説明

フィルタ装置

本発明は、フィルタハウジング(12)に収容されたフィルタエレメント(10)を用いて流体流から汚染物質を分離するフィルタ装置に関する。請求項1の特徴項に従って、濾過すべき流体流が旋回流としてフィルタエレメント(10)の周りに少なくとも部分的に案内されるように、フィルタハウジング(12)が旋回空間(14)を備えていることによって、濾過すべき流体の運動方向がフィルタハウジングの旋回空間によって何度も転換されることによりサイクロンの特性が実際の濾過動作のために利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタハウジングに収容されたフィルタエレメントを用いて流体流から汚染物質を分離するフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような流体圧フィルタおよびフィルタ装置は、複数の実施態様(特許文献1)で市場において自由に入手可能である。吸引式フィルタ装置と並んで、戻り流フィルタ、案内フィルタ、または通気フィルタとしてのフィルタ装置が公知である。一般名称として、これらのフィルタ装置は、しばしば流体圧フィルタと呼ばれている。基本的に、このような流体圧フィルタは固体物質を分離するための装置であり、この際、液体から固体物質を分離するのに、またはガスから塵埃を分離するために、繊維質の、粒状の、または格子状のフィルタ媒体が用いられている。
【0003】
さらに、従来技術(特許文献2)の別の分離装置として、いわゆるサイクロンが公知であり、このサイクロンは、遠心力の作用により、固体物質の微粒子が、専門用語で流体に含められるガスまたは液体から分離される装置である。前述の公知の方策では、サイクロンは、駆動装置空間(クランク室)から内燃機関の吸気管に通じる通気経路に配置され、この結果、空気によって一緒に運ばれたエアロゾルがサイクロンで分離され、それを、出口を介して内燃機関の油ために供給することができる。極端な運転条件下でも、油ためからサイクロンへの意図しないオイル流入を阻止できるようにするために、フロート弁の形態の逆流防止部が出口側に配置されている。
【0004】
このようなサイクロン分離技術も、フィルタ装置と組み合わせて既に用いられている。すなわち、特許文献3には、特に排気ガスからなるエアロゾルの形態のガスから液体粒子を分離する方法が開示されており、この方法では、ガスが最初に遠心分離され、次に濾過されている。次に、濾過ガスの一部は、サイクロンにさらに送られ、ガス流と一緒に運ばれた液体粒子は、その運動方向の頻繁な転換(旋回流)によって液滴にまとめられ、液滴は、その自重によって分離装置から流出する。
【0005】
さらに、特許文献4によって、主に円錐状に延びている分離ハウジングを有するサイクロン分離機が公知であり、このサイクロン分離機では、分離ハウジングの壁部の後に続いて、旋回空間を形成しつつ、相応に離れて、作り付けの規則的な案内体が配置され、この案内体によって、粒子で汚染され接線方向に供給される流体流を、旋回空間において粒子を分離するために旋回するように案内するのを改善することができる。この公知の方策では、フィルタエレメントを用いた濾過を行うことはできない。
【0006】
従来技術(特許文献5)において、さらなる粒子分離のために、サイクロン分離機の副次的な流れにおいて、フィルタエレメントが、流体流の方向に沿った別個のフィルタハウジングに収容されている方策も公知である。このような公知の方策の濾過経路には、まだ満たされていない要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第19711589号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4214324号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第33735106号明細書
【特許文献4】米国特許第6129775号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0659462号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術を出発点として、本発明の課題は、改良された濾過特性を有するフィルタ装置を提供することである。この課題は、全体として、請求項1の特徴を有するフィルタ装置によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の特徴項のように、濾過すべき流体流が旋回流としてフィルタエレメントの周りに少なくとも部分的に案内されるように、フィルタハウジングが旋回空間を備えることによって、濾過すべき流体の運動方向がフィルタハウジングの旋回空間により何度も転換されることによってサイクロンの特性が実際の濾過動作のために利用され、この際、これに伴って生じる旋回流を、フィルタエレメントのフィルタ表面全体に沿って生じさせることができ、その結果、濾過すべき流体流れが多量に、かつ高いエネルギを伴ってフィルタエレメントを通過し、同時に汚染物質が捕えられ、または分離される。旋回空間の作用によって引き起こされるフィルタハウジングにおける適切な旋回流によって、層状の螺旋状の流体流が生じ、この流体流によって、フィルタエレメントの、他の場合の通常の半径方向の流れと対照的に、フィルタエレメントの長手軸線に対し横方向に、濾過性能および濾過結果が改善される。このようにして、フィルタエレメントによる、濾過すべき流体の時間的な送り出し速度も増やすことができる。
