説明

フィラメントワインディング用エポキシサイズ組成物

エポキシ樹脂エマルション、1種以上のカップリング剤、カチオン性潤滑剤、及び酸を含むサイズ組成物。エポキシ樹脂エマルションは、低分子量のエポキシと1種以上の界面活性剤とを含む。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、175〜225、好ましくは175〜190である。必要に応じて、サイズ組成物は非イオン潤滑剤、ポリウレタン膜形成剤、及び/又は帯電防止剤を含むものであってもよい。サイズ組成物は、改善された機械的特性、湿潤引張特性、改善された亀裂抵抗、及び改善された加工特性を持つ強化複合品を製造するフィラメントワインディング用途で使用されるガラス繊維を一定の寸法にすることに用いられてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ねガラス繊維用のサイズ組成物に関し、より詳しくは、フィラメントワインディング用途で使用されるガラス繊維を一定の寸法にするための低エポキシ当量エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂エマルションを含有するサイズ組成物に関する。サイズ組成物によって一定の寸法に作られた繊維から形成される複合品も提供する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は、種々の技術に有用である。例えば、ガラス繊維は、ガラス繊維によって強化プラスチック又は合成物を形成すためのポリマーマトリックスの強化材として一般的に用いられる。なぜなら、変動する大気条件による縮み又は伸びが生じないように、ガラス繊維によって寸法安定性が付与されるからである。また、ガラス繊維は高い抗張力、耐熱性、耐湿性、及び高熱伝導率を持つ。
【0003】
一般的に、ガラス繊維は、ブッシング(套管:bushing)又は開口部から溶融ガラス材料の流れを線引きすることによって作られる。溶融ガラスの線引きは、増えた繊維を集めてパッケージに入れるワインダーによって、又は繊維を収集して切断する前に繊維を引くローラーによっておこなうことも可能である。繊維をブッシングから線引きした後、通常、水性サイズ組成物が該繊維に塗布される。一旦繊維がサイズ組成物で処理されると、繊維はパッケージで乾燥されたり、又はストランド状に切断される。繊維を乾燥させることで、液体媒体が蒸発し、ガラス繊維の表面を軽く覆っている残留物として、サイズ組成物が沈着する。
【0004】
従来のサイズ組成物は、一般的に、1種以上の重合性又は樹脂性膜形成組成物、ガラス樹脂カップリング剤、及び液体媒体に溶解又は分散した1種以上の潤滑剤を含む。サイズ組成物の膜形成成分は、マトリックス樹脂又はガラス繊維が包埋される樹脂と互換性を持つように選択されることが望ましい。エポキシ樹脂及びポリウレタンがサイズ組成物の膜形成成分として使われている。エポキシ樹脂が一般に利用されるのは、エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂のビニルエステル類から作られる製品を強化するために繊維が使用される場所であり、例えば連続マルチフィラメントガラス繊維ストランドに硬化性樹脂組成物を含浸させ、適当な形にガラス繊維ストランドを巻付け、更にガラス繊維によって強化された製品(例えば、パイプ又はタンク)を生産するためにマトリックス樹脂を硬化させることによっておこなわれる。
【0005】
ジョンソン(Johnson)の特許文献1は、水乳化樹脂系(例えばエポキシ樹脂、脂肪族モノカルボン酸と脂肪族ポリカルボン酸)を含むサイズ組成物を記載している。
【0006】
マッコイ(McCoy)の特許文献2は、エポキシ樹脂エマルションと、ポリビニルピロリドンと、ポリエチレングリコールエステルモノオレイン酸塩とを含むガラスサイズ組成物を記載している。特許権者は、サイズ組成物が特にエポキシフィラメントワインディングに適すると主張している。
【0007】
マッコイ(McCoy)の特許文献3は、エポキシ樹脂エマルションと、ポリビニルピロリドンと、α−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシランと、ポリエチレングリコールエステルモノステアリン酸塩とを含むガラスサイズ組成物を開示している。特許権者は、サイズ組成物が特に連続引出し成型に適していると主張している。
【0008】
バーク(Barch)他の特許文献4は、ガラス繊維を処理するためのサイズ組成物を開示しており、該組成物はフェノールエポキシ樹脂、即ち、1種以上の非エステル化カルボキシル基含有ポリカルボン酸の部分エステルと、複数のエポキシ基、潤滑剤、乳化剤、又は湿潤剤、1種以上のシランカップリング剤、及び水を含む合成物との反応産物を含んでいる。
【0009】
テンプル(Temple)の特許文献5は、ポリ酢酸ビニルシラン共重合体、エポキシ・ポリマー、1種以上の潤滑剤、オルガノシランカップリング剤、1種以上の非イオン性界面活性剤、炭化水素酸、及び水を含む水性サイズ組成物を記載している。オルガノシランカップリング剤は、アミノオルガノシランカップリング剤、潤滑剤改変アミノシランカップリング剤、エポキシを含んでいるシランカップリング剤又はこれらのカップリング剤のうちの2つ以上の混合物であってもよい。必要に応じて、サイズ組成物がポリエチレン含有ポリマー及び/又はワックスを含むものであってもよい。
【0010】
ヘインズ(Haines)他の特許文献6は、乳化エポキシ樹脂、潤滑剤、3−クロロプロピルトリメトキシシランを含むガラス繊維用の水性サイズ組成物を開示している。
【0011】
ヘインズ(Haines)他の特許文献7は、ガラス繊維用の水性サイズ組成物を記載しており、該組成物は膜形成剤としての乳化エポキシ樹脂、潤滑剤としての乳化鉱油、カップリング剤としてのグリシドキシアルキル及び/又はハロアルキルシラン、アミド帯電防止剤、及びポリビニルピロリドンを有している。
【0012】
