説明

フィルタ装置及びそれを用いた投写型映像表示装置

【課題】 着脱式巻取りフィルタの軸位置精度を安定的かつ高精度に実現できるフィルタ装置及びそれを用いた投写型映像表示装置を提供する。
【解決手段】 フィルタ保持部82に、フィルタカートリッジ81を弾性的に挟持しながら巻取り軸側連結部を駆動軸側連結部に対して嵌合方向とは直交する方向に位置決めする第1の位置決め手段(円弧状弾性挟持片82d,82e)を設けると共に、フィルタ保持部82とフィルタカートリッジ81に、フィルタカートリッジ81をフィルタベース部方向に押さえながら巻取り軸側連結部を駆動軸側連結部に対して嵌合方向に位置決めする第2の位置決め手段(押さえリブ82g等)を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、フィルタ装置及びそれを用いた液晶プロジェクタ等の投写型映像表示装置に係わり、特に着脱式巻取りフィルタを用いたものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高輝度化が進んでいる液晶プロジェクタ等の投写型映像表示装置においては、発熱による光学部品の寿命低下を抑制するために、強い冷却風が得られる冷却ファンを用いなければならない現状がある。
【0003】
また、ダスト(塵埃)が装置内に侵入するのを防ぐため、吸気口にはフィルタが設けられる。しかしながら、このフィルタにはダストが蓄積するため、ダスト掃除を初めとする定期的なメンテナンスが必要であった。
【0004】
この対策として、特許文献1には、エア・フィルタ材料をロール状に巻き付けるフィルタ送出側回転軸と、このフィルタ送出側回転軸に巻き付けた状態のエア・フィルタ材料をカバーするフィルタ送出側カバーと、フィルタ送出側回転軸から引き出したエア・フィルタ材料の一端を係着して巻き取るフィルタ巻取り側回転軸と、使用中のエア・フィルタ材料の汚れ具合が所定の値を超えたとき汚れ検出信号を出力する汚れ検出手段と、汚れ検出信号を受信したときフィルタ巻取り側回転軸を回転駆動する軸回転手段とを備えたエア・フィルタが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、フィルタを供給する供給ロールと、フィルタを巻き取る巻取りロールと、双方のロールを一体的に結合するフレーム部材とを備え、フレーム部材は、対向する縁部にスライド部材を有し、スライド部材が電子装置のシェルフの下部に取り付けられたレール部材上でスライドすることにより、冷却ファンの下方に取り付けられるフィルタユニットが開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、電子装置の冷却ファンの下部に固定されるケーシングと、このケーシング内に配設されたレール上でスライドして、ケーシング内部に挿入又は引出し自在に配設されるカートリッジとを備え、カートリッジは、フィルタ材を供給する供給ロールと、フィルタ材を巻き取る巻取りロールとを有して、巻取りロールの歯車が、カートリッジの挿入に際して、遊星歯車を介してケーシング内の駆動モータの駆動歯車と噛み合い、回転結合されるフィルタユニットが開示されている。
【特許文献1】特開平6−246120号公報
【特許文献2】特開2006−159026号公報
【特許文献3】特開2006−223958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような巻取り機構を具備するフィルタは、巻取り軸側連結部と駆動軸側連結部との噛み合い(軸位置)精度が重要であるため、これらがずれないようにしなくてはならない。しかも、巻取り機構に加えて着脱機構も具備するフィルタとなれば、正確な噛み合い精度を実現することは非常に難しくなる。
【0008】
そこで、本願発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、着脱式巻取りフィルタの軸位置精度を安定的かつ高精度に実現できるフィルタ装置及びそれを用いた投写型映像表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために、本願発明の請求項1に係るフィルタ装置は、通風口を有して当該通風口に配されるフィルタの供給ロール及び巻取りロールが収納されたフィルタカートリッジと、このフィルタカートリッジを着脱可能に保持するフィルタ保持部と、このフィルタ保持部が取り付けられると共に当該フィルタ保持部に保持されたフィルタカートリッジから露出する巻取り軸側連結部が嵌合する駆動軸側連結部を有する駆動モータが取り付けられたフィルタベース部とを備え、前記フィルタ保持部に、前記フィルタカートリッジを弾性的に挟持しながら前記巻取り軸側連結部を前記駆動軸側連結部に対して嵌合方向とは直交する方向に位置決めする第1の位置決め手段を設けると共に、前記フィルタ保持部とフィルタカートリッジに、前記フィルタカートリッジを前記フィルタベース部方向に押さえながら前記巻取り軸側連結部を前記駆動軸側連結部に対して嵌合方向に位置決めする第2の位置決め手段を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に係るフィルタ装置は、請求項1記載のフィルタ装置において、前記第1の位置決め手段は、前記フィルタカートリッジの供給ロールと巻取りロールが収納された円弧状両端部に対応して円弧状に形成された弾性挟持片から成ることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に係るフィルタ装置は、請求項1又は請求項2記載のフィルタ装置において、前記第2の位置決め手段は、前記フィルタ保持部の上端部に形成されて前記フィルタカートリッジの挿入方向への移動に伴ってその上端部を下方に押さえる斜面を有する押さえリブと、前記フィルタカートリッジとフィルタ保持部の双方に形成されて前記フィルタカートリッジの挿入方向への移動に伴って嵌合するリブ及び溝とから成ることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に係るフィルタ装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のフィルタ装置において、前記駆動軸側連結部の外周側所定位置に磁石を備えると共に、この磁石の磁力を検出する磁気センサを備えて、当該磁気センサの出力に基づきフィルタ巻取り時のフィルタ移動量を検出可能に構成したことを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に係るフィルタ装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のフィルタ装置において、前記フィルタカートリッジの着脱によってオン/オフするスイッチを備えて、当該スイッチの出力に基づきフィルタカートリッジの装着の有無を検出可能に構成したことを特徴とするものである。