【0010】
本発明によるフィルタ装置の好ましい一実施態様では、旋回空間は、フィルタハウジングの円錐状の拡張部によってフィルタハウジングのハウジング端部の方向に形成され、この場合、未濾過媒体用の流入口は、フィルタエレメントの長手軸線に対し偏心してフィルタハウジングを通って延びている。このような偏心した供給によって、フィルタハウジングにおける旋回空間の作用によるサイクロン状の流れの生成が改善される。
【0011】
旋回空間の領域のフィルタハウジングの円錐状の拡張部は、円筒状の、または円錐状の僅かな勾配を有するハウジング部に移行しているのが好ましく、その結果、フィルタエレメントの外側とフィルタハウジングの内側との間で壁部の間隔が狭くなることによって、旋回状の流体流が部分的に弱められ、この結果、流体流を圧縮するという意味での一種の強制案内が行われ、このようにして、汚れた流体のフィルタエレメントへの導入量が増やされる。
【0012】
本発明によるフィルタ装置の別の好ましい実施形態様では、上部領域での流体流の均一化に同様に寄与し、流体流内の超臨界乱れを回避するのに役立つ収集室が、フィルタエレメントの自由端部上に予め設定可能な軸方向間隔で隣接しており、さもなければフィルタ装置の濾過能力に悪影響が生じる場合がある。
【0013】
フィルタハウジングの記載した構造に対しては、円錐状に延びるフィルタエレメントを用いるのが特に有利であることが証明されている。さらに、フィルタエレメントとして、いわゆる間隙型のろ過部の管状のフィルタエレメントを用いるのが特に有利であることが証明されている。
【0014】
以下に、本発明によるフィルタ装置を実施形態に基づいて詳細に説明する。この際、図面は、模式的なものであり、縮尺通りに示しているものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】中央で切断して示すフィルタ装置の斜視図である。
【図2】図1のフィルタ装置の、ハウジング側が閉じられた状態で他の方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によるフィルタ装置は、例えば流体圧媒体によって形成された流体流から汚染物質を分離するのに用いられる。しかし、原則として、フィルタ装置は、このように同様に流体を形成するガス状の媒体、エアロゾル等にも用いることができる。図1と図2は、通常の取り付け方向に対応し、以下に「上部」および「下部」という用語が用いられる場合、これらの用語は、図1と図2に示すフィルタ装置の動作状態での表現である。
【0017】
図1に示すフィルタエレメント10はフィルタ装置のフィルタハウジング12によって収容されている。フィルタハウジング12は、その上端に、濾過すべき流体を少なくとも部分的にフィルタエレメント10の周りの旋回流またはサイクロン流として案内するのに用いられる旋回空間14を備えている。図示する方策では、旋回空間14は、フィルタハウジング12の円錐状の拡張部によってフィルタハウジング12のハウジング端部16の方向に形成されている。ハウジング壁部によって形成されるこのような円錐状の拡張部の代わりに、追加して、または代わりに、フィルタハウジング12の内側に、かくはん器のような流れ案内板(図示せず)を用いることもできる。前述の旋回流を発生するために、未濾過媒体用の流入口18がフィルタエレメント10の長手軸線20に対し偏心させられて配置され、旋回空間14の上端でハウジング壁部を通って延びている。流入口18には、詳細には示していない、流体を案内する別の管またはその他の案内要素への接続に用いられるフランジ状の拡張部22が外側に備えられている。
【0018】
濾過すべき流体がフィルタエレメント10を通って外側から内側に流れた後に、濾過流体、すなわち濾過済みの流体は、ハウジング底部の排出口24を介してフィルタハウジング12から排出される。さらに、排出口24の自由端には、フランジ22と同様に流体案内路をフィルタ装置に接続するのに用いられるフランジ26が備えられている。排出口24は、フィルタハウジング12の上端に配置され、断面で見て、フィルタハウジング12からの上部流体流出箇所28よりも僅かに大きな断面を有している。上述の流入口18および排出口24は、場合によっては、フィルタハウジング12と共に一体に製造できるが、フィルタハウジング12の残りの部分に溶接結合によって相応に接続することも可能である。