マッコイ(McCoy)他の特許文献8は、ガラス繊維用の水性サイズ組成物を開示しており、該組成物はエポキシ及びメタクリルイル官能性オルガノシランと、エポキシ樹脂等の繊維形成ポリマーと、潤滑剤と、pH調節剤とを含む。マッコイ(McCoy)他は、特にフィラメントワインディング及び引出し成形に適用されるガラス繊維強化材に、サイズ組成物が適していることを教示している。
【0013】
ヘーガー(Hager)の特許文献9は、小直径ガラス繊維を一定の寸法にするサイズ組成物を開示する。サイズ組成物は、エポキシ膜形成剤樹脂、非イオン性潤滑剤、カチオン性潤滑剤、少なくとも1種のオルガノシランカップリング剤、少なくとも1種の揮発性又は不揮発性酸、及び水を含む。
【0014】
ウー(Wu)他の特許文献10は、膜形成剤としてのエポキシ、少なくとも1種の乳化剤、少なくとも1種の繊維潤滑剤、少なくとも1種の有機官能性金属カップリング剤、ポリビニルピロリドン、水分散又は乳化可能なポリエチレン、及び水を含むサイズ組成物を開示している。
【0015】
ブラノン(Brannon)の特許文献11は、ガラス繊維用の水性サイズ組成物を記載しており、この組成物はエポキシ樹脂、カップリング剤、結晶性ペンタエリトリトールを含む。ブラノンは、サイズ組成物が特にフィラメントワインディング及び引出し成形に適用されるガラス繊維強化材として適していると主張している。
【0016】
フラウト(Flautt)他の特許文献12は、少なくとも1種のジオール・オルガノシランと少なくとも1種のトリオールオルガノシランとの化合物を含むサイズ組成物を開示している。サイズ組成物は、膜形成重合材料(例えば、エポキシ樹脂及び潤滑剤)を含むものであってもよい。
【0017】
サイズ組成物を繊維に塗布することで、その後の処理の過程で生ずるフィラメント間の摩滅及び破損が減少し、また強化すべきマトリックス樹脂と繊維との適合性が向上する。繊維の処理加工可能性と繊維−ポリマー結合とを改善することに加えて、サイズ組成物もまた強化された繊維から作られる複合品の物理的性質を高めるものでなければならない。したがって、結果として生ずる複合体の物理的特性とガラス繊維によって強化され得る種々のポリマー材料の物理的性質とを改善する一方で繊維の処理加工可能性を改善する上でのサイズ組成物の二重的役割という観点から、強化された複合品の物理的性質を改善し、かつ加工特性を改善する特異的に仕立てられたサイズ組成物が当該技術分野でなおも求められている。
【0018】
【特許文献1】米国特許第4,104,434号
【特許文献2】米国特許第4,107,118号
【特許文献3】米国特許第4,140,833号
【特許文献4】米国特許第4,305,742号
【特許文献5】米国特許第4,394,418号
【特許文献6】米国特許第4,448,910号
【特許文献7】米国特許第4,448,911号
【特許文献8】米国特許第4,656,084号
【特許文献9】米国特許第4,933,381号
【特許文献10】米国特許第5,038,555号
【特許文献11】米国特許第5,262,236号
【特許文献12】米国特許第6,270,897号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、及び合成ポリマー繊維)を強化するためのサイズ組成物を提供することである。サイズ組成物は、エポキシ樹脂エマルション、少なくとも1種のカップリング剤、カチオン性潤滑剤、及び酸を含む。更に、サイズ組成物は非イオン性潤滑剤、エポキシ/ポリウレタン又はポリウレタン膜形成剤、及び/又は帯電防止剤を含むものであってもよい。エポキシ樹脂エマルションは、エポキシ当量(epoxy equivalent weight)が175〜225であるエポキシ樹脂と、少なくとも1種の界面活性剤とを含む。少なくとも1つの典型的な実施形態では、エポキシ樹脂のエポキシ当量が175〜190である。カップリング剤はいずれのシランカップリング剤でもよいが、好ましくはエポキシシランカップリング剤である。サイズ組成物は、微量の弱酸(例えば、時期尚早にエポキシ基を開裂することなくカップリング剤のシランを加水分解する酢酸、ギ酸、コハク酸、クエン酸、及び/又はホウ酸)を含む。弱酸の添加に代わるものとして、サイズ組成物は弱酸とホウ酸塩塩との混合物を含むものであってもよい。サイズ組成物は、フィラメントワインディングアプリケーションで用いられる繊維の被覆に、有利に使用される。
【0020】
本発明の別の目的は、複合品を提供することであり、この複合品はサイズ組成物で一定の寸法にされる複数のガラス繊維から作られており、またこのサイズ組成物は、エポキシ樹脂エマルション、少なくとも1種のカップリング剤、カチオン性潤滑剤、及び上記したような酸を含む。繊維から作られる強化複合品は、サイズ組成物で一定の寸法にした改善された物理的性質を示すもので、このような改善された物理的性質として、例えば改善された湿潤機械的性質、改善された強度、及び優れた加工特性が挙げられ、更に該加工特性としては、例えばエポキシ樹脂によるグラスストランドのより速い含浸、フィラメント切れの度合いが低いこと、及びパイプ表面がよりいっそう滑らかであることが挙げられる。
【0021】
本発明のさらなる目的は、サイズ組成物を含む複合品を製造する方法を提供することであり、この方法は、ガラス繊維に対して、エポキシ樹脂エマルション、少なくとも1種のカップリング剤、カチオン性潤滑剤、及び上記したような酸を含むサイズ組成物を塗布すること、マンドレルに一定の寸法にされたガラス繊維を巻付ける又は巻回すること、及びサイズ組成物を硬化させて複合部品を作るためにガラス繊維を熱することを含む。
【0022】
サイズ組成物の利点は、上記サイズに存在する低分子量のエポキシ樹脂エマルションが、サイズ組成物で有機溶媒の必要性を減少又は排除する液体状態にあることである。有機溶媒を減らすことで、放出される揮発性の有機化合物(VOC)の量を減少させることが可能であり、それによってより安全で、より環境にやさしい作業場をつくる。
【0023】