【0014】
請求項6に係るフィルタ装置は、請求項1ないして請求項5のいずれかに記載のフィルタ装置において、前記フィルタが配される通風口と、この通風口から前記フィルタを介して吸気する冷却ファンとの間に配置されて前記通風口よりも小さな開口部を有する開口壁を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項7に係るフィルタ装置は、請求項6記載のフィルタ装置において、前記通風口及び前記開口部は略矩形形状を成し、前記開口部の縦方向の長さが前記通風口の縦方向の長さよりも小さく形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項8に係るフィルタ装置は、請求項6又は請求項7記載のフィルタ装置において、前記通風口及び前記開口部は略矩形形状を成し、前記開口部の横方向の長さが前記通風口の横方向の長さよりも小さく形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項9に係るフィルタ装置は、請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のフィルタ装置において、前記開口部の大きさを前記通風口の大きさの1/2から1/3に設定したことを特徴とするものである。
【0018】
請求項10に係る投写型映像表示装置は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のフィルタ装置を冷却ファンの吸気口に備えて、光源ランプから照射された光を映像信号に基づき変調し、変調された映像光を拡大投写することを特徴とするものである。
【0019】
請求項11に係る投写型映像表示装置は、請求項10記載の投写型映像表示装置において、吸込口が設けられて前記冷却ファンが取り付けられる取付壁に、当該取付壁の両側を連通すると共に風量センサが取り付けられる調節孔を形成し、この調節孔の大きさを調節して、前記風量センサの検出値と前記冷却ファンの風量とを対応させたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項12に係る投写型映像表示装置は、請求項11記載の投写型映像表示装置において、前記風量センサは、検出対象風が流入する流入口と流出する流出口を有して、前記取付壁の内側に前記流出口が前記調節孔に対応するように取り付けられることを特徴とするものである。
【0021】
請求項13に係る投写型映像表示装置は、請求項10記載の投写型映像表示装置において、前記冷却ファンの吐出口に接続されるダクトに段差を形成すると共に、その段差壁に、当該段差壁の両側を連通すると共に風量センサが取り付けられる調節孔を形成し、この調節孔の大きさを調節して、前記風量センサの検出値と前記冷却ファンの風量とを対応させたことを特徴とするものである。
【0022】
請求項14に係る投写型映像表示装置は、請求項13記載の投写型映像表示装置において、前記風量センサは、検出対象風が流入する流入口と流出する流出口を有して、前記段差壁の外側に前記流出口が前記調節孔に対応するように取り付けられることを特徴とするものである。
【0023】
請求項15に係る投写型映像表示装置は、請求項10ないし請求項14のいずれかに記載の投写型映像表示装置において、前記調節孔の大きさは、前記冷却ファンの駆動電圧が使用電圧範囲の最小値に達するまでは前記風量センサの検出値が0になるように調節されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本願発明の請求項1記載のフィルタ装置によれば、フィルタ保持部に、フィルタカートリッジを弾性的に挟持しながら巻取り軸側連結部を駆動軸側連結部に対して嵌合方向とは直交する方向に位置決めする第1の位置決め手段を設けると共に、フィルタ保持部とフィルタカートリッジに、フィルタカートリッジをフィルタベース部方向に押さえながら巻取り軸側連結部を駆動軸側連結部に対して嵌合方向に位置決めする第2の位置決め手段を設けたことにより、フィルタカートリッジをフィルタ保持部に挿入するだけで、着脱式巻取りフィルタの嵌合(軸位置)精度を安定的かつ高精度に実現できる。また、メンテナンスが簡単になることでコスト削減に効果的である。
【0025】
請求項2記載のフィルタ装置によれば、第1の位置決め手段が、フィルタカートリッジの供給ロールと巻取りロールが収納された円弧状両端部に対応して円弧状に形成された弾性挟持片から成るものであるから、フィルタカートリッジをフィルタ保持部に挿入する際に、ずれたり、振動が起こったりしても、必ず所定の位置にフィルタカートリッジがぴたりと収まる。装着方法は、フィルタカートリッジをフィルタ保持部に平行なままで挿入したり、フィルタカートリッジの片側軸部(片側の円弧状端部)のみを先に、対応する片側の円弧状弾性挟持片に挿入し、そこを基点として他側の円弧状端部を対応する他側の円弧状弾性挟持片に挿入すれば良い。
【0026】
請求項3記載のフィルタ装置によれば、第2の位置決め手段が、フィルタ保持部の上端部に形成されてフィルタカートリッジの挿入方向への移動に伴ってその上端部を下方に押さえる斜面を有する押さえリブと、フィルタカートリッジとフィルタ保持部の双方に形成されてフィルタカートリッジの挿入方向への移動に伴って嵌合するリブ及び溝とから成るものであるから、フィルタカートリッジを挿入すると、その上端部が押さえリブに押し当てられ、フィルタカートリッジは押さえリブの斜面に対して垂直方向および挿入方向の合力である方向に移動することになる。その結果、フィルタカートリッジとフィルタ保持部の溝とリブが合致できる高さになり、適切な嵌合高さを実現することができる。
【0027】
請求項4記載のフィルタ装置によれば、駆動軸側連結部の外周側所定位置に磁石を備えると共に、この磁石の磁力を検出する磁気センサを備えて、当該磁気センサの出力に基づきフィルタ巻取り時のフィルタ移動量を検出可能に構成したことにより、フィルタ巻取り時のフィルタ移動量を正確に制御することができ、巻取りフィルタを過不足なく有効利用することができる。
【0028】
請求項5記載のフィルタ装置によれば、フィルタカートリッジの着脱によってオン/オフするスイッチを備えて、当該スイッチの出力に基づきフィルタカートリッジの装着の有無を検出可能に構成したことにより、フィルタカートリッジを装着し忘れて使用されるのを未然に防ぐことができる。
【0029】
