説明

フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法

【課題】低い初期不良率で高信頼性を有するフィルムコンデンサ用の金属蒸着フィルムを得る。
【解決手段】高分子フィルムの少なくとも片面に金属膜を蒸着して金属蒸着フィルムを形成するとともに、保安機構マージン部を形成し、保安機構マージン部が形成された金属蒸着フィルム18を長手方向に所定の距離を有して挟み込む電極ロール23,24間に300〜600Vの直流電圧を印加することにより金属蒸着フィルム18にプレヒーリングを施し、この際の電極ロール23,24間の距離Lが100〜200mmであり、電極ロール23,24の直径D1,D2が80〜100mmφであり、電極ロール23,24のフィルム抱き角θ1,θ2が90〜180°であり、プレヒーリングにて流れる電流により、処理された絶縁破壊区画箇所が属する保安機構マージン部の間を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法に関し、特に詳しくは、初期不良率が低下し、保安機能が増したフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に金属蒸着フィルムコンデンサは、異常電圧の進入などにより、絶縁破壊が生じ、異常部分に過電流が流れて発煙・発火するのを防止するために、コンデンサ素子に電流ヒューズ部を設け、また、ケースの変形を利用して、リード線を引きちぎる保安装置を設けている。しかし、これら保安装置を有するコンデンサは乾式化、小型化が困難であり、これらに代わるものとして、使用する金属蒸着フィルム自体に保安機能を持たせている。JISC4908では、コンデンサ素子に電流ヒューズ部を設け、また、ケースの変形を利用してリード線を引きちぎる保安装置を設けているコンデンサは、保安装置内蔵コンデンサとしている。金属蒸着フィルム自体に保安機能を持たせて金属蒸着フィルムの異常部分を切り離すことができるコンデンサは、保安機構付コンデンサとされている。
この様な保安機構付金属蒸着フィルムコンデンサには、通常、金属蒸着電極を横マージンによって長手方向に複数個に分割し、分割された個々の分割電極のメタリコン側に近い個所に、縦マージンによるヒューズ部を形成した保安機構マージンを有する金属蒸着フィルムが少なくとも一枚は用いられている。保安機構マージン付きフィルムコンデンサは、異常電圧が進入するとヒューズ部の金属蒸着電極が発熱し、ヒューズ部が溶断する。このため分割電極内で絶縁破壊が起こる前に、分割電極は他の金属蒸着電極から絶縁される。この作用により、発煙・発火が防止される。
この様な保安機構マージンパターンは、基体となる誘電体フィルム上への金属の蒸着前にオイルをパターン付着させ蒸着金属を付着させない方式、または、金属の蒸着後にYAGレーザーにより蒸着膜の一部をパターン除去する方式で形成されている。
また、保安機構マージン付き金属蒸着フィルムは、必要に応じて電圧印加処理によるプレヒーリングが施され、蒸着金属がフィルム欠陥部に入り込んでいる不良部をスパークさせ、その周辺部の金属を蒸発させると共に、スパークにより生じた電流にて、その分割区画部に存在するヒューズを切断し、初期不良を少なくすることも行われている。
【0003】
この様なプレヒーリングが施された保安機構付金属蒸着フィルムコンデンサとして特許文献1には、フィルム体の一方の面に金属膜を蒸着させた金属化フィルムを連続して巻き取りながら、金属化フィルムの両面に転接する金属ロール間に電圧を印可することで、その電気エネルギーにより絶縁欠陥部の金属膜を溶融除去するようにした構成が開示されている。
特許文献2には、両面に金属膜が形成された金属化フィルムにプレヒーリング処理を行ってもフィルム体の絶縁性を劣化させないように、両面に金属膜が形成された金属化フィルムを搬送しながら、その一方の面の金属膜の一部をバーンオフ用ローラの1回転毎に除去することで複数の分割電極を形成し、正極側のプレヒーリング用ローラに印可された電圧を分割電極側から絶縁欠陥部を介して金属化フィルムの反対面側及び負極側のプレヒーリング用ローラに導通させることで絶縁欠陥部周辺の金属膜を除去することが開示されている。
特許文献3には、比較的簡単な構成で、両面に金属膜が形成されたフィルムコンデンサに存在する絶縁欠陥部周辺の蒸着金属を除去するために、導通検出ユニットにより、電圧が印加される第1の分割電極と、残りの第1の分割電極とが電気的に絶縁されているかを検出し、この検出結果に基づいて、電圧印加ユニットにより第1の分割電極同士が絶縁状態であるときにのみ、第1の分割電極に対して電圧を印加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−79017号公報
【特許文献2】特開2010−118586号公報
【特許文献3】特開2010−10258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保安機構マージン付き金属蒸着フィルムは、必要に応じて、電圧印加処理によるプレヒーリングが施され、蒸着金属がフィルム欠陥部に入り込んでいる不良部分をスパークさせ、その周辺部の金属を蒸発させると共に、スパークにより生じた電流により、不良箇所が属する区画部のヒューズを切断し、初期不良を少なくしているが、基体となるフィルム材質の変動等により、プレヒーリングが不完全となり、また、ヒューズも切断されずに保安機能が低下したままでフィルムコンデンサとして使用されることも多かった。
【0006】
本発明では、上述の欠点を改良し、金属蒸着フィルムに電圧印加によるプレヒーリングを施して絶縁破壊区画箇所を処理し、プレヒーリングにて流れる電流値を最適に選定することで、その絶縁破壊区画箇所が属する保安機構マージン部の間を確実に切断することにより、低い初期不良率で高信頼性を有するフィルムコンデンサ用の金属蒸着フィルムを得ることを目的とする。
また、金属蒸着フィルムに電圧印加によるプレヒーリング処理を施して絶縁破壊区画箇所を処理し検出した後に、レーザー加工機にて、処理された絶縁破壊区画箇所以外の区画箇所に保安機構マージン部を形成することにより、低い初期不良率で高信頼性を有するフィルムコンデンサ用の金属蒸着フィルムを確実に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の低い初期不良率で高信頼性を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法は、高分子フィルムの少なくとも片面に保安機構マージン付きの金属膜を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法であり、高分子フィルムの少なくとも片面に金属膜を蒸着して金属蒸着フィルムを形成した後に、レーザー加工機にて保安機構マージン部を形成し、前記保安機構マージン部が形成された金属蒸着フィルムを長手方向に所定の距離を有して挟み込む電極ロール間に300〜600Vの直流電圧を印加することにより前記金属蒸着フィルムにプレヒーリングを施して絶縁破壊区画箇所を処理し、この際の前記電極ロール間の距離が100〜200mmであり、前記電極ロールの直径が80〜100mmφであり、前記電極ロールのフィルム抱き角が90〜180°であり、前記プレヒーリングにて流れる電流により、前記処理された絶縁破壊区画箇所が属する保安機構マージン部の間を切断することを特徴とする。
【0008】
保安機構マージン部が形成された金属蒸着フィルムに直流電圧を印加してプレヒーリングを施し、蒸着金属がフィルム欠陥部に入り込んでいる絶縁不良部分などをスパークさせ、その絶縁破壊区画箇所を処置すると共に、その時に流れる最適に調整された電流にて、絶縁破壊区画箇所が属する保安機構マージン部の間を切断することにより保安機能が増し、その金属蒸着フィルムが、フィルムコンデンサとして使用された時の初期不良率を低下させ信頼性を向上させる。
直流電圧印加が300V未満では、プレヒーリング効果は不充分であり、600Vを超えると素材である高分子フィルムに悪影響を及ぼす傾向がある。
電極ロール間の距離が100〜200mmであり、電極ロールの直径が80〜100mmφであり、電極ロールのフィルム抱き角が90〜180°であることにより、プレヒーリング時に流れる電流が最適に調整され、絶縁破壊区画箇所が属する保安機構マージン部の間を高い確率で切断することにより更に保安機能が増し、金属蒸着フィルムが、フィルムコンデンサとして使用された場合の初期不良率を低下させ信頼性を向上させる。
電極ロール間の距離が100mm未満では、電極ロールの直径を小さくせねばならず、200mmを超えると、抵抗が高くなり充放電効率が悪化する。
電極ロールの直径が、80mmφ未満では、フィルム抱き角を大きく出来ず、100mmφを超えると、ロール重量が増し処理スペースが大きくなり扱いづらくなる。
電極ロールのフィルム抱き角が90°未満では、充放電効率が悪化し、180°を超えると、物理的な設定が難しくなる。本発明では、フィルム抱き角とは、図3に示すように、電極ロールと保安機構マージン部が形成された金属蒸着フィルムとの接触している円弧部分の角度であり、これらの接触面積との相関を表す指標である。
【0009】
更に、本発明の低い初期不良率で高信頼性を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法は、高分子フィルムの少なくとも片面に保安機構マージン付きの金属膜を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法であり、高分子フィルムの少なくとも片面に金属膜を蒸着するとともに保安機構マージン部を形成した後に、前記保安機構マージン部が形成された金属蒸着フィルムを長手方向に所定の距離を有して挟み込む電極ロール間に300〜600Vの直流電圧を印加することにより前記金属蒸着フィルムにプレヒーリングを施して絶縁破壊区画箇所を処理し、この際の前記電極ロール間の距離が100〜200mmであり、前記電極ロール径が80〜100mmφであり、前記電極ロールのフィルム抱き角が90〜180°であり、前記プレヒーリング処理にて流れる電流により、前記処理された絶縁破壊区画箇所が属する保安機構マージン部の間を切断することを特徴とする。
【0010】
保安機構マージン部が印刷法或いはマスキング法などで金属膜の蒸着時に形成された金属蒸着フィルムに直流電圧を印加してプレヒーリングを施し、蒸着金属がフィルム欠陥部に入り込んでいる絶縁不良部分などをスパークさせ、その絶縁破壊区画箇所を処置すると共に、その時に流れる最適に調整された電流にて、絶縁破壊区画箇所が属する保安機構マージン部の間を切断することにより保安機能が増し、その金属蒸着フィルムが、フィルムコンデンサとして使用された時の初期不良率を低下させ信頼性を向上させる。
直流電圧印加が300V未満では、プレヒーリング効果は不充分であり、600Vを超えると素材である高分子フィルムに悪影響を及ぼす傾向がある。
直流電圧印加が300V未満では、プレヒーリング効果は不充分であり、600Vを超えると素材である高分子フィルムに悪影響を及ぼす傾向がある。
電極ロール間の距離が100〜200mmであり、電極ロールの直径が80〜100mmφであり、電極ロールのフィルム抱き角が90〜180°であることにより、プレヒーリング時に流れる電流が最適に調整され、絶縁破壊区画箇所が属する保安機構マージン部の間を高い確率で切断することにより更に保安機能が増し、金属蒸着フィルムが、フィルムコンデンサとして使用された場合の初期不良率を低下させ信頼性を向上させる。
電極ロール間の距離が100mm未満では、電極ロールの直径を小さくせねばならず、200mmを超えると、抵抗が高くなり充放電効率が悪化する。
電極ロールの直径が、80mmφ未満では、フィルム抱き角を大きく出来ず、100mmφを超えると、ロール重量が増し処理スペースが大きくなり扱いづらくなる。
電極ロールのフィルム抱き角が90°未満では、充放電効率が悪化し、180°を超えると、物理的な設定が難しくなる。
【0011】
更に、本発明の低い初期不良率で高信頼性を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法は、高分子フィルムの少なくとも片面に保安機構マージン付きの金属膜を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法であり、高分子フィルムの少なくとも片面に金属膜を蒸着して金属蒸着フィルムを形成した後に、前記金属蒸着フィルムに300〜600Vの直流電圧印加によるプレヒーリングを施して絶縁破壊区画箇所を処理して検出し、レーザー加工機にて、前記処理された絶縁破壊区画箇所以外の区画箇所に保安機構マージン部を形成することを特徴とする。
【0012】
直流電圧印加が300V未満では、プレヒーリング効果は不充分であり、600Vを超えると素材である高分子フィルムに悪影響を及ぼす傾向がある。
金属蒸着フィルムに直流電圧印加によるプレヒーリング施して絶縁破壊区画箇所を処理し、その絶縁破壊区画箇所を電流値の変動等により検出して、レーザー加工機にて、検出された絶縁破壊区画箇所以外の区画箇所にT型保安機構マージン部を形成することにより、その金属蒸着フィルムが、フィルムコンデンサとして使用された時の初期不良率を低下させ信頼性を向上させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法により、初期不良率が低下し、保安機能が増したフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の製造方法により製造されたフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの平面図である。
【図2】本発明の製造方法を実施するために用いられる真空蒸着装置の概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態の製造方法を実施するために用いられるプレヒーリング装置の概略図である。
【図4】本発明の第3実施形態の製造方法を実施するために用いられる保安機構マージン部形成装置の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の製造方法により製造されたフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの平面を示しており、このフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルム1は、誘電体からなる高分子フィルムの少なくとも片面にアルミニウム等の金属膜が蒸着されるとともに、長さ方向に沿う余白部2と、連続的に配置された平面視T型の保安機構マージン部3とが形成され、各保安機構マージン部3の間に金属膜が分割されてなる電極4が長さ方向に多数形成されており、後述するようにプレヒーリングにより絶縁破壊区画箇所5においてフィルム欠陥部に入り込んだ蒸着金属が除去され、その絶縁破壊区画箇所5における保安機構マージン部3の間が切断された状態とされている。符号6は、保安機構マージン部3の間の切断部を示している。
【0016】
この金属蒸着フィルムの製造方法の第1実施形態について説明する。
図2は、金属蒸着フィルムを形成するための真空蒸着装置を示しており、この真空蒸着装置11は、真空容器12内においてロール13から高分子フィルム14を巻き出して蒸着ロール15上に案内し、蒸着ロール15上で抵抗加熱されたボート16からのアルミニウム等の金属を蒸着して高分子フィルム14の片面に金属膜17を形成した後、その金属蒸着フィルム18をロール19に巻き取る構成である。この場合、余白部となる側縁部には予めオイルが付着され、金属膜17が蒸着されずに余白部2が形成される。
次に、このようにして高分子フィルム14の片面に金属膜17を形成した金属蒸着フィルム18を走行させながら、その金属膜17にレーザー加工機(図示略)にてT型の保安機構マージン部3を形成する。
【0017】
次に、図3に示すプレヒーリング装置によりプレヒーリング処理が施される。このプレヒーリング装置21は、金属蒸着フィルム18が巻き取られたロール22から金属蒸着フィルム18を一対の電極ロール23,24及びロール25を経由して走行させながら巻き取りロール26に巻き取り、その間に、両電極ロール23,24により金属蒸着フィルム18を長手方向に所定の距離を有して挟み込み、両電極ロール23,24間に300〜600Vの直流電圧を印加する構成である。電極ロール23,24間の金属蒸着フィルム18に沿う距離Lは100〜200mmであり、電極ロール23,24の直径D1,D2がいずれも80〜100mmφであり、電極ロール23,24のフィルム抱き角θ1,θ2がいずれも90〜180°である。
直流電圧印加が300V未満では、プレヒーリング効果は不充分であり、600Vを超えると素材である高分子フィルムに悪影響を及ぼす傾向がある。
電極ロール23,24間の距離Lが100〜200mmであり、電極ロール23,24の直径D1,D2が80〜100mmφであり、電極ロール23,24のフィルム抱き角θ1,θ2が90〜180°であることにより、プレヒーリング時に流れる電流が最適に調整され、絶縁破壊区画箇所5が属するT型保安機構マージン部3の間を高い確率で切断することにより更に保安機能が増し、金属蒸着フィルム1が、フィルムルムコンデンサとして使用された場合の初期不良率を低下させ信頼性を向上させる。
電極ロール23,24間の距離Lが100mm未満では、電極ロール23,24の直径を小さくせねばならず、200mmを超えると、抵抗が高くなり充放電効率が悪化する。
電極ロール23,24の直径D1,D2が、80mmφ未満では、フィルム抱き角を大きく出来ず、100mmφを超えると、ロール重量が増し処理スペースが大きくなり扱いづらくなる。
電極ロール23,24のフィルム抱き角θ1,θ2が90°未満では、充放電効率が悪化し、180°を超えると、物理的な設定が難しくなる。本発明では、フィルム抱き角θ1,θ2とは、図3に示すように、電極ロール23,24と金属蒸着フィルム18との接触している円弧部分の角度であり、これらの接触面積との相関を表す指標である。
【0018】
上述した第1実施形態では、高分子フィルムの全面に金属膜を蒸着した後に、レーザー加工機にて保安機構マージン部を形成したが、金属膜の蒸着と同時に余白部及び保安機構マージン部の両方とも形成するようにしてもよい。
すなわち、第2実施形態では、高分子フィルムに金属膜を蒸着する前に、オイルを余白部及び保安機構マージン部の形状にパターン付着してマスキングしておき、その後に金属膜を蒸着することにより、オイルを付着した部分に金属膜が蒸着されないマージン部が形成される。
このようにして金属膜及びマージン部を形成した金属蒸着フィルム18に、第1実施形態と同様に図3に示すプレヒーリング装置21を使用し、金属蒸着フィルム18を長手方向に所定の距離を有して挟み込む電極ロール23,24間に300〜600Vの直流電圧を印加することによりプレヒーリング処理する。この場合も、電極ロール23,24間の距離Lは100〜200mmであり、電極ロール23,24の直径D1,D2が80〜100mmφであり、電極ロール23,24のフィルム抱き角θ1,θ2が90〜180°である。
直流電圧印加が300V未満では、プレヒーリング効果は不充分であり、600Vを超えると素材である高分子フィルムに悪影響を及ぼす傾向がある。
電極ロール23,24間の距離Lが100〜200mmであり、電極ロール23,24の直径D1,D2が80〜100mmφであり、電極ロール23,24のフィルム抱き角θ1,θ2が90〜180°であることにより、プレヒーリング時に流れる電流が最適に調整され、絶縁破壊区画箇所5が属するT型保安機構マージン部3の間を高い確率で切断することにより更に保安機能が増し、金属蒸着フィルム1が、フィルムルムコンデンサとして使用された場合の初期不良率を低下させ信頼性を向上させる。
電極ロール23,24間の距離Lが100mm未満では、電極ロール23,24の直径を小さくせねばならず、200mmを超えると、抵抗が高くなり充放電効率が悪化する。
電極ロール23,24の直径D1,D2が、80mmφ未満では、フィルム抱き角を大きく出来ず、100mmφを超えると、ロール重量が増し処理スペースが大きくなり扱いづらくなる。
電極ロール23,24のフィルム抱き角θ1,θ2が90°未満では、充放電効率が悪化し、180°を超えると、物理的な設定が難しくなる。
【0019】
図4は、本発明の第3実施形態の製造方法に用いられる保安機構マージン部形成装置を示している。この保安機構マージン部形成装置31は、高分子フィルムの少なくとも片面に金属膜を蒸着して余白部を有する金属蒸着フィルム18を形成した後に、その金属蒸着フィルム18に一対の電極ロール23,24により300〜600Vの直流電圧印加によるプレヒーリングを施して絶縁破壊区画箇所を処理するとともに、その絶縁破壊区画箇所の発生を検出し、レーザー加工機32にて、処理された絶縁破壊区画箇所以外の区画箇所に保安機構マージン部を形成する。
プレヒーリング時に絶縁破壊区画箇所を検出する方法としては、両電極ロール23,24間の電流値の変動等を検知することにより行うことができ、その変動等が検出されていないときに所定のタイミングでレーザー加工機32により保安機構マージン部を形成し、電流値の変動等により絶縁破壊区画箇所が検知されたときには保安機構マージン部を形成しないようにする。なお、この図4に示す保安機構マージン部形成装置は、図3に示すプレヒーリング装置を応用して構成されており、図3と共通する要素には同一符号を付して説明を省略する。
直流電圧印加が300V未満では、プレヒーリング効果は不充分であり、600Vを超えると素材である高分子フィルムに悪影響を及ぼす傾向がある。
金属蒸着フィルムに直流電圧印加によるプレヒーリング施して絶縁破壊区画箇所を処理し、絶縁破壊区画箇所を検出して、レーザー加工機にて、検出された絶縁破壊区画箇所以外の区画箇所にT型保安機構マージン部を形成することにより、その金属蒸着フィルムが、フィルムルムコンデンサとして使用された時の初期不良率を低下させ信頼性を向上させる。
【実施例1】
【0020】
高分子フィルム(誘電体基体フィルム)として幅620mm、厚み4.4μmのPETフィルムを使用し、真空蒸着装置内にて、オイルマージン部(余白部)を除きそのフィルムの全幅にわたって、Alを膜抵抗にして3.5Ω/□の厚みにて蒸着し、リールに巻き取った。この金属蒸着フィルム30,000mmのうち、全長4,000mmを縦方向に24mm幅に切断しながら、レーザー加工機によりT型マージン部(保安機構マージン部)を形成し、表1に示す直流電圧および電極ロール条件にてプレヒーリング処理を実施し、絶縁破壊区画箇所を処理すると共に該当するT型マージン部の間を切断し、フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムを作製した。電極ロールの直径及び抱き角は、両電極ロールとも同じに設定した。
そのフィルムの絶縁破壊区画箇所数とT型マージン部切断箇所数を自動画像処理装置(50倍)にて測定した。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【実施例2】
【0022】
高分子フィルム(誘電体基体フィルム)として幅620mm、厚み4.4μmのPETフィルムを使用し、真空蒸着装置内にて、オイルマージン部(余白部)とT型マージン部を除き、そのフィルムにAlを膜抵抗にして3.5Ω/□の厚みにて蒸着し、リールに巻き取った。この金属蒸着フィルム30,000mmのうち、全長4,000mmを縦方向に24mm幅に切断しながら、表2に示す直流電圧および電極ロール条件にてプレヒーリング処理を実施し、絶縁破壊区画箇所を処理すると共に該当するT型マージン部の間を切断し、フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムを作製した。
その絶縁破壊区画箇所数とT型マージン部切断箇所数を自動画像処理装置(50倍)にて測定した。その結果を表2に示す。
【0023】
【表2】

【実施例3】
【0024】
高分子フィルム(誘電体基体フィルム)として幅620mm、厚み4.4μmのPETフィルムを使用し、真空蒸着装置内にて、オイルマージン部(余白部)を除きそのフィルムの全幅にわたって、Alを膜抵抗にして3.5Ω/□の厚みにて蒸着し、リールに巻き取った。この金属蒸着フィルム30,000mmのうち、全長4,000mmを縦方向に24mm幅に切断しながら、直流電圧400Vを印加して、プレヒーリング処理を実施し、絶縁破壊区画箇所を処理した。その結果、電流値の変動により102箇の絶縁破壊区画箇所が検出され、その後、絶縁破壊区画箇所以外の区画箇所にレーザー加工機にてT型保安機構マージン部を形成することができた。
【0025】
以上、本発明の実施形態の製造方法について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
保安機構マージン部の形状としては、平面視T型が一般的であるが、必ずしもT型に限定されるものではなく、保安機構マージン部の間でヒューズとしての機能を有する形状であれば、ストレート状に形成されるものでもよい。また、そのマージン部の形成方法として、オイル印刷によるマスキング法及びレーザー加工機を用いた方法を例示したが、これらに限るものではなく、例えば、蒸着金属を放電によって飛散させる工法等も可能である。余白部は、プレヒーリングの前に形成しておいてもよいし、プレヒーリングの後に保安機構マージン部と同時に形成してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 金属蒸着フィルム
2 余白部(オイルマージン部)
3 保安機構マージン部(T型マージン部)
4 電極
5 絶縁破壊区画箇所
6 切断部
11 真空蒸着装置
12 真空容器
13 ロール
14 高分子フィルム
15 蒸着ロール
16 ボート
17 金属膜
18 金属蒸着フィルム(絶縁破壊区画箇所の処理前)
19 ロール
21 プレヒーリング装置
22 ロール
23,24 電極ロール
25 ロール
26 巻き取りロール
31 保安機構マージン部形成装置
32 レーザー加工機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルムの少なくとも片面に金属膜を蒸着して金属蒸着フィルムを形成した後、レーザー加工機にて保安機構マージン部を形成し、前記保安機構マージン部が形成された前記金属蒸着フィルムを長手方向に所定の距離を有して挟み込む電極ロール間に300〜600Vの直流電圧を印加することにより前記金属蒸着フィルムにプレヒーリングを施して絶縁破壊区画箇所を処理し、この際の前記電極ロール間の距離が100〜200mmであり、前記電極ロールの直径が80〜100mmφであり、前記電極ロールのフィルム抱き角が90〜180°であり、前記プレヒーリングにて流れる電流により、前記処理された絶縁破壊区画箇所が属する保安機構マージン部の間を切断することを特徴とする低い初期不良率で高信頼性を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法。
【請求項2】
高分子フィルムの少なくとも片面に金属膜を蒸着するとともに保安機構マージン部を形成するとともに、前記保安機構マージン部が形成された金属蒸着フィルムを長手方向に所定の距離を有して挟み込む電極ロール間に300〜600Vの直流電圧を印加することにより前記金属蒸着フィルムにプレヒーリングを施して絶縁破壊区画箇所を処理し、この際の前記電極ロール間の距離が100〜200mmであり、前記電極ロールの直径が80〜100mmφであり、前記電極ロールのフィルム抱き角が90〜180°であり、前記プレヒーリングにて流れる電流により、前記処理された絶縁破壊区画箇所が属する保安機構マージン部の間を切断することを特徴とする低い初期不良率で高信頼性を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法。
【請求項3】
高分子フィルムの少なくとも片面に金属膜を蒸着して金属蒸着フィルムを形成した後に、前記金属蒸着フィルムに300〜600Vの直流電圧印加によるプレヒーリングを施して絶縁破壊区画箇所を処理して検出し、レーザー加工機にて、前記処理された絶縁破壊区画箇所以外の区画箇所に保安機構マージン部を形成することを特徴とする低い初期不良率で高信頼性を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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