説明

フィルタユニット、これを用いたフィルタユニットパネル、およびフィルタユニットの製造方法

【課題】射出成形した樹脂を枠体として用いながらも圧力損失の損失が抑制されたフィルタユニットを提供する。
【解決手段】プリーツ加工されたフィルタ濾材1と、濾材1を支持し、濾材1を通過する気流の流れに沿って見たときの内周および外周が矩形である枠体2と、を備え、濾材1の周縁部が枠体2の内部に埋め込まれて固定され、濾材1の隣接する山部の間隔Dを濾材の山部の高さPで除した値D/Pが0.25以下であり、間隔Dの最小値dが1mm以上であり、濾材1の山部が配列する方向に沿った枠体2の長さLaが濾材1の山部が伸長する方向に沿った枠体2の長さの最大値Lmよりも長く、枠体2が、5〜30重量%のガラス繊維が添加された樹脂部材である、フィルタユニットとする。枠体2は射出成形により形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム、空調設備、ガスタービン、蒸気タービン等の吸気口において使用されるフィルタユニットおよびフィルタユニットパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム、空調設備、ガスタービン、蒸気タービン等の吸気口にはエアフィルタが設けられている。これらの用途におけるエアフィルタとしては、フィルタ濾材とそれを支持する枠体とを有する複数のフィルタユニットを、その外周面が互いに接するように連結させたフィルタユニットパネルが適している。特開2005−177641号公報には、フィルタユニットの一例が開示されている。
【0003】
特開2005−177641号公報のフィルタユニットは、フィルタ濾材と枠体(支持枠)とを備え、枠体は樹脂の射出成形により形成される。射出成形を用いると、枠体の形成とフィルタ濾材の固定とを同時に行うことができる。特開2005−177641号公報の段落0026には、枠体が、顔料、抗菌剤、炭素繊維等の添加剤を含んでいてもよいことが記載されている。
【特許文献1】特開2005−177641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂の射出成形により枠体を形成すると、樹脂の収縮により枠体が変形し、これに伴ってフィルタ濾材も変形する。フィルタ濾材が大きく変形してプリーツ加工により形成した山部同士が近接し過ぎると、フィルタ濾材の圧力損失が増加する。濾過面積の増加のためには山部の高さに対する山部の間隔の比が小さいほうがよい。しかし、この比が小さくなるように深く折り込まれたフィルタ濾材では、枠体の変形による圧力損失の増大が顕著になりやすい。
【0005】
本発明は、射出成形した樹脂を枠体として用いながらも圧力損失の増大が抑制されたフィルタユニット、およびフィルタユニットパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プリーツ加工されたフィルタ濾材と、前記フィルタ濾材を支持し、前記フィルタ濾材を通過する気流の流れに沿って見たときの内周および外周が矩形である枠体と、を備え、前記フィルタ濾材の周縁部が前記枠体の内周面に埋め込まれて固定され、前記プリーツ加工されたフィルタ濾材の隣接する山部の間隔Dを前記フィルタ濾材の山部の高さPで除した値D/Pが0.25以下であり、前記間隔Dの最小値dが1mm以上であり、前記枠体が、5〜30重量%のガラス繊維が添加された樹脂部材であり、前記フィルタ濾材の山部が配列する方向に沿った前記枠体の長さLaが、前記フィルタ濾材の山部が伸長する方向に沿った前記枠体の長さの最大値Lmよりも長い、フィルタユニット、を提供する。
【0007】
本発明は、別の側面から、プリーツ加工されたフィルタ濾材と、前記フィルタ濾材を支持し、前記フィルタ濾材を通過する気流の流れに沿って見たときの内周および外周が矩形である枠体と、を備えたフィルタユニットの製造方法であって、プリーツ加工されたフィルタ濾材の隣接する山部の間隔Dを前記フィルタ濾材の山部の高さPで除した数値D/Pが0.25以下となり、かつ前記フィルタ濾材の周縁部が樹脂射出空間に露出するように、前記フィルタ濾材を射出成形機に設置し、5〜30重量%のガラス繊維が添加された樹脂を前記樹脂射出空間に射出することにより、前記枠体として、前記濾材の山部が配列する方向に沿った前記枠体の長さLaが前記濾材の山部が伸長する方向に沿った前記枠体の長さの最大値Lmよりも長くなるように前記濾材の周縁部を埋め込んで固定する、前記樹脂からなる樹脂部材を形成する、フィルタユニットの製造方法、を提供する。
【0008】
