説明

フィラデルフィア染色体陽性白血病の治療方法

本発明は患者のPh+白血病を治療する方法を提供する。前記方法は、(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤を患者に投与する工程を含む。本発明はさらに、(i)および(ii)のPh+白血病の患者の治療における使用、またはPh+白血病の患者の治療用医薬の製造における使用、並びにPh+白血病を治療するためのi)およびii)を含む組成物、並びにi)およびii)を含むキットを提供する。いくつかの実施態様では、前記チロシンキナーゼ阻害剤はイマチニブであるか、もしくはイマチニブではないか、または、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、クリゾチニブ、ダムナカンタール、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ネラチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、チルホスチン、ヴァンデタニブ、ヴァタラニブ、INNO-406、AP24534、XL228、PHA-739358、MK-0457、SGX393 およびDC2036から成る群から選択されるか、またはダサチニブおよびニロチニブから成る群から選択される。いくつかの実施態様では、前記薬剤は、IL-3、G-CSFおよびGM-CSFの少なくとも1つによるシグナル伝達に必要なレセプターと結合する。いくつかの実施態様では、前記薬剤は、IL-3ムテイン、G-CSFムテインおよびGM-CSFムテインから成る群から選択されるムテインである。いくつかの実施態様では、前記ムテインはIL-3ムテインである。いくつかの実施態様では、前記薬剤は、IL-3と結合できる可溶性レセプターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)白血病(慢性骨髄性白血病を含む)の治療方法に関し、具体的には本発明は、前記骨髄増殖性疾患の治療のための併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性骨髄性白血病(CML)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)を含む多くのタイプの白血病が、フィラデルフィア染色体(Ph)と称される染色体異常を示し得る。この異常は特異的な相互転座t(9;22)(q34;q11)によって生じる。前記転座は、9番染色体のアベルソン(Abelson)キナーゼ遺伝子(ABL)を22番染色体の切断点クラスター領域(BCR)遺伝子を融合させ、BCR-ABLタンパク生成物(構成的活性を有するチロシンキナーゼ2)を生じる。BCR-ABLは、いくつかの細胞内シグナルトランスダクション経路を介して細胞の生存および増殖を促進し、当該疾患の悪性転換の原因である(Savona M and Talpaz M. Nature Reviews Cancer, May 2008)。
BCR-ABLチロシンキナーゼの分子構造およびこの疾患のメカニズムに関する情報は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の開発をもたらした(前記はおそらくこれまでに生み出された翻訳医薬の最高の成果である)。イマチニブ(イマチニブメシレートとして;GleevecまたはGlivec; Novartis, Basel, Switzerland)は、CMLの患者で効果的に使用される最初のTKIである。1990年代後期におけるその臨床医薬への導入により、CMLのこれまでの歴史は多くの患者にとって非常に好ましいものに変化した。さらにまた、TKI療法に関して、正常細胞に対する二次的作用も標的照準療法の相対的正確さにより最小限に留められている。しかしながらこの成功によっても、イマチニブ療法はしばしば完治的ではなく、この疾患を抑制するように作用するが排除はしない。
【0003】
さらにまた、耐性または非許容性のために全ての患者がイマチニブから恩恵を得るわけではない。結果として、さらに別の2つのTKI、ダサチニブ(Sprycel; Bristol-Myers Squibb)およびニロチニブ(Tasigna; Novartis)が開発された。ダサチニブは、イマチニブの325倍のin vitro有効性を有するBCR-ABL阻害剤であり、Srcファミリーのキナーゼもまた阻害する。ニロチニブは、BCR-ABLに対する特異性が強化されたイマチニブのアナローグである。しかしながら最良CML治療法で選択されるTKIとしてのイマチニブの地位は、イマチニブが顕著な副作用をほとんど生じないことにより現時点でゆるぎない。イマチニブはCMLを常に治癒させるというわけではなく、持続的に(例えば毎日)投与される場合に疾患を安定化させるだけであるので、CMLの患者はイマチニブを長期にわたって維持する必要があり副作用の問題は重要である。
【0004】
イマチニブおよび他のTKIが常習的または長期的な治療方法である理由は、TKIはブラストを減少させるには有効であるが、白血病幹細胞はこれらTKIに対する感受性が低いためであると考えられており、これは主要な変異BCR-ABLに対するこれら幹細胞の要求の低下の結果であると推察されている。初期Ph+白血病幹細胞(イマチニブによるTKI療法に難治性であるように思われる)はBCR-ABL変異に対して避難所を提供し、TKIの非存在下ではこの変異をそれらの子孫に伝達する(その結果この疾患が持続する)。フィラデルフィア染色体とその結果である白血病の細胞内調節不全が分子生物学的に解明されたので、子孫白血病細胞の“ステムネス”の特性が認識された。
したがって、TKIの限界、例えば常習的使用の必要性並びにTKI耐性およびTKI非許容性の進行を緩和する治療的養生管理方法の開発がなお希求されている。
本明細書における先行刊行物(または前記に由来する情報)のいずれの引用も、またはいずれの公知事項の引用も、それら先行刊行物(または前記に由来する情報)または公知事項が、本明細書が関係する分野全体における通常の一般的知識を構成するという認識または容認またはいずれの態様における示唆として受けとめられるべきではない。
以下の本明細書および請求の範囲を通して、文脈が明らかにそうでないことを要求していないかぎり、“comprise”およびその変型(例えば“conprises”および“comprising”)は、記載されている整数もしくは工程または整数もしくは工程群を包含するが、他のいずれの整数もしくは工程または整数もしくは工程群を排除しようとするものではないことは理解されよう。
【発明の概要】
【0005】
ある特徴では、本発明は患者のでPh+白血病の治療方法を提供し、前記方法は、(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤を患者に投与する工程を含む。
別の特徴では、本発明は、(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤の、Ph+白血病の患者での治療における使用または医薬の製造における使用を提供する。
本発明はまた、Ph+白血病の患者での治療のための薬剤を提供し、前記薬剤は、(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞によって発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤を含む。
さらに別の特徴では、本発明はまた、(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤、並びに場合によって(iii)前記チロシンキナーゼ阻害剤および前記薬剤を患者のPh+白血病を治療する方法にしたがって投与するための指示を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】種々の細胞培養条件下におけるp-STAT5の細胞レベルを調べた、3人の患者のCMLサンプルを用いた実験の図表による表示である。これらの実験で用いたCD123抗体は7G3(ヒトIL-3Rαに対するネズミ抗体)である。
【図2】図1に示したデータのグラフによる表示である(表示を容易にするために、以下のグループに関するデータは図1のフローサイトメトリーには示されてなかったことに留意されたい:IL3+BM4)。
【図3】4人の患者による、図1に記載した実験と同様な実験を示す。これらの実験で用いた抗体はCSL362(Fcエフェクター機能が強化された7G3のヒト化型)である。
【図4】図3に示したデータのグラフによる表示である(表示を容易にするために、以下のグループに関するデータは図3のフローサイトメトリーには示されてないことに留意されたい:IL3+BM4、IL3+CSL362、およびIL-3+ダサチニブ+BM4)。
【図5】図2および4のデータを一緒にしたグラフである。
【図6】GM-CSF刺激KU812細胞株のpSTT5レベルに対するβ共通レセプター(CD131)遮断の影響をBION-1と称する抗体を用いて示した図表である。KU812は、CMLのブラストクリーゼ時の患者の末梢血から樹立された骨髄系前駆細胞の細胞株である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、Ph+白血病幹細胞の一部セットはBCR-ABLによるチロシンキナーゼ(TK)活性化にさらに付加された手段によって生存できるという認識に依拠している。結果として、この一部セットの幹細胞は、BCR-ABL阻害物質(例えばイマチニブ)によって阻害されるが、死滅させられることはない。
