説明

フィルタプレス脱水装置の制御装置、フィルタプレス脱水装置、及びフィルタプレス脱水装置の運転方法

【課題】無端状のろ布の停止位置を調整することで、ろ布を効率的に使用可能なフィルタプレス脱水装置を提供する。
【解決手段】圧接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板20と、帯状に形成された基布の両端部が接合部7cで接合されて無端状に形成されたろ布7と、圧接状態でろ布7を各ろ板20で挟持してろ過室を形成可能に支持するとともに、離隔状態でろ布7を各ろ板20と離隔して走行可能に支持する支持機構10と、支持機構10で支持されたろ布7を走行させる駆動ローラ6と、を備え、支持機構10で支持されたろ布7のうち、接合部7cの位置を認識する位置認識部34と、離隔状態で駆動ローラ6を作動させてろ布7を走行させ、位置認識部34で認識された接合部7cがろ板20間以外の所定位置でろ布7を停止させる走行制御部25と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板と、帯状に形成された基布の両端部が接合部で接合されて無端状に形成されたろ布と、記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、前記支持機構で支持された前記ろ布を走行させる駆動機構と、を備えているフィルタプレス脱水装置の制御装置、前記制御装置を備えたフィルタプレス脱水装置、前記フィルタプレス脱水装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水場や下水処理場で発生する汚泥を脱水してろ液とケーキに分離する汚泥処理工程、或は、カーボン製品やチタン製品等の製造工程で必要となる固液分離工程等、様々な分野で固液分離のためにフィルタプレス脱水装置が用いられている。
【0003】
図6(a)には、特許文献1に開示された従来のフィルタプレス脱水装置80が示されている。フィルタプレス脱水装置80は、前フレーム81と後フレーム82の間に架設された一対のサイドフレーム83に複数のろ板84が圧接状態と離隔状態との間で摺動可能に配設され、前フレーム81に設置された油圧シリンダ86の進出作動に伴って、当該油圧シリンダ86に連結された押圧部材85を介して、各ろ板84が後フレーム82方向に押圧された圧接状態に移行し、当該油圧シリンダ86の引退作動に伴って、各ろ板84が互いに離隔した離隔状態に移行するように構成されている。
【0004】
無端状のろ布88はろ板84に備えられた支持機構87によって、ろ面が対向するように張架され、圧接状態で各ろ板84に挟持されたろ布88によりろ過室が形成される。原液をろ過室に供給した状態で、ろ板84に備えたダイヤフラムを膨張させることにより、原液が圧搾されて固液分離され、圧搾後に各ろ板84が離隔状態に移行すると、脱水ケーキはろ布88から剥離落下する。
【0005】
前フレーム81と後フレーム82の間であって、各ろ板84の上方空間に上フレーム89が架設され、当該上フレーム89に、ろ布88を走行させる駆動ローラ90と、駆動ローラ90によって巻き上げられたろ布88を洗浄する洗浄機構91と、洗浄後のろ布88に所定の張力を付与する緊張機構92と、緊張されたろ布88の幅方向走行位置を規制する蛇行修正機構93とが設置され、洗浄されたろ布88が再度ろ板84に向けて循環走行するように構成されている。
【0006】
このような無端状のろ布は、帯状に形成された基布の両端を接合して構成される。
【0007】
特許文献2には、図6(b)に示すように、ろ布94の両端を工業用ミシンで上糸95aと下糸95bにより縫い合わせて接続して、無端状のろ布を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−15710号公報
【特許文献2】特許第293094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のフィルタプレス脱水装置は、ろ布を走行させた後は、単にタイマ等で予め設定した時間、例えば、ろ布の一周分の洗浄ができる程度の時間が経過すると走行を停止させるような構成であり、特にろ布の接合部を認識して、その停止位置を制御しているものではなく、以下のような問題があった。
