説明

フィルタ装置

【課題】フィルタの目詰まりが長期に亘って生じ難いフィルタ装置を提供する。
【解決手段】流体流路5に装着され、流体流れ方向上手側に下向き面19を有するフィルタ14と、下向き面に対向し、かつ、流体流路に臨む開口20を有する凹入部15とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流路に装着されたフィルタを備えたフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記フィルタ装置は、流体に混入している異物の流体供給先や流体ポンプなどへの流入を防止するために、異物を捕捉するためのフィルタを流体流路に装着してある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−17706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、フィルタで捕捉された異物が当該フィルタの流体流れ方向上手側の流体流路内に滞留し、流体通過量の累積にともなって、流体流れ方向上手側の流体流路内における異物の滞留量も累積して、フィルタの目詰まりが早期に生じ易い欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、フィルタの目詰まりが長期に亘って生じ難いフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフィルタ装置の第1特徴構成は、流体流路に装着され、流体流れ方向上手側に下向き面を有するフィルタと、前記下向き面に対向し、かつ、前記流体流路に臨む開口を有する凹入部とを備えた点にある。
【0006】
本構成のフィルタ装置は、フィルタの下向き面に対して流体流れ方向上手側において対向し、かつ、流体流路に臨む開口を有する凹入部を備えている。
このため、フィルタの下向き面に捕捉された異物を、流体の流動を停止したときなどに凹入部に流入させて、フィルタの流体流れ方向上手側における流体流路内に滞留しないように貯留し易い。
つまり、流体の流動を停止したときや流体の流速が遅いときなどには、フィルタの下向き面に捕捉された異物が自重で流体流路内を下降移動し易い点に着目し、これらの下降移動する異物をフィルタの下向き面に対して対向し、かつ、流体流路に臨む開口に向けて自重で下降移動させて、凹入部に流入させ易い。
したがって、フィルタで捕捉された異物が当該フィルタの流体流れ方向上手側の流体流路内に滞留し難くなり、流体通過量の累積に伴う異物の滞留量の累積も少ない。
よって、本構成のフィルタ装置であれば、フィルタの目詰まりが長期に亘って生じ難い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記凹入部が奥拡がり形状に形成されている点にある。
【0008】
本構成のフィルタ装置であれば、凹入部に流入した異物が流体流路に流れ出し難く、異物が流体流路内に滞留し難い状態を維持し易い。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記フィルタが横向きの流体流路に装着され、前記下向き面が、流体流れ方向下手側ほど前記開口の側に近づく姿勢で配設されている点にある。
【0010】
本構成のフィルタ装置であれば、フィルタの下向き面と凹入部の開口とを流体流路の径方向で対向させることができ、下向き面から開口までの異物の移動距離を短く設定して凹入部への流入を促進し易い。
また、フィルタの下向き面を広く設定して、フィルタに対する流体の通過抵抗を少なくすることができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記流体流路における流体流れ方向を逆方向に切換可能な逆洗機構が設けられている点にある。
【0012】
本構成のフィルタ装置であれば、流体流路における流体流れ方向を逆方向に切り換えることにより、フィルタで捕捉された異物をフィルタから強制的に洗い流すことができ、フィルタの目詰まりが一層生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エンジンのチェーンケース側部位の縦断面図である。
【図2】フィルタ装置を示す縦断面図である。
【図3】図2のIII −III 線矢視断面図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】フィルタの斜視図である。
【図6】第2実施形態のフィルタ装置を示す縦断面図である。
【図7】図6のVII −VII 線矢視断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線矢視断面図である。
