フィルタ内蔵型コネクタ
【課題】フィルタ部品の取り外し及び取り付けが容易で、しかも、フィルタ部品を取り外した状態においても、コネクタピンが電気的に分断されずに接続した状態を維持するフィルタ内蔵型コネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は樹脂ケース2とコネクタピン3−1,3−2とフィルタ実装基板4とを備える。コネクタピン3−1(3−2)は第1及び第2のピン部31,32に分断され、第1のバネ部33,第2のバネ部34が、第1のピン部31の分断部分,第2のピン部32の分断部分にそれぞれ形成されている。フィルタ実装基板4は、絶縁性基板5にフィルタ部品6を実装したものであり、コネクタピン3−1,3−2の第1及び第2のバネ部33,34と樹脂ケース2の収納部20の底部22との間に着脱自在に圧入されている。収納部20の底部22には導電性ライン71,72が設けられている。
【解決手段】コネクタ1は樹脂ケース2とコネクタピン3−1,3−2とフィルタ実装基板4とを備える。コネクタピン3−1(3−2)は第1及び第2のピン部31,32に分断され、第1のバネ部33,第2のバネ部34が、第1のピン部31の分断部分,第2のピン部32の分断部分にそれぞれ形成されている。フィルタ実装基板4は、絶縁性基板5にフィルタ部品6を実装したものであり、コネクタピン3−1,3−2の第1及び第2のバネ部33,34と樹脂ケース2の収納部20の底部22との間に着脱自在に圧入されている。収納部20の底部22には導電性ライン71,72が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノイズを除去するためのフィルタ部品を内蔵したフィルタ内蔵型コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図16に示すように、従来のフィルタ内蔵型コネクタ100は、樹脂ケース120内で分断された1本以上のコネクタピン110を、樹脂ケース120内に有し、コモンモードチョークコイル等のフィルタ部品200を、その分断コネクタピン111,112間に導電性樹脂等の接着部材130で電気的に接続した構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
これにより、コネクタピン110を流れるノイズ電流を、分断コネクタピン111,112間のフィルタ部品200によって除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−237135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来のフィルタ内蔵型コネクタでは、次のような問題がある。
通常、フィルタ内蔵型コネクタ100は、民生デジタル機器やポータブルデジタル機器に用いられるが、これらの製品の開発や試作段階において、フィルタ内蔵型コネクタ100に内蔵されているフィルタ部品200が適正であるかを、ノイズ評価により確認する必要がある。
このノイズ評価試験をする際には、フィルタ部品200をコネクタピン110から取り外したり、他のフィルタ部品を取り付けたりする作業が行われる。
しかしながら、上記した従来のフィルタ内蔵型コネクタ100では、フィルタ部品200が接着部材130で固定されているので、その取り外しや取り付けが困難である。
すなわち、接着部材130が半田である場合には、半田こてやスポットヒーター等により、半田に熱を加えて、フィルタ部品200を取り外すことになる。この際、高温の半田こてが、熱に弱い樹脂ケース120に接触して、樹脂ケース120が変形するおそれがある。
また、接着部材130が、導電性樹脂である場合には、熱を加えて溶融させることはできないので、導電性樹脂で一度取り付けたフィルタ部品200を、最早取り外すことができず、ノイズ評価試験を行うことはできない。
さらに、ノイズ評価試験では、フィルタ部品200を外して評価する必要もある。このような場合には、フィルタ部品200をコネクタピン110から取り外す作業の他に、図示しない導電性部材によって、分断コネクタピン111,112間をショートさせる作業が必要となる等、煩雑な作業が強いられる。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、フィルタ部品の取り外し及び取り付けが容易で、しかも、フィルタ部品を取り外した状態においても、コネクタピンが電気的に分断されずに接続した状態を維持するフィルタ内蔵型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、穴状の収納部を有した樹脂ケースと、この樹脂ケースに保持されたn(nは自然数)本のコネクタピンと、収納部に収納され且つn本のコネクタピンに電気的に接続された1つのフィルタ実装基板とを備えるフィルタ内蔵型コネクタであって、各コネクタピンが、収納部内で第1のピン部と第2のピン部とに分断され、収納部の底部に圧接可能な導電性の第1のバネ部,第2のバネ部が、これら第1のピン部の分断部分,第2のピン部の分断部分にそれぞれ設けられており、フィルタ実装基板が、表面にn数の第1のランドとn数の第2のランドとを有する絶縁性基板と、n数の第1の端子がn数の第1のランドにそれぞれ接続されると共にn数の第2の端子がn数の第2のランドにそれぞれ接続されたフィルタ部品とで形成され、このフィルタ実装基板が、フィルタ部品を収納部の開口側に向けた状態で、収納部の底部とn本のコネクタピンの第1及び第2のバネ部との間に着脱自在に圧入されて、各第1のバネ部,各第2のバネ部が、絶縁性基板の各第1のランド,各第2のランドにそれぞれ圧接されており、各導電性ラインが、各コネクタピンの第1のバネ部の位置から第2のバネ部の位置に至るように、n本の導電性ラインが、収納部の底部上に設けられている構成とした。
かかる構成により、ノイズ電流が、コネクタピンに侵入すると、フィルタ実装基板がコネクタピンに電気的に接続されているので、このノイズ電流は、フィルタ実装基板に実装されているフィルタ部品によって除去される。
ところで、フィルタ内蔵型コネクタが、所望のノイズ除去効果を奏するか否かを評価する試験においては、各種のフィルタ部品を実装し、各フィルタ部品毎のノイズに対するインピーダンス等を測定して、最適なフィルタ部品を選択する必要がある。つまり、ノイズ評価試験では、複数のフィルタ部品の取り付け及び取り付け作業が行われることとなる。
取り外し作業を行う場合には、既実装のフィルタ実装基板を樹脂ケースの収納部内から取り出す。このとき、各コネクタピンの各第1のバネ部,各第2のバネ部は、フィルタ実装基板の絶縁性基板の各第1のランド,各第2のランドにそれぞれ圧接された状態にある。つまり、フィルタ実装基板は、収納部の底部とn本のコネクタピンの第1及び第2のバネ部との間に着脱自在に圧入されているだけで、コネクタピンに半田付けや導電性樹脂で固着されていないので、フィルタ実装基板を収納部内から容易に取り外すことができる。
