フィルム又はシートの製造装置及び製造方法
【課題】ダイのリップ口への異物の付着を十分に低減し、優れた品質のフィルム又はシートを製造すること。
【解決手段】本発明の装置は、フィルム又はシートを製造するためのものであり、押出機と、ダイと、押出機とダイとを連通する流路と、流路の途中に設けられ、流路が複数の分岐路に分かれた後、複数の分岐路が再度合流する構成を有し、流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構とを備える。上記樹脂置換機構は、ダイに向けて溶融樹脂をZ方向に移送する位置に、流路から供給される溶融樹脂をX軸方向に分離させる第1及び第2の分岐路を少なくとも有する。第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している。
【解決手段】本発明の装置は、フィルム又はシートを製造するためのものであり、押出機と、ダイと、押出機とダイとを連通する流路と、流路の途中に設けられ、流路が複数の分岐路に分かれた後、複数の分岐路が再度合流する構成を有し、流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構とを備える。上記樹脂置換機構は、ダイに向けて溶融樹脂をZ方向に移送する位置に、流路から供給される溶融樹脂をX軸方向に分離させる第1及び第2の分岐路を少なくとも有する。第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイから溶融樹脂を押し出してフィルム又はシートを製造するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機から供給される溶融樹脂をフィードパイプを通じてダイへ移送し、ダイから溶融樹脂を押し出すことによって樹脂フィルム(厚み5〜500μm程度)又は樹脂シート(厚み500μm〜50mm程度)が製造される。複数の押出機から一つのダイに溶融樹脂を供給することにより、多層フィルム又は多層シートを製造することも可能である。下記特許文献1には、複数の流路を有する装置を用いて多層フィルムを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−278324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一定の期間にわたって樹脂フィルム又は樹脂シートの成形を行うと、樹脂の劣化物や添加剤の凝集物などの異物がダイのリップ口に付着することがある。異物がリップ口に付着する現象は当該分野において「メヤニ」と称される。異物が一旦リップ口に付着すると、成形時間の経過とともに当該箇所に異物が蓄積し、これが溶融樹脂と接触したり、成形品に混入したりする。
【0005】
リップ口に蓄積した異物は成形品の品質低下の原因となることから、添加剤処方を改良したり、樹脂の滑りを良くするためにリップ口に特殊メッキを施したりする対策が講じられてきた。しかしながら、従来の技術ではリップ口への異物の付着を十分に低減することができず、更なる改良が求められていた。
【0006】
本発明は、ダイのリップ口への異物の付着を十分に低減でき、優れた品質のフィルム又はシートを製造できる装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
押出機から流路を通じてダイへと溶融樹脂を移送する場合、流路の壁面近傍は溶融樹脂の流速が低いため、当該領域に滞留が生じやすい。本発明者らは、溶融樹脂の滞留によって流路内に生じた異物(樹脂の劣化物や添加剤の凝集物)がダイのリップ口に付着することに着目した。本発明者らは、流路の壁面近傍における滞留によって異物が発生したとしても、これをリップ口に蓄積させない手法について検討した。その結果、溶融樹脂をダイに導入する直前に、流路の壁面近傍を流れてきた溶融樹脂と、流路の中央部を流れた溶融樹脂とを置換することより、リップ口への異物付着を十分に低減できることを見出し、以下の発明を完成させた。
【0008】
本発明の装置は、フィルム又はシートを製造するためのものであり、溶融樹脂を移送するための押出機と、押出機からの溶融樹脂をフィルム状又はシート状にするためのダイと、押出機とダイとを連通する流路と、流路の途中に設けられ、流路が複数の分岐路に分かれた後、複数の分岐路が再度合流する構成を有し、流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構とを備える。ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、上記樹脂置換機構は、ダイに向けて溶融樹脂がZ方向に移送される位置に、流路から供給される溶融樹脂をX軸方向に分離させる第1及び第2の分岐路を少なくとも有する。第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している。
【0009】
上記装置は、流路の壁面近傍を流れてきた樹脂と、流路の中央部を流れてきた樹脂とを樹脂置換機構によって置換することができる。流路の中央部を流れてきた樹脂には滞留を起因とする異物が含まれている可能性が低い。ダイに溶融樹脂を導入するに先立ち、異物の含有量が少ない樹脂が流路の壁面近傍を流れるようにすることで、リップ口に異物が付着しにくくなり、高品質のフィルム又はシートを安定的に製造できる。