【図9】フィルタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図5は、本発明によるフィルタ装置Aを備えた車両用エンジンEの潤滑油供給装置を示す。
【0015】
図1に示すように、エンジンEは、シリンダヘッド1、シリンダブロック2、クランクケース3、オイルパン4の夫々を上下に接合して連結してあるエンジン本体E1と、エンジン本体E1の横側部においてクランクシャフト3aとカムシャフト(図示せず)とを連動させるタイミングチェーン(図示せず)などを覆うチェーンカバーE2とを備えている。
【0016】
潤滑油供給装置は、潤滑油(流体の一例)OILを吸入・吐出する電動ポンプ(流体ポンプの一例)Pと、オイルパン4に貯留された潤滑油OILを電動ポンプPに吸入させるための吸入油路(流体流路の一例)5と、電動ポンプPから吐出された潤滑油OILをシリンダヘッド1の潤滑油供給路6に送り出す吐出油路7と、潤滑油OILに混入している異物を捕捉するフィルタ装置Aとを備えている。
吸入油路5の入口側にはストレーナ8を装着してある。
【0017】
チェーンカバーE2はアルミニウム合金等の鋳造品で構成してある。
吸入油路5と吐出油路7は、チェーンカバーE2にドリル加工等によって穿孔された円形孔部によって形成されている。
チェーンカバーE2の内面側にはポンプ固定座9を形成してあり、このポンプ固定座9に電動ポンプPが着脱自在に固定されている。
【0018】
電動ポンプPは、トロコイド型のポンプ本体P1と、このポンプ本体P1を駆動する電動モータP2とを一体に備えている。
ポンプ本体P1は、図2に示すように、横向きのロータ回転軸芯Xの周りで回転するロータ10と、このロータ10を内装しているハウジング11と、ハウジング11のロータ回転軸芯Xの方向で一端側に円形に開口する、潤滑油OILの吸入ポート12及び吐出ポート13とを備えている。
【0019】
吸入ポート12及び吐出ポート13は、電動ポンプPをチェーンカバーE2に固定することにより、吸入油路5及び吐出油路7に夫々連通接続されている。
【0020】
吸入油路5のうちの吸入ポート12に接続される接続油路部分5a及び吐出油路7のうちの吐出ポート13に接続される接続油路部分7aは、ロータ回転軸芯Xの方向に沿う横向きに形成されている。
フィルタ装置Aは、吸入油路5のうちの横向きに形成されている接続油路部分5aに装備されている。
【0021】
フィルタ装置Aは、図2〜図4に示すように、吸入油路5の接続油路部分5aに装着されたフィルタ14と、フィルタ14で捕捉された金属屑(ストレーナ8で捕捉されなかった金属屑)などの異物Cを流入させる異物貯留用の凹入部15とを備えている。
フィルタ14は、図5にも示すように、網状の金属製フィルタ部材17を円形リング部材16の内側に備えている。
フィルタ部材17は、円形リング部材16の内周側から円形リング部材16と同芯で円形のドーム状に突出する凸曲面状(茶漉し網状)に形成されている。
【0022】
フィルタ14は、フィルタ部材17を潤滑油流れ方向上手側(潤滑油OILが電動ポンプPに吸入される方向の上手側)に向けて突出させた状態で、接続油路部分5aの終端側に装着してある。
すなわち、接続油路部分5aの終端側にフィルタ装着用の段部5bを円環状に形成し、この段部5bに円形リング部材16を嵌め込むと共に、円形リング部材16とポンプ本体P1との間に弾性シールリング18を挟み込んで、フィルタ14を接続油路部分5aに対して着脱自在に装着してある。
【0023】
したがって、接続油路部分5aに装着されたフィルタ14は、その潤滑油流れ方向上手側に、フィルタ部材17の下向き外周面(フィルタ部材17の外周面のうちの、フィルタ部材17の中心軸を通る仮想水平面よりも下側の外周面部分)で形成された下向き面19を有している。
【0024】
凹入部15は、図2〜図4に示すように、接続油路部分5aを囲んでいるチェーンカバー部分のうちの、接続油路部分5aに装着されたフィルタ部材17の下向き面19に対してその下側から対向する部位を、接続油路部分5aの長手方向に沿って、ドリル加工等によって切削して、接続油路部分5aに開口20を介して連通する状態で下向きに凹入させた形状に形成してある。
【0025】
したがって、凹入部15は、フィルタ部材17の下向き面19に対向し、かつ、吸入油路5の接続油路部分5aに臨む開口20を有している。
また、フィルタ部材17の下向き面19が、潤滑油流れ方向下手側ほど凹入部15の開口20の側に近づく姿勢で配設されている。
【0026】