そして、新たなフィルタ実装基板を、樹脂ケースの収納部内に取り付ける場合には、コネクタピンの第1のバネ部と第2のバネ部を収納部の開口側に撓ませ、これらのバネ部と底部との間に、フィルタ実装基板の絶縁性基板の厚さとほぼ同じ間隙を作る。かかる状態で、絶縁性基板を間隙内に圧入し、第1のバネ部と第2のバネ部を解放する。これにより、コネクタピンの第1のバネ部,第2のバネ部が、絶縁性基板の第1のランド,第2のランドにそれぞれ圧接された状態になり、コネクタピンとフィルタ部品とが、電気的に接続された状態になる。つまり、フィルタ実装基板が、コネクタピンに半田付けや導電性樹脂で固着されていないので、適正なフィルタ実装基板を樹脂ケースに容易に取り付けることができる。
また、ノイズ評価試験では、フィルタ部品がない状態でのインピーダンス等を測定する必要もある。
このような場合には、上記したように、樹脂ケースの収納部内のフィルタ実装基板を取り外す。
フィルタ実装基板を取り外すと、各コネクタピンの第1及び第2のバネ部が収納部の底部に圧接する。このとき、各導電性ラインが、各コネクタピンの第1のバネ部の位置から第2のバネ部の位置に至るように、収納部の底部上に設けられているので、第1のバネ部が導電性ラインの一方端部に圧接すると共に、第2のバネ部が他方端部に圧接した状態になる。この結果、各コネクタピンの第1のピン部と第2のピン部とが、各導電性ラインを介して導通した状態になる。つまり、フィルタ実装基板を取り外すだけで、各コネクタピンが自動的にショート状態になる。この結果、上記した従来の技術の場合に必要であった導電性部材による第1のピン部と第2のピン部間のショート作業が必要なくなる。
また、フィルタ実装基板が、フィルタ部品を絶縁性基板のランド上に接続した構造であるので、ランドのパターンを変えることで、いろいろな種類及びいろいろなサイズのフィルタ部品を絶縁性基板に実装した多種類のフィルタ実装基板を用意することができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のフィルタ内蔵型コネクタにおいて、収納部の底部を、収納部内に設けたバネ部材により開口側に付勢された絶縁性の板体で形成し、n本の導電性ラインをこの板体上に設けた構成とする。
かかる構成により、フィルタ実装基板を取り外した状態では、各コネクタピンの第1及び第2のバネ部が、収納部内の開口側に付勢された板体に圧接し、導電性ラインの両端部に電気的に接続した状態になっている。
フィルタ実装基板を実装する場合には、フィルタ実装基板を収納部内に挿入し、絶縁性基板を板体に載せ、バネ部材の付勢力に抗して押すことで、板体と第1及び第2のバネ部との間に絶縁性基板の厚さ以上の間隙を得ることができる。
かかる状態で、絶縁性基板をこの間隙に滑り込ませた後、手を離すと、第1のバネ部,第2のバネ部が、絶縁性基板の第1のランド,第2のランドにそれぞれ圧接された状態になり、コネクタピンとフィルタ部品とが電気的に接続された状態になる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のフィルタ内蔵型コネクタにおいて、フィルタ実装基板のフィルタ部品は、コモンモードチョークコイル及びフェライトビーズのいずれか又は双方である構成とした。
【発明の効果】
【0009】
以上詳しく説明したように、この発明のフィルタ内蔵型コネクタによれば、フィルタ部品が実装されたフィルタ実装基板が、コネクタピンに半田付けや導電性樹脂で固着されていないので、フィルタ実装基板を収納部内から取り外す作業や取り付ける作業を容易に行うことができるという優れた効果がある。また、フィルタ実装基板を取り外すだけで、コネクタピンが電気的に分断されず、ショート状態を維持するので、コネクタピンのショート作業が不必要となるという効果もある。さらに、ランドのパターンを変えることで、いろいろな種類及びいろいろなサイズのフィルタ部品を絶縁性基板に実装した多種類のフィルタ実装基板を用意することができ、この結果、多種類及び多サイズのフィルタ部品についてノイズ評価を迅速に行うことができるという効果もある。
【0010】
特に、請求項2の発明によれば、フィルタ実装基板を樹脂ケースの収納部に容易且つ迅速に実装することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1実施例に係るフィルタ内蔵型コネクタを一部破断して示す斜視図である。
【図2】フィルタ内蔵型コネクタの断面図である。
【図3】フィルタ内蔵型コネクタを示す平面図である。
【図4】フィルタ実装基板の側面図である。
【図5】フィルタ実装基板の平面図である。
【図6】導電性ラインを説明するための断面図である。
【図7】導電性ラインを示す平面図である。
【図8】フィルタ実装基板の取り外し作業を示す断面図である。
【図9】フィルタ実装基板の取り付け作業を示す断面図である。
【図10】この発明の第2実施例に係るフィルタ内蔵型コネクタの要部を示す断面図である。
【図11】フィルタ実装基板の取り付ける作業を説明するための断面図である。
【図12】実施例におけるフィルタ部品とランドパターンとの関係を示す平面図である。
【図13】フィルタ部品としてフェライトビーズを用いた例を示す平面図である。
【図14】小さなフィルタ部品を実装した例を示す平面図である。
【図15】多端子の複合型フィルタ部品を実装した例を示す平面図である。
【図16】従来のフィルタ内蔵型コネクタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(実施例1)
図1は、この発明の第1実施例に係るフィルタ内蔵型コネクタを一部破断して示す斜視図であり、図2は、フィルタ内蔵型コネクタの断面図であり、図3は、フィルタ内蔵型コネクタを示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、この実施例のコネクタ1は、フィルタ内蔵型コネクタであり、穴状の収納部20を有した樹脂ケース2と、樹脂ケース2に保持された2本のコネクタピン3−1,3−2と、収納部20内に収納された1枚のフィルタ実装基板4とを備えている。
【0015】
樹脂ケース2は、ポリアミド樹脂等の絶縁性樹脂で形成され、その断面は略L字状をなす。
具体的には、樹脂ケース2は、本体部2Aと、本体部2Aの上部から突出した上壁部2Bとで形成され、上方に開口する直方体状の収納部20が、本体部2Aの上面2aに凹設されている。
【0016】
各コネクタピン3−1(3−2)は、収納部20内で第1のピン部31と第2のピン部32とに分断されている。