【0010】
ろ布の接合部は帯状の基布の両端を縫い合わせた構成であるため、ろ布のその他の面に比べてろ液の透過性が悪い。よって、接合部がろ板間で停止した場合には、接合部では圧搾対象物のろ過効率が低下するという問題があった。
【0011】
また、フィルタプレス脱水装置は、各ろ板の圧接状態では各ろ板の圧接面に数百トンもの圧力がかかる。
【0012】
ろ布の両端を縫い合わして接続している接合部が、ろ板間に位置した状態で、各ろ板を圧接状態とすると、隣接するろ板の圧接面に挟まれるろ布には強い圧力がかかるため、接合部が変形して原液が漏れたり、接合部が破損したりする虞があった。また、接合部の厚みがろ布の厚みより厚い場合には、ろ板間で圧接するとろ板やダイヤフラムが変形したり破損したりする虞があった。
【0013】
また、ろ布の停止位置を制御する構成ではなかったため、無端状のろ布の一周うち使用頻度高い箇所と低い箇所が発生し、使用頻度の高い箇所に目詰まりや、変形、破損が発生しやすいという問題があった。
【0014】
本発明は、無端状のろ布の停止位置を調整することで、ろ布を効率的に使用可能なフィルタプレス脱水装置の制御装置、フィルタプレス脱水装置、及びフィルタプレス脱水装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するため、本発明によるフィルタプレス脱水装置の制御装置の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板と、帯状に形成された基布の両端部が接合部で接合されて無端状に形成されたろ布と、前記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、前記支持機構で支持された前記ろ布を走行させる駆動機構と、を備えているフィルタプレス脱水装置の制御装置であって、前記ろ布のうち、前記接合部の位置を認識する位置認識部と、前記離隔状態で前記駆動機構を作動させて前記ろ布を走行させ、前記位置認識部で認識された前記接合部が前記ろ板間以外の所定位置で前記ろ布を停止させる走行制御部と、を備えている点にある。
【0016】
走行制御部は、各ろ板の離隔状態のときに駆動機構を作動させてろ布を走行させて、脱水ケーキを各ろ板間から離脱させる。その後、ろ布を停止するときには、位置認識部で認識したろ布の接合部の位置が、前記ろ板間以外の所定位置で前記ろ布を停止させるので、各ろ板の圧接状態で前記接合部が各ろ板間に挟まれることが防止できる。
【0017】
これにより、ろ液の透過性の悪い接合部でろ過をするような事態が発生しないので、ろ過効率の低下を防止することができる。
【0018】
前記接合部が、隣接するろ板の圧接面に挟まれることがなくなるので、接合部が変形して原液が漏れたり、接合部が破損したりする虞を回避することができる。さらに、ろ板やダイヤフラムが変形したり破損したりする虞を回避することができる。
【0019】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記走行制御部は、前記ろ布のうち前記圧接状態で前記ろ板に挟持される領域が均等に使用されるように、前記ろ布の停止位置を可変に制御する点にある。
【0020】
ろ布の停止位置を可変に制御して、ろ布のうち圧接状態でろ板に挟持される領域を均等に使用することで、ろ布の使用する部分が偏るような場合に比べて、寿命を延ばすことができる。
【0021】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記位置認識部は、予め前記接合部との相対位置が定められ、前記ろ布に付与されたマーカを検知するセンサで構成されている点にある。
【0022】
ろ布には予め接合部との相対位置が定められたマーカが付与されており、センサで前記マーカを検知することで、前記接合部の位置を認識することができる。
【0023】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第三特徴構成に加えて、前記ろ布の走行経路に配置され、前記ろ布を洗浄する洗浄機構を備え、前記位置認識部は、前記洗浄機構の下流側に設置されている点にある。
