説明

フィッシャー・トロプシュ生成物の接触分解によるガス油の製造方法

(a)フィッシャー・トロプシュ合成生成物から第一ガス油フラクション及び該ガス油フラクションより高沸点のフラクションを単離する工程、(b)該重質フラクションを、酸性母材及び大細孔モレキュラーシーブを含有する触媒を含む触媒系と、立上がり管反応器中、温度450〜650℃、接触時間1〜10秒及び触媒対油比2〜20kg/kgで接触させる工程、(c)工程(b)の生成物から第二ガス油フラクションを単離する工程、及び(d)第一ガス油フラクションを第二ガス油と配合する工程によるガス油の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、フィッシャー・トロプシュ生成物の接触分解により、ガス油をガソリンとの組合わせで製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ガス油の沸点範囲の沸点を有するパラフィン系生成物は、フィッシャー・トロプシュ誘導合成生成物から製造できることが知られている。しかし、フィッシャー・トロプシュ生成物から受入可能なオクタン価を有するガソリンとパラフィン系ガス油を単一転化方法を用いて製造するのは容易ではない。これは、フィッシャー・トロプシュ生成物自体が大部分、低オクタン価かオクタン価向上に寄与しないノーマルパラフィンで構成されるからである。フィッシャー・トロプシュ生成物から受入可能なオクタン価を有するガソリンを製造する方法として、接触分解について記載した文献は種々知られている。例えばUS−A−4684756は、鉄で触媒したフィッシャー・トロプシュ法で得られるフィッシャー・トロプシュワックスを直接、接触分解してガソリンフラクションを製造する方法を開示している。ガソリン収量は、57.2重量%である。
【0003】
接触分解を含む前記方法のうち幾つかの方法の欠点は、ガソリンと組合わせて製造されるガス油フラクションのセタン価が低すぎる上、ガス油の収量が低いことである。
【特許文献1】US−A−4684756
【特許文献2】WO−A−9934917
【特許文献3】AU−A−698391
【特許文献4】US−A−20020111521
【特許文献5】WO−A−200029511
【特許文献6】EP−B−832171
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、主生成物としてガソリンが生成する、フィッシャー・トロプシュ生成物の接触分解法により、高品質のパラフィン系ガス油を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
ガス油の製造方法は、
(a)フィッシャー・トロプシュ合成生成物から第一ガス油フラクション及び該ガス油フラクションより高い沸点を有するフラクションを単離する工程、
(b)該重質フラクションを、酸性母材及び大細孔モレキュラーシーブを含有する触媒を含む触媒系と、立上がり管反応器中、温度450〜650℃、接触時間1〜10秒及び触媒対油比2〜20kg/kgで接触させる工程、
(c)工程(b)の生成物から第二ガス油フラクションを単離する工程、
(d)第一ガス油フラクションを第二ガス油と配合する工程、
による。
【発明の効果】
【0006】
発明の詳細な説明
出願人は、工程(a)で得られる第一ガス油フラクションは、フィッシャー・トロプシュ合成生成物の接触分解により得られる第二ガス油のセタン価を向上することを見い出した。好ましい実施態様では、比較的重質のフィッシャー・トロプシュ生成物が接触分解工程(b)の原料として使用される。接触分解したガス油フラクションを工程(a)で得られるようなパラフィンで富化すると、ガス油のセタン価は、ディーゼル燃料のブレンド成分として好適なレベルまで増大する。他の利点は、工程(b)では流動接触分解(FCC)法として知られている周知の方法が利用できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
フィッシャー・トロプシュ合成生成物は、原則として、周知のフィッシャー・トロプシュ合成反応を行った際、得られるいかなる反応生成物でもよい。工程(b)では比較的重質のフィッシャー・トロプシュ生成物を使用することが好ましい。この重質原料は、炭素原子数30以上の化合物を30重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは55重量%以上有することが好ましい。更にフィッシャー・トロプシュ生成物中の炭素原子数60以上の化合物と炭素原子数30以上の化合物との重量比は少なくとも0.2、好ましくは少なくとも0.4、更に好ましくは少なくとも0.55である。フィッシャー・トロプシュ生成物は、ASF−α値(Anderson−Schulz−Flory連鎖成長ファクター)が少なくとも0.925、好ましくは少なくとも0.935、更に好ましくは少なくとも0.945、なお更に好ましくは少なくとも0.955のC20+フラクションを含むことが好ましい。
