説明

フィターゼ活性を有するポリペプチド及びそれをコードするポリヌクレオチド

【課題】本発明は、シトロバクター・ブラキ由来のフィターゼ及び関連するフィターゼに関する。
【解決手段】本発明のフィターゼは、酸性ヒスチジンホスファターゼに属し、酸安定性であり、動物飼料において卓越した性能のものであり、基質フィテートに対して高い特異性のものであり、そしてたぶん、高い比活性のものである。本発明はまた、フィターゼのその対応するDNA、フィターゼの組換え及び野生型生成、及びそれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景:
発明の分野:
本発明は、フィターゼ活性を有する単離されたポリペプチド、及び前記ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。前記ポリペプチドは、シトラバクターゼ・ブラアキ(Citrobacter braakii)に関連し、このアミノ酸配列は、配列番号4として付随する配列の列挙に示されている。本発明はまた、前記ポリヌクレオチドを含んで成る核酸構造体、ベクター及び宿主細胞、及び前記ポリペプチドの生成方法及び特に動物飼料内への前記ポリペプチドの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明:
フィターゼは、動物、例えばヒトのための食品にそれらを添加するために好都合であるので、良く知られている酵素である。フィターゼは、多くの菌類及び細菌株を包含する非常に多くの源から単離されて来た。
E. コリ及び他のグラム陰性細菌フィターゼの酸性ヒスチジンホスファターゼappAは、高い比活性を有することが知られている。
【0003】
細胞内フィターゼのシトラバクター・ブラアキにより生成が、Kim など., Biotechnology Letters 25: 1231-1234, 2003により報告されている。KR-2004-A-045267号 and WO- 2004/085638号は、KCCM 10427として寄託されている、シクロバクター・ブラアキYH-15からのフィターゼのアミノ酸配列を、配列番号7として開示する。そのアミノ酸配列は、本明細書において配列番号5として包含される。WO−2004/085638号は、本出願の最初の優先日の後、2004年7月10日に公開されている。
【0004】
フィターゼ活性を有する他のポリペプチド及び前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを供給することは、本発明の目的である。本発明のポリペプチドは好ましくは、補正され、より好ましくは改良された性質、例えば異なった基質特異性、高い比活性、高められた安定性(例えば、酸−安定性、熱−安定性及び/又はプロテアーゼ安定性、特にペプシン安定性)、補正されたpH最適性(例えば、低いか又は高いpH最適性)、及び/又は動物の飼料における改良された性質(例えば、フィターゼの改良された開放性及び/又は分解)のものである。
【発明の概要】
【0005】
発明の要約:
本発明は、(a)(i)配列番号2のアミノ酸1〜411、及び/又は(ii)配列番号2の成熟ポリペプチドと、少なくとも98.6%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチド;(b)(i)配列番号2のアミノ酸1〜411、及び/又は(ii)配列番号2の成熟ポリペプチド部分の1又は複数のアミノ酸の欠失、挿入及び/又は保存性置換を含んで成る変異体;及び(c)(i)配列番号2のアミノ酸1〜411、及び/又は(ii)配列番号2の成熟ポリペプチド部分のフラグメントから成る群から選択された、フィターゼ活性を有するポリペプチドに関する。
【0006】
本発明はまた、(a)配列番号2のアミノ酸1〜411と、少なくとも98.6%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び(b)配列番号1のヌクレオチド67〜1299と、少なくとも98.3%の同一性を有するポリヌクレオチドから成る群から選択された、フィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドにも関する。
【0007】
本発明はまた、ポリヌクレオチドを含んで成る、核酸構造体、組換え発現ベクター及び組換え宿主細胞にも関する。
本発明はまた、フィターゼ活性を有するポリペプチドの生成方法にも関し、ここで前記方法は、(a)前記ポリペプチドの生成の助けと成る条件下で、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んで成る核酸構造体を含んで成る組換え宿主細胞を培養し;そして(b)前記ポリペプチドを回収することを含んで成る。
【0008】
本発明はまた、動物飼料への本発明のポリペプチドの使用方法、及び前記ポリペプチドを含む動物飼料及び動物飼料添加物にも関する。
本発明はさらに、(i)配列番号1のヌクレオチド1〜66、又は(ii)配列番号3のヌクレオチド1〜66から成るシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結されるタンパク質をコードする遺伝子(前記ヌクレオチド配列に対して外来性である)を含んで成る核酸構造体に関する。
【0009】
定義:
フィターゼ活性:
本発明においては、フィターゼ活性(フィターゼ)を有するポリペプチドは、(1)myo−イノシトール及び/又は(2)その一、二、三、四及び/又は五リン酸、及び(3)の無機リン酸へのフィテート(myo−イノシトール六リン酸)の加水分解を触媒する酵素である。
【0010】
インターネット(http://www.expasy.ch/enzyme/)でのENZYMEサイトは、酵素の命名法に関する情報の貯蔵所である。それは主に、Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology (IUB-MB)の推薦に基づかれており、そしてそれは、EC (Enzyme Commission) 番号が提供されている、個々のタイプの特徴づけられた酵素を記載する(Bairoch A. The ENZYME database, 2000, Nucleic Acids Res 28: 304-305)。また、ハンドブック(Enzyme Nomenclature from NC-IUBMB, 1992)も参照のこと。
【0011】
ENZYMEサイトによれば、2種の異なった型のフィターゼが知られている:いわゆる3−フィターゼ(myo−イノシトール六リン酸3−ホスホヒドラーゼ、EC3.1.3.8)及びいわゆる6−フィターゼ(myo−イノシトール六リン酸6−ホスホヒドラーゼ、EC3.1.3.26)及び5−フィターゼ(EC 3.1.3.72)。本発明に関しては、両タイプが、フィターゼの定義に包含される。
【0012】
特定の態様においては、本発明のフィターゼは、E. コリpH2.5酸性ホスファターゼ(遺伝子appA)及び菌類フィターゼ、例えばアスペルギラス・アワモリ(Aspergillus awamori)フィターゼA及びB(EC:3.1.3.8)(遺伝子phyA及びphyB)を包含する、酸性ヒスチジンホスファターゼのファミリーに属する。ヒスチジン酸性ホスファターゼは配列類似性の2つの領域を共有し、個々は保存されたヒスチジン残基近くに中心がある。それらの2つのヒスチジンは、酵素の触媒の機構に関与すると思われる。第1のヒスチジンはN−末端部分に位置し、そしてリン−ヒスチジン中間体を形成し、そして第2のヒスチジンはC−末端部分に位置し、そしてたぶん、陽子ドナーとして作用する。
【0013】
さらなる特定の態様においては、本発明のフィターゼは、保存された活性部位モチーフ、すなわちR-H-G-X-R-X-P(ここで、Xはいずれかのアミノ酸を示す(配列番号2及び4のアミノ酸16〜22を参照のこと))を有する。
【0014】
本発明に関しては、フィターゼ活性は、FYTの単位で決定され、1FYTは次の条件下で、1分当たり1μモルの無機オルトホスフェートを遊離する酵素の量である:pH5.5; 温度37℃;0.0050モル/lの濃度での基質、フィチン酸ナトリウム(C6H6O24P6Na12)。適切なフィターゼアッセイは、WO00/26569号の例1に記載されるFYT及びFTUアッセイである。FTUは飼料及びプレミックスにおけるフィターゼ活性を決定するためである。フィターゼ活性はまた、本明細書の例4、7及び8のフィターゼアッセイを用いて決定される。
【0015】
本発明のポリペプチドのpH−最適性は、予定された濃度及び固定されたインキュベーション時間における基質を用いて、種々のpH値でフィターゼをインキュベートすることにより決定される。次に、pH−最適性は、フィターゼ活性対pHのグラフ表示から決定される。特定の態様においては、FYTアッセイが使用され、すなわち基質5mMのフィチン酸ナトリウムであり、反応温度は37℃であり、そして活性は、適切な緩衝液、例えばHCl又はNaOHによりpH値2.0, 2.5, 3.0, 3.5, 4.0, 5.0, 6.0, 7.0, 8.0, 9.0, 10.0, 11.0, 及び 12.0に調節された、100mMの琥珀酸、100mMのHEPES、100mMのCHES、100mMのCABS、1mMのCaCl2、150mMのKCl、0.01%の%T−100を用いて、種々のpH値、例えばpH2〜12で、FYT単離において決定される。
【0016】
もう1つの特定の態様においては、例4,7及び8のいずれか1つのフィターゼアッセイが使用され、すなわち基質は、所望するpHの緩衝液(例えば、上記に言及されるそれら)に溶解される、0.5mM、好ましくは5mMのフィチン酸ナトリウムであり、そして可溶性ホスフェートは、モリデート/鉄による錯化及び750nmでの光学密度の測定により、又はモリブデート/バナデート及び405nmでの吸光度の測定を伴って、例7及び8のアッセイを用いて決定される。
【0017】
ブラインド試験(例4の試験):20μlのサンプル、1000μlの基質及び120μlの着色試薬が混合され、37℃で5分間インキュベートされ、そしてODBlindが750nmで測定される。サンプル:20μlのサンプル、100μlの基質が混合され、37℃で30分間インキュベートされ、120μの着色試薬が添加され、37℃で5分間インキュベートされ、そしてODSampleが750nmで測定される。フィターゼ活性は、OD=ODSample−ODBlaindとして測定される。比較的低いpH−最適性は、pH5.0以下、例えばpH4.5, 4.0, 3.5, 3.0, 2.5又は2.0以下のpH−最適性を意味する。比較的高いpH−最適性は、pH5.0以上、例えばpH5.5, 6.0, 6.5, 7.0, 7.5, 8.0, 8.5又は9.0以上のpH−最適性を意味する。
【0018】
単離されたポリペプチド:用語“単離されたポリペプチド”とは、本明細素において使用される場合、SDS−PAGEにより決定される場合、少なくとも20%の純度、好ましくは40%の純度、より好ましくは少なくとも60%の純度、さらにより好ましくは少なくとも80%の純度、最も好ましくは少なくとも90%の純度、及びさらなる最も好ましくは少なくとも95%の純度であるポリペプチドを言及する。
【0019】
実質的に純粋なポリペプチド:用語“実質的に純粋なポリペプチド”とは、本明細書において、多くとも10%、好ましくは多くとも8%、より好ましくは多くとも6%、より好ましくは多くとも5%、より好ましくは多くとも4%、多くとも3%、さらにより好ましくは多くとも2%、最も好ましくは多くとも1%及びさらに最も好ましくは多くとも0.5%(重量による)の天然において結合される他のポリペプチド材料を含むポリペプチド調製物を示す。従って、好ましくは、実質的に純粋なポリペプチドは、調製物の存在する合計ポリペプチド材料の少なくとも92%の純度、好ましくは少なくとも94%の純度、好ましくは少なくとも95%の純度、好ましくは少なくとも96%の純度、好ましくは少なくとも97%の純度、好ましくは少なくとも98%の純度、さらに好ましくは少なくとも99%の純度、最も好ましくは少なくとも99.5%の純度、及びさらに最も好ましくは少なくとも100%(重量による)の純度である。
【0020】
本発明のポリペプチドは好ましくは、実質的に純粋な形で存在する。特に、好ましくはポリペプチドは、“実質的に純粋な形”で存在し、すなわちポリペプチド調製物は、天然において結合される他のポリペプチド材料を実質的に有さない。これは、例えば、良く知られている組換え方法、又は従来の精製方法によりポリペプチドを調製することにより達成され得る。
【0021】
本明細書においては、用語“実質的に純粋なポリペプチド”とは、用語“単離されたポリペプチド”及び“単離された形でのポリペプチド”と同じ意味である。
同一性:2種のアミノ酸配列間の又は2種のヌクレオチド配列間の関連性が、パラメーター“同一性”により記載される。
【0022】
本発明に関しては、2種のアミノ酸配列間の同一性の程度、及び2種のヌクレオチド配列間の同一性の程度は、タンパク質及びDNA一列整列の両者のために有用なNeedleman-Wunsch一列整列(すなわち、包括的な一列整列)であるプログラム“align”により決定される。デフォールト評点マトリックスBLOSUM50及びデフォールト同一性マトリックスは、それぞれタンパク質及びDNA一列整列のために使用される。ギャップの最初の残基についてのペナルティーは、タンパク質に関して、−12及びDNAに関して、−16である。ところが、ギャップの追加の残基についてのペナルティーは、タンパク質に関して−2及びDNAに関して、−4である。
【0023】
“Align”は、FASTAパッケージバージョンv20u6の一部である(W. R. Pearson and D. J. Lipman (1988),"Improved Tools for Biological Sequence Analysis", PNAS 85 : 2444-2448,及び W. R. Pearson (1990) "Rapid and Sensitive Sequence Comparison with FASTP and FASTA, "Methods in Enzymology 183: 63-98を参照のこと)。FASTAタンパク質一列整列は、ギャップサイズに対する制限を有さないSmith-Watermanアルゴリズムを使用する("Smith-Waterman algorithm", T. F. Smith and M. S. Waterman (1981) J. Mol. Biol. 147: 195-197を参照のこと)。
【0024】
Needleman-Wunschアルゴリズムは、Needleman, S. B. and Wunsch, CD., (1970), Journal of Molecular Biology, 48: 443-453, and the align program by Myers and W. Miller in Optimal Alignments in Linear Space" CABIOS (computer applications in the biosciences) (1988) 4:11-17に記載されている。
【0025】
標的(又はサンプル又は試験)配列と特定される配列(例えば、配列番号2のアミノ酸1〜411)との間の同一性の程度はまた、次の通りにして決定され得る:配列がプログラム“align”を用いて一列整列される。その一列整列における完全な整合(“N−完全−整合”)の数が決定される(完全な整合とは、一列整列の同じ位置における同じアミノ酸残基を意味し、通常、一列整列において“I”により示される)。特定される配列の長さ(アミノ酸残基の数が、決定される(上記に言及される列における“N−特定される”=411)。同一性の程度は、“N−完全−整合”と“N−特定される”との間の比率として計算される(%同一性への転換のためには、100により掛け算される)。
【0026】
他の態様においては、標的(又はサンプル又は試験)配列と特定される配列(例えば、配列番号2のアミノ酸1〜411)との間の同一性の程度はまた、次の通りにして決定され得る:2種の配列がプログラム“align”を用いて一列整列される。その一列整列における完全な整合(“N−完全−整合”)の数が決定される(完全な整合とは、一列整列の同じ位置における同じアミノ酸残基を意味し、通常、一列整列において“I”により示される)。2種の一列整列された配列の共通する長さ、すなわち一列整列のオーバーラップする部分(“N−オーバーラップ”)におけるアミノ酸の合計数が決定される。同一性の程度は、“N−完全−整合”と“N−オーバーラップ”との間の比率として計算される(%同一性への転換のためには、100を掛け算する)。1つの態様においては、N−オーバーラップは、存在するなら、一列整列により創造される後方(trailing)及び先行(leading)ギャップを含む。もう1つの態様においては、N−オーバーラップは、存在するなら、一列整列により創造される後方及び先行ギャップを含まない。
【0027】
もう1つの他の態様においては、標的(又はサンプル又は試験)配列と特定される配列(例えば、配列番号2のアミノ酸1〜411)との間の同一性の程度はまた、次の通りにして決定され得る:配列がプログラム“align”を用いて一列整列される。その一列整列における完全な整合(“N−完全−整合”)の数が決定される(完全な整合とは、一列整列の同じ位置における同じアミノ酸残基を意味し、通常、一列整列において“I”により示される)。標的配列の長さ(アミノ酸残基の数)が決定される(“N−整合”)。同一性の程度は、“N−完全−整合”と“N−オーバーラップ”との間の比率として計算される(%同一性への転換のためには、100を掛け算する)。
【0028】
好ましくは、オーバーラップは、特定される配列の少なくとも20%(特定される配列(“N−特定される”)におけるアミノ酸の数により割り算され、そして100により掛け算される、上記に定義されるような“N−オーバーラップ)、より好ましくは、少なくとも25%, 30%, 35%, 40%, 45%, 50%, 55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 又は少なくとも95%である。これは、サンプル配列が特定される配列に対して一列整列される場合、特定される配列のアミノ酸の少なくとも20%(好ましくは、25〜95%)がオーバーラップに含まれたままであることを意味する。
【0029】
他においては、オーバーラップは、標的(又はサンプル、又は試験)配列の少なくとも20%(上記に定義されるような“N−標的物”により割り算され、そして100により掛け算される、上記に定義されるような“N−オーバーラップ”)、より好ましくは少なくとも25%, 30%, 35%, 40%, 45%, 50%, 55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 又は少なくとも95%である。これは、特定される配列に対して一列整列される場合、標的配列のアミノ酸の少なくとも20%(好ましくは、25〜95%)がオーバーラップに含まれたままであることを意味する。
【0030】
ポリペプチドフラグメント:用語“ポリペプチドフラグメント”とは本明細書においては、特定される配列、例えば配列番号2又は4、又は相同配列の成熟ペプチド部分のアミノ及び/又はカルボキシル末端から欠失された1又は複数のアミノ酸を有するポリペプチドとして定義され、ここで前記フラグメントはフィターゼ活性を有する。特定の態様においては、そのフラグメントは、少なくとも350, 360, 370, 380, 390, 400, 405, 又は少なくとも 410個のアミノ酸残基を含む。
【0031】
副配列:用語“副配列”とは本明細書においては、特定される配列、例えば配列番号1又は3、又はその相同配列の成熟ペプチドコード部分の5’及び/又は3’末端から欠失される1又は複数のヌクレオチドを有するヌクレオチド配列として定義され、ここで前記副配列はフィターゼ活性を有するポリペプチドフラグメントをコードする。特定の態様においては、副配列は少なくとも1050, 1080, 1110, 1140, 1170, 1200, 1215, 又は少なくとも 1230個のヌクレオチドを含む。
【0032】
対立遺伝子変異体:本明細書においては、用語“対立遺伝子変異体”とは、同じ染色体遺伝子座を占める遺伝子の複数の他の形のいずれかを示す。対立遺伝子変動は、天然においては、突然変異を通して発生し、そして集団内の多形現象をもたらすことができる。遺伝子突然変異はサイレントであり得るか(コードされるポリペプチドの変化が存在しない)、又は変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。ポリペプチドの対立遺伝子変異体は、遺伝子の対立遺伝子によりコードされるポリペプチドである。
【0033】
実質的に純粋にポリヌクレオチド:用語“実質的に純粋なポリペプチド”とは、本明細書において使用される場合、他の外来性の又は所望しないヌクレオチドを有さず、そして遺伝子構築されたタンパク質生成システム内での使用のために適切な形で存在するポリヌクレオチド調製物を言及する。従って、実質的に純粋なポリヌクレオチドは、それが天然において結合される他のポリヌクレオチド材料を、多くとも10重量%、好ましくは多くとも8重量%、より好ましくは多くとも6重量%、より好ましくは多くとも5重量%、より好ましくは多くとも4重量%、より好ましくは多くとも3重量%、さらにより好ましくは多くとも2重量%、最も好ましくは多くとも1重量%、及びさらに最も好ましくは多くとも0.5重量%含む。
【0034】
しかしながら、実質的に純粋なポリヌクレオチドは、天然に存在する5’及び3’未翻訳領域、例えばプロモーター及びターミネーターを含むことができる。好ましくは、実質的に純粋なポリヌクレオチドは、少なくとも90%の純度、好ましくは少なくとも92%の純度、より好ましくは少なくとも94%の純度、より好ましくは少なくとも95%の純度、より好ましくは少なくとも96%の純度、より好ましくは少なくとも97%の純度、さらにより好ましくは少なくとも98%の純度、最も好ましくは少なくとも99%の純度、及びさらに最も好ましくは少なくとも99.5%(重量による)の純度が好ましい。本発明のポリヌクレオチドは好ましくは、実質的に純粋な形で存在する。
【0035】
特に、好ましくは、本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、“実質的に純粋な形”で存在し、すなわちポリヌクレオチド調製物は、それが天然において結合される他のポリヌクレオチドは、用語“単離されたポリヌクレオチド”及び“単離された形でのポリヌクレオチド”と同じ意味である。ポリヌクレオチドは、ゲノム、cDNA、RNA、半合成、合成起源、又はそれらのいずれかの組合せのものであり得る。
【0036】
核酸構造体:本明細粗において使用される場合、用語“核酸構造体”とは、天然に存在する遺伝子から単離され、又は他方では、天然に存在しない態様で核酸のセグメントを含むように修飾されている、一本鎖又は二本鎖核酸分子として定義される。用語“核酸構造体”とは、核酸構造体が本発明のコード配列の発現のために必要とされるすべての制御配列を含む場合、用語“発現カセット”と同じ意味である。