本発明は、さらに、本発明のフィルタユニットを枠体の外周面が互いに接するように複数個配置して一体化した、フィルタユニットパネル、を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、5〜30重量%のガラス繊維が添加された樹脂を射出成形することとしたため、枠体が変形しにくい。さらに、本発明では、枠体における上記の長さLaを上記の長さLmよりも長く制御することとしたため、後述する実施例に示すように、圧力損失の増大をもたらすようなフィルタ濾材の変形が発生しにくい。これにより、隣接する山部の間隔Dを山部の高さPで除した値D/Pが0.25以下となる程度に急峻な山部を形成したフィルタ濾材においても、圧力損失の増大が抑制される。本発明によれば、射出成形によるフィルタユニット製造工程の簡略化の利点を活かしながら、フィルタユニットの圧力損失の増大を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を例示する。
【0011】
図1に示すように、フィルタユニット10はフィルタ濾材1と枠体2とを備え、フィルタ濾材1の周縁部は枠体2により支持されている。フィルタ濾材1は、濾過面積を増加させて圧力損失を低下させるためにプリーツ加工(ひだ折り加工)されている。フィルタ濾材1は、平面視(フィルタ濾材を通過する気流に沿って見た状態を指す)で矩形であり、枠体2は、平面視でその内周および外周がそれぞれ矩形を描く額縁形状を有し、その内周でフィルタ濾材1を支持している。
【0012】
枠体2は、フィルタ濾材1の周縁部を固定するように射出成形された樹脂部材である。射出成形は、枠体2の形成とフィルタ濾材1の固定とを同時に行い、製造工程を簡略化する。射出成形により形成された枠体2は、フィルタ濾材1の周縁部をその内部(内周面)に埋め込んでおり、濾材の周縁部には樹脂が浸透している。
【0013】
枠体2は、5〜30重量%のガラス繊維が添加された樹脂部材である。ガラス繊維は、射出成形された樹脂の収縮を防止する。しかし、樹脂部材の30重量%を超えてガラス繊維を添加すると、成型品が脆くなり、成型機の部品摩耗が激しくなる。また、樹脂部材の5重量%未満の添加では、収縮を十分に防止できない。ガラス繊維の好ましい添加量は、樹脂部材の10〜30重量%である。繊維状の添加剤としては炭素繊維も挙げられる。しかし、ガラス繊維は、着色の抑制および費用対効果(枠体の変形防止)の観点から、炭素繊維よりも格段に好ましい。
【0014】
フィルタユニット10は複数個を一体化したパネルとして用いてもよい。図2に示すフィルタユニットパネル20は、枠体2の外周面が互いに接するように配置された状態で一体化された複数個のフィルタユニット10と、一体化されたフィルタユニットの外周を囲む外枠3とから構成されている。外枠3は、フィルタユニットを保護し、パネル全体の強度を増し、フィルタユニットパネルの設置を容易にする。フィルタユニット10の一体化は、例えば隣接する枠体2を溶着して行うとよい。外枠3とフィルタユニット10との一体化も溶着により行うことができる。溶着の種類は特に制限されず、超音波溶着、熱溶着、レーザー溶着等 であってよい。
【0015】
図3に示すように、プリーツ加工されたフィルタ濾材1には、山折りされた山部11と谷折りされた山部(谷部とも言いうるがここでは山部として取り扱う)12とが交互に現れる。プリーツ加工は、山部11,12の間の距離(山部の高さ)Pが一定となるように行われる。フィルタ濾材の山部の間隔Dは、フィルタ濾材1が連続したW字を描くように連なる方向(山部が配列する方向)Lについてのフィルタ濾材1の長さが定まれば(言い換えれば枠体2に固定された状態で)、一定の値をとる。
【0016】
フィルタ濾材1の濾過面積を確保して圧力損失を低下させるには値D/Pは低いほうがよい。値D/Pは、0.25以下、特に0.15以下が好ましい。他方、小さすぎる値D/Pはフィルタ濾材1の圧力損失を上昇させる場合がある。また、小さすぎる値D/Pは、射出成形に用いる金型の耐久性を劣化させることもある。このため、値D/Pは0.05以上が好ましい。なお、値D/Pの算出に際し、間隔Dとしては、すべての山部11同士の間隔およびすべての山部12同士の間隔の平均値を採用することとする。
【0017】