【0008】
工程(b)で使用されるフィッシャー・トロプシュ生成物の初期沸点は、好適には200℃未満から450℃以下の範囲であってよい。フィッシャー・トロプシュ合成生成物を工程(b)で使用する前に、フィッシャー・トロプシュ合成生成物からガス油範囲の沸点を有する全ての化合物を分離すれば、初期沸点は300〜450℃が好ましい。出願人は、このようなフィッシャー・トロプシュ生成物から出発し、このようにして、ガス油範囲の沸点を有するフィッシャー・トロプシュフラクションを排除すると、ガス油が高収量で得られることを見い出した。このような比較的重質のフィッシャー・トロプシュ生成物は、比較的重質のフィッシャー・トロプシュ生成物を生成するいずれの方法によっても得られる。全てのフィッシャー・トロプシュ法が必ずしもこのような重質生成物を生じるのではない。好ましい方法は、コバルトで触媒したフィッシャー・トロプシュ法である。好適なフィッシャー・トロプシュ法の一例は、WO−A−9934917及びAU−A−698392に記載されている。これらの方法は前述のようなフィッシャー・トロプシュ生成物を生成できる。
【0009】
比較的重質のフィッシャー・トロプシュ生成物を得るのに使用される好ましい触媒は、好適には、(aa)(1)チタニア又はチタニア前駆体、(2)液体及び(3)この使用した液体量に少なくとも一部不溶のコバルト化合物を混合して、混合物を形成し、(bb)こうして得られた混合物を造形、乾燥し、次いで(cc)こうして得られた組成物を仮焼することにより得られるコバルト含有触媒である。
【0010】
このコバルト化合物の好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、なお更に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上は、使用した液体量に不溶である。コバルト化合物は、好ましくは金属コバルト粉末、水酸化コバルト又はコバルト酸化物、更に好ましくはCo(OH)又はCoである。コバルト化合物は、好ましくは耐火性酸化物量に対し60重量%以下、更に好ましくは10〜40重量%の範囲の量で使用される。触媒は、少なくとも1種の促進剤金属、好ましくはマンガン、バナジウム、レニウム、ルテニウム、ジルコニウム、チタン又はクロム、最も好ましくはマンガンを含有することが好ましい。促進剤金属は、コバルトと促進剤金属との原子比が好ましくは少なくとも4、更に好ましくは少なくとも5となるような量で使用される。好適には少なくとも1種の促進剤金属化合物は、工程(aa)に存在する。好適にはコバルト化合物は、沈殿後、任意に仮焼により得られる。コバルト化合物及び少なくとも1種の促進剤金属化合物は、好ましくは共沈により、更に好ましくは一定pHで共沈により得られる。好ましくはコバルト化合物は、チタニア又はチタニア前駆体の少なくとも一部の存在下、好ましくは全部のチタニア又はチタニア前駆体の存在下で沈殿させる。工程(aa)の混合は、混練又は磨砕により行うことが好ましい。こうして得られた混合物は、次にペレット化、押出、造粒又は圧潰、好ましくは押出により造形する。得られた混合物は、固形分を30〜90重量%、好ましくは50〜80重量%の範囲で含有することが好ましい。好ましくは、工程(aa)で得られた混合物はスラリーであり、こうして得られたスラリーは造形し、噴霧乾燥により乾燥する。得られたスラリーの固形分は、好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは5〜20重量%の範囲である。仮焼は好ましくは400〜750℃の範囲、更に好ましくは500〜650℃の範囲で行われる。更なる詳細は、WO−A−9934917に記載されている。
【0011】
フィッシャー・トロプシュ法は、通常、125〜350℃、好ましくは175〜275℃の範囲の温度で行われる。圧力は、通常、5〜150バール絶対圧、好ましくは5〜80バール絶対圧、特に5〜70バール絶対圧の範囲である。水素(H)及び一酸化炭素(合成ガス)は、0.5〜2.5の範囲のモル比でこのプロセスに供給される。本発明方法で合成ガスのガスの時間当り空間速度(GHSV)は、広範囲に変化でき、通常、400〜10000Nl/l/h、例えば400〜4000Nl/l/hの範囲である。用語GHSVは当該技術分野で周知であり、合成ガスのNl容量、即ち、STP状態(0℃、1バール絶対圧)で触媒粒子、即ち、粒子間の空隙を除く触媒1リットルと1時間接触させた時のリットル数に関する。固定触媒床の場合、GHSVは、触媒床、即ち、粒子間の空隙を除く触媒床1リットル当りとしても表現できる。フィッシャー・トロプシュ合成は、スラリー反応器、好ましくは触媒床中で実施できる。更なる詳細は、WO−A−9934917に記載されている。
【0012】
