説明

フィルム付きパッキン及びその製造方法

【課題】本発明は、離型性が良好で、ばりのない、且つ被シール部材への装着作業性に優れた粘着性のある硬化性液状樹脂組成物のパッキン、及び製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
支持フィルムが剥離容易なように一体化したパッキンであり、パッキンが、下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性液状組成物を硬化させて得られた硬化物であることを特徴とする支持フィルム一体化パッキン。
(A)1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有する、分子量が1,000〜50,000の、ポリオキシアルキレン重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性液状樹脂組成物の成形方法に関する。更に詳しくは、ポリオキシアルキレン系ゴムパッキンの成形方法に関する。本発明の成形方法で得られるパッキンは電子材料部材などの防水パッキンとして利用できる。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、モバイルパソコン、MP3プレイヤー、デジタルビデオレコーダー、デジタルカメラ等に代表される小型携帯電子機器は、処理速度の向上や記録容量の増大といった高性能化に加え、インターネットによる通信機能、ゲーム機能、音楽・画像ファイルの取り込み及び再生機能等、多機能化も急速に進んでいる。さらに、小型化、薄型化、軽量化といったより携帯しやすいものが開発され、屋外での使用頻度はますます高くなってきており、使用環境の変化に対応した筺体構造の改変や機能付与がより重要となってきている。中でも、防水性は、上記に代表される小型携帯電子機器を野外にて使用する際、誤って水中に落としたり、雨や雪、霧などで濡れた場合、水や水蒸気がその内部に侵入することによる故障を防ぐためには特に重要な機能であり、その要求レベルも年々高まってきている。
【0003】
電子機器の小型化薄型化の要求に伴い、防水パッキンの寸法は幅、厚さともに1mm前後のものが要求されているが、低硬度でパッキンの剛性が小さいため、形状保持性がない。
【0004】
従来のパッキンの製造方法は、ゴムシートをリング状に打ち抜いてパッキンを製造する方法(特許文献1)(特許文献2)などが開示されているが、材料ロスや、パッキンの装着性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-189362号公報
【特許文献2】特開平10-173364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容易にフィルム一体で取り出すことができ、且つ被シール部材への装着作業性に優れた、硬化性液状樹脂組成物より得られるパッキン及び成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、この目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ばりが発生せず、容易にフィルム一体で取り出すことができ、且つ被シール部材への装着作業性に優れた、硬化性液状樹脂組成物のパッキンの成形方法を発明するに至った。すなわち、
(1).
支持フィルムが剥離容易なように一体化したパッキンであり、パッキンが、下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性液状組成物を硬化させて得られた硬化物であることを特徴とする支持フィルム一体化パッキン、
(A)1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有する、分子量が1,000〜50,000の、ポリオキシアルキレン重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
(2).
支持フィルムを金型内にインサートし、下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性液状樹脂組成物を射出、加熱硬化することを特徴とする、支持フィルム一体化パッキンの製造方法、
(A)1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有する、分子量が1,000〜50,000の、ポリオキシアルキレン重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
(3).
剥離剤処理した支持フィルムを用い、かつ剥離剤処理した面がパッキン側になるように支持フィルムを金型内にインサートすることを特徴とする、(2)に記載の支持フィルム一体化パッキンの製造方法。
(4).
