説明

フィルムスイッチ

【課題】 本発明は、一動作にて2組の回路が同時にスイッチ作用する冗長性を備え、且つスイッチ機能を長期に亘って断線等することなしに安定して作用し続けるフィルムスイッチを新規に提供するものである。
【解決手段】 本発明は、上面に並設の窓孔内を横断する有端の細片の押し下降にて上下の導電線面を離間させ、押しの解除にて上下の導電線面を反撥接面するようにしたフィルムスイッチにおいて、該フィルムスイッチを長期に亘って安定してスイッチ機能を持続させるために互いに干渉しないようにして該上下の導電線面を2組づつにて設け、且つ該有端の各細片の先部を拡げ分けして2股のベースとし、各ベースの上面に均等圧をもって上側の導電線面に接面し離反する2組の架橋用の端子面を設けたこと特徴とするフィルムスイッチにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフィルムスイッチ、詳しくはベッド上の患者の存在不存在を通報するベッドセンサー、無人搬送車・ロボットなどの走行等を案内するセンサースイッチおよび各種の防犯用として、特に機器,ロボットの安全回路に使用するラインスイッチ,マットスイッチなどに使用するフィルムスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
機器等の非常停止等のための安全回路においては、より高い安全性を確保するためにスイッチの強制開離機構を有し、さらに回路全体が冗長性、すなわち一動作により同時に作用する重複した回路を備えて、1つが故障しても他方が全体の機能を代行できることが望ましく、これによって電気回路の1つの故障が危険を生ずる確率を最小限にしようとしている。
本願出願人はこの種の安全回路の一部として使用するフィルムスイッチとして特願2005−135094号を提案している。該特許願は上片の内面に小幅の絶縁部を挟んで多数の分断型の導電線面を直列に設けるとともに、該上片に窓孔を並設して下片下に延長折り当て接着し、該下片の他端の上方への折返しにより各窓孔下を通って前記導電線面に反撥当接して架橋導電する多数のコ形細片を設け、該コ形細片のいずれかひとつの押し下降にて前記の導電線面間を絶縁するようにした1組の回路を設けている。
【特許文献1】特願2005−135094
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、1回路構成のフィルムスイッチにて安全回路に冗長性を持たせるためにはフィルムスイッチを2本使用しなくてはならず、コスト高,設置スペースの問題および同時作動性の確保が難しいという課題がある。また2本のフィルムスイッチを使用するときは同一動作により一方の回路を閉じて他方の回路を開く、または一方を開いて他方を閉じるという逆作用性を実現することはできないという課題がある。
【0004】
また有端の細片上に延びる下側導電面の窓孔より表出する部分は押しの反複によって剥離等して断線しやすいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、スイッチ機能を長期に亘って安定して持続させるためにフィルムスイッチの上下の導電線面を互いに干渉することなしに2組づつにて設けるとともに、各有端の細片の先部を拡げ分けして2股のベースとし、各ベースに均等圧をもって上側の導電面に接離する2組の架橋用の端子面を設けて、または2股のベースに上下の段差を設けて2組の架橋用端子面の一方を上側ベースの上面、他方を下側ベースの下面にそれぞれ配するとともに2組の上側導電線面のうちの他方を前記他方の架橋用端子面に相対する位置に配設し、さらに各窓孔より表出する有端の細片上の下側導電面の部分を膜体にて保護して剥離等が生じないようにして、かかる課題を解決するようにしたのである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は上下の導電線面を相互に干渉しないようにして2組にて設けたので、一動作により作用する1本のフィルムスイッチに冗長性を備えて回路に高いレベルの安全性を確保することができるとともにコスト面,設置スペース面の問題を解消することができるという効果を生ずる。1組に断線等の故障が生じても他組が引続き導電することでスイッチ機能を続けることができるという効果を生ずる。
【0007】
ベースに上下の段差を設けて架橋用端子面を上側ベースの上面と下側ベースの下面に設けるときは、2組の回路を一動作にてONとOFF、またはOFFとONの同時作用の組合わせとするスイッチ回路として使用することができるという効果を生ずる。
【0008】
各細片の先部の拡げ分けしたベース上に2組の架橋用の端子面を設けたので、2組の上下の導電線面間を安定してON,OFFのスイッチ作用をさせることができるという効果を生ずる。
【0009】