【0010】
本発明は、単層フィルム又は単層シートの製造装置に限らず、多層フィルム又は多層シートの製造装置も提供する。すなわち、本発明は、多層フィルム又は多層シートの製造装置であって、溶融樹脂をそれぞれ移送するための複数の押出機と、複数の押出機からの溶融樹脂をフィルム状又はシート状にするためのダイと、複数の押出機とダイとをそれぞれ連通する複数の流路と、複数の流路のうち少なくとも多層フィルム又は多層シートの最外層をなす溶融樹脂を移送する流路の途中に設けられ、当該流路が複数の分岐路に分かれた後、複数の分岐路が再度合流する構成を有し、当該流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構とを備える装置を提供する。ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、上記樹脂置換機構は、ダイに向けて溶融樹脂がZ方向に移送される位置に、当該流路から供給される溶融樹脂をX軸方向に分離させる第1及び第2の分岐路を少なくとも有する。第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している。
【0011】
多層フィルム又は多層シートを製造するための上記装置は、流路の壁面近傍を流れてきた樹脂と、流路の中央部を流れた樹脂とを樹脂置換機構によって置換することができる。これにより、ダイのリップ口に異物が付着しにくくなり、高品質の多層フィルム又は多層シートを安定的に製造できる。特に、多層フィルム又は多層シートを製造するプロセスにおいては、リップ口に異物が蓄積すると多層フィルム又は多層シートの最外層に欠陥が生じやすい。このため、最外層をなす溶融樹脂を移送する流路に少なくとも上記樹脂置換機構を設けることが品質向上及び歩留まり向上に有効である。
【0012】
なお、上記特許文献1(特開平4−278324号公報)には多層フィルムの製造装置に関する発明が記載されているが、当該発明は本発明とは解決すべき課題が明らかに異なる。また、特許文献1の図面には、複数の流路を備えた装置が図示されているものの、当該文献は流路の壁面近傍を流れてきた樹脂と、流路の中央部を流れた樹脂とを置換するというような技術的思想を開示するものではない。
【0013】
本発明の方法は、フィルム又はシートを製造するためのものであり、押出機からダイに流路を通じて溶融樹脂を供給する工程と、ダイから溶融樹脂を押し出してフィルム又はシートを成形する工程とを備える。ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、上記流路の途中には、複数の分岐路に分かれた後、複数の分岐路が再度一つの流路となって溶融樹脂をダイに向けてZ方向に移送し、流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構が設けられている。樹脂置換機構が少なくとも有する第1及び第2の分岐路に溶融樹脂を導入することにより、第1及び第2の分岐路内の溶融樹脂は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように流れてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流する。
【0014】
上記方法においては、樹脂置換機構が流路の壁面近傍を流れてきた樹脂と、流路の中央部を流れた樹脂とを置換する。これにより、ダイのリップ口に異物が付着しにくくなり、高品質のフィルム又はシートを安定的に製造できる。
【0015】
本発明は、単層フィルム又は単層シートの製造方法に限らず、多層フィルム又は多層シートの製造方法も提供する。すなわち、本発明は、多層フィルム又は多層シートの製造方法であって、複数の押出機からダイに複数の流路を通じて溶融樹脂をそれぞれ供給する工程と、ダイから溶融樹脂を押し出して多層フィルム又は多層シートを成形する工程とを備える方法を提供する。ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、複数の流路のうち少なくとも多層フィルム又は多層シートの最外層をなす溶融樹脂を移送する流路の途中には、複数の分岐路に分かれた後、複数の分岐路が再度一つの流路となって溶融樹脂をダイに向けてZ方向に移送し、当該流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構が設けられている。樹脂置換機構が少なくとも有する第1及び第2の分岐路に溶融樹脂を導入することにより、第1及び第2の分岐路内の溶融樹脂は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように流れてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流する。
【0016】