【0019】
特に図1からさらに理解されるように、旋回空間14を形成する円錐状拡張部は、フィルタ装置の下側方向に円筒状のハウジング部30に移行しており、ハウジング部30は、円錐状の、旋回空間14よりも小さな勾配(図示せず)を備えることができる。旋回空間14で発生させられる旋回流は、流体がフィルタエレメント10を通過するのを促進するように、サイクロン工程によって別のハウジング部30にわたって均一化される。旋回空間14からハウジング部30への断面の縮小もこれに寄与する。フィルタエレメント10の自由端32は、フィルタハウジング12の閉じられた端部34の方向に向けられており、端部34は、フィルタエレメント10に対し予め設定可能な軸線方向間隔で、一種の収集室36を形成しており、収集室36によって、旋回空間14によって生成される部分的な乱流にもかかわらず、フィルタエレメント10を通過する流体流が均一化され、さもなければ、フィルタハウジング12の内側38が良好に充填され、これによって、エネルギ効率の良いフィルタ装置の動作が行われる。
【0020】
特に、このようにして、流体のない空洞部がフィルタ装置の内部に生じず、さもなければ、動作時にフィルタ装置に接続される流体圧回路に対し損傷を生じさせるキャビティが生じる場合がある。閉じられた端部34は、例えば、フィルタハウジング12の下端を開くことができるようにするボールバルブとして形成された切換栓40(図2参照)によって形成することもできる。このようにして、例えば、切換栓40が閉じている場合、既述した濾過動作を実施することが可能であり、またフィルタハウジング12の下端が開いている場合、例えば、実施されるバックフラッシング工程で発生する汚れをフィルタ装置から排出することができる。このようなバックフラッシング動作では、浄化された流体が、好ましくはフィルタ装置の清浄側から、すなわち排出口24を介してフィルタエレメントを通して内側から外側に向かって流され、これにより、フィルタエレメント10内の通路が洗浄され、次に、このようにして戻るように流された汚れは、フィルタハウジング12の内側38を介して、およびフィルタハウジング12の底部の開口部を介してフィルタ装置から放出させることができる。
【0021】
しかし、基本的に、図1に示すようなハウジングの状況の場合にバックフラッシングが行われる可能性もあり、この場合、浄化された流体が清浄側(排出口24)から未濾過液側(流入口18)の方向に戻すように流され、したがって、この際、未濾過液の供給が止められる。旋回空間14のハウジング壁部の勾配よりも幾分小さな勾配で、収集室36は、フィルタハウジング12の自由端部または閉じられた端部34の方向に同様に円錐状に先細りしている。このような円錐状の先細りにより、装置の動作時に収集室36内で部分的に圧力を上昇させることが可能であり、このことが、フィルタ装置の完全な充填に有利な影響を及ぼす。
【0022】
フィルタエレメント10は、既述したように、間隙型のろ過部の管状のフィルタエレメントとして形成され、このような間隙型のろ過部の管状のフィルタエレメントの詳細な構造は、特許文献1に記載されている。このようなエレメント10は、複数の支持ロッドから構成され、これらの支持ロッドの周りに、ワイヤ異形材が、流体が通過できる間隙を残しつつ、複数巻きに巻かれ、この際、ワイヤ異形材とそれに割り当てることができる支持ロッドとの各接触箇所の領域が溶接されている。濾過作用を改善するために、フィルタエレメント10は円錐状に形成され、この場合、ワイヤ異形材の巻線の直径は、支持ロッドの傾斜した端部の方向に向かうにつれて小さくなり、長手軸線20の方向で測定した間隙型のろ過部の管状のフィルタエレメントの長さは、出口または排出口24の領域における最大の出口断面よりも約11倍大きい。間隙型のろ過部の管状のフィルタエレメントは基本的に公知であるので、図1には、該当するエレメント10は、その円錐状の構造のみを示している。
【0023】
間隙型のろ過部の管状のフィルタエレメント10の円錐状構造のため、もっぱら円筒状に構成された要素を用いた方策に較べて、旋回空間14からハウジング部30に入る流体流に対抗する抵抗が小さくなり、その結果、フィルタ装置全体の圧力差が、エネルギ効率が良くなるように低減され、また、円錐状の構造によって、エレメント10のバックフラッシングの際に定常的な流体流が達成され、これに対し、本実施形態で同様に使用することができる円筒状のエレメント(図示せず)の場合、速度が長手方向に連続的に増加し、これは、フィルタエレメントの内側への均一な進入を阻害する。
【0024】
この場合、取り付け構成は、フィルタエレメント10の長手方向(長手軸線20)に見て、円錐状のハウジング壁部16を備える旋回空間14および収集室36の全長が、フィルタエレメント10の全長の少なくとも3分の1で、2分の1未満に相当するようにされ、この際、旋回空間14の全長は、フィルタエレメント10の端部32からフィルタハウジング12の端部34までの収集室36の全長に実質的に相当している。
