記載されたファン式害虫防除装置を、同一条件で害虫防除性能テストを実施した結果、特許文献2に記載されたファン式害虫防除装置の方が特許文献1に記載されたものより害虫防除性能が劣っていた。
【0008】
本発明の目的は、使用者の身につけて使用するのに好ましいと共に、害虫防除性能が優れているファン式害虫防除装置とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前述の害虫防除性能の優劣について鋭意研究実験した結果、次のことを見出した。
すなわち、特許文献1に開示されたファン式害虫防除装置は、ファンとして軸流ファンを用いていると共に、吸込口と排気口がファンの軸方向にそれぞれ向かうと共に、一直線状に位置しているので、吸気口から排気口までの空気流れがスムーズで空気流通抵抗が少ないから、そのファンによって吸い込まれた空気が排気口からスムーズに排出されることになり、薬剤担持体を流通する空気の量が多く、保持している害虫防除成分に多量の空気が触れ、その薬剤担持体を通過した空気中に含有される害虫防除成分の量が多いので、害虫防除性能が優れたものとなる。
【0010】
これに対して、特許文献2に記載されたファン式害虫防除装置は、チャンバのファン軸方向に吸気口が形成され、そのチャンバの周面におけるファンの径方向に排気口が形成され、その排気口はファンと対峙しているので、ファンの回転によって吸気口から吸い込まれた空気は排気口から直ちに排出されるから、その吸い込まれた空気は翼端からの漏れ、四方への拡散を伴い、体積効率、特に流量が激減するので、薬剤担持体を流通する空気の量が少なく、保持している害虫防除成分に触れる空気の量が少なく、その薬剤担持体を流通した空気中に含有される害虫防除成分の量が少ないから、害虫防除性能が劣ると考えられる。
【0011】
本発明者等は前述のことから、使用者の身につけて使用するのに好ましいと共に、害虫防除性能の優れたファン式害虫防除装置を発明するに到った。
【0012】
本発明は、軸流ファン3を駆動することで吸気口6から空気を吸い込み、その空気を害虫防除成分を担持した薬剤担持体2を流通させることで害虫防除成分を含有した空気とし、その空気を排気口7から排出して害虫防除成分を気中に放散するファン式害虫防除装置であって、
前記吸気口6は軸流ファン3よりも上流側において当該軸流ファン3の軸方向に向けて開口し、
前記排気口7は軸流ファン3よりも下流側において当該軸流ファン3の径方向に向けて開口し、
前記軸流ファン3の空気流れをガイドする環状壁8と、前記軸流ファン3の吐出部3dと排気口7を連通する空気流通路9をそれぞれ設け、
前記環状壁8は、前記軸流ファン3の翼端3cと相対向した内周面を有し、
前記内周面は、略円形状で軸流ファン3の翼端3cとの間にクリアランスを有して相対向した空気ガイド部8aを有し、
前記空気流通路9は、前記軸流ファン3から吐出された当該軸流ファン3の軸方向に向かう空気を、径方向に向けて変化させる形状としたことを特徴とするファン式害虫防除装置である。
【0013】
本発明においては、前記空気流通路9は外周側ガイド面9aと、この外周側ガイド面9aと径方向に対峙し軸流ファン3のボス3aから排気口7まで連続した内周側ガイド面9bを有し、
前記外周側ガイド面9aと内周側ガイド面9bの少なくともいずれか一方は空気が乱れることなくスムーズに流れる形状であることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、軸流ファン3から吐出された軸方向に向かう空気は、外周側ガイド面9a、内周側ガイド面9bの少なくとも一方にガイドされてスムーズに流れ、その流通抵抗が著しく小さいので、より多量の空気を吐き出すことができ、害虫防除性能がより優れたものとなる。
【0015】