具体的には、第1のピン部31は、分断部分(右側端部)を収納部20内に残した状態で、本体部2Aの左側面2bから上壁部2Bに沿って水平に突出している。一方、第2のピン部32は、分断部分(上側端部)を収納部20内に残した状態で、本体部2Aの下面2cから垂直に突出している。
第1及び第2のピン部31,32は、バネ性を有した金属等の導電性部材で形成されている。そして、収納部20内に突出した第1のピン部31の分断部分が、第1のバネ部33を形成し、第1のバネ部33に対向するように収納部20内に突出した第2のピン部32の分断部分が、第2のバネ部34を形成する。これらの第1及び第2のバネ部33,34は、収納部20の開口21側に撓ませると、収納部20の底部22側に復旧しようとする付勢力を発生させる。
このような第1及び第2のバネ部33,34の先端には、接触部33a,34aがそれぞれ突設されている。これら接触部33a,34aは、フィルタ実装基板4に圧接し、また、フィルタ実装基板4が収納部20内にない場合には、収納部20の底部22に圧接する。
【0017】
フィルタ実装基板4は、上記したコネクタピン3−1,3−2に電気的に接続されている。
図4は、フィルタ実装基板4の側面図であり、図5は、フィルタ実装基板4の平面図である。
図4及び図5に示すように、フィルタ実装基板4は、絶縁性基板5にフィルタ部品6を実装した基板である。
絶縁性基板5は、矩形状の絶縁性部材で形成されており、その表面には、2本のランドパターン51,52がパターン形成されている。
各ランドパターン51(52)は、絶縁性基板5の中央部側から左側縁部に延びる第1のランド51A(52A)と、右側縁部に延びる第2のランド51B(52B)とで形成されている。
一方、フィルタ部品6は、コモンモードチョークコイルであり、上記ランドパターン51,52上に実装されている。
具体的には、第1の端子61A,62Aが、第1のランド51A,52Aに半田によってそれぞれ接続され、第2の端子61B,62Bが、第2のランド51B,52Bに半田によってそれぞれ接続されている。
【0018】
上記の如きフィルタ実装基板4は、図2及び図3に示すように、フィルタ部品6を収納部20の開口21側に向けた状態で、収納部20の底部22上に載置されている。
そして、各第1のバネ部33が、絶縁性基板5の第1のランド51A(52A)に圧接され、各第2のバネ部34が、各第2のランド51B(52B)に圧接されている。
つまり、フィルタ実装基板4は、2本のコネクタピン3−1,3−2の第1及び第2のバネ部33,34と収納部20の底部22との間に着脱自在に圧入されている。
【0019】
このように、フィルタ実装基板4が、載置された底部22には、2本の導電性ラインが設けられている。
図6は、導電性ライン71,72を説明するための断面図であり、図7は、導電性ライン71,72を示す平面図である。
図6及び図7に示すように、各導電性ライン71(72)は、底部22上に設けられており、各導電性ライン71(72)は、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33の位置から第2のバネ部34の位置に至る。
これにより、フィルタ実装基板4が収納部20内にない状態では、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33,第2のバネ部34が、各導電性ライン71(72)の両端部にそれぞれ圧接し、第1のピン部31と第2のピン部32とが各導電性ライン71(72)を通じて電気的に接続された状態になる。
【0020】
次に、この実施例のフィルタ内蔵型コネクタが示す作用及び効果について説明する。
図2に示すコネクタ1において、コモンモードのノイズ電流が、コネクタピン3−1,3−2の第1のピン部31,31に侵入すると、第1のバネ部33,33からフィルタ実装基板4の絶縁性基板5の第1のランド51A,52Aを通じてフィルタ部品6に入り込む。このとき、フィルタ部品6がコモンモードチョークコイルであるので、進入したコモンモードのノイズ電流に対してインピーダンスが高くなり、ノイズ電流がフィルタ部品6によって阻止される。
【0021】
ところで、コネクタ1に対するノイズ評価試験において、フィルタ部品6の取り外し及び取り付け作業を行う場合には、フィルタ実装基板4を樹脂ケース2から取り外し及び取り付けることで実現することができる。
図8は。フィルタ実装基板4の取り外し作業を示す断面図であり、図9は。フィルタ実装基板4の取り付け作業を示す断面図である。
【0022】
フィルタ実装基板4を樹脂ケース2から取り外す場合には、図8に示すように、フィルタ実装基板4を、コネクタピン3−1,3−2の第1及び第2のバネ部33,34の付勢力に抗して、開口21側に引っ張る。これにより、フィルタ実装基板4を収納部20内から容易に取り出すことができる。
【0023】
そして、新たなフィルタ実装基板4を収納部20内に取り付ける場合には、図9に示すように、例えば、図示しないフック等を用いて、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33を、付勢力に抗して、開口21側に撓ませる。これにより、フィルタ実装基板4の絶縁性基板5を挿入できる間隙Gを、第1のバネ部33と底部22との間に作る。そして、絶縁性基板5の左側部を間隙G内に圧入した後、同様にして、絶縁性基板5の右側部を、第2のバネ部34と底部22との間の間隙に圧入する。
これにより、図2に示したように、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33,第2のバネ部34が、絶縁性基板5の第1のランド51A(52A),第2のランド51B(52B)にそれぞれ圧接された状態になり、コネクタピン3−1,3−2とフィルタ部品6とが電気的に接続された状態になる。
【0024】
また、フィルタ部品6がない状態で、ノイズ評価試験を行う場合には、図8に示したように、フィルタ実装基板4を収納部20から取り外す。
フィルタ実装基板4を取り外すと、各コネクタピン3−1(3−2)の第1及び第2のバネ部33,34が収納部20の底部22に圧接する。このとき、図6に示したように、各導電性ライン71(72)が第1のバネ部33の位置から第2のバネ部34の位置に至るように、底部22上に設けられているので、第1のバネ部33が各導電性ライン71(72)の左方端部に圧接すると共に、第2のバネ部34が右方端部に圧接した状態になる。この結果、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のピン部31と第2のピン部32とが、各導電性ライン71(72)を介して導通した状態になる。
【0025】
(実施例2)
