説明

フィリング材用品質改良剤

【課題】フラワーペーストやカスタードクリーム、惣菜フィリングといったフィリング材の離水や油分の分離を防止すると共に、ボディ感や良好な口溶け、滑らかな食感を付与することのできるフィリング材用品質改良剤を提供する。更には、製造上簡便に利用できる、フィリング材の品質改良方法を提供する。
【解決手段】フィリング材に対し、
(a)グルコマンナン:0.05〜1重量%
(b)エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉:0.1〜10重量%
(c)ガティガム及び/又はアラビアガム:0.05〜5重量%
を含有することを特徴とするフィリング材用品質改良剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィリング材の離水防止を目的としたフィリング材用品質改良剤に関する。詳細には、保水性を高め、離水や油分の分離を顕著に抑制すると共に、フラワーペーストやカスタードクリーム、惣菜フィリングといったフィリング材に、ボディ感や良好な口溶け、滑らかな食感を付与することのできるフィリング材用品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
主に製菓、製パン分野において使用されるフラワーペーストやカスタードクリーム、惣菜フィリング、ジャム等の各種フィリング材は、フィリング材自体の滑らかさ、口溶けの良さなどの食感の良さはもちろんのこと、パンや菓子に挟む、内包されるといった特性から、離水防止特性が要求されてきた。特に、フィリング材からパンや菓子への水分移行による、パンや菓子本来の食感低下は重要な課題であり、従来より様々な試みが行われてきた。さらに、パンや菓子に使用されるまでの流通、保管中に離水や油分の分離が発生することがあり、品質上問題となる。
【0003】
例えば、特許文献1では、食品の水分移行防止剤として、粉末状、ゾル状又は水溶液化したコンニャクイモ又はグルコマンナン若しくはペースト化されたグルコマンナンからなる基材に凝固剤、及び増粘多糖類を添加してなる食品の水分移行防止剤が開示されており、増粘多糖類として澱粉が挙げられている。しかし、特許文献1で挙げられている食品の水分移行防止剤の使用形態は、クレープ生地やトルティーヤ等のシート状食品などに水分移行防止剤を塗布又は噴霧コーティングするものであって、該水分移行防止方法を使用しようとした場合は、シート状食品にその都度水分移行防止剤を噴霧しなければならない、新たな製造ラインが必要となるなど手間のかかるものであった。更には、特許文献1での水分移行防止剤は、フィリング材への添加を目的としておらず、また、フィリング材自体の食感の改良効果は全く望めないものであった。
【0004】
一方で、フィリング材の食感改良や耐熱性付与を目的として各種澱粉や多糖類を添加する試みも行われてきた。例えば、特許文献2にはLMペクチンやジェランガム、澱粉、食物繊維等の一種類以上を含有することを特徴とする耐熱性フィリング材が記載されており、一方で、本発明に係るアラビアガムは、水溶性食物繊維としての機能が知られている。しかし、特許文献2で開示されている製造方法は、フィリング材に耐熱性を付与することが目的である上、食物繊維としてアラビアガムの明記もされていない。更には、特許文献2に示すように、グルコマンナンを含有せずにフィリング材を調製した場合は、フィリング材の離水を十分に防止することはできなかった。また、特許文献3には、フラワーペーストの原料組成物中に澱粉の他にオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムを0.1〜3%と油脂の含有量を5〜30%としたことを特徴としてなる耐熱性フラワーペーストが、特許文献4には、加工穀類澱粉としてヒドロキシプロピルコーンスターチを含有することを特徴とするペースト状食品が開示されている。しかし、澱粉としてオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムやヒドロキシプロピルコーンスターチを使用した場合であっても、特定量のグルコマンナンやアラビアガムと併用しなかった場合は、ある程度口溶けの良さは改善するものの、フィリング材の離水を抑制することができない、また、フィリング材の離水を抑制しようと澱粉の添加量を増やすと、フィリング材に糊状感が付与されてしまい、食感がもたつく、ねとつくといった問題やフィリング材がゲル様な状態となって口溶け、滑らかさを損なうなどの問題を抱えていた。
【0005】
また、特許文献5には、小粒子澱粉を原料とする、特定範囲の架橋エーテル化または、架橋エステル化加工澱粉を含有することを特徴とするペースト状食品が記載されている。しかし、フラワーペーストやペースト状食品にエーテル化またはエステル化澱粉を使用した場合であっても架橋澱粉を使用した場合は、耐熱性が高い反面、澱粉粒の膨潤や糊化が抑制されるため、非架橋澱粉と比較して、ある一定の粘度を付与するには多くの添加量を必要とする、またその結果ややざらつきを生じるといった問題があり、十分満足のいくものではなかった。
【0006】
更には、特許文献6には、耐熱性フィリング材が記載されており、フィリング材に任意添加できる澱粉としてエーテル化、エステル化等の加工を施した加工澱粉が、増粘剤としてアラビアガム、グルコマンナン等が記載されている。しかし、特許文献6に記載のフィリング材は、耐熱性を付与するために使用する澱粉は生澱粉であることが特徴であり、エステル化、エーテル化処理の加工澱粉は使用澱粉から除く趣旨であることが記載されている。つまり、特許文献6には化工澱粉、グルコマンナン及びアラビアガムを使用してよい旨が記載されているが、あくまで任意添加物として列挙されているのみであって、特定量の上記組成物を組み合わせることにより、フィリング材の離水や油分の分離を顕著に抑制すると共に、フィリング材にボディ感や良好な口溶け、滑らかな食感を付与することのできるフィリング用品質改良剤となる旨については一切記載も示唆もされていない。