さらにまた、イマチニブおよび他のTKIに対する耐性の発生は、Ph+白血病(特にCML)(疾患を安定させるために一般的にTKIの長期持続的投与が要求される)の治療における臨床上の問題を増加させる(米国特許7799788号(Bhalla et al)を参照されたい)。
このことが、イマチニブの直接的抗白血病作用をPh+白血病幹細胞を根絶することができる薬剤と組み合わせるという本発明の治療的養生管理方法の開発に至らしめた。このアプローチは、TKIを用いるPh+白血病の治療中に残留し、TKI治療が停止した場合にこの疾患を再発させるいわゆる“異常細胞溜り”を標的とする。
したがって、本発明に至る研究で、Ph+白血病の治療でTKIと一緒に、Ph+白血病幹細胞で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤を使用することを必要とする併用療法が開発されていった。前記薬剤は、特にインターロイキン-3(IL-3)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)および/または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の少なくとも1つによるPh+白血病幹細胞でのシグナル伝達に関与するレセプターと結合する。
【0008】
インターロイキン-3(IL-3)は、複数の系列に由来する造血細胞の産生を刺激し、さらにある種の寄生性感染に対して宿主を防御する重要な役割を有するサイトカインである。IL-3は、多分化能性(多能性)造血幹細胞の骨髄性祖先細胞への分化を刺激するとともに、骨髄性細胞系列の細胞(好酸球、単球、好塩基球およびB細胞を含む)の増殖を刺激する。IL-3は、主として活性化Tリンパ球により免疫学的刺激に応答して産生され分泌される。
IL-3は、インターロイキン-3レセプター(IL-3R)として知られている特異的な細胞表面レセプターとの結合によりその活性を発揮する。IL-3Rは、70kDaのIL-3Rα(CD123)および120−140 kDaの共通β鎖(IL-3RβまたはCD131とも称することができる)で構成されるヘテロダイマー構造である。IL-3Rα鎖は非常に短い細胞内ドメインを有し、一方、共通β鎖は非常に大きな細胞質ドメインを有する。IL-3Rαは比較的弱い親和性でIL-3と結合する。しかしながら、共通β鎖の存在下では、IL-3RαはIL-3に対してはるかに強い親和性を有する。IL-3結合に続いてどのようにしてシグナルトランスダクションが生じるのかは明確ではないが、最近の研究によれば、シグナル伝達にはドデカマーを含むより高次の複合体の形成が要求されることが示唆されている。共通β鎖はまた、IL-5およびGM-CSFによって共有される。IL-3レセプターを発現することが判明している細胞には、正常造血祖先細胞の他に種々の造血細胞系列のより成熟した細胞(単球、マクロファージ、好塩基球、マスト細胞、好酸球およびCD5+ B細胞を含む)が含まれる。非造血細胞(いくつかの内皮細胞、間質細胞、樹状細胞およびライディヒ細胞を含む)もまたこのレセプターを発現することが示されている。
【0009】
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は、特異的な細胞表面レセプター、G-CSFレセプター(G-CSF-R)(CD114)との相互作用を介して好中球前駆細胞の増殖および分化を刺激する。G-CSF-Rはクローニングされてあり、いくつかの別個の細胞タイプで機能的に活性を有する。G-CSF-Rは、エリスロポイエチンおよび増殖ホルモンレセプター(EPO-R, GH-R)で示されているように、リガンド誘発ホモダイマー化を介して活性化される単鎖から成ると考えられている。G-CSF-Rは固有のタンパク質キナーゼドメインを含まないが、ただしチロシンキナーゼ活性はG-CSFシグナルのトランスダクションに要求されるようである。
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、多様な造血祖先細胞(好中球、マクロファージ、好酸球、巨核細胞および赤血球系細胞の祖先細胞を含む)のための増殖および分化因子であり、さらにまた成熟好中球、好酸球およびマクロファージを機能的に活性化することができる。GM-CSFの作用はいずれも、GM-CSFと特異的な細胞表面レセプターとの相互作用を介して媒介されると思われる。これらのレセプターは、固有のアルファ鎖、GM-CSFと弱い親和性で結合するGM-CSFRα(CD116)および、それ自体はGM-CSFと検出可能な親和性で結合しない共通ベータ鎖(CD131)から成り、さらにインターロイキン-3およびインターロイキン-5レセプターとアルファ鎖を共有する(上記で述べたとおり)。アルファ-ベータ複合体は、GM-CSFに対し強い親和性を示す結合部位を生じ、細胞シグナル伝達に必要である。
【0010】
本発明の併用療法の利点は、本併用療法は、Ph+白血病幹細胞で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤(例えばモノクローナル抗体)も患者の治療に提供することによって、TKI単独療法に付随する問題(例えば耐性の問題)に対応するという点である。更なる利点は、多くの患者が、TKIまたは抗体(例えば本発明の併用療法で用いられる抗体)による長期治療を許容できないが、本発明の併用療法アプローチは、TKIおよび抗体を患者に投与する期間を短縮できるという点である。
ある特徴では、本発明はPh+白血病を患者で治療する方法を提供する。前記方法は、(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤を患者に投与する工程を含む。
前記患者はヒトであり得る。
Ph+白血病は、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)から選択できる。より具体的には、Ph+白血病は慢性骨髄性白血病(CML)である。
本明細書で言う“治療”はその最も広い関係において考えることができる。“治療”という用語は、患者が回復するまで処置されることを必ずしも意味しない。したがって、治療には、患者におけるPh+白血病の症状の軽減または緩和が、Ph+白血病の進行の停止もしくは少なくとも遅延、Ph+白血病の重症度の軽減またはPh+白血病の排除と同様に含まれる。
【0011】
本発明の治療的養生管理方法はPh+白血病のための併用療法である。したがって、患者へのTKIの投与は通常は持続的(例えば毎日)療法であり、Ph+白血病幹細胞で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤の患者への投与は、TKIの投与と同時に、例えば毎日、1日おきもしくは2日おき、または毎週またはそれより低い頻度で実施することができる。また別の併用療法養生管理方法では、患者が臨床的な緩解期に達し、疾患が安定したと考えられるまでTKIが患者に投与され、続いてPh+白血病幹細胞で発現される細胞表面レセプターと結合する薬剤が当該治療的養生管理方法に加えられる。これに関して、患者から採取した骨髄サンプルで芽球が5%未満である場合、CML患者は“臨床的緩解”にあると考えることができる。
この実施態様では、本発明は、BCR-ABLに対して特異性を有する他のTKIの使用を提供する。前記他のTKIは、例えばダサチニブ(dasatinib)、ニロチニブ(nilotinib)、ボスチニブ(bosutinib)、アキシチニブ(axitinib)、セジラニブ(cediranib)、クリゾチニブ(crizotinib)、ダムナカンタール(damnacanthal)、ゲフィチニブ(gefitinib)、ラパチニブ(lapatinib)、レスタウルチニブ(lestaurtinib)、ネラチニブ(neratinib)、セマキサニブ(semaxanib)、スニチニブ(sunitinib)、トセラニブ(toceranib)、チルホスチン(tyrphostins)、ヴァンデタニブ(vandetanib)、ヴァタラニブ(vatalanib)、INNO-406、AP24534(Ariad Pharmaceuticals)、XL228(Exelixis)、PHA-739358(Nerviano)、MK-0457、SGX393 およびDC2036である。Ph+白血病(例えばCML)の治療でTKI(例えばイマチニブまたはニロチニブ)のために有効な経口的養生管理方法は1日当たり400mgの用量であり、1日当たり600または800mgから成る高用量も有効であることが見出されている。ある実施態様ではTKIはイマチニブである。別の実施態様では、TKIはイマチニブではない。関連する特徴では、TKIはニロチニブである。さらに別の特徴では、TKIはダサチニブである。
【0012】
本発明の方法は、Ph+白血病幹細胞で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤の投与を含み、ある実施態様では、薬剤は、IL-3、G-CSFおよびGM-CSFの少なくとも1つによるシグナル伝達に関与するレセプターと結合できる。前記薬剤は、IL-3シグナル伝達に関与するレセプターと結合する薬剤であり得るが、しかしながら本方法はまた、G-CSFおよび/またはGM-CSFシグナル伝達に関与するレセプターと結合する他の薬剤の単独または併用投与も包含する。したがって、患者で実施される併用療法は、IL-3、G-CSFまたはGM-CSFシグナル伝達に関与するレセプターと結合するただ1つの薬剤を含むことができるが、また別にはそのような薬剤の組合せも含むこともできる。いくつかの実施態様では、患者の処置に適切な薬剤を選択するために、患者のPh+白血病幹細胞をサンプル採取して、IL-3、G-CSFまたはGM-CSFに対する応答性について試験することができる。
【0013】