材料が充填される金型キャビティ表面の算術平均粗さが0.2μm以上10μm以下であることを特徴とする(2)〜(3)のいずれか1項に記載の支持フィルム一体化パッキンの製造方法、
(5).支持フィルムと一体化したパッキンを略環状の溝が設けられた被シール部材に装着する際、被シール部材とパッキンの密着力が支持フィルムとパッキンの密着力より大きいことを特徴とする(2)〜(4)のいずれか1項に記載の支持フィルム一体化パッキンの製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパッキンの成形方法によれば、安定してばりのないパッキンが得られ、容易にフィルム一体で取り出すことができ、且つ被シール部材への装着作業性に優れた、硬化性液状樹脂組成物のパッキンが生産可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】支持フィルム付きパッキンの断面図
【図2】支持フィルムを金型にインサートした状態の断面図(硬化性液状組成物の射出前)
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明を実施するための最良の形態を詳しく説明する。
図1は、フィルム付パッキンの構成例である。支持フィルムの片面に剥離容易なようにパッキンが密着されている。防水パッキンの寸法は幅、厚さともに1mm前後のものが要求されており、低硬度でパッキンの剛性が小さいため、パッキン単体では形状保持性がないため、筐体へのパッキンを装着作業性が悪い。フィルム付きパッキンの場合、フィルムの剛性により形状が維持され筐体溝への装着性が著しく改善される。筐体溝へ装着後、支持フィルムを剥がすことによりパッキンが筐体へ移行、装着される。支持フィルムと一体化したパッキンを略環状の溝が設けられた被シール部材に装着する際、被シール部材とパッキンの密着力が支持フィルムとパッキンの密着力より大きくなるようにフィルムを剥離剤処理することが好ましい。
【0011】
図2は、支持フィルムを金型にインサートした状態の断面図である。金型は、4の可動側金型と5の固定側金型より構成され、型締めを行うと、パッキンを成形するための空間(キャビティ)6が形成される。この4の可動側金型と5の固定側金型の間には、パッキンを密着させて取り出すための支持フィルム1が設けられている。4の可動側金型と5の固定側金型は、100〜150℃好ましくは120〜140℃に加熱されており、金型の外側には断熱板が設けられている。金型の加熱手段は、電気カートリッジヒータ、オイルなどの熱媒温調などが一般的な方法である。本成形においては、材料が充填される金型キャビティ表面の算術平均粗さが0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0012】
フィルムと一体で金型から取り出すためには、高温下において成形品とフィルムの密着力を、成形品と金型との密着力より大きくする必要がある。また、一方で被シール部材へのパッキン装着作業時においては、常温で、フィルムの密着力はシール部材の密着力より小さくする必要がある。金型キャビティの表面粗さを算術平均粗さで0.2μm以上にすることにより金型との密着力が低減可能である。これは、表面を粗らすことにより空気が入りやすくなり離型抵抗が低下するためである。金型表面粗さを制御する方法としては、ブラスト処理などが一般的である。成形品の離型性を向上させるため、表面粗さの制御と金型メッキなどの表面処理を併用しても良い。また、離型剤を塗布して離型性を向上させることが多いが、離型剤が成形品に転写してしまい、成形品の粘着性を低下させ、被シール部材へのパッキン装着性時にシール部材との密着力が低下するのため好ましくない。支持フィルムに関しては、パッキンと一体化する面には、剥離剤処理しているのが好ましい。ただしフィルム一体でパッキンを取り出すためには、金型との密着力より大きい密着力が必要である。支持フィルム基材の材質は、100〜200℃で1分間好ましくは2分間の耐熱性があればよい。材質は、例えばPET系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、が好ましい。剥離剤層はシリコーン系、フッ素系が好ましい。支持フィルムの厚みは、10〜500μmが好ましくより好ましくは20〜200μmである。材質は、加熱硬化型液状樹脂組成物の成形品と適度な密着性を有していればよい。ただし、成形品支持フィルムの表面状態はそのまま成形品表面に転写されるので、表面欠陥がなく、均一な厚みが必要である。成形品支持フィルムの形状は、枚葉形状でもロールから繰り出した長尺形状でもかまわない。
【0013】
次に成形方法について詳しく説明する。硬化性液状樹脂組成物は、ペール缶、ドラム缶、専用のカートリッジなどの容器に充填された状態で供給される。硬化性液状樹脂組成物は主剤、硬化剤、触媒、フィラーなどがコンパウンドされたものであるが、硬化反応が進行しないように触媒をA液に添加し、硬化剤をB液に添加する2液型が好ましい。容器に充填されている硬化性液状樹脂組成物はポンプやエアーシリンダーなどにより圧送され、計量機構に供給される。次に計量機構でA液とB液が同容量になるように所定量計量され、成形装置のシリンダー内へ供給されA液とB液は混合される。混合機構は、ダイナミックミキサー、またはスタティックミキサー、または、その併用が好適である。混合された硬化性液状樹脂組成物は、成形装置のバレル内で所定量計量される。次に予め100〜200℃に加熱された金型は、支持フィルムを挟み込んだ状態で型締めされる。支持フィルムが挟まれた状態で型締めされた後、キャビティ内へ硬化性液状樹脂組成物が射出される。射出されると同時に硬化反応が進行し、所定時間経過後、型開動作が行われる。型が開くとパッキンは支持フィルムに適度に密着しながら支持された状態で取り出され、フィルム付きパッキンを得ることができる。