図4(a)に示したとおり、フィルタ濾材1は、山部11が互いに平行に真っ直ぐ伸長するようにプリーツ加工され、その周縁部に樹脂が射出成形される。この状態では、山部11の間隔Dは、場所によらずほぼ一定である。しかし、射出成形された樹脂が収縮すると、フィルタ濾材1は変形し、これに伴って山部11が部分的に曲がることになる。図4(b)に示したように、山部11の「曲がり」は、山部11が伸長する方向Wに枠体が収縮してこの方向に沿って濾材1に応力がかかると顕著となる。山部11に「曲がり」が発生すると山部11の間隔が狭くなった領域Rが生じる。このような領域Rは、気流に対する濾材の抵抗を大きくして濾材の圧力損失を上昇させる。このため、山部11の伸長方向Wに沿った枠体2の収縮量を、山部11の配列方向Lに沿った枠体2の収縮量よりも少なくできるように、フィルタユニット10を設計することが望ましい。例えば、フィルタ濾材1の山部11が配列する方向Lに沿った枠体2の長さLaが、フィルタ濾材1の山部11が伸長する方向Wに沿った枠体2の長さの最大値Lmよりも長くなるように、フィルタユニット10を設計する。なお、Laの値は、便宜上、枠体2の端部における測定値を採用する。
【0018】
圧力損失の増大を防止するため、フィルタ濾材1において最も狭い間隔d(Dの最小値である)は1mm以上とする。間隔dは2mm以上、特に3mm以上が好ましい。
【0019】
間隔dを上記範囲の値とするためには、山部11の伸長方向Wに沿った枠体2が設計どおりの形状を保っていることが好ましい。図1を再び参照しながら好ましい枠体2の寸法を説明する。フィルタ濾材の山部が伸長する方向Wに沿って枠体2の長さを測定したときに、枠体の端部における長さLeと枠体の長さの最大値Lmとから算出される比率{(Lm−Le)/Lm}×100[%]が0.5%以下、特に0.3%以下、であることが好ましい。上記比率は枠体2の収縮率を示す。射出成形による枠体2は、中央部が外側へと膨らみ、端部が内側へと後退する傾向を示し、最大長さLmは枠体の中央部に現れる。
【0020】
なお、パネルの高さ(奥行き)Lhは、省スペースの観点から50mm未満が好ましい。
【0021】
フィルタユニットパネルの圧力損失および粒子捕集効率は、後述する測定法による値により表示して、それぞれ、250Pa以下、特に150Pa以下、95%以上、特に99%以上が好ましい。ただし、要求される圧力損失および粒子捕集効率は用途によって異なるため、本発明のフィルタユニットパネルの特性が上記に限られるわけではない。
【0022】
フィルタ濾材1としては、特に制限されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜と通気性繊維層との積層体が好ましい。エレクトレット濾材は、圧力損失が低いもののHEPAグレードの捕集効率が得られず、洗浄すると捕集効率が低下する。ガラス繊維層を濾材とすると、圧力損失が高くなる。これを補うために濾材の山高さPを大きくすると、枠体の高さが増して大型化し、これに伴ってエアフィルタの重量が増す。
【0023】
通気性繊維層は、例えばフェルト、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)等であってよい。この層を構成する材料としては、ポリオレフィン(例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン)、ポリアミド(芳香族ポリアミドを含む)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET))等を例示できる。好ましい通気性繊維層は、芯部が鞘部よりも融点が高い材料からなる芯鞘構造を有する不織布が挙げられる。
【0024】
枠体2および外枠3を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミド系樹脂を含む)、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ABS樹脂等)、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、2種以上を混合して用いてもよいし、枠体と外枠とで異なる種類の樹脂を用いても構わない。
【0025】
枠体2を構成する、ガラス繊維が添加された樹脂の収縮率は、10/1000以下、特に5/1000以下が好ましい。ここで、本明細書において樹脂の収縮率とは、JIS K7152−4に規定される流動方向に直角な成形収縮率(SMn)を意味する。
【0026】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。まず、捕集効率の測定方法について説明する。
【0027】
[捕集効率]
サンプルのフィルタユニットパネルを通過する気流の速度を0.5m/秒に調整し、サンプルの上流側に、多分散ジオクチルフタレート(DOP)粒子を107個/Lとなるように供給した。上流側のDOP粒子濃度とサンプルを透過してきた下流側のDOP粒子濃度をパーティクルカウンターで測定し、下記式に基づいて捕集効率を求めた。DOP粒子の粒径は0.3〜0.4μmとした。