本発明においては、環状壁8の内周面における空気ガイド部8aよりも吸込側に、吸気口6に向けて順次大径となる漏斗状の空気吸込み部10を形成することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、流入側のケーシング境界層の渦発生による損失が減るため、環状壁8の内周面及び軸流ファン3への空気のスムーズな受け渡しが可能となり、損失低減によりファン効率が高まるので、軸流ファン3の吸い込み効率が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吸気口6が軸流ファン3の軸方向に向けて開口し、排気口7は軸流ファン3の径方向に向けて開口しているので、空気吸い込み方向と害虫防除成分を含有した空気の排出方向が異なり、また全周方向への排出が可能であるため、使用者の腰、手などの身につけて使用するファン式害虫防除装置は勿論のこと、屋内、屋外の様々な場面で使用するファン式害虫防除装置として好適である。
【0018】
また、前記環状壁8の内周面、特に空気ガイド部8aによって軸流ファン3による軸方向の空気流れが助長され、吸い込みされた空気が翼端から漏れたり四方へ拡散することがないので、軸流ファン3で多量の空気を流通させることができる。また、このクリアランスの低減は、軸流ファン翼端からの上流側への漏れ流れ、漏れ渦発生の低減をもたらし、より効率的に多量の空気を流通させることができる。
したがって、薬剤担持体2が担持している害虫防除成分に多量の空気が触れ、その薬剤担持体2を流通した空気中に含有される害虫防除成分の量が多く、害虫防除性能が優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図1、図2、図3、図4に基づいて説明する。
装置本体1と、この装置本体1に設けた薬剤担持体2、軸流ファン3、モータ4と、電源部5でファン式害虫防除装置を構成している。前記薬剤担持体2は軸流ファン3の上流側(吸込側)に位置している。
前記装置本体1は吸気口6と排気口7を備えている。
前記吸気口6は、軸流ファン3の上流側で軸方向に向けて開口し、軸流ファン3を回転することで、当該軸流ファン3の軸方向から気中の空気を矢印aで示すように吸い込む。
前記排気口7は、軸流ファン3の径方向に向けて開口していると共に、軸流ファン3よりも下流寄りに位置し、軸流ファン3を回転することで、当該軸流ファン3の径方向に向けて空気を矢印bで示すように排出する。
前記薬剤担持体2は害虫防除成分を担持している。
前記軸流ファン3はボス3aに複数の翼3bを放射状に設けたものである。そのボス3aがモータ4の回転軸4aに連結され、そのモータ4を駆動することで軸流ファン3が回転する。
【0020】
前記装置本体1には、前記軸流ファン3の軸方向の空気流れをガイドする環状壁8が設けてある。
この環状壁8は軸流ファン3の翼端3c(各翼3bの先端面)の周囲を囲み、軸流ファン3の回転による軸方向の空気流れを助長する内周面を有している。
この内周面は、略円形状で軸流ファン3の翼端3cとの間にはクリアランス(隙間)が周方向に連続して有する空気ガイド部8aを備えている。
前記環状壁8の内周面、特に空気ガイド部8aによって軸流ファン3による軸方向の空気流れが助長され、吸い込みされた空気が翼端から漏れたり、四方へ拡散することがないので、軸流ファン3で多量の空気を流通させることができる。
この環状壁8がない場合、例えば前述した従来のように軸流ファン3の翼端と対向して径方向の排気口が形成されている場合には、空気流れは軸流ファン3の翼端からの漏れ、四方への拡散を伴い、流れる空気の量が減少する。
【0021】
前記軸流ファン3の下流側(つまり、吐出側)には空気流通路9が設けてある。
この空気流通路9は、軸流ファン3の吐出部3d(翼3bの下端面)と排気口7を連通し、軸流ファン3から吐出した空気を前記排気口7に流通するための導風路の役目を果たすものである。
そして、前記軸流ファン3から吐出した空気は、当該軸流ファン3の軸方向に向かい、前記排気口7は軸流ファン3の径方向に向いているので、前記空気流通路9は軸方向に向けて流入した空気を径方向に向かう流れに変化させる形状としてある。
【0022】
このようであるから、モータ4を駆動して軸流ファン3を回転することで、吸気口6から空気が矢印aで示すように吸い込まれ、その空気は薬剤担持体2を流通し、その薬剤担持体2を流通した空気は害虫防除成分を含有する。
この害虫防除成分を含有した空気は、環状壁8の内周面(空気ガイド部8a)によって軸流ファン3の軸方向に向かう空気流れとして空気流通路9に流入し、その空気流通路9に沿って流通することで軸流ファン3の径方向に向かう流れに変化し、排気口7から排出される。
【0023】
したがって、空気の吸い込み方向(吸気口6の開口方向)と害虫防除成分を含有した空気の排出方向(排気口7の開口方向)が異なり、また全周方向への排出が可能であるため、使用者の腰、手などの身につけて使用するファン式害虫防除装置としては勿論のこと、屋内、屋外の様々な場面で使用するファン式害虫防除装置として好適である。
【0024】
また、環状壁8の内周面、特に空気ガイド部8aで軸流ファン3による軸方向の空気流れが助長され、吸い込みされた空気が翼端から漏れたり四方へ拡散することがないので、軸流ファン3により多量の空気が流通する。
したがって、薬剤担持体2が担持している害虫防除成分に多量の空気が触れ、その薬剤担持体2を流通した空気中に含有される害虫防除成分の量が多く、害虫防除性能が優れたものである。
【0025】
次に、各部の好ましい実施の形態を説明する。
前記空気流通路9は、環状壁8の内周面における吐出側に設けた外周側ガイド面9a、例えば前記空気ガイド部8aの吐出側端部8b(軸流ファン3の吐出部3dと対向した下流部分)と前記排気口7と連続する外周側ガイド面9aと、この外周側ガイド面9aと径方向に対向し軸流ファン3のボス3aと前記排気口7を連続する内周側ガイド面9bを有している。
この外周側ガイド面9a、内周側ガイド面9bは、軸流ファン3から吐出された空気(軸流ファン3の軸方向に向かう空気)を、軸流ファン3の径方向に向けて変化すると共に、その空気流れが乱れの少ないスムーズに流れる形状としてある。
例えば、略円弧形状又は、単一もしくは複数の直線からなるテーパ形状、またはテーパ形状と略円弧形状を組み合わせた形状、好ましくは、流線形状である。
すなわち、前記軸流ファン3によって軸方向に流れている空気を半径方向に転向させる場合、下流側端面への衝突損失や境界層の流れによる損失が発生する。これをできる限る少なくするために、流出方向に沿った方向へ向け、テーパや円弧にて空気を導いてやることで、衝突損失や渦発生による損失を低減することができる。
また、外周側ガイド面9aは、半径方向への空気の広がりを司ることでディフューザとしての役目もあり、渦損失のない圧力回復をさせる(つまり、この圧力で空気を遠くまで飛ばす)効果が大きい。
【0026】
この実施の形態では、環状壁8の内周面における空気ガイド部8aよりも吐出側(空気ガイド部8aの吐出側端部8bよりも吐出側に突出した部分)に前記外周側ガイド面9aを形成している。
つまり、環状壁8の内周面は、空気ガイド部8aと、この空気ガイド部8aの吐出側に外周面ガイド面9aを有している。
【0027】
前記環状壁8の内周面における吸込側に空気吸込み部10が形成してある。例えば、前記空気ガイド部8aの吸込側端部8cよりも吸込側に空気吸込み部10が形成してある。
この空気吸込み部10は、吸気口6に向けて順次大径となる漏斗状で、吸込口6から空気がスムーズに吸い込みされるようにしてある。
【0028】
具体的には、内周面の空気ガイド部8aの径よりも吸気口6の径を大きくし、環状壁8の内周面における空気ガイド部8aの吸込側端部8cよりも吸気口6側に突出した部分の内周面を吸気口6に向けてテーパ形状に拡径して漏斗状の空気吸込み部10としてある。
この空気吸込み部10は略円弧形状でも良い。
すなわち、前記空気吸込み部10のテーパや円弧による流入角を適切に設定することで流入側のケーシング境界層の渦発生による損失が減るため、環状壁8の内周面及び軸流ファン3への空気のスムーズな受け渡しが可能となり、損失低減によりファン効率が高まるので、軸流ファン3の吸い込み効率が向上する。
【0029】
前述のように、環状室8の内周面は、空気ガイド部8aと、吐出側の外周側ガイド面9aと、吸込側の空気吸込み部10を備え、その外周側ガイド面9aをテーパ部9a−1を有する形状、空気吸込み部10をテーパ形状としているが、これに限ることはなく、図5(a)に示すように空気ガイド部8aと、テーパ部9a−1を有した外周側ガイド面9aを有する形状、図5(b)に示すように空気ガイド部8aと外周側ガイド面9aと空気吸込み部10を有する形状、図5(c)に示すように空気ガイド部8aが環状壁8の全長と同一長さの形状としても良い。