【0025】
本発明によるフィルタ装置は、特に、フィルタエレメント10を除いて基本的に一体に構成されている場合、著しく経済的に製造でき、したがって、使い捨て品のように扱うことができる。発生する圧力に応じて、フィルタ装置は、プラスチック射出成形品として形成することもでき、または板金材料および鋳物材料を含む金属材料から構成することもでき、旋回空間14のハウジング壁部16は、底部をくぼませるようにして形成することができる。
【0026】
本発明によるフィルタ装置の、詳細には示していない他の構成では、さらに、一種のオーバフローラインを形成する、フィルタハウジング12のハウジング上端部16の領域の別の出口箇所を介して、場合によって発生する浮遊する軽い物質をフィルタハウジングから取り除くことを意図することができる。このような端部の開口部は、長手軸線20に関し流入口18と反対側に位置するのが好ましく、オーバフローラインは、他の接続箇所と同様に、説明したような相応のフランジ体を有することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタハウジング(12)に収容されたフィルタエレメント(10)を用いて流体流から汚染物質を分離するフィルタ装置において、濾過すべき流体流が旋回流として前記フィルタエレメント(10)の周りに少なくとも部分的に案内されるように、前記フィルタハウジング(12)が旋回空間(14)を備えていることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記旋回空間(14)が、前記フィルタハウジング(12)の両ハウジング端部(16)の一方の方向に前記フィルタハウジング(12)の円錐状の拡張部によって形成されており、未濾過媒体用の流入口(18)が前記フィルタエレメント(10)の長手軸線(20)に対し偏心して前記フィルタハウジング(12)を通って延びていることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
濾過済み流体用の排出口(24)がハウジング端部(16)の一方を通って延び、前記フィルタエレメント(10)の内側への流体の接続部を形成していることを特徴とする、請求項1または2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記旋回空間(14)の領域の前記フィルタハウジング(12)の前記円錐状の拡張部が、円筒状の、または円錐状の、小さな勾配を有するハウジング部(30)に移行していることを特徴とする、請求項2または3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記フィルタエレメント(10)の自由端(32)が、前記フィルタハウジング(12)の他方の端部(34)の方向に向けられており、当該他方の端部(34)が、前記フィルタエレメント(10)に対し予め設定可能な軸方向間隔で一種の収集室(36)を形成していることを特徴とする、請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記収集室(36)が、前記フィルタハウジング(12)の他方の端部(34)の方向に円錐状に少なくとも部分的に先細りしていることを特徴とする、請求項5に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記フィルタエレメント(10)が、前記旋回空間(14)を出発点として自由端(32)に向かって円錐状に先細りしている好ましくは間隙型のろ過部の管状のフィルタエレメントとして形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記フィルタエレメント(10)の長手軸線(20)方向に見て、円錐状のハウジング壁部(16)を有する前記旋回空間(14)の全長および前記収集室(36)の全長が、前記フィルタエレメント(10)の全長の少なくとも3分の1で、2分の1未満に相当していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−500160(P2010−500160A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523169(P2009−523169)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006410
【国際公開番号】WO2008/017370
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(500563201)ハイダック プロセス テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【Fターム(参考)】