サイズ組成物の別の利点は、サイズ組成物で一定の寸法にされる繊維から作られる複合品が、湿潤引張強度性能の改善、繰り返し疲労及び静的疲労の改善、及び亀裂抵抗の改善を示すことである。パイプ繰り返し疲労及び静的疲労が改善せれることで、本発明のサイズ組成物によって一定の寸法にされた複合品のパイプ壁の厚さを、パイプ製造元によって減少させることが可能になり、このパイプでの漏れ抵抗の度合いが改善される。また、パイプ壁が薄くなることで、パイプ全体の重さが減り、またパイプの製造に用いられる材料が少なくなるので、製造コストが削減される。
【0024】
本発明の上記及び他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明を検討することで、以下により完全に示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同様の意味を持つ。本明細書に記載される方法及び材料と類似又は等価であるいっさいの方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用し得るが、好ましい方法及び材料を本明細書中に記載する。本明細書中に引用される参考文献として、公開又は対応の米国又は外国特許出願、公布済みの米国又は外国特許、又は任意の他の参考文献が挙げられ、これらの参考文献に示された各々の内容(全てのデータ、表、図面、及び本文)を本明細書の一部を構成するものとして援用する。留意すべき点は、「サイズ組成物(size composition)」、「サイズ組成物(sizing compoosition)」、及び「サイズ(size)」という言い回しが本明細書では同義的に用いられている点である。
【0026】
本発明は、フィラメントワインディング・プロセスで有利に使用可能である繊維用の改良サイズ組成物に関する。このサイズ組成物は、エポキシ膜形成剤、少なくとも1種のカップリング剤、カチオン性潤滑剤、及び酸を含む。更に、サイズ組成物は非イオン潤滑剤、ポリウレタン又はエポキシ/ポリウレタン膜形成剤、及び/又は帯電防止剤を含むものであってもよい。
【0027】
サイズ組成物の膜形成ポリマー成分は、水性媒体に分散又は溶解可能であり、またイズ組成物を乾燥させた際に合体してフィルムを形成する任意の適当なポリマーであってよい。膜形成剤は、処理の間、繊維が損傷するのを防ぐ機能を果たし、また繊維とマトリックス樹脂との相溶性を与える。このように、膜形成剤として、一定の寸法にされた繊維が使用されるマトリックス樹脂との相溶性があるものが選択されなければならない。
【0028】
サイズ組成物に使用される好ましい膜形成剤として、低分子量エポキシ樹脂と少なくとも1種の界面活性剤とを含むエポキシ樹脂エマルションが挙げられる。エポキシ樹脂の分子量が350〜450であり、またエポキシ当量が175〜225、より好ましくは分子量が350〜380であり、またエポキシ当量が175〜190であることが好ましい。本明細書で使用されるように、「エポキシ当量」は、化合物に含まれるエポキシ基の数でエポキシ樹脂の分子量を割ることにより定義される。有用なエポキシ樹脂は、多価アルコール又はチオールのポリグリシジルエーテル等の分子内にエポキシ基又はオキシラン基を少なくとも1つ含む。樹脂を形成する適当なエポキシ膜の例として、レゾルーション(Resolution)から市販されているエポン(Epon)(登録商標)825及びエポン(Epon)(登録商標)826と、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)から市販されているDER330及びDER331と、エポテック(Epotec)から市販されているYD127及びYD128とが挙げられる。
【0029】
低分子量のエポキシ樹脂エマルションは、ジアセトンアルコール等の溶媒の必要を減らし、また場合によってはそれを取り除く液体の状態になる。有機溶媒の減少は、言い換えれば、作業環境に放出されるVOC(揮発性有機化合物)の量を減らす。また、本発明にもとづく低分子量のエポキシ膜形成エマルションは、実質的に無着色である。本明細書で用いられるように、用語「実質的に無着色」とは、エポキシ・エマルションの彩色が最小限又は無彩色であることを意味する。本発明のエポキシ・エマルションの別の利点は、該エポキシ・エマルションが水に対して容易に分散することである。
【0030】
エポキシ樹脂に使用される適当な界面活性剤の例として、限定されるものではないが、トリトン(Triton)X−100、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)から入手可能)、プルロニック(Pluronic)P103、酸化エチレン/酸化プロピレン・ブロック共重合体(BASFから入手可能)、プルロニック(Pluronic)F77、酸化エチレン/酸化プロピレン・ブロック共重合体(BASFから入手可能)、プルロニック(Pluronic)10R5、酸化エチレン/酸化プロピレン・ブロック共重合体(BASFから入手可能)、プルロニック(Pluronic)L101(BASFから入手可能)又はシンペロニック(Synperonic)PEL101(ICIから入手可能)のブロック共重合体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン・ブロック共重合体(例えば、プルロニック(Pluronic)P105(BASFから入手可能))、更に酸化エチレン/酸化プロピレン・ブロック共重合体(BASFから入手可能)が挙げられる。好ましくは、エポキシ樹脂エマルションは、2種類以上の界面活性剤を含む。好ましい実施形態では、プルロニック(Pluronic)L101とプルロニック(Pluronic)P105との組合せがエポキシ樹脂エマルションで使われる。エポキシ樹脂エマルションに存在する上記界面活性剤又は複数の上記界面活性剤の量は、10〜25%、最も好ましくは18%であってもよい。
【0031】
サイズ組成物に含まれるエポキシ樹脂エマルションの量は、固体質量あたり約50〜約95%、より好ましくは約60〜約90%である。
【0032】
従来のエポキシ樹脂と本発明の膜形成エポキシ樹脂エマルションとの比較を表1に示す。