また、前述の環状壁8は空気ガイド部8a、外周側ガイド面9a、空気吸込み部10を有した一体形状としてあるが、前記環状壁8は空気ガイド部8a、外周側ガイド面9a、空気吸込み部10をそれぞれ別部材で形成しても良い。
【0030】
図6に示すように、軸流ファン3の翼端3cと環状壁8の空気ガイド部8aとの間が最も近接するクリアランス寸法cは、軸流ファン3の外径D1の3%以下が好ましい。このクリアランスの低減は、軸流ファン翼端側からの上流側への漏れ流れ、漏れ渦発生の低減をもたらし、本来は限りなく零に近い方が良いが、ファン軸の振れや環状面の成形誤差、あるいは組み立て誤差などの原因で、最小でも軸流ファン3の外径D1の0.5〜1%程度である。
また、図6に示すように、空気流通路9における排気口側部分9cの軸流ファン軸方向の寸法(高さ)H1は、軸流ファン3の外径D1の5%〜40%であることが好ましい。
【0031】
また、図6に示すように、前記環状壁8の軸方向の長さL1は、軸流ファン3の翼端3cの軸方向長さL2(ファン高さ)の0.5〜1.7倍であることが好ましい。
すなわち、環状壁8は、その空気ガイド部8aの軸方向の長さの最小の値は軸流ファン3の軸方向の長さL2の1/2で、この空気ガイド部8aは軸流ファン3の軸方向中央部(L2/2)と吐出部との間(軸方向半分の吐出側部分)で翼端3cと対向することが好ましい。
そして、内周面が空気ガイド部8aと外周側ガイド部9aと空気吸込み部10を有する形状の時は、その環状壁8の最大長さを軸流ファン3の長さL2の1.7倍とする。
要するに、空気ガイド部8aは、少なくとも軸流ファン3の軸方向半分の吐出側部分の翼端3cと対向していれば良い。
【0032】
前記軸流ファン3のボス3aは周壁11と上板12で有底の下向きに筒形状で、その周壁11に翼3bが設けてあると共に、上板12にモータ4の回転軸4aが連結されている。
前記周壁11は上流から下流側に向けて順次大径となるテーパ形状で、図6に示すように、そのテーパ角度θは0.5°〜30°が好ましい。ボスに軸方向流入側に広がるテーパを付けることで軸に直角な断面積を縮小し、軸流ファン3内での中心流線上における絶対速度(流体の流速)を加速させることができる。これにより、下流側で運動エネルギーの圧力回復ができればファン効率を増加させることが可能となる。特に、本願では軸流方向から半径方向へ空気の流れを変化させる必要があるので、ボステーパを付けることで渦損失を低減しながらこの変化をスムーズに行えるメリットは大きい。
前記周壁11と上板12を連続するコーナー部分13は滑らかな形状、例えば円弧形状、テーパ形状、又は円弧形状とテーパ形状を組み合わせた形状とすることが好ましい。
【0033】
次に、図示のファン式害虫防除装置を詳細に説明する。
前記装置本体1は、上部本体20と中間部本体30と下部本体40を備えている。
前記上部本体20は内側筒体21に外側筒体22を着脱自在に取付け、その内側筒体21の先端面に薬剤担持体2を設け、外側筒体22で保持している。
前記内側筒体21が前記環状壁8を構成している。
前記外側筒体22に前記吸気口6と排気口7が形成してある。
前記中間部本体30はモータ取付穴31を有する。この中間部本体30と内側筒体21は周方向に間隔を置いた複数の連結部32で上下方向に離隔して連結され、両者の間に前記軸流ファン3の翼3bが位置していると共に、前記空気流通路9を構成している。
前記外側筒体22の下端開口は中間部本体30の連結部32に嵌まり合い、その外側筒体22の下端寄り部分を切欠きして排気口7としてある。
【0034】
前記連結部32は空気の流れに触れるため、その形状は水平断面形状で、水滴形、翼形等、空気の流れを阻害しない形状にして、案内翼の役割を持たせても良い。
また、前記案内翼は連結部32とは別に設けても良い。例えば内周側ガイド面9bに設けることで、ファン効率が高まる。
さらに、連結部32の設置間隔は、指などが外部からファンをさわり怪我をしないような間隔で設定すると良い。
【0035】
前記薬剤担持体2は、害虫防除成分を担持したシート23を保持枠24で保持したものとしてある。