本明細書で用いられるように、“Ph+白血病幹細胞で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤”という用語は、適切な細胞表面レセプター(例えばIL-3、G-CSFおよび/またはGM-CSFレセプター)と結合することができ、さらに治療中に患者にとって許容不能な二次的損傷または副作用をもたらすことなくPh+白血病幹細胞死を選択的に促進する薬剤を指す。
本発明の併用療法の実施態様では、Ph+白血病幹細胞によって発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤は、幹細胞でIL-3、G-CSFおよび/またはGM-CSFシグナル伝達事象を遮断もしくは阻害することによって、またはFcエフェクターもしくは細胞傷害活性により直接的に“耐性”幹細胞を排除することによって、または前記の任意の組合せによって、または任意の他のメカニズムによってTKIの有効性を強化すると考えられる。
ある特徴では、薬剤は、IL-3Rα、G-CSFR、GM-CSFRα並びにIL-3およびGM-CSFのベータ共通レセプターから成る群から選択されるレセプターと選択的に結合する抗原結合分子である。
【0014】
本明細書で用いられるように、“抗原結合分子”という用語は、完全な免疫グロブリン分子(モノクローナル抗体、例えば二特異性、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体を含む)、または免疫グロブリンの結合パートナー(例えば宿主細胞タンパク質)との特異的結合についてインタクトな免疫グロブリンと競合する抗原結合フラグメント(例えばFv、Fab、Fab’およびF(ab’)2フラグメント)および/または可変ドメイン含有フラグメントを指す。構造とは関係なく、抗原結合フラグメントはインタクトな免疫グロブリンによって認識される同じ抗原と結合する。抗原結合フラグメントは、合成によりまたは完全な免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的切断により生成することができるが、それらはまた組換えDNA技術によって遺伝子操作によって生成できる。抗原結合分子またはそのフラグメントの製造方法は当分野で周知であり、例えば以下に記載されている:Antibodies, A Laboratory Manual, Edited by E. Harlow and D. Lane (1988), Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
ある実施態様では、抗原結合分子はモノクローナル抗体である。
【0015】
本発明のこの実施態様では、抗原結合分子は、Fc領域または改変Fc領域、より具体的には強化されたエフェクター機能を提供するために改変されてあるFc領域を含むことができる。強化エフェクター機能は、例えば、強化されたFcレセプターに対する結合親和性、抗体依存細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)、抗体依存細胞媒介性食作用(ADCP)、および補体依存細胞傷害作用(CDC)である。抗体のIgGクラスの場合、これらのエフェクター機能は、多様な免疫細胞上で発現されるFcγレセプター(FcγR)と称されるレセプターファミリーとFc領域との嵌合によって支配される。Fc/FcγR複合体の形成によってこれらの細胞が抗原結合部位へ補充され、典型的にはシグナル伝達およびそれに続く免疫応答をもたらす。FcγRと抗体Fc領域との結合親和性を最適化してエフェクター機能を強化する方法、特に“親”Fc領域と比較してADCCおよび/またはCDC活性を改変する方法は当業者には周知である。これらの方法は、対応するFcレセプターとの相互作用を強化する改変および、ADCCおよびADCPを促進するその潜在能力を増強する改変を含むことができる。ADCC活性の強化はまた、Fc領域の保存されたAsn297でIgG1抗体に共有結合したオリゴ糖の改変に続いて記載されている。
抗原結合分子(例えば抗体または抗体フラグメント)およびその結合パートナー(例えば抗原)の相互作用に言及して本明細書で用いられる、“選択的に結合する”という用語は、その相互作用が特定の構造、例えば抗原決定基または結合パートナーのエピトープの存在に依存することを意味する。換言すれば、抗体または抗体フラグメントは、結合パートナーが他の分子または生物の混合物中に存在するときでさえもっぱら結合パートナーと結合するかまたはこれを認識する。
【0016】
本発明の別の実施態様では、薬剤は、IL-3ムテイン、G-CSFムテインおよびGM-CSFムテインから成る群から選択されるムテインであり得る。前記ムテインは、IL-3R、G-CSFR、GM-CSFRから成る群から選択されるレセプターと選択的に結合するが、シグナル活性化をもたらさないか、または少なくとも低いサイトカイン誘発シグナル活性化を生じる。ある実施態様では、ムテインはIL-3ムテインであり、前記はIL-3Rと結合するがIL-3シグナル活性化をもたらさないかまたは少なくとも低い活性化を生じる。一般的には、これらのIL-3ムテインには、1つまたは2つ以上の連続または非連続アミノ酸残基の付加、欠失および/または置換によって相違する天然または人工変異体が含まれる。IL-3と結合するがIL-3シグナル活性化の低下を示すIL-3ムテインの例は16/84C−>A変異体である。IL-3ムテインにはまた、例えばそれらのin vivo半減期を延長するために1つまたは2つ以上の残基が改変された改変ポリペプチドが含まれ得る。前記は、他の成分(例えばPEG基)を結合させることによってもまた達成できる。ポリペプチドのPEG化の方法は当分野では周知である。
本発明の別の実施態様では、薬剤はIL-3と結合することができる可溶性レセプターであり得る。そのような可溶性レセプターの例には、IL3Rαの細胞外部分、または共通β鎖の細胞外部分と融合したIL-3Rαの細胞外部分を含む融合タンパク質が含まれる。
【0017】
IL-3、G-CSFおよびGM-CSFの少なくとも1つによるシグナル伝達に関与するレセプターと結合することができる薬剤は有効量で投与される。“有効量”は、少なくとも部分的に所望の応答を得るか、または進行を遅らせるかもしくは抑制するか、または治療される具体的な症状の進行を全体的に停止させるために必要な量を意味する。前記量は、治療されるべき個体の健康状態および生理的状態、治療されるべき個体の人種的背景、所望される防御の程度、組成物の処方、医学的状況の評価および他の関連する因子に応じて変動する。前記の量は、日常的検査により決定可能な比較的広い範囲に及ぶであろうと予想される。必要な場合には、薬剤の投与は1回または数回反復することができる。投与される実際の量は、治療される症状の性質および薬剤が投与されている速度の両方によって決定されるであろう。
【0018】
ある種の適用の場合、薬理学的化合物(具体的には細胞傷害性であるか、そうでなければPh+白血病幹細胞を殺滅またはその増殖もしくは細胞分裂を抑制する能力を有する抗細胞性物質)は、薬剤と結合させたとき有用であろうと思われる。一般的に、本発明は、薬剤と連結し標的細胞に活性形でデリバーすることができるいずれの薬理学的化合物の使用も意図する。例示的な抗細胞性化合物には、サイトトキシンと同様に化学療法化合物、放射性同位元素が含まれる。化学療法化合物の場合には、ホルモンのような化合物(例えばステロイド);抗代謝剤(例えばサイトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキセートまたはアミノプテリン);アントラサイクリン;マイトマイシンC;ビンカアルカロイド;デメコルシン;エトプシド;ミスラマイシン;マクロライド系抗生物質(例えばメイタンシン);エネダイイン(enediyne)系抗生物質(例えばカルケアミシン)、CC-1065およびその誘導体、またはアルキル化剤(例えばクロラムブシルまたはメルファラン)が特に好ましいであろう。他の実施態様は、以下の化合物、例えば血液凝固剤、サイトカイン、増殖因子、細菌内毒素または細菌内毒素の脂質A成分を含むことができる。いずれの場合も、化合物(例えば前記のもの)は、それら化合物の標的への誘導、内在化、放出、または所望される標的Ph+白血病幹細胞部位における血液成分への提示を可能にする態様で、公知の連結技術を用いて薬剤との連結を成功させることができる。
【0019】
ある種の実施態様では、治療に適用される細胞傷害性化合物は、IL-3Rα、G-CSFR、GM-CSFRαまたはIL-3およびGM-CSF のベータ共通レセプターのいずれかを認識する抗体と連結される。治療に適用される細胞傷害性化合物には、ほんの数例を挙げてみれば一般的に植物、菌類または細菌由来毒素、例えばA鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、a-サルシン、オーリスタチン、アスペルギリン、レスチリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素またはシュードモナス外毒素が含まれる。毒素-抗体構築物の使用は、抗体とそれらの結合と同様にイムノトキシンの分野では周知である。抗体との結合について特に好ましい毒素は、もちろん脱グリコシル化リシンA鎖であろう。脱グリコシル化リシンA鎖は、その極めて強い効力、長い半減期のために、さらに臨床的等級および規模での製造における経済的容易さのために好ましい。
他の実施態様では、細胞傷害性化合物は放射性同位元素であり得る。放射性同位元素には、α放射体(例えば211アスタチン、212ビスマスおよび213ビスマス)とともにβ放射体(例えば131ヨウ素、90イットリウム、177ルテリウム、153サマリウムおよび109パラジウム)、およびオージェ放射体(例えば111インジウム)が含まれる。