【0037】
制御配列:用語“制御配列”とは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現のために必要であるか、又はそのために好都合であるすべての成分を包含するよう定義される。個々の制御配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列に対して生来であっても又は外来性であっても良い。そのような制御配列は、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターを包含するが、但しそれらだけには限定されない。最少で、制御配列は、プロモーター、及び転写及び翻訳停止シグナルを包含する。制御配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列のコード領域と制御配列との連結を促進する特定の制限部位を導入するためにリンカーを提供され得る。
【0038】
作用可能に連結される:用語“作用可能に連結される”とは、制御配列が、ポリペプチドのコード配列の発現を指図するようポリヌクレオチド配列のコード配列に対する位置で適切に配置されている配置として本明細書において定義される。
コード配列:本明細書において使用される場合、用語“コード配列”とは、そのタンパク質生成物のアミノ酸配列を直接的に特定するヌクレオチド配列を包含する。コード配列の境界は一般的に、ATG開始コドン又は他の開始コドン、例えばGTG及びTTGにより通常開始する読取枠により決定される。コード配列は、DNA、cDNA、又は組換えヌクレオチド配列であり得る。
【0039】
成熟ポリペプチド部分:本明細書において使用される場合、“成熟ポリペプチド部分”又は“成熟ペプチド部分”とは、その遺伝子装置の部分として、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞により分泌されるポリペプチドのその部分を言及する。換言すれば、成熟ポリペプチド部分は、シグナルペプチド部分が、細胞の分泌経路中にコードされるポリペプチドを向けるその機能を満たすと、その部分が切断された後に存在するポリペプチドのその部分を言及する。配列番号2及び4の予測されるシグナルペプチド部分はそのアミノ酸−22〜-1であり、これは、配列番号2及び4の予測される成熟ポリペプチド部分がそのアミノ酸1〜411に対応することを意味する。しかしながら、わずかな変動が宿主細胞ごとに発生し、そして従って、発現成熟ポリペプチド部分が好ましい。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語“成熟ポリペプチドコード部分”又は“成熟ポリペプチドコード配列”とは、成熟ポリペプチド部分をコードするポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの部分を意味する。例えば、配列番号1に関しては、予測される成熟ポリペプチドコード部分は、ヌクレオチド67〜1299(配列番号2のアミノ酸1〜411をコードする)に対する。
【0041】
発現:用語“発現”とは、ポリペプチドの生成に包含されるいずれかの段階、例えば転写、後−転写修飾、翻訳、後−翻訳修飾及び分泌(但し、それらだけには制限されない)を包含する。
発現ベクター:本明細書においては、用語“発現ベクター”とは、本発明のポリペプチドとコードするポリヌクレオチドを含んで成り、そしてその発現を提供する追加のヌクレオチドに作用可能に連結される線状又は環状DNA分子を包含する。
【0042】
宿主細胞:用語“宿主細胞”とは、本明細書において使用される場合、本発明のポリヌクレオチドを含んで成る核酸構造体による形質転換、トランスフェクション、トランスダクション及び同様のものに対して感受性であるいずれかの細胞型を包含する。
修飾:用語“修飾”とは本明細書において、特定されるポリペプチド、例えば配列番号2又は4のアミノ酸1〜411から成るポリペプチドのいずれかの化学的修飾、及び前記ポリペプチドをコードするDNAの遺伝子操作を意味する。前記修飾は、アミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入、及びアミノ酸側鎖の置換であり得る。
【0043】
人工変異体:本明細書において使用される場合、用語“人工変異体”とは、配列番号1又は3の修飾されたヌクレオチド配列を発現する生物により生成されるフィターゼ活性を有するポリペプチドを意味する。修飾されたヌクレオチド配列は、配列番号1又は3に開示されるヌクレオチド配列の修飾により、ヒト介在を通して得られる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明の特定の記載:
フィターゼ活性を有するポリペプチド
第1の観点においては、本発明は、少なくとも98.6%の配列番号2のアミノ酸1〜411(すなわち、成熟ポリペプチド)に対する同一性の程度を有するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドに関する。
【0045】
特定の態様においては、同一性の程度は、フィターゼ活性(この後、“相同ポリペプチド”)を有する、少なくとも98.7%, 98.8%, 98.9%, 99%, 99.0%, 99.1%, 99.2%, 99.3%, 99.4%, 99.5%, 99.6%, 99.7%, 99.8%, 又は少なくとも99.9%である。
他の特定の態様においては、相同ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1〜411とは、20, 18, 16, 14, 12, 10, 8, 6, 5, 4, 3, 2, 又は1個のアミノ酸により異なるアミノ酸配列を有する。
【0046】
他の態様においては、配列番号2のアミノ酸1〜411(すなわち、成熟ポリペプチド)に対する同一性の程度は、少なくとも70, 80, 85, 90, 95, 97, 98%, 98.2%, 98.3%, 98.4%, 又は98.5%である。
特定の態様においては、本発明のポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含んで成り、又はフィターゼ活性を有する、対立遺伝子変異体又はそのフラグメントである。さらに特定の態様においては、ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1〜411又はその対立遺伝子変異体;又はフィターゼ活性を有するそのフラグメントを含んで成る。
【0047】
第2の観点においては、本発明は、少なくとも99.1%の配列番号4のアミノ酸1〜411(すなわち、成熟ポリペプチド)に対する同一性の程度を有するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドに関する。
特定の態様においては、同一性の程度は、フィターゼ活性(この後、“相同ポリペプチド”)を有する、少なくとも99.2%, 99.3%, 99.4%, 99.5%, 99.6%, 99.7%, 99.8%又は少なくとも99.9%である。
【0048】
他の特定の態様においては、相同ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸1〜411とは、20, 18, 16, 14, 12, 10, 8, 6, 5, 4, 3, 2, 又は1個のアミノ酸により異なるアミノ酸配列を有する。
他の態様においては、配列番号4のアミノ酸1〜411(すなわち、成熟ポリペプチド)に対する同一性の程度は、少なくとも70, 80, 85, 90, 95, 97, 98%, 98.2%, 98.3%, 98.4%, 98.5%, 98.6%, 98.7%, 98.8%, 98.9% 又は少なくとも99.0%である。
【0049】
特定の態様においては、本発明のポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含んで成り、又はフィターゼ活性を有する、対立遺伝子変異体又はそのフラグメントである。さらに特定の態様においては、ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸1〜411又はその対立遺伝子変異体;又はフィターゼ活性を有するそのフラグメントを含んで成る。
【0050】
第3の観点においては、本発明は、(i)配列番号1のヌクレオチド67〜1299、(ii)配列番号1の成熟ポリペプチドコード部分、及び/又は(iii)上記(i)及び(ii)のいずれか1つの相補的鎖、及び/又は(iv)上記(i), (ii)又は(iii)の副配列と、少なくとも中位、好ましくは中位の緊縮条件下でハイブリダイズするポリペプチドによりコードされるフィターゼ活性を有する単離されたポリペプチドに関する(J. Sambrook, E.F. Fritsch, and T. Maniatus, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor, New York)。配列番号1の副配列は、少なくとも100個の連続したヌクレオチド、又は好ましくは少なくとも200個の連続したヌクレオチドを含む。さらに、副配列は、フィターゼ活性を有するポリペプチドをコードすることができる。
【0051】
特定の態様においては、ハイブリダイゼーションは、少なくとも中位の高い、少なくとも高い、又は少なくとも非常に高い緊縮条件;好ましくは中位の高い、高い又は非常に高い緊縮条件下で生じる。
他の態様においては、ハイブリダイゼーションは、非常に低い又は低い緊縮条件下で行われる。
【0052】
配列番号1又はその副配列、及び配列番号2のアミノ酸配列又はそのフラグメントは、当業界において良く知られている方法に従って、異なった属又は種の株からのフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを同定し、そしてクローン化するための核酸プローブを企画するために使用され得る。特に、そのようなプローブは、そこにおける対応する遺伝子を同定し、そして単離するために、標準のサザンブロット方法に従って、興味ある属又は種のゲノム又はcDNAとのハイブリダイゼーションのために使用され得る。そのようなプローブは、完全な配列よりも相当に短いが、しかし少なくとも14個、好ましくは少なくとも25個、より好ましくは少なくとも35個、及び最も好ましくは少なくとも70個の長さのヌクレオチドであるべきである。
【0053】
しかしながら、好ましくは、核酸プローブは少なくとも100個の長さのヌクレオチドである。例えば、核酸プローブは、少なくとも200個、好ましくは少なくとも300個、より好ましくは少なくとも400個、又は最も好ましくは少なくとも500個の長さのヌクレオチドであり得る。さらに長いプローブ、例えば少なくとも600個、好ましくは少なくとも700個、より好ましくは少なくとも800個、又は最も好ましくは少なくとも900個の長さのヌクレオチドである核酸プローブが使用され得る。DNA及びRNAの両プローブが使用され得る。プローブは典型的には、対応する遺伝子を検出するためにラベルされる(例えば、32P, 3H, 35S, ビオチン、又はアビジンにより)。そのようなプローブは、本発明により包含される。
【0054】
従って、そのような他の生物から調製されたゲノムDNAライブラリーは、上記に記載されるプローブとハイブリダイズし、そしてフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAについてスクリーンされ得る。そのような生物からのゲノム又は他のDNAは、アガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動、又は他の分離技法により分離され得る。ライブラリーからのDNA又は分離されたDNAが、ニトロセルロース又は他の適切なキャリヤー材料に移行され、そしてその上に固定され得る。配列番号1と相同であるクローン又はDNA、又はその副配列を同定するためには、キャリヤー材料がサザンブロットに使用される。
【0055】
本発明のためには、ハイブリダイゼーションは、ヌクレオチド配列が、非常に低い〜非常に高い緊縮条件下で、配列番号1で示されるヌクレオチド配列、その相補的鎖、又はその副配列に対応するラベルにされた核酸プローブにハイブリダイズすることを示す。核酸プローブがそれらの条件下でハイブリダイズする分子は、X−線フィルムを用いて検出される。
【0056】
特定の態様においては、核酸プローブは、配列番号1及び3〜8のいずれか1つである。もう1つの特定の態様においては、核酸プローブは、配列番号1のヌクレオチド67〜450、ヌクレオチド450〜900、又はヌクレオチド900〜1299の相補的鎖である。さらに特定の態様においては、核酸プローブは、配列番号2のポリペプチド又はその副配列をコードするポリヌクレオチド配列である。さらなる特定の態様においては、核酸プローブは、配列番号1、特にその成熟ポリペプチドコード領域のいずれか1つである。
【0057】
少なくとも100個の長さのヌクレオチドの長さの長いプローブに関して、非常に低い〜非常に高い緊縮条件は、最適には12〜24時間の標準のサザンブロット方法に従っての、5×SSPE、 0.3%SDS、 200μg/ml の剪断され、そして変性されたサケ精子DNA、及び25%ホルムアミド(非常に低い及び低い緊縮に関して)、35%ホルムアミド(中位及び中−高緊縮に関して)、又は50%ホルムアミド(高い及び非常に高い緊縮に関して)における42℃でのプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションとして定義される。
【0058】
少なくとも100個の長さのヌクレオチドの長いプローブに関しては、キャリヤー材料は最終的に、2×SSC、 0.2%SDS溶液を用いて、好ましくは少なくとも45℃(非常に低い緊縮)、より好ましくは少なくとも50℃(低い緊縮)、より好ましくは少なくとも55℃(中位の高い緊縮)、より好ましくは少なくとも60℃(中くらいに高い緊縮)、さらにより好ましくは少なくとも65℃(高い緊縮)及び最も好ましくは少なくとも70℃(非常に高い緊縮)で、それぞれ15分間、3度洗浄される。
【0059】
約15個〜約70個の長さのヌクレオチドである短いプローブに関しては、緊縮条件は、0.9MのNaCl、0.09Mのトリス−HCl, pH7.6、 6mM のEDTA、 0.5のNP-40, 1×Denhardt’s溶液、1mMのピロリン酸ナトリウム、1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、0.1mMのATP及び0.2mgの酵母RNA(ml当たり)における、Bolton and McCarthy(1962、Proceedings of the National Academy of Sciences USA 48: 1390)に従って計算されたTmよりも約5℃〜約10℃低い温度での標準のサザンブロット方法に従ってのプレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、及び後−ハイブリダイゼーション洗浄として定義される。
【0060】
約15個〜約70個の長さのヌクレオチドである短いプローブに関しては、キャリヤー材料は、6×SSC及び0.1%SDSにより15分間、1度、及び6×SSCを用いて、計算されたTmよりも約5℃〜約10℃低い温度でそれぞれ15分間、2度、洗浄される。
塩−含有ハイブリダイゼーション条件下で、効果的Tmは、好結果をもたらすハイブリダイゼーションのためにプローブとフィルター結合されたDNAとの間で必要とされる同一性の程度を調節するものである。効果的Tmは、種々の緊縮条件下でハイブリダイズする2種のDNAのために必要とされる同一性の程度を決定するために下記式を用いて決定され得る。
【0061】
効果的Tm=81.5 + 16.6(Iog M[Na+]]) + 0.41 (%G+C) - 0.72(% ホルムアミド)
(www.ndsu.nodak.edu/instruct/mcclean/plsc731/dna/dna6.htmを参照のこと)。
“G+C”は、プローブにおけるヌクレオチドG及びTの含有率を示す。中位の緊縮下で、ホルムアミドは35%であり、そして5×SSPEのためのNa+濃度は0.75Mである。
【0062】
第4の観点においては、本発明は、フィターゼ活性、及び次の生理化学性質(実質的に純粋なポリペプチドに基づいて分析される場合)を有する単離されたポリペプチドに関する:
(i)高い比活性、例えばE. コリappA(SPTREMBL:Q8GN88)の比活性の少なくとも50%のフィテートに対する比活性、比活性は好ましくは、mgフィターゼ酵素タンパク質当たりFYTの単位として測定される;
【0063】
(ii)酸−安定性;例えば
(a)HEPES緩衝液pH7.0における37℃での一晩のインキュベーションの後の残留活性に比較して、グリシン/塩酸緩衝液pH2.2における37℃でのインキュベーションの後の少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、少なくとも70%又は少なくとも75%の残留活性;
(b)HEPES緩衝液pH7.0における37℃での一晩のインキュベーションの後の残留活性に比較して、グリシン/塩酸緩衝液pH3.0における37℃でのインキュベーションの後の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の残留活性;及び/又は
(c)E. コリappA(SPTREMBL:Q8GN88)の残留活性に比較して、25, 30, 35又は37℃、好ましくは37℃の温度、及び2.2, 2.4, 2.5, 2.6, 2.8, 3.0, 3.2, 3.4 又は3.5のpHで、好ましくはpH2.2、又は3.0のグリシン/塩酸緩衝液における2時間のインキュベーションの後、少なくとも50%の残留フィターゼ活性;
【0064】
(iii)熱−安定性、例えば、E. コリappA(SPTREMBL:Q8GN88)の残留活性に比較して、5.5のpH及び55, 60, 65, 70, 75, 80, 85 又は95の温度での0.5, 1, 1.5又は2時間、好ましくは0.5時間のインキュベーションの後、少なくとも50%の残留フィターゼ活性;
(iv)プロテアーゼ−安定性、例えばE. コリappA(SPTREMBL:Q8GN88)の残留活性に比較して、0.1mg/mlのペプシンの存在下で、20, 25, 30, 35, 又は37℃、好ましくは37℃の温度及び5.5のpHでの0.5, 1, 1.5又は2時間、好ましくは1時間のインキュベーションの後、少なくとも50%の残留フィターゼ活性;及び/又は
(v)上記に記載のように、FYTアッセイ、及び/又は例4のアッセイを用いて決定される、pH5.0以下、例えばpH4.5, 4.0, 3.5, 3.0, 2.5以下又はさらに2.0以下のpH−最適性。
【0065】
上記観点(i)の特定の態様においては、その比活性は、E. コリappAの比活性の少なくとも60, 70, 80, 90, 100, 110, 120, 130, 140又は少なくとも150%である。上記観点(ii)〜(iv)の特定の態様においては、残留活性は、E. コリappAの残留活性の少なくとも60, 70, 80, 90, 100, 110, 120, 130, 140又は少なくとも150%である。
【0066】
第5の観点においては、基質pNP−ホスフェートに基づいて測定される、pH5.0及び37℃での本発明の酵素の活性は、本明細書における例7における対照である、基質フィテートに基づいて測定される酵素の活性の11%以下である。好ましくは、その比率は、10%, 9%, 8%, 7%, 6%又は5%以下である。フィテート加水分解に対するpNPの比率は、酵素の真のフィターゼ性質の表示である。フィテートに基づく活性に対してのpNPに基づく活性の高い比率は、問題の酵素が比較的低い基質特異性を有するホスファターゼであることを示し、ところが低い比率は、例7において試験されるフィターゼの場合、これが基質としてフェテーとをより特異的に受容する酵素であることを示す。
【0067】
第6の観点においては、本発明のフィターゼは、ペニオフォラ・リシ(Peniophora lycii)からのフィターゼに比較して、好ましくはその少なくとも110%、より好ましくは少なくとも120%、130%又は少なくとも140%、本明細書における例6のインビトロモデルにおいて、高いリン(P)開放性を有する。1つの態様においては、0.25FYT/g飼料で投与される本発明のフィターゼは、本明細書におけるインビトロモデルにおいて、また0.25FYT/g飼料で投与されるペニオフォラ・リシからのフィターゼにより開放されるリンに比較して、少なくとも150%のリン(P)を開放する。
【0068】
好ましくは、その開放性は、少なくとも155%、160%、165%、170%、175%又は少なくとも180%である。もう1つの態様においては、0.75FYT/g飼料で投与される本発明のフィターゼは、本明細書におけるインビトロモデルにおいて、また0.75FYT/g飼料で投与されるペニオフォラ・リシからのフィターゼにより開放されるリンに比較して、少なくとも150%のリン(P)を開放する。好ましくは、その開放性は、少なくとも155%、160%、165%、170%、175%、180%、185%又は少なくとも190%である(例6における表2を参照のこと:367/190が193になる)。
【0069】
第7の観点においては、本発明のフィターゼは、時間t=0での活性に比較して、0.1Mのグリシン/HCl緩衝液pH2.0において37℃で4時間のインキュベーションに続いて、少なくとも20%の残留活性を有し、ここで前記活性(及び残留活性)は、0.25Mの酢酸ナトリウム緩衝液pH5.5を用いて、1%(w/v)フィチン酸ナトリウムに対して、37℃及びpH5.5でアッセイされる。好ましい態様においては、残留活性は、少なくとも25%, 30%, 35%, 40%, 45%, 50%, 55%, 60%, 65%, 70%, 75%又は少なくとも80%である。
【0070】
もう1つの態様においては、本発明のフィターゼは、時間t=0での活性に比較して、0.1Mのグリシン/HCl緩衝液pH2.5において37℃で24時間のインキュベーションに続いて、少なくとも20%の残留活性を有し、ここで前記活性(及び残留活性)は、0.25Mの酢酸ナトリウム緩衝液pH5.5を用いて、1%(w/v)フィチン酸ナトリウムに対して、37℃及びpH5.5でアッセイされる。好ましい態様においては、残留活性は、少なくとも25%, 30%, 35%, 40%, 45%, 50%, 55%, 60%, 65%, 70%, 75%又は少なくとも80%である。
【0071】