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図10は、この発明の第2実施例に係るフィルタ内蔵型コネクタの要部を示す断面図である。
上記第1実施例では、フィルタ実装基板4を収納部20内に収納する場合に、フック等を用いて、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33を、開口21側に撓ませる作業が必要であり、取り付け作業が繁雑である。
そこで、この実施例では、収納部20の底部22の構造を変えて、フィルタ実装基板4の取り付け作業を容易に行うことができるようにした。
すなわち、図10に示すように、底部22を、バネ部材23と絶縁性の板体24とで構成した。
具体的には、凹部25を収納部20の下部に形成し、バネ部材23を凹部25内に収納した。そして、導電性ライン71,72が表面に形成された板体24を、バネ部材23の上に取り付けた。これにより、板体24がバネ部材23によって開口21側に付勢され、板体24表面の各導電性ライン71(72)の両端部が、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33,第2のバネ部34に圧接された状態になる。
【0026】
次に、この実施例のフィルタ内蔵型コネクタにフィルタ実装基板4の取り付ける作業について説明する。
図11は、フィルタ実装基板4の取り付ける作業を説明するための断面図である。
フィルタ実装基板4を収納部20内に取り付ける場合には、まず、図11の(a)に示すように、フィルタ実装基板4を収納部20内に挿入し、絶縁性基板5により、バネ部材23の付勢力に抗して、板体24を押し下げる。すると、板体24と第1及び第2のバネ部33,34との間に絶縁性基板5の厚さ以上の間隙Gが生じる。
かかる状態で、絶縁性基板5を、矢印で示すように、左右の間隙G,Gに滑り込ませる。そして、フィルタ実装基板4から手を離して、バネ部材の付勢力を解放すると、図11の(b)に示すように、フィルタ実装基板4が持ち上がって、第1のバネ部33,第2のバネ部34が、絶縁性基板5の第1のランド51A(52A),第2のランド51B(52B)にそれぞれ圧接された状態になる。この結果、フィルタ実装基板4が収納部20内に取り付けられた状態になる。
このようにして、フック等の器具を使用せずに、フィルタ実装基板4を樹脂ケース2の収納部20に容易且つ迅速に実装することができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0027】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
上記実施例では、図12に示すように、フィルタ部品6である4端子のコモンモードチョークコイルを、絶縁性基板5上に実装した例を示したが、図13に示すように、フィルタ部品である2端子のフェライトビーズ81,82を、絶縁性基板5のランドパターン51,52にそれぞれ取り付けることもできる。
また、上記実施例では、図12に示すように、ランドパターン51,52の間隔よりも大きなフィルタ部品6を、絶縁性基板5上に実装した例を示したが、ランドパターン51,52の間隔よりも小さなフィルタ部品6を絶縁性基板5上に実装する場合には、図14に示すように、ランドパターン51,52の形状を変えることで、小さなフィルタ部品6もランドパターン51,52に実装することができる。
さらに、図15に示すように、多端子61A〜64A(61B〜64B)の複合型フィルタ部品6を実装する場合には、ランドパターン51〜54の本数を端子数に対応させることで可能となる。
すなわち、この発明では、フィルタ実装基板4が、フィルタ部品6を絶縁性基板5のランド上に接続した構造であるので、ランドのパターンを変えることで、いろいろな種類及びいろいろなサイズのフィルタ部品6を絶縁性基板5に実装した多種類のフィルタ実装基板4を用意することができる。
【0028】
また、上記実施例では、第1のピン部31及び第2のピン部32自体がバネ性を有していたため、その一部を用いて、第1のバネ部33及び第2のバネ部34を形成したが、第1のピン部31及び第2のピン部32自体がバネ性を有していない場合には、第1のピン部31及び第2のピン部32とは別体の金属片であって且つバネ性を有する金属片を、第1のピン部31及び第2のピン部32の分断部分に取り付けて、これらの金属片を第1のバネ部33及び第2のバネ部34とすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1…コネクタ、 2…樹脂ケース、 2A…本体部、 2B…上壁部、 2a…上面、 2b…左側面、 2c…下面、 3−1,3−2…コネクタピン、 4…フィルタ実装基板、 5…絶縁性基板、 6…フィルタ部品、 20…収納部、 21…開口、 22…底部、 23…バネ部材、 24…板体、 25…凹部、 31…第1のピン部、 32…第2のピン部、 33…第1のバネ部、 34…第2のバネ部、 51,52…ランドパターン、 51A,52A…第1のランド、 51B,52B…第2のランド、 61A,62A…第1の端子、 61B,62B…第2の端子、 71,72…導電性ライン、 81,82…フェライトビーズ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノイズを除去するためのフィルタ部品を内蔵したフィルタ内蔵型コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図16に示すように、従来のフィルタ内蔵型コネクタ100は、樹脂ケース120内で分断された1本以上のコネクタピン110を、樹脂ケース120内に有し、コモンモードチョークコイル等のフィルタ部品200を、その分断コネクタピン111,112間に導電性樹脂等の接着部材130で電気的に接続した構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
これにより、コネクタピン110を流れるノイズ電流を、分断コネクタピン111,112間のフィルタ部品200によって除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−237135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来のフィルタ内蔵型コネクタでは、次のような問題がある。
通常、フィルタ内蔵型コネクタ100は、民生デジタル機器やポータブルデジタル機器に用いられるが、これらの製品の開発や試作段階において、フィルタ内蔵型コネクタ100に内蔵されているフィルタ部品200が適正であるかを、ノイズ評価により確認する必要がある。