これに限ることはなく、空気が流通する容器内に害虫防除成分を担持した粒状物を多数収容したもの等でも良い。
【0036】
前記下部本体40は、本体41とカバー42を備え、その本体41には電池収容部43が形成され、電池44が収容されてカバー42で脱落しないように保持している。
前記下部本体40の本体41には一対のバンド取付部45が設けてあり、そのバンド取付部45に図示しないバンドを取付けるようにしてある。
この下部本体40の本体41が中間部本体30にビス等で固着して取付けてある。
【0037】
このようであるから、図1〜図3に示すファン式害虫防除装置はバンドを用いて使用者の手や胴に取付けて使用することができる。
【0038】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
前述の実施の形態では排気口7から排出される空気の方向が90度としてあるが、これに限ることはなく任意の角度の方向に排出することが可能である。
例えば、図7(a)に示す空気流通路9の形状として直角よりも小さい角度(80度)の方向に排出する。
図7(b)に示す空気流通路9の形状として直角よりも大きな角度(120度)の方向の排出する。
【0039】
この排気口7から空気を排出する方向は、そのファン式害虫防除装置の使用目的、場所によって設定することができる。
例えば、使用者の腰につけて使用する場合には、吸気口6が横向き(水平)となるから、80度〜100度の範囲で使用者に沿った方向に排出するようにする。
また、天井に吊り下げて使用する場合には、吸気口6が縦向き(垂直)となるから、100度〜70度の範囲で下向きに排出する。
また、床面に設置して使用する場合には、100度から160度の範囲で上向きに排出する。
【0040】
前記空気流通路9の形状は、図8(a)に示すように内周側ガイド面9bをスムーズに空気が流れる形状とし、外周側ガイド面9aは直線形状としても良い。
また、図8(b)に示すように外周側ガイド面9aをスムーズに空気が流れる形状とし、内周側ガイド面9bは鉤形状としても良い。
要するに、空気流通路9に空気が乱れが少なくスムーズに流れるようにするには、外周側ガイド面9a、内周側ガイド面9bを空気がスムーズに流れる形状とすることが最も好ましいが、どちらか一方のガイド面のみを空気がスムーズに流れる形状としても良い。
【0041】
また、前述のようにした場合に漏斗状の空気吸込み部10を形成すれば、空気の吸い込み効率がより一層向上するが、図9に示すように空気流通路9の外周側ガイド面9a、内周側ガイド面9bを直線形状、鉤形状とした場合でも、漏斗状の空気吸込み部10を形成することで空気の吸い込み効率を向上できる。
【0042】
前述の実施の形態では薬剤担持体2を吸気口6側に設けたが、図10、図11に示すように排気口7側に設けても良い。
この実施の形態の薬剤担持体2は、リング形状のハニカム構造体25に薬剤を担持し、そのハニカム構造体25の上下面にプレート26をそれぞれ固着したリング形状で、空気流通路9の排気口側部分9cに取付けてある。
また、吸気口6側と排気口7側に薬剤担持体2をそれぞれ設けても良い。
【0043】
要するに、薬剤担持体2は、吸気口6と軸流ファン3との間、又は排気口7と軸流ファン3との少なくともいずれか一方に設ければ良い。
【0044】
前述の実施の形態では、空気流通路9の排気口側部分9cと排気口7を別としたが、その排気口側部分9cから空気を直接排出し、その排気口側部分9cと排気口7を同一としても良い。
【0045】
次に、本発明に係るファン式害虫防除装置の試験例を説明する。
軸流ファン3については、表1に示すように、ファン高さL2、ボス径D2、ボステーパ角度θの異なる3種類を準備した
【0046】
【表1】
【0047】
環状壁8については、表2に示すように、その軸方向の長さL1、クリアランス寸法c、空気吸込み部10のテーパの大きさ、外周側ガイド面9aのテーパの大きさの異なる12種類を準備した。
【0048】
【表2】
【0049】
下部構造については、表3に示すように、排出口側部分高さH1、内周側ガイド面の形状の異なる4種類を準備した。
【0050】