【0024】
ろ布には予め接合部との相対位置が定められたマーカが付与されており、センサで前記マーカを検知することで、前記接合部の位置を認識することができる。位置認識部としてのセンサは、ろ布を洗浄する洗浄機構の下流側に設置されており、マーカは洗浄機構により洗浄されるので、センサは確実にマーカを検知することができる。
【0025】
同第五の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、圧接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板と、端状に形成されたろ布と、前記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、前記支持機構で支持された前記ろ布を走行させる駆動機構と、を備えているフィルタプレス脱水装置の制御装置であって、記ろ布のうち、特定位置を認識する位置認識部と、前記離隔状態で前記駆動機構を作動させて前記ろ布を走行させ、前記圧接状態で前記ろ布のうち前記ろ板に挟持される領域が均等に使用されるように、前記位置認識部で認識された前記特定位置を基準に、前記ろ布の停止位置を可変に制御する走行制御部と、を備えている点にある。
【0026】
上述の構成によると、位置認識部でろ布のうち特定位置を認識して、前記各ろ板の離隔状態でろ布を走行させるときに、該特定位置を基準にろ布の停止位置を可変に制御して、ろ布のうち圧接状態でろ板に挟持される領域を均等に使用することで、ろ布の使用する部分が偏るような場合に比べて、寿命を延ばすことができる。
【0027】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記走行制御部は、前記ろ布の走行時に前記ろ布のスリップ量を計測し、前記スリップ量に基づいて、前記接合部が前記ろ板間以外の所定位置で停止するように補正するように構成されている点にある。
【0028】
走行時にろ布が延びたりスリップしたりして、駆動機構による送り量に対してずれるようなことがあっても、走行制御部は、ろ布の走行時にろ布のスリップ量を計測し、前記スリップ量に基づいて、前記接合部が前記ろ板間以外の所定位置で停止するように補正するので、前記接合部が前記ろ板間で停止することを確実に回避することができる。
【0029】
本発明によるフィルタプレス脱水装置の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、圧接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板と、帯状に形成された基布の両端部が接合部で接合されて無端状に形成されたろ布と、記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、前記支持機構で支持された前記ろ布を走行させる駆動機構と、上述した第一から第六の何れかの特徴構成を備えた制御装置を備えている点にある。
【0030】
上述の構成によると、無端状のろ布の停止位置を調整することで、ろ布を効率的に使用することが可能となる。
【0031】
本発明によるフィルタプレス脱水装置の運転方法の第一特徴構成は、同請求項8に記載した通り、圧接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板と、帯状に形成された基布の両端部が接合部で接合されて無端状に形成されたろ布と、記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、前記支持機構で支持された前記ろ布を走行させる駆動機構と、を備えているフィルタプレス脱水装置の運転方法であって、前記離隔状態で前記駆動機構を作動させて前記ろ布を走行させる走行ステップと、前記ろ布のうち、前記接合部の位置を認識する位置認識ステップと、前記位置認識ステップで認識された前記接合部が前記ろ板間以外の所定位置で前記ろ布を停止させる停止ステップと、を備えている点にある。
【0032】