多層フィルム又は多層シートを製造するための上記方法においては、樹脂置換機構が流路の壁面近傍を流れてきた樹脂と、流路の中央部を流れた樹脂とを置換する。これにより、ダイのリップ口に異物が付着しにくくなり、高品質の多層フィルム又は多層シートを安定的に製造できる。特に、多層フィルム又は多層シートを製造するプロセスにおいては、リップ口に異物が蓄積すると多層フィルム又は多層シートの最外層に欠陥が生じやすい。このため、最外層をなす溶融樹脂を移送する流路に少なくとも上記樹脂置換機構を設けて樹脂を置換することが品質向上及び歩留まり向上に有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ダイのリップ口への異物の付着を十分に低減でき、優れた品質のフィルム又はシートを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る多層フィルム又は多層シートの製造装置の好適な実施形態を示す模式図である。
【図2】多層フィルム又は多層シートの製造用のTダイの内部構造を示す断面図である。
【図3】図1に示す装置が備える樹脂置換機構の構成を示す模式図である。
【図4】樹脂置換機構の分岐部の構成を示す斜視図である。
【図5】樹脂置換機構の分岐部の構成を示す断面図である。
【図6】樹脂置換機構の第1の再配置部の構成を示す斜視図である。
【図7】樹脂置換機構の第2の再配置部の構成を示す斜視図である。
【図8】樹脂置換機構の合流部の構成を示す斜視図である。
【図9】2つの分岐路によって溶融樹脂が置換される様子を示す模式図である。
【図10】断面形状が円形の流路と矩形の流路とを接続するための流路の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る単層フィルム又は単層シートの製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
<多層フィルム又は多層シートの製造装置>
図1に示す製造装置50は、多層フィルム又は多層シート(以下、「多層成形体」という。)を製造するためのものである。製造装置50は、3つの押出機1A,1B,1Cと、押出機1A,1B,1Cからの溶融樹脂が押し出されるTダイ5と、押出機1A,1B,1CとTダイ5とをそれぞれ連通する3つの流路8A,8B,8Cと、流路8A,8Bにそれぞれ設けられた樹脂置換機構10A,10Bとを備える。なお、流路8A,8Bは、多層成形体20の最外層20A,20Bをなす溶融樹脂をそれぞれ移送する流路である(図2参照)。
【0021】
押出機1A,1B,1Cとしては、特に制限はないが、通常、一軸又は二軸押出機を用いることができる。具体例として、例えば一軸スクリュー押出機、同方向二軸回転スクリュー押出機、異方向二軸回転スクリュー押出機等のスクリュー押出機が挙げられる。
【0022】
図1に示すように、ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、その幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、Tダイ5は、流路8A,8B,8Cを通じて供給される溶融樹脂をY軸方向に広げるとともにZ方向に吐出して多層成形体20が成形されるように設けられている。図2に示すように、Tダイ5のリップ口5aから溶融樹脂をZ軸の矢印方向に吐出することにより、多層成形体20が成形される。多層成形体20は、最外層20A,20Bと、これらの間の中間層20Cとからなる。
【0023】
3つの流路8A,8B,8Cは、押出機1A,1B,1Cを出た溶融樹脂をTダイ5に導入するためのものである。押出機1A,1B,1Cを出た溶融樹脂は、温度が150〜500℃程度であり、圧力が0.1〜50MPa程度であるため、流路8A,8B,8Cはこれらの条件に耐え得る構造となっている。流路8A,8B,8Cの断面形状は、溶融樹脂の滞留を抑制する観点から円形が好ましい。
【0024】
樹脂置換機構10A,10Bは、図3に示す通り、流路8A,8Bにそれぞれ設けられている。樹脂置換機構10Aは、流路8Aが2つの分岐路(第1及び第2の分岐路)12A,13Aに分かれた後、分岐路12A,13Aが再度合流する構成を有し、流路8Aを流れてきた溶融樹脂の位置を変更する機能を有する。樹脂置換機構10Bもこれと同様に、流路8Bが2つの分岐路(第1及び第2の分岐路)12B,13Bに分かれた後、分岐路12B,13Bが再度合流する構成を有し、流路8Bを流れてきた溶融樹脂の位置を変更する機能を有する。第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、X軸方向に互いに近づき、かつY軸方向に互いに遠ざかるように延びてX軸方向の位置が逆転し、かつY軸方向に互いに近づくように延びてY軸方向の位置関係が一致し、その後、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流していることが好ましい。樹脂置換機構10A,10Bは同様の構成及び機能を有するので、以下、樹脂置換機構10Aについて詳細に説明する。
【0025】