本発明にしたがえば、薬剤は患者に非経口投与ルートにより投与できる。非経口投与には、栄養管を介さない(すなわち経腸的ではない)任意の投与ルートが含まれ、例示すれば注射、輸液などによる投与が含まれる。注射による投与には、例示すれば静脈(静脈内)、動脈(動脈内)、筋肉への(筋肉内)、および皮膚下への(皮下)投与が含まれる。薬剤はまた、デポットまたは徐放性処方物として、例えば皮下、皮内または筋肉内に、所望の薬理学的効果を得るために十分な投薬量で投与することができる。
【0020】
ある具体的な実施態様では、IL-3シグナル伝達に関与するレセプターと結合する薬剤は抗原結合分子、より具体的にはモノクローナル抗体であり、前記抗体はIL-3Rα(CD123)と選択的に結合する。したがって、薬剤はCD123に対して作製されたモノクローナル抗体(mAb)7G3であり得る。前記は、白血病細胞株および初代培養の両方のIL-3媒介増殖および活性化を阻害することが以前に示されている(米国特許6,177,078号(Lopez)参照)。或いは、薬剤はモノクローナル抗体CSL360でもよい(前記はマウスモノクローナル抗体7G3の軽鎖および重鎖可変領域をヒトIgG1定常領域に移植することによって得られたキメラ抗体である)。7G3のように、CSL360はCD123(ヒトIL-3Rα)と高い親和性で結合し、前記レセプターとの結合についてIL-3と競合しその生物学的活性を遮断する。ほとんどがヒトであるキメラ抗体CSL360はしたがって白血病幹細胞への誘導および排除のために強力に用いることができる。CSL360はまた、そのIgG1 Fc領域のためにヒト治療薬としての潜在的有用性を有するという利点を提供する(前記Fc領域はヒト環境においてある程度のレベルでエフェクター機能を開始させることができよう)。さらにまた、前記は、ヒトでマウス7G3等価物と比較してクリアランスの低下を示し、免疫原性の低下があり得よう。この薬剤のさらに別の例には以下が含まれる:7G3のヒト化抗体変種、例えばCSL362(Fcエフェクター機能がまた強化されている)、完全にヒトの抗CD123抗体および強化エフェクター機能(例えばADCC活性)を有する抗CD123抗体(これらの例は以下に開示されている:国際特許出願PCT/AU2008/001797(WO 2009/070844))。
【0021】
G-CSFシグナル伝達に関与するレセプターと結合する薬剤は、例えばWO 95/21864で開示されたG-CSFR認識抗体であり得る。同様に、GM-CSFシグナル伝達に関与するレセプターと結合する薬剤は、例えば、国際特許出願PCT/AU93/00516(WO 94/09149)または国際特許出願PCT/GB2007/001108(WO 2007/110631)で開示されたGM-CSFRα認識抗体であり得る。さらに別の実施態様では、前記薬剤は、例えば国際特許出願PCT/AU97/00049(WO 97/28190)で開示された、IL-3およびGM-CSFのベータ共通レセプターを認識する抗体であり得る。
【0022】
別の特徴では、本発明は、(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤の、Ph+白血病の患者の治療における使用、またはPh+白血病の患者の治療用の医薬の製造における使用を提供する。
さらに別の特徴では、本発明はPh+白血病を患者で治療するための組成物を提供し、前記組成物は、(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤を含む。
本発明はまた、(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤、並びに場合によって(iii)前記チロシンキナーゼ阻害剤および前記薬剤を、Ph+白血病を患者で治療する方法にしたがって投与するための指示を含むキットを提供する。
前記キットの各成分は別々の容器で供給することができ、さらに前記指示は(それが存在する場合は)、当該キットの成分を互いに異なる時期に異なる投薬形で投与することを指示することができる。
【0023】
本明細書で用いられる“併用療法”(または“共同療法”)という語句は、BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および、固有の治療的養生管理方法の部分として白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターとの結合によりPh+白血病幹細胞死を選択的に促進する薬剤の投与を含み、前記はこれら治療薬剤の同時作用から生じる有益な作用を提供することを意図する。前記併用の有益な作用には治療薬剤の組合せにより生じる薬剤の時間的または薬剤の機能的共同作用が含まれるが、ただしこれらに限定されない。これらの治療薬剤の併用投与は、典型的には所定の時間(通常は数分、数時間、数日または数週間、選択した組合せに応じて場合によって数カ月)にわたって実施される。“併用療法”は、連続的態様におけるこれら治療薬剤の投与(すなわち各治療薬剤が異なる時期に投与される場合)の他にこれら治療薬剤(またはこれら治療薬剤の少なくとも2つ)の実質的な同時投与を含むことが意図される。実質的な同時投与は、例えば、固定割合の各治療薬剤を含む単一カプセルまたは静脈内注射を、または治療薬剤の各々について単一カプセルまたは静脈内注射を複数回、対象者に投与することによって達成することができる。各治療薬剤の連続的投与または実質的な同時投与は任意の適切なルートによって達成することができる。前記ルートには経口ルート、静脈内ルート、筋肉内ルートおよび粘膜組織を通過する直接吸収が含まれるが、ただしこれらに限定されない。治療薬剤は同じルートで投与しても異なるルートで投与してもよい。例えば、選択した組合せの第一の治療薬剤は経口的に投与し、一方、組合せの他方の治療薬剤は静脈内注射によって投与することができる。或いは、例えば全ての治療薬剤を経口投与するか、または全ての治療薬剤を静脈内注射してもよい。連続的投与のある例では、BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤は、疾患を安定化させるために(すなわち患者は骨髄に5%未満の芽細胞を有する)最初に投与される。当該疾患がいったん安定化したら、白血病幹細胞上に発現される細胞表面レセプターと結合することによってPh+白血病幹細胞死を選択的に促進する薬剤が当該治療的養生管理方法に加えられる。
【0024】
本発明の併用療法では、BCR-ABL TKIは経口投薬形で患者に投与でき、一方、Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤は非経口的に投与できる。
経口投与に適した組成物は、別個のユニット、例えば錠剤、カプセル、カシェ、キャプレットまたはロゼンジ(各々が予め定めた量または投与用量の活性成分を含む)として、または水性もしくは非水性担体液中の溶液もしくは懸濁液、例えばシロップ、エリキシルもしくは乳濁液として提供できる。
非経口投与に適した組成物は、便利には活性成分の無菌的水性調製物を含み、前記調製物は好ましくは受容者の血液と等張である。この水性調製物は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて公知の方法にしたがって処方することができる。無菌的な注射可能調製物はまた、無害で非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の無菌的な注射可能溶液または懸濁液、例えばポリエチレングリコールおよび乳酸中の溶液であってもよい。用いることができる許容可能な賦形剤および溶媒の中では、とりわけ水、リンゲル溶液、適切な炭水化物(例えばショ糖、マルトース、トレハロース、グルコース)溶液、および等張な塩化ナトリウム溶液がある。さらにまた便利には、無菌的な固定油が溶媒または懸濁媒体として用いられる。この目的のためには、任意の非刺激性固定油(合成モノまたはジグリセリドを含む)を用いることができる。さらにまた、オレイン酸が注射可能調製物で有用である。
【0025】
そのような治療用組成物の処方は当業者には周知である。医薬的に許容できる適切な担体および/または希釈剤には、任意のかつ全ての一般的溶媒、分散媒体、充填剤、固形媒体、水溶液、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。医薬的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は当分野では周知であり、例示すれば以下に記載されている:Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, Mack Publishing Company, Pennsylvania, USA。一般的媒体または薬剤が当該活性成分と不適合である場合を除き、本発明の医薬組成物における前記の使用は意図されている。補助的活性成分もまた前記組成物中に取り入れることができる。
本発明を以下の非限定的実施例実施例によってさらに説明する。
【実施例1】
【0026】
材料と方法
CD34+細胞:
新たに診断されたCML-CP患者および正常ドナーから収集した血液の単核細胞をリンホプレップ(Lymphoprep;Axis-Shield, Norway)を用いて密度勾配遠心により単離した。CD34陽性細胞をCD34 mAb連結磁性マイクロビーズ(Miltenyi Biotech, Germany)を用い磁力支援細胞分別によってさらに精製した。
pSTAT5アッセイ(サイトカイン誘発シグナル伝達の測定に使用):