第8の観点においては、本発明は、配列番号2又はその成熟ポリペプチドの1又は複数のアミノ酸の保存性置換、欠失及び/又は挿入を含んで成る人工変異体に関する。挿入は、分子の内部で、及び/又は延長としても示される、分子のN−及び/又はC−末端で行われる。好ましくは、アミノ酸変化は、マイナーな性質のもの、すなわち保存性アミノ酸置換;典型的には1〜約30個のアミノ酸の小さな欠失;小さなアミノ−又はカルボキシル−末端、例えばアミノ末端メチオニン残基の延長;約20〜25個までの残基の小さなリンカーペプチド;又は実行電荷又は他の機能、例えばポリ−ヒスチジン路、抗原性エピトープ又は結合ドメインを変えることにより精製を促進する小さな延長のものであり;換言すれば、タンパク質の折りたたみ及び/又は活性に有意に影響を及ぼさない変化である。
【0072】
保存性置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン及びアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)、及び小さなアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、トレオニン及びメチオニン)のグループ内である。
【0073】
保存性置換の他の例は、非標準のアミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン、6−N−メチルリシン、2−アミノイソ酪酸、イソバリン及びα−メチルセリン)による20個の標準のアミノ酸の置換である。保存性置換はまた、遺伝子コードによりコードされないアミノ酸及び不自然なアミノ酸の置換も包含する。“不自然なアミノ酸”は、タンパク質合成の後、修飾され、そして/又は標準のアミノ酸の化学構造とは異なる、それらの側鎖に化学構造を有している。不自然なアミノ酸は、化学的に合成され得、そして好ましくは、市販されており、そしてピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3−及び4−メチルプロリン及び3,3−ジメチルプロリンを包含する。
【0074】
特定の態様においては、変異体は組合しての次の4種の置換のすべてを含まない:N31D, Q139K, L197F, N316K。もう1つの特定の態様においては、変異体は、組合しての次の4種の置換のすべてを含まない:N31D, N121T, K132T, Q139K。
他方では、アミノ酸変化は、ポリペプチドの生理化学的性質が変更されるような性質のものである。例えば、アミノ酸変化は、ポリペプチドの熱安定性を改良し、基質変異性を変更し、pH最適性を変え、そして同様のことをする。
【0075】
親ポリペプチドにおける必須アミノ酸は、当業界において知られている方法、例えば特定部位の突然変異誘発、又はアラニン−走査突然変異誘発に従って同定され得る(Cunningham and Wells, Science 244: 1081-1085, 1989)。後者の技法においては、単一のアラニンの突然変異が分子におけるあらゆる残基に導入され、そして得られる変異体分子は、分子の活性に対して決定的であるアミノ酸残基を同定するために、生物学的活性(すなわち、フィターゼ活性)について試験される。また、Hilton など., J. Biol. Chem. 271: 4699-4708, 1996を参照のこと。
【0076】
酵素又は他の生物学的相互作用の活性部位はまた、推定上の接触部位アミノ酸の突然変異に関して、核磁気共鳴、結晶学、電子回折、又は光親和性ラベリングのような技法により決定されるように、構造の物理的分析によっても決定され得る。例えば、de Vos など., Science 255: 306-312, 1992; Smith など., J. Mol. Biol. 224: 899-904, 1992; Wlodaver など., FEBS Lett. 309: 59-64, 1992を参照のこと。必須アミノ酸の本体はまた、本発明のポリペプチドに関連するポリペプチドとの同一性の分析からも推定され得る。
【0077】
単一又は複数のアミノ酸置換は、突然変異誘発、組換え及び/又はシャフリング、続く適切なスクリーニング方法、例えばReidhaar-Olson and Sauer (Science 241: 53-57, 1988), Bowie and Sauer (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 2152-2156, 1989), WO95/17413号又はWO95/22625号により開示される既知の方法を用いて、生成され、そして試験され得る。使用され得る他の方法は、エラープロンPCR、ファージ表示(例えば、Lowman など., Biochem. 30: 10832-10837, 1991; Ladner など., アメリカ特許第5,223,409号;Huse, WIPO Publication WO92/06204号)及び特定領域の突然変異誘発(Derbyshire など., Gene 46: 145, 1986; Ner など., DNA 7: 127, 1988)を包含する。
【0078】
突然変異誘発/シャフリング方法は、宿主細胞においてクローン化され、突然変異誘発されたポリペプチドの活性を検出するために、高い処理量の自動化されたスクリーニング方法と組み合わされ得る。活性ポリペプチドをコードする突然変異誘発されたDNA分子は、宿主細胞から回収され、そして近代装置を用いて急速に配列決定され得る。それらの方法は、興味あるポリペプチドにおける重要な個々のアミノ酸残基の急速な決定を可能にし、そして未知の構造体のポリペプチドに適用され得る。
【0079】
配列番号2のアミノ酸1〜411の配列におけるアミノ酸置換(好ましくは、保存性置換)、欠失及び/又は挿入の合計数は、多くとも10、好ましくは多くとも9、より好ましくは多くとも8、より好ましくは多くとも7、より好ましくは多くとも6、より好ましくは多くとも5、より好ましくは多くとも4、さらにより好ましくは多くとも3、最も好ましくは多くとも2、及びさらに最も好ましくは1である。
【0080】
配列番号2のアミノ酸1〜411のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入の合計数は、10、好ましくは9、より好ましくは8、より好ましくは7、より好ましくは多くとも6、より好ましくは多くとも5、より好ましくは多くとも4、さらにより好ましくは3、最も好ましくは2、及びさらに最も好ましくは1である。他においては、配列番号2のアミノ酸1〜411の配列におけるアミノ酸置換(好ましくは、保存性置換)、欠失及び/又は挿入の合計数は、多くとも50, 45, 40, 35, 30, 25, 20, 19, 18, 17, 16, 15, 14, 13, 12又は多くとも 11である。
【0081】
特定の態様においては、本発明のポリペプチドは、動物、例えばヒトに暴露される場合、低められた免疫学的応答を誘発するよう企画された低アレルギー性変異体である。用語、免疫学的応答とは、ポリペプチドに暴露される動物の免疫系によるいずれかの応答として理解されるべきである。1つのタイプの免疫学的応答は、暴露された動物において高められたレベルのIgEを導くアレルギー性応答である。低アレルギー性変異体は、当業界において知られている技法を用いて調製され得る。例えば、ポリペプチドは、免疫学的応答において誘発されるポリペプチドの一部又はエピトープを保護するポリマー成分により接合され得る。
【0082】
ポリマーとの接合は、例えばWO 96/17929号, WO98/30682号, WO98/35026号及び/又は WO99/00489号に記載されるように、ポリペプチドへのポリマーのインビトロ化学的カップリングを包含することができる。接合は、さらに、又は他方では、ポリペプチドへのポリマーのインビボカップリングを包含することができる。そのような接合は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を遺伝的に構築し、ポリペプチドにおける追加のグリコシル化部位をコードするコンセンサス配列を挿入し、そしてポリペプチドをグリコシル化できる宿主においてポリペプチドを発現することにより達成され得る;WO00/26354を参照のこと。低アレルギー性変異体を供給するもう1つの手段は、ポリペプチドの自己オリゴマー化を引起すようポリペプチドをコードし、ポリペプチドモノマーが他のポリペプチドモノマーのエピトープを保護し、そしてそれにより、オリゴマーの抗原性を低めるヌクレオチド配列の遺伝的構築である。
【0083】
そのような生成物及びそれらの調製は、例えばWO96/16177号に記載される。免疫学的応答に関与するエピトープは、種々の方法、例えばWO00/2623号及びWO01/83559号に記載されるファージ表示方法、又はEP56907号に記載されるランダムアプローチにより同定され得る。エピトープが同定されると、そのアミノ酸配列は、既知の遺伝子操作技法、例えば特定部位の突然変異誘発によりポリペプチドの変更された免疫学的性質を生成するために変更され得(例えば、WO 00/26230号, WO 00/26354 号及び/又は WO00/22103号を参照のこと)、そして/又はポリマーの接合は、エピトープを保護するためにポリマーのためのエピトープに十分に接近して行われ得る。
【0084】
フィターゼ活性を有するポリペプチド源
本発明のポリペプチドは、いずれかの属の微生物から得られる。本発明のためには、用語“〜から得られる”とは、所定の源に関して本明細書において使用される場合、ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドが前記源により、又はその源からのヌクレオチド配列が挿入されている細胞により生成されることを意味する。好ましい態様においては、所定の源から得られるポリペプチドは細胞外に分泌される。
【0085】
本発明のポリペプチドは、細菌ポリペプチドであり得る。例えば、前記ポリペプチドは、グラム陽性細胞ポリペプチド、例えば、バチルス(bacillus)ポリペプチド、又はストレプトミセス(Streptomyces)ポリペプチド;又はグラム陰性細菌ポリペプチド、例えばE.コリ(E. coli)、エルシニア(Yersinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、シトロバクター(Citrobacter)又はプソイドモナスsp. (Pseudomonas sp.) ポリペプチドであり得る。特定の態様においては、ポリペプチドはプロテオバクテリア(Proteobacteria)、例えばガンマプロテオバクテア(Gammaproteobacteria)、例えば腸内細菌(Enterobacteriales)、例えば腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に由来する。
【0086】
特定の観点においては、腸内細菌科に由来するポリペプチドは、シトロバクター(Citrobacter)ポリペプチド、例えば、シトロバクター・アマロナチカス(Citrobacter amalonaticus)、シクロバクター・ブラキ(Citrobacter braakii)、シトロバクター・ファルメリ(Citrobacter farmeri)、シトロバクター・フレウンジ(Citrobacter freundii)、シトロバクター・ギレニ(Citrobacter gillenii)、シトロバクター・インテルメジウス(Citrobacter intermedius)、シトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri)、シトロバクター・ムリナエ(Citrobacter murliniae)、シトロバクター・ロデンチウム(Citrobacter rodentium)、シトロバクター・セドアキ(Citrobacter sedlakii)、シトロバクター・ウェルクマニ(Citrobacter werkmanii)、シトロバクター・ヨウンガエ(Citrobacter youngae)又はシトロバクター種ポリペプチドである。
【0087】
より好ましい観点においては、ポリペプチドは、シトロバクター・ブラキポリペプチド、及び最も好ましくはシトロバクター・ブラキATCC51113ポリペプチド、例えば配列番号4のポリペプチドである。特定の株は、ATCC(American Type Culture Collection)から公的に入手できる。
【0088】
本発明のポリペプチドはまた、菌類ポリペプチド、例えば酵母ポリペプチド又は糸状菌ポリペプチドでもあり得る。
上記微生物の株は、次の多くの培養物寄託所から容易に入手できる:American Type Culture Collection (ATCC), Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSM), Centraalbureau Voor Schimmelcaltures (CBS), 及びAgricultural Research Service Patent Culture Collection, Northern Regional Research Center (NRRL)。
【0089】
さらに、そのようなポリペプチドは、他の源、例えば天然源(例えば、土壌、培養土、水、等)から単離された微生物から、上記プローブを用いて同定され、そして得られる。天然の生息地から微生物を単離する技法は当業界において良く知られている。次に、ポリヌクレオチドは、もう1つの微生物のゲノム又はcDNAライブラリーを同様にスクリーニングすることによって誘導され得る。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列がプローブにより検出されると、ポリヌクレオチドは当業者に知られている技法を用いることによって同定され、又はクローン化され得る(例えば、J. Sambrook, E. F. Fritsch, and T. Maniatus, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Zd Edition, Cold Spring Harbor, New York を参照のこと)。
【0090】
本発明のポリペプチドはまた、もう1つのポリペプチドが前記ポリペプチド又はフラグメントのN−末端又はC−末端で融合されている、融合された又は切断可能な融合ポリペプチドも包含することができる。融合されたポリペプチドは、1つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(又はその一部)を、本発明のヌクレオチド配列(又はその一部)に融合することによって生成される。融合ポリペプチドを生成するための技法は、当業界において知られており、そしてポリペプチドをコードするコード配列を、それらが整合して存在し、そして融合されたポリペプチドの発現が同じプロモーター及びターミネーターの制御下にあるよう、連結することを包含する。
【0091】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチドにも関する。好ましい観点においては、ヌクレオチド配列は、配列番号1又は3のいずれか1つにより示される。もう1つの好ましい観点においては、ヌクレオチド配列は、配列番号1又は3のいずれか1つの成熟ポリペプチドコード領域である。本発明はまた、遺伝子コードの縮重により、それぞれ配列番号1又は3とは異なる、配列番号2又は4のアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はそれらの成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も包含する。本発明はまた、フィターゼ活性を有する、配列番号2又は4のフラグメントをコードする配列番号1又は3の副配列にも関する。
【0092】
本発明はまた、配列番号1又は3のいずれか1つの成熟ポリペプチドコード配列に少なくとも1つの突然変異を含んで成る変異体ポリヌクレオチドにも関し、ここで前記変異体ヌクレオチド配列は、配列番号2又は4のアミノ酸1〜411から成るポリペプチドをコードする。
【0093】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離し、又はクローン化するために使用される技法は、当業界において知られており、そしてゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はそれらの組み合わせを包含する。そのようなゲノムDNAからの本発明のポリヌクレオチドのクローニングは、例えば良く知られているポリメラーゼ鎖反応(PCR)、又は共有する構造特徴を有するクローン化されたDNAフラグメントを検出するために発現ライブラリーの抗体スクリーニングを用いることによってもたらされ得る。例えば、Innisなど., 1990, PCR: A Guide to Methods and Application; Academic Press, New York を参照のこと。他の核酸増幅方法、例えばリガーゼ鎖反応(LCR)、連結された活性化転写(LAT)及び核酸配列に基づく増幅(NASBA)が使用され得る。ポリヌクレオチドは、シトロバクター株、又は他の又は関連する生物からクローン化され得、そして従って、ヌクレオチド配列のポリペプチドコード領域の対立遺伝子又は種変異体であり得る。
【0094】
本発明はまた、少なくとも98.3%の配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列(すなわち、ヌクレオチド67〜1299)に対する同一性の程度を有し、そしてフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにも関する。特定の態様においては、同一性の程度は、少なくとも98.6, 98.7, 98.9, 99, 99.0, 99.1, 99.2, 99.3, 99.4, 99.5, 99.6, 99.7, 99.8又は少なくとも 99.9%である。他の態様においては、同一性の程度は、少なくとも61%、又は少なくとも70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 94, 97, 98, 98.0, 98.1 , 98.2又は少なくとも98.3%である。
【0095】
本発明はまた、少なくとも98.9%の配列番号3の成熟ポリペプチドコード配列(すなわち、ヌクレオチド67〜1299)に対する同一性の程度を有し、そしてフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにも関する。特定の態様においては、同一性の程度は、少なくとも99.0, 99.1, 99.2, 99.3, 99.4, 99.5, 99.6, 99.7, 99.8又は少なくとも 99.9%である。他の態様においては、同一性の程度は、少なくとも61%、又は少なくとも70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 94, 97, 98, 98.0, 98.1, 98.2, 98.3, 98.4, 98.5, 98.6, 98.7又は少なくとも98.8%である。
【0096】
本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の修飾は、そのポリペプチドに実質的に類似するポリペプチドの合成のために必要である。用語、ポリペプチドに“実質的に類似する”とは、ポリペプチドの天然に存在しない形を言及する。それらのポリペプチドは、その天然源から単離されたポリペプチドとは、いくつかの構築された態様で異なり、例えば非活性、熱安定性、pH最適性又は同様のものにおいて異なる変異体であり得る。変異体配列は、配列番号1のポリペプチドコード部分として提供されるヌクレオチド配列、例えばその副配列に基づいて、及び/又はヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのもう1つのアミノ酸配列を生ぜしめないが、しかしポリペプチドの生成のために意図された宿主生物のコドン使用法に対応するヌクレオチド置換の導入により、又は異なったアミノ酸配列を生ぜしめることができるヌクレオチド置換の導入により構成され得る。ヌクレオチド置換の一般的記載のためには、Fordなど., 1991, Protein Expression and Purification 2:95-107を参照のこと。
【0097】
そのような置換は、分子の機能に対して決定的である領域外で行われ、そしてさらに活性ポリペプチドをもたらすことは、当業者に明らかであろう。本発明の単離されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの活性に必須であり、そして従って、好ましくは置換を受けやすくないアミノ酸残基は、当業界において知られている方法、例えば特定部位の突然変異誘発又はアラニン−走査突然変異誘発に従って同定され得る(例えば、Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085を参照のこと)。
【0098】
後者の技法においては、突然変異は分子における正に荷電された残基ごとに導入され、そしてその得られる変異体分子は、分子の活性に対して決定的であるアミノ酸残基を同定するためにフィターゼ活性について試験される。基質−ポリペプチド相互作用の部位はまた、核磁気共鳴分析、クリスタログラフィー又は光親和性ラベリングのような技法により決定されるように、立体構造体の分析により決定され得る(例えば、de Vos など., 1992, Science 255: 306-312; Smith など., 1992, Journal of Molecular Biology 224: 899-904; Wlodaver など., 1992, FEBS Letters 309: 59-64を参照のこと)。
【0099】
本発明はまた、本明細書に定義されるように、(i)配列番号1のヌクレオチド67〜1299、(ii)配列番号1の成熟ポリペプチドコード部分、及び/又は(i)及び/又は(ii)のいずれか1つの相補的鎖;又はその対立遺伝子変異体及び副配列(Sambrookなど., 1989, 前記)と、中位の緊縮条件、より好ましくは中位の高い緊縮条件、さらにより好ましくは高い緊縮条件、及び最も好ましくは非常に高い緊縮条件下でハイブリダイズする、本発明のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドにも関する。他の態様においては、ハイブリダイゼーションは、非常に低い、又は低い緊縮条件下で行われる。
【0100】
本発明はまた、(a)(i)配列番号1のヌクレオチド67〜1299、(ii)配列番号1の成熟ポリペプチドコード部分、及び/又は(i)及び/又は(ii)のいずれか1つの相補的鎖と、非常に低い、低い、中位、中位の高い、高い、又は非常に高い緊縮条件下でDNA集団とをハイブリダイズし;そして(b)フィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、前記ハイブリダイズするポリヌクレオチドを単離することにより得られるか、得ることができる単離されたポリヌクレオチドにも関する。
【0101】
核酸構造体