合成ガスは、炭素(炭化水素)供給原料で出発する、部分酸化、水蒸気改質及びこれら方法の組合わせのような周知の方法により得られる。可能な供給原料の例は、天然ガス、随伴ガス、製油所オフガス、原油の残留フラクション、石炭、ペットコークス、バイオマス、例えば木材である。部分酸化は、触媒しても触媒しなくてもよい。水蒸気改質は、例えば慣用の水蒸気改質、自熱式改質(ATR)及び対流式水蒸気改質であってよい。好適な部分酸化法の例は、Shellガス化法及びShell石炭ガス化法である。
【0013】
フィッシャー・トロプシュ生成物は、硫黄及び窒素を含有する化合物を全く又は微量しか含有しない。これは不純物を全く又は殆ど含有しない、フィッシャー・トロプシュ反応の誘導生成物には普通のことである。一般に硫黄及び窒素水準は、現在、硫黄については5ppm、窒素については1ppmという検出限界未満である。フィッシャー・トロプシュ生成物は、オレフィン及び/又は酸素化物を除去するため、水素化処理を必要とすることなく、工程(a)の原料に直接使用できるという利点がある。
【0014】
工程(b)で使用される触媒系は、少なくとも母材及び大細孔モレキュラーシーブを含む触媒で構成される。好適な大細孔モレキュラーシーブの例は、例えばゼオライトY、超安定ゼオライトY及びゼオライトXのようなホウジャサイト(FAU)型である。母材は好ましくは酸性母材である。酸性母材は、好適には非晶質アルミナを含み、好ましくは触媒の10重量%を超える部分は非晶質アルミナである。母材は更に例えば燐酸アルミニウム、粘土、シリカ及びそれらの混合物を含有してよい。非晶質アルミナは、モレキュラーシーブを適切に結合するのに十分な結合機能を有する母材を得るための結合剤としても使用してよい。好適な触媒の例は、流動接触分解法で使用される市販の触媒である。これらの触媒は、モレキュラーシーブとしてゼオライトYと、母材中に少なくともアルミナとを含有する。
【0015】
原料と触媒との接触温度は、好ましくは450〜650℃の範囲である。この温度は、更に好ましくは475℃を超え、なお更に好ましくは500℃を超える。良好なガソリン収量は600℃を超える温度で見られる。しかし、600℃よりも高温では、熱分解反応が起こり、例えばメタン及びエタンのような望ましくないガス状生成物が生成する。このため、温度は更に好ましくは600℃未満である。本方法は、各種の反応器で実施してよい。石油誘導原料に対して操作するFCC法に比べてコークスの生成が比較的少ないので、この方法は、固定床反応器で行うことが可能である。しかし、触媒を再生可能にするための一層簡単な優先順位は、流動床反応器又は立上り管反応器のいずれかである。本方法を立上り管反応器で実施する場合、好ましい接触時間は1〜10秒、更に好ましくは2〜7秒の範囲である。触媒対油比は、好ましくは2〜20kg/kgの範囲である。良好な結果は、15kg/kg未満、更には10kg/kg未満の低い触媒対油比で得られることが見い出された。
【0016】
これは、例えば小さい設備でも、触媒の在庫が少なくても、エネルギーが少なくても、及び/又は生産性が高くても、触媒量当たりの生産性が高いことを意味するので、有利である。
【0017】
この触媒系は、中間細孔サイズのモレキュラーシーブも含有すると、ガソリンフラクションに次いでプロピレン及びその他の低級オレフィンも高収量で得られるので、有利かも知れない。好ましい中間細孔サイズのモレキュラーシーブは、ゼオライトβ、エリオナイト(Erionite)、フェリエライト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23又はZSM−57である。本方法に存在するモレキュラーシーブ全量に対する中間細孔結晶の重量分率は、好ましくは2〜20重量%の範囲である。中間細孔モレキュラーシーブ及び大細孔モレキュラーシーブは、1つの触媒粒子中に配合してもよいし、或いは異なる触媒粒子中に存在してもよい。中間細孔モレキュラーシーブ及び大細孔モレキュラーシーブは、実用上の理由から、異なる触媒粒子中に存在することが好ましい。したがって、例えば操作者は、触媒系のこれら2種の触媒成分を、異なる添加割合で本方法に添加できる。これは、2種の触媒成分が異なる失活速度を有するからである。好適な母材はアルミナである。モレキュラーシーブは、例えば蒸煮又はその他、公知の方法で脱アルミ化してよい。
【0018】
大細孔モレキュラーシーブ、更に好ましくはFAU型モレキュラーシーブを中間細孔サイズのモレキュラーシーブと組合せると、低級オレフィンに対し高い選択率が得られることが見い出された。出願人は、前述のように大細孔モレキュラーシーブ、更に好ましくはFAU型モレキュラーシーブを中間細孔サイズのモレキュラーシーブと組合せて本発明方法を行うと、低級オレフィンの収量が向上するばかりでなく、イソ−及びn−ペンテン及びヘキセンの収量も増大することを見い出した。このような実施態様では、これらペンテン及びヘキセンは、ガス油の沸点範囲にある化合物にオリゴマー化することが好ましい。このように好ましいのは、少なくとも2つの理由によるもので、ガス油の究極収量が増大すると共に、低オクタン価の原因化合物がガソリンから除去されるからである。オリゴマー化は周知の方法で、例えばUS−A−20020111521に例示されている。