【0033】
【表1】

【0034】
サイズ組成物で使用されるカップリング剤は、ガラス表面と反応して不要なヒドロキシル基を取り除く加水分解性基と、膜形成ポリマーと反応して該ポリマーをガラス面に化学結合させる1つ以上の基とを有するものであってもよい。特に、カップリング剤は、1ないし3つの加水分解性官能基と、ガラス繊維の表面と相互作用するとともにポリマーマトリックスとの相溶性を示す1つ以上の有機基とを、好ましくは含む。
【0035】
サイズ組成物に使用される適当なカップリング剤は、シランのケイ素原子に対する加水分解容易な結合を持つオルガノシラン又はその加水分解製品である。本サイズ組成物で使用可能であるシランカップリング剤を、官能基であるアミノ、エポキシ、アジド、ビニル、メタクリルオキシ、ウレイド、及びイソシアネートによって特徴づけることが可能である。好ましくは、オルガノシランは、非加水分解性基を介してケイ素原子に結合したエポキシ樹脂を有する。また、オルガノシランは、シランのケイ素原子に対して非加水分解結合を介して結合したアクリリル又はメタクリル基を含むものであってもよい。
【0036】
サイズ組成物に用いられるオルガノシランは、Si(OR)2構造(Rがアルキル基等の有機基である)を有するモノシランを含む。低級アルキル基、例えばメチル、エチル、及びイソプロピルが好ましい。シランカップリング剤は、後に続く処理の過程で、ガラス繊維に対する膜形成剤の粘着を促し、けば立ち、又は破損した繊維フィラメントの度合いを減らす働きをする。本発明で使用される適当なカップリング剤の例として、限定されるものではないが、グリシドオキシポリメチレントリアルコキシシラン、例えば3−グリシドオキシ−1−プロピル−トリメトキシシラン、アクリルオキシもしくはメタクリルイルオキシポリメチレントリアルコキシラン、例えば3−メタクリルオキシ−1−プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(GEシリコンズ(GE Silicons)のA−187)、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(GEシリコンズ(GE Silicons)のA−174)、アミノプロピルトリエトキシシラン(GEシリコンズ(GE Silicons)のA−1100)、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(GEシリコンズ(GE Silicones)のA−1110)、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(GEシリコンズ(GE Silicons)のA−1120)、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトオキシシラン(GEシリコンズ(GE Silicons)のY−9669)、α−クロロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社由来のKBM−730)、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(GEシリコンズ(GE Silicons)のA−2287)、ビニル−トリス−(2−メトキシエトキシ)シラン(GEシリコンズ(GE Silicons)のA−172)、及びビス−γ−トリメトキシシリルプロピルアミン(GEシリコンズ(GE Silicons)のA−1170)が挙げられる。サイズ組成物は1種以上のカップリング剤を含むものであってもよいが、サイズ組成物は好ましくはγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(GEシリコンズ(GE Silicons)のA−187)等の少なくとも1種のエポキシシランを含む。サイズ組成物に含まれるカップリング剤又は複数のカップリング剤の量は、固体質量あたり約1〜約15%、好ましくは固体質量あたり約5〜約12%であってもよい。
【0037】
サイズ組成物もまた、インターフィラメント摩滅の減少を促す少なくとも1種のカチオン性潤滑剤を含む。カチオン性潤滑剤の適当な例として、限定されるものではないが、ポリエチレンイミンポリアミド塩(コグニス(Cognis)から商標名エメリ(Emery)6760Lとして市販されている)、ルーベサイズ(Lubesize)K−12(アルファ(Alpha)/オーウェンズコーニング(Owens Corning))、シラソール(Cirrasol)185AE(ユニケミー(Unichemie))、シラソール(Cirrasol)185AN(ユニケミー(Unichemie))等のステアリン・エタノールアミンが挙げられる。サイズ組成物に含まれるカチオン性潤滑剤の量は、好ましくは、けば立ちの発生が少ないコーティングを形成する活性潤滑剤レベルを提供するのに十分な量である。サイズ組成物に含まれるカチオン性潤滑剤の量は、固体質量あたり最大約15%であり、好ましくは固体質量あたり約0.01〜約2.0%であり、更に好ましくは固体質量あたり約0.25%〜約1.25%である。
【0038】
カチオン性潤滑剤に加えて、サイズ組成物は少なくとも1種の非イオン潤滑剤も含むものであってもよい。サイズ組成物の非イオン潤滑剤は、「湿潤潤滑剤」として作用し、フィラメントワインディング・プロセスの間、繊維の保護を更に増す。また、非イオン潤滑剤は、けば立ち発生の軽減を促す。適当な非イオン潤滑剤の非排他的な例は、PEG600モノステアレート(コグニス(Cognis)から入手可能なポリエチレングリコールモノステアリン酸塩)等のポリアルキレングリコール脂肪酸である。他の非限定的例として、PEG400モノステアレート(コグニス(Cognis))、PEG400モノオレエート(コグニス(Cognis))、及びPEG600モノラウレート(コグニス(Cognis))が挙げられる。サイズ組成物に含まれる非イオン潤滑剤の量を、固体質量あたり0〜20%とすることができる。
【0039】
また、サイズ組成物は帯電防止剤を任意に含むものであってもよい。特に本明細書中での使用に適した帯電防止剤として、サイズ組成物に対して可溶性のある帯電防止剤が挙げられる。適当な帯電防止剤の例として、エメルスタト(Emerstat)(商標)6660A及びエメルスタト(Emerstat)(商標)6665(エメリインダストリーズ社(Emery Industries, Inc.)から入手可能な四級アンモニウム帯電剤)、テテラエチルアンモニウム・クロリド、及び塩化リチウムを挙げることが可能である。サイズ組成物に含まれる帯電剤の量は、固体質量あたり約0〜約5.0%、好ましくは固体質量あたり約0.25〜約3.0%である。
【0040】
更に、サイズ組成物は、小量の弱酸を含むものであってもよい。理論に縛られることを望むわけではないが、pHを調整するのに用いられる従来のサイズ組成物用酸添加物であるクエン酸が、ガラス繊維の乾燥過程で大量に使われた場合に、膜形成剤及びエポキシシランのエポキシ基を時期尚早に開裂する場合があり、それによって機械的特性が減少する場合もあると考えられる。本発明のサイズ組成物では、微量の酢酸、ギ酸、コハク酸、クエン酸、ホウ酸、及び/又はメタホウ酸の本発明のサイズ組成物に添加することで、時期尚早のエポキシ基開裂を生ずることなく、カップリング剤のシランを加水分解する。好ましい実施形態では、微量の酢酸及び/又はホウ酸がサイズ組成物に含まれる。サイズ組成物に含まれる酸の量は、好ましくはpH3.0〜7.0、より好ましくはpH3.5〜5.5となるのに十分な量であることが望まれる。
【0041】
弱酸の添加に代わるものとして、サイズ組成物は酢酸、ギ酸、クエン酸又はコハク酸等の弱酸とホウ酸塩塩との混合物を含むものであってもよい。弱酸が酢酸であることが好ましい。これに代わる実施形態では、上記サイズのホウ素濃度は、サイズ組成物の約0.1〜約3.0%の範囲内であることが好ましい。適当なホウ酸塩として、限定されるものではないが、酸化ホウ素、四ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、二ホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸カルシウム、フルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、及びテトラフルオロホウ酸亜鉛が挙げられる。
【0042】
必要に応じて、サイズ組成物は、ベイボンド(Baybond)2297(バイエル(Byer))、ベイボンド(Baybond)PU403(バイエル(Byer))、及びW−290H(クロンプトン(Crompton))等のポリウレタン膜形成剤、又はエピ・レズ(Epi−Rez)5520−W−60(レゾルーション(Resolution))等のエポキシ/ポリウレタン膜形成剤を含むものであってもよい。理論に縛られることを望むわけではないが、ポリウレタン膜形成剤は、樹脂/サイズ界面を硬化することによって、ストランド完全性及び機械的疲労性能を高めると考えられる。樹脂界面を強化することで、亀裂抵抗の改善と、強度改善等の機械的特性の増大又は改善がなされた最終組成物製品が得られる。サイズ組成物に含まれるポリプレタン膜形成剤の量を、固体質量あたり約0〜約30%とすることができる。
【0043】
サイズ組成物は、コーティングを目的として活性固体を溶解又は核酸するために、水を更に含む。水の添加量を、ガラス繊維への塗布に適した粘性にまで水性サイズ組成物を希釈するのに十分な量、また所望の固体含量を得るために十分な量とすることができる。サイズ組成物の水含有量を、最大で約97%とすることができる。
【0044】
本発明のサイズ組成物は、従来の添加物、例えば染料、油、充填剤、熱安定化剤、バイオサイド、消泡剤、抗酸化剤、オルガノシラン、塵抑制剤、湿潤剤、及び/又は他の従来の添加物を任意に含むものであってもよい。サイズ組成物に含まれる添加物の量は、サイズの総質量の約10%を好ましくは上回らない。
【0045】
サイズ組成物での使用を意図した成分の範囲を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
本発明にもとづく好ましい水性サイズ組成物を表3に示す。