【0007】
また、特許文献7には、特定の化工澱粉とLMペクチン、及び寒天を含有することを特徴とする乳製品用の食品添加組成物が記載されている。そして、寒天と併用可能な多糖類としてグルコマンナンが記載されており、また、食品添加組成物の効果を妨げない範囲においてガティガム等を添加することができる旨が記載されている。しかし、特許文献7において、グルコマンナン及びガティガムは任意添加可能な物質として記載があるのみであり、実施例においてもグルコマンナン、エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉、そしてガティガムを組み合わせることについては、一切記載されていない。更には、グルコマンナン、エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉、ガティガム及び/又はアラビアガムを組み合わせて食品添加組成物として使用した場合であっても、ガティガム及び/又はアラビアガムの添加量が少ないとフィリング材の油分の分離を抑制できない、一方で添加量が多くなるとフィリング材が重たい食感となってしまうなどの問題を抱えていた。
【0008】
このように、従来よりフィリング材の離水防止、耐熱性付与、食感改良を目的としてグルコマンナン、ガティガム、アラビアガムをはじめとした各種多糖類、澱粉をそれぞれ使用することは行われてきたが、離水や油分の分離防止を目的とすると、フィリング材の粘度が上昇して食感がねとつく、糊状感となる、またはゲル様な状態となってしまうといった問題を抱えていた。また、一方で食感を重視すると離水や油分の分離防止が不十分となってしまう、滑らかな食感となった場合でもボディ感を付与することができないなどといった問題があり、離水や油分の分離が防止できると共に、フィリング材にボディ感や良好な口溶け、滑らかな食感を付与することのできるフィリング用品質改良剤が望まれていた。
【0009】
【特許文献1】特開2004−222562号公報
【特許文献2】特開2001−231468号公報
【特許文献3】特許第3726237号公報
【特許文献4】特開2004−173541号公報
【特許文献5】特開2006−42739号公報
【特許文献6】特開2005−102617号公報
【特許文献7】特開2004−215563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みて開発されたものであり、フラワーペーストやカスタードクリーム、惣菜フィリングといったフィリング材の離水、油分の分離を防止すると共に、フィリング材にボディ感や良好な口溶け、滑らかな食感を付与することのできるフィリング材用品質改良剤を提供することを目的とする。更には、製造上簡便に利用できる、フィリング材の品質改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、フィリング材に対し、(a)グルコマンナン:0.05〜1重量%、(b)エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉:0.1〜10重量%、(c)ガティガム及び/又はアラビアガム:0.05〜5重量%を含有することにより、フィリング材の離水および油分の分離を顕著に防止し、且つ良好な口溶けを付与することのできるフィリング材用品質改良剤となることを見出した。更には、特にエステル化澱粉として、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、また、エーテル化澱粉としてヒドロキシプロピル化澱粉を使用することにより、フィリング材に、ボディ感を付与する一方で、良好な口溶けと、滑らかな食感を付与することのできるフィリング材用品質改良剤となることを見出した。
【0012】
本発明は以下の態様を有するフィリング材用品質改良剤及び、該品質改良剤を含有するフィリング材、フィリング材の品質改良方法に関する;
項1.フィリング材に対し、
(a)グルコマンナン:0.05〜1重量%
(b)エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉:0.1〜10重量%
(c)ガティガム及び/又はアラビアガム:0.05〜5重量%
を含有することを特徴とするフィリング材用品質改良剤。
項2.エステル化澱粉がオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムであり、エーテル化澱粉がヒドロキシプロピル化澱粉であることを特徴とする項1記載のフィリング材用品質改良剤。
項3.項1又は2に記載のフィリング材用品質改良剤を含有することにより離水が防止されたフィリング材。