【0019】
工程(c)では、工程(b)の生成物から、主生成物のガソリンから第二ガス油フラクションが単離される。これらフラクションの単離は、好適には蒸留により行われる。本発明では、ガソリン又はガソリンフラクションは、90重量%を超えるもの、好ましくは95重量%を超えるものが25〜215℃の沸点範囲にあるフラクションである。ガス油又はガス油フラクションは、90重量%を超えるものが200〜370℃、好ましくは215〜350℃の沸点範囲にあるフラクションである。
【0020】
第一及び第二ガス油フラクションに対しては、必要ならば流動点を受容可能なレベルに降下させるため、更に接触脱蝋工程を別個に又は混合物として行ってよい。このような処理は、流動点降下に有利であるばかりでなく、工程(a)で生成したいかなる芳香族化合物の含有量も減少させる。流動点は、好ましくは−10℃未満、更に好ましくは−15℃未満である。ガス油の接触脱蝋は、好適にはバインダー、モレキュラーシーブ及び水素化金属成分を含む触媒を用いて行ってよい。バインダーは、いかなるバインダーでもよく、好適にはアルミナ、シリカ−アルミナ又はシリカであってよい。モレキュラーシーブは、好ましくはゼオライト又はシリカ−アルミノホスフェート(SAPO)材料である。ゼオライトの細孔径は、好ましくは0.35〜0.8nmの範囲である。好適な中間細孔サイズゼオライトは、モルデナイト、ゼオライトβ、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、MCM−68、SSZ−32、ZSM−35及びZSM−48である。好ましくは、シリカ−アルミナホスフェート(SAPO)材料は、SAPO−11である。水素化成分は、好ましくは第VIII族金属であり、更に好ましくはニッケル、コバルト、白金及びパラジウムである。最も好ましくは第VIII族の貴金属が使用される。接触的脱蝋条件は当該技術分野で公知であり、通常、200〜500℃、好適には250〜400℃の範囲の操作温度、10〜200バール、好ましくは15〜100バールの範囲の水素圧、1時間当り触媒1リットル当りオイル0.1〜10kg(kg/l/hr)、好適には0.2〜5kg/l/hr、更に好適には0.5〜3kg/l/hrの範囲の重量の時間当り空間速度(WHSV)、及びオイル1リットル当り水素100〜2,000リットルの範囲の水素対オイル比である。好適な脱蝋方法及び触媒はWO−A−200029511及びEP−B−832171に記載されている。
【実施例】
【0021】
例A〜D
第1表に示す特性を有するフィッシャー・トロプシュ生成物を熱再生触媒と触媒対油比4kg/kgで異なる温度及び接触時間、接触させた。この触媒は、工業運転用FCCユニットで得られた、アルミナ母材及び超安定ゼオライトYを含む工業用FCC触媒である。このゼオライトYの含有量は10重量%である。操作条件は第3表に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
例1〜4
第2表に示す特性を有するフィッシャー・トロプシュ生成物を例A〜Dと同様、熱再生触媒と、異なる温度及び接触時間、接触させた。フィッシャー・トロプシュ生成物は、WO−A−9934917の実施例IIIの触媒を用い、同実施例VIIに従って得られた。操作条件は第3表に示す。
【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
【表4】

【0027】
第4表から、本発明方法によれば、ガソリン及び中間蒸留物、又はガス油が高収量で得られることが判る。例1〜4では、ガス油の収量は、例B〜Dよりも低いが、実験B〜Dの原料中のガス油含有量は、42.2重量%(第1表参照)であり、これは実験B〜Dのいずれのガス油収量よりも高い。更に、実験1〜4で得られたガソリンフラクションは、相当量のn−及びイソ−ペンテンを含有している。これらのペンテンは、ガス油にオリゴマー化できる。
また第4表から、高いガソリン収量は、長い(high)接触時間及び比較的マイルドな温度で得られることも判る(例B及び2参照)。
【0028】
例5〜7
第5表に示す特性を有するフィッシャー・トロプシュ生成物及び第3表の条件で例2〜4を繰り返した。第5表の原料は、第2表の原料から第1表のガス油及びこれより軽質のフラクション22重量%を除去して得られる。収量を第6表に示す。ガス油の収量は例2〜4の収量よりも高いが、例2〜4のガス油収量と第1表のフラクションから回収して、本発明に従って例2〜4で得られたガス油とブレンドできるガス油9重量%(全原料に対し)との合計よりもかなり低い。