捕集効率(%)=[1−(下流側濃度/上流側濃度)]×100
[圧力損失]
【0028】
サンプルのフィルタユニットパネルを通過する気流の速度を0.5m/秒に調整したときの圧力損失を圧力計(マノメーター)で測定した。
【0029】
(実施例1)
PTFE多孔質膜を2枚の不織布で挟んで重ね、180℃に加熱した一対のロールの間を通過させて熱ラミネートを行い、厚さ0.32mm、圧力損失170Pa、捕集効率99.99%のフィルタ濾材を得た。不織布としては、PETを芯部、PEを鞘部とする芯鞘構造を有する不織布(ユニチカ社製「エルベスT0303WDO」、目付量30g/m2)を用いた。
【0030】
PTFE多孔質膜は、以下のように作製したものを用いた。PTFEファインパウダー(ダイキン社製、F104)100重量部に液状潤滑剤(ドデカン)20重量部を均一に混合し、得られた混合物を予備成形した。次に、予備成形物をロッド状にペースト押出し、さらにロッド状成形体を1対の金属圧延ロール間に通して、厚さ200μmの長尺シートとした。この長尺シートを200℃の延伸温度で長手方向に10倍に延伸し、さらにテンター法により80℃の延伸温度で幅方向に20倍に延伸して、未焼成PTFE多孔質膜を得た。この未焼成PTFE多孔質膜を、熱風発生炉を用いて400℃で焼成して、帯状のPTFE多孔質膜(厚さ10μm)を得た。
【0031】
上記で得たフィルタ濾材を、山高さ(P)22mmで93山となるようにプリーツ加工した。プリーツ加工したフィルタ濾材を射出成形機の金型にセットし、30重量%のガラス繊維を添加したポリカーボネート樹脂を射出成形して、厚さ3mm(wd1、wd2、wd3、wd4)の枠体を形成した。こうして、外形195mm(Lm)×295mm(La)、高さ27mm(Lh)のフィルタユニットを得た。このように、フィルタユニットの枠体の厚さは、フィルタ濾材の全周に渡って一定である(wd1=wd2=wd3=wd4)。30重量%のガラス繊維が添加されたポリカーボネート樹脂としては、三菱エンジニアリングプラスチック製「ユーピロン」を用いた。その収縮率は、3.5/1000であった。
【0032】
次いで、6個のフィルタユニットを枠体の外周面が互いに接するように配置し、熱溶着により一体化し、フィルタユニットパネルを得た。さらに、予め押出成形により形成した4本のポリカーボネート樹脂の棒材をフィルタユニットパネルの外周面に配置し、フィルタユニットパネルと棒材とを熱溶着し、外形610mm×610mm、高さ27mmの外枠付きフィルタユニットパネル(エアフィルタ)を得た。熱溶着は、枠体および外枠の上面および下面に形成した凸部を溶着リブとして用いることにより行った。
【0033】
(実施例2)
射出成形に用いるポリカーボネート樹脂に添加するガラス繊維の量を10重量%に変更した以外は実施例1と同様にして、エアフィルタを得た。10重量%のガラス繊維を添加したポリカーボネート樹脂の収縮率は、5/1000であった。
【0034】
(比較例1)
射出成形に用いるポリカーボネート樹脂が、ガラス繊維が添加されていない状態にあることを除いては実施例1と同様にして、エアフィルタを得た。
【0035】
(比較例2)
ガラス繊維層をフィルタ濾材とする市販品をエアフィルタとして準備した。
【0036】
(比較例3)
外形295mm(Lm)×195mm(La)、高さ27mm(Lh)のフィルタユニットを形成した以外は実施例1と同様にして、エアフィルタを得た。
【0037】
各実施例および比較例から得たエアフィルタについての特性(圧力損失および粒子捕集効率)を、エアフィルタの外形寸法および重量と、フィルタ濾材についての値D/P、dおよび比率(Lm−Le)/Lmの実測値と、エアフィルタの形成に使用したフィルタユニットの枠体の長さについての値La/Lmとともに表1に示す。なお、値D/P、dおよび比率{(Lm−Le)/Lm}×100(枠体収縮率)は、6つのフィルタユニットについての平均値を採用した。各実施例および比較例におけるフィルタユニットの枠体の長さLa、Lmおよび枠体の厚さwd1、wd2、wd3、wd4は、エアフィルタの形成のための熱溶着の前後において略一定であった。
【0038】
【表1】

【0039】
比較例1のエアフィルタは、枠体に近い部分で樹脂の収縮によりフィルタ濾材が歪み、隣り合う山部が極めて近接した状態にあり、この部分において山部の間隔が小さくなっていた。このようなフィルタ濾材の変形が圧力損失の上昇をもたらしたと考えられる。
【0040】