【0014】
本発明で使用する硬化性液状樹脂組成物は、下記(A)〜(C)成分を含有する。
(A)1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有する、分子量が1,000〜50,000の、ポリオキシアルキレン系重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
以下それぞれの成分について説明する。
【0015】
本発明の(A)成分である、1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有する、分子量が1,000〜50,000のポリオキシアルキレン系重合体としては、特に制限はなく、公知のものがあげられる。具体的には、重合体の主鎖骨格が、一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものがあげられる。
一般式(1):
−R−O− (1)
(式中、Rは2価のアルキレン基)
一般式(1)中に記載のRとしては、2価のアルキレン基ならば特に限定されず、このなかでも炭素数1〜14のアルキレン基が好ましく、2〜4の、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基がより好ましい。一般式(1)記載の繰り返し単位としては、特に限定されず、たとえば、−CHO −、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CHCH (C)O−、−CHC(CHO−、−CHCHCHCHO−等が挙げられる。
【0016】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなるものでも、複数の繰り返し単位を組み合わせたものでもよい。このなかでも、入手が容易なこと、作業性に優れることなどから、主な繰り返し単位として−CHCH(CH)O−からなる重合体が好ましい。また、重合体の主鎖骨格中にはオキシアルキレン単位以外の繰り返し単位が含まれていてもよい。この場合、重合体中に含まれるオキシアルキレン単位の総和の割合は、80重量%以上、特には90重量%以上が好ましい。
【0017】
(A)成分の重合体の主鎖骨格は、直鎖状の重合体でも分岐を有する重合体でもよく、また、その混合物でもよい。この中でも良好な弾性を得るため、直鎖状の重合体を50重量%以上含有することが好ましい。
【0018】
(A)成分の重合体の数平均分子量は1,000 〜50,000であるが、より好ましくは、5,000〜30,000である。数平均分子量が1,000未満のものでは、得られる架橋ゴムの弾性率が高くなり、逆に数平均分子量が50,000を超えると高粘度となり組成物の取り扱いが著しく低下する傾向にある。数平均分子量は、各種の方法で測定可能であるが、通常、ポリオキシアルキレン系重合体の末端基分析からの換算や、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。本発明の(A)成分の分子量は特に断らない限りGPC法により測定したポリスチレン換算値を記すこととする。
【0019】
(A)成分中のアルケニル基としては、特に限定されず、公知のものがあげられる。このなかでも、下記の一般式(2)で示されるアルケニル基が好ましい。一般式(2):
C =C(R )− (2)
(式中、Rは水素又はメチル基である。)
アルケニル基のポリオキシアルキレン系重合体への結合様式としては特に限定されず、たとえば、アルケニル基の直接結合、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合等が挙げられる。
【0020】
(A)成分の重合体としては、一般式(3):
[HC =C(R)−R−O]−R (3)
(式中、Rは水素又はメチル基である。Rは炭素数1 〜20の2価の炭化水素基であり、その中には、1個以上のエーテル基が含まれていてもよい。Rはポリオキシアルキレン系重合体の開始剤残基である。aは正の整数である。)で示される重合体が挙げられる。一般式(3)中に記載のRは、特に限定されず、たとえば、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHCHCHCH−,−CHCHOCHCH −、または−CHCHOCHCHCH−などがあげられる。このなかでも、合成が容易なことなどから、−CH −が好ましい。
【0021】
前記以外の、(A)成分の重合体としては一般式(4):
[HC=C(R)−R−OC(=O)]−R (4)
(式中、R ,R ,R及びa は一般式(3)の表記と同じ)で示されるエステル結合を有する重合体が挙げられる。
【0022】
また、一般式(5):
[HC =C(R)]−R (5)
(式中、R、R 及びa は、一般式(3)、(4)の表記と同じ)で示される重合体も挙げられる。さらに、次の一般式(6):
[HC =C(R)−R−OC(=O)O]−R (6)
(式中、R、R、R及びaは一般式(3)、(4)、(5)の表記と同じ)で示されるカーボネート結合を有する重合体も挙げられる。
【0023】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の重合方法としては、特に限定されず、たとえば、特開昭50−13496号等に開示されているオキシアルキレンの通常の重合法(苛性アルカリを用いるアニオン重合法)、特開昭50−149797号等に開示されている前記アニオン重合法によって得られた重合体を原料とした鎖延長反応方法による重合法、特開平7−179597号等に開示されているセシウム金属触媒を用いる重合法、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号に開示されているポルフィリン/アルミ錯体触媒を用いる重合法、特公昭46−27250号及び特公昭59−15336号等に開示されている複合金属シアン化物錯体触媒を用いる重合法、特開平10−273512号等に開示されているポリフォスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法等があげられる。