【0048】
【表3】

【0049】
本発明にもとづく別の水性サイズ組成物を表4に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
サイズ組成物の製造を、最初にカップリング剤、酸、又は酸ホウ酸塩混合物及びエポキシ樹脂膜形成剤とを撹拌させながら混合することで主混合物を作ることにより、おこなうことも考えられる。必要に応じて、主混合物のpHを所望の値である約3.5〜7.0に調節する。カチオン性潤滑剤と帯電防止剤(含む場合)とを、主混合物に対して別々に混合及び添加してもよい。また、ポリウレタン又はエポキシ/ポリウレタン(含む場合)と非イオン潤滑剤(含む場合)とを主混合物に添加してもよい。次に、適当な濃度を達成して固体混合物を制御する量まで、水を添加する。
【0052】
サイズ組成物を、従来の技術(加熱されたブッシングに溶融ガラスを通して線引きすることで実質的に連続ガラス繊維を作る)によって作られたガラス標準品に塗布することができる。任意の種類のガラス、例えばAタイプガラス、Cタイプガラス、Eタイプガラス、Sタイプガラス、又はそれらの改良品が、繊維材料としての用途に適している。例えば、Eタイプガラスの一改良品では、酸化ホウ素が酸化マグネシウムに置き換えられている。そのようなガラスは、オーエンズコーニングファイバーガラスコーポレーション(Owens Corning Fiberglass Corporation)から商品名アドバンテックス(Advantex)(登録商標)として市販されている。又は、サイズ組成物を1種以上の合成ポリマーからなる標準品に塗布することも可能であり、該ポリマーとしてポリエステル、ポリアミド、アラミド、及びそれらの混合物が挙げられる。ポリマー標準品を、強化繊維材料として単独使用することも可能であり、又は強化標準品を上記したようなガラス標準品と組み合わせて使用することも可能である。炭素繊維も使用可能である。
【0053】
サイズ組成物を直径約4〜30ミクロンの繊維に塗布することも可能であり、この際、直径約12〜約23ミクロンの繊維がより好ましい。サイズの混合固体含有量は、約1〜約15%、好ましくは約3〜約8%、更に最も好ましくは約5.3〜約5.8%である。更に、好ましくは、サイズが繊維の総質量を基準にして約0.3〜約1.25質量パーセントの量で繊維上に存在するようにして、該サイズを繊維に塗布する。このことは、繊維ロービングの強熱減量(LOI)(繊維から有機サイズを燃焼又は熱分解させるのに十分な温度で繊維を加熱した後の該繊維が被る質量減少)によって測定することができる。繊維上で所望の固体含有量を達成するために、サイズ混合物を希釈するために添加される水の量を変えてもよい。また、サイズ組成物を単フィラメント又は多フィラメント繊維に塗布してもよい。各々のストランドは、約2000〜4000本の繊維を含むものであってよい。
【0054】
任意の塗布処理法を用いて従来の方法でサイズ組成物を繊維に塗布することが可能であり、該塗布処理法として、スプレーによって、又はサイズ組成物で湿らせた回転又は固定ロール全体にわたり繊維を線引きすることで一定の寸法にすることが挙げられる。サイズ組成物を、好ましくは約5質量%〜約15質量%の水分が繊維に与えられるのに十分な量で、繊維に対して塗布する。
【0055】
フィラメントワインディング用途で使用される繊維の被覆(一定の寸法にすること)に、サイズ組成物が有利に用いられる。例えば、繊維をサイズ組成物で被覆し、従来の方法でロービングに形成することが可能である。続いて、一定の寸法にされたロービングを、マンドレルに巻き付けてもよい。マンドレルは、再利用可能なマンドレル、折りたたみ可能なマンドレル、一体型マンドレル、又は使い捨て型マンドレル等の従来のマンドレルのいずれであってもよい。ロービングをマンドレルに巻き付けたら、複合部分/マンドレルをオーブンに通すか、又はその部分を熱風に通すことで、複合体及びマンドレルの加熱をおこなう。複合品の硬化及び冷却した後、ただちにマンドレルを取り外す。サイズ組成物で一定の寸法にしたパイプ又はタンク等の複合部品は、優れた強度と優れた加工特性(例えばストランドのエポキシ樹脂含浸が早くなること、破損フィラメントの度合いが低いこと、及びパイプ表面が滑らかになるということ)とを示す。
【0056】
この発明を概ね説明することで、特定の具体例を参照することによってさらなる理解が得られ、また以下に説明する具体例は説明のみを目的とするものであって、特に指摘しない限り、包括的又は限定的であることを意図してはいない。
【実施例】
【0057】
実施例1: サイズ組成物の調整
モーター式撹拌器を備えた19リットル(5ガロン)円筒型容器又は桶内で低速で撹拌させながら、6〜9gのA−1100シランを4,000gの脱イオン水に添加することで、固体含有量が4〜8%である表5に示すサイズ組成物17,000gを製造する。桶に10〜13グラムの氷酢酸を加え、結果として生じた混合物を数分間、撹拌する。pHメータ又はpH試験紙等を用いて、pHが3.5〜7.0の範囲にあることを測定する。4〜7gのホウ酸を次に加え、撹拌を続ける。130〜170gのA−187シランを秤量し、桶内の混合物に添加する。混合物を約5分間にわたり撹拌する。次に、1350〜1500gのRSW−3861を添加して主混合物を作る。
【0058】
約500gの脱イオン水、8〜12gのエメリ(Emery)6760L、及び9〜14gのエマースタト(Emerstat)(商標)6660Aからなる予混合物をビーカ内で作る。この予混合物を舌圧子等で撹拌し、主混合物に添加する。次に、主混合物を5分以上撹拌する。1.0〜2.0グラムの主混合物試料を桶から線引きして、混合物固体の測定をおこなう。混合物固体数を測定し、単純計算をおこなって最終混合物固体が4〜8%になるまで必要な水の添加量を決定する。
【0059】
【表5】

