説明

フィルタエレメント

【課題】 容易に分解でき、筒状濾材のみを廃棄できるようにしたフィルタエレメントを提供することをにある。
【解決手段】 ひだ折りされた濾紙からなる筒状濾材4の上下両端部にアンカーナット4Bを埋設した接着材充填部4を形成するとゝもに、前記筒状濾材の上下両端側に配設した上下両蓋5,6を筒体2,3を介し連結ボルト7のナット8A締めで一体に連結固定し、前記上下両蓋の外側から挿入し前記アンカーナットに螺合したボルト11締めにより、前記筒状濾材を上下両蓋に固定する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関の潤滑油を濾過するためのフィルタエレメントに関するもの
である。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の潤滑油を濾過するために使用される従来のフィルタエレメントは、ひだ折り
された濾紙を丸めて形成した筒状濾材と、その内側に設けた多数の流通孔を形成した強度
構造部材としての金属製の内筒、すなわち、筒状濾材が外側から内側へ流動する潤滑油の
圧力によって変形するのを防止するために構成された金属製の内筒と、該内筒の両端開口
部に設けた金属製の上蓋および下蓋とから主に構成されており、前記上蓋および下蓋は接
着材によって前記内筒および筒状濾材とにそれぞれ固定され、一体化構造となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のように、上蓋,下蓋,内筒および筒状濾材が接着材により一体化構造となってい
るフィルタエレメントにあって、筒状濾材の外周面に金属粒子が捕捉され、目詰まりして
交換する必要が生じた場合は、上蓋,下蓋,内筒および筒状濾材を分解するきに手間がか
かるため、通常は産業廃棄物として処理している。したがって、処分にコストがかかるば
かりでなく、リサイクルされないといった問題点がある。
【0004】
本発明は、上蓋,下蓋,内筒および筒状濾材を容易に分解することができ、筒状濾材の
みを廃棄し、その他の構成部材である上蓋,下蓋,内筒等を回収して再利用できるフィル
タエレメントを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための請求項1に記載のフィルタエレメントは、ひだ折りされた
濾紙からなる筒状濾材の上下両開口部にアンカーナットを埋設した接着材充填部を形成す
るとゝもに、前記筒状濾材の上下両開口端側にそれぞれ配設した上下両蓋を、補強機能を
有する多孔の筒体を介して連結ボルトと、該連結ボルトに前記上蓋又は下蓋の外側から螺
合したナットのナット締めで一体に連結固定し、更に、前記上下両蓋の外側からそれぞれ
挿入し前記アンカーナットに螺合したボルトのボルト締めにより、前記筒状濾材をシール
機能を有する前記接着材充填部を介して上下両蓋にそれぞれ固定する構成とした。
【0006】
また請求項2に記載のフィルタエレメントは、前記筒状濾材の上下両端側にリング状の
パッキンを介在させ、該パッキンを介して前記上蓋および下蓋に前記筒状濾材を着脱可能
に装着する構成とした。そして、更に請求項3に記載のフィルタエレメントは、前記連結
ボルトの一端を、前記上蓋または下蓋のいづれか一方に溶接等により固定するか或いは溶
接等により固定したナットに螺合することで固定する構成とした。
【0007】
そして又、請求項4に記載のフィルタエレメントは、前記連結ボルトのナット締め部分
に、ナットの抜けを防止するナット抜け防止具を装着する構成とし、更に、請求項5に記
載のフィルタエレメントは、前記上蓋の上面に、倒立可能とした一対の円弧状釣り部材を
装着する構成としたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載のフィルタエレメントにあっては、ネジを螺脱することで各構成部材を
容易に分解することができ、紙製の筒状濾材のみを廃棄し、その他の構成部材を再利用で
きる。また、請求項2に記載のフィルタエレメントにあっては、前記筒状濾材の上下両端
側にリング状のパッキンを介在させることで、筒状濾材の上蓋および下蓋との間のシール
がより一層確実なものとなる。
【0009】
そして、請求項3に記載のフィルタエレメントにあっては、連結ボルトの一端を前記上