【表3】
【0051】
なお、表2、表3における型番STD(スタンダード)とは比較対照装置である。
この比較対照装置は、前述した特許文献2に記載されたと同様のファン式害虫防除装置である。
例えば、図12に示すように、本発明に係るファン式害虫防除装置における軸流ファン3の翼3bと対峙した部分に排気口7を形成し、軸流ファン3の回転によって吸気口6から吸い込んだ空気を、その軸流ファン3の翼3bと対峙した部分から径方向に排出するファン式害虫防除装置を比較対照装置とした。
【0052】
そして、表4に示すように、軸流ファンと下部構造をそれぞれ型番1とし、環状壁を型番1〜12と変えてNO.1〜NO.12の試験装置とした。
【0053】
【表4】
【0054】
同様に、表5に示すように、軸流ファンと環状壁を型番1とし、下部構造を変えてNO.13〜NO.15の試験装置とした。
【0055】
【表5】
【0056】
さらに、表6に示すように、環状壁と下部構造を型番1とし、軸流ファンを変えてNO.16,NO.17の試験装置とした。
【0057】
【表6】
【0058】
前述の試験装置と比較対照装置における軸流ファンの外径D1は55mm、翼枚数は7枚、薬剤担持体2の径は64mm、モータの印加電圧は3.0V、軸流ファンの回転数は1450rpmと共通とした。
【0059】
前述の試験装置と比較対照装置を用いて次のように試験した。
[供試虫]イエバエ(Musca domestica)雌成虫羽化後3〜5日目伝研系。
[供試薬剤]メトフルトリン(住友化学工業株式会社)を含浸した直径64mmの不織布フィルター。
[供試方法]図13に示すような試験機にて試験を行った。
試験装置、比較対象装置Aを内径110mmの吸気口50及び排気口51のある縦520mm、横410mm、高さ340mmのボックス52内に設置し、排気口51を内径200mmのシリンダー53の上手に接続した上で、シリンダー53の下手からファンで吸引することにより10L/secの強制的な空気の流れを起こし、シリンダー53上手(ボックス排気口側)より距離800mmの距離位置(シリンダー下手より50mm)に供試虫10匹を入れた両面を16メッシュのナイロン網54で覆ったガラスリング55(外径90mm、内径80mm、長さ60mm)を高さ50mmの架台56に載せ設置し、各試験器具装置、比較対象装置Aのモータに通電した。
通電開始からの時間経過に伴うノックダウン虫数を調査し、BlissのProbit法によりKT50値を算出した。得られたKT50値による推定薬剤蒸散量により効力を比較した。
【0060】
その結果を、表4、表5、表6に示す。
【0061】
表4の試験装置NO.1と比較対照装置の効力比から、環状壁を設けることで害虫防除性能が優れたものとなることが判明した。
【0062】
表4の試験装置NO.1、NO.2、NO.9、NO.10の結果から、クリアランス寸法Cは1.6mm以上であると効力比が悪くなるので、1.6mm以下、つまり軸流ファンの外径R1の3%以下が好ましいことが判る。
【0063】
表4の試験装置NO.1、NO.3、NO.4の結果から、外周側ガイド面9aのテーパが大であることが好ましいことが判る。
【0064】
表4の試験装置NO.1、NO.5、NO.6の結果から、空気吸込み部10のテーパが大であることが好ましいことが判る。
【0065】
表4の試験装置NO.1、NO.7、NO.11,NO12の結果から、環状壁8の軸方向の長さL1は、軸流ファン3の軸方向の長さL2の0.8倍〜1.7倍が好ましいことが判る。
【0066】
表5の結果から、内周側ガイド面9bの形状は、テーパ形状よりも略円弧形状(R形状)の方が好ましいことが判る。
【0067】
本発明において使用される害虫防除成分としては、殺ダニ剤、害虫あるいは害獣忌避剤、殺虫剤または害虫の成長制御剤、吸血行動阻止剤などで、揮散性のものが用いられる。
そして、殺虫を目的として使用する場合、従来より用いられている各種揮散性殺虫剤等を挙げることができる。一般に安全性が高いことからピレスロイド系殺虫剤が好適に用いられる。
さらに、微量で効力を発揮する高活性のメトフルトリン、トランスフルトリン、エムペントリン、テラレスリンが薬剤含浸体を薄く、また小さくできることからより好ましい。