このノイズ評価試験をする際には、フィルタ部品200をコネクタピン110から取り外したり、他のフィルタ部品を取り付けたりする作業が行われる。
しかしながら、上記した従来のフィルタ内蔵型コネクタ100では、フィルタ部品200が接着部材130で固定されているので、その取り外しや取り付けが困難である。
すなわち、接着部材130が半田である場合には、半田こてやスポットヒーター等により、半田に熱を加えて、フィルタ部品200を取り外すことになる。この際、高温の半田こてが、熱に弱い樹脂ケース120に接触して、樹脂ケース120が変形するおそれがある。
また、接着部材130が、導電性樹脂である場合には、熱を加えて溶融させることはできないので、導電性樹脂で一度取り付けたフィルタ部品200を、最早取り外すことができず、ノイズ評価試験を行うことはできない。
さらに、ノイズ評価試験では、フィルタ部品200を外して評価する必要もある。このような場合には、フィルタ部品200をコネクタピン110から取り外す作業の他に、図示しない導電性部材によって、分断コネクタピン111,112間をショートさせる作業が必要となる等、煩雑な作業が強いられる。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、フィルタ部品の取り外し及び取り付けが容易で、しかも、フィルタ部品を取り外した状態においても、コネクタピンが電気的に分断されずに接続した状態を維持するフィルタ内蔵型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、穴状の収納部を有した樹脂ケースと、この樹脂ケースに保持されたn(nは自然数)本のコネクタピンと、収納部に収納され且つn本のコネクタピンに電気的に接続された1つのフィルタ実装基板とを備えるフィルタ内蔵型コネクタであって、各コネクタピンが、収納部内で第1のピン部と第2のピン部とに分断され、収納部の底部に圧接可能な導電性の第1のバネ部,第2のバネ部が、これら第1のピン部の分断部分,第2のピン部の分断部分にそれぞれ設けられており、フィルタ実装基板が、表面にn数の第1のランドとn数の第2のランドとを有する絶縁性基板と、n数の第1の端子がn数の第1のランドにそれぞれ接続されると共にn数の第2の端子がn数の第2のランドにそれぞれ接続されたフィルタ部品とで形成され、このフィルタ実装基板が、フィルタ部品を収納部の開口側に向けた状態で、収納部の底部とn本のコネクタピンの第1及び第2のバネ部との間に着脱自在に圧入されて、各第1のバネ部,各第2のバネ部が、絶縁性基板の各第1のランド,各第2のランドにそれぞれ圧接されており、各導電性ラインが、各コネクタピンの第1のバネ部の位置から第2のバネ部の位置に至るように、n本の導電性ラインが、収納部の底部上に設けられている構成とした。
かかる構成により、ノイズ電流が、コネクタピンに侵入すると、フィルタ実装基板がコネクタピンに電気的に接続されているので、このノイズ電流は、フィルタ実装基板に実装されているフィルタ部品によって除去される。
ところで、フィルタ内蔵型コネクタが、所望のノイズ除去効果を奏するか否かを評価する試験においては、各種のフィルタ部品を実装し、各フィルタ部品毎のノイズに対するインピーダンス等を測定して、最適なフィルタ部品を選択する必要がある。つまり、ノイズ評価試験では、複数のフィルタ部品の取り付け及び取り付け作業が行われることとなる。
取り外し作業を行う場合には、既実装のフィルタ実装基板を樹脂ケースの収納部内から取り出す。このとき、各コネクタピンの各第1のバネ部,各第2のバネ部は、フィルタ実装基板の絶縁性基板の各第1のランド,各第2のランドにそれぞれ圧接された状態にある。つまり、フィルタ実装基板は、収納部の底部とn本のコネクタピンの第1及び第2のバネ部との間に着脱自在に圧入されているだけで、コネクタピンに半田付けや導電性樹脂で固着されていないので、フィルタ実装基板を収納部内から容易に取り外すことができる。
そして、新たなフィルタ実装基板を、樹脂ケースの収納部内に取り付ける場合には、コネクタピンの第1のバネ部と第2のバネ部を収納部の開口側に撓ませ、これらのバネ部と底部との間に、フィルタ実装基板の絶縁性基板の厚さとほぼ同じ間隙を作る。かかる状態で、絶縁性基板を間隙内に圧入し、第1のバネ部と第2のバネ部を解放する。これにより、コネクタピンの第1のバネ部,第2のバネ部が、絶縁性基板の第1のランド,第2のランドにそれぞれ圧接された状態になり、コネクタピンとフィルタ部品とが、電気的に接続された状態になる。つまり、フィルタ実装基板が、コネクタピンに半田付けや導電性樹脂で固着されていないので、適正なフィルタ実装基板を樹脂ケースに容易に取り付けることができる。
また、ノイズ評価試験では、フィルタ部品がない状態でのインピーダンス等を測定する必要もある。
このような場合には、上記したように、樹脂ケースの収納部内のフィルタ実装基板を取り外す。
フィルタ実装基板を取り外すと、各コネクタピンの第1及び第2のバネ部が収納部の底部に圧接する。このとき、各導電性ラインが、各コネクタピンの第1のバネ部の位置から第2のバネ部の位置に至るように、収納部の底部上に設けられているので、第1のバネ部が導電性ラインの一方端部に圧接すると共に、第2のバネ部が他方端部に圧接した状態になる。この結果、各コネクタピンの第1のピン部と第2のピン部とが、各導電性ラインを介して導通した状態になる。つまり、フィルタ実装基板を取り外すだけで、各コネクタピンが自動的にショート状態になる。この結果、上記した従来の技術の場合に必要であった導電性部材による第1のピン部と第2のピン部間のショート作業が必要なくなる。
また、フィルタ実装基板が、フィルタ部品を絶縁性基板のランド上に接続した構造であるので、ランドのパターンを変えることで、いろいろな種類及びいろいろなサイズのフィルタ部品を絶縁性基板に実装した多種類のフィルタ実装基板を用意することができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のフィルタ内蔵型コネクタにおいて、収納部の底部を、収納部内に設けたバネ部材により開口側に付勢された絶縁性の板体で形成し、n本の導電性ラインをこの板体上に設けた構成とする。
かかる構成により、フィルタ実装基板を取り外した状態では、各コネクタピンの第1及び第2のバネ部が、収納部内の開口側に付勢された板体に圧接し、導電性ラインの両端部に電気的に接続した状態になっている。
フィルタ実装基板を実装する場合には、フィルタ実装基板を収納部内に挿入し、絶縁性基板を板体に載せ、バネ部材の付勢力に抗して押すことで、板体と第1及び第2のバネ部との間に絶縁性基板の厚さ以上の間隙を得ることができる。