樹脂置換機構10Aは、図3に示すように、Tダイ5に向けて溶融樹脂がZ方向に移送される位置に設けられている。2つの分岐路12A,13Aは、流路8Aから供給される溶融樹脂がX軸方向に分離するように流路8Aから分岐している。分岐路12A,13Aは樹脂置換機構10Aの上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びている。そして、分岐路12A,13Aはすれ違うようにしてクロスしてX軸方向の位置関係が逆転し、樹脂置換機構10Aの下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している。樹脂置換機構10Aを出た溶融樹脂は、そのままTダイ5へと供給されるようになっている。
【0026】
図3〜8を参照しながら、樹脂置換機構10Aの構成について、より詳細に説明する。樹脂置換機構10Aは、分岐部15Aと、第1の再配置部16Aと、第2の再配置部17Aと、合流部18Aとを備え、これらがZ軸方向の上流側から下流側に向けて配置されている。流路8Aから供給される溶融樹脂はZ方向に流れ、分岐部15Aに導入されるようになっている。
【0027】
樹脂置換機構10Aは、Tダイ5の上流側であってTダイ5までの距離が比較的近い位置に設けられている。この距離は、溶融樹脂の粘度や添加剤の種類にもよるが、好ましくは0〜30cmであり、より好ましくは0〜10cmである。樹脂置換機構10AをTダイ5から離れた位置に設置すると、樹脂置換機構10AからTダイ5の間の流路内においてその壁面近傍に異物の滞留が生じやすく、これがリップ口5aに異物が蓄積する原因となりやすい。樹脂置換機構10AをTダイ5の直ぐ近くに配置する好適な手段として、樹脂置換機構10Aを内蔵したフィードブロックを作製し、これをTダイ5の上流側に連結することが挙げられる。
【0028】
分岐部15Aにおいて分岐路12A,13AはX軸方向に分かれ、その後、X軸方向に互いに遠ざかるように延びている(図4,5参照)。図5を参照すると、分岐部15Aにおいて、分岐路12Aの延在方向はX軸の矢印方向へのベクトル成分を有し、分岐路13Aの延在方向はこれと反対方向へのベクトル成分を有する。
【0029】
第1の再配置部16Aは、X軸方向に並んでいた分岐路12A,13AをY軸方向に離間した状態で並ぶようにするための部分である(図6参照)。第1の再配置部16Aにおいて分岐路12A,13Aは、上流側から下流側に向けてX軸方向に互いに近づき且つY軸方向に互いに遠ざかるように延びている。
【0030】
第2の再配置部17Aは、分岐路12A,13AのX軸方向の位置関係が第1の再配置部16Aの上流側におけるそれと逆になるようにするための部分である(図7参照)。第2の再配置部17Aにおいて分岐路12A,13Aは、上流側から下流側に向けてX軸方向に互いに遠ざかり且つY軸方向に互いに近づくように延びている。
【0031】
合流部18Aは、分岐路12A,13Aを合流させるための部分である。図8を参照すると、合流部18Aにおいて、分岐路12Aの延在方向はX軸の矢印方向と反対方向へのベクトル成分を有し、分岐路12Bの延在方向はX軸の矢印方向へのベクトル成分を有する。
【0032】
樹脂置換機構10Aを流路8Aに設けることで、樹脂置換機構10Aの上流側において流路8Aの壁面近傍を流れていた溶融樹脂と、流路8Aの中央部を流れていた溶融樹脂とを置換することができる。これにより、図9に示す通り、樹脂置換機構10Aの下流側の流路内においては、異物を含有する可能性が低い溶融樹脂が流路の壁面近傍を流れ、他方、異物を含有する可能性が比較的高い溶融樹脂が流路の中央部を流れることとなる。
【0033】
なお、図9では、説明を分かりやすくするために、樹脂置換機構10Aの入口においてX軸方向の両端の領域Xにのみ色を付し、Y軸方向の両端の領域Yには色を付していない。実際は流路8Aの壁面近傍を通過してきた溶融樹脂は、流路8Aの内周面の全体にわたって存在する。このため、流路8Aの壁面近傍のうち図9において色を付さなかった部分の溶融樹脂は、樹脂置換機構10Aでは置換されずにTダイ5に至ることになる。しかし、この溶融樹脂から形成される部分は、多層成形体20の成形後に耳部としてカットされる。このため、この部分に外観不良などが生じても問題とはならない。
【0034】
上記のような溶融樹脂の置換を行うことにより、Tダイ5のリップ口5aに異物が付着しにくくなり、高品質の多層成形体を安定的に製造することが可能となる。特に、リップ口5aに異物が蓄積すると多層成形体20の最外層20A,20Bに外観不良などの不具合が生じやすいため、最外層用の溶融樹脂を移送する流路8A,8Bに樹脂置換機構10A,10Bをそれぞれ設けることが品質向上及び歩留まり向上に有効である。
【0035】
なお、樹脂置換機構10Aにおける分岐路の本数は、2本に限定されるものではなく、3本以上としてもよいが、当該機構の製造上の観点からして2本であることが好ましい。分岐路12A,13Aの断面形状は、流路8Aの壁面近傍を流れる溶融樹脂を効果的に分断し、その後、再度合流させる観点から、矩形であることが好ましい。図10に示す流路19は、断面形状が円形の流路と矩形の流路とを接続するためのものである。樹脂置換機構10A,10Bの上流側及び下流側に流路19をそれぞれ設けることが好ましい。
【0036】
<多層フィルム又は多層シートの製造方法>