比較例3のエアフィルタも、枠体に近い部分でフィルタ濾材が歪み、この部分においてフィルタ濾材の山部の間隔が小さくなっていた。比較例3におけるフィルタユニットは、フィルタ濾材の山部が伸長する方向に沿った枠体の長さが、フィルタ濾材の山部が配列する方向に沿った枠体の長さよりも長いため、枠体収縮率は実施例と同程度に小さいものの、圧力損失の上昇をもたらすフィルタ濾材の歪みが発生したと考えられる。
【0041】
実施例1,2を比較すると、ガラス繊維の添加量10%と30%とでは圧力損失の上昇を抑制する効果にはほとんど影響がないことがわかる。これを考慮すると、ガラス繊維の添加量は、例えば10〜20%であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のフィルタユニットにより構成されるフィルタユニットパネルは、クリーンルーム、空調設備、ガスタービン、蒸気タービン等の吸気口に使用されるエアフィルタに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明のフィルタユニットの一形態の斜視図である。
【図2】図2は、本発明のフィルタユニットパネルの一形態の斜視図である。
【図3】図3は、フィルタ濾材の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、フィルタ濾材の一例を示す平面図であり、(a)はフィルタ濾材の変形がほとんどない状態を、(b)は変形が顕著となった状態を示す。
【符号の説明】
【0044】
1 フィルタ濾材
2 枠体
3 外枠
10 フィルタユニット
11,12 山部
20 フィルタユニットパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリーツ加工されたフィルタ濾材と、
前記フィルタ濾材を支持し、前記フィルタ濾材を通過する気流の流れに沿って見たときの内周および外周が矩形である枠体と、を備え、
前記フィルタ濾材の周縁部が前記枠体の内周面に埋め込まれて固定され、
前記プリーツ加工されたフィルタ濾材の隣接する山部の間隔Dを前記フィルタ濾材の山部の高さPで除した値D/Pが0.25以下であり、前記間隔Dの最小値dが1mm以上であり、
前記枠体が、5〜30重量%のガラス繊維が添加された樹脂部材であり、
前記フィルタ濾材の山部が配列する方向に沿った前記枠体の長さLaが、前記フィルタ濾材の山部が伸長する方向に沿った前記枠体の長さの最大値Lmよりも長い、
フィルタユニット。
【請求項2】
前記フィルタ濾材の山部が伸長する方向に沿って前記枠体の長さを測定したときに、前記枠体の端部における長さLeと前記長さLmとに基づいて算出される比率{(Lm−Le)/Lm}×100[%]が0.5%以下である、請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項3】
前記フィルタ濾材が、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と通気性繊維層との積層体である、請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルタユニットを枠体の外周面が互いに接するように複数個配置して一体化した、フィルタユニットパネル。
【請求項5】
プリーツ加工されたフィルタ濾材と、
前記フィルタ濾材を支持し、前記フィルタ濾材を通過する気流の流れに沿って見たときの内周および外周が矩形である枠体と、を備えたフィルタユニットの製造方法であって、
プリーツ加工されたフィルタ濾材の隣接する山部の間隔Dを前記フィルタ濾材の山部の高さPで除した数値D/Pが0.25以下となり、かつ前記フィルタ濾材の周縁部が樹脂射出空間に露出するように、前記フィルタ濾材を射出成形機に設置し、
5〜30重量%のガラス繊維が添加された樹脂を前記樹脂射出空間に射出することにより、前記枠体として、前記濾材の山部が配列する方向に沿った前記枠体の長さLaが前記濾材の山部が伸長する方向に沿った前記枠体の長さの最大値Lmよりも長くなるように前記濾材の周縁部を埋め込んで固定する、前記樹脂からなる樹脂部材を形成する、フィルタユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−136865(P2009−136865A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290348(P2008−290348)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】