かかる状態で、絶縁性基板をこの間隙に滑り込ませた後、手を離すと、第1のバネ部,第2のバネ部が、絶縁性基板の第1のランド,第2のランドにそれぞれ圧接された状態になり、コネクタピンとフィルタ部品とが電気的に接続された状態になる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のフィルタ内蔵型コネクタにおいて、フィルタ実装基板のフィルタ部品は、コモンモードチョークコイル及びフェライトビーズのいずれか又は双方である構成とした。
【発明の効果】
【0009】
以上詳しく説明したように、この発明のフィルタ内蔵型コネクタによれば、フィルタ部品が実装されたフィルタ実装基板が、コネクタピンに半田付けや導電性樹脂で固着されていないので、フィルタ実装基板を収納部内から取り外す作業や取り付ける作業を容易に行うことができるという優れた効果がある。また、フィルタ実装基板を取り外すだけで、コネクタピンが電気的に分断されず、ショート状態を維持するので、コネクタピンのショート作業が不必要となるという効果もある。さらに、ランドのパターンを変えることで、いろいろな種類及びいろいろなサイズのフィルタ部品を絶縁性基板に実装した多種類のフィルタ実装基板を用意することができ、この結果、多種類及び多サイズのフィルタ部品についてノイズ評価を迅速に行うことができるという効果もある。
【0010】
特に、請求項2の発明によれば、フィルタ実装基板を樹脂ケースの収納部に容易且つ迅速に実装することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1実施例に係るフィルタ内蔵型コネクタを一部破断して示す斜視図である。
【図2】フィルタ内蔵型コネクタの断面図である。
【図3】フィルタ内蔵型コネクタを示す平面図である。
【図4】フィルタ実装基板の側面図である。
【図5】フィルタ実装基板の平面図である。
【図6】導電性ラインを説明するための断面図である。
【図7】導電性ラインを示す平面図である。
【図8】フィルタ実装基板の取り外し作業を示す断面図である。
【図9】フィルタ実装基板の取り付け作業を示す断面図である。
【図10】この発明の第2実施例に係るフィルタ内蔵型コネクタの要部を示す断面図である。
【図11】フィルタ実装基板の取り付ける作業を説明するための断面図である。
【図12】実施例におけるフィルタ部品とランドパターンとの関係を示す平面図である。
【図13】フィルタ部品としてフェライトビーズを用いた例を示す平面図である。
【図14】小さなフィルタ部品を実装した例を示す平面図である。
【図15】多端子の複合型フィルタ部品を実装した例を示す平面図である。
【図16】従来のフィルタ内蔵型コネクタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(実施例1)
図1は、この発明の第1実施例に係るフィルタ内蔵型コネクタを一部破断して示す斜視図であり、図2は、フィルタ内蔵型コネクタの断面図であり、図3は、フィルタ内蔵型コネクタを示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、この実施例のコネクタ1は、フィルタ内蔵型コネクタであり、穴状の収納部20を有した樹脂ケース2と、樹脂ケース2に保持された2本のコネクタピン3−1,3−2と、収納部20内に収納された1枚のフィルタ実装基板4とを備えている。
【0015】
樹脂ケース2は、ポリアミド樹脂等の絶縁性樹脂で形成され、その断面は略L字状をなす。
具体的には、樹脂ケース2は、本体部2Aと、本体部2Aの上部から突出した上壁部2Bとで形成され、上方に開口する直方体状の収納部20が、本体部2Aの上面2aに凹設されている。
【0016】
各コネクタピン3−1(3−2)は、収納部20内で第1のピン部31と第2のピン部32とに分断されている。
具体的には、第1のピン部31は、分断部分(右側端部)を収納部20内に残した状態で、本体部2Aの左側面2bから上壁部2Bに沿って水平に突出している。一方、第2のピン部32は、分断部分(上側端部)を収納部20内に残した状態で、本体部2Aの下面2cから垂直に突出している。
第1及び第2のピン部31,32は、バネ性を有した金属等の導電性部材で形成されている。そして、収納部20内に突出した第1のピン部31の分断部分が、第1のバネ部33を形成し、第1のバネ部33に対向するように収納部20内に突出した第2のピン部32の分断部分が、第2のバネ部34を形成する。これらの第1及び第2のバネ部33,34は、収納部20の開口21側に撓ませると、収納部20の底部22側に復旧しようとする付勢力を発生させる。
このような第1及び第2のバネ部33,34の先端には、接触部33a,34aがそれぞれ突設されている。これら接触部33a,34aは、フィルタ実装基板4に圧接し、また、フィルタ実装基板4が収納部20内にない場合には、収納部20の底部22に圧接する。
【0017】
フィルタ実装基板4は、上記したコネクタピン3−1,3−2に電気的に接続されている。
図4は、フィルタ実装基板4の側面図であり、図5は、フィルタ実装基板4の平面図である。
図4及び図5に示すように、フィルタ実装基板4は、絶縁性基板5にフィルタ部品6を実装した基板である。
絶縁性基板5は、矩形状の絶縁性部材で形成されており、その表面には、2本のランドパターン51,52がパターン形成されている。
各ランドパターン51(52)は、絶縁性基板5の中央部側から左側縁部に延びる第1のランド51A(52A)と、右側縁部に延びる第2のランド51B(52B)とで形成されている。
一方、フィルタ部品6は、コモンモードチョークコイルであり、上記ランドパターン51,52上に実装されている。
具体的には、第1の端子61A,62Aが、第1のランド51A,52Aに半田によってそれぞれ接続され、第2の端子61B,62Bが、第2のランド51B,52Bに半田によってそれぞれ接続されている。
【0018】
上記の如きフィルタ実装基板4は、図2及び図3に示すように、フィルタ部品6を収納部20の開口21側に向けた状態で、収納部20の底部22上に載置されている。
そして、各第1のバネ部33が、絶縁性基板5の第1のランド51A(52A)に圧接され、各第2のバネ部34が、各第2のランド51B(52B)に圧接されている。
つまり、フィルタ実装基板4は、2本のコネクタピン3−1,3−2の第1及び第2のバネ部33,34と収納部20の底部22との間に着脱自在に圧入されている。
【0019】
このように、フィルタ実装基板4が、載置された底部22には、2本の導電性ラインが設けられている。
図6は、導電性ライン71,72を説明するための断面図であり、図7は、導電性ライン71,72を示す平面図である。
図6及び図7に示すように、各導電性ライン71(72)は、底部22上に設けられており、各導電性ライン71(72)は、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33の位置から第2のバネ部34の位置に至る。