製造装置50を使用して多層成形体(多層フィルム又は多層シート)を製造する方法について説明する。本実施形態に係る方法は、押出機1A,1B,1Cから流路8A,8B,8Cを通じてTダイ5に溶融樹脂をそれぞれ供給する工程と、Tダイ5から溶融樹脂を押し出して多層成形体20を成形する工程とを備える。
【0037】
流路8Aに設けられた樹脂置換機構10Aに溶融樹脂を導入することで、樹脂置換機構10Aの上流側において流路8Aの壁面近傍を流れていた溶融樹脂と、流路8Aの中央部を流れていた溶融樹脂とを置換する。より具体的には、まず、分岐路12A,13Aを通じてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように溶融樹脂を流す。そして、分岐路12A,13A内をそれぞれ流れる溶融樹脂のX軸方向の位置関係を逆転させた後、これらの溶融樹脂をX軸方向に互いに近づくように流して合流させる。樹脂置換機構10Aを通過させた溶融樹脂を、そのままTダイ5へと供給する。なお、流路8A及びこれに設けられた樹脂置換機構10Bについても上記と同様である。
【0038】
多層成形体の原料に使用する熱可塑性樹脂は特に限定されるものではなく、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、ブテン単独重合体、ヘキセン単独重合体、環状オレフィン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−スチレン共重合体、プロピレン−スチレン共重合体、エチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、プロピレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのアクリル系樹脂;ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体等のスチレン系樹脂;塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ化ビニル系樹脂;6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロンなどのアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの飽和エステル系樹脂;ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、セルロース誘導体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの架橋物や変性物などを原料として用いてもよい。上記材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。原料の樹脂に添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0039】
なお、ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・ビニルシクロヘキサン共重合体、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(ブテン−1)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0040】
上記の樹脂から使用すべき原料を適宜選択し、これらを押出機1A,1B,1Cに供給することによって、通常、厚み5〜500μm程度の多層フィルム又は厚み500μm〜50mm程度の多層シートを製造する。上記製造方法によれば、溶融樹脂を樹脂置換機構10A,10Bを通過させて樹脂の置換を行うことで、Tダイ5のリップ口5aに異物が付着しにくくなり、高品質の多層成形体を安定的に製造できる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、最外層20A,20Bをなす溶融樹脂を移送する流路8A,8Bの両方に樹脂置換機構を設ける場合を挙げたが、例えば、最外層20Aに異物による欠陥が生じても製品の性質上、特に問題とならない場合は、最外層20B用の流路8Bのみに樹脂置換機構を設けてもよい。また、場合によっては、多層成形体20の中間層20C用の流路8Cに樹脂置換機構を設けてもよい。
【0042】
更に上記実施形態においては、ダイとしてTダイを備えた場合を挙げたが、Tダイに限定されるものではなく、環状ダイ(クロスヘッドダイ)を備えてもよい。
【0043】
本発明に係る装置及び方法は、2層又は4層以上の多層成形体を製造するのに適用してもよい。更に図11に示すように、本発明は単層のフィルム又はシート(単層成形体)を製造するのに適用してもよい。図11に示す製造装置60は、フィルム又はシートを製造するためのものであり、押出機1Aと、Tダイ6と、押出機1とTダイ6とを連通する流路8と、樹脂置換機構10とを備える。樹脂置換機構10は、上述の樹脂置換機構10Aと同様の構成を有する。製造装置60及びこれを用いたフィルム又はシートの製造方法によれば、樹脂置換機構10が流路8内の溶融樹脂を置換することにより、Tダイ6のリップ口6aに異物が付着しにくくなり、高品質の単層成形体を安定的に製造できる。
【符号の説明】
【0044】
1A,1B,1C…押出機、5,6…ダイ、8,8A,8B,8C …流路、10,10A,10B…樹脂置換機構、12A,13A…分岐路、12B,13B…分岐路、20…多層成形体(多層フィルム又は多層シート)、20A,20B…多層成形体の最外層、50…多層成形体の製造装置、60…単層成形体の製造装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイから溶融樹脂を押し出してフィルム又はシートを製造するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機から供給される溶融樹脂をフィードパイプを通じてダイへ移送し、ダイから溶融樹脂を押し出すことによって樹脂フィルム(厚み5〜500μm程度)又は樹脂シート(厚み500μm〜50mm程度)が製造される。複数の押出機から一つのダイに溶融樹脂を供給することにより、多層フィルム又は多層シートを製造することも可能である。下記特許文献1には、複数の流路を有する装置を用いて多層フィルムを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−278324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一定の期間にわたって樹脂フィルム又は樹脂シートの成形を行うと、樹脂の劣化物や添加剤の凝集物などの異物がダイのリップ口に付着することがある。異物がリップ口に付着する現象は当該分野において「メヤニ」と称される。異物が一旦リップ口に付着すると、成形時間の経過とともに当該箇所に異物が蓄積し、これが溶融樹脂と接触したり、成形品に混入したりする。
【0005】
リップ口に蓄積した異物は成形品の品質低下の原因となることから、添加剤処方を改良したり、樹脂の滑りを良くするためにリップ口に特殊メッキを施したりする対策が講じられてきた。しかしながら、従来の技術ではリップ口への異物の付着を十分に低減することができず、更なる改良が求められていた。
【0006】
本発明は、ダイのリップ口への異物の付着を十分に低減でき、優れた品質のフィルム又はシートを製造できる装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
押出機から流路を通じてダイへと溶融樹脂を移送する場合、流路の壁面近傍は溶融樹脂の流速が低いため、当該領域に滞留が生じやすい。本発明者らは、溶融樹脂の滞留によって流路内に生じた異物(樹脂の劣化物や添加剤の凝集物)がダイのリップ口に付着することに着目した。本発明者らは、流路の壁面近傍における滞留によって異物が発生したとしても、これをリップ口に蓄積させない手法について検討した。その結果、溶融樹脂をダイに導入する直前に、流路の壁面近傍を流れてきた溶融樹脂と、流路の中央部を流れた溶融樹脂とを置換することより、リップ口への異物付着を十分に低減できることを見出し、以下の発明を完成させた。
【0008】
本発明の装置は、フィルム又はシートを製造するためのものであり、溶融樹脂を移送するための押出機と、押出機からの溶融樹脂をフィルム状又はシート状にするためのダイと、押出機とダイとを連通する流路と、流路の途中に設けられ、流路が複数の分岐路に分かれた後、複数の分岐路が再度合流する構成を有し、流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構とを備える。ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、上記樹脂置換機構は、ダイに向けて溶融樹脂がZ方向に移送される位置に、流路から供給される溶融樹脂をX軸方向に分離させる第1及び第2の分岐路を少なくとも有する。第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している。
【0009】
上記装置は、流路の壁面近傍を流れてきた樹脂と、流路の中央部を流れてきた樹脂とを樹脂置換機構によって置換することができる。流路の中央部を流れてきた樹脂には滞留を起因とする異物が含まれている可能性が低い。ダイに溶融樹脂を導入するに先立ち、異物の含有量が少ない樹脂が流路の壁面近傍を流れるようにすることで、リップ口に異物が付着しにくくなり、高品質のフィルム又はシートを安定的に製造できる。
【0010】
本発明は、単層フィルム又は単層シートの製造装置に限らず、多層フィルム又は多層シートの製造装置も提供する。すなわち、本発明は、多層フィルム又は多層シートの製造装置であって、溶融樹脂をそれぞれ移送するための複数の押出機と、複数の押出機からの溶融樹脂をフィルム状又はシート状にするためのダイと、複数の押出機とダイとをそれぞれ連通する複数の流路と、複数の流路のうち少なくとも多層フィルム又は多層シートの最外層をなす溶融樹脂を移送する流路の途中に設けられ、当該流路が複数の分岐路に分かれた後、複数の分岐路が再度合流する構成を有し、当該流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構とを備える装置を提供する。ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、上記樹脂置換機構は、ダイに向けて溶融樹脂がZ方向に移送される位置に、当該流路から供給される溶融樹脂をX軸方向に分離させる第1及び第2の分岐路を少なくとも有する。第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している。
【0011】
多層フィルム又は多層シートを製造するための上記装置は、流路の壁面近傍を流れてきた樹脂と、流路の中央部を流れた樹脂とを樹脂置換機構によって置換することができる。これにより、ダイのリップ口に異物が付着しにくくなり、高品質の多層フィルム又は多層シートを安定的に製造できる。特に、多層フィルム又は多層シートを製造するプロセスにおいては、リップ口に異物が蓄積すると多層フィルム又は多層シートの最外層に欠陥が生じやすい。このため、最外層をなす溶融樹脂を移送する流路に少なくとも上記樹脂置換機構を設けることが品質向上及び歩留まり向上に有効である。
【0012】
なお、上記特許文献1(特開平4−278324号公報)には多層フィルムの製造装置に関する発明が記載されているが、当該発明は本発明とは解決すべき課題が明らかに異なる。また、特許文献1の図面には、複数の流路を備えた装置が図示されているものの、当該文献は流路の壁面近傍を流れてきた樹脂と、流路の中央部を流れた樹脂とを置換するというような技術的思想を開示するものではない。
【0013】
本発明の方法は、フィルム又はシートを製造するためのものであり、押出機からダイに流路を通じて溶融樹脂を供給する工程と、ダイから溶融樹脂を押し出してフィルム又はシートを成形する工程とを備える。ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、上記流路の途中には、複数の分岐路に分かれた後、複数の分岐路が再度一つの流路となって溶融樹脂をダイに向けてZ方向に移送し、流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構が設けられている。樹脂置換機構が少なくとも有する第1及び第2の分岐路に溶融樹脂を導入することにより、第1及び第2の分岐路内の溶融樹脂は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように流れてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流する。
【0014】
上記方法においては、樹脂置換機構が流路の壁面近傍を流れてきた樹脂と、流路の中央部を流れた樹脂とを置換する。これにより、ダイのリップ口に異物が付着しにくくなり、高品質のフィルム又はシートを安定的に製造できる。
【0015】
本発明は、単層フィルム又は単層シートの製造方法に限らず、多層フィルム又は多層シートの製造方法も提供する。すなわち、本発明は、多層フィルム又は多層シートの製造方法であって、複数の押出機からダイに複数の流路を通じて溶融樹脂をそれぞれ供給する工程と、ダイから溶融樹脂を押し出して多層フィルム又は多層シートを成形する工程とを備える方法を提供する。ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、複数の流路のうち少なくとも多層フィルム又は多層シートの最外層をなす溶融樹脂を移送する流路の途中には、複数の分岐路に分かれた後、複数の分岐路が再度一つの流路となって溶融樹脂をダイに向けてZ方向に移送し、当該流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構が設けられている。樹脂置換機構が少なくとも有する第1及び第2の分岐路に溶融樹脂を導入することにより、第1及び第2の分岐路内の溶融樹脂は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように流れてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流する。
【0016】
多層フィルム又は多層シートを製造するための上記方法においては、樹脂置換機構が流路の壁面近傍を流れてきた樹脂と、流路の中央部を流れた樹脂とを置換する。これにより、ダイのリップ口に異物が付着しにくくなり、高品質の多層フィルム又は多層シートを安定的に製造できる。特に、多層フィルム又は多層シートを製造するプロセスにおいては、リップ口に異物が蓄積すると多層フィルム又は多層シートの最外層に欠陥が生じやすい。このため、最外層をなす溶融樹脂を移送する流路に少なくとも上記樹脂置換機構を設けて樹脂を置換することが品質向上及び歩留まり向上に有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ダイのリップ口への異物の付着を十分に低減でき、優れた品質のフィルム又はシートを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る多層フィルム又は多層シートの製造装置の好適な実施形態を示す模式図である。
【図2】多層フィルム又は多層シートの製造用のTダイの内部構造を示す断面図である。
【図3】図1に示す装置が備える樹脂置換機構の構成を示す模式図である。
【図4】樹脂置換機構の分岐部の構成を示す斜視図である。
【図5】樹脂置換機構の分岐部の構成を示す断面図である。
【図6】樹脂置換機構の第1の再配置部の構成を示す斜視図である。
【図7】樹脂置換機構の第2の再配置部の構成を示す斜視図である。
【図8】樹脂置換機構の合流部の構成を示す斜視図である。
【図9】2つの分岐路によって溶融樹脂が置換される様子を示す模式図である。
【図10】断面形状が円形の流路と矩形の流路とを接続するための流路の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る単層フィルム又は単層シートの製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
<多層フィルム又は多層シートの製造装置>
図1に示す製造装置50は、多層フィルム又は多層シート(以下、「多層成形体」という。)を製造するためのものである。製造装置50は、3つの押出機1A,1B,1Cと、押出機1A,1B,1Cからの溶融樹脂が押し出されるTダイ5と、押出機1A,1B,1CとTダイ5とをそれぞれ連通する3つの流路8A,8B,8Cと、流路8A,8Bにそれぞれ設けられた樹脂置換機構10A,10Bとを備える。なお、流路8A,8Bは、多層成形体20の最外層20A,20Bをなす溶融樹脂をそれぞれ移送する流路である(図2参照)。
【0021】
押出機1A,1B,1Cとしては、特に制限はないが、通常、一軸又は二軸押出機を用いることができる。具体例として、例えば一軸スクリュー押出機、同方向二軸回転スクリュー押出機、異方向二軸回転スクリュー押出機等のスクリュー押出機が挙げられる。
【0022】
図1に示すように、ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、その幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、Tダイ5は、流路8A,8B,8Cを通じて供給される溶融樹脂をY軸方向に広げるとともにZ方向に吐出して多層成形体20が成形されるように設けられている。図2に示すように、Tダイ5のリップ口5aから溶融樹脂をZ軸の矢印方向に吐出することにより、多層成形体20が成形される。多層成形体20は、最外層20A,20Bと、これらの間の中間層20Cとからなる。
【0023】
3つの流路8A,8B,8Cは、押出機1A,1B,1Cを出た溶融樹脂をTダイ5に導入するためのものである。押出機1A,1B,1Cを出た溶融樹脂は、温度が150〜500℃程度であり、圧力が0.1〜50MPa程度であるため、流路8A,8B,8Cはこれらの条件に耐え得る構造となっている。流路8A,8B,8Cの断面形状は、溶融樹脂の滞留を抑制する観点から円形が好ましい。
【0024】
樹脂置換機構10A,10Bは、図3に示す通り、流路8A,8Bにそれぞれ設けられている。樹脂置換機構10Aは、流路8Aが2つの分岐路(第1及び第2の分岐路)12A,13Aに分かれた後、分岐路12A,13Aが再度合流する構成を有し、流路8Aを流れてきた溶融樹脂の位置を変更する機能を有する。樹脂置換機構10Bもこれと同様に、流路8Bが2つの分岐路(第1及び第2の分岐路)12B,13Bに分かれた後、分岐路12B,13Bが再度合流する構成を有し、流路8Bを流れてきた溶融樹脂の位置を変更する機能を有する。第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、X軸方向に互いに近づき、かつY軸方向に互いに遠ざかるように延びてX軸方向の位置が逆転し、かつY軸方向に互いに近づくように延びてY軸方向の位置関係が一致し、その後、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流していることが好ましい。樹脂置換機構10A,10Bは同様の構成及び機能を有するので、以下、樹脂置換機構10Aについて詳細に説明する。
【0025】
樹脂置換機構10Aは、図3に示すように、Tダイ5に向けて溶融樹脂がZ方向に移送される位置に設けられている。2つの分岐路12A,13Aは、流路8Aから供給される溶融樹脂がX軸方向に分離するように流路8Aから分岐している。分岐路12A,13Aは樹脂置換機構10Aの上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びている。そして、分岐路12A,13Aはすれ違うようにしてクロスしてX軸方向の位置関係が逆転し、樹脂置換機構10Aの下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している。樹脂置換機構10Aを出た溶融樹脂は、そのままTダイ5へと供給されるようになっている。
【0026】
図3〜8を参照しながら、樹脂置換機構10Aの構成について、より詳細に説明する。樹脂置換機構10Aは、分岐部15Aと、第1の再配置部16Aと、第2の再配置部17Aと、合流部18Aとを備え、これらがZ軸方向の上流側から下流側に向けて配置されている。流路8Aから供給される溶融樹脂はZ方向に流れ、分岐部15Aに導入されるようになっている。
【0027】