項4.項1又は2に記載のフィリング材用品質改良剤を添加することを特徴とするフィリング材の品質改良方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、保水性、乳化性を高め、離水および油分の分離を顕著に抑制すると共に、フラワーペーストやカスタードクリーム、惣菜フィリングといったフィリング材に、ボディ感や良好な口溶け、滑らかな食感を付与することのできるフィリング材用品質改良剤を提供できる。更には、該フィリング材用品質改良剤を使用することにより、保存安定性と食感の両面が改良されたフィリング材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のフィリング材品質改良剤は、フィリング材に対し、(a)グルコマンナン:0.05〜1重量%、(b)エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉:0.1〜10重量%、及び(c)ガティガム及び/又はアラビアガム:0.05〜5重量%を含有することを特徴とする。ここで、本発明で使用するグルコマンナンは、単に「マンナン」と略することもあるが、D−グルコースとD−マンノースから構成される多糖類の総称であり、グルコースとマンノースがβ−1,4結合した直鎖多糖のことをいう。自然界では、コンニャク芋や、広葉樹、イリス根茎、アロエ葉中に存在しており、本発明では、コンニャク芋から得られるグルコマンナンを使用するのが好ましい。また、本発明のフィリング材用品質改良剤は、フィリング材に対し、グルコマンナンを0.05〜1重量%含有することを特徴とするが、好ましくは0.1〜0.5重量%、更に好ましくは0.2〜0.4重量%含有することが好ましい。ここでグルコマンナンの添加量が0.05重量%より少なくなると、フィリング材の離水を十分に防止することができず、一方、添加量が1重量%より多くなると、グルコマンナンが有する粘度がフィリング材に影響を与えてしまい食感がねとついてしまうといった問題がある。
【0015】
本発明で使用するエステル化澱粉は、澱粉に対してエステル結合で官能基を付加した澱粉をいい、エーテル化澱粉とは、澱粉に対してエーテル結合で官能基を付加した澱粉をいう。ここで、原料となる澱粉としては、通常市販されている澱粉であれば特に限定されず、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉などの地下澱粉、ワキシコーンスターチ、コーンスターチ、小麦、米澱粉などの地上澱粉が挙げられる。そして、エステル化澱粉の例としては、アセチル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、コハク酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、カルボキシメチル澱粉、酢酸澱粉、硝酸澱粉及びキサントゲン酸澱粉等が挙げられ、特に、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムを使用することが好ましい。ここで、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムは、グルコース残基が親水性を示し、オクテニルコハク酸基が疎水性を示すため乳化機能を有し、フィリング材に口溶けの良い食感を付与することができる。
【0016】
一方、エーテル化澱粉の例としては、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、及びカルボキシエチル澱粉が挙げられる、特にヒドロキシプロピル化澱粉を使用することが好ましい。また、本発明に係るフィリング材用品質改良剤は、フィリング材に対し、エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉を0.1〜10重量%含有することを特徴とするが、好ましくは0.5〜8重量%、更に好ましくは1〜5重量%含有することが好ましい。ここで、エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉の添加量が0.1重量%より少なくなると、離水を抑制することができず、一方添加量が10重量%より多くなるとでん粉の粘度でねとつきやねばりが目立ち始めてしまい、食感に大きな影響を与えてしまう。
【0017】
また、特にエステル化澱粉とエーテル化澱粉は併用することが好ましい。なお、併用する場合は、エステル化澱粉とエーテル化澱粉の配合比が8:2〜2:8、更に好ましくは7:3〜5:5となるように併用することが好ましい。この異なった二種類の化工澱粉を併用することにより、低粘度においても滑らかな食感をフィリング材に付与することが可能となる。
【0018】
そして、本発明で用いるガティガムは、シクンシ科ガティノキ(Anogeissus Latifolia WALL.)の幹の分泌液を乾燥して得られる、多糖類を主成分とするものであり、増粘安定剤(食品添加物)として公知のガム質で、通常、常温〜加温条件下で、30重量%程度まで水に溶解することができる。ガティガムは、商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のガティフォーリアSDを挙げることができる。そして、本発明におけるフィリング材用品質改良剤は、ガティガムをフィリング材に対し、0.05〜5重量%含有することを特徴とするが、好ましくは0.2〜1重量%、更に好ましくは0.3〜0.5重量%含有することが好ましい。ここで、ガティガムの添加量が0.05重量%より少なくなると、滑らかさ、口溶け改良等の食感改良効果が得られなかったり、フィリング材の油分の分離を抑制することができなくなる。一方でガティガムの添加量が5重量%より多くなると、フィリング材の食感が重い食感となってしまう。
【0019】