これにより、フィルタ実装基板4が収納部20内にない状態では、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33,第2のバネ部34が、各導電性ライン71(72)の両端部にそれぞれ圧接し、第1のピン部31と第2のピン部32とが各導電性ライン71(72)を通じて電気的に接続された状態になる。
【0020】
次に、この実施例のフィルタ内蔵型コネクタが示す作用及び効果について説明する。
図2に示すコネクタ1において、コモンモードのノイズ電流が、コネクタピン3−1,3−2の第1のピン部31,31に侵入すると、第1のバネ部33,33からフィルタ実装基板4の絶縁性基板5の第1のランド51A,52Aを通じてフィルタ部品6に入り込む。このとき、フィルタ部品6がコモンモードチョークコイルであるので、進入したコモンモードのノイズ電流に対してインピーダンスが高くなり、ノイズ電流がフィルタ部品6によって阻止される。
【0021】
ところで、コネクタ1に対するノイズ評価試験において、フィルタ部品6の取り外し及び取り付け作業を行う場合には、フィルタ実装基板4を樹脂ケース2から取り外し及び取り付けることで実現することができる。
図8は。フィルタ実装基板4の取り外し作業を示す断面図であり、図9は。フィルタ実装基板4の取り付け作業を示す断面図である。
【0022】
フィルタ実装基板4を樹脂ケース2から取り外す場合には、図8に示すように、フィルタ実装基板4を、コネクタピン3−1,3−2の第1及び第2のバネ部33,34の付勢力に抗して、開口21側に引っ張る。これにより、フィルタ実装基板4を収納部20内から容易に取り出すことができる。
【0023】
そして、新たなフィルタ実装基板4を収納部20内に取り付ける場合には、図9に示すように、例えば、図示しないフック等を用いて、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33を、付勢力に抗して、開口21側に撓ませる。これにより、フィルタ実装基板4の絶縁性基板5を挿入できる間隙Gを、第1のバネ部33と底部22との間に作る。そして、絶縁性基板5の左側部を間隙G内に圧入した後、同様にして、絶縁性基板5の右側部を、第2のバネ部34と底部22との間の間隙に圧入する。
これにより、図2に示したように、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33,第2のバネ部34が、絶縁性基板5の第1のランド51A(52A),第2のランド51B(52B)にそれぞれ圧接された状態になり、コネクタピン3−1,3−2とフィルタ部品6とが電気的に接続された状態になる。
【0024】
また、フィルタ部品6がない状態で、ノイズ評価試験を行う場合には、図8に示したように、フィルタ実装基板4を収納部20から取り外す。
フィルタ実装基板4を取り外すと、各コネクタピン3−1(3−2)の第1及び第2のバネ部33,34が収納部20の底部22に圧接する。このとき、図6に示したように、各導電性ライン71(72)が第1のバネ部33の位置から第2のバネ部34の位置に至るように、底部22上に設けられているので、第1のバネ部33が各導電性ライン71(72)の左方端部に圧接すると共に、第2のバネ部34が右方端部に圧接した状態になる。この結果、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のピン部31と第2のピン部32とが、各導電性ライン71(72)を介して導通した状態になる。
【0025】
(実施例2)
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図10は、この発明の第2実施例に係るフィルタ内蔵型コネクタの要部を示す断面図である。
上記第1実施例では、フィルタ実装基板4を収納部20内に収納する場合に、フック等を用いて、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33を、開口21側に撓ませる作業が必要であり、取り付け作業が繁雑である。
そこで、この実施例では、収納部20の底部22の構造を変えて、フィルタ実装基板4の取り付け作業を容易に行うことができるようにした。
すなわち、図10に示すように、底部22を、バネ部材23と絶縁性の板体24とで構成した。
具体的には、凹部25を収納部20の下部に形成し、バネ部材23を凹部25内に収納した。そして、導電性ライン71,72が表面に形成された板体24を、バネ部材23の上に取り付けた。これにより、板体24がバネ部材23によって開口21側に付勢され、板体24表面の各導電性ライン71(72)の両端部が、各コネクタピン3−1(3−2)の第1のバネ部33,第2のバネ部34に圧接された状態になる。
【0026】
次に、この実施例のフィルタ内蔵型コネクタにフィルタ実装基板4の取り付ける作業について説明する。
図11は、フィルタ実装基板4の取り付ける作業を説明するための断面図である。
フィルタ実装基板4を収納部20内に取り付ける場合には、まず、図11の(a)に示すように、フィルタ実装基板4を収納部20内に挿入し、絶縁性基板5により、バネ部材23の付勢力に抗して、板体24を押し下げる。すると、板体24と第1及び第2のバネ部33,34との間に絶縁性基板5の厚さ以上の間隙Gが生じる。
かかる状態で、絶縁性基板5を、矢印で示すように、左右の間隙G,Gに滑り込ませる。そして、フィルタ実装基板4から手を離して、バネ部材の付勢力を解放すると、図11の(b)に示すように、フィルタ実装基板4が持ち上がって、第1のバネ部33,第2のバネ部34が、絶縁性基板5の第1のランド51A(52A),第2のランド51B(52B)にそれぞれ圧接された状態になる。この結果、フィルタ実装基板4が収納部20内に取り付けられた状態になる。
このようにして、フック等の器具を使用せずに、フィルタ実装基板4を樹脂ケース2の収納部20に容易且つ迅速に実装することができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0027】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
上記実施例では、図12に示すように、フィルタ部品6である4端子のコモンモードチョークコイルを、絶縁性基板5上に実装した例を示したが、図13に示すように、フィルタ部品である2端子のフェライトビーズ81,82を、絶縁性基板5のランドパターン51,52にそれぞれ取り付けることもできる。