【0060】
実施例2: パイプ軸方向引張強度
サイズ組成物A及びB(表6に示す)で一定の寸法にしたガラス繊維を各々螺旋状にマンドレルに巻き付けて硬化させることで、アミン硬化エポキシ・パイプを作る。また、パイプの作製は、オーウェンコーニング(Owens Corning)から市販されているフィラメントワインディング用の市販エポキシ互換製品である対照製品A及び対照製品Bと、フィラメントワインディング用の2つの競争的エポキシ互換製品である競合製品A及び競合製品Bとを用いても、おこなった。対照及び競合製品は、シランカップリング剤、エポキシ膜形成剤、及び種々の潤滑剤を含むエポキシフィラメントワインディング用サイズ化学を用いた。
【0061】
【表6】

(1)エポン(Epon)825+18%P105/L101
(2)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GEシリコンズ(GE Silicones))
(3)アミノプロピルトリエトキシシラン(GEシリコンズ(GE Silicones))
(4)アミノプロピルトリエトキシシラン(コグニス(Cognis))
(5)四級アンモニウム帯電防止剤(エメリインダストリーズ社(Emery Industries, Inc.))
【0062】
この実験で製造及び使用されるパイプを、内径が5.677cm(2.235インチ)及び壁厚が約0.152(0.060インチ)の3.7m(12フィート)長のパイプとした。パイプの製造は、適当なサイズ組成物によって一定の寸法にされたガラスロービングを樹脂浴に浸し、過剰な樹脂を押し出しにより取り除き、湿潤ロービングを54.75度の角度でパイプに巻き付けるというフィラメントワインディング法を用いて、マクレーンアンダーソン(Mclean−Anderson)フィラメントワインディング装置で、おこなった。完成(巻き付け)パイプ及びマンドレルをパイプ硬化用オーブンに移し、エポキシマトリックスを化学的に架橋させることで、パイプを完成させた。冷却後、このパイプをマンドレルから取り外し、切断して4本の切断部分にした。パイプの一部を切断して、軸方向引張強度測定用の長手方向切断部分とし、またパイプの他の切断部分をパイプの繰り返し疲労試験に用いた。
【0063】
軸方向引張強度測定に使用するパイプの部分を長手方向に切断して、幅が約1.3cm(約0.5インチ)及び長さが約25.4cm(約10インチ)の試験用細片にした。パイプ全体の代わりに長手方向試験細片を試験すること以外はASTMD2105に開示された方法にもとづいて、軸方向引張強度について細片を試験した。インストロン(Instron)試験機を用いて試料を破砕した。試料のいくつかを乾燥させて試験し、他の試料を沸騰水に7日間浸けた後に試験した。結果を表7に示す。
【0064】
【表7】

【0065】
表7に示すように、サイズ組成物A(ホウ酸を含む本発明のサイズ組成物)は7日の沸騰後、より高い強度保持率を示した。表7のデータは、サイズ組成物Aの高強度保持率により、サイズ組成物Aが対照製品及び競合製品に比べて顕著な湿潤強度特性を有することも示している。したがって、サイズ組成物Aから作られたパイプの機械的特性は、当該技術分野の現状況を上回る改善された湿潤機械的特性を有した。理論に縛られることを望むわけではないが、ホウ酸の存在は、湿潤特性の改善をもたらす要因であると考えられる。
【0066】
実施例3: パイプ軸方向引張強度の効果
サイズ組成物A(表6に示す)によって一定の寸法にされた繊維を含むアミン硬化樹脂を上記実施例2に記載の方法と同様の方法で作製した。また、エポキシ互換製品である対照製品A及び競合製品Aを用いて、パイプも作製した。製造されたパイプを長手方向に切断し、幅が約1.3cm(約0.5インチ)で長さが約25.4cm(約10インチ)の試験用細片を作製した。実施例2と同様にしてパイプパイプ軸方向強度を試験した。結果を表8に示す。
【0067】
【表8】