蓋または下蓋のいづれか一方に溶接等により固定するか或いは溶接等により固定したナッ
トに螺合する構成とすることで部品点数が少なくて済むとゝもに、例えナット等の固定部
材が不慮の事故によって外れたとしてもフィルタエレメント内に止まり、内燃機関の液循
環システムの中に置き忘れることもない。
【0010】
そして又、請求項4に記載のフィルタエレメントにあっては、前記連結ボルトの上蓋又
は下蓋の外側から螺合するナットが緩んだとしても、このナットの抜けを確実に防止する
ことができる。また、請求項5に記載のフィルタエレメントにあっては、前記上蓋の上面
に、倒立可能とした一対の円弧状釣り部材を装着する構成とすることで、一対の釣り部材
を立ち上がらせ、これを握って引き出すことで、狭い場所であってもフィルタエレメント
を容易にかつ手を油等で汚すことなく取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図1乃至図4に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図において、
1は本発明に係るフィルタエレメントで、例えば油圧アクチュエーターや油圧ポンプ等を
有する油圧回路の循環系に内蔵されるものである。このフィルタエレメント1は、両端が
開口する金属製の内筒2と、該内筒2の外側に所定の間隔をおいて設置した同じく金属製
の外筒3と、該外筒3の外側に設置した筒状濾材4と、前記内筒2,外筒3および筒状濾
材4の上端開口部をそれぞれ閉塞する上蓋5と、同じく、下端開口部を閉塞する下蓋6お
よび前記上蓋5と下蓋6を連結固定する連結ボルト7等から主に構成されている。
【0012】
前記内筒2および外筒3は強度構成部材として機能するもので、金属板で形成した円筒
形状のものであり、その周壁には多数の流通孔2a,3aがそれぞれ穿設されており、後
述する連結ボルト7のナット8A締めにより、上蓋5,下蓋6を介して加わるその軸線方
向の加重に対して十分な強度を有している。勿論、前記筒状濾材4が外側から内側へ流動
する潤滑油の圧力を受けた場合でも、前記内筒2および外筒3はこの圧力に対して耐え得
るだけの十分な強度を有しており、その結果、後述する前記筒状濾材4の変形は確実に防
止される。
【0013】
4は筒状濾材で、ひだ折りした濾紙を筒状に丸めて平面視星形の形状に形成したもので
あり、この筒状濾材4の上下両端部にあって、平面視が横V字状の濾材内外の空間部には
接着材充填部4Aが設けられている。この接着材充填部4Aの上・下両端面は上蓋5,下
蓋6との接合面にシール機能をもたせるために、それぞれ前記筒状濾材4の上下両端面と
同一平面か或いは突出した状態に形成されている。4Bは前記接着材充填部4Aの中に埋
め込まれたアンカーナットで、前記筒状濾材4の上端側にあっては上端面に,下端側にあ
っては下端面にそれぞれ開口しており、前記筒状濾材4の周方向にほゞ等間隔で複数箇所
(図面に示す実施例では6か所)に設置されている。
【0014】
5は上蓋,6は下蓋で、前記内筒2,外筒3および筒状濾材4の上下端開口部を上下方
向から挟んで閉塞するためのものであり、前記上蓋5の中央には吐出口5Aが、前記下蓋
6の中央には非常時流入口6Aがそれぞれ形成されている。7は前記内筒2と外筒3との
間に立った状態で設置される連結ボルトで、その下端は前記下蓋6の上面に溶接によって
固定した溶接ナット8Bに螺合することで起立しており、前記上蓋5に形成したボルト挿
通孔5Bを貫通した連結ボルト7の上端にナット8Aを螺合し、該ナット8Aを締め付け
ることで上下両蓋5,6が連結され一体化になっている。なお、図中8Cは前記連結ボル
ト7の下端に螺合したダブルナットであり、9は連結ボルト7の上端にあって、ナット8
Aの上部に設置した割りピンである。
【0015】
10は前記筒状濾材4の上下両端側に設置するリング状のシール材で、比較的柔らかな
ゴム系樹脂或いはウレタンエラストマ等から形成されており、該シール材10の周方向に
はほゞ等間隔で複数箇所、貫通孔10Aが形成されている。詳述すると、この貫通孔10
Aは、前記筒状濾材4の上下両端部にあって、接着材充填部4Aの中に埋め込まれた前記
アンカーナット4Bと対応する位置に形成されており、更には、前記上下両蓋5,6に形
成した貫通孔5C,6Bとも対応する位置にそれぞれ形成されている。