請求項6記載のフィルタ装置によれば、フィルタが配される通風口と、この通風口からフィルタを介して吸気する冷却ファンとの間に配置されて通風口よりも小さな開口部を有する開口壁を備えたことにより、ダストは開口壁の開口部に対応する一部分からフィルタに蓄積していくため、最後までダストが蓄積していない部分が残る。このため、比較的簡単な構成で、次のフィルタ巻取りまでの間、安定した冷却効果を長期間持続させることができ、これによって騒音も小さくすることができ、メンテナンス回数も低減することができる。
【0030】
請求項7記載のフィルタ装置によれば、前記通風口及び開口部は略矩形形状を成し、開口部の縦方向の長さが通風口の縦方向の長さよりも小さく形成されて、フィルタが配される通風口の形状に沿った開口部形状にしているので、ダスト蓄積状態を効率よくコントロールすることができる。
【0031】
また、請求項8記載のフィルタ装置のように、前記通風口及び開口部は略矩形形状を成し、開口部の横方向の長さが通風口の横方向の長さよりも小さく形成されていても、フィルタが配される通風口の形状に沿った開口部形状になるので、上記と同様にダスト蓄積状態を効率よくコントロールすることができる。
【0032】
さらに、請求項9記載のフィルタ装置のように、前記開口部の大きさを通風口の大きさの1/2から1/3に設定すれば、開口部を小さくすることによる吸気抵抗増大の問題もほとんど生じることなく、次のフィルタ巻取りまでの間、安定した冷却効果を従来の略2倍から略3倍の期間持続させることができるようになる。
【0033】
請求項10記載の投写型映像表示装置のように、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のフィルタ装置を冷却ファンの吸気口に備えることにより、上述したような効果が得られる投写型映像表示装置が実現できる。前述したように、高輝度化が進んでいる液晶プロジェクタ等の投写型映像表示装置においては、発熱による光学部品の寿命低下を抑制するために、強い冷却風が得られる冷却ファンを用いなければならない現状があるので、上述したようなフィルタ装置は、このような投写型映像表示装置に適用して特に有効である。
【0034】
また、請求項11記載の投写型映像表示装置によれば、吸込口が設けられて冷却ファンが取り付けられる取付壁に、当該取付壁の両側を連通すると共に風量センサが取り付けられる調節孔を形成し、この調節孔の大きさを調節して、風量センサの検出値と冷却ファンの風量とを対応させるようにしたことにより、冷却ファンを駆動すると、その取付壁の吸気側が吐出側よりも負圧になって調節孔には吐出側から吸気側へと空気の流れが生じ、この空気流を風量センサで検出することで、冷却風の威力に左右されることなく冷却風を安定した状態で検出でき、ダスト付着による検出誤差の抑止効果が得られると共に、限られた使用風速範囲であらゆる冷却ファンに対応できる。
【0035】
さらに、請求項12記載の投写型映像表示装置によれば、請求項11記載の投写型映像表示装置において、風量センサは、検出対象風が流入する流入口と流出する流出口を有して、冷却ファン取付壁の内側に流出口が調節孔に対応するように取り付けられるものであるから、より安定した状態で検出できる。
【0036】
一方、請求項13記載の投写型映像表示装置によれば、冷却ファンの吐出口に接続されるダクトに段差を形成すると共に、その段差壁に、当該段差壁の両側を連通すると共に風量センサが取り付けられる調節孔を形成し、この調節孔の大きさを調節して、風量センサの検出値と冷却ファンの風量とを対応させるようにしたことにより、冷却ファンを駆動してダクトに冷却風が流れると、ダクトの段差壁の内側に乱流が生じて外側よりも負圧になって調節孔には外側から内側へと空気の流れが生じ、この空気流を風量センサで検出することで、前記と同様に、冷却風の威力に左右されることなく冷却風を安定した状態で検出でき、ダスト付着による検出誤差の抑止効果が得られると共に、限られた使用風速範囲であらゆる冷却ファンに対応できる。
【0037】
さらに、請求項14記載の投写型映像表示装置によれば、請求項13記載の投写型映像表示装置において、風量センサは、検出対象風が流入する流入口と流出する流出口を有して、段差壁の外側に流出口が調節孔に対応するように取り付けられるものであるから、より安定した状態で検出できる。
【0038】
また、請求項15記載の投写型映像表示装置によれば、請求項11ないし請求項14記載の投写型映像表示装置において、調節孔の大きさは、冷却ファンの駆動電圧が使用電圧範囲の最小値に達するまでは風量センサの検出値が0になるように調節されるので、風量センサの使用風速範囲をより有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本願発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
図1〜図3は、本願発明に係る投写型映像表示装置の一実施形態である液晶プロジェクタの全体構成を示す斜視図である。
【0041】
この液晶プロジェクタ1の外郭を成す本体ケース2は、上ケース2aと下ケース2bから成り、上ケース2a等を取り外すと図3に示すように内部が現れる。
【0042】
下ケース2bの前面中央部には投写レンズ3が露出している。この投写レンズ3側の上ケース2a上面中央部には、メンテナンス用の開口4が形成され、このメンテナンス用開口4には開閉可能な蓋体5が設けられている。
【0043】
また、前方から見て右側面には冷却用の吸気口6が形成されている。この吸気口6は、スリット状の多数の通気孔が図2に示すように開閉可能な蓋体7に形成されて成り、この蓋体7を開いてフィルタユニット(フィルタ装置)8のフィルタカートリッジ81が着脱可能になっている。
【0044】
さらに、下ケース2bの背面側には、図2に示すように、左側にスリット状の多数の通気孔から成る排気口9が設けられていると共に、右側に音声や映像等の各種入出力ケーブルを接続するための入出力端子群を露出させたAVパネル10が設けられている。
【0045】
本体ケース2の内部には、図3に示すように、前方から見て右側奥部に光源ランプユニット11が配置されていると共に、この光源ランプユニット11から前記投写レンズ3に至る光学系12が配置され、左側面側には電源ユニット13が配置されている。
【0046】
上記光源ランプユニット11の近傍には、当該光源ランプユニット11や上記電源ユニット13及び図示しない液晶パネルや偏光板等の光学部品を冷却した温風を前記排気口9から外部に排出するための排気ファン14が設けられている。
【0047】
一方、上記フィルタユニット8の内側には、ブロアファン(シロッコファンと呼ばれる遠心ファン)から成る冷却ファン15が配置されており、この冷却ファン15からの冷却風がダクトを介して液晶パネルや偏光板等の光学部品に送風されて、これらが冷却されるようになっている。
【0048】