2組の端子面は上側の導電線面に相対してフィルムスイッチの上面下に被覆されて表出しないために剥離等が生ぜずしてゴム筒などの保護コードに通すことなくして裸の状態でも張設使用することができるという効果を生ずる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、上面に並設の窓孔内を横断する有端の細片の押し下降にて上下の導電線面を離間させ、押しの解除にて上下の導電線面を反撥接面するようにしたフィルムスイッチにおいて、該フィルムスイッチに冗長性を持たせ且つ長期に亘って安定してスイッチ機能を持続させるために互いに干渉しないようにして該上下の導電線面を2組づつにて設け、且つ該有端の各細片の先部を拡げ分けして2股のベースとし、各ベースの上面に均等圧をもって上側の導電線面に接面し離反する2組の架橋用の端子面を設けたことを特徴としている。
【実施例1】
【0011】
2組づつにて上下の導電線面A1,A2、B1,B2を断続コーティング配線するフィルムスイッチ1は、弾撥性を有すプラスチックフィルムを用いて図1に示すように断面視楕円形状の折り返し曲げにて細く長い形状にて形成し、上面2に窓孔3を並設して各窓孔3内に下片4端より円曲折り返しする有端の細片5を横断させてなり、該細片5は下片4の延長にてなる反撥曲部4aによって上方向に向けて弾発付勢されている。各細片5上には下側導電線面B1,B2の延長部が設けられており、窓孔3より表出する部分は剥離等を防止するために膜体6の重着にて保護して剥離しないようにしている。しかして各細片5の先部は2股に拡げ分けして2つのベース5a,5bを形成し、それぞれの上面に架橋用の端子面C1,C2を設けている。下側の導電線面B1,B2は上側の導電線面A1,A2の断続部に相対して設けられていて、且つ端子面C1,C2につながっている。
なお、端子面C1,C2は上側導電線面A1,A2下にあって窓孔3より表出しないようになっている。
【0012】
形成されたフィルムスイッチ1は使用箇所に張設するのである。いずれかの細片5を上方から押し下降すると端子面C1,C2は下降して上面2の内面に設けた上側の導電線面A1,A2から離れて導電を遮断してスイッチをOFFとし、押しを解くと細片5の弾撥上動にて端子面C1,C2が上側の導電線面A1,A2に同時に戻り接面し架橋して通電状態となる。
【0013】
この間端子面C1,C2は2股に拡げ分けしたことによって均等に上下動して確実にON,OFFのスイッチ作用を行うこととなる。
【0014】
上下の導電線面は図3(c)に示すように交叉する個所では絶縁材8によるコーティング面を挟んで配線コーティングするものであり、図4に示すように交叉なしにて配線コーティングすることもできる。
【0015】
フィルムスイッチ1はゴムなどの保護コード(図示してない)に通すこともでき、裸のままにて使用箇所に張設することもできる。
【0016】
なお、フィルムスイッチ1は上面に設けた曲折用の細溝7をもとにして図7(b)に示すように折り曲げ張設することができる。
【0017】
フィルムスイッチ1は常態では、図2(a),図3(a)に示すように有端の細片5の反撥上動によって2組の上下の導電線面A1,A2とB1,B2はそれぞれ架橋して導電状態を保っているが、図2(b)に矢印で示すように並列窓孔3下のひとつの細片5を押して下降させるとその細片5の端子面C1,C2は図3(b)に示すように導電線面A1,A2より離れて導電を遮断することとなる。どの位置の細片5を押し下降させても上下の導電線面はその全長において非導電となり、押しが解かれると図2(c)に示すように細片5の弾撥上動によって端子面C1,C2は導電線面A1,A2に接面し架橋して通電状態となる。
【0018】
本発明のフィルムスイッチ1は導電の遮断を検知した信号によって警報を発し、また自動停止の制御に役立てるのである。曲げることができることから、図8(a)に示すように例えば無人搬送車9のバンパー9aに取付けてバンパースイッチとして使用することもできる。
【0019】
また図8(b)に示すようにフィルムスイッチ1をベッド10上に敷いてベッドセンサーとして使用するのである。患者がベッド10上にいるとその押圧によって細片5は押されて上下の導電面間を絶縁しているが、患者がベッド10から落ちたり不在になると細片5の端子面が上側導電面に反撥接触して導電状態とするので警報(図示してない)等が作動して患者の不在をしかるべき部署に知らせることとなる。
【0020】
またフィルムスイッチ1を多数本並列することで、図8(c)に示すように検知範囲の広く大きいマットスイッチ11にすることもできる。
【実施例2】
【0021】
図9は第2実施例を示すもので、2股のベース5a,5bにベース5aを上、ベース5bを下とする上下の段差を設けて形成し、架橋用端子面C1は上側のベース5aの上面のまま、架橋用端子面C2を下側のベース5bの下面に配し、上側導電線面A2を架橋用端子面C2に相対する位置の下片4上に配設してなり、常態で架橋用端子面C1が上側導電線面A1に接面してONとなっているときに架橋用端子面C2は導電線面A2と離れてOFF状態であり、細片5を押し下降して架橋用端子面C1が上側導電線面Aから離れてOFFとなるときに下面の架橋用端子面C2が導電線面A2に接面してON状態となり、押しの解除にて上側が再びONとなるときに下側がOFFとなるようにしたものである。なおこの実施例のフィルムスイッチ1は、全長に並設するすべての細片5が同時に押し下降されて下面の架橋用端子面の全部が架橋導電し、細片5の押しが全部同時に解除されて上面の架橋用端子面のすべてが架橋導電となる状況において使用することができる。また図10に示すように、導電線面A2の全長と端子面C2に連なる導電線面B2の全長を断続することなく連続させることによって、いずれか1つの細片5が押し下降されたときにもON状態となり、押しの解除によりOFF状態となるようにすることもできる。このようにして2組の回路のうちいずれか一方が導電状態となることによって異なる構成の安全回路用として使用できるものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、フィルムスイッチに2組の独立した回路を有せしめて、該2組の回路を押し下降により同時に非導電、押しの解除により同時に導電常態とするスイッチ作用または押し下降により同時に開と閉、押しの解除により同時に閉と開とにスイッチ作用するようにして冗長性を持たせたので、安全性の高い回路用スイッチとして長期に亘り断線のないスイッチとして広範に利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】フィルムスイッチの部分斜視図、
【図2】(a)は同、常態の拡大縦断面図、(b)は細片の押し下降による導電の遮断状態を示す断面図、(c)は弾撥上動による戻り架橋状態を示す断面図
【図3】(a)は回路図、(b)は同、押し下降による同時遮断状態を示す部分図、(c)は交叉配線個所の拡大断面図
【図4】交叉なしの配線例を示す回路図
【図5】(a)はフィルムスイッチを展開した状態にて示す平面図、(b)は同、戻り線を配して一端側で端子を取り出せるようにした例の平面図
【図6】交叉なしの配線例を示す展開平面図
【図7】(a)はフィルムスイッチの細溝部分の拡大側面図、(b)は同、折り曲げ例を示す部分拡大側面図
【図8】(a)は無人搬送車のバンパースイッチとしての使用例を示す斜視図、(b)はベッドセンサーとしての使用例を示す斜視図、(c)はマットスイッチとしての使用例を示す斜視図
【図9】第2実施例で、(a)は常態時において上面側の回路が閉じ、下面側の回路が開いている状態、(b)は押し下降により上面の回路が開、下面の回路が閉となった状態を示す拡大縦断面図
【図10】下面側の回路の他の配線例を示す回路図(上面側の回路は省略)
【符号の説明】
【0024】
1はフィルムスイッチ
2は上片
3は窓孔
4は下片
4aは弾発曲部
5は細片
5a,5bは2股に拡げ分けしたベース
6は膜体
7は細溝
8は絶縁材
9は無人搬送車
9aはバンパー
10はベッド
11はマットスイッチ
A1,A2は上側の導電線面
B1,B2は下側の導電線面
C1,C2は端子面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に並設の窓孔内を横断する有端の細片の押し下降にて上下の導電線面を離間させ、押しの解除にて上下の導電線面を反撥接面するようにしたフィルムスイッチにおいて、該フィルムスイッチに互いに干渉しないようにして該上下の導電線面を2組づつにて設け、且つ該有端の各細片の先部を拡げ分けして2股のベースとし、各ベースの上面に均等圧をもって上側の導電線面に接面し離反する2組の架橋用の端子面を設けたこと特徴とするフィルムスイッチ。
【請求項2】
2股のベースに上下の段差を設けて2組の架橋用端子面の一方を上側ベースの上面、他方を下側ベースの下面にそれぞれ配するとともに2組の上側導電線面のうちの他方を前記他方の架橋用端子面に相対する位置に配設し、細片の押し下降により上面の架橋用端子面が導電線面から離れて開となるときに下面の架橋用端子面が導電線面に接面して閉となり、押しの解除にて上側の架橋用端子面が閉となるときに下側の架橋用端子面が開となるようにした請求項1に記載のフィルムスイッチ。
【請求項3】
窓孔より表出する細片上の下側導電線面を膜体にて被覆して剥離等が生じないようにする請求項1または2に記載のフィルムスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−10235(P2008−10235A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177661(P2006−177661)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(503144869)株式会社アイデル (2)
【Fターム(参考)】