【0068】
本発明に使用する害虫防除成分を含浸するシート25としては、通気性の大きい紙、布、織物、不織布やネットなどが例示される。また、載置状態の安定性のために、シート25を保持する保持材26の材質としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアセタール、ナイロン、アクリル、ABS、紙、AS、金属等が挙げられる。さらに携帯性を考えると、その厚みを2〜5mm、面積を700〜3000mm2と薄く小さくすることが好ましい。
【0069】
特に、不織布の目付け10〜100g/m2のものが好ましく、20〜50g/m2のものが更に好ましい。目付けが100g/m2を超えると、空気抵抗が大きくなり過ぎ、ファンによる風がシートを通過できなくなり、害虫防除成分を拡散することができなくなる。逆に目付けが10g/m2より下になると、シートに保持させることができる薬剤量が減り製造性が悪くなり、また薬量不足になる恐れがある。
【0070】
軸流ファンの駆動電源として用いる電池としては、アルカリ単5電池、アルカリ単4電池、アルカリ単3電池、アルカリ単2電池、アルカリ単1電池、マンガン単5電池、マンガン単4電池、マンガン単3電池、マンガン単2電池、マンガン単1電池、角電池、リチウム電池、リチウムボタン電池等の電池を単一で、もしくは複数を直列および並列に組み合わせても良く、また充電式の2次電池を使用しても良く、さらには、電池ではなくACアダプターなどを用いて家庭用電源(AC100V)で使用できるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態を示すファン式害虫防除装置の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】軸流ファンの平面図である。
【図5】環状壁の異なる形状の説明図である。
【図6】各部の寸法の説明図である。
【図7】空気の排出方向を異なる方向とした断面図である。
【図8】空気流通路の異なる形状とした断面図である。
【図9】空気吸込み部のみを設けた実施の形態の断面図である。
【図10】薬剤担持体を排気口側に設けた実施の形態の断面図である。
【図11】図9のC−C断面図である。
【図12】比較対照装置の断面図である。
【図13】試験機の説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1…装置本体、2…薬剤担持体、3…軸流ファン、3a…ボス、3b…翼、3c…翼端、4…モータ、5…電源、6…吸気口、7…排気口、8…環状壁、8a…空気ガイド部、9…空気流通路、9a…外周側ガイド面、9b…内周側ガイド面、10…空気吸込み部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸流ファン3を駆動することで吸気口6から空気を吸い込み、その空気を害虫防除成分を担持した薬剤担持体2を流通させることで害虫防除成分を含有した空気とし、その空気を排気口7から排出して害虫防除成分を気中に放散するファン式害虫防除装置であって、
前記吸気口6は軸流ファン3よりも上流側において当該軸流ファン3の軸方向に向けて開口し、
前記排気口7は軸流ファン3よりも下流側において当該軸流ファン3の径方向に向けて開口し、
前記軸流ファン3の空気流れをガイドする環状壁8と、前記軸流ファン3の吐出部3dと排気口7を連通する空気流通路9をそれぞれ設け、
前記環状壁8は、前記軸流ファン3の翼端3cと相対向した内周面を有し、
前記内周面は、略円形状で軸流ファン3の翼端3cとの間にクリアランスを有して相対向した空気ガイド部8aを有し、
前記空気流通路9は、前記軸流ファン3から吐出された当該軸流ファン3の軸方向に向かう空気を、径方向に向けて変化させる形状としたことを特徴とするファン式害虫防除装置。
【請求項2】
前記空気流通路9は、外周側ガイド面9aと、この外周側ガイド面9aと径方向に対峙し軸流ファン3のボス3aから排気口7まで連続した内周側ガイド面9bを有し、
前記外周側ガイド面9aと内周側ガイド面9bの少なくともいずれか一方は空気が乱れることなくスムーズに流れる形状である請求項1記載のファン式害虫防除装置。