同第二の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、圧接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板と、端状に形成されたろ布と、前記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、前記支持機構で支持された前記ろ布を走行させる駆動機構と、を備えているフィルタプレス脱水装置の運転方法であって、前記離隔状態で前記駆動機構を作動させて前記ろ布を走行させる走行ステップと、前記ろ布のうち、特定位置を認識する位置認識ステップと、前記ろ布のうち前記圧接状態で前記ろ板に挟持される領域が均等に使用されるように、前記位置認識ステップで認識された前記特定位置を基準に、前記ろ布の停止位置を可変に制御する停止ステップと、を備えている点にある。
【発明の効果】
【0033】
以上説明した通り、本発明によれば、無端状のろ布の停止位置を調整することで、ろ布を効率的に使用可能なフィルタプレス脱水装置の制御装置、フィルタプレス脱水装置、及びフィルタプレス脱水装置の運転方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるフィルタプレス脱水装置の概略図
【図2】本発明によるフィルタプレス脱水装置の概略図
【図3】ろ布の接続部の説明図
【図4】本発明によるフィルタプレス脱水装置の制御装置の概略図
【図5】ろ布の交換を説明する概略図
【図6】従来のフィルタプレス脱水装置の説明図であって、(a)は概略図、(b)はろ布の説明図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明によるフィルタプレス脱水装置の制御装置、フィルタプレス脱水装置、及びフィルタプレス脱水装置の運転方法を説明する。
【0036】
図1及び図2に示すように、フィルタプレス脱水装置1は、前フレーム2と、後フレーム3と、前フレーム2と後フレーム3との間に架設された一対のサイドフレーム4を備えている。
【0037】
サイドフレーム4には複数のろ板20が摺動可能に支持され、各ろ板20は、前フレーム2に設置された進退機構5により各ろ板20が、図1に示す離隔状態と、図2に示す圧接状態との二状態の何れかに移動するように構成されている。
【0038】
各ろ板20の正面及び背面側には、上下に一対の係合ピン11が突設され、隣接する一対のろ板20の係合ピン11同士が、連結金具に形成された長孔に係合したリンク機構12で連結されている。そして、左端のろ板20が後フレーム3と連結され、右端のろ板20が進退機構5と連結されている。
【0039】
進退機構5はロッド5aの先端に押圧部材5bを備えた油圧シリンダ5cで構成されている。油圧シリンダ5cによりロッド5aを進出作動させると、押圧部材5bを介して各ろ板20が後フレーム3に向けて押圧された圧接状態に移行し、ロッド5aを引退作動させると、前フレーム2に向けて各ろ板20が移動して、連結金具に形成された長孔で規定される距離だけ離隔した離隔状態に移行する。
【0040】
前フレーム2の上部には無端状に形成されたろ布7を繰り出す駆動ローラ6が配置され、後フレーム3の上部にはろ布7を洗浄する洗浄機構8が配置されている。
【0041】
駆動ローラ6で繰り出されたろ布7は、同じく前フレーム2に設置された緊張機構9によって所定の張力に調整された後に、各ろ板20に備えら得た支持機構10によってろ面が対向するように掛け渡され、前記離隔状態でろ布7を各ろ板20と離隔して走行可能に支持され、各ろ板20から繰り出された後に洗浄機構8に導かれるように配置されている。
【0042】
緊張機構9は、前フレーム2に固定された複数の固定ローラと、固定ローラに対して接近、離間する複数の移動ローラとを備え、移動ローラが固定ローラに対して接近、離間することによって、ろ布7に所定の張力が付与される。所定の張力とは、駆動ローラ6とろ布7がスリップせず安定走行可能な張力をいう。
【0043】
ろ布7が駆動ローラ6により安定して搬送されるためには、駆動ローラ6の前後で十分な張力が作用している必要があるが、上述の構成によれば、ろ布7に対する張力が小さくなる駆動ローラ6の下流側で、緊張機構9によってろ布の張力が適正な値に調整されるので、ろ布7が安定して駆動ローラ6で駆動され、その下流側に設置されたろ板20に向けて搬送されるようになる。