【0068】
この実施例は、更に、7日間沸騰処理後のサイズ組成物Aにより一定の寸法にされた繊維から作られたパイプによる高強度保持率を示す。湿潤引張強度は、乾燥強度と比較して複合パイプの品質を示す上で、より良い指標である。サイズ組成物の耐水劣化能は、複合パイプに長期性能を与える場合、必要な性質である。湿潤条件下で高温及び高圧下の複合パイプの長期性能を、パイプ製造元によって測定する。非常に高い湿潤強度性能は、より良い長期性能に関連していると考えられる。
【0069】
実施例4: パイプ繰り返し疲労の効果
サイズ組成物A(表6に示す)によって一定の寸法にされたガラス繊維を、アミン硬化樹脂パイプ及び無水物硬化エポキシ樹脂の両方でパイプ繰り返し疲労について、試験した。このテストは、ASTM D2992パートAにもとづいて実施した。試験は、アミン硬化エポキシ・パイプで3回、無水物硬化エポキシ・パイプで1回、おこなった。パイプの製造は、実施例2の記載と同様にしておこなった。実験方法の詳細な説明を以下に記す。
【0070】
この実施例では、約76cm(約30インチ)長のパイプ切断部分に、高圧下で水を受け入れる部分を有する端部接続部品を取り付けた。このパイプに水で満たし、パイプの内部を加圧した後に脱圧する繰り返し試験をおこなった。繰り返し試験の速度を、1分間あたり約25回繰り返しとした。試験が進行するにつれ、加圧による亀裂がパイプに生じた。このような亀裂は一般に、樹脂マトリックスの亀裂、ガラス・マトリックス界面間の脱結合、及び螺旋状に巻かれたガラス及び樹脂からなる層間の脱結合という3種類のうちの1つである。時間とともに、水がパイプ表面に向けてパイプの亀裂に染み込んだ。パイプ壁部を介した水の浸透を、漏れ又はパイプ破損と呼んだ。漏れの検出を、パイプを導電性金属薄で包むこのよって設定された電気回路を完成させることで、電気的におこなった。漏れが検出された場合、カウンタを停止し、繰り返し数を記録した。次に、パイプを分解し、該パイプの壁厚を測定した。
【0071】
繰り返し試験で得たデータをプロットし、直線回帰を用いて直線に合わせた。周方向応力の対数を繰り返しの対数に対してプロットした。次に、周方向応力を選択し、対応する繰り返し数を測定することによって、試料の比較をおこなった。繰り返しをより多く実施することで、性能がより高くなった。結果を表9に示す。






【0072】
【表9】

【0073】
表9は、サイズ組成物Aで一定の大きさにしたガラス繊維によって作られたパイプで、対照及び競合製品サイズ組成物によって作られたパイプと比較して、パイプ繰り返し疲労が改善されたことを示している。パイプ繰り返し疲労の改善によって、パイプ製造業者がパイプ壁厚を薄くする一方で漏れ抵抗を同じ度合いに保つことが可能になる。薄い壁は、パイプの総質量を低下させ、パイプ形成に使用される材料を少なし、それによって製造コストの減少が達成可能である。
【0074】
実施例5: 繰り返し疲労の効果
サイズ組成物M(表10に示す)及び対照製品A(オーウェンコーニング(Owens Corning)から入手可能なフィラメント・ウィンディング用の現在市販されているエポキシ互換製品)で一定の寸法にされたガラス繊維を、各々、螺旋状にマンドレルに巻き付けて硬化させることで、アミン硬化樹脂パイプを製造した。対照製品を、シランカップリング剤、エポキシ膜形成剤、及び種々の潤滑剤が挙げられるが、ポリウレタン膜形成剤は含まれないエポキシフィラメントワインディング用のサイズ化学を用いて、製造した。
【0075】
【表10】

(1)エポン(Epon)(登録商標)826+18%P105/L101
(2)ポリウレタン膜形成剤(ベイヤ(Bayer))
(3)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GEシリコンズ(GE Silicones))
(4)ポリエチレングリコールモノステアレート(コグニス(Cognis))
(5)ポリエチレンイミンポリアミド塩(コグニス(Cognis))
(6)四級アンモニウム帯電防止剤(エメリインダストリーズ社(Emery Industries, Inc.))
【0076】
次に、パイプを、ASTM D2992、パートAにもとづいて、パイプ周方向応力についての試験した。周方向応力を選択し、対応する繰り返し数を測定することによって、試料の比較をおこなった。結果を表11に示す。
【0077】
【表11】