一方、本発明におけるアラビアガムは、マメ科アカシア属植物の樹液に含まれる水溶性のヘテロ多糖である。アラビアガムの分子構造は明らかにされてはいないが、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、及びグルクロン酸を構成糖とすることが知られており、少量のタンパク質が含まれる。また、平均分子量は200,000〜580,000であると報告されている。食品工業の分野において使用されるアラビアガムとしては、例えばアカシア・セネガル(Acacia senegal)やアカシア・セイアル(Acacia seyal)を起源とするものを挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。商業的に入手可能な製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のガムアラビックSDを挙げることができる。そして、本発明に係るフィリング材用品質改良剤のアラビアガムの添加量であるが、フィリング材に対し、0.05〜5重量%、好ましくは0.2〜1重量%、更に好ましくは0.3〜0.5重量%含有することが好ましい。
【0020】
そしてフィリング材用品質改良剤の対象となるフィリング材とは、パンや菓子などの食品に塗布、挟む、充填され摂取される食品を広く含み、具体的には、フラワーペースト、カスタードクリーム、惣菜フィリング、ジャム、スプレッド、ホワイトソース、チョコレートペースト、ピーナッツペースト、餡ペーストといった食品を挙げることが出来る。
【0021】
ここで、上記フィリング材へのフィリング材用品質改良剤の添加方法であるが、フィリング材用品質改良剤の構成成分である(a)グルコマンナン、(b)エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉、及び(c)ガティガム及び/又はアラビアガムを、(1)予め粉体混合したものをフィリング材へ添加する方法、(2)原料として添加する油脂類、水あめ等糖液に予め練りこんでおく方法、(3)あらかじめ熱水にフィリング材用品質改良剤を溶解し、その溶液を他の原料に添加する方法などが挙げられるが、特に(1)に示す方法が好ましい。
【0022】
また、本発明は前述フィリング材用品質改良剤を含むことを特徴とするフィリング材に関するものであり、前述のフィリング材用品質改良剤を含む以外は特に使用原料、製法等に限定はない。例えば、フィリング材がフラワーペーストの場合には、澱粉や小麦粉、糖質、蛋白性原料他を水に加えて攪拌、混合し、これに油脂類を加えて乳化させ、加熱攪拌し、小麦粉や澱粉を糊化、膨潤させることにより調製することができる。同様にして、カスタードクリーム、惣菜フィリング、ジャム、スプレッド、ホワイトソース、チョコレートペースト、ピーナッツペースト、餡ペーストといったフィリング材も従来の使用原料や製法により調製することができる。
【0023】
このように、フィリング材に本発明のフィリング材用品質改良剤を含有させることにより、フィリング材の保水性を高め、離水、油分の分離を顕著に抑制すると共に、フィリング材にボディ感や良好な口溶け、滑らかな食感を付与することができるようになった。なお、本発明におけるフィリング材の品質改良方法は、上記フィリング材用品質改良剤を常用されるフィリング材に添加するのみであることを特徴とし、新たな製造ラインを必要とせず、簡便に利用することが可能である。
【0024】
なお、本発明における、フィリング材用品質改良剤には、本発明の効果を妨げない範囲で各種増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、糖質、調味料、タンパク質、香料、色素等を適宜添加することができる。例えば増粘剤、ゲル化剤としては、キサンタンガム、ガラクトマンナン(グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等)、カラギナン、カシアガム、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチン、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、マクロホモプシスガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カードラン、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、水溶性ヘミセルロースといったものが挙げられる。
【0025】
乳化剤としては、例えば、クエン酸あるいは乳酸等の有機酸モノグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、レシチン等などを挙げることができる。
【0026】
糖質としては、砂糖の他には、例えば乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水飴、粉末水飴、還元麦芽水飴、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D−キシロース等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類をあげることができる。また、サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料等も添加してよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「重量部」、「%」は「重量%」を意味するものとする。文中*印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0028】
実験例1:カレーフィリング材