凹入部15は、図3に示すように、開口20の油路長手方向での最大長さL1を凹入部15の油路長手方向での最大長さL2よりも短く設定し、かつ、図4に示すように、開口20の油路径方向での最大幅B1を凹入部15の油路径方向での最大幅B2よりも短く設定して、奥拡がり形状に形成されている。
【0027】
凹入部15は、電動ポンプPの側の端部がチェーンカバーE2の内側に向けて開口するように形成してある。
したがって、電動ポンプPをポンプ固定座9から外して、フィルタ14を吸入油路5から抜き出すことにより、凹入部15に溜まった異物CをチェーンカバーE2の内側に向けて容易に掻き出すことができる。
【0028】
フィルタ装置Aには、吸入油路5における潤滑油流れ方向を逆方向に切換可能な逆洗機構が設けられている。
この逆洗機構は、電動ポンプPにおけるロータ10を、吐出油路7内の潤滑油OILが逆流する程度の短時間だけ逆向きに回転させることにより、潤滑油OILをフィルタ14に対して逆向きに通過させて、フィルタ14に捕捉された異物Cを吸入油路5の上手側に強制的に洗い流すことができるように構成してある。
【0029】
〔第2実施形態〕
図6〜図9は、フィルタ装置Aの別実施形態を示す。
本実施形態では、フィルタ14を、図9に示すように、平面視で楕円形の扁平なリング部材16の内側に、平面視で楕円形の扁平なフィルタ部材17を設けて構成してある。
【0030】
また、接続油路部分5aの終端側に、図6に示すように、油路軸芯Yに対して上方側ほど油路上手側に位置するように傾斜するフィルタ装着面21を備えたフィルタ装着用の段部5bを形成してある。
【0031】
そして、フィルタ14のリング部材16を段部5bに入り込ませて、そのリング部材16がフィルタ装着面21に接当するように、筒状のスペーサ22を段部5bに入り込ませる共に、スペーサ22と電動ポンプPとの間に弾性シールリング18を挟み込んで、フィルタ14を接続油路部分5aに対して着脱自在に装着してある。
【0032】
したがって、本実施形態では、フィルタ14が、フィルタ部材17の潤滑油流れ方向上手側の全面が下向き面19となるように、潤滑油流れ方向下手側ほど開口20の側に近づく姿勢で、接続油路部分5aに装着されているので、フィルタ部材17で捕捉された異物Cの全体を凹入部15に流入させ易い。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0033】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるフィルタ装置は、ウオータポンプや燃料ポンプが接続された流体流路に装備されるものであってもよい。
2.本発明によるフィルタ装置は、流体を循環させる流体流路に装備されるものであってもよい。
3.本発明によるフィルタ装置は、流体流路の途中箇所に装備されるものであってもよい。
4.本発明によるフィルタ装置は、多孔質のフィルタ部材を備えたフィルタが装着されていてもよい。
5.本発明によるフィルタ装置は、フィルタが装着された流体流路の流体流れ方向下手側の接続先を流体ポンプの吐出ポートの側に切り換えることにより、流体流路における流体流れ方向を逆方向に切換可能な逆洗機構が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
5 流体流路
14 フィルタ
15 凹入部
19 下向き面
20 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流路に装着され、流体流れ方向上手側に下向き面を有するフィルタと、前記下向き面に対向し、かつ、前記流体流路に臨む開口を有する凹入部とを備えたフィルタ装置。
【請求項2】
前記凹入部が奥拡がり形状に形成されている請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記フィルタが横向きの流体流路に装着され、
前記下向き面が、流体流れ方向下手側ほど前記開口の側に近づく姿勢で配設されている請求項1又は2記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記流体流路における流体流れ方向を逆方向に切換可能な逆洗機構が設けられている請求項1〜3のいずれか1項記載のフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−24659(P2012−24659A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163168(P2010−163168)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】