【0029】
【表5】

【0030】
【表6】

【0031】
例8
触媒の一部を、25重量%のZSM−5を含有する触媒に取り替えた他は例6を繰り返した。全触媒充填量に対するZSM−5ベース触媒の含有量は、20重量%である(全触媒重量に対して計算)。ガソリンの収量は47.99重量%で、中間蒸留物の収量は全生成物に対し9.27重量%であった。n−及びイソ−ペンテンの含有量は、ガソリンフラクション中、54.61重量%であった。
【0032】
例9
触媒の一部を、25重量%のZSM−5を含有する触媒に取り替えた他は例2を繰り返した。全触媒充填量に対するZSM−5ベース触媒の含有量は、20重量%である(全触媒重量に対して計算)。その結果を第7表に示す。
【0033】
例10
触媒の一部を、25重量%のZSM−5を含有する触媒に取り替えた他は例3を繰り返した。全触媒充填量に対するZSM−5ベース触媒の含有量は、20重量%である(全触媒重量に対して計算)。その結果を第7表に示す。
【0034】
【表7】


例8〜10からZSM−5の添加により、ガス油の収量が増大することが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フィッシャー・トロプシュ合成生成物から第一ガス油フラクション及び該ガス油フラクションより高い沸点を有するフラクションを単離する工程、
(b)該重質フラクションを、酸性母材及び大細孔モレキュラーシーブを含有する触媒を含む触媒系と、立上がり管反応器中、温度450〜650℃、接触時間1〜10秒及び触媒対油比2〜20kg/kgで接触させる工程、
(c)工程(b)の生成物から第二ガス油フラクションを単離する工程、及び
(d)第一ガス油フラクションを第二ガス油と配合する工程、
によるガス油の製造方法。
【請求項2】
工程(a)で使用した原料は、炭素原子数60以上の化合物と炭素原子数30以上の化合物との重量比が少なくとも0.2であり、かつこれら化合物の30重量%以上が炭素原子数30以上のものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の原料中の化合物の50重量%以上が炭素原子数30以上のものである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィッシャー・トロプシュ生成物中の炭素原子数60以上の化合物と炭素原子数30以上の化合物との重量比が工程(a)の原料中で少なくとも0.4である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)での温度が600℃未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性母材がアルミナである請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記大細孔モレキュラーシーブがホウジャサイト(FAU)型である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)の触媒系が、ゼオライトβ、エリオナイト、フェリエライト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23又はZSM−57も含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
イソ−及びノーマル−ペンタン及び/又はイソ−及びノーマル−ヘキサンに対し、オリゴマー化を行って、ガス油範囲の沸点を有する化合物を製造すると共に、該化合物を工程(d)で得られたガス油生成物と配合する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)の原料として使用したフィッシャー・トロプシュ合成生成物が、コバルトで触媒したフィッシャー・トロプシュ合成法で得られる請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記コバルト触媒が、(aa)(1)チタニア又はチタニア前駆体と、(2)液体と、(3)使用した前記液体の量では少なくとも部分的に不溶であるコバルト化合物とを混合して混合物を形成し、(bb)こうして得られた混合物を造形し乾燥し、次いで(cc)こうして得られた組成物を仮焼して、得られる請求項10に記載の方法。


【公表番号】特表2008−500418(P2008−500418A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513930(P2007−513930)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052391
【国際公開番号】WO2005/118747
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】