本発明はまた、制御配列と適合できる条件下で、適切な宿主細胞におけるコード配列の発現を指図する1又は複数の制御配列に作用可能に連結される本発明の単離されたポリヌクレオチドを含んで成る核酸構造体にも関する。
本発明のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドは、ポリペプチドの発現を提供するために種々の手段で操作され得る。ベクター中へのその挿入の前、ポリヌクレオチド配列の操作は、発現ベクターに依存して、所望されるか又は必要とされる。組換えDNA方法を用いてポリヌクレオチド配列を修飾するための技法は、当業界において良く知られている。
【0102】
制御配列は、適切なプロモーター配列、すなわち本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現のために宿主細胞により認識されるヌクレオチド配列であり得る。プロモーター配列は、ポリペプチドの発現を仲介する転写制御配列を含む。プロモーターは、宿主細胞において転写活性を示すいずれかのヌクレオチド配列、例えば変異体の、切断された、及びハイブリッドのプロモーターであり得、そして宿主細胞に対して相同であるか又は異種である細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られる。
【0103】
特に細胞宿主細胞において本発明の核酸構造体の転写を方向づけるための適切なプロモーターの例は、E.コリlacオペロン、ストレプトミセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)アガラーゼ遺伝子(dagA)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)Lバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)α−アミラーゼ遺伝子(amyL)、Bチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)マルトゲン性アミラーゼ遺伝子(amyM)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliguefaciens) α−アミラーゼ遺伝子(amyQ)、バチルス・リケニホルミスペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バチルス・サブチリスxylA及びzylB遺伝子及び原生動物のβ−ラクタマーゼ遺伝子から得られるプロモーター(Villa−Kamaroffなど., 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75: 3727-3731)、及びtac プロモーター(De Boer など., 1983, Proceedings of the National Academy of Science USA 80: 21-25)である。さらなるプロモーターは、“Useful proteins from recombinant bacteria” in Scientific American, 1980, 242: 74-94; 及びSambrookなど., 1989, 前記に記載される。
【0104】
糸状菌宿主細胞における本発明の核酸構造体の転写を方向づけるための適切なプロモーターの例は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・アワモリグルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコル・ミエヘイリパーゼ、アスペルギラス・オリザエ アルカリプロテアーゼ、アスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアセトアミダーゼ、フサリウム・ベネナタムアミログルコシダーゼ(WO00/56900号)、フサリウム・ベネナタムDaria(WO00/56900号)、フサリウム・ベネナタムQuinm(WO00/56900号)、フサリウム・オキシスポラムトリプシン様プロテアーゼ(WO96/00787号)、トリコダーマ・レセイβ−グルコシダーゼ、トリコダーマ・レセイセロビオヒドロラーゼI、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼI、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼII、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼIII 、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼIV、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼV、トリコダーマ・レセイキシラナーゼI、トリコダーマ・レセイキシラナーゼII、トリコダーマ・レセイβ−キシロシダーゼ、並びにNA2-tpiプロモーター(アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ及びアスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼをコードする遺伝子からのプロモーターのハイブリッド)、及びそれらの変異体の切断され、及びハイブリッドのプロモーターである。
【0105】
酵母宿主においては、有用なプロモーターは、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO−1)、サッカロミセス・セレビシアエガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシアエアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH1、ADH2/GAP)、サッカロミセス・セレビシアエトリオースホスフェートイソメラーゼ(TPI)、サッカロミセス・セレビシアエ金属チオニン(CUP1)、サッカロミセス・セレビシアエ3−ホスホグリセレートキナーゼ及びピチア・パストリスアルコールオキシダーゼ(AOX1)から得られる。酵母宿主細胞のための他の有用なプロモーターは、Romunosなど., 1992, Yeast8:423−488により記載される。
【0106】
制御配列はまた、適切な転写ターミネーター配列、すなわち転写を終結するために宿主細胞により認識される配列でもあり得る。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の3’側末端に作用可能に連結される。選択の宿主細胞において機能的であるいずれかのターミネーターが本発明において使用され得る。
【0107】
糸状菌宿主細胞のための好ましいターミネーターは、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、アスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼ及びフサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼについての遺伝子から得られる。
【0108】
酵母宿主細胞のための好ましいターミネーターは、サッカロミセス・セレビシアエエノラーゼ、サッカロミセス・セレビシアエチトクロムC(CYC1)、及びサッカロミセス・セレビシアエグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼについての遺伝子から得られる。酵母宿主細胞のための他の有用なターミネーターは、Romanosなど., 1992, 前記により記載される。
【0109】
制御配列はまた、適切なリーダー配列、すなわち宿主細胞による翻訳のために重要であるmRNAの非翻訳領域でもあり得る。リーダー配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5’末端に作用可能に連結される。選択の宿主細胞において機能的であるいずれかのリーダー配列が、本発明において使用され得る。
【0110】
制御配列はまた、適切なリーダー配列、すなわち宿主細胞による翻訳のために重要であるmRNAの非翻訳領域でもあり得る。リーダー配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5’末端に作用可能に連結される。選択の宿主細胞において機能的であるいずれかのリーダー配列が、本発明において使用され得る。
糸状菌宿主細胞のための好ましいリーダーは、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランストリオースリン酸イソメラーゼについての遺伝子から得られる。
【0111】
酵母宿主細胞のための適切なリーダーは、サッカロミセス・セレビシアエエノラーゼ(ENO−1)、サッカロミセル・セレビシアエ3−ホスホグリセレートキナーゼ、サッカロミセス・セレビシアエα−因子及びサッカロミセス・セレビシアエアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)についての遺伝子から得られる。
【0112】
制御配列はまた、ポリアデニル化配列、すなわちヌクレオチド配列の3’末端に操作可能に連結され、そして転写される場合、転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するためにシグナルとして宿主細胞により認識される配列でもあり得る。選択の宿主細胞において機能的であるいずれかのポリアデニル化配列が,本発明において使用される。
【0113】
糸状菌宿主細胞のための好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギキラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、フサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼ及びアスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼについての遺伝子から得られる。
酵母宿主細胞のための有用なポリアデニル化配列は、Guo and Sherman, 1995, Molecular Cellular Biology 15: 5983-5990により記載されている。
【0114】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に連結されるアミノ酸配列をコードし、そしてそのコードされたポリペプチドを細胞の分泌路中に方向づけるシグナルペプチドコード領域でもあり得る。核酸配列のコード配列の5’側末端は、本来、分泌されたポロペプチドをコードするコード領域のセグメントと翻訳読み取り枠を整合して、天然において連結されるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。他方では、コード配列の5’側末端は、そのコード配列に対して外来性であるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。そのコード配列が天然において、シグナルペプチドコード領域を含まない外来性シグナルペプチドコード領域が必要とされる。他方では、外来性シグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドの増強された分泌を得るために、天然のシグナルペプチドコード領域を単純に置換することができる。しかしながら、分泌路中に発現されたポリペプチドを方向づけるいずれかのシグナルペプチドコード領域が、本発明に使用され得る。
【0115】
細菌宿主細胞のための効果的なシグナルペプチドコード領域は、バチルスNCIB11837マルトゲン性アミラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼ、バチルス・リケニホルミススブチリシン、バチルス・リケニホルミスβ−ラクタマーゼ、バチルス・アステロサーモフィラス中性プロテアーゼ(nprT, nprS, nprM)、及びバチルス・スブチリスprsAについての遺伝子から得られるシグナルペプチド領域である。追加のシグナルペプチドは、Sinomen and Palva, 1993, Microbiological Reviews 57: 109-137 により記載される。
【0116】
糸状菌宿主細胞のための効果的なシグナルペプチドコード領域は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガー中性アミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイアスペラギン酸プロテイナーゼ、ヒューミコラ・インソレンスセルラーゼ及びヒューミコラ・ラヌギノサリパーゼについての遺伝子から得られたシグナルペプチドコート領域である。
【0117】
酵母宿主細胞のための有用なシグナルペプチドは、サッカロミセス・セレビシアエα−因子及びサッカロミセル・セレビシアエインバーターゼについての遺伝子から得られる。他の有用なシグナルペプチドコード領域は、Romanos など., 1992, 前記、及びXiong など in Journal of Applied Microbiology 2005, 98, 418-428により記載される。
【0118】
好ましい観点においては、シグナルペプチドコード領域は、配列番号2のアミノ酸1〜22をコードする、配列番号1のヌクレオチド1〜66である。もう1つの好ましい観点においては、シグナルペプチドコード領域は、配列番号4のアミノ酸1〜22をコードする、配列番号3のヌクレオチド1〜66である。
【0119】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端で位置するアミノ酸配列をコードするプロペプチドコード領域であり得る。得られるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又は多くの場合、チモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般的に不活性であり、そしてプロポリペプチドからプロペプチドの触媒又は自己触媒分解により成熟した活性ポリペプチドに転換され得る。プロペプチドコード領域は、バチルス・サブチリスアルカリプロテアーゼ(aprE)、バチルス・サブチリス中性プロテアーゼ(nprT)、サッカロミセス・セレビシアエα−因子、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ遺伝子、及びミセリオプソラ・サーモフィリア ラッカーゼについての遺伝子から得られる(WO95/33836号)。
【0120】
シグナルペプチド及びプロペプチド領域の両者がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合、そのプロペプチド領域は、ポリペプチドのアミノ末端の次に位置し、そしてシグナルペプチド領域は、プロペプチド領域のアミノ末端の次に位置する。
【0121】
宿主細胞の増殖に関して、ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することがまた所望される。調節システムの例は、調節化合物の存在を包含する、化学的又は物理的刺激に応答して、遺伝子の発現の開始又は停止を引き起こすそれらのシステムである。原核生物系における調節システムは、lac, tac及びtrpオペレーターシステムお包含する。酵母においては、ADH2システム又はGAL1システムが使用され得る。糸状菌においては、TAKAα−アミラーゼプロモーター、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼプロモーター及びアスペルギラス・オリザエグルコアミラーゼプロモーターが、調節配列として使用さえ得る。調節配列の他の列は、遺伝子増幅を可能にするそれらの配列である。
【0122】
発現ベクター
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチド、プロモーター、及び転写及び翻訳停止シグナルを含んで成る組換え発現ベクターにも関する。上記の種々の核酸及び制御配列は、1又は複数の便利な制限部位でポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の挿入又は置換を可能にするためにそれらの部位を含むことができる組換え発現ベクターを生成するために一緒に連結され得る。他方では、本発明のヌクレオチド配列は、前記ヌクレオチド配列又は前記配列を含んで成る核酸構造体を、発現のための適切なベクター中に挿入することによって発現され得る。発現ベクターを創造する場合、そのコード配列はベクターに位置し、その結果、コード配列は発現のための適切な制御配列により作用可能に連結される。
【0123】
組換え発現ベクターは、組換えDNA方法に便利にゆだねられ得、そしてヌクレオチド配列の発現をもたらすことができるいずれかのベクター(例えば、プラスミド又はウィルス)であり得る。ベクターの選択は典型的には、ベクターが導入される予定である宿主細胞とベクターとの適合性に依存するであろう。ベクターは、線状又は閉環された環状プラスミドであり得る。
【0124】
ベクターは自律的に複製するベクター、すなわち染色体存在物として存在するベクター(その複製は染色体複製には無関係である)、例えばプラスミド、染色体外要素、ミニクロモソーム又は人工染色体であり得る。ベクターは自己複製を確かめるためのいずれかの手段を含むことができる。他方では、ベクターは、糸状菌細胞中に導入される場合、ゲノム中に組み込まれ、そしてそれが組み込まれている染色体と一緒に複製されるベクターであり得る。さらに、宿主細胞のゲノム中に導入される全DNA又はトランスポゾンを一緒に含む、単一のベクター又はプラスミド、又は複数のベクター又はプラスミドが使用され得る。
【0125】
本発明のベクターは好ましくは、形質転換された細胞の容易な選択を可能にする1又は複数の選択マーカーを含む。選択マーカーは、1つの遺伝子であり、その生成物は、殺生物剤又はウィルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求性に対する原栄養要求性、及び同様のものを提供する。
【0126】
条件付きで必須の遺伝子は、非抗生物質選択マーカーとして機能することができる。条件付きで必須の細菌性選択マーカーの非制限的例は、細菌がD−アラニンの不在下で培養される場合、唯一必須である、バチル・スブチリス、バチルス・リケニホルミス又は他のバチルスからのdal遺伝子である。また、UDP−ガラクトースのターンオーバーに関与する酵素をコードする遺伝子は、細胞がガラクトースの存在下で増殖されるか、ガラクトースの存在下で生じる場合、細胞において条件付きで必須のマーカーとして機能することができる。そのような遺伝子の非制限的な例は、UTP−依存性ホスホリラーゼ(EC2. 7. 7. 10)、UDP−グルコース−依存性ウリジルイルトランスフェラーゼ(EC2. 7. 7. 12)又はUDP−ガラクトースエピメラーゼ(EC5. 1. 3. 2)をコードするB. スブチリス又はB.リケニホルミスからのそれらの遺伝子である。
【0127】
また、バチルスのキシロースイソメラーゼ遺伝子、例えばxylAが、単一の炭素源としてキシロースを含む最少培地において増殖される細胞において選択マーカーとして使用され得る。グルコネートを利用するために必須な遺伝子、すなわちgntK及びgntPがまた、単一の炭素源としてグルコネートを含む最少培地において増殖される細胞において選択マーカーとして使用され得る。条件付きで必須の遺伝子の他の例は、当業界において知られている。抗生物質選択マーカーは、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、エリトロマイシン、テトラサイクリン、ネオマイシン、ヒグロマイシン又はメトトレキセートのような抗生物質に対する抗生物質耐性を付与する。
【0128】
細菌選択マーカーの例は、バチルス・サブチリス又はバチルス・リケニホルミスからのdal遺伝子、又は抗生物質、例えばアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリン耐性を付与するマーカーである。酵母宿主細胞のための適切なマーカーは、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1及びURA3である。糸状菌宿主細胞に使用するための選択マーカーは、次の群から選択されるが、但しそれらだけには限定されない;amdS (アセトアミダーゼ)、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar (ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hph (ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD (硝酸レダクターゼ)、pyrG (オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sC (硫酸アデニルトランスフェラーゼ) 及びtrpC (アントラニル酸シンターゼ)、並びにそれらの同等物。アスペルギラス・ニジュランス又はアスペルギラス・オリザエのamdS及びpyrG遺伝子及びストレプトミセス・ヒグロスコピカスのbar遺伝子が、アスペルギラス細胞への使用のために好ましい。
【0129】
本発明のベクターは好ましくは、宿主細胞ゲノム中へのベクターの安定した組み込み、又は細胞のゲノムに無関係に細胞におけるベクターの自律的複製を可能にする要素を含む。
【0130】
宿主細胞のゲノム中への組み込みのためには、ベクターは、相同又は非相同組換えによるゲノム中へのベクターの安定した組み込みのためのベクター中のポリペプチド、又はいずれか他の要素をコードするポリヌクレオチド配列に依存する。他方では、ベクターは、染色体における正確な位置で、宿主細胞のゲノム中への相同組換えによる組み込みを方向づけるための追加のヌクレオチド配列を含むことができる。正確な位置での組み込みの可能性を高めるために、組み込み要素は好ましくは、相同組換えの可能性を高めるためにその対応する標的配列と高い程度の同一性を示す十分な数の核酸、例えば100〜10,000個の塩基対、好ましくは400〜10,000個の塩基対、及び最も好ましくは800〜10,000個の塩基対を含むべきである。組み込み要素は、宿主細胞のゲノムにおける標的配合と相同であるいずれかの配列であり得る。さらに、組み込み要素は、非コード又はコードヌクレオチド配列であり得る。他方では、ベクターは非相同組換えにより宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得る。
【0131】