【請求項3】
前記環状壁8の内周面における空気ガイド部8aよりも吸込側に、吸気口6に向けて順次大径となる漏斗状の空気吸込み部10を形成した請求項1又2記載のファン式害虫防除装置。
【請求項4】
前記害虫防除成分を担持した薬剤担持体2は、吸気口6と軸流ファン3の間、または軸流ファン3と排気口7の間の少なくともいずれか一方に設けられた請求項1〜3いずれか1項に記載のファン式害虫防除装置。
【請求項5】
前記軸流ファン3の翼端3cと環状壁8の内周面における空気ガイド部8aとの間のクリアランス寸法cは、当該軸流ファン3の外径D1の3%以下である請求項1〜4いずれか1項に記載のファン式害虫防除装置。
【請求項6】
前記環状壁8の軸方向の長さL1は、軸流ファン3の軸方向の長さL2の0.5〜1.7倍である請求項1〜5いずれか1項に記載のファン式害虫防除装置。
【請求項7】
前記空気流通路9における排気口側部分9cの軸流ファン軸方向の寸法H1は、軸流ファン3の外径D1の5%〜40%である請求項1〜6いずれか1項に記載のファン式害虫防除装置。
【請求項1】
軸流ファン3を駆動することで吸気口6から空気を吸い込み、その空気を害虫防除成分を担持した薬剤担持体2を流通させることで害虫防除成分を含有した空気とし、その空気を排気口7から排出して害虫防除成分を気中に放散するファン式害虫防除装置であって、
前記吸気口6は軸流ファン3よりも上流側において当該軸流ファン3の軸方向に向けて開口し、
前記排気口7は軸流ファン3よりも下流側において当該軸流ファン3の径方向に向けて開口し、
前記軸流ファン3の空気流れをガイドする環状壁8と、前記軸流ファン3の吐出部3dと排気口7を連通する空気流通路9をそれぞれ設け、
前記環状壁8は、前記軸流ファン3の翼端3cと相対向した内周面を有し、
前記内周面は、略円形状で軸流ファン3の翼端3cとの間にクリアランスを有して相対向した空気ガイド部8aを有し、
前記空気流通路9は、前記軸流ファン3から吐出された当該軸流ファン3の軸方向に向かう空気を、径方向に向けて変化させる形状としたことを特徴とするファン式害虫防除装置。
【請求項2】
前記空気流通路9は、外周側ガイド面9aと、この外周側ガイド面9aと径方向に対峙し軸流ファン3のボス3aから排気口7まで連続した内周側ガイド面9bを有し、
前記外周側ガイド面9aと内周側ガイド面9bの少なくともいずれか一方は空気が乱れることなくスムーズに流れる形状である請求項1記載のファン式害虫防除装置。
【請求項3】
前記環状壁8の内周面における空気ガイド部8aよりも吸込側に、吸気口6に向けて順次大径となる漏斗状の空気吸込み部10を形成した請求項1又2記載のファン式害虫防除装置。
【請求項4】
前記害虫防除成分を担持した薬剤担持体2は、吸気口6と軸流ファン3の間、または軸流ファン3と排気口7の間の少なくともいずれか一方に設けられた請求項1〜3いずれか1項に記載のファン式害虫防除装置。
【請求項5】
前記軸流ファン3の翼端3cと環状壁8の内周面における空気ガイド部8aとの間のクリアランス寸法cは、当該軸流ファン3の外径D1の3%以下である請求項1〜4いずれか1項に記載のファン式害虫防除装置。
【請求項6】
前記環状壁8の軸方向の長さL1は、軸流ファン3の軸方向の長さL2の0.5〜1.7倍である請求項1〜5いずれか1項に記載のファン式害虫防除装置。
【請求項7】
前記空気流通路9における排気口側部分9cの軸流ファン軸方向の寸法H1は、軸流ファン3の外径D1の5%〜40%である請求項1〜6いずれか1項に記載のファン式害虫防除装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−259467(P2008−259467A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105942(P2007−105942)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
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