CD34+祖先細胞を血清枯渇培養液(SDM;以下を含む:IMDM、2mM Lグルタミン、1% BSA、1U/mL インスリン、0.2mg/mL トランスフェリン、0.1mM 2-メルカプトエタノールおよび20μg/mLの低密度リポタンパク質)で培養した。STAT5リン酸化レベルを調べるために、20ng/mLのIL-3(Pepro Tech, USA)で刺激する前に、表示のようにCSL362または7G3(0.1μg/ml)および/またはダサチニブ(100nM; Symansis, New Zealand)で前処理した。PFA固定および氷冷メタノールによる透過性付与に続いて、細胞をAlexa488-連結pY694-STAT5抗体または適切なアイソタイプコントロール(Phosflow, BD Biosciences, USA)で染色し、FC500 Terpsichore(Beckman Coulter, USA)を用いてフローサイトメトリーによって分析した。
データ解析:
フローサイトメトリーデータをFCS Express V3(DeNovo Software, USA)を用いて解析した。
グラフパッドプリズム5(GraphPad Prism 5;GraphPad Software, USA)を、更なるデータ提示および2テールスチューデント検定による統計解析のために用いた。
【実施例2】
【0027】
本実施例は、mAb 7G3およびダサチニブは、CML患者の初代CD34+細胞サンプルにおけるIL-3誘発リン酸化の低下で協調的に作用することを示す。
新たに診断されたCML-慢性期(CML-CP)患者(n=3)のCD34+細胞を表示のように100nMのダサチニブ、7G3(100ng/mL)とともにインキュベートし、引き続いて20ng/mLのIL-3で10分間刺激してからPFA固定およびメタノールによる透過性付与を実施した。STAT5リン酸化は、Alexa488-連結pY694-STAT5抗体(Phosflow, BD)を用いてフローサイトメトリーによって決定した(ベースライン:非刺激細胞のSTAT5リン酸化の基準レベル;IL-3:20ng/mLのIL-3とともに培養した細胞のp-STAT5の発現;IL-3+Das 100nM:100nMダサチニブおよび20ng/mLのIL-3とともに培養した細胞のp-STAT5の発現;IL-3+Das 100nM+7G3:100nMダサチニブ、20ng/mLのIL-3および7G3(110ng/mL)とともに培養した細胞のp-STAT5の発現)。
図1および図2(図1に提示したデータのグラフによる表示)は、IL-3の存在下では、ダサチニブ単独ではIL-3誘発STAT5リン酸化を部分的に阻害できるだけであるが、ダサチニブとmAb 7G3との組合せは、IL-3誘発STAT5リン酸化を完全に阻害することができることを示している。
【実施例3】
【0028】
本実施例は、mAb CSL362(7G3のヒト化およびFcエフェクター強化変種)およびダサチニブは、CML患者の初代CD34+細胞サンプルにおけるIL-3誘発STAT5リン酸化の低下で協調的に作用することを示す。
新たに診断された慢性期のCML患者(n=3)の新しく融解させたCD34+細胞を、SDMの回復から1時間後に、表示のように100nMのダサチニブ、0.1μg/mLのCSL362もしくはBM4(CSL362のためのアイソタイプ適合コントロール)、またはCSL362およびダサチニブとともにインキュベートし、引き続いて20ng/mLのIL-3で10分間刺激してからPFA固定およびメタノールによる透過性付与を実施した。STAT5リン酸化は、Alexa488-連結pY694-STAT5抗体(Phosflow, BD)を用いてフローサイトメトリーによって決定した。個々の患者サンプルのA488-pSTAT蛍光ヒストグラムが図3に示されている(これらの細胞では細胞は非刺激レベルのSTAT5リン酸化を示すだけである)。図4は、図3に提示したデータのグラフによる表示である。ベースラインのSTAT5リン酸化に対して標準化した平均蛍光強度±SEMがプロットされている(n=4)。
図5は図2および図4(n=7)のデータを一緒にしたグラフであり、mAb 7G3およびCSL362の両方を含むCML患者データを示す。これらのデータは、抗体(7G3またはCSL362)とダサチニブとの組合せは、単独で用いたダサチニブまたは抗体よりもより有効であることを示す。
【実施例4】
【0029】
本実施例は、BION(抗β共通レセプター(CD131)抗体は、KU812CML細胞におけるGM-CSFシグナル伝達の阻害にダサチニブと協調作用を有することを示す。KU812細胞(CMLの急性転化の患者の末梢血から樹立された骨髄性前駆細胞の細胞株)をBION-1(100nM)の存在下または非存在下で100nMのダサチニブとともに培養し、引き続いてGM-CSF(4ng/mL)で10分間刺激する。STAT5リン酸化は、Alexa488-連結pY694-STAT5抗体(Phosflow, BD)を用いてフローサイトメトリーによって決定した(ベースライン:非刺激細胞の基準STAT5リン酸化;GM-CSF:GM-CSFとともに培養した細胞のp-STAT5の発現;GM-CSF+Das 100nM:GM-CSFおよび100nMダサチニブとともに培養した細胞のp-STAT5の発現;GM-CSF+Das 100nM+Bion-1:100nMダサチニブ、GM-CSFおよびBion-1とともに培養した細胞のp-STAT5の発現)。
図6は、KU812細胞では、ダサチニブ単独はGM-CSFの存在下でpSTAT5リン酸化を阻害しないが、ダサチニブとBION-1との組合せはGM-CSF誘発pSTAT5リン酸化を阻害することを示している。
【実施例5】
【0030】
本実施例は、新たに診断された慢性期(CP)の慢性骨髄性白血病(CML)患者での抗CD123モノクローナル抗体(mAb)(またはGM-CSFもしくはG-CSFに対するmAb)+イマチニブ(または他のTKI)による処置、またはイマチニブ単独による処置の悪性幹細胞における効果を比較する無作為多施設試験について記載する。
試験施設および国/地域の概数はオーストラリアおよび米国の約6−8ヶ所である。幹細胞解析は、米国(例えばシアトルのワシントン大学またはバルチモアのジョンズ・ホプキンス・キンメル癌センター)およびオーストラリア(CSL/メルボルン大学)で実施される。
試験期:フェースII
研究仮説は、抗CD123モノクローナル抗体(mAb)(前記抗体例がフェースI試験で安全であることは以前に示されている)+イマチニブによる処置が、新たに診断された慢性期(CP)の慢性骨髄性白血病(CML)患者で、イマチニブ単独よりも効果的でより迅速なフィラデルフィア染色体(Ph)陽性幹細胞プールの枯渇を6カ月以内の治療でもたらすということである。試験期間は18カ月で約60人の患者がこの試験に補充された。
主要目的:新たに診断されたCP CML患者の幹細胞区画中のPh陽性細胞数を、抗CD123 mAb+イマチニブ処置とイマチニブ単独処置で比較すること。
試験設計:本試験は、新たに診断された慢性期(CP)にあるCML患者の非盲検無作為抽出フェースII試験である。患者は無作為抽出され、抗CD123 mAb(静脈内輸液により3mg/kg)(輸液は1週間毎、2週間毎または1ヶ月毎に実施できる)+開始用量400mgで1日1回の連続経口イマチニブ、または開始用量400mgで1日1回の単剤経口イマチニブを投与される。
試験期間:本試験は予定された数の60人の患者が無作為抽出されるまで登録は自由である。全患者が18カ月まで処置および/または追跡管理される。各グループ当たりの患者数は以下のとおりである:無作為抽出二群比較試験で、約40人の患者が、20人の併用療法および20人のイマチニブ単独療法のために無作為抽出される。さらに代表サンプル(少なくとも12週間処置した患者の骨髄サンプルを含む)の数の不足が最初の40人から生じた場合に、追加の患者が補充される。
試験集団: 18歳以上の新たに診断されたCP CMLの患者で、以前にCMLの全身的処置治療を全く受けていない者である。
試験評価および終了点:抗CD123 mAb+イマチニブによる白血病患者の併用療法の安全性は以前のフェースI試験で決定されている。イマチニブとの併用療法で使用するために選択した抗CD123 mAbの用量は当該フェースIで決定されている。
本フェースII試験における安全性はNCI-CTCバージョン3を用いて評価される。2つの処置群における全ての副作用、毒性および検査室異常の発生率の比較解析が実施される。
有効性は患者の骨髄サンプルの幹細胞解析によって評価される。全ての幹細胞アッセイが、骨髄(BM)吸引物の常磁性ビーズによるCD34+細胞の前選別に依拠する。分別用フローサイトメーターによるCD38マーカーの発現(陽性または陰性)を基準にしてCD34+画分をさらに分別する。マルチパラメーターフローサイトメトリー免疫表現型分別を用いて、白血病幹細胞集団を含む細胞画分を同定する。
第一の終了点は、当該試験群間における6ヶ月時の幹細胞区画(CD34+CD38-およびCD34+CD38+)中のPh陽性細胞の割合の比較である。第二の終了点は以下についての処置群間の比較である:
(1)1および3ヶ月時の全幹細胞区画中のPh陽性細胞数、
(2)1、3、6、12および18ヶ月で採取した血液サンプルでRQ-PCR(リアルタイム定量PCR)を用いて測定したBCR-ABL mRNA転写物レベル、および
(3)3、6、12および18ヶ月以内の完全な細胞遺伝学的応答(CCyR)率。
このフェースII臨床試験は、指定の期間(例えば4−6ヶ月)イマチニブ単独療法で処置される20人の患者の追加の(第三の)処置群を含むであろう。前記イマチニブ単独療法期間の終結時に採取された骨髄サンプルは、幹細胞区画中に存続/残留するPh陽性細胞を有する患者の診断および残留白血病細胞の定量化を可能にするであろう。これらの患者は、イマチニブ(継続)+抗CD123 mAbを併用してさらに6ヶ月間処置されるであろう。これらの患者で評価される第一の終了点は、併用療法を開始してから3および6ヶ月の時点での幹細胞区画中のPh陽性細胞の変化(減少/排除)である。第二の終了点は以下であろう:
(1)併用療法開始から3および6ヶ月以内の完全な細胞遺伝学的応答(CCyR)の達成;
(2)主要な分子的応答の達成(BCR-ABL mRNAの3 log以上の減少);
(3)完全な分子的緩解の達成(RQ-PCRで陰性)。
【実施例6】
【0031】
イマチニブおよび抗サイトカイン抗体併用療法のin vitroにおけるCML幹細胞に対する効果:CD34+CD38- CML幹細胞生存の解析
CD34-APCおよびCD38-PE抗体(Becton, Dickinson and Company)で染色しBD FacsARIA細胞分別装置を用いることによって、CD34+CD38-細胞を分別する。追加サイトカイン(IL-3、GM-CSF、G-CSF、SCF、IL-6、flt-3リガンド)を含む/含まないIMDM/10% FCS中に、分別した細胞を1.5 x 105 細胞/mLでプレートし、表示の最終濃度で以下の形式により処理する:
1.コントロール
2.1−100 μg/mLの抗CD123 mAb
3.1−100 μg/mLの抗CD131 mAb
4.1−100 μg/mLの抗CD116 mAb
5.1−100 μg/mLの抗CD114 mAb
6.0.01−10μMのイマチニブまたは他のTKI
7.1−100μg/mLの抗CD123 mAb+0.01-10μMのイマチニブまたは他のTKI
8.1−100μg/mLの抗CD123 mAb+1−100 μg/mLの抗CD116 mAb+0.01−10μMのイマチニブまたは他のTKI
9.1−100μg/mLの抗CD123 mAb+1−100 μg/mLの抗CD116 mAb+1−100 μg/mLの抗CD114 mAb+0.01−10μMのイマチニブまたは他のTKI
10.1−100μg/mLの抗CD131 mAb+1−100 μg/mLの抗CD114 mAb+0.01-10μMのイマチニブまたは他のTKI
アネキシンV(Annexin-V)-FITCおよび7-AAD(BD Biosciences)を用い記載されたように(Jin, L et al., Cell Stem Cell 2009, 5:31-42)細胞を染色した後、24h、48hおよび72hにフローサイトメトリーによって生存率を解析する。絶対細胞数もまた、トゥルーカウント(Tru-Count)ビーズ(BD Bioscences)またはフローカウント蛍光球(Flow-Count Fluorospheres;Beckman Coulter)のどちらかを添加することによってフローサイトメトリーで査定する。
【実施例7】
【0032】
イマチニブおよび抗サイトカイン抗体併用療法のin vitroにおけるCML細胞に対する効果:コロニー形成細胞活性に対する影響の解析
追加サイトカイン(IL-3、GM-CSF、G-CSF、SCF、IL-6、flt-3リガンド)を含む/含まないBIT(Stem Cell Technologies)補充IMDM中の懸濁培養に、バルクCML腫瘍細胞(1x105)を静置する。表示の最終濃度を有する以下の試験条件が含まれる:
1.コントロール
2.1−100 μg/mLの抗CD123 mAb
3.1−100 μg/mLの抗CD131 mAb
4.1−100 μg/mLの抗CD116 mAb
5.1−100 μg/mLの抗CD114 mAb
6.0.01-10μMのイマチニブまたは他のTKI
7.1−100μg/mLの抗CD123 mAb+0.01-10μMのイマチニブまたは他のTKI
8.1−100μg/mLの抗CD123 mAb+1−100 μg/mLの抗CD116 mAb+0.01−10μMのイマチニブまたは他のTKI
9.1−100μg/mLの抗CD123 mAb+1−100 μg/mLの抗CD131 mAb+1−100 μg/mLの抗CD116 mAb+1−100 μg/mLの抗CD114 mAb+0.01−10μMのイマチニブまたは他の TKI
10.1−100μg/mLの抗CD131 mAb+1−100 μg/mLの抗CD114 mAb+0.01−10μMのイマチニブまたは他のTKI
培養上清を週に2回更新し、2−3週間にわたってトリパンブルー排除により増殖をモニターする。培養期間の終了時に、細胞を半固形のメチルセルロース祖先培地(Stem Cell Technologies)に14−18日静置し、記載のように(Jiang, X et al.,Leukemia 2007,21:926-935)、BCR-ABL+コロニーの形成について評価する。
【実施例8】
【0033】
イマチニブおよび抗サイトカイン抗体併用療法のin vitroにおけるCML幹細胞に対する効果:細胞増殖に対する影響の解析
追加サイトカイン(IL-3、GM-CSF、G-CSF、SCF、IL-6、flt-3リガンド)を含む/含まない、BIT((Stem Cell Technologies)補充IMDM中の懸濁培養にバルクCML腫瘍細胞(1x104)(CD34+で分別またはCD34+CD38-で分別)を静置する。表示の最終濃度を有する以下の試験条件が含まれる:
1.コントロール
2.1−100 μg/mLの抗CD123 mAb
3.1−100 μg/mLの抗CD131 mAb
4.1−100 μg/mLの抗CD116 mAb
5.1−100 μg/mLの抗CD114 mAb
6.0.01−10μMのイマチニブまたは他のTKI
7.1−100μg/mLの抗CD123 mAb+0.01-10μMのイマチニブまたは他のTKI
8.1−100μg/mLの抗CD123 mAb+1-100 μg/mLの抗CD116 mAb+0.01-10μMのイマチニブまたは他のTKI
9.1−100μg/mLの抗CD123 mAb+1−100 μg/mLの抗CD131 mAb+1-100 μg/mLの抗CD116 mAb+1-100 μg/mLの抗CD114 mAb+0.01-10μMのイマチニブまたは他のTKI
10.1−100μg/mLの抗CD131 mAb+1-100 μg/mLの抗CD114 mAb+0.01-10μMのイマチニブまたは他のTKI
4日間培養した後、トリパンブルーを排除する細胞を血球計算盤により決定する生細胞計測によって、または記載(Jiang, X et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 1999, 96: 12804-12809)のように [3H]-チミジン取り込みとして細胞増殖を測定する。後者については、[3H]-チミジンはさらに12時間ウェルに添加される。細胞をグラスフィルター上に採集し、チミジン取り込みを測定する。
【実施例9】
【0034】
抗CD123 mAbのCML幹細胞に対するin vitroにおける作用:抗体依存細胞性細胞障害(ADCC)の解析
イマチニブ耐性CML幹細胞のADCCに対する感受性を決定する。この目的のために、CD34-APCおよびCD38-PE抗体(Becton, Dickinson and Company)で染色しBD FacsARIA細胞分別装置を用いることによって、CD34+CD38-細胞を分別する。記載(Lazar et al., Engineered antibody Fc variants with enhanced effector function. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 103(11):4005-10)のように、正常ドナーから精製したナチュラルキラー(NK)細胞によるADCCアッセイで、分別した細胞を標的として用いる。標的細胞(CML細胞;1x105細胞)を、NK細胞の存在下(CML:NK=1:5の割合)で種々の量の抗CD123抗体(0.01−10μg/mL)とともにインキュベートする。NK細胞は、Miltenyi Biotec's NK単離キット(Cat#130-092-657)を用い正常なバッフィーパックから精製する。前記培養を5% CO2の存在下にて37℃で4時間インキュベートする。細胞の溶解は、プロメガ(Promega)のCytoTox 96(商標) 非放射性細胞障害アッセイキット(Cat# G1780)を製造業者の指示にしたがって用い、培養上清中に遊離されるLDHによって測定する。抗体が存在しないかまたはエフェクター細胞が存在しない標的細胞をコントロールとして用い、細胞溶解のバックグラウンドを確定する。
【実施例10】
【0035】
イマチニブおよび抗サイトカインレセプターmAb併用療法のin vivoにおけるCML細胞に対する効果
全ての動物実験は適切な院内ガイドラインおよび倫理規定の承認の下で実施される。実験は以前に記載(Wolff NC and Ilaria RL Jr 2001 Blood 98, 2808-2816)されたように実施するが、ただし細胞株の代わりに初代ヒトCML細胞が用いられる。致死線量未満(300cGy)を照射したNOD/SCIDまたはNOD/SCID/IL-2Rγヌルマウス(6−10週齢)に、ヒトCML細胞を尾静脈から注射する。前記CML細胞は、CML患者から単離した末梢血単核球(PBMC)(1−10x106細胞/マウス)または患者のCD34+分別骨髄細胞(0.5−5x106細胞/マウス)のどちらかである。末梢血中への白血病細胞の移植は、フローサイトメトリーでヒトCD45+細胞を測定することによってモニターする(Lock et al., 2002 Blood 99, 4100-4108)。腫瘍を2−8週間定着させ、続いて各処置グループ当たり5−10匹の動物のグループとして以下に示すようにマウスを処置する:
1.未処理(食塩水)コントロール;