自律複製のためには、ベクターはさらに、問題の宿主細胞においてのベクターの自律的な複製を可能にする複製の起点を含んで成る。複製の起点は、細胞において機能する自律複製を仲介するいずれかのプラスミド複製体であり得る。用語“複製の起点”又は“プラスミド複製体”とは、本明細書においては、プラスミド又はベクターのインビボでの複製を可能にするヌクレオチド配列として定義される。
【0132】
複製の細菌起点の例は、E.コリにおける複製を可能にするプラスミドpBR322, pUC19, pACYC177及びpACYC184, 及びバチルスにおける複製を可能にするpUB110, pE194, pTA1060及びpAMβ1の複製の起点である。
酵母宿主細胞への使用のための複製の起点の例は、複製の2ミクロン起点、すなわちARS1, ARS4, ARS1及びCEN3の組み合わせ、及びARS4及びCEN6の組み合わせである。
【0133】
糸状菌細胞において有用な複製の起点の例は、AMA1及びANS1である(Gems など., 1991 , Gene 98:61-67; Cullen et al., 1987, Nucleic Acids Research 15: 9163-9175; WO 00/24883号)。AMA1遺伝子の単離及び前記遺伝子を含んで成るプラスミド又はベクターの構成は、WO00/24883号に開示される方法に従って達成され得る。
【0134】
本発明のポリヌクレオチドの1以上のコピーが、遺伝子生成物の生成を高めるために宿主細胞中に挿入され得る。ポリヌクレオチドのコピー数の上昇は、宿主細胞ゲノム中に配列の少なくとも1つの追加のコピーを組み込むことによって、又はポリヌクレオチドと共に増幅可能な選択マーカー遺伝子を含むことによって得られ、ここで細胞は選択マーカー遺伝子の増幅されたコピーを含み、そしてそれにより、ポリヌクレオチドの追加のコピーが、適切な選択剤の存在下で前記細胞を培養することによって選択され得る。
【0135】
本発明の組換え発現ベクターを構成するために上記要素を連結するために使用される方法は、当業者に良く知られている(例えば、Sambrookなど., 1989, 前記を参照のこと)。
【0136】
宿主細胞
本発明はまた、ポリペプチドの組換え生成において都合良く使用される、本発明のポリヌクレオチドを含んで成る組換え宿主にも関する。本発明のポリヌクレオチドを含んで成るベクターは、そのベクターが染色体組み込み体として、又は前記のような自己複製染色体外ベクターとして維持されるように、宿主細胞中に導入される。用語“宿主細胞”とは、複製の間に生じる突然変異のために、親細胞と同一ではない親細胞のいずれかの子孫を包含する。宿主細胞の選択は、ポリペプチドをコードする遺伝子及びその源に、かなりの程度依存するであろう。
宿主細胞は、単細胞微生物、例えば原核生物、又は単細胞微生物、真核生物であり得る。
【0137】
有用な単細胞微生物は、細菌細胞、例えば次のグラム陽性細菌バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウシ(Bacillus clausii)、バチルス・コアギランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ラウタス(Bacillus lautus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・スリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)、又はストレプトミセス細胞、例えばストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトミセス・ムリナス(Streptomyces murinus)、又は次のグラム陰性細菌:E.コリ及びプソイドモナスsp.(但し、それらだけには限定されない)である。好ましい態様においては、細菌宿主細胞は、バチルス・レンタス、バチルス・リケニホルミス、バチルス・ステアロサーモフィラス又はバチルス・サブチリス細胞である。もう1つの好ましい態様においては、バチルス細胞は、好アルカリ性バチルスである。
【0138】
細菌宿主細胞中へのベクターの導入は例えば、コンピテント細胞(例えば、Young and Spizizin, 1961, Journal of Bacteriology 81: 823-829, 又はDubnau and Davidoff-Abelson, 1971, Journal of Molecular Biology 56: 209-221 を参照のこと)を用いてプロトプラスト形質転換(例えば、Changand Cohen, 1979, Molecular General Genetics 168: 111-115)、エレクトロポレーション(例えば、Shigekawa and Dower, 1988, Biotechniques 6: 742-751を参照のこと)又は接合(例えば、Koehler and Thorne, 1987, Journal of Bacteriology 169: 5771-5278を参照のこと)によりもたらされ得る。
【0139】
宿主細胞は、真核生物、例えば哺乳類、昆虫、植物、又は菌類細胞であり得る。
好ましい態様においては、宿主細胞は菌類細胞である“菌類”とは、本明細書において使用される場合、門アスコミコタ(Ascomycota)、バシジオミコタ(Basidiomycota)、キトリジオミコタ(Chytridiomycota)及びヅイゴミコタ(Zygomycota)(Hawksworth など., Ainsworth and Bisby’s Dictionary of the Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UKにより定義される)、及びオーミコタ(Oomycota)(Hawksworth など., 1995, 前記、171ページに引用される)、並びに栄養胞子菌(Hawksworh など., 1995, 前記)を包含する。
【0140】
より好ましい態様においては、菌類宿主細胞は酵母細胞である“酵母”とは、本明細書において使用される場合、子嚢胞子酵母(Endomycetals)、担子胞子酵母、及び不完全菌類(Blastomycetes)に属する酵母を包含する。酵母の分類は未来において変化し得るので、本発明のためには、酵母は、Biology and Activities of Yeast (Skinner, F.A., Passmore, S.M., and Davenport, R.R., eds. Soc. App. Bacteriol. Symposium Series No. 9, 1980) に記載のようにして定義されるであろう。
さらにより好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、カンジダ(Candida)、ハンセヌラ(Hunsenula)、クレベロミセス(Kluyveromyces)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)又はヤロウィア(Yarrowia)である。
【0141】
最も好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・メサノリカ(Pichia methanolica)、サッカロミセス・カルスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyses cerevisiae)、サッカロミセス・ジアスタチカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイビリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensisi)、又はサッカロミセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)細胞である。もう1つの最も好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、来るべろミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)である。もう1つの最も好ましい態様においては、酵母宿主細胞は、ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)細胞である。
【0142】
もう1つのより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は糸状菌細胞である。“糸状菌”とは、ユーミコタ(Eumycota)及びオーミコタ(Oomycota)のすべての糸状形を包含する(Hawksworthなど., 1995, 前記により定義されるような)。糸状菌は一般的に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン及び他の複合多糖類から構成される菌子体壁により特徴づけられる。成長増殖は、菌子拡張によってであり、そして炭素代謝は絶対好気性である。対照的に、酵母、例えばサッカロミセス・セレビシアエによる成長増殖は、単細胞葉状体の発芽によってであり、そして炭素代謝は発酵性である。
【0143】
さらにより好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギラス(Aspergillus)、アウレオバシジュウム(Aureobasidium)、ベルカンデラ(Bjerkandera)、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)、コプリナス(Coprinus)、コリオラス(Coriolus)、クリプトコーカス(Cryptococcus)、フィロバシジウム(Filobasidium)、フサリウム(Fusarium)、ヒューミコラ(Humicola)、マグナポルセ(Magnaporthe)、ムコル(Mucor)、ミセリオプソラ(Myceliophthora)、ネオカリマスチックス(Neocallimastix)、ネウロスポラ(Neurospora)、、パエシロミセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicilium)、ファネロカエト(Phanerochaete)、フェビア(Phlebia)、ピロミセス(Piromyces)、プレウロタス(Pleurotus)、シゾフィラム(Schizophyllum)、タラロミセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トラメテス(Trametes)又はトリコダーマ(Trichoderma)の種の細胞であるが、但しそれらだけには限定されない。
【0144】
最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、アスペルギラス・アワモリ、アスペルギラス・フミガタス、アスペルギラス・ホエチダス、アスペルギラス・ジャポニカ、アスペルギラス・ニジュランス、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・オリザエ細胞である。
【0145】
もう1つの最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、フサリウム・バクトリジオイデス、フサリウム・クロックウェレンズ 、フサリウム・セレアリス、フサリウム・クルモラム、フサリウム・グラミネアラム、フサリウム・グラミナム、フサリウム・ヘテロスポラム、フサリウム・ネグンジ、フサリウム・オキシスポラム、フサリウム・レチキュラタム、フサリウム・ロゼウム、フサリウム・サムブシウム、フサリウム・サルコクロウム、フサリウム・ソラニ、フサリウム・スポロトリキオイデス、フサリウム・スルフレウム、フサリウム・トルロサム、フサリウム・トリコセシオイデス又はフサリウム・ベネナタム細胞である。
【0146】
さらに最も好ましい観点においては、糸状菌親宿主細胞は、ベルカンデラ・アダスタ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレギエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブロサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・スブルファ(Ceriporiopsis subrufa)又はセリポリオプシス・スベルミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、コプリナス・シネレス(Coprinus cinereus)、コリオラス・ヒルスタス(Coriolus hirsutus)、ヒューミコラ・インソレンス、ヒューミコラ・ラヌギノサ、ムコル・ミエヘイ、ミセリオプソラ・サーモフィリア、ネウロスポラ・クラサ、ペニシリウム・プルプロゲナム、ファネロカエト・キソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、フェビア・ラジアタ(Phlebia radiata)、プレウロタス・エリンギ(Pleurotus eryngii)、チエラビア・テレストリス、トラメテス・ビロサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシコロル(Trametes versicolor)、トリコダーマ・ハルジアナム、トリコダーマ・コニンギ、トリコダーマ・ロンジブラキアタム、トリコダーマ・レセイ又はトリコダーマ・ビリデ細胞である。
【0147】
菌類細胞は、プロトプラスト形質転換、プロトプラストの形質転換、及びそれ自体知られている態様での細胞壁の再生を包含する工程により形質転換され得る。アスペルギラス及びトリコダーマ宿主細胞の形質転換のための適切な方法は、ヨーロッパ特許第238023号及びYeltonなど., 1984, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81; 1474-1874に記載される。フラリウム種を形質転換するための適切な方法は、Malardierなど., 1989, Gene78: 147-156, 及びWO96/00787号により記載される。酵母は、Becker and Guarente. In Abelson, J.N. and Simon, M.I., editors, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, Methods in Enzymology, Volume 194, pp 182-187, Academic Press, Inc., New York; Ito など, 1983, Journal of Bacteriology 153: 163; 及びHinnen など, 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75; 1920により記載される方法を用いて形質転換され得る。
【0148】
生成方法
本発明はまた、(a)その野生型において、前記ポリペプチドの生成の助けと成る条件下でポリペプチドを生成することができる細胞を培養し;そして(b)前記ポリペプチドを回収することを含んで成る、本発明のポリペプチドの生成方法にも関する。好ましくは、細胞は、シトロバクター属及びより好ましくは、シトロバクター・ブラキのものである。
本発明はまた、(a)ポリペプチドの生成を助ける条件下で宿主細胞を培養し;そして(b)ポリペプチドを回収することを含んで成る、本発明のポリペプチドを生成するための方法にも関する。
【0149】
本発明はまた、(a)ポリペプチドの生成を助ける条件下で宿主細胞を培養し;そして(b)ポリペプチドを回収することを含んで成る、本発明のポリペプチドを生成するための方法にも関し、ここで前記宿主細胞は配列番号1及び3のいずれか1つの成熟ポリペプチドコード領域に少なくとも1つの突然変異を有する変異体ヌクレオチド配列を含んで成り、ここで前記変異体ヌクレオチド配列は配列番号2及び4のいずれか1つのアミノ酸1〜41から成るポリペプチドをコードする。
【0150】
本発明の生成方法においては、細胞は、当業界において知られている方法を用いて、ポリペプチドの生成のために適切な栄養培地において培養される。例えば、細胞は、ポリペプチドの発現及び/又は単離を可能にする、適切な培地において、及び条件下で行われる実験室用又は産業用発酵器において、振盪フラスコ培養、小規模又は大規模発酵(連続、バッチ、供給バッチ、又は団体状態発酵を包含する)により培養され得る。培養は、炭素及び窒素源及び無機塩を含んで成る適切な栄養培地において、当業界において知られている方法を用いて行われる。適切な培地は、市販されているか、又は公開されている組成(例えば、American Type Culture Collection のカタログにおける)に従って調製され得る。ポリペプチドが栄養培地に分泌される場合、ポリペプチドは培地から直接的に回収され得る。ポリペプチドが分泌されない場合、それは細胞溶解物から回収され得る。
【0151】
ポリペプチドは、そのポリペプチドに対して特異的である、当業界において知られている方法を用いて検出され得る。それらの検出方法は、特定の抗体、ポリペプチド生成物の形成、又はポリペプチド基質の消出の使用を包含する。例えば、プロテアーゼアッセイは、本明細書に記載されるようなポリペプチドの活性を決定するために使用され得る。
得られるポリペプチドは、当業界において知られている方法により回収され得る。例えば、ポリペプチドは、従来の方法、例えば遠心分離、濾過、抽出、噴霧−乾燥、蒸発又は沈殿(但し、それらだけには限定されない)により、栄養培地から回収され得る。
【0152】
本発明のポリペプチドは、当業界において知られている種々の方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動方法(例えば、分離用等電点電気泳動)、示差溶解性(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS−PAGE又は抽出(但し、それらだけには限定されない)により精製され得る(例えば、Protein Purification, J.C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publlishers, New York, 1989を参照のこと)。
【0153】
トランスジェニック植物
本発明はまた、ポリペプチドを、回収できる量で発現し、そして生成するために、本発明のフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列により形質転換されているトランスジェニック植物、その植物部分又は植物細胞にも関する。ポリペプチドは、植物又は植物部分から回収され得る。他方では、組換えポリペプチドを含む植物又は植物部分は、食物又は飼料の品質を改良し、例えば栄養価値、嗜好性及び流動性質を改良するために、又は抗栄養因子を破壊するために使用され得る。
特定の態様においては、ポリペプチドは、種子の内生精子貯蔵液胞にも標的化される。これは、適切なシグナルペプチドにより前駆体としてそれを合成することによって行われる。Horvath など .、 PNAS, Feb. 15,2000, vol. 97, no. 4, p. 1914-1919を参照のこと。
【0154】
トランスジェニック植物は、双子葉植物又は単子葉植物又は構築されたその変異体であり得る。単子葉植物の例は、草、例えば湿潤地の草本(ブルーグラス、イチゴツナギ属)、飼草、例えばウシノケグサ、ドクムギ、温帯性草本、例えばヌカボ、及び穀類、例えば小麦、オート麦、ライ麦、イネ、モロコシ、ライコムギ(小麦(Triticum)及びライ麦(Secale)の安定化されたハイブリッド)及びトウモロコシ(サトウモロコシ)である。双子葉植物の例は、タバコ、マメ科植物、例えばヒマワリ(Helianthus)、綿(Gossypium)、ルピナス、ジャガイモ、砂糖大根、エンドウ、インゲン豆及び大豆、及びアブラナ科植物(ブラシカセアエ科(Brassicaceae))、例えばカリフラワー、ナタネ種子及び密接に関連するモデル生物アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)である。例えば、アメリカ特許第5,689,054号及び第6,111,168号に記載されるような低−フィテート植物は、構築された植物の例である。
【0155】
植物部分の例は、茎、カルス、葉、根、果物、種子及び塊茎、並びにそれらの部分を含んで成る個々の組織、例えば表皮、葉肉、柔組織、維管束組織、分裂組織である。また特定の植物細胞区画、例えばクロロプラスト、アポプラスト、ミトコンドリア、液胞、ペルオキシゾーム及び細胞質が、植物部分であると思われる。さらに、組織起源が何であろうと、いずれの植物細胞でも、植物部分であると思われる。同様に、植物部分、例えば本発明の利用を促進するために単離された特定の組織及び細胞はまた、植物部分、例えば胚、内生精子、アリューロン及び被膜であると思われる。
【0156】
そのような植物、植物部分及び植物細胞の子孫はまた、本発明の範囲内に包含される。
本発明のポリペプチドを発現するトランスジェニック植物又は植物細胞は、当業界において知られている方法に従って構成され得る。手短には、植物又は植物細胞は、本発明のポリペプチドをコードする、1又は複数の発現構造体を、植物宿主ゲノム中に導入し、そして得られる修飾された植物又は植物細胞をトランスジェニック植物又は植物細胞中に成長せしめることによって構成される。
【0157】
便利には、発現構造体は、選択の植物又は植物における核酸配列の発現のために必要とされる適切な調節配列により作用可能に連結される本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る核酸構造体である。さらに、発現構造体は、発現構造体が組み込まれている宿主細胞を同定するために有用な選択マーカー、及び問題の植物中への構造体の導入のために必要なDNA配列を含んで成る(後者は、使用されるDBA導入方法に依存する)。
【0158】
調節配列、例えばプロモーター及びターミネーター配列、及び任意には、シグナル又はトランスジット配列の選択は、例えばポリペプチドがいつ、どこで及びいかにして発現されることを所望するかに基づかれる。例えば、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、構成的又は誘発的であり、又は進行的、段階又は組織特異的であり、そして遺伝子生成物は、特定組織又は植物部分、例えば種子又は葉に標的化され得る。調節配列は、Taqueなど., 1988, Plant Physiology 86: 506により記載される。
【0159】
構成的発現のために、次のプロモーターが使用され得る:35S−CaMVプロモーター(Franck など., 1980, Cell 21: 285-294)、トウモロコシユビキチン1(Christensen AH, Sharrock RA and Quail 1992. Maize polyubiquitin genes: structure, thermal perturbation of expression and transcript splicing, and promoter activity following transfer to protoplasts by electroporation)、又はイネアクチン1プロモーター(Plant Mo. Biol. 18,675-689. ; Zhang W, McElroy D. and Wu R 1991, Analysis of rice Act1 5'region activity in transgenic rice plants. Plant Cell 3,1155-1165)。
【0160】
器官特異的プロモーターは例えば、貯蔵吸込み組織、例えば種子、ジャガイモ塊茎及び果物(Edwards & Coruzzi, 1990, Ann. Rev. Genet. 24: 275-303)、又は代謝吸込み組織、例えば分裂組織(Ito など., 1994, Plant Mol. Biol. 24: 863-878)からのプロモーター、種子特異的プロモーター、例えばイネからのグルテリン、プロラミン、グロブリン又はアルブミンプロモーター(Wu など., 1998, Plant and Cell Physiology 39: 885- 889)、Vicia fabaからのレグニンB4及び未知の種子タンパク質遺伝子からのVicia fabaプロモーター(Conrad など., 1998, Journal of Plant Physiology 152: 708-711)、種子油体タンパク質からのプロモーター(Chen など., 1998, Plant and Cell Physiology 39: 935-941)、ブラシカ・ナパス(Brassica napus)からの貯蔵タンパク質napAプロモーター又は当業界において知られている、例えばWO91/14772号に記載されるようないずれか他の種子特異的プロモーターであり得る。
【0161】
さらに、プロモーターは、葉特異的プロモーター、例えばイネ又はトマトからのrbcsプロモーター(Kyozuka など., 1993, Plant Physiology 102: 991-1000)、クロレラウィルスアデニンメチルトランスフェラーゼ遺伝子プロモーター(Mitra and Higgins, 1994, Plant Molecular Biology 26: 85-93)、又はイネからのaldP遺伝子プロモーター(Kagaya など., 1995, Molecular and General Genetics 248: 668-674)、又は創傷誘発性プロモーター、例えばジャガイモpin2プロモーター(Xu など., 1993, Plant Molecular Biology 22 : 573-588)であり得る。同様に、プロモーターは、非生物学的処理、例えば温度、渇水又は塩分の変更により誘発できるか、又はプロモータを活性化する外部的に適用される物質、例えばエタノール、エストロゲン、植物ホルモン様エチレン、アブシジン酸、ジベレリン酸及び/又は重金属により誘発できる。
【0162】
プロモーターエンハンサー要素がまた、植物におけるポリペプチドのより高い発現を達成するために使用され得る。例えば、プロモーターエンハンサー要素は、プロモーターと、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列との間に位置するイントロンであり得る。例えば、Xuなど., 1993(前記)は、発現を増強するためへのイネアクチン1遺伝子の最初のイントロンの使用を開示する。
【0163】
さらに、コドン使用法は、発現を改良するために、問題の植物種のために最適化され得る(上記に言及されるHorvathなどを参照のこと)。
発現構造体の選択マーカー遺伝子及びいずれか他の部分は、当業界において入手できるそれらから選択され得る。
【0164】
核酸構造体は、当業界において知られている従来の技法、例えばアグロバクテリウム介在性形質転換、ウィルス介在性形質転換、マイクロインジェクション、粒子衝撃、バイオリステック形質転換及びエレクトロポレーションに従って、植物ゲノム中に組込まれる(Gasserなど., 1990, Science 244: 1293; Potrykus, 1990, BiolTechnology 8 : 535; Shimamoto など., 1989, Nature 338: 274)。
【0165】
現在、アグロバクテリウム・ツメファシエンス介在性遺伝子トランスファーは、トランスジェニック双子葉類を生成するための選択方法であり(再考のためには、Hooykas and Schilperoort, 1992, Plant Molecular Biology 19: 15-38を参照のこと)、そして、それはまた、単子葉類を形質転換するためにも使用され得るが、しかし他の形質転換方法が一般的にそれらの植物のために好ましい。現在、アグロバクテリウムアプローチを補足する、トランスジェニック単子葉類を生成するための選択方法は、胚細胞又は成長胚の粒子衝撃である(形質転換DNAにより被覆された微小金又はタングステン粒子)(Christou, 1992, Plant Journal 2 : 275-281; Shimamoto, 1994, Current Opinion Biotechnology 5: 158-162; Vasil など., 1992, BiolTechnology 10: 667-674)。単子葉類の形質転換のための他の方法は、Omirullehなど., 1993, Plant Molecular Biology21: 415-428により記載されるようにプロトプラスト形質転換に基づかれる。
【0166】
形質転換に続いて、そこに組込まれた発現構造体を有する形質転換体が選択され、そして当業界において良く知られていた方法に従って、完全な植物に再生される。しばすば、形質転換方法は、2種の別々のT-DNA構造体による同時形質転換を用いることによる、再生の間又は次の生成において、選択遺伝子の選択的排除、又は特異的組換え酵素による選択遺伝子の部位特異的排除のために企画される。
【0167】
本発明はまた、(a)本発明のプロテアーゼ活性有するポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成るトランスジェニック植物又は植物細胞を、前記ポリペプチドの生成の助けとなる条件下で栽培し、そして(b)前記ポリペプチドを回収することを含んで成る、本発明のポリペプチドを生成するための方法にも関する。
【0168】
トランスジェニック動物
本発明はまた、トランスジェニック非ヒト動物及びその生成物又は要素にも関し、その例は体液、例えば乳汁及び血液、器官、肉及び動物細胞である。例えば、哺乳類細胞においてタンパク質を発現するための技法は当業界において知られている。例えば、ハンドブック Protein Expression: A Practical Approach, Higgins and Hames (eds), Oxford University Press (1999), 及びGene Transcription, RNA processing, and Post-translational Processingに関するこのシリーズの他の3種のハンドブックを参照のこと。
【0169】
一般的には、トランスジェニック動物を調製するために、選択された動物の選択された細胞が、本発明のプロテアーゼ活性有するポリペプチドをコードする核酸配列により形質転換され、ポリペプチドが発現され、そして生成される。ポリペプチドが、動物から、例えば雌動物の乳汁から回収され、又はそれは動物自体の有益性のために、例えば動物の消化を助けるために発現され得る。動物の例は、下記の動物飼料及び動物飼料添加物のセクションに言及されている。
【0170】
動物の乳汁からプロテアーゼを回収する観点から、トランスジェニック動物を生成するためには、プロテアーゼをコードする遺伝子が問題の動物の受精卵中に、例えば適切な乳汁タンパク質プロモーター及びプロテアーゼをコードする遺伝子を含んで成るトランスジーン発現ベクターの使用により挿入され得る。トランスジーン発現ベクターは、受精卵中にマイクロインジェクションされ、そして好ましくは、染色体中に永久的に組込まれる。卵が成長し、そして分裂し始めると、可能性ある胚が代理母中に移植され、そしてトランスジーンを担持する動物が同定される。次に、その得られる動物は、従来の飼育により繁殖される。フィターゼ変異体が動物の乳汁から精製される。例えば、Meade, H. M. など(1999): Expression of recombinant proteins in the milk of transgenic animals, Gene expression systems: Using nature for the art of expression. J. M. Fernandez and J. P. Hoeffler (eds. ), Academic Pressを参照のこと。
【0171】
他方では、その体細胞及び/又は生殖細胞のゲノムに、プロテアーゼをコードするトランスジーンを含む異種トランスジーン構造体を包含する核酸配列を担持するトランスジェニック非ヒト動物を生成するために、トランスジーンが、WO2000064247号に開示されるように、フィターゼ変異体の唾液腺特異的発現のための第1の調節配列に作用可能に連結され得る。
【0172】
組成物及び使用
さらなる観点においては、本発明は、本発明のポリペプチドを含んで成る組成物、及びそれらの使用方法に関する。
ポリペプチド組成物は、当業者において知られている方法に従って調製され得、そして液体又は乾燥組成物の形で存在することができる。例えば、ポリペプチド組成物は、粒子又は微粒子の形で存在することができる。組成物に含まれるポリペプチドは、当業界において知られている方法に従って安定化され得る。
【0173】
本発明のフィターゼは、いずれかの産業的状況においては、フィテート、フィチン酸、及び/又はmyo−イノシトールの一、二、三、四及び/又は五−リン酸の分解のために使用され得る。それらの化合物中のリン酸成分が二価及び三価のカチオン、例えば金属イオン、すなわちカルシウム、鉄、亜鉛及びマグネシウム、並びに微量鉱物、マンガン、銅及びモリブデンの栄養的に必須のイオンをキレート化することは良く知られている。さらに、フィチン酸はまた、静電相互作用によりタンパク質を、一定の程度まで結合する。
従って、本発明のポリペプチドの好ましい使用は、動物飼料調製物(ヒト食品を包含する)又はそのような調製物の添加剤においてである。
【0174】
特定の態様においては、本発明のポリペプチドは、動物飼料の栄養価値を改良するために使用され得る。動物飼料(ヒト食品を包含する)の栄養価値の改良の非制限的例は、次のものである:飼料消化能力の改良;動物の成長の促進;飼料利用性の改良;タンパク質の生物利用能の改良;消化できるホスフェートのレベルの増強;フィターゼの開放及び/又は分解の改良;微量鉱物の生物利用能の改良;マクロ鉱物の生物利用能の改良;補足ホスフェート、微量鉱物及び/又はマクロ鉱物の添加の必要性の排除;及び/又は卵殻品質の改良。従って、飼料の栄養価値は高められ、そして動物の成長速度及び/又は体重増加及び/又は飼料転換率(すなわち、体重増加に対する消化された飼料の重量)が改良され得る。
【0175】
さらに、本発明のポリペプチドは、肥料のフィターゼレベルを低めるためにも使用され得る。
【0176】
動物、動物飼料及び動物飼料添加物
用語、動物とは、ヒトを包含するすべての動物を包含する。動物の例は、非反芻動物、及び反芻動物である。反芻動物は例えば、動物、例えば羊、ヤギ、馬及び蓄牛、例えば肉ウシ、乳牛及び子牛を包含する。特定の態様においては、動物は非反芻動物である。非反芻動物は、単一の胃を有する動物、例えばブタ又はイノシシ(子ブタ、成長しているブタ及び雌ブタを包含するが、但しそれらだけには限定されない);家禽類、例えば七面鳥、鴨及び鶏(ブロイラー鶏、産卵鶏を包含するが、但しそれらだけには限定されない);子牛;及び魚(サケ、マス、ティラピア、ナマズ、及び鯉を包含するが、但しそれだけには限定されない);及び甲殻類(小エビ及び車えびを包含するが、但しそれだけには限定されない)を包含する。
【0177】
用語、飼料又は飼料組成物とは、動物のために適切な、又は動物による摂取のために意図された、いずれかの化合物、調製物、混合物又は組成物を意味する。
本発明に従っての使用においては、ポリペプチドは、食事の前、後又は同時に動物に供給され得る。後者が好ましい。
【0178】
特定の態様においては、ポリペプチドは、それが飼料に添加される形において、又は飼料添加物に含まれる場合、実質的に純粋である。特定の態様においては、それは十分に定義されている。“十分に定義された”とは、フィターゼ調製物がサイズ排除クロマトグラフィーにより決定される場合、少なくとも50%の純度であることを意味する(WO01/58275号の例12を参照のこと)。他の特定の態様においては、フィターゼ調製物は、この方法により決定される場合、少なくとも60、70、80、85、88、90、92、94又は少なくとも95%の純度である。
【0179】
実質的に純粋な、及び/又は十分に定義されたポリペプチド調製物が好都合である。例えば、干渉性又は汚染性の他のポリペプチドを実質に有さないポリペプチドを、飼料に正しく適量に分けることがより容易である。用語“適量に分ける”とは、一貫した及び一定した結果を得ることの目的、及び所望する効果に基づいて用量を最適化する能力を正しくは言及する。
【0180】
しかしながら、動物飼料への使用に関しては、純粋であるフィターゼは必要ではなく;それは他のポリペプチドを含むことができ、この場合、それはフィターゼ調製物と呼ばれる。
フィターゼ調製物は、(a)飼料に直接的に添加され得(又はタンパク質の処理工程に直接的に使用され得る)、又は(b)1又は複数の中間体組成物、例えば続いて飼料に添加される(又は処理工程に使用される)飼料添加物又はプレミックスの生成に使用され得る。上記純度の程度は、上記(a)又は(b)のいずれに従って使用されても、元のポリペプチド調製物の純度を言及する。
【0181】
この高さの程度の純度を有するポリペプチド調製物は特に、組換え生成方法を用いて得ることができ、ところがそれらは、ポリペプチドが従来の発酵方法により生成される場合、得るにはそんなに容易ではなく、そしてより高いバッチからバッチへの変動を受けやすい。
そのようなポリペプチド調製物はもちろん、他のポリペプチドと共に混合され得る。
【0182】
ポリペプチドは、それが比較的純粋なポリペプチドとして存在する場合、いずれかの形で、又は動物飼料への添加のために意図された他の成分との混合物の形で、すなわち動物飼料添加物、例えばいわゆる動物飼料のためのプレミックスの形で、飼料に添加され得る。
さらなる観点においては、本発明は、動物の飼料への使用のための組成物、例えば動物飼料及び動物飼料添加物、例えばプレミックスに関する。
【0183】
本発明のポリペプチドとは別に、本発明の動物飼料添加物は、少なくとも1つの脂溶性ビタミン、及び/又は少なくとも1つの水溶性ビタミン、及び/又は少なくとも1つの微量鉱物、及び/又は少なくとも1つのマクロ鉱物を含む。前記飼料添加物はまた、少なくとも1つのマクロ鉱物を含むことができる。
【0184】
さらに、任意の飼料添加物成分は、着色剤、例えばカロテノイド、例えばβ−カロテノイド、アスタキサンチン、及びルテイン;芳香化合物;安定剤;抗菌ペプチド;多不飽和脂肪酸;反応性酵素生成種;及び/又は中でも、フィターゼ(EC3.1.3.8又は3.1.3.26);キシラーゼ(EC3.2.1.8)、ガラクタナーゼ(EC3.2.1.89);α−ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.22);プロテアーゼ(EC3.4._._);ホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32);ホスホリパーゼA2(EC3.1.1.4);リソホスホリパーゼ(EC3.1.1.5);ホスホリパーゼC(EC3.1.4.3);ホスホリパーゼD(EC3.1.4.4);及び/又はβグルカナーゼ(EC3.2.1.4又はEC3.2.1.6)から選択された少なくとも1つの他のポリペプチドである。
特定の態様においては、それらの他のポリペプチドは、十分に定義されている(フィターゼ調製物について上記に定義されるように)。
【0185】
特定の好ましい態様においては、比較的低いpH−最適性を有する本発明のフィターゼは、より高いpH−最適性を有する少なくとも1つのフィターゼと組合される。より高いpH−最適性のフィターゼの好ましい例は、バチルスフィターゼ、例えばバチルス・リケニホルミス及びバチルス・サブチリスからのフィターゼ、及びフィターゼ活性を有するそれらの誘導体、変異体又はフラグメントである。
【0186】
本発明のフィターゼはまた、他のフィターゼ、例えば子嚢菌フィターゼ、例えばアスペルギラス・フィカム、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・アワモリ由来のアスペルギラスフィターゼ;又は担子菌フィターゼ、例えばペニオフォラ・リシ(Peniophora lycii)、アグロシベ・ペジアデス(Agrocybe pediades)、トラメテス・プベスセンス(Trametes pubescens)又はパキシラス・インボルタス(Paxillus involutus)由来の担子菌フィターゼ;又はフィターゼ活性を有する、それらの誘導体、フラグメント又は変異体と共に組合され得る。
【0187】
従って、本発明の動物飼料への使用の好ましい態様においては、及び本発明の動物飼料添加量及び動物飼料の好ましい態様においては、本発明のフィターゼは、そのようなフィターゼと組み合わされ得る。
上記子嚢菌及び担子菌フィターゼ、特にペニオフォラ・リシ由来のRONOZYMO Pフィターゼ、及びそれらの誘導体、変異体及びフラグメントはまた、バチルスフィターゼ、特にB. リケニホルミスフィターゼ、及びそれらの誘導体、フラグメント又は変異体と共に、特に動物飼料目的のために組合され得る。
【0188】
抗菌ペプチド(AMP)の例は、CAP18, Leucocin A, Tritrpticin, Protegrin-1, Thanatin, Defensin, Lactoferrin, Lactoferricin,及び Ovispirin 、例えば Novispirin (Robert Lehrer, 2000)、Plectasins, 及び Statins,例えばWO 03/044049号 及び WO 03/048148号に開示される化合物及びポリペプチド、及び抗菌活性を保持するそれらの変異体又はフラグメントである。
【0189】
抗真菌ポリペプチド(AFP)の例は、WO94/01459号及びWO02/090384号に開示されるように、アスペルギラス・ギガンテウス(Aspergillus giganteus)、及びアスペルギラス・ニガー(Aspergillus niger)ペプチド、並びに抗真菌活性を保持するそれらの変異体及びフラグメントである。
多不飽和脂肪酸の例は、C18, C20及びC22多不飽和脂肪酸、例えばアラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸及びγ−リノール酸である。
【0190】
反応性酵素生成種の例は、化学物質、例えば過硼酸塩、過硫酸塩又は過炭酸塩;及び酵素、例えばオキシダーゼ、オキシゲナーゼ、又はシンターゼである。
通常、脂−及び水−溶性ビタミン、及び微量鉱物は、飼料への添加のために意図された、いわゆるプレミックスの一部を形成し、そしてマクロ鉱物は通常、別々に飼料に添加される。本発明のプロテアーゼにより富化される場合、それらの組成物のいずれかは、本発明の動物飼料添加物の例である。
【0191】
特定の態様においては、本発明の動物飼料添加物は、0.01〜10.0%、より特定には0.05〜5.0%;又は0.2〜1.0%(%は、100gの飼料当たりの添加物g数を意味する)のレベルで、動物規定食又は飼料への包含を意図される(又は包含すべきより意図される)。これは、特に、プレミックスのためである。
次のものは、それらの成分の例の非制限的列挙である:
脂溶性ビタミンの例は、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE及びビタミンK、例えばビタミンK3である。
【0192】
水溶性ビタミンの例は、ビタミンB12、ビオチン及びコリン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、葉酸及びパントテネート、例えばCa−D−パントテネートである。
微量鉱物の例は、マンガン、亜鉛、鉄、銅、ヨウ素、セレン及びコバルトである。
マクロ鉱物の例は、カルシウム、リン及びナトリウムである。
それらの成分(家禽、及び子豚/豚により例示される)の栄養必要条件は、WO01/58275号の表Aに列挙される。栄養必要条件とは、それらの成分が示される濃度で規定食に供給されるべきであることを意味する。
【0193】
他方では、本発明の動物飼料添加は、WO01/58275号の表Aに特定される、少なくとも1つの個々の成分を含んで成る。少なくとも1つとは、1、又は2、又は3、又は4及び等〜すべての13個、又はすべての15個の個々の成分の1又は複数の成分のいずれかを意味する。より特定には、この少なくとも1つの個々の成分は、表Aの縦列4、又は5又は6に示される範囲内の飼料中濃度を提供するような量で本発明の添加物に包含される。
【0194】
本発明はまた、動物飼料組成物にも関する。動物飼料組成物又は規定食は、比較的に高いタンパク質含有率を有する。家禽及び豚規定食は、WO01/58275号の表B、縦列2−3に示されるように特徴づけられ得る。さらに、そのような魚規定食は通常、200−310g/kgの粗脂肪含有率を有する。
WO01/58275号は、引用により本明細書に組み込まれるアメリカ特許09/77334号に対応する。
【0195】
本発明の動物飼料組成物は、50−800g/kgの粗タンパク質含有率を有し、そしてさらに、本明細書に請求されるように、少なくとも1つのポリペプチドを含んで成る。
さらに、又は他方では(上記に示される粗タンパク質含有率)、本発明の動物飼料組成物は、10−30MJ/kgの代謝可能エネルギー含有率;及び/又は0.1−200g/kgのカルシウム含有率;及び/又は0.1−200g/kgの利用できるリン含有率;及び/又は0.1−100g/kgのメチオニン含有率:及び/又は0.1−150g/kgのメチオニン及びシステイン含有率;及び/又は0.5−50g/kgのリシン含有率を有する。
【0196】
特定の態様においては、前記代謝エネルギー、粗タンパク質、カルシウム、リン、メチオニン、メチオニン+システイン、及び/又はリシン含有率は、WO01/58275号(R. 2−5)の表Bにおける範囲2,3,4又は5のいずれか1つの範囲内である。
粗タンパク質は、係数6.25により掛け算される窒素(N)、すなわち粗タンパク質(g/kg)=N(g/kg)×6.25として計算される。窒素含有率は、Kjeldahl方法 (A. O. A. C. , 1984, Official Methods of Analysis 14th ed., Association of Official Analytical Chemists, Washington DC)により決定され得る。
【0197】
代謝可能エネルギーは、NRC publication Nutrient requirements in swine, ninth revised edition 1988, subcommittee on swine nutrition, committee on animal nutrition, board of agriculture, national research council. National Academy Press, Washington, D. C. , pp. 2-6、及びthe European Table of Energy Values for Poultry Feed-stuffs, Spelderholt centre for poultry research and extension, 7361 DA Beekbergen, The Netherlands. Grafisch bedrijf Ponsen & looijen bv, Wageningen. ISBN 90-71463-12-5に基づいて計算され得る。
【0198】
完全な動物規定食におけるカルシウム、利用できるリン及びアミノ酸の含有率は、飼料表、例えばVeevoedertabel 1997, gegevens over chemische samenstelling, verteerbaarheid en voederwaarde van voedermiddelen, Central Veevoederbureau, Runderweg 6,8219 pk Lelystad. ISBN 90- 72839-13-7に基づいて計算される。
【0199】
特定の態様においては、本発明の動物飼料組成物は、少なくとも1つのタンパク質を含む。前記タンパク質は、動物タンパク質、例えば肉及び骨ミール、及び/又は魚ミールであり得るが;又はそれは植物性タンパク質であり得る。用語、植物性タンパク質とは、本明細書において使用される場合、植物性、例えば修飾されたタンパク質及びタンパク質−誘導体由来の又はそれに起因する少なくとも1つのタンパク質を含む、いずれかの顔愚物、組成物、調製物又は混合物を言及する。特定の態様においては、植物性タンパク質中のタンパク質含有率は、少なくとも10, 20, 30, 40, 50, 又は60%(w/w)である。
【0200】
植物タンパク質は、植物タンパク質源、例えばマメ科植物及び穀物、例えばマメ科(Leguminosae)、アブラナ科、アカザ科及びイネ科、例えば大豆粉、ルピナス粉及びナタネ種子粉由来のものである。
特定の態様においては、植物タンパク質源は、1又は複数のマメ科植物、例えば大豆、ルピナス、エンドウ又はインゲン豆からの材料である。
【0201】
もう1つの特定の態様においては、植物タンパク質源は、1又は複数のアカザ科植物、例えばビート、砂糖大根、ホウレンソウ又はキノアからの材料である。
植物タンパク質源の他の例は、ナタネ種子、ヒマワリ種子、綿種子及びキャベツである。
大豆は、好ましい植物タンパク質源である。
植物タンパク質源の他の例は、穀物、例えば大麦、小麦ライ麦、オート麦、トウモロコシ、イネ、ライコムギ及びモロコシである。
【0202】
さらなる特定の態様においては、本発明の動物用飼料組成物は、0-80%のトウモロコシ;及び/又は0-80%のモロコシ;及び/又は0−70%の小麦;及び/又は0-70%の大麦;及び/又は0-30%のオート麦;及び/及び0-40%の大豆ミール;及び/又は0-25%の魚ミール;0-25%の肉及び骨負及び/又は0-20%ホエーを含む。
【0203】
動物用規定食は、マッシュ飼料(ペレット化されていない)又はペレット化された飼料として製造され得る。典型的には、微粉砕された飼料材料が混合され、そして十分な量の必須ビタミン及び鉱物が、問題の種についての規定に従って添加される。ポリペプチドは、固体又は液体酵素配合として添加され得る。例えば、固体ポリペプチド配合物は典型的には、混合段階の前又はその間に添加され;そして液体ポリペプチド調製物は典型的には、ペレット化段階の後に添加される。ポリペプチドはまた、飼料添加物又はプレミックスにも組込まれ得る。
【0204】
規定食における最終ポリペプチド濃度は、0.01−200mgのポリペプチドタンパク質/kg規定食、例えば5−30mgのポリペプチドタンパク質/kg動物規定食の範囲内である。
フィターゼはもちろん、有効量で、すなわち飼料の溶解性及び/又は栄養価値を改良するための適切な量で適用され得る。ポリペプチドは次の量(用量範囲)で投与されることが現在企画される:0.01-200 ; 0.01-100 ; 0.5-100 ; 1-50; 5-100; 10-100; 0.05-50 ;又は0.10-10−すべてのそれらの範囲はmgフィターゼポリペプチドタンパク質/kg飼料(ppm)である。
【0205】
kg飼料当たりmgフィターゼポリペプチドタンパク質を決定するために、フィターゼは飼料組成物から精製され、そして精製されたフィターゼの非活性が適切なアッセイを用いて決定される。飼料組成物のフィターゼ活性はまた、同じアッセイを用いて決定され、そしてそれらの2種の決定に基づいて、mgフィターゼタンパク質/kg飼料での用量が計算される。
【0206】
同じ原理が、飼料添加物におけるmgフィターゼポリペプチドタンパク質を決定するために適用される。もちろん、サンプルが飼料添加物又は飼料を調製するために使用されるフィターゼのために利用できる場合、比活性はこのサンプルから決定される(飼料組成物又は添加物からフィターゼを精製するために必要でない)。
【0207】
シグナルペプチド
本発明はまた、配列番号2又は4のいずれか1つのアミノ酸1〜22から成るシグナルペプチドをコードする、配列番号1又は3のいずれか1つのヌクレオチド1〜66から成る第1ヌクレオチド配列に作用可能に連結されるタンパク質をコードする、前記ヌクレオチド配列に対して外来性の遺伝子を含んで成る核酸構造体にも関する。
【0208】
本発明はまた、組換え発現ベクター、及びそのような核酸構造体を含んで成る組換え宿主細胞にも関する。
本発明はまた、(a)そのような組換え宿主細胞を、タンパク質の生成のために適切な条件で培養し;そして(b)タンパク質を回収することを含んで成るタンパク質の生成方法にも関する。
前記第1ヌクレオチド配列は、他の制御配列と共に、又は他の制御配列と組合して、それぞれ、外来性遺伝子に作用可能に連結され得る。そのような他の制御配列は、前記の通りである。
【0209】
前記タンパク質は、宿主細胞に対して生来性でも又は異種性でもあり得る。用語“タンパク質”とは、コードされた生成物の特定の長さを言及することを本明細書においては意味せず、そして従って、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質を包含する。用語“タンパク質”とはまた、コードされた生成物を形成するために組み合わされ得る核酸のポリペプチドを包含する。タンパク質はまた、少なくとも2種の異なったタンパク質(ここで、1又は複数のタンパク質は宿主細胞に対して生来のものであるか又は異種のものであり得る)から得られた部分又は完全なポリペプチド配列の組み合わせを含んで成るハイブリッドポリペプチドを包含する。タンパク質はさらに、上記タンパク質及びハイブリッドタンパク質の天然に存在する対立遺伝子及び構築された変動性を包含する。
【0210】
好ましくは、タンパク質は、ホルモン又はその変異体、ポリペプチド、受容体又はその一部、抗体又はその一部、又はレポーターである。より好ましい態様においては、タンパク質はオキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ又はリガーゼである。
【0211】
さらにより好ましい態様においては、タンパク質は、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インバーターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解ポリペプチド、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解ポリペプチド、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ又はキシラナーゼである。
前記遺伝子は、いずれかの原核、真核生物又は他の源から得られる。
【0212】
種々の態様
次のものは、本発明の追加の態様である。核酸配列、核酸構造体、組換え発現ベクター、組換え宿主細胞、ポリペプチドの生成方法、トランスジェニック植物及び動物、及び種々の使用、使用方法及び飼料組成物/添加剤に関するそれらの対応する観点もまた、本明細書に包含される。
【0213】
フィターゼ活性、及び時間t=0での活性に比較して、少なくとも20%の、37℃で及び0.1Mのグリシン/HCl緩衝液pH2.0において4時間のインキュベーションに続いての残留活性を有する単離されたポリペプチド(前記活性は、0.25Mの酢酸ナトリウム緩衝液pH5.5を用いて、1%(w/w)フィチン酸ナトリウムに基づいて、27℃及びpH5.5でアッセイされ、バッファーブラインドは控除される;
【0214】
好ましくは、i)配列の番号4のアミノ酸1〜411、又はii)配列番号2のアミノ酸1〜411に対して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%又は少なくとも98%の同一性を有する。
フィターゼ活性、及び時間t=0での活性に比較して、少なくとも20%の、37℃で及び0.1Mのグリシン/HCl緩衝液pH2.5において24時間のインキュベーションに続いての残留活性を有する単離されたポリペプチド(前記活性は、0.25Mの酢酸ナトリウム緩衝液pH5.5を用いて、1%(w/w)フィチン酸ナトリウムに基づいて、27℃及びpH5.5でアッセイされ、バッファーブラインドは控除される;
【0215】
好ましくは、i)配列の番号4のアミノ酸1〜411、又はii)配列番号2のアミノ酸1〜411に対して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%又は少なくとも98%の同一性を有する。
フィターゼ活性を有する単離されたポリペプチド、ここで、基質pNP−ホスフェートに基づいて測定された、pH5.0及び37℃でのポリペプチドの活性は、基質フィテートに基づいて測定されたポリペプチドの活性の11%以下であり;
好ましくは、i)配列の番号4のアミノ酸1〜411、又はii)配列番号2のアミノ酸1〜411に対して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%又は少なくとも98%の同一性を有する。
【0216】
フィターゼ活性を有する単離されたポリペプチド、ここで前記ポリペプチドは、ペニオフォラ・リシからのフィターゼに比較して、リン(P)の高い開放性を有し;
好ましくは、本明細書における例6のインビトロモデルにおいて測定される場合;
及び/又は前記ポリペプチドは好ましくは、i)配列の番号4のアミノ酸1〜411、又はii)配列番号2のアミノ酸1〜411に対して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%又は少なくとも98%の同一性を有する。
【0217】
フィターゼ活性を有する単離されたポリペプチド、ここで0.25FYT/g飼料で投与されたポリペプチドはまた0.25FYT/g飼料で投与された、ペニオフォラ・リシからのフィターゼにより開放されるリンに比較して、少なくとも150%のリン(P)を開放し;
好ましくは、本明細書における例6のインビトロモデルにおいて測定される場合;
及び/又は前記ポリペプチドは好ましくは、i)配列の番号4のアミノ酸1〜411、又はii)配列番号2のアミノ酸1〜411に対して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%又は少なくとも98%の同一性を有する。
【0218】
フィターゼ活性を有する単離されたポリペプチド、ここで0.75FYT/g飼料で投与されたポリペプチドはまた0.75FYT/g飼料で投与された、ペニオフォラ・リシからのフィターゼにより開放されるリンに比較して、少なくとも150%のリン(P)を開放し;
好ましくは、本明細書における例6のインビトロモデルにおいて測定される場合;
及び/又は前記ポリペプチドは好ましくは、i)配列の番号4のアミノ酸1〜411、又はii)配列番号2のアミノ酸1〜411に対して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%又は少なくとも98%の同一性を有する。
【0219】
I. (a)(i)配列番号2のアミノ酸1〜411及び/又は(ii)配列番号2の成熟ポリペプチド部分に対して少なくとも98.2%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド;(b)(i)配列番号1のヌクレオチド67〜1299、(ii)配列番号1の成熟ポリペプチドコード部分、及び/又は(iii)上記(i)又は(ii)のいずれか1つの相補的鎖と、少なくとも中位の緊縮条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;(c)1又は複数のアミノ酸の保存性置換、欠失及び/又は挿入を含んで成る、(a)(i)〜(a)(ii)のポリペプチドのいずれか1つの変異体;及び(d)上記(a)(i)〜(a)(ii)のポリペプチドのいずれか1つのフラグメントから成る群から選択された、フィターゼ活性を有する単離されたポリペプチド。
【0220】
II. セクションIのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んで成る単離されたポリヌクレオチド。
III . (a)配列番号2のアミノ酸1〜411と、少なくとも98.2の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(b)配列番号1のヌクレオチド67〜1299と、少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチド;及び(c)(i)配列番号1のヌクレオチド67〜1299、(ii)配列番号1の成熟ポリペプチドコード部分、(iii)上記(i)又は(ii)のいずれか1つの相補的鎖と、少なくとも中位の緊縮条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドから成る群から選択された、フィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【0221】
IV. 配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列に少なくとも1つの突然変異を有する、セクションII及びIII のいずれか1つの単離されたポリヌクレオチド、ここで変異体ヌクレオチド配列は配列番号2のアミノ酸1〜411を含んで成るポリペプチドをコードする。
V. 発現宿主におけるポリペプチドの生成を指図する1又は複数の制御配列に操作可能に連結される、セクションII〜IVのいずれか1つのポリヌクレオチドを含んで成る核酸構造体。
【0222】
VI. セクションVの核酸構造体を含んで成る組換え発現ベクター。
VII . セクションVの核酸構造体を含んで成る組換え宿主細胞。
VIII. (a)その野生型において、前記ポリペプチドの生成の助けと成る条件下でポリペプチドを生成することができる細胞を培養し;そして(b)前記ポリペプチドを回収することを含んで成る、セクションIのポリペプチドの生成方法。
【0223】
IX. (a)前記ポリペプチドの生成の助けと成る条件下で、前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んで成る核酸構造体を含んで成る組換え宿主細胞を培養し;そして(b)前記ポリペプチドを回収することを含んで成る、セクションIのポリペプチドの生成方法。
X. セクションIのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにより形質転換された、トランスジェニック植物、植物部分又は植物細胞。
【0224】
XI. セクションIのポリペプチドを発現できる、トランスジェニック非ヒト動物、又は生成物、又はそれらの要素。
XII. 動物飼料へのセクションIの少なくとも1つのポリペプチドの使用。
XIII . 動物飼料への使用のための組成物の調製へのセクションIの少なくとも1つのポリペプチドの使用。
【0225】
XIV. 少なくとも1つのセクションIのポリペプチドが飼料に添加される、動物の飼料の栄養価値を改良するための方法。
XV. (a)少なくとも1つのセクションIのポリペプチド、(b)少なくとも1つの脂溶性ビタミン、(c)少なくとも1つの水溶性ビタミン、及び/又は(d)少なくとも1つの微量鉱物を含んで成る動物飼料添加剤。
【0226】
XVI. 少なくとも1つのアミラーゼ、少なくとも1つの追加のフィターゼ、少なくとも1つのキシラナーゼ、少なくとも1つのガラクターゼ、少なくとも1つのα−ガラクトシダーゼ、少なくとも1つのプロテアーゼ、少なくとも1つのホスホリパーゼ、及び/又は少なくとも1つのβ−グルカナーゼをさらに含んで成る、セクションXVの動物飼料添加剤。
【0227】
XVII. 前記追加のフィターゼが、配列番号2のアミノ酸1〜411のアミノ酸配列を有するポリペプチドのpH−最適性よりも高いpH−最適性を有する、セクションXVIの動物飼料添加剤。
IIXX. 50〜800g/kgの粗タンパク質含有率を有し、そして少なくとも1つのセクションIのポリペプチドを含んで成る動物飼料組成物。
【0228】
(a)(i)配列番号4のアミノ酸1〜411、及び/又は
(ii)配列番号4の成熟ポリペプチドと、少なくとも99.1%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチド;
(b)1又は複数のアミノ酸の欠失、挿入及び/又は保存性置換を含んで成る、(a)(i)〜(a)(ii)のいずれか1つのポリペプチドの変異体;及び
(c)上記(a)(i)〜(a)(ii)のいずれか1つのポリペプチドのフラグメントから成る群から選択される、フィターゼ活性を有するポリペプチド。
【0229】
(a)配列番号4のアミノ酸1〜411と、少なくとも99.1%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
(b)配列番号3のヌクレオチド67〜1299と、少なくとも98.9%の同一性を有するポリヌクレオチドから成る群から選択される、フィターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0230】
配列番号2のアミノ酸1〜411と、少なくとも98.6%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成り、好ましくは有するフィターゼ活性を有するポリペプチド。
配列番号4のアミノ酸1〜411と、少なくとも99.1%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成り、好ましくは有するフィターゼ活性を有するポリペプチド。
【0231】
(i)配列番号2のアミノ酸1〜411、及び/又は
(ii)配列番号2の成熟ポリペプチド部分の配列を含んで成り、好ましくは有するフィターゼ活性を有するポリペプチド;又は
(a)1又は複数のアミノ酸の欠失、挿入及び/又は保存性置換を含んで成る、(i)〜(ii)のポリペプチドのいずれか1つの変異体;又は
(c)(i)〜(ii)のポリペプチドのいずれか1つのフラグメントであるポリペプチド。
【0232】
(i)配列番号4のアミノ酸1〜411、及び/又は
(ii)配列番号4の成熟ポリペプチド部分の配列を含んで成り、好ましくは有するフィターゼ活性を有するポリペプチド;又は
(a)1又は複数のアミノ酸の欠失、挿入及び/又は保存性置換を含んで成る、(i)〜(ii)のポリペプチドのいずれか1つの変異体;又は
(c)(i)〜(ii)のポリペプチドのいずれか1つのフラグメントであるポリペプチド。
本発明は次の例により、さらに記載されるが、それらは本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0233】
例1シトロバクター・ブラキフィターゼのクローニング
複数の一列整列を、次の酸性ヒスチジンホスファターゼから製造した:appA E.コリ (SPTREMBL:Q8GN88)、 phyk クレブシエラ・テリゲナ(SPTREMBL:Q7WSY1)及び ypo1648 エルシア・ペスチス CO92 (SPTREMBL:Q8ZFP6)。2種の変性オリゴヌクレオチドプライマーを、コンセンサス配列に基づいて企画した:
5'- TGG TGA TTG TGT CCC GTC AYG GNG TNM G -3' (配列番号6、前方向プライマー)
5'- GCC CGG CGG GGT RTT RTC NGG -3' (配列番号7、逆方向プライマー)。
プライマーを、45、48及び50℃のアニーリング温度で多くの細菌種のPCRスクリーニングのために使用した。
【0234】
900bpのDNAフラグメントの形での部分フィターゼ遺伝子は、シトロバクター・ブラキATCC51113として同定された。
【0235】
PCRフラグメントを、pEZSeqフラグメントクローニングキット(Lucigen Corporation, 2120 West Greenview Dr., Ste 9, Middleton, Wl 53562, USからのカタログ番号40501−1)中にクローン化した。最初に、いずれかの型のPCR生成物上に5’−リン酸化されたフラグメント末端を創造するために最適化された酵素活性の混合物を含むPCRフラグメントを、PCR Terminator End Repair Kit(pEZSeqブラントクローニングキットの一部)により処理した。pEZSeqベクター中へのクローニングの後、クローンを、2種の特定のベクタープライマーを用いて配列決定した。ヌクレオチド配列の翻訳により、クローン化されたDNAフラグメントがフィターゼ遺伝子の一部であることが確認された。
【0236】
遺伝子の十分な長さのヌクレオチド配列を得るために、未知の標的部位を獲得するよう企画されたDNA Walking SpeedUp Kit (DWSK-V102 from Seegene, Inc., 2nd Fl., Myungji Bldg., 142-21 , Samsung- dong, Kangnam-gu, Seoul, 135-090, Korea)を使用した。このためには、次の4種のオリゴヌクレオチドを企画し、そしてキットと共に使用した:
TSP1N: 5'- ACATTTTGGTGCTAACCCAGCC-3' (配列番号8)
TSP1C: 5'- AGAAGTTGCCCGTAGTAGGGCC-3' (配列番号9)
TSP2N: 5'- ATTCAGAAACAAGTTCTCCCCCACG-3' (配列番号10)
TSP2C: 5’- ACCAATCTTGCAAATTTAAGCGGGG-3' (配列番号11)。
【0237】
シクロバクター・ブラキATCC51113からのフィターゼをコードする正しい十分な長さのヌクレオチド配列は、配列番号3として列挙する配列で示され、そしてその対応するコードされるアミノ酸配列は、配列番号4を有する。配列番号4の最初の22個のアミノ酸は、シグナルペプチドであることが予測される(Signal P V3.0により予測される)。
【0238】
シトロバクター・ブラキATCC51113フィターゼ遺伝子を、融合標識を有さないpRT−30a(+) E. コリ発現ベクター(Bie & Berntsen A/S, 7 Sandbaekvej, DK-2610 Roedovre, Denmarkから入手できる、Novagenからのカタログ番号69909)中にクローン化した。このシステムにおいては、遺伝子の発現は、lacUV5プロモーターの制御下でT7 RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを含むE.コリ BL21star(DE)pLysS 宿主株 (Novagen, commercially available from Bie & Berntsenからのカタログ番号69388)にT7 RNAポリメラーゼ源を供給することにより誘発される。標的遺伝子の誘発を、培地にラクトースを添加することにより行った。ラクトースは、リプレッサーに結合し、そしてオペレーターからのその分離を誘発し、プロモーターからの転写を可能にする。
【0239】
フィターゼ遺伝子の発現のために、形質転換されたE. コリ株の1つのコピーを、T7 RNAポリメラーゼの発現を可能にしない非誘発性培地(単一の炭素源としてグルコースを含む)における接種培養物にトランシスフェクトした。負の対照として、空のpET-30(+)ベクターを含むE. コリ(BL21star(DE)pLysS)を使用した。接種培養物の小アリコート(約150μl)を、単一の炭素源としてラクトースを含むフラスコ中に移した。誘発培養物を、37℃、300rpmで振盪しながら一晩、増殖した。
【0240】
細胞を遠心分離により収穫し、そして15μlのアリコートの上清液をSDS−PAGEにより分析した。分子量(MW)マーカーとして、10μlのPrecision Plusタンパク質標準(Bio-Rad Laboratories Headquarters, 1000 Alfred Nobel Drive, Hercules, CA 94547, USから市販されているカタログ番号161−0363)を使用した。約50kDaのMWの明白なバンドを、組換えE. コリ株からの上清液において同定したが、しかし負の対照において同定しなかった。
【0241】
収穫された細胞ペレットを溶解し、そして可溶性細胞内画分をまた、上記のようにして、SDS−PAGEにより分析した。MW50kDaのバンドがまた出現した。
これは、組換えフィターゼタンパク質が培地に一部、分泌されたことの証拠である。しかしながら、酵素のプールは細胞内画分にまだ残存する。
上清液及び細胞内画分のフィターゼ活性を、例4のアッセイの使用により確めた。
【0242】
例2シトロバクター・ブラキフィターゼ調製物の調製
シトロバクター・ブラキATCC51113を、0.1%(w/w)フィチン酸ナトリウムの添加を伴って、LB培地(25gのLB Bouillon, Merck 0285, 1000mlまでのイオン交換された水)において、30℃で振盪しながら(225rpm)、一晩、増殖した。細胞を、遠心分離(4000rpm、60分)により収穫し、そして上清液を捨てた。細胞ペレットを、2体積の蒸留水及び100mg/mlのリゾチームに再懸濁し、そして37℃での一晩インキュベーションにより溶解した。溶解された細胞を遠心分離し(4000rpm、2時間)、そして上清液を保存し、そして酸安定性分析のために使用された。
【0243】
例3シトロバクター・ブラキフィターゼの酸安定性
例2で得られた溶解物50μlを、それぞれ、2.2、3.0(グリシン/塩酸)及び7.0(HEPES)のpH値を有する100mMの緩衝液50μlと共に混合した。それらのサンプルを37℃で一晩インキュベートし、そして例4に記載される分析方法を用いて、残留フィターゼ活性について分析した。光学密度として示される残留フィターゼ活性が下記表1に示されている。さらに、活性を、pH7での残留活性に対する%として計算する。
【0244】
【表1】

【0245】
例4フィターゼアッセイ
アッセイは、モリブデート/鉄との錯化による可溶性ホスフェートの決定、及びマイクロタイタープレートにおける青色の光学的測定に基づかれている。
基質は、0.1Mの酢酸緩衝液pH=5.5に溶解された0.5mMのフィチン酸ナトリウム(Sigma, P−8810)である。特定の態様においては、基質濃度は5mMである。
【0246】
着色試薬を次の通りにして調製する:1% Ammoniummolybdat (Merck 1181 、 (NH4)6Mo7O24, 4H2O)を、3.2%硫酸(Merck 731)に溶解する。1.1gの硫酸鉄(Merck 3965)を、上記モリブデート試薬に溶解し、そして10mlの0.5Mの硫酸を添加する。それを毎日、新たに調製し、そして暗室において貯蔵する。
【0247】
ブラインド:20μlのサンプル、100μlの基質及び120μlの着色試薬を混合し、37℃で5分間インキュベートし、そしてODBlindを750nmで測定する。
サンプル:20μlのサンプル、100μlの基質を混合し、37℃で30分間インキュベートし、120μlの着色試薬を添加し、37℃で5分間インキュベートし、そしてODSampleを750nmで測定する。
OD=ODSample−ODBland
【0248】
例5組換えフィターゼの調製
配列番号4のフィターゼを、バチルス・サブチリスにおいて発現し、そして次の従来の方法を用いて精製した:遠心分離、細菌濾過、硫酸アンモニウム沈殿(80%硫酸アンモニウム飽和)、遠心分離、緩衝液A(50mMの酢酸ナトリウム、1.5Mの硫酸アンモニウム、pH4.5)におけるペレットの再懸濁、濾過、疎水性相互作用クロマトグラフィー(Phenyl Toyopearl, 緩衝液Aによる充填、緩衝液B(50mMの酢酸ナトリウムpH4.5)による溶出)、及びカチオン交換クロマトグラフィー(SP−セファロース、10mMのクエン酸ナトリウムpH4.01による充填、線状塩グラジエント(10mMのクエン酸ナトリウムpH4.0+1MのNaCl)による溶出)。
【0249】
クーマシー染色されたSDS−PAGEゲルは、タンパク質基礎に基づいて50%以上の純度である精製された成熟フィターゼを示した。しかしながら、ほとんどの非フィターゼバンドは、変性生成物又は切断された形のC. ブラキフィターゼであることが見出された。従って、合計量のタンパク質に対してのフィターゼ及びフィターゼ−変性生成物の量として表される場合、純度は80%以上であった。
【0250】
例6動物飼料における性能
例5の精製されたシトロバクター・ブラキフィターゼの動物飼料における性能を、RONOZYME PフィターゼとしてDSM Nutritional Productsからの市販されている、WO98/28408号に記載されるペニオフォラ・リシからのフィターゼの性能と、インビトロモデルにおいて比較した。そのインビトロモデルは、単胃動物における消化を仮装し、そしてインビボでの動物試験において得られた結果と十分に相互関係する。
【0251】
Kg飼料当たり5gのカルシウム濃度まで添加されるCaCl2と共に、30%大豆ミール及び70%トウモロコシミールから構成される飼料サンプルを調製し、そして40℃及びpH3.0で30分間プレインキュベートし、続いてペプシン(3000U/g飼料)及び2種の異なった用量の2種のフィターゼ、すなわち0.25又は0.75フィターゼ単位(FYT)/g 飼料を添加した。フィターゼ活性を有さないブランクをまた包含した。サンプルを、40℃及びpH3.0で60分間、続いてpH4.0で30分間インキュベートした。
【0252】
反応を停止し、そしてフィチン酸及びイノシトール−ホスフェートを、0.5Mの最終濃度までのHClの添加、及び40℃での2時間インキュベーションにより抽出し、続いて1回の凍結−融解サイクル及び40℃での1時間のインキュベーションを行った。
【0253】
フィチン酸イノシトール−ホスフェートを、"Chen,Q.C. and Li.B.W. (2003). Separation of phytic acid and other related inositol phosphates by high-performance ion chromatography and its applications. Journal of Chromatography A 1018, 41-52"に記載のようにして、高性能イオンクロマトグラフィーにより分離し、そして"Skoglund,E., Carls- son.N.G., and Sandberg.A.S. (1997). Determination of isomers of inositol mono- to hexa- phosphates in selected foods and intestinal contents using high-performance ion chromatography. J. Agric. Food Chem. 45, 431-436"に従って定量化した。
【0254】
開放されたリンを、フィターゼ−処理されたサンプルと処理されていないサンプルとの間のイノシトール−ホスフェート結合されたリン(IP-P)の差異として計算した。
下記表2に示される結果から、本発明のC. ブラキフィターゼが飼料からのホスフェートの開放において、市販のフィターゼよりもより効果的であることが明白である。
【0255】
【表2】

【0256】
例7基質特異性
例5の精製されたシトロバクター・ブラキフィターゼのpH5.0及び37℃での活性を、2種の基質、すなわちフィテート及びp−ニトロフェニルホスフェート(pNP−ホスフェート)に対して試験した。さらに特に、フィテートに基づく活性に対するpNP−ホスフェートに基づく活性を、ホスフェート標準曲線(控除された緩衝液ブラインド)に対して、個々の基質からのアッセイ読出しを比較することにより決定した。
【0257】
材料
酵素希釈緩衝液:0.25Mの酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.0、0.005% Tween20
フィターゼ基質:0.25Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中、10mg/mlの米からのフィチン酸ナトリウム(Aldrich 274321)
pNP−ホスフェート基質:10mlの0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)に溶解された2個の5mgのp−ニトロフェニルホスフェート錠剤(Sigma N9389)
【0258】
モリブデート溶液(0.25%アンモニア溶液中、10%アンモニウム七−モリブデート):90mlの脱イオン水に溶解された10gのアンモニウム七−モリブデート(Merck 1.001182)、1mlの25%アンモニア溶液(Merck 1.05432)、体積を脱イオン化により100mlに調節する
アンモニウムモノ−バナデート試薬(3.25%HNO3中、0.24%(w/v)NH4VO3溶液、Bie & Bemtsen, Denmark, LAB17650)
停止試薬(HNO3中、モリブデート/バナデート試薬);10mlのモリプデート試薬+10mlのアンモニウムモノ−バナデート試薬+20mlの21.7%硝酸
【0259】
方法
75μl/ウェルの酵素溶液(又は緩衝液ブラインド)を、マイクロタイタープレート(Nunc 269620)に分散した。75μlの基質(フィチン酸ナトリウム又はpNP−ホスフェート)を添加し、そしてプレートを、少々の接着剤プレートシーラーにより密閉した。プレートをすばやく、マイクロタイタープレートホルダーを備えたEppendorff Thermomixerに配置し、そして37℃で15分間、750rpmで振盪した。75μlの停止試薬を添加した。405nmでの吸光度を、マイクロタイタープレート分光計(Molecular Devices Spectramax 384 Plus)により測定した。当業者に良く知られているように、酵素の種々の希釈溶液を、405nmでの適切な吸光度読取を得るために試験した。
【0260】
結果
pNP−ホスフェートのホスフェート加水分解は、フィテートのその加水分解の4%であることが見出された。KR-2004-A-045267 号(WO-2004/085638号)の表6は、pNP−ホスフェートに対するYH−15フィターゼの活性がフィテートに対するその活性に対して、11.27%であることを報告しており、これは、本発明のシトロバクター・ブラキフィターゼがこの点から異なることを意味する。
【0261】
例8酸安定性
例5の精製されたシトロバクター・ブラキフィターゼの酸安定性を、37℃及びpH2.0、2.5又は3.0(0.1Mのグリシン/HCl緩衝液)でのインキュベーションに続いての残留ホスフェート加水分解活性として決定した。Na−フィテートに対する残留活性を、pH5.5、37℃でアッセイし、緩衝液ブラインドを控除し、そして結果を、時間t=0での活性に比較した。
【0262】
材料
酵素希釈緩衝液:0.25Mの酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.0、0.005% Tween20
フィターゼ基質:0.25Mの酢酸ナトリウムpH5.5に溶解された1%(w/v)フィチン酸ナトリウム(Aldrich 274321)
停止試薬:
10 mlの 10% (w/v) (NH4)6Mo7024-4H20溶液
10 mlの 0.24% (w/v) NH4VO3溶液
20 ml の21.7% HNO3溶液
10% (w/v) (NH4)6Mo7024-4H20溶液:
90mlの脱イオン水に溶解された10gの(NH4)6Mo7024・4H20 (Merck 1.001182)
1mlの25%(w/v)NH3溶液(Merch 1.05432)
体積を、脱イオン水を用いて、100mlに調節した
3.25%HNO3中、0.24%(w/v)NH4VO3溶液(Bie & Berntsen, Denmark, LAB17650)。
【0263】
20mMのNaAc(pH4.0)に貯蔵されたシトロバクター・ブラキフィターゼの精製された原液を、0.1Mのグリシン/HCl緩衝液を用いて希釈し(意図されるpH値を得るために十分な希釈度)、そして37℃、750rpmでEppendorf Thermomixer上でインキュベートした(1.5 mlのEppendorf Protein LoBind Tube, PCR clean, カタログ番号2243108-1)。残留活性を、下記方法を用いてアッセイした。
【0264】
フィターゼ原液1mlの当たりのフィターゼ活性は、1)所望数pHを得るために、0.1Mのグリシン/HCl緩衝溶液を用いての希釈、続いて、2)アッセイ条件のpHを得るために、酵素希釈緩衝液(上記を参照のこと)を用いての希釈を可能にし、それにより、405nmでの適切な吸光度読取をもたらす。
【0265】
アッセイ方法
時間t=x(時)の後、サンプルを個々のpHインキュベーション混合物から取り出し、そして酵素希釈緩衝液を用いて希釈した(5.5のpHを得るための十分な希釈度)。75mlの酵素溶液(又は酵素希釈緩衝液から成る緩衝液ブラインド)を、マイクロタイタープレート(Nunc 269620)中のウェルに添加した。75μlの基質溶液を添加し、プレートを接着剤プレートシーラーにより密閉し、続いて、マイクロタイタープレートホルダーを備えたEppendorf Thermomixerに、すばやく移した。プレートを振盪(750rpm)しながら37℃で15分間インキュベートした。75μlの停止試薬を添加し、そして吸光度を、マイクロタイタープレート分光計(Molecular Devices Spectramax 190)により405nmで読み取った。
【0266】
結果
pH2.0、37℃での4時間インキュベーションの後、有意な残留活性を観察した。同様に、有意な残留活性を、pH2.5、37℃での1日のインキュベーションの後、観察した。
KR-2004-A-045267号の例4〜2(WO-2004/085638号の27ページの下部を参照のこと)は、YH−15フィターゼの酵素活性が、pH3.0下での4時間のインキュベーションの後、ほとんど失われたことを説明している。KR適用は、使用される緩衝液についてサイレントであるが、しかしKimなど.(Biotechnology Letters 25: 1231-1234, 2003)による関連する出版物から、グリシン/HCl緩衝液から使用され、そして従って、この緩衝液がまた本発明の例にも使用されたことが図2から明白である。
【0267】
結論としては、本発明のシトロバクター・ブラキフィターゼが、YH−15フィターゼに比較して、より酸安定性である。
本明細書及び請求項に記載される発明は、それらの態様は本発明を単に例示するものであるので、本明細書に開示される特定の態様によりその範囲を制限されない。いずれかの同等の態様は、本発明の範囲内に包含される。実際、本明細書に示され、そして記載されるそれらの他に、本発明の種々の修飾は、当業者に明らかになるであろう。そのような修飾は本発明の範囲内にある。
種々の引例が本明細書に引用され、それらの開示は引用により本明細書に組込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)配列番号2のアミノ酸1〜411、及び/又は
(ii)配列番号2の成熟ポリペプチドと、少なくとも98.6%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチド;
(b)1又は複数のアミノ酸の欠失、挿入及び/又は保存性置換を含んで成る、(a)(i)〜(a)(ii)のいずれか1つのポリペプチドの変異体;及び
(c)上記(a)(i)〜(a)(ii)のいずれか1つのポリペプチドのフラグメント;
から成る群から選択された、フィターゼ活性を有する単離されたポリペプチド。
【請求項2】
(a)(i)配列番号4のアミノ酸1〜411、及び/又は
(ii)配列番号4の成熟ポリペプチドと、少なくとも99.1%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチド;
(b)1又は複数のアミノ酸の欠失、挿入及び/又は保存性置換を含んで成る、(a)(i)〜(a)(ii)のいずれか1つのポリペプチドの変異体;及び
(c)上記(a)(i)〜(a)(ii)のいずれか1つのポリペプチドのフラグメント;
から成る群から選択される請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んで成る単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
(a)配列番号2のアミノ酸1〜411と、少なくとも98.6%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
(b)配列番号1のヌクレオチド67〜1299と、少なくとも98.3%の同一性を有するポリヌクレオチド;
から成る群から選択された、フィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
(a)配列番号4のアミノ酸1〜411と、少なくとも99.1%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
(b)配列番号3のヌクレオチド67〜1299と、少なくとも98.9%の同一性を有するポリヌクレオチド;
から成る群から選択される請求項4記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
発現宿主においてポリペプチドの生成を指図する1又は複数の制御配列に作用可能に連結される請求項4又は5記載のポリヌクレオチドを含んで成る核酸構造体。
【請求項7】
請求項6記載の核酸構造体を含んで成る組換え発現ベクター。
【請求項8】
請求項6記載の核酸構造体を含んで成る組換え宿主細胞。
【請求項9】
請求項1又は2記載のポリペプチドの生成方法であって、(a)その野生型において、前記ポリペプチドの生成の助けと成る条件下でポリペプチドを生成することができる細胞を培養し;そして(b)前記ポリペプチドを回収することを含んで成る方法。
【請求項10】
請求項1又は2記載のポリペプチドの生成方法であって、(a)前記ポリペプチドの生成の助けと成る条件下で、前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んで成る核酸構造体を含んで成る組換え宿主細胞を培養し;そして(b)前記ポリペプチドを回収することを含んで成る方法。
【請求項11】
請求項1又は2記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにより形質転換されている、トランスジェニック植物、植物部分又は植物細胞。
【請求項12】
請求項1又は2記載のポリペプチドを発現できる、トランスジェニック非ヒト動物、又はその生成物又は要素。
【請求項13】
動物飼料への少なくとも1つの請求項1又は2記載のポリペプチドの使用。
【請求項14】
動物飼料への使用のための組成物の調製への少なくとも1つの請求項1又は2記載のポリペプチドの使用。
【請求項15】
少なくとも1つの請求項1又は2記載のポリペプチドが飼料に添加される、動物飼料の栄養価値を改良するための方法。
【請求項16】
(a)少なくとも1つの請求項1又は2記載のポリペプチド;
(b)少なくとも1つの脂溶性ビタミン;
(c)少なくとも1つの水溶性ビタミン;及び/又は
(d)少なくとも1つの微量金属;
を含んで成る動物飼料添加剤。
【請求項17】
少なくとも1つのアミラーゼ、少なくとも1つの追加のフィターゼ、少なくとも1つのキシラナーゼ、少なくとも1つのガラクターゼ、少なくとも1つのα−ガラクトシダーゼ、少なくとも1つのプロテアーゼ、少なくとも1つのホスホリパーゼ、及び/又は少なくとも1つのβ−グルカナーゼをさらに含んで成る請求項16記載の動物飼料添加剤。
【請求項18】
50〜800g/kgの粗タンパク質含有率を有し、そして少なくとも1つの請求項1又は2記載のポリペプチドを含んで成る動物飼料組成物。

【公開番号】特開2012−205593(P2012−205593A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−152927(P2012−152927)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2007−533872(P2007−533872)の分割
【原出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】