まず、下記表1、表2の処方原料によってカレーフィリング材を調製した。詳細には、水にすべての原料を加えて攪拌しながら90℃10分間加熱撹拌溶解して、水にて全量補正し室温まで冷却してカレーフィリング材を得る。パンに載せて室温下2日間密封して保存し、各カレーフィリング材について離水と食感を評価した。評価結果は表3に示す。なお、評価については離水・油分の分離抑制効果、口溶け、ボディ感付与の効果が高いものを10として1〜10の10段階で評価した。なお、ボディ感付与に関しては、適度なボディ感が付与されたものを10として、ボディ感が全く付与できない、若しくはボディ感が強すぎて食感が重たくなってしまうものを1として評価した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
以上の結果より、(a)グルコマンナン、(b)エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉、及び(c)ガティガム及び/又はアラビアガムの全て構成要素のいずれか一つでも欠けたフィリング材用品質改良剤を使用した場合は、フィリング材の離水は防止することができても油分の分離抑制や食感改良が望めない、もしくは口溶けが良好な場合であってもボディ感を付与することができない、離水や油分分離の防止効果が不十分となってしまうなど、離水・油分の分離防止と食感改良を両立することのできるフィリング材用食感改良剤とはならなかった。また、(a)グルコマンナン、(b)エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉、及び(c)ガティガム及び/又はアラビアガムを全て含有した場合であっても、例えば、グルコマンナンの添加量やガティガム及び/又はアラビアガムの添加量が少ないと離水や油分の分離を防止することができない、澱粉の添加量が多いとざらつきやねとつきを食感に付与してしまうといった現象が見られた。そして、特定量の(a)グルコマンナン、(b)エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉、(c)ガティガム及び/又はアラビアガムを組み合わせたフィリング材用品質改良剤を含有させることにより、はじめてフィリング材の離水や油分の分離を顕著に抑制できると共に、フィリング材にボディ感と良好な口溶けを有する食感を付与することができるようになった。また、同じエステル化澱粉であっても、リン酸エステル化澱粉を用いた場合よりも、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムを使用した方が、良好な口溶けをフィリング材に付与することができ、更には、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムとヒドロキシプロピル澱粉は、併用して使用することにより、単独で使用した場合よりも更に良好な食感改良効果と離水・油分分離抑制効果を発揮した。また、アラビアガムよりもガティガムを使用することで、より顕著な離水・油分分離抑制効果と食感改良効果が見られた。
【0033】
実験例2 フラワーペーストの調製
表4に示す処方に従ってフラワーペースト(実施例9)を調製した。詳細には、水にすべての原料を加えて攪拌しながら90℃10分間加熱し、水にて全量補正後室温まで冷却してフラワーペーストを得る。
【0034】
【表4】

【0035】
調製したフラワーペーストを市販の食パンに挟んで室温(25℃)で3日間の条件下で保存したが、フラワーペーストから食パンに水分、油分が移行するのを抑制し、また食した場合も、フラワーペーストがねっとりしたりザラついたりすることなく、ボディ感があると共に滑らかで口溶けが良好なクリームの食感を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
フラワーペーストやカスタードクリーム、惣菜フィリングといったフィリング材の離水、油分の分離を防止すると共に、ボディ感や良好な口溶け、滑らかな食感を付与することのできるフィリング材用品質改良剤を提供することができる。更には、製造上簡便に利用できる、フィリング材の品質改良方法を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィリング材に対し、
(a)グルコマンナン:0.05〜1重量%
(b)エステル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉:0.1〜10重量%
(c)ガティガム及び/又はアラビアガム:0.05〜5重量%
を含有することを特徴とするフィリング材用品質改良剤。
【請求項2】
エステル化澱粉がオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムであり、エーテル化澱粉がヒドロキシプロピル化澱粉であることを特徴とする請求項1記載のフィリング材用品質改良剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフィリング材用品質改良剤を含有することにより離水が防止されたフィリング材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のフィリング材用品質改良剤を添加することを特徴とするフィリング材の品質改良方法。


【公開番号】特開2007−274927(P2007−274927A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103243(P2006−103243)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】