【0024】
このなかでも、実用性が高いこと、触媒の入手が容易であること、重合体が安定して得られることなどから、複合金属シアン化物錯体触媒を用いる重合方法が好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒の製造方法としては、特に限定されず公知の方法があげられ、たとえば、米国特許第3,278,457号、同3,278,459号、同5,891,818号、同5,767,323号、同5,767,323号、同5,536,883号、同5,482,908号、同5,158,922号、同4,472,560号、同6,063,897号、同5,891,818号、同5,627,122号、同5,482,908号、同5,470,813号、同5,158,922号等に開示されている製造方法が好ましい。
【0025】
1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の合成方法としては、特に限定されず、たとえば、ポリオキシアルキレン系重合体を製造するための通常の重合法(苛性アルカリを用いるアニオン重合法)や、この重合体を原料とした鎖延長反応方法のほか、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号、特公昭46−27250号及び特公昭59−15336号などに開示されている方法により得ることができる。
【0026】
ポリオキシアルキレン系重合体にアルケニル基を導入する方法としては、特に限定されず公知の方法があげられ、たとえば、アリルグリシジルエーテルのようなアルケニル基を有する化合物とオキシアルキレン化合物との共重合による方法があげられる。また、アルケニル基を主鎖あるいは側鎖に導入する方法としては、特に限定されず、たとえば、主鎖あるいは側鎖に水酸基、アルコキシド基等の官能基を有するオキシアルキレン系重合体に、これらの官能基に対して反応性を有する官能基及びアルケニル基を有する有機化合物を反応させる方法があげられる。なお、アルケニル基が重合体の主鎖末端に存在する重合体を含む硬化性組成物は、得られる硬化物が、大きな有効網目鎖長を有し、機械的特性に優れることから好ましい。
【0027】
水酸基、アルコキシド基等の官能基に対して反応性を有する官能基及びアルケニル基を有する有機化合物としては、特に限定されず、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸クロライド若しくはアクリル酸ブロマイド等の炭素数3〜20の不飽和脂肪酸の酸ハライド、酸無水物、アリルクロロホルメート、アリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1 −ブテニル(クロロメチル)エーテル,1 −ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0028】
(A)成分である重合体の1分子中に存在するアルケニル基の数としては、平均1個を超え5個以下が好ましい。さらに好ましくは1.2個以上3個以下である。重合体(A)1分子中に存在するアルケニル基の数が1個以下になると、硬化性組成物の硬化が不充分になる傾向があり、得られる硬化物は、網目構造が不完全なものとなり、良好な成形体が得られない傾向がある。また、重合体(A)1分子中に存在するアルケニル基が多くなると、得られる硬化物の網目構造があまりに密となるため、成形体は硬く脆くなる傾向がある。特に、5個以上になるとその傾向は顕著となる。
【0029】
本発明における(B)成分である1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物としては、ヒドロシリル基を有するものであれば特に限定されず、このなかでも原材料の入手が容易なこと、(A)成分への相溶性が良好なことなどから、有機基で変性されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。(B)成分のヒドロシリル基の個数は、少なくとも2個以上であり、上限は20個以下であることが好ましい。
【0030】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、公知の鎖状または環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができ、(A)成分との相溶性の観点からは、芳香族環含有鎖状または環状オルガノハイドロジェンシロキサンが好適である。具体的には、特開2006−291073号公報 段落[0088]〜[0093]記載のヒドロシリル基含有化合物が挙げられる。
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては特に限定されず、たとえば、下記の構造式等で示される鎖状又は環状の化合物があげられる。
【0031】
【化1】

【0032】
(式中、2<b+c≦40、2<b≦20、0<c≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を有していてもよい。)、
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、0≦d+e≦40、0≦d≦20、0<e≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を有してもよい。)、又は、
【0035】
【化3】

【0036】
(式中、3≦f+g≦20、2<f≦20、0<g≦18である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を含有してもよい。)
(A)成分及び(C)成分との相溶性、又は、分散安定性および硬化速度が比較的良好な(B)成分としては、とくに限定されず、たとえば、下記の構造式で示される化合物があげられる。
【0037】
【化4】

【0038】
(式中、2<k+l≦20、2<k≦19、0<l≦18であり、Rは炭素数8以上の炭化水素基である。)
好ましい(B)成分の化合物の具体的例としては、(A)成分との相溶性確保と、ヒドロシリル基量の調整を目的に、メチルハイドロジェンポリシロキサンを、α−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、アリルアルキルエーテル、アリルアルキルエステル、アリルフェニルエーテル、アリルフェニルエステル等により変性した化合物があげられ、一例として、以下の構造式で示される化合物があげられる。
【0039】
【化5】

【0040】
(式中、2<p+q≦20、2<p≦19、0<q≦18である。)
また、分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物でヒドロシリル基の一部が置換された鎖状または環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することもできる。具体的には、過剰量の上記ヒドロシリル基含有化合物に対し、後述するヒドロシリル化触媒の存在下、分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物をゆっくり滴下することにより得られる変性ヒドロシリル基含有化合物をヒドロシリル基含有化合物(B)として使用できる。分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物としては、脂肪族炭化水素系化合物、エーテル系化合物、エステル系化合物、カーボネート系化合物、イソシアヌレート系化合物や芳香族炭化水素系化合物等が挙げられ、具体的には特開2006−291073号公報 段落[0094]記載の化合物を使用できる。このような変性ヒドロシリル基含有化合物のうち、原料の入手容易性、過剰に用いたヒドロシリル基含有化合物の除去のしやすさ、さらには(A)への相溶性を考慮して、下記のものが好ましく挙げられる。
【0041】
【化6】

【0042】
本発明における(B)成分であるヒドロシリル基を有する化合物の使用量は、(A)成分の重合体中に存在するアルケニル基の量と、(B)成分中の化合物中に存在するヒドロシリル基の量の関係において、適宜選択され、このなかでも、 [(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が5〜0.2の範囲にあることが好ましく、2.5〜0.4であることが特に好ましい。(B)成分中のヒドロシリル基の総量とは、ヒドロシリル基を有する化合物(B)のヒドロシリル基含有量(mol/g)に配合量(g)を乗じた量を表すものとする。また(A)成分中のアルケニル基の総量とは、アルケニル基を有する重合体(A)のアルケニル基含有量(mol/g)に配合量(g)を乗じた量を表すものとする。モル比が5より大きいと、硬化後も硬化物中に活性なヒドロシリル基が多く残るので、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のある硬化物が得られにくくなる傾向があり、0.2より小さいと、硬化が不十分で強度の小さい硬化物が得られ易くなる傾向がある。このように(B)成分の使用量については、下限、上限の両方に注意する必要がある。
【0043】
本発明の硬化性組成物においては、上記ヒドロシリル基含有化合物を1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
【0044】
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒については、特に制限はなく、公知のものが使用できる。
【0045】
具体的に例示すれば、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;
白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、
Ptn (ViMe SiOSiMe Vi)
Pt〔(MeViSiO) };
白金−ホスフィン錯体{例えば、
Pt(PPh 、Pt(PBu };
白金−ホスファイト錯体{例えば、
Pt〔P(OPh) 、Pt〔P(OBu)
(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒も挙げられる。
【0046】
また、白金化合物以外のヒドロシリル化触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al 、RuCl 、IrCl、FeCl 、AlCl 、PdCl・2HO、NiCl、TiCl 等が挙げられる。
【0047】
これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)等が好ましい。触媒使用量としては特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10−8〜10−1molの範囲で用いるのがよい。好ましくは10−6〜10−2molの範囲で用いるのがよい。10−8mol未満では、硬化速度が遅く、また硬化性が不安定になる可能性が高い。逆に10−1molを越える場合は、ポットライフの確保が困難であるため好ましくない。