【0078】
表11は、サイズM(ポリウレタン膜形成剤を含んだサイズ)によって一定の寸法にされたガラス繊維によって作られたパイプに、対照サイズ組成物で作られたパイプと比較して、パイプ繰り返し疲労の改善がみられたことを示している。理論に縛られることは望まないが、サイズ組成物にポリウレタン膜形成剤が含まれることが、繰り返し性能を改善する要因となり、サイズ組成物Mで一定の寸法にされたパイプの機械的強度改善が達成されると考えられる。
【0079】
この出願の発明を一般的に、また具体的な実施形態に関連して説明した。好ましい実施形態と思われるもので本発明の説明をおこなったが、当業者に既知の広範囲な変更例を包括的記述内で選択することができる。本発明は、別紙の特許請求の範囲の記述を除き、制限されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性サイズ組成物であって、
低エポキシ当量のエポキシ樹脂と、少なくとも1種の界面活性剤とを有するエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂エマルションと、
1種以上のオルガノシランカップリング剤と、
カチオン性潤滑剤と、
少なくとも1種の酸とを含むことを特徴とする水性サイズ組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、175〜225である、請求項1に記載のサイズ組成物。
【請求項3】
前記酸が、酢酸、ホウ酸、メタホウ酸、コハク酸、クエン酸及びギ酸からなる群から選択される1種以上の酸である、請求項1に記載のサイズ組成物。
【請求項4】
ポリウレタン膜形成剤及びエポキシ/ポリウレタン膜形成剤からなる群から選択される構成要素を更に含む、請求項1に記載のサイズ組成物。
【請求項5】
ホウ酸塩を更に含み、また前記酸が、酢酸、コハク酸、クエン酸及びギ酸からなる群から選択される、請求項1に記載のサイズ組成物。
【請求項6】
非イオン潤滑剤、帯電防止剤、ポリウレタン膜形成剤及びエポキシ/ポリウレタン膜形成剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分を更に含む、請求項2に記載のサイズ組成物。
【請求項7】
前記オルガノシランカップリング剤が、エポキシシランカップリング剤からなる、請求項1に記載のサイズ組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂エマルションが、固体質量当り約60%〜約90%の量で前記サイズ組成物に含まれ、前記カップリング剤が、固体質量当り約1%〜約15%の量で前記サイズ組成物に含まれ、前記カチオン性潤滑剤が、固体質量当り約0.01〜約2.0%の量で前記サイズ組成物に含まれ、更に前記酸が、固体質量当り約0.01〜約5.0%の量で前記サイズ組成物に含まれる、請求項1に記載のサイズ組成物。
【請求項9】
少なくとも部分的にサイズ組成物で被覆された強化繊維材料であって、該サイズ組成物が、
低エポキシ当量のエポキシ樹脂と、少なくとも1種の界面活性剤とを有するエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂エマルションと、
1種以上のオルガノシランカップリング剤と、
カチオン性潤滑剤と、
少なくとも1種の酸とを含むことを特徴とする、強化繊維材料。
【請求項10】
前記強化材料が、ガラス繊維、改変ガラス繊維、炭素繊維及び合成ポリマー繊維からなる群から選択される、請求項9に記載の強化繊維材料。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、175〜225である、請求項10に記載の強化繊維材料。
【請求項12】
非イオン潤滑剤、帯電防止剤、ポリウレタン膜形成剤及びエポキシ/ポリウレタン膜形成剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分を更に含む、請求項11に記載の強化繊維材料。
【請求項13】
前記酸が、酢酸、ホウ酸、メタホウ酸、コハク酸、クエン酸及びギ酸からなる群から選択される1種以上の酸である、請求項9にもとづく強化繊維材料。
【請求項14】
ポリウレタン膜形成剤及びエポキシ/ポリウレタン膜形成剤からなる群から選択される成分を更に含む、請求項13に記載の強化繊維材料。
【請求項15】
前記オルガノシランカップリング剤が、エポキシシランカップリング剤からなる、請求項14に記載の強化繊維材料。
【請求項16】
ホウ酸塩を更に含み、また前記酸が、酢酸、コハク酸、クエン酸及びギ酸からなる群から選択される、請求項9に記載の強化繊維材料。
【請求項17】
少なくとも部分的にサイズ組成物で被覆された複数の強化繊維材料から構成される強化複合品あって、該サイズ組成物が、
低エポキシ当量のエポキシ樹脂と、少なくとも1種の界面活性剤とを有するエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂エマルションと、
1種以上のオルガノシランカップリング剤と、
カチオン性潤滑剤と、
少なくとも1種の酸とを含むことを特徴とする、強化複合品。
【請求項18】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、175〜225である、請求項17に記載の強化複合品。
【請求項19】
前記酸が、酢酸、ホウ酸、メタホウ酸、コハク酸、クエン酸及びギ酸からなる群から選択される1種以上の酸である、請求項18に記載の強化複合品。
【請求項20】
前記エポキシ樹脂エマルションが、固体質量当り約60%〜約90%の量で前記サイズ組成物に含まれ、前記カップリング剤が、固体質量当り約1%〜約15%の量で前記サイズ組成物に含まれ、前記カチオン性潤滑剤が、固体質量当り約0.01〜約2.0%の量で前記サイズ組成物に含まれ、更に前記酸が、固体質量当り約0.01〜約5.0%の量で前記サイズ組成物に含まれている、請求項19に記載の強化複合品。
【請求項21】
非イオン潤滑剤、帯電防止剤、ポリウレタン膜形成剤及びエポキシ/ポリウレタン膜形成剤からなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を更に含む、請求項18に記載の強化複合品。
【請求項22】
ホウ酸塩を更に含み、また前記酸が、酢酸、コハク酸、クエン酸及びギ酸からなる群から選択される、請求項17に記載の強化複合品。
【請求項23】
ポリウレタン膜形成剤及びエポキシ/ポリウレタン膜形成剤からなる群から選択される成分を更に含む、請求項18に記載の強化複合品。
【請求項24】
前記強化材料が、ガラス繊維、改変ガラス繊維、炭素繊維及び合成ポリマー繊維からなる群から選択される、請求項18に記載の強化複合品。
【請求項25】
巻回された強化複合品を製造する方法であって、
低エポキシ当量のエポキシ樹脂と、少なくとも1種の界面活性剤とを有するエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂エマルションと、
1種以上のオルガノシランカップリング剤と、
カチオン性潤滑剤と、
少なくとも1種の酸とを含むサイズ組成物を、ガラス繊維に塗布する工程と、
一定の寸法にされた前記ガラス繊維をマンドレルに巻回して、所望の形状を有する巻かられた物品を作る工程と、
前記巻回物品を加熱することで、前記サイズ組成物を硬化させ、巻回強化複合品を作る工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、175〜225である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ホウ酸塩を更に含み、また前記酸が、酢酸、コハク酸及びギ酸からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記酸が、酢酸、ホウ酸、メタホウ酸、コハク酸、クエン酸及びギ酸からなる群から選択される1種以上の酸である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記強化複合品から前記マンドレルを取り除く工程を更に含む、請求項26に記載の方法。

【公表番号】特表2008−503424(P2008−503424A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516511(P2007−516511)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/018014
【国際公開番号】WO2006/007169
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(595080337)オウェンス コーニング (19)
【Fターム(参考)】