【0044】
支持機構10は、各ろ板20に固定されたブラケットに支持された下部ローラ10a及び上部ローラ10bを備え、両ローラ10a,10bによって隣接するろ板20間でろ布7が上下方向に張設されている。
【0045】
上部ローラ10bの近傍には、ろ板20が離隔状態でろ布7がろ板20及びダイヤフラム22に接触しないように案内するガイドローラ10cが備えられている。
【0046】
各ろ板20には、配列方向に沿って一方の面にダイヤフラム21が取付けられている。進退機構5によってろ板20が圧接状態に移行したときに、当該ダイヤフラム21と隣接するろ板20の背面とで仕切られる空間にろ室が形成される。このとき、ろ室内でろ布7によって仕切られる空間がろ過室となる。
【0047】
各ろ板20の間には口金13が設けられ、圧接状態で口金13によって各ろ板20の厚み方向に貫通形成された貫通孔が連通するように構成されている。そして、圧接状態で後フレーム3に備えた供給口から当該貫通孔に処理対象物が供給され、口金13に形成された分岐路を介して各ろ過室に処理対象物が充填される。
【0048】
各ろ板20の圧接状態で、各ろ板20下方に備えられた加圧水流路から加圧水を供給して、ろ板20に取付けられたダイヤフラム21をろ室側に膨らませることにより、処理対象物が圧搾される。
【0049】
脱水処理の後に進退機構5が引退作動した離隔状態で、脱水ケーキをろ布7から離脱させるべく、駆動ローラ6によって所定距離だけろ布7を走行させる走行処理が実行され、その後、進退機構5が進出作動して、同様の処理が繰り返される。尚、駆動ローラ6は減速機構を介して駆動モータに駆動連結され、駆動ローラ6と減速機構と駆動モータによって駆動機構が構成されている。
【0050】
最終段のろ過ユニット20から繰り出されたろ布7は、後フレーム3に備えた洗浄機構8によって洗浄された後、蛇行修正機構15を経由して駆動ローラ6に掛け渡される。
【0051】
蛇行修正機構15は、前フレーム2の上部に取り付けられた上部フレーム14に設置され、ろ布7の蛇行を検知するセンサ(図示せず)からの信号に基づいて、ろ布7の幅方向走行位置を修正する。
【0052】
上部フレーム14には、ろ布交換機構16が備えられている。ろ布交換機構16の一例は後述する。
【0053】
図3に示すように、ろ布7は、帯状に形成されたポリプロピレン等の樹脂製の基布の両端部7a,7bが接合部7cで接合されて無端状に形成されている。
【0054】
接合部7cは、樹脂製または金属製のいわゆるレーシングで構成され、基布の端部7aと端部7bに夫々設けられた複数のループ7d,7eとピン7fを備え、ループ7dとループ7eを交互にかみ合わせた状態で、ピン7fを挿入することで、端部7aと端部7bとが接合されるようになっている。
【0055】
ろ布7には、マーカ7gが予め接合部7cとの相対位置が定められた位置に付与されている。マーカ7gは、例えば、薄い金属板で構成され、ろ布7の表面に形成されたポケットに収納されている。
【0056】
フィルタプレス脱水装置1には、ろ布7の走行経路であってマーカ7gが検知可能な箇所にセンサが備えられている。センサは、非接触式のセンサ、例えば、静電容量形の近接センサを用いればよく、設置位置は、洗浄機構8の下流側に備えたほうがろ布7が洗浄されて綺麗になっているため確実にマーカ7gを検知できる点で好ましい。
【0057】
なお、マーカ7gに用いられる薄い金属板は、圧搾対象物に含有される金属と異なる金属を用いることで、センサの誤検知を防止することができる。例えば、圧搾対象物に鉄分が含有しているときは、マーカにアルミを用いればよい。
【0058】
図4には、フィルタプレス脱水装置1の制御装置30の概略が示されている。
【0059】