【0048】
また、本発明の(A)〜(C)成分を含む硬化性組成物には、必要に応じて可塑剤を添加することができる。可塑剤とは、本硬化性組成物の流動性を改善するために使用するものであり、本発明に用いる(A)成分と相溶性のよいものが好ましい。このような可塑剤の具体例としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアクリル系の可塑剤が挙げられる。
【0049】
このような可塑剤の使用量としては、本発明の(A)成分100重量部に対し、1〜100重量部であることが好ましい。1重量部に満たない場合は、組成物の流動性が低下し成形性が悪化する。振動、衝撃吸収性能を高める効果は小さく、また100重量部を超えると、硬化させて得られる架橋ゴムにおいて、強度が不足する、表面タックが大きいなどの問題が生じる。
【0050】
また、本発明の(A)〜(C)成分を含む硬化性組成物には、必要に応じて保存安定性改良剤を添加することができる。保存安定性改良剤とは、本硬化性組成物の貯蔵中の硬化、劣化等物性の低下を防止する働きを担う。保存安定性改良剤としては、本発明の(B)成分の保存安定剤として知られている公知の安定剤であって所期の目的を達成するものであれば特に限定されず、たとえば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等があげられる。具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォジニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン等が挙げられる。また、このような保存安定剤の使用量は、用いる保存安定剤の分子量や、本発明(C)成分であるヒドロシリル化触媒の使用量にも依るが、本発明の(A)成分100重量部に対し、0.005〜0.5重量部が好ましい。保存安定剤がこれより少ないと、十分な保存安定性が得られず、保存中に硬化する問題が生じる。また、保存安定剤がこれより多いと、硬化阻害が大きく、硬化性が低下する問題が生じる。
【0051】
また、本発明の(A)〜(C)成分を含む硬化性組成物には、必要に応じて充填剤を添加することができる。充填剤の具体例としては、シリカ微粉末、炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、酸化チタン、亜鉛華、ケイソウ土、硫酸バリウム等が挙げられる。充填剤の使用量としては、本発明の(A)成分100重量部に対し、1〜300重量部であることが好ましい。1重量部に満たない場合は、充填剤を使用する効果は小さく、また300重量部を超えると、硬化前組成物の粘度が高くなり過ぎ、取り扱いが困難となる。
【0052】
シリカ微粉末としては、ケイ酸ソーダの加水分解による湿式製造法等から得られる含水シリカ、及び四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素あるいは有機ケイ素化合物の熱分解による乾式製造法等から得られる無水シリカを用いることができる。
【0053】
また、本発明の(A)〜(C)成分を含む硬化性組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤、溶剤、シリコン化合物、粘着付与樹脂を適宜添加してもよい。
【0054】
本発明の硬化性組成物から得られる成形品は、ガスバリアー性、圧縮永久歪が良好で、パッキン材料として好適である。成形品およびシートは、電子部品の保護の目的で使用される高精度の薄膜ゴムシートや、電気、自動車、エネルギー、医療などの様々な分野の振動吸収性、衝撃吸収性、衝撃緩和性、振動絶縁性成形体およびシートとして用いることができる。
【実施例】
【0055】
つぎに実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
(アリル基末端ポリオキシアルキレン系重合体(A−1)の製造例)
ポリプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、数平均分子量約10,000(GPC法により測定)の水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。続いて、この水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体の水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeの28%メタノール溶液と塩化アリルを添加して末端をアリル基に変換した。この反応物をヘキサンに溶かしケイ酸アルミニウムで吸着処理した後、ヘキサンを減圧除去することにより、1分子中に平均して2個のアリル基末端を有するポリオキシプロピレン重合体(A−1)が得られた。
【0057】
(ヒドロシリル基を有する化合物(B−1)の製造例)
(−Si−O−)繰り返しユニットを平均して7.5個もつメチルハイドロジェンシリコーンに白金触媒存在下全ヒドロシリル基量の0.2当量のα−メチルスチレンを添加し、1分子中に平均6個のヒドロシリル基を有する化合物(B−1)を得た。この化合物のSi−H基含有量は8.1mmol/gであった。
【0058】
(硬化性液状樹脂組成物の製造例1)
