説明

フィルタ装置

【課題】低消費電流、高速温度補正、小型回路を実現するバラツキ補正可能なフィルタ装置を提供する。
【解決手段】基準信号発生器の信号を基準フィルタ及び位相比較器に接続し、その結果をデコード、レジスタに格納し調整フィルタをそのレジスタデータで実施する。また温度検出器により調整初期の温度と再調整時の温度変化量をデコードし、初期のレジスタデータに温度変化の補正を高速で行う事で、低消費、高性能、小型のフィルタ装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に携帯電話の受信IQ復調回路に用いられ、半導体装置に内蔵されるバラツキ補正の可能なフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機においては小型化への要求が強く、フィルタ装置は半導体装置に内蔵化されるようになってきている一方で、通話待ち受け時間の長時間化も要望され、受信回路の低消費電力化が強く望まれている。
【0003】
ここで図7を用いて従来のフィルタバラツキ調整回路と図8の低消費電流を実現したフィルタ装置を説明する。
【0004】
図7において基準信号発生器42から出た出力信号を基準フィルタ43を通した信号と基準信号を位相比較器44に入力し、その位相誤差出力を誤差電圧発生器45に入力しその結果を基準フィルタ43と調整フィルタ46に入力する事で調整フィルタ46のカットオフ周波数を常時調整するフィルタ装置である。このフィルタ装置ではバラツキ及び温度変化等の変動を常時検出、制御させる事ができる。しかしながらこの調整回路では常時全回路が動作している為、消費電流が多いという欠点を有する。
【0005】
図8はこの問題を解決する為に基準信号を分周した信号を基準フィルタと位相比較器に入力しその位相差をカウンターで演算しデコードした結果をレジスタで保持しておき、その結果を調整フィルタに使用する装置で、レジスタと調整フィルタ以外の回路をあるタイミングで動作させたあと回路を止めることを可能にする事で消費電力化を実現している。
【0006】
しかしながら、図8の発明は一度フィルタ調整をしたあとはその位相比較データを保持しつづけ、低消費電流を実現するものであるが、その後の温度変化に対しては補正が出来ないという短所を有している。またそれを補う為には調整精度を上げる事で対策可能であるが、一例としてフィルタ調整用の抵抗を多くすることで温度変化した際の変動量を抑圧する事が可能になるが、それを実現させる為には多くの回路電流が必要になることや、回路規模も大きくなり低消費、小型という市場要望とは逆行してしまう。また温度補正を行う手段としてこの発明回路を間欠的に動作させ補正するという手段も考えられるが、本発明では基準フィルタの位相誤差を検出させるため、特にフィルタの動作安定時間を考えると短時間での調整は不可能である。
【0007】
なお、この出願に関する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004−172911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前述の発明の欠点である、温度補正を小規模の回路追加で実現し電流増加も抑圧する事を実現するものである。また短時間に温度補正を行う事が可能であるため特にワイドバンドCDMAのような常時受信のシステムにおいても受信特性を劣化させず受信時間中にもフィルタ特性の変動補正が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決する為に、本発明では温度検出器とそのデータをデコードするデコーダとそのデータを保管するレジスタとそのレジスタのデータと再検出時にのデータを比較する比較デコーダを従来の発明装置に接続する事で再調整時の温度検出データを初期温度検出データと比較し、そのシフト量をデジタルデータとして従来発明装置のレジスタデータを補正する。
【発明の効果】
【0010】