2.イマチニブまたは他のTKI(胃管栄養により毎朝50mg/kgおよび毎夕100mg/kg:薬剤は、まっすぐのまたは湾曲した動物給餌用ニードルにより250μLの体積の滅菌水で投与される);
3.イマチニブまたは他のTKI(胃管栄養により毎朝50mg/kgおよび毎夕100mg/kg:薬剤は、まっすぐのまたは湾曲した動物給餌用ニードルにより250μLの体積の滅菌水で投与される)およびCD123、CD116、CD114およびCD131に対する抗体から選択される1つまたは2つ以上の抗体(200−600μg/マウス)(または同じ濃度の適合アイソタイプコントロール抗体)(腹腔内注射により週に3回投与される);
4.CD123、CD116、CD114およびCD131の1つに対する抗体(200−600μg/マウス)(または同じ濃度の適合アイソタイプコントロール抗体)(腹腔内注射により週に3回投与される)。
処置をさらに2−8週間継続し、白血病細胞移植を週に2回モニターする。処置期間の終了時に、マウスを犠牲にし、さらに末梢血液、大腿骨骨髄および脾臓の白血病細胞移植を決定する。
いくつかの実験では、イマチニブと抗サイトカインレセプターmAbとの併用療法の自己再生能力(白血病幹細胞能力)に対する効果は二次移植実験によって決定される。これらの実験では、CML細胞が上記のように処置した初代レシピエントマウスの骨髄から単離され(マウス1匹当たり2つの大腿骨および2つの脛骨)、さらに二次移植は、二次レシピエントマウス1匹当たり2−10x106のCML細胞の静脈内移植によって実施される(1グループ当たり4−10匹のマウス)。二次レシピエントのBMおよび脾臓の移植レベルを移植後4−12週間で測定する。
最少残留病状セッティングにおけるこれら薬剤の有効性を調べるために、動物をイマチニブ(または他のTKI)で処置し、併用療法の開始前に最少残留疾患応答を誘発する。いくつかの実験を以下のように実施する:イマチニブ(または他のTKI)処置を(上記のように)開始し、さらに2−6週間継続させた後、一次レシピエントマウスでのイマチニブ処置の継続下または非継続下で(上記のような)mAb処置を開始する。白血病細胞の移植を実験の全経過にわたって末梢血でモニターし、処置期間の終了時にマウスを犠牲にし、末梢血液、大腿骨骨髄および脾臓の白血病細胞移植を決定する。この処置の終了時における残留白血病幹細胞活性もまた、上記の概略のように実施される二次移植実験によって測定する。
本発明の範囲を逸脱することなく多くの改変が当業者には明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のPh+白血病を治療する方法であって、(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤を患者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
チロシンキナーゼ阻害剤がイマチニブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
チロシンキナーゼ阻害剤がイマチニブでない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、クリゾチニブ、ダムナカンタール、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ネラチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、チルホスチン、ヴァンデタニブ、ヴァタラニブ、INNO-406、AP24534、XL228、PHA-739358、MK-0457、SGX393 およびDC2036から成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブおよびニロチニブから成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
薬剤が、IL-3、G-CSFおよびGM-CSFの少なくとも1つによるシグナル伝達に必要なレセプターと結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
レセプターが、IL-3Rα、G-CSFR、GM-CSFRα並びにIL-3およびGM-CSF のベータ共通レセプターから成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
薬剤が、IL-3Rα、G-CSFR、GM-CSFRα並びにIL-3およびGM-CSF のベータ共通レセプターから成る群から選択されるレセプターと選択的に結合する抗原結合分子である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
抗原結合分子が、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントおよび/または可変ドメイン含有フラグメントである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗原結合分子がIL-3Rαと選択的に結合するモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗原結合分子が、エフェクター機能が強化された改変Fc領域を含む、請求項8から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
強化されたエフェクター機能が抗体依存性細胞媒介細胞障害作用である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
細胞傷害性化合物が抗原結合分子に連結される、請求項8から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
薬剤がIL-3ムテイン、G-CSFムテインおよびGM-CSFムテインから成る群から選択されるムテインであり、前記ムテインがIL-3R、G-CSFR、GM-CSFRから成る群から選択されるレセプターと選択的に結合するがシグナル活性化をもたらさない、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ムテインがIL-3ムテインである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細胞傷害性化合物がムテインと連結される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
薬剤がIL-3と結合できる可溶性レセプターである、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
薬剤が、IL-3Rαの細胞外部分または、共通ベータ鎖の細胞外部分と融合したIL-3Rαの細胞外部分を含む融合ポリペプチドである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
患者がヒトである、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
Ph+白血病が、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)から選択される、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
Ph+白血病がCMLである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤が患者が緩解期に入るまで投与され、この緩解期にPh+白血病幹細胞上に発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤が治療方法に加えられる、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤の、Ph+白血病の患者の治療における使用、またはPh+白血病の患者の治療用の医薬の製造における使用。
【請求項24】
チロシンキナーゼ阻害剤がイマチニブである、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
チロシンキナーゼ阻害剤がイマチニブでない、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、クリゾチニブ、ダムナカンタール、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ネラチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、チルホスチン、ヴァンデタニブ、ヴァタラニブ、INNO-406、AP24534、XL228、PHA-739358、MK-0457、SGX393 およびDC2036から成る群から選択される、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブおよびニロチニブから成る群から選択される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
薬剤が、IL-3、G-CSFおよびGM-CSFの少なくとも1つによるシグナル伝達に必要なレセプターと結合する、請求項23に記載の使用。
【請求項29】
レセプターが、IL-3Rα、G-CSFR、GM-CSFRα並びにIL-3およびGM-CSF のベータ共通レセプターから成る群から選択される、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
薬剤が、IL-3Rα、G-CSFR、GM-CSFRα並びにIL-3およびGM-CSF のベータ共通レセプターから成る群から選択されるレセプターと選択的に結合する抗原結合分子である、請求項23から29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項31】
抗原結合分子が、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントおよび/または可変ドメイン含有フラグメントである、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
抗原結合分子がIL-3Rαと選択的に結合するモノクローナル抗体である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
抗原結合分子が、エフェクター機能が強化された改変Fc領域を含む、請求項30から32のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
強化されたエフェクター機能が抗体依存性細胞媒介細胞障害作用である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
細胞傷害性化合物が抗原結合分子に連結される、請求項30から32のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
薬剤がIL-3ムテイン、G-CSFムテインおよびGM-CSFムテインから成る群から選択されるムテインであり、前記ムテインがIL-3R、G-CSFR、GM-CSFRから成る群から選択されるレセプターと選択的に結合するがシグナル活性化をもたらさない、請求項23から29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
ムテインがIL-3ムテインである、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
細胞傷害性化合物がムテインと連結される、請求項36または37に記載の使用。
【請求項39】
薬剤がIL-3と結合できる可溶性レセプターである、請求項23から29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
薬剤が、IL-3Rアルファの細胞外部分または、共通ベータ鎖の細胞外部分と融合したIL-3Rαの細胞外部分を含む融合ポリペプチドである、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
Ph+白血病が、慢性骨髄性白血病(CML)および急性リンパ性白血病(ALL)から選択される、請求項23から40のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
Ph+白血病が慢性骨髄性白血病(CML)である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
治療が、患者が緩解期に入るまでBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程を含み、この緩解期にPh+白血病幹細胞上に発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤が治療方法に加えられる、請求項23から42のいずれか1項に記載の使用。
【請求項44】
Ph+白血病を患者で治療するための組成物であって、前記組成物が(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞によって発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤を含む、前記Ph+白血病治療用組成物。
【請求項45】
チロシンキナーゼ阻害剤がイマチニブである、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
チロシンキナーゼ阻害剤がイマチニブでない、請求項44に記載の組成物。
【請求項47】
チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、クリゾチニブ、ダムナカンタール、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ネラチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、チルホスチン、ヴァンデタニブ、ヴァタラニブ、INNO-406、AP24534、XL228、PHA-739358、MK-0457、SGX393 およびDC2036から成る群から選択される、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブおよびニロチニブから成る群から選択される、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
薬剤が、IL-3、G-CSFおよびGM-CSFの少なくとも1つによるシグナル伝達に必要なレセプターと結合する、請求項44に記載の組成物。
【請求項50】
レセプターが、IL-3Rα、G-CSFR、GM-CSFRα並びにIL-3およびGM-CSF のベータ共通レセプターから成る群から選択される、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
薬剤が、IL-3Rα、G-CSFR、GM-CSFRα並びにIL-3およびGM-CSF のベータ共通レセプターから成る群から選択されるレセプターと選択的に結合する抗原結合分子である、請求項44から50のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項52】
抗原結合分子が、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントおよび/または可変ドメイン含有フラグメントである、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
抗原結合分子がIL-3Rアルファと選択的に結合するモノクローナル抗体である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
抗原結合分子が、エフェクター機能が強化された改変Fc領域を含む、請求項51から53のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項55】
強化されたエフェクター機能が抗体依存性細胞媒介細胞障害作用である、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
細胞傷害性化合物が抗原結合分子に連結される、請求項51から55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項57】
薬剤がIL-3ムテイン、G-CSFムテインおよびGM-CSFムテインから成る群から選択されるムテインであり、前記ムテインがIL-3R、G-CSFR、GM-CSFRから成る群から選択されるレセプターと選択的に結合するがシグナル活性化をもたらさない、請求項44から50のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項58】
ムテインがIL-3ムテインである、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
細胞傷害性化合物がムテインと連結される、請求項57または58に記載の組成物。
【請求項60】
薬剤がIL-3と結合できる可溶性レセプターである、請求項44から50のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項61】
薬剤が、IL-3Rアルファの細胞外部分または、共通ベータ鎖の細胞外部分と融合したIL-3Rαの細胞外部分を含む融合ポリペプチドである、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
Ph+白血病が慢性骨髄性白血病(CML)および急性リンパ性白血病(ALL)から選択される、請求項44から61のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項63】
Ph+白血病が慢性骨髄性白血病(CML)である、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
(i)BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤および(ii)Ph+白血病幹細胞上で発現される細胞表面レセプターと選択的に結合する薬剤、並びに場合によって(iii)前記チロシンキナーゼ阻害剤および前記薬剤を、Ph+白血病を患者で治療する方法にしたがって投与するための指示を含むキット。
【請求項65】
請求項1から22のいずれか1項に記載の方法で使用される請求項64に記載のキット。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−505968(P2013−505968A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531186(P2012−531186)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001295
【国際公開番号】WO2011/038467
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(500021413)シーエスエル、リミテッド (28)
【出願人】(512083975)
【出願人】(512083986)
【出願人】(512083997)
【Fターム(参考)】