この液晶プロジェクタ1は、上記光源ランプユニット11から照射された光を光学系12を介してRGB(赤色,緑色,青色)の3色に分離すると共に、各色毎の液晶パネルで映像信号に基づき変調し、変調された映像光を合成して、投写レンズ3を介してスクリーン上に拡大投写するものである。
【0049】
図4(a)〜(c)は、本実施形態における上記フィルタユニット8の全体斜視図で、(a)は外側斜め上方から見た斜視図、(b)は外側斜め下方から見た斜視図、(c)は内側斜め上方から見た斜視図である。
【0050】
本実施形態のフィルタユニット8は、着脱式巻取りフィルタのフィルタカートリッジ81と、このフィルタカートリッジ81を着脱可能に保持するフィルタ保持部82と、前述した冷却ファン15や後述する風量センサ等が取り付けられる取付壁83と、この取付壁83や上記フィルタ保持部82の基台となると共に、後述する駆動モータ等が取り付けられるフィルタベース部84とから構成されている。
【0051】
図5(a)〜(c)はフィルタカートリッジ単体の斜視図で、(a)は外側斜め上方から見た斜視図、(b)は内側斜め上方から見た斜視図、(c)は上記(a)の状態での内部構成図である。
【0052】
本実施形態のフィルタカートリッジ81は、図5に示すように、中央部に格子状の通風口81aを有して、その両側に当該通風口81aに配されるフィルタ(図示せず)の供給ロール81bと巻取りロール81cが収納されている。
【0053】
上記供給ロール81bと巻取りロール81cが収納される両端部81d,81eは円弧状に形成され、巻取りロール81cの巻取り軸81fの下端部には、カートリッジケース底面から露出して後述する駆動軸側連結部にすべりなく嵌合する形状の巻取り軸側連結部81gが形成されている。
【0054】
また、図5(a)で右端に位置する円弧状端部(供給ロール81b側)81dの上下方向中央部には、フィルタ保持部82に形成された後述の位置決め用リブが嵌合する位置決め用溝81hが横方向に形成され、図5(b)の右端に位置する円弧状端部(巻取りロール81c側)81eの上下方向中央部には、フィルタ保持部82に形成された後述の位置決め用リブが嵌合する位置決め用溝81iが横方向に形成されている。
【0055】
さらに、フィルタカートリッジ81の下面には、フィルタベース部84に設けられた後述のスイッチに当接するスイッチ用リブ81jが下方に向けて突設されている。
【0056】
図6(a)〜(h)はフィルタ保持部単体の斜視図と上面図で、(a)は外側斜め上方から見た全体斜視図、(b)はその要部拡大図、(c)は全体上面図、(d)はその片側端部の拡大図、(e)は同じく他側端部の拡大図、(f)はその要部が見える全体斜視図、(g)はその要部拡大図、(h)は上端の要部拡大図である。また、図7(a)〜(e)はフィルタカートリッジがフィルタ保持部に装着された状態を示す斜視図と上面図で、(a)は外側斜め上方から見た斜視図、(b)は内側斜め上方から見た斜視図、(c)は全体上面図、(d)はその片側端部の拡大図、(e)は同じく他側端部の拡大図である。
【0057】
本実施形態のフィルタ保持部82は、上述したフィルタカートリッジ81を着脱可能に保持するもので、下方に格子状の開口部82aが形成された開口壁82bと、その両側端部にあって、フィルタカートリッジ81の供給ロール81bと巻取りロール81cが収納された円弧状両端部81d,81eに対応して円弧状に形成された弾性挟持片82d,81eから成る。フィルタカートリッジ81の巻取りロール81cが収納された円弧状端部81eに対応する円弧状弾性挟持片82eの先端部は、外側に曲折されている。上記各弾性挟持片82d,81eにより、フィルタカートリッジ81を弾性的に挟持しながら巻取り軸側連結部81gを後述の駆動軸側連結部に対して嵌合方向とは直交する方向に位置決めする第1の位置決め手段が構成されている。
【0058】
一方、フィルタ保持部82の上端部には、中央部よりやや左側(弾性挟持片82e側)に位置して、フィルタカートリッジ81の挿入方向への移動に伴ってその上端部を下方に押さえる斜面82f(図6(h)及び後述の図10参照)を有する押さえリブ82gが前方に向けて突設されている。さらに、フィルタ保持部82の右端に位置する円弧状弾性挟持片82dの内側の上下方向中央部には、フィルタカートリッジ81の供給ロール81bが収納された円弧状端部81dに形成された上述の位置決め用溝81hと嵌合する位置決め用リブ82hが横方向に突設されている。また、フィルタ保持部82の左端に位置する円弧状弾性挟持片82e側の開口壁面の上下方向中央部には、フィルタカートリッジ81の巻取りロール81cが収納された円弧状端部81eに形成された上述の位置決め用溝81iと嵌合する位置決め用リブ82iが横方向に突設されている。上述した押さえリブ82gと位置決め用溝81h,81i及び位置決め用リブ82h,82iにより、フィルタカートリッジ81をフィルタベース部84方向に押さえながら巻取り軸側連結部81gを後述の駆動軸側連結部に対して嵌合方向に位置決めする第2の位置決め手段が構成されている。なお、フィルタカートリッジ81側に位置決め用リブを設け、フィルタ保持部82側に位置決め用溝を設けても良い。
【0059】
図8(a)〜(d)はフィルタベース部の構成を示す図であり、(a)はフィルタカートリッジが装着されたフィルタ保持部が載ったフィルタベース部を示す正面図、(b)はそのフィルタベース部外装を取り外して示した図、(c)はフィルタベース部に内蔵されたギアベースを斜め上方から見た斜視図、(d)は同じくギアベースを他の斜め上方から見た斜視図である。
【0060】
本実施形態では、フィルタベース部84に内蔵されたギアベース84aに、駆動モータとしてのギアモータ84bが取り付けられ、このギアモータ84bの出力軸に、前述したフィルタカートリッジ81の下面から露出する巻取り軸側連結部81gが嵌合する駆動軸側連結部84gが設けられている。
【0061】
上記駆動軸側連結部84gの外周側所定位置には磁石84hが埋め込み等により取り付けられていると共に、駆動軸側連結部84gの近傍に、上記磁石84hの磁力を検出する磁気センサが搭載された磁気センサ基板84iが取り付けられている。これにより、当該フィルタユニット8が取り付けられた液晶プロジェクタ1の制御部(CPU等)は、上記磁気センサ基板84iに搭載された磁気センサの出力に基づき、フィルタ巻取り時のフィルタ移動量(巻取り軸81fの回転数)を検出可能に構成されている。従って、当該液晶プロジェクタ1の制御部は、ギアモータ84bの駆動を制御してフィルタ巻取り時のフィルタ移動量を正確に制御することができ、巻取りフィルタを過不足なく有効利用することができるようになっている。
【0062】
また、フィルタベース部84に内蔵されたギアベース84aには、フィルタカートリッジ81の着脱時にフィルタカートリッジ81の下面から突出するスイッチ用リブ81jによってオン/オフするスイッチ84jが備えられている。これにより、当該フィルタユニット8が取り付けられた液晶プロジェクタ1の制御部は、上記スイッチ84jの出力に基づきフィルタカートリッジ81の装着の有無を検出可能に構成されている。従って、フィルタカートリッジ81を装着し忘れて使用されるのを未然に防ぐことができるようになっている。
【0063】
図9は、本実施形態におけるフィルタカートリッジの装着方法と第1の位置決め手段の作用を示す模式図である。
【0064】
上述してきたフィルタカートリッジ81の装着方法は、図9(a)〜(c)に模式図で示すように、フィルタカートリッジの片側軸部(片側の円弧状端部81d)のみを先に、対応する片側の円弧状弾性挟持片82dに挿入し、そこを基点として他側の円弧状端部81eを対応する他側の円弧状弾性挟持片82eに挿入すれば良い。この他側の円弧状弾性挟持片82eの先端部は、図9では図示していないが、前述したように外側に曲折しているので容易に挿入することができる。これにより、フィルタカートリッジ81をフィルタ保持部82に挿入する際に、ずれたり、振動が起こったりしても、必ず所定の位置にフィルタカートリッジ81がぴたりと収まる。従って、フィルタカートリッジ81を弾性的に挟持しながら巻取り軸側連結部81gを駆動軸側連結部84gに対して嵌合方向とは直交する方向,すなわち駆動軸側連結部84gの真上に位置決めすることができる。なお、両側の円弧状弾性挟持片82d,82e共に、先端部を外側に曲折しておけば、図9(d)に示すように、フィルタカートリッジ81をフィルタ保持部82に平行なままでも容易に挿入することができる。
【0065】
図10は、上記フィルタカートリッジ装着時の第2の位置決め手段の作用を示す模式図である。
【0066】
図10(a)〜(d)に示すように、フィルタカートリッジ81をフィルタ保持部82に挿入すると、その上端部が押さえリブ82gに押し当てられ、フィルタカートリッジ81は押さえリブ82gの斜面82fに対して垂直方向および挿入方向の合力である方向に移動することになる。その結果、フィルタカートリッジ81の位置決め用溝81h,81iとフィルタ保持部82の位置決め用リブ82h,82iが合致できる高さになり、適切な嵌合高さを実現することができる。従って、フィルタカートリッジ81をフィルタベース部84方向に押さえながら巻取り軸側連結部81gを駆動軸側連結部84gに対して嵌合方向に位置決めすることができる。
【0067】
上述したように、本実施形態のフィルタユニット8によれば、フィルタカートリッジ81をフィルタ保持部82に挿入するだけで、着脱式巻取りフィルタの嵌合(軸位置)精度を安定的かつ高精度に実現できる。また、メンテナンスが簡単になることでコスト削減に効果的である。
【0068】
図11は、本実施形態における上記フィルタユニット8と冷却ファン(ブロアファン)15の配置構成を分かりやすく示した模式図であり、ここでは巻取り機構は省略すると共に、各部を簡略化して示してる。
【0069】
本実施形態のフィルタユニット8には、上述したフィルタカートリッジ81に形成されて巻取り式のフィルタ80が配される通風口81aと、この通風口81aからフィルタ80を介して吸気する冷却ファン15との間に配置されたフィルタ保持部82に形成されて通風口81aよりも小さな開口部82aを有する開口壁82bが備えられている。
【0070】
上記冷却ファン15は、ブロアファン(シロッコファンと呼ばれる遠心ファン)で、その吸入口15aを上記開口壁81側に向けて配置され、吐出口15bには、図示しないダクトが接続されるようになっている。
【0071】
本実施形態では、上記通風口81aと開口壁82bの開口部82aが略矩形形状を成すと共に、開口部82aの縦方向の長さが通風口81aの縦方向の長さよりも小さくなるように形成している。
【0072】
より具体的には、開口壁82bの開口部82aの大きさを通風口81aの大きさの1/2から1/3になるように設定している。このように構成すれば、従来に比べて開口部82aを通る吸気の流速が速くなるだけで、従来と同様な冷却風量を確保でき、開口部82aを小さくすることによる吸気抵抗増大の問題もほとんど生じない。
【0073】
なお、本実施形態では、ブロアファンによる冷却ファン15を用いたが、図12に示すように、軸流ファン(プロペラファン)による冷却ファン16を用いた場合も、フィルタユニット8は上記と同様な構成になる。
【0074】
図13(a)〜(c)は、本実施形態によるフィルタ80のダスト蓄積状態を示す模式図である。
【0075】
本実施形態では、上述したように構成して、意図的にフィルタ80の一部分からダストDを蓄積するように構成しているため、最後まで外気を抵抗なく吸気するダスト未蓄積部分80aが存在することになる。つまり、フィルタ80が完全に目詰まりするまで、このダスト未蓄積部分80aは存在することになり、これにより、比較的簡単な構成で、次のフィルタ巻取りまでの間、長期にわたって冷却効果を維持することができるようになる。また、これによって、メンテナンス回数の低減を実現することができると共に、冷却ファンの回転数の増大も低減させることができるため、結果的に低騒音も実現することができる。
【0076】
すなわち、図14(a)〜(c)に示す従来のフィルタ80のダスト蓄積状態では、ダストDはフィルタ80全面に徐々に蓄積していくため、それに対応した傾斜角度で冷却性能が低下して行くが、図13に示した本実施形態のフィルタ80のダスト蓄積状態においては、最後まで外気を抵抗なく吸気するダスト未蓄積部分80aが存在するので、冷却性能の低下は、従来に比べてかなり緩やかな傾斜角度となる。
【0077】
また、ダスト未蓄積部分80a以外のダスト蓄積部分80bには、蓄積したダストによるフィルタ効果も相乗してダストDが蓄積し続けるので、従来よりも多くのダストDが蓄積するまで使用することができ、この点からも、従来よりも長期にわたって使用することができるようになることが分かる。
【0078】
なお、図11,図12に示したダストの蓄積状態をコントロールする構成例において、開口壁82bの開口部82aの形状には特に指定はなく、ダスト対策用のフィルタ80の一部が隠れる壁であれば良い。しかし、ダスト蓄積状態を効率よくコントロールするには、フィルタ80が配される通風口81aの形状に沿った開口部形状にするのが望ましい。すなわち、図11,図12に示したように、通風口81aと開口壁82bの開口部82aが略矩形形状を成し、開口部82aの縦方向の長さが通風口81aの縦方向の長さよりも小さくなるように形成する。
【0079】
また、通風口及び開口部が略矩形形状を成し、開口部の横方向の長さが通風口の横方向の長さよりも小さく形成するようにしても、上記と同様な作用効果が得られる。
【0080】
さらに、開口壁82bの開口部82aの大きさを通風口81aの大きさの1/2から1/3になるように設定することにより、開口部82aを小さくすることによる吸気抵抗増大の問題もほとんど生じることなく、次のフィルタ巻取りまでの間、安定した冷却効果を従来の略2倍から略3倍の期間持続させることができるようになる。
【0081】
図15は、本実施形態における上記フィルタユニット8と冷却ファン(ブロアファン)15を内側から見た斜視図、図16はその冷却ファンと風量センサの取付前の斜視図、図17は図16の要部拡大図である。
【0082】
本実施形態のフィルタユニット8には、吸込口83aが設けられて冷却ファン15が取り付けられる取付壁83に、当該取付壁83の両側を連通すると共に風量センサ18が取り付けられる調節孔83bを形成している。そして、上記調節孔83bの大きさを調節して、風量センサ18の検出値と冷却ファン15の風量とを対応させるようにしている。
【0083】
上記冷却ファン15は、その吸入口15aを上記吸込口83aに向けて取付壁83に取り付けられ、吐出口15bには、図示しないダクトが接続されるようになっている。
【0084】
風量センサ18は、図18〜図20に模式図で示すように、矢印で示す検出対象風が流入する所定面積の流入口18aと、この流入口18aから徐々に面積が大きくなって反対面に開口する流出口18bを有して、上記取付壁83の内側に流出口18bが調節孔83bに対応するように取り付けられる。
【0085】
具体的には、図15〜図17に示すように、風量センサ18の上辺と右辺を取付壁83に形成された鉤形の取付枠83cに合わせて、図示しないビス等を風量センサ18の左下角部に形成された取付孔18cと取付壁83側に形成された取付孔83dに通して取り付けられる。
【0086】
上記風量センサ18の流入口18aと流出口18b間は空洞で、その内面に、後述するような原理や方式で作動するセンサ素子が取り付けられている。
【0087】
上記調節孔83bの大きさは、冷却ファン15の駆動電圧が使用電圧範囲の最小値に達するまでは風量センサ18の検出値が0になるように調節される。
【0088】
具体的には、上記風量センサ18の使用風速範囲が0〜3.0m/sで、冷却ファン15の使用電圧範囲が5.0〜13.8V(風速にして約7.5〜約15.5m/s)とすると、冷却ファン15の駆動電圧が5.0Vに達するまでは風量センサ18の検出値が0になるように調節孔83bの大きさを調節する。この場合、調節孔83bは直径が約1.5mm程度の細孔になり、これで、風量センサ18の使用風速範囲(0〜3.0m/s)内で、冷却ファン15の使用電圧範囲(5.0〜13.8V)での風速(約7.5〜約15.5m/s)を検出できるようになる。なお、風量センサ18の流入口18aは所定の大きさ(面積)であるので、風速が検出できれば、この風速と流入口の面積とから風量を検出することができるが、流入口18aは常に一定の大きさ(面積)で風速と風量は一対一に対応するので、風速を電圧として検出すれば、検出した電圧に基づき制御対象を制御することができる。
【0089】
上記風量センサ18としては、例えばオムロン社製のMEMS(Micro-Electro-Mechanical -Systems)フローセンサ素子を用いることができる。このセンサ素子は、シリコン基台に、上部絶縁薄膜と下部絶縁薄膜を形成し、その中心にヒータとサーモパイルを、その外側に周囲温度センサを薄膜形成したものである。流れのない状態では、ヒータを中心とした温度分布が左右対称となり、流れを受けた状態では、ヒータの風上側の温度が低く、風下側の温度が高くなり、温度平衡状態が崩れる。この温度差をサーモパイルの起電力差としてセンシングすることで質量流量に応じた流速を計測することができる。
【0090】
以上の構成において、フィルタカートリッジ81が装着された状態(図8のスイッチ84jの出力がオン状態)で、冷却ファン15が駆動されると、その取付壁83の吸気側(外側)が吐出側(内側)よりも負圧になって、調節孔83bには吐出側(内側)から吸気側(外側)へと空気の流れが生じ、この空気流を上述したような風量センサ18で検出する。このように、冷却ファン15の駆動によって生じる冷却風そのものの風速(例えば約7.5〜約15.5m/s)は直接検出せず、取付壁83に形成した調節孔83bを流れる風速(0〜3.0m/s)を検出して、間接的に冷却風の風速を検出するようにしているので、冷却風の威力に左右されることなく冷却風を安定した状態で検出でき、ダスト付着による検出誤差の抑止効果が得られると共に、限られた使用風速範囲であらゆる冷却ファンに対応することができる。
【0091】
また、調節孔83bを適切な大きさにするだけで風量センサ18の使用風速範囲内に収めることができ、検証回数を低減させることによるコスト削減効果が期待できる。すなわち、従来は冷却ファンによる冷却風そのものを直接検出対象にしていたので、風量センサの使用風速範囲内に収めるのに膨大な時間が必要であったが、本願発明では、それを低減させることができる。例えば、プロジェクタは使用環境によって冷却ファンの回転数を制御するため、常に風速が変化している。そのため、冷却風そのものを検出対象とすると、風量センサの使用風速範囲内に収まっている場所を探さなければならないことや、冷却風そのものが検出対象であるため、成形品の誤差によって風速が容易に変化してしまうことに対策する必要がある。この結果、検証パラメータ(検証項目)が膨大になってしまう。これに対して、本願発明では、冷却風そのものを直接検出対象としていないため、成形品の成形誤差はほぼ影響せず、また、取り付け位置においても、冷却ファンの回転数が小さい時に、風速を検知しにくいような大きさの調節孔に設定すればよいだけなので、検証回数を低減させることができる。つまり、この低減によって検証時間を削減できるため、結果的にはコスト削減につながる。
【0092】
また、風量センサ18は、検出対象風が流入する流入口18aと流出する流出口18bを有して、冷却ファン15の取付壁83の内側に流出口18bが調節孔83bに対応するように取り付けられるものであるから、外気等の影響を受けることなく、より安定した状態で検出できる。
【0093】
さらに、調節孔83bの大きさは、冷却ファン15の駆動電圧が使用電圧範囲の最小値に達するまでは風量センサ18の検出値が0になるように調節されるので、風量センサ18の使用風速範囲をより有効に利用することができる。
【0094】
以上のようにして風量センサ18で検出した検出値に基づき、冷却ファン15が制御されると共に、冷却ファン15の駆動電圧を例えば使用電圧範囲の最大にしても風量センサ18の検出値が所定値以下の場合は、フィルタ80がダストで目詰まりしていると判断して、図8に示したギアモータ84bが駆動され、磁気センサ基板84iに搭載された磁気センサの出力に基づき、フィルタカートリッジ81の巻取りロール81cが所定数回転して、供給ロール81bから自動的に目詰まりしていないフィルタ面が繰り出される。
【0095】
図21は、本願発明の他の実施形態を示す模式図であり、前記実施形態と同一又は相当部分には同一符号を用いている。
【0096】
本実施形態においては、前述した冷却ファン15の吐出口15bに接続されるダクト20に段差21を形成すると共に、その段差壁22に、当該段差壁22の両側を連通すると共に風量センサ18が取り付けられる調節孔22aを形成したものである。そして、前記実施形態と同様に、上記調節孔22aの大きさを調節して、風量センサ18の検出値と前記冷却ファン15の風量とを対応させたものである。
【0097】
また、風量センサ18は、前記実施形態と同様に検出対象風が流入する流入口18aと流出する流出口18bを有して、段差壁22の外側に流出口18bが調節孔22aに対応するように取り付けられる。
【0098】
さらに、調節孔22aの大きさは、前記実施形態と同様に冷却ファン15の駆動電圧が使用電圧範囲の最小値に達するまでは風量センサ18の検出値が0になるように調節される。
【0099】
以上の構成において、フィルタカートリッジ81が装着された状態(図8のスイッチ84jの出力がオン状態)で、前記冷却ファン15が駆動されダクト20に冷却風が流れると、ダクト20の段差壁22の内側に乱流Rが生じて外側よりも負圧になって、調節孔22には外側から内側へと空気の流れが生じ、この空気流を風量センサ18で検出することで、前記実施形態と同様に、冷却風の威力に左右されることなく冷却風を安定した状態で検出でき、ダスト付着による検出誤差の抑止効果が得られると共に、限られた使用風速範囲であらゆる冷却ファンに対応できる。
【0100】
また、風量センサ18は、前記実施形態と同様に検出対象風が流入する流入口18aと流出する流出口18bを有して、段差壁22の外側に流出口18bが調節孔22aに対応するように取り付けられるものであるから、ダクト20内の冷却風の影響を受けずに、より安定した状態で検出できる。
【0101】
さらに、調節孔22aの大きさは、前記実施形態と同様に冷却ファン15の駆動電圧が使用電圧範囲の最小値に達するまでは風量センサ18の検出値が0になるように調節されるので、風量センサ18の使用風速範囲をより有効に利用することができる。
【0102】
なお、図21では、冷却風の流れる方向にダクト20の径が小さくなる段差21を形成したが、逆に冷却風の流れる方向にダクト20の径が大きくなる段差を設けても良い。すなわち、図10の冷却風の流れの向きを逆にしたような状態の段差であっても良い。
【0103】
また、上記各実施形態では、投写型映像表示装置として光変調素子に液晶パネルを用いた液晶プロジェクタを示したが、他の映像光生成系を備える投写型映像表示装置においても本願発明を適用することができる。例えば、DLP(Digital Light Processing;テキサス・インスツルメンツ(TI)社の登録商標)方式のプロジェクタにおいても本願発明を適用することができる。
【0104】
また、高輝度化が進んでいる液晶プロジェクタ等の投写型映像表示装置においては、前述したように、発熱による光学部品の寿命低下を抑制するために、強い冷却風が得られる冷却ファンを用いなければならない現状があるので、上述したようなフィルタユニット8は、このような投写型映像表示装置に適用して特に有効であるが、冷却とダスト対策を両立する必要性がある各種の電子機器等に適用しても、上述したとほぼ同様の作用効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本願発明に係る投写型映像表示装置の一実施形態である液晶プロジェクタの全体構成を示す斜視図で、前方斜め上から見た外観斜視図。
【図2】同じく、吸気口の蓋体を開放した状態を後方斜め上から見た斜視図。
【図3】同じく、上ケース等を取り外して内部が見えるようにした状態を前方斜め上から見た斜視図。
【図4】本実施形態におけるフィルタユニットの全体斜視図で、(a)は外側斜め上方から見た斜視図、(b)は外側斜め下方から見た斜視図、(c)は内側斜め上方から見た斜視図。
【図5】フィルタカートリッジ単体の斜視図で、(a)は外側斜め上方から見た斜視図、(b)は内側斜め上方から見た斜視図、(c)は上記(a)の状態での内部構成図。
【図6】フィルタ保持部単体の斜視図と上面図で、(a)は外側斜め上方から見た全体斜視図、(b)はその要部拡大図、(c)は全体上面図、(d)はその片側端部の拡大図、(e)は同じく他側端部の拡大図、(f)はその要部が見える全体斜視図、(g)はその要部拡大図、(h)は上端の要部拡大図。
【図7】フィルタカートリッジがフィルタ保持部に装着された状態を示す斜視図と上面図で、(a)は外側斜め上方から見た斜視図、(b)は内側斜め上方から見た斜視図、(c)は全体上面図、(d)はその片側端部の拡大図、(e)は同じく他側端部の拡大図。
【図8】フィルタベース部の構成を示す図であり、(a)はフィルタカートリッジが装着されたフィルタ保持部が載ったフィルタベース部を示す正面図、(b)はそのフィルタベース部外装を取り外して示した図、(c)はフィルタベース部に内蔵されたギアベースを斜め上方から見た斜視図、(d)は同じくギアベースを他の斜め上方から見た斜視図。
【図9】本実施形態におけるフィルタカートリッジの装着方法と第1の位置決め手段の作用を示す模式図。
【図10】同じく、第2の位置決め手段の作用を示す模式図。
【図11】本実施形態におけるフィルタユニットと冷却ファン(ブロアファン)の配置構成を分かりやすく示した模式図。
【図12】同じく、冷却ファンに軸流ファンを用いた場合の模式図。
【図13】本実施形態によるフィルタのダスト蓄積状態を示す模式図。
【図14】従来のフィルタのダスト蓄積状態を示す模式図。
【図15】本実施形態におけるフィルタユニットと冷却ファン(ブロアファン)を内側から見た斜視図。
【図16】同じく、その冷却ファンと風量センサの取付前の斜視図。
【図17】図16の要部拡大図。
【図18】風量センサを模式的に示した斜視図。
【図19】同じく、その正面図と側面図と背面図。
【図20】同じく、風量センサと取付壁の調節孔を模式的に示す斜視図。
【図21】本願発明の他の実施形態を示す模式図。
【符号の説明】
【0106】
1 液晶プロジェクタ
2 本体ケース
3 投写レンズ
6 吸気口
8 フィルタユニット
80 フィルタ
80a ダスト未蓄積部分
80b ダスト蓄積部分
D ダスト
81 フィルタカートリッジ
81a 通風口
81b 供給ロール
81c 巻取りロール
81d,81e 円弧状端部