本発明を実施する事で回路規模及び消費電流を大きく増加させることなく従来発明で問題のある温度変化に対して補正が出来る。また連続受信を行うワイドバンドCDMAにおいても通話中での温度補正も実現できセット性能の向上に大きく貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係るフィルタ装置の一構成例を示す回路ブロック図である。図1において、1は基準信号発生源、2は分周器である。3は基準フィルタで図5に示すような2次フィルタとして構成される。4は位相検出器で5はコンパレータ、6はカウンター、7はデコーダ、8はレジスタ、9はフィルタ制御線、15は調整フィルタである。調整フィルタ15の一構成例として図6を示す。このフィルタは抵抗31、抵抗32、n番目の抵抗33とスイッチ34及び抵抗35、抵抗36およびn番目の抵抗37とスイッチ38と容量40、容量39、オペアンプ41で構成される。この調整はCR積の定数をスイッチで選択して切り替えるため前記調整は容量の切替でも実現可能である。また本発明は温度検出器10、コンパレータ11、デコーダ12、レジスタ13、比較デコーダ14、スイッチ16および17(A)、17(B)を有する。温度検出器10の一構成例として図3に示す。本例は電流源18とダイオード19で構成され、ダイオードの温度特性を活用するものである。
【0013】
この温度検出器から検出された情報をコンパレータ11で動作時の温度を検出しデコーダ12で温度状態をデコードする。その結果をスイッチ16及びスイッチ17(A),17(B)を選択してレジスタ13及び比較デコーダ14に入力しその結果でレジスタ8を再設定するという動作を行う。ここで図4にコンパレータ11の一構成例を示す。 23、24は電源、25はn番目の電源、20,21はヒステリシスを有するコンパレータ、22はn番目のヒステリシスを有するコンパレータである。
【0014】
次に、以上のように構成された本実施形態のフィルタ構成の動作について図2の回路動作タイミングチャートとともに説明する。
【0015】
タイミングチャートAの期間において、PONの立ち上がりと同時に、S1で制御されるスイッチ16が接続されS2で制御されるスイッチ17(A)、スイッチ17(B)はOFFの状態で本実施形態のフィルタは全回路動作を行う。基準信号発生源1が発生する基準信号を分周器2に入力しその分周後の信号を基準フィルタ3と位相比較器4に入力しその位相差を検出しコンパレータ5に入力する。その位相差を基準信号の同期で動作するカウンター6に入力し位相差をデジタル信号に変換しそのデータをデコーダ7に入力しそのデコードデータをレジスタ8に入力し、その結果フィルタ制御線9を調整フィルタ15へ入力する。そのデータで図6の一例で示される抵抗31、抵抗32、n番目の抵抗33や抵抗35、36、n番目の抵抗37を調整しCRのバラツキ補正を実施する。
【0016】
またこの期間、温度検出器10で検出された検出結果を図4で一例を示すコンパレータ11に入力しデコーダ12に入力、デジタル信号にされた結果はレジスタ13に格納されている。
【0017】
次にタイミングチャートBの期間において温度検出器10、レジスタ13、レジスタ8、調整フィルタ15以外の回路電源をすべてOFFにして低消費化を行う。この期間はレジスタ8に格納されたデータで調整フィルタを制御することでフィルタ特性は維持される。
【0018】
次にタイミングチャートCの期間において、コンパレータ11、デコーダ12、制御信号S2で制御されるスイッチ17(A),17(B)を動作させる。このときタイミングチャートA期間でレジスタ13に格納されたデータとデコーダ12でデコードされたデータを比較デコーダ14で温度差を比較し、その結果をレジスタ8に入力しタイミングチャートAの期間でレジスタ8に格納されていたデータを補正する事で温度調整を行う。この制御はタイミングチャートS2のように間欠的に行う事で回路動作をON/OFFさせる事ができ低消費化を実現する事が出来る。
【0019】