制御装置30は、進退機構5を制御して各ろ板20の圧接状態と離隔状態とを切り替える進退制御部31と、各ろ板20の圧接状態でろ過室への圧搾対象物の供給ポンプを駆動・停止制御する供給制御部32と、圧搾対象物を圧搾するためにダイヤフラム21をろ室側に膨らませる加圧水の供給ポンプを駆動・停止制御する加圧制御部33と、ろ布7のうち特定位置の一例である接合部7cを認識する位置認識部34と、前記離隔状態で駆動ローラ6を作動させてろ布7を走行させる走行制御部35と、ろ布7の走行時にろ布7へ所定の張力が付与されるように緊張機構9の移動ローラの位置を制御する緊張機構制御部36と、洗浄機構8の洗浄水の供給ポンプを駆動・停止制御する洗浄制御部37と、ろ布7の蛇行を検知する蛇行検知センサに基づいて、蛇行修正機構15によってろ布7の蛇行の修正を制御する蛇行修正制御部38等を備え、フィルタプレス脱水装置1の運転を行うように構成されている。なお、各制御部等はシーケンサやマイクロコンピュータで構成されている。
【0060】
位置認識部34と走行制御部35について詳述する。
ろ布7に備えたマーカ7gと接合部7cとの相対位置が予めわかっているため、位置認識部34は、前記近接センサでろ布7に付与されたマーカ7gを検知することで、接合部7cの位置を認識することができる。
【0061】
走行制御部35は、ろ布7の走行中に位置認識部34が接合部7cの位置を認識すると、各ろ板20の圧接状態のときに接合部7cが各ろ板20間以外の位置となるように、駆動ローラ6を停止制御する。
【0062】
走行制御部35は、タイマを備え、位置認識部34で接合部7cの位置が認識されると、タイマのカウントをスタートし、各ろ板20の圧接状態のときに接合部7cが各ろ板20間以外の位置となるような時間経過後に、駆動ローラ6の停止制御をするように構成すればよい。
【0063】
走行制御部は、各ろ板20の離隔状態のときに駆動ローラ6を作動させてろ布7を走行させて、脱水ケーキを各ろ板20間から離脱させ、その後ろ布7を停止するときに、位置認識部34で認識したろ布7の接合部7cの位置が、ろ板20間以外の所定位置でろ布7を停止させるので、各ろ板20の圧接状態で接合部7cが各ろ板20間に挟まれることが防止できる。
【0064】
これにより、接合部7cでろ過をするような事態が発生しないので、ろ過効率の低下を防止することができる。
【0065】
接合部7cが、隣接するろ板20の圧接面に挟まれることがなくなるので、接合部7cが変形して原液が漏れたり、接合部7cが破損したりする虞を回避することができる。さらに、ろ板20やダイヤフラム21が変形したり破損したりする虞を回避することができる。
【0066】
さらに、走行制御部35は、ろ布7のうち前記ろ過室が形成される領域が均等に使用されるように、前記位置認識部34で認識された接合部7cの位置を基準に、ろ布7の停止位置を可変に制御してもよい。
【0067】
ろ布7の停止位置を可変に制御することで、接合部7c以外の領域のろ布7のろ過に使用される部分をずらして、ろ布7のうちろ過室が形成される領域が均等に使用されるので、ろ布の使用する部分が偏るような場合に比べて、ろ布の寿命を延ばすことができる。
【0068】
駆動ローラ6のように駆動モータの動力で駆動せずに、ろ布7の走行につれて回転させられるようなローラ、例えば、緊張機構9の固定ローラや、移動ローラ、その他洗浄機構8に備えられたローラの回転を、ロータリーエンコーダのようなセンサで検知して、駆動ローラ6の回転数と比較することで、ろ布7の走行時に発生したスリップ量が計測できる。
【0069】
走行時にろ布7が延びたりスリップしたりして、駆動ローラ6による送り量に対してずれるようなことがあっても、走行制御部35は、ろ布7の走行時にろ布7のスリップ量を計測し、前記スリップ量に基づいて、接合部7cがろ板20間以外の所定位置で停止するように補正するので、接合部7cが前記ろ板間で停止することを確実に回避することができる。
【0070】
以上のように構成されたフィルタプレス脱水装置1及び制御装置30によって、支持機構10で支持されたろ布7のうち、接合部7cの位置を認識する位置認識ステップと、各ろ板20の離隔状態で駆動ローラ6を作動させてろ布7を走行させる走行ステップと、前記位置認識ステップで認識された接合部7cがろ板20間以外の所定位置でろ布7を停止させる停止ステップと、を備えた運転方法が実行される。
【0071】
また、フィルタプレス脱水装置の運転方法は、支持機構10で支持されたろ布のうち、特定位置を認識する位置認識ステップと、各ろ板20の離隔状態で駆動ローラ6を作動させてろ布7を走行させる走行ステップと、ろ布7のうち前記ろ過室が形成される領域が均等に使用されるように、前記位置認識ステップで認識された前記特定位置を基準に、ろ布7の停止位置を可変に制御する停止ステップと、を備えて構成してもよい。
【0072】
図5に示すように、ろ布交換機構16は、例えば、使用済みのろ布7の巻き取りローラ16aと、新たなろ布17の繰り出しローラ16bを備えている。巻き取りローラ16aは、図示しないモータによって駆動して、ろ布を巻き取れるように構成されている。
【0073】
ろ布7の交換作業は、ろ布7の接合部7cの接合を解消し、両端部のうち進行方向最前の端部7aを巻き取りローラ16aに接続して、進行方向最後端の端部7bを繰り出しローラ16bに載置された新たなろ布17の両端部のうち進行方向最前の端部と接合する。
【0074】
その状態で、巻き取りローラ16a及び駆動ローラ6を駆動すると、使用済みのろ布7の巻き取りに伴って、新たなろ布17が駆動ローラ6、緊張機構9、ろ布の支持機構10、洗浄機構を経てろ布交換機構16まで走行させられる。新たなろ布17の進行方向最前の端部がろ布交換機構16の近傍へ到達すると、使用済みのろ布7と新たなろ布17の接合を解消して、新たなろ布17の進行方向前の端部と最後の端部部を接合して無端状のろ布17となる。
【0075】
本発明によれば、使用済みのろ布7の接合部7cが変形したり破損したりする虞がないため、新たなろ布を容易に接続することができ、交換作業が容易となる。
【0076】
上述の実施例では、マーカが薄いアルミ板である例を説明したが、センサが、圧搾対象物の含有物と区別して検知できるものであればよい。
【0077】
また、近接センサは、静電容量形に限らず誘導形や磁気式の近接センサや、フォトセンサ等の公知のセンサを用いることができる。
【0078】
上述の実施形態では、ろ布7のうち、特定位置がろ布の接合部7cである構成について説明したが、特定位置はろ布の接合部7cである場合に限らず、また、ろ布7に接合部7cが備えられていない場合は、ろ布のうちの任意の特定位置を予め設定し、走行制御部は、その特定位置を基準に、ろ布の停止位置を可変に制御するように構成することで、ろ布のうちろ過室が形成される領域が均等に使用されるので、ろ布の同じ箇所を繰り返しろ過に使うような場合に比べて、寿命を延ばすことができる。
【0079】
なお、位置認識部34は、予め接合部7cの位置が記憶された記憶部と、駆動ローラ6の直径と回転数に基づいてろ布7の走行距離を計測する計測部40を備え、前記記憶部に記憶された接合部7cの位置から計測部で計測されたろ布7の走行距離に基づいて接合部7cの位置を認識するように構成してもよい。
【0080】
位置認識部34は、前記記憶部に記憶された接合部7cの位置から前記計測部で計測されたろ布7の走行距離に基づいて接合部7cの位置を認識するので、接合部7cそのものや接合部7cと相対位置が定められて設けられたマーカを検知しなくてもよい。ろ布7に設けたマーカ7gと、マーカ7gを検知する近接センサを設ける必要がないので、その分をコストダウンすることができる。
【0081】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、当該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0082】
1:フィルタプレス脱水装置
2:前フレーム
3:後フレーム
4:サイドフレーム
5:進退機構
6:駆動ローラ
7:ろ布
7a,7b:端部
7c:接合部
7g:マーカ
8:洗浄機構
9:緊張機構
10:支持機構
20:ろ板
30:制御装置
34:位置認識部
35:走行制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板と、
帯状に形成された基布の両端部が接合部で接合されて無端状に形成されたろ布と、
記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、
前記支持機構で支持された前記ろ布を走行させる駆動機構と、
を備えているフィルタプレス脱水装置の制御装置であって、
記ろ布のうち、前記接合部の位置を認識する位置認識部と、