アリル基末端を有するポリオキシプロピレン重合体(A−1)100gとヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガノックス245)2g、湿式シリカ15g(嵩比重70g/l)、ヒドロシリル基を有する化合物(B−1)(2.13g)、触媒として白金ビニルシロキサン錯体触媒のキシレン溶液(ディーエムスクエアージャパン(株)製、PT−VTSC−3.0X)を0.037g、保存性改良剤としてアセチレンアルコール(日信化学工業社製サーフィノール61)を0.036g、を混合して硬化性液状樹脂組成物を作成した。
【0059】
(実施例1)
パッキン断面の幅1mm厚さ1mmの略矩形断面形状で、パッキン全体形状は縦100mm、横50mmの略環状のキャビティを有する金型を用いた。金型のキャビティを構成する部分にはブラスト処理を行い、その後ニッケル−PTFEの無電解メッキ処理を実施した。この時の金型の算術平均表面粗さは0.3μmであった。
【0060】
支持フィルムは、厚さ50μmのPETに片面シリコーンの剥離剤塗布したフィルム(リンテック社製、PET501031)を用いた。この支持フィルムを縦150mm、横150mmにカットし、可動側金型面に真空空着方式で貼付け、型締めした。硬化性液状樹脂組成物の製造例1において得られた硬化性液状樹脂組成物を日精樹脂工業(株)製射出成形装置(PN−40−LIM)で計量、混合し、キャビティ内に樹脂を充填し、125℃、30秒で加熱した後、型開きした。キャビティ内の硬化物は、ゴム状のものが得られ、支持フィルムに密着した状態で取り出せた。得られたパッキンはばり、ボイドなどのない外観良好なものが得られた。次にこのフィルム付きパッキンのフィルムに密着していない面をポリカーボネート性被シール部材に押し当て装着した後、支持フィルムを剥離したところ、容易に剥離できた。
【0061】
(比較例1)
実施例1と同じ金型を用い、支持フィルムを金型に挟まずに成形を行ない、支持フィルムの無い単体のパッキンを得た。このパッキンはパーティングラインに約50μmのばりが発生していた。次にこのパッキンをポリカーボネート性被シール部材の溝に装着したところ、パッキン表面に粘着性があり、且つ形状保持性がないため、パッキンが捩れたりし、装着不可能であった。
【0062】
(比較例2)
金型のキャビティを構成する部分にはブラスト処理を行わず、鏡面仕上げ加工を実施し、その後ニッケル−PTFEの無電解メッキ処理を実施した。この時の金型の算術平均表面粗さは0.05μmであった。金型の表面状態以外は実施例1と同じ要領で成形を行った。その結果、型開き後、取り出す時に、部分的に支持フィルムと剥離している箇所が見られた。
【0063】
(比較例3)
支持フィルムの表面を剥離剤塗布処理行っていないものを用いた以外は実施例1と同じ要領で成形を行った。その結果、キャビティ内の硬化性液状樹脂組成物は、ゴム状のものが得られ、支持フィルムに密着した状態で取り出せた。得られたパッキンはばり、ボイドなどのない外観良好なものが得られた。次にこのフィルム付きパッキンのフィルムに密着していない面をポリカーボネート性被シール部材に押し当て装着した後、支持フィルムを剥離したところ、パッキンが被シール部材に移行しなかった。
【符号の説明】
【0064】
1 支持フィルム(基材層)
2 支持フィルム(剥離剤層)
3.パッキン
4.可動側金型
5.固定側金型
6.キャビティ(ブラスト処理)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルムが剥離容易なように一体化したパッキンであり、パッキンが、下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性液状組成物を硬化させて得られた硬化物であることを特徴とする支持フィルム一体化パッキン。
(A)1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有する、分子量が1,000〜50,000の、ポリオキシアルキレン重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
【請求項2】
支持フィルムを金型内にインサートし、下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性液状樹脂組成物を射出、加熱硬化することを特徴とする、支持フィルム一体化パッキンの製造方法。
(A)1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有する、分子量が1,000〜50,000の、ポリオキシアルキレン重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
【請求項3】
剥離剤処理した支持フィルムを用い、かつ剥離剤処理した面がパッキン側になるように支持フィルムを金型内にインサートすることを特徴とする、請求項2に記載の支持フィルム一体化パッキンの製造方法。
【請求項4】
材料が充填される金型キャビティ表面の算術平均粗さが0.2μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項2〜3のいずれか1項に記載の支持フィルム一体化パッキンの製造方法。
【請求項5】
支持フィルムと一体化したパッキンを略環状の溝が設けられた被シール部材に装着する際、被シール部材とパッキンの密着力が支持フィルムとパッキンの密着力より大きいことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の支持フィルム一体化パッキンの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−13110(P2012−13110A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148021(P2010−148021)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】