【0016】
11は皿ネジで、上下両蓋5,6にそれぞれ形成した前記貫通孔5C,6Bおよびシー
ル材10の貫通孔10Aを通してアンカーナット4Bに螺合させ、これを締めつけること
で、前記筒状濾材4を上下両蓋5,6に固定する構造としたものである。なお、図中、1
2,12は前記上蓋5の上面にあって倒立可能となるように取付部13,13で回動可能
に枢着した半円状の把手であり、左右一対の把手12,12を起立させ、これを一緒に掴
むことでフィルタエレメント1を吊り上げ、吊り下げを行う。
【0017】
上記のような各構成部材からなるフィルタエレメント1にあって、図1乃至図3に示す
状態からこれを図4に示すように分解し、構成部材の一つである前記筒状濾材4を分離す
る場合には、先ず連結ボルト7の上端から割りピン9を抜き取り、ナット8Aを連結ボル
ト7の上端から取り外すことで、上蓋5と下蓋6の一体化が解除される。次に、各皿ネジ
11をアンカーナット4Bからそれぞれ抜き取ることで、前記筒状濾材4は上蓋5と下蓋
6との固定から解除される。つぎに、上蓋5を取り外した後、内部から筒状濾材4を抜き
出して取り出す。なお、組み立てる場合には、上記分解工程の逆の工程を経ることで、新
たな筒状濾材4がセットされたフィルタエレメント1が完成する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るフィルタエレメントの全体斜視図である。
【図2】同フィルタエレメントの平面図である。
【図3】同フィルタエレメントの縦断面図である。
【図4】同フィルタエレメントの分解斜視面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 フィルタエレメント
2 内筒
3 外筒
2a,3a 流通孔
4 筒状濾材
4A 接着材充填部
4B アンカーナット
5 上蓋
5A 吐出口
5B ボルト挿入孔
5C 貫通孔
6 下蓋
6A 非常時流入口
6B 貫通孔
7 連結ボルト
8A ナット
8B 溶接ナット
8C ダブルナット
9 割りピン
10 シール材
11 皿ネジ
12 把手
13 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひだ折りされた濾紙からなる筒状濾材の上下両開口部にアンカーナットを埋設した接着
材充填部を形成するとゝもに、前記筒状濾材の上下両開口端側にそれぞれ配設した上下両
蓋を、補強機能を有する多孔の筒体を介して連結ボルトと、該連結ボルトに前記上蓋又は
下蓋の外側から螺合したナットのナット締めで一体に連結固定し、更に、前記上下両蓋の
外側からそれぞれ挿入し前記アンカーナットに螺合したボルトのボルト締めにより、前記
筒状濾材をシール機能を有する前記接着材充填部を介して上下両蓋にそれぞれ固定する構
成としたことを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項2】
前記筒状濾材の上下両開口端側にリング状のパッキンを介在させ、該パッキンを介して
前記上蓋および下蓋に前記筒状濾材をそれぞれ固定する構成としたことを特徴とする請求
項1記載のフィルタエレメント。
【請求項3】
前記連結ボルトの一端を、前記上蓋または下蓋のいづれか一方に溶接等により固定する
か或いは溶接等により固定したナットに螺合することで固定する構成としたことを特徴と
する請求項1又は2記載のフィルタエレメント。
【請求項4】
前記連結ボルトのナット締め部分に、ナットの抜けを防止するナット抜け防止具を装着
する構成としたことを特徴とする請求項1,2又は3記載のフィルタエレメント。
【請求項5】
前記上蓋の上面に、倒立可能とした一対の円弧状釣り部材を装着する構成としたことを
特徴とする請求項1,2,3又は4記載のフィルタエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−127617(P2009−127617A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307296(P2007−307296)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(307045098)有限会社マスダ製作所 (1)
【Fターム(参考)】