前記離隔状態で前記駆動機構を作動させて前記ろ布を走行させ、前記位置認識部で認識された前記接合部が前記ろ板間以外の所定位置で前記ろ布を停止させる走行制御部と、
を備えているフィルタプレス脱水装置の制御装置。
【請求項2】
前記走行制御部は、前記ろ布のうち前記圧接状態で前記ろ板に挟持される領域が均等に使用されるように、前記ろ布の停止位置を可変に制御する請求項1記載のフィルタプレス脱水装置の制御装置。
【請求項3】
前記位置認識部は、予め前記接合部との相対位置が定められ、前記ろ布に付与されたマーカを検知するセンサで構成されている請求項1または2記載のフィルタプレス脱水装置の制御装置。
【請求項4】
前記ろ布の走行経路に配置され、前記ろ布を洗浄する洗浄機構を備え、
前記位置認識部は、前記洗浄機構の下流側に設置されている請求項3記載のフィルタプレス脱水装置の制御装置。
【請求項5】
圧接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板と、
無端状に形成されたろ布と、
前記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、
前記支持機構で支持された前記ろ布を走行させる駆動機構と、
を備えているフィルタプレス脱水装置の制御装置であって、
前記ろ布のうち、特定位置を認識する位置認識部と、
前記離隔状態で前記駆動機構を作動させて前記ろ布を走行させ、前記圧接状態で前記ろ布のうち前記ろ板に挟持される領域が均等に使用されるように、前記位置認識部で認識された前記特定位置を基準に、前記ろ布の停止位置を可変に制御する走行制御部と、
を備えているフィルタプレス脱水装置の制御装置。
【請求項6】
前記走行制御部は、前記ろ布の走行時に前記ろ布のスリップ量を計測し、前記スリップ量に基づいて、前記ろ布の停止位置を可変に制御する制御値を補正するように構成されている請求項1から5の何れかに記載のフィルタプレス脱水装置の制御装置。
【請求項7】
圧接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板と、
帯状に形成された基布の両端部が接合部で接合されて無端状に形成されたろ布と、
前記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、
前記支持機構で支持された前記ろ布を走行させる駆動機構と、
請求項1から6の何れかに記載の制御装置を備えているフィルタプレス脱水装置。
【請求項8】
圧接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板と、
帯状に形成された基布の両端部が接合部で接合されて無端状に形成されたろ布と、
前記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、
前記支持機構で支持された前記ろ布を走行させる駆動機構と、
を備えているフィルタプレス脱水装置の運転方法であって、
前記離隔状態で前記駆動機構を作動させて前記ろ布を走行させる走行ステップと、
前記ろ布のうち、前記接合部の位置を認識する位置認識ステップと、
前記位置認識ステップで認識された前記接合部が前記ろ板間以外の所定位置で前記ろ布を停止させる停止ステップと、
を備えているフィルタプレス脱水装置の運転方法。
【請求項9】
圧接状態と離隔状態との間で移動可能に支持される複数のろ板と、
端状に形成されたろ布と、
前記離隔状態で前記ろ布を各ろ板と離隔して走行可能に支持する支持機構と、
前記支持機構で支持された前記ろ布を走行させる駆動機構と、
を備えているフィルタプレス脱水装置の運転方法であって、
前記離隔状態で前記駆動機構を作動させて前記ろ布を走行させる走行ステップと、
前記ろ布のうち、特定位置を認識する位置認識ステップと、
前記ろ布のうち前記圧接状態で前記ろ板に挟持される領域が均等に使用されるように、前記位置認識ステップで認識された前記特定位置を基準に、前記ろ布の停止位置を可変に制御する停止ステップと、
を備えているフィルタプレス脱水装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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