81f 巻取り軸
81g 巻取り軸側連結部
81h,81i 位置決め用溝
81j スイッチ用リブ
82 フィルタ保持部
82a 開口部
82b 開口壁
82d,82e 弾性挟持片
82f 斜面
82g 押さえリブ
82h,82i 位置決め用リブ
83 取付壁
83a 吸込口
83b 調節孔
83c 取付枠
83d 取付孔
84 フィルタベース部
84a ギアベース
84b ギアモータ
84g 駆動軸側連結部
84h 磁石
84i 磁気センサ基板
84j スイッチ
9 排気口
11 光源ランプユニット
12 光学系
13 電源ユニット
14 排気ファン
15 冷却ファン(ブロアファン)
16 冷却ファン(軸流ファン)
18 風量センサ
18a 流入口
18b 流出口
18c 取付孔
20 ダクト
21 段差
22 段差壁
22a 調節孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風口を有して当該通風口に配されるフィルタの供給ロール及び巻取りロールが収納されたフィルタカートリッジと、このフィルタカートリッジを着脱可能に保持するフィルタ保持部と、このフィルタ保持部が取り付けられると共に当該フィルタ保持部に保持されたフィルタカートリッジから露出する巻取り軸側連結部が嵌合する駆動軸側連結部を有する駆動モータが取り付けられたフィルタベース部とを備え、
前記フィルタ保持部に、前記フィルタカートリッジを弾性的に挟持しながら前記巻取り軸側連結部を前記駆動軸側連結部に対して嵌合方向とは直交する方向に位置決めする第1の位置決め手段を設けると共に、前記フィルタ保持部とフィルタカートリッジに、前記フィルタカートリッジを前記フィルタベース部方向に押さえながら前記巻取り軸側連結部を前記駆動軸側連結部に対して嵌合方向に位置決めする第2の位置決め手段を設けたことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記第1の位置決め手段は、前記フィルタカートリッジの供給ロールと巻取りロールが収納された円弧状両端部に対応して円弧状に形成された弾性挟持片から成ることを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記第2の位置決め手段は、前記フィルタ保持部の上端部に形成されて前記フィルタカートリッジの挿入方向への移動に伴ってその上端部を下方に押さえる斜面を有する押さえリブと、前記フィルタカートリッジとフィルタ保持部の双方に形成されて前記フィルタカートリッジの挿入方向への移動に伴って嵌合するリブ及び溝とから成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記駆動軸側連結部の外周側所定位置に磁石を備えると共に、この磁石の磁力を検出する磁気センサを備えて、当該磁気センサの出力に基づきフィルタ巻取り時のフィルタ移動量を検出可能に構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記フィルタカートリッジの着脱によってオン/オフするスイッチを備えて、当該スイッチの出力に基づきフィルタカートリッジの装着の有無を検出可能に構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記フィルタが配される通風口と、この通風口から前記フィルタを介して吸気する冷却ファンとの間に配置されて前記通風口よりも小さな開口部を有する開口壁を備えたことを特徴とする請求項1ないして請求項5のいずれかに記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記通風口及び前記開口部は略矩形形状を成し、前記開口部の縦方向の長さが前記通風口の縦方向の長さよりも小さく形成されていることを特徴とする請求項6記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記通風口及び前記開口部は略矩形形状を成し、前記開口部の横方向の長さが前記通風口の横方向の長さよりも小さく形成されていることを特徴とする請求項6又は請求項7記載のフィルタ装置。
【請求項9】
前記開口部の大きさを前記通風口の大きさの1/2から1/3に設定したことを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のフィルタ装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のフィルタ装置を冷却ファンの吸気口に備えて、光源ランプから照射された光を映像信号に基づき変調し、変調された映像光を拡大投写することを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項11】
吸込口が設けられて前記冷却ファンが取り付けられる取付壁に、当該取付壁の両側を連通すると共に風量センサが取り付けられる調節孔を形成し、この調節孔の大きさを調節して、前記風量センサの検出値と前記冷却ファンの風量とを対応させたことを特徴とする請求項10記載の投写型映像表示装置。
【請求項12】
前記風量センサは、検出対象風が流入する流入口と流出する流出口を有して、前記取付壁の内側に前記流出口が前記調節孔に対応するように取り付けられることを特徴とする請求項11記載の投写型映像表示装置。
【請求項13】
前記冷却ファンの吐出口に接続されるダクトに段差を形成すると共に、その段差壁に、当該段差壁の両側を連通すると共に風量センサが取り付けられる調節孔を形成し、この調節孔の大きさを調節して、前記風量センサの検出値と前記冷却ファンの風量とを対応させたことを特徴とする請求項10記載の投写型映像表示装置。
【請求項14】
前記風量センサは、検出対象風が流入する流入口と流出する流出口を有して、前記段差壁の外側に前記流出口が前記調節孔に対応するように取り付けられることを特徴とする請求項13記載の投写型映像表示装置。
【請求項15】
前記調節孔の大きさは、前記冷却ファンの駆動電圧が使用電圧範囲の最小値に達するまでは前記風量センサの検出値が0になるように調節されることを特徴とする請求項10ないし請求項14のいずれかに記載の投写型映像表示装置。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図21】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−309913(P2008−309913A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155970(P2007−155970)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】