また、上記実施例では、図12に示すように、ランドパターン51,52の間隔よりも大きなフィルタ部品6を、絶縁性基板5上に実装した例を示したが、ランドパターン51,52の間隔よりも小さなフィルタ部品6を絶縁性基板5上に実装する場合には、図14に示すように、ランドパターン51,52の形状を変えることで、小さなフィルタ部品6もランドパターン51,52に実装することができる。
さらに、図15に示すように、多端子61A〜64A(61B〜64B)の複合型フィルタ部品6を実装する場合には、ランドパターン51〜54の本数を端子数に対応させることで可能となる。
すなわち、この発明では、フィルタ実装基板4が、フィルタ部品6を絶縁性基板5のランド上に接続した構造であるので、ランドのパターンを変えることで、いろいろな種類及びいろいろなサイズのフィルタ部品6を絶縁性基板5に実装した多種類のフィルタ実装基板4を用意することができる。
【0028】
また、上記実施例では、第1のピン部31及び第2のピン部32自体がバネ性を有していたため、その一部を用いて、第1のバネ部33及び第2のバネ部34を形成したが、第1のピン部31及び第2のピン部32自体がバネ性を有していない場合には、第1のピン部31及び第2のピン部32とは別体の金属片であって且つバネ性を有する金属片を、第1のピン部31及び第2のピン部32の分断部分に取り付けて、これらの金属片を第1のバネ部33及び第2のバネ部34とすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1…コネクタ、 2…樹脂ケース、 2A…本体部、 2B…上壁部、 2a…上面、 2b…左側面、 2c…下面、 3−1,3−2…コネクタピン、 4…フィルタ実装基板、 5…絶縁性基板、 6…フィルタ部品、 20…収納部、 21…開口、 22…底部、 23…バネ部材、 24…板体、 25…凹部、 31…第1のピン部、 32…第2のピン部、 33…第1のバネ部、 34…第2のバネ部、 51,52…ランドパターン、 51A,52A…第1のランド、 51B,52B…第2のランド、 61A,62A…第1の端子、 61B,62B…第2の端子、 71,72…導電性ライン、 81,82…フェライトビーズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴状の収納部を有した樹脂ケースと、この樹脂ケースに保持されたn(nは自然数)本のコネクタピンと、上記収納部に収納され且つn本のコネクタピンに電気的に接続された1つのフィルタ実装基板とを備えるフィルタ内蔵型コネクタであって、
各コネクタピンが、上記収納部内で第1のピン部と第2のピン部とに分断され、収納部の底部に圧接可能な導電性の第1のバネ部,第2のバネ部が、これら第1のピン部の分断部分,第2のピン部の分断部分にそれぞれ設けられており、
上記フィルタ実装基板が、表面にn数の第1のランドとn数の第2のランドとを有する絶縁性基板と、n数の第1の端子が上記n数の第1のランドにそれぞれ接続されると共にn数の第2の端子が上記n数の第2のランドにそれぞれ接続されたフィルタ部品とで形成され、このフィルタ実装基板が、上記フィルタ部品を収納部の開口側に向けた状態で、収納部の底部と上記n本のコネクタピンの第1及び第2のバネ部との間に着脱自在に圧入されて、各第1のバネ部,各第2のバネ部が、上記絶縁性基板の各第1のランド,各第2のランドにそれぞれ圧接されており、
各導電性ラインが、各コネクタピンの第1のバネ部の位置から第2のバネ部の位置に至るように、n本の導電性ラインが、収納部の底部上に設けられている、
ことを特徴とするフィルタ内蔵型コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ内蔵型コネクタにおいて、
上記収納部の底部を、収納部内に設けたバネ部材により開口側に付勢された絶縁性の板体で形成し、上記n本の導電性ラインをこの板体上に設けた、
ことを特徴とするフィルタ内蔵型コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフィルタ内蔵型コネクタにおいて、
上記フィルタ実装基板のフィルタ部品は、コモンモードチョークコイル及びフェライトビーズのいずれか又は双方である、
ことを特徴とするフィルタ内蔵型コネクタ。
【請求項1】
穴状の収納部を有した樹脂ケースと、この樹脂ケースに保持されたn(nは自然数)本のコネクタピンと、上記収納部に収納され且つn本のコネクタピンに電気的に接続された1つのフィルタ実装基板とを備えるフィルタ内蔵型コネクタであって、
各コネクタピンが、上記収納部内で第1のピン部と第2のピン部とに分断され、収納部の底部に圧接可能な導電性の第1のバネ部,第2のバネ部が、これら第1のピン部の分断部分,第2のピン部の分断部分にそれぞれ設けられており、
上記フィルタ実装基板が、表面にn数の第1のランドとn数の第2のランドとを有する絶縁性基板と、n数の第1の端子が上記n数の第1のランドにそれぞれ接続されると共にn数の第2の端子が上記n数の第2のランドにそれぞれ接続されたフィルタ部品とで形成され、このフィルタ実装基板が、上記フィルタ部品を収納部の開口側に向けた状態で、収納部の底部と上記n本のコネクタピンの第1及び第2のバネ部との間に着脱自在に圧入されて、各第1のバネ部,各第2のバネ部が、上記絶縁性基板の各第1のランド,各第2のランドにそれぞれ圧接されており、
各導電性ラインが、各コネクタピンの第1のバネ部の位置から第2のバネ部の位置に至るように、n本の導電性ラインが、収納部の底部上に設けられている、
ことを特徴とするフィルタ内蔵型コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ内蔵型コネクタにおいて、
上記収納部の底部を、収納部内に設けたバネ部材により開口側に付勢された絶縁性の板体で形成し、上記n本の導電性ラインをこの板体上に設けた、
ことを特徴とするフィルタ内蔵型コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフィルタ内蔵型コネクタにおいて、
上記フィルタ実装基板のフィルタ部品は、コモンモードチョークコイル及びフェライトビーズのいずれか又は双方である、
ことを特徴とするフィルタ内蔵型コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−190584(P2012−190584A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51280(P2011−51280)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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