また本動作は短時間で動作可能となり、基準フィルタ3を再起動させて調整する時間の長さのために実現できない連続受信動作中の温度補正も可能となり、低消費、高性能、小型回路を実現可能な発明である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば主フィルタのカットオフ周波数を選択する為の制御信号の値をレジスタに保持する事で、基準フィルタ及び位相比較器の動作を停止させる事ができる事。また温度検出器を有する事で任意の時間における温度補正も小規模の回路構成でバラツキ補正機能付きのフィルタ装置を提供させる事が可能になる。また温度差の検出動作が速くできることより今後主流になるワイドバンドCDMAのような連続受信が必要なシステムでもフィルタ調整が可能となり、フィルタの周囲変化に対する変動を抑圧する事ができるという格別な効果をもつ。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るフィルタ装置の位置構成例を示す回路ブロック図
【図2】図1の回路ブロックを動作させるタイミングを示すタイミングチャート
【図3】図1の温度検出器の一実施例を示す図
【図4】図1のコンパレータ11の一実施例を示す図
【図5】図1の基準フィルタの一実施例を示す図
【図6】図1の調整フィルタの一実施例を示す図
【図7】従来のバラツキ補正の可能なフィルタ装置の構成例を示すブロック図
【図8】従来の低消費化を実現したバラツキ補正可能なフィルタ装置の構成例を示すブロック図
【符号の説明】
【0022】
1、42、47 基準信号発生源
2、48 分周器
3、43、49 基準フィルタ
4 位相検出器
5 第1のコンパレータ
6、52 カウンタ
7 第1のデコーダ
8 第1のレジスタ
9 フィルタ制御線
10 温度検出器
11 第2のコンパレータ
12 第2のデコーダ
13 第2のレジスタ
14 比較デコーダ
15、46 調整フィルタ
16 第1のスイッチ
17(A) 第2のスイッチ
17(B) 第3のスイッチ
18 電流源
19 ダイオード
20、21、22、51 コンパレータ
23、24、25 電源
26、28、31、32、33、35,36,37 抵抗
27、29、39、40 容量
30、41 オペアンプ
44 位相比較器
45 誤差電圧発生器
50 掛け算器
53 デコーダ
54 レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号を発生する基準信号発生源と、前述基準信号を分周して分周信号を出力する分周器と前述分周信号を入力信号とする基準フィルタと、前述基準フィルタの出力信号と前述分周器からの分周信号とを入力信号として、前述基準フィルタによる位相差に対応したデューティ比を有する信号を出力する位相差検出器と前述位相比較器の出力を入力信号とする第1コンパレータと前述第1コンパレータ出力信号と前述基準信号を入力信号として、前述基準フィルタによる位相差に対応したデューティー比をカウントするカウンターと前述カウンターの出力信号からバラツキ補正のための制御信号をデコードする第1デコーダと、温度検出をする温度検出器と前述温度検出器の結果を入力信号とする第2コンパレータと前述第2コンパレータの結果をデコードする第2デコーダと前述第2デコーダの出力を切り替える第1スイッチ、第2スイッチと前述第1スイッチの出力を保持かつ出力する第2のレジスタと前述第2スイッチの出力と前述第2レジスタ出力を入力とし比較しデコードする比較デコーダとその出力に接続される第3のスイッチとその第3のスイッチの出力と第1デコーダの出力を入力信号とし保持かつ出力する第1レジスタと前述第1レジスタから出力された制御信号に応じてカットオフ周波数を選択する信号処理を行う主フィルタとを備えた事を特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記、請求項1のフィルタ装置をある時間で回路全体を動作させたあと、基準信号発生源、基準フィルタ、位相差検出器、第1コンパレータ、カウンター、第1デコーダ、第2コンパレータ、第2デコーダ、比較デコーダの動作を止めることを特徴とした請求項1のフィルタ装置。
【請求項3】
前記、請求項1のフィルタ装置の第2コンパレータ、第2デコーダ、第1スイッチをある時間動作させ第2のレジスタにデータを格納し、その後のある時間で第2コンパレータ、第2デコーダ、第2、第3のスイッチを動作させ第2レジスタに格納されたデータと第2デコーダの結果を比較しデコードする比較デコーダの結果を第1レジスタに書き込み、再度フィルタを調整する事を特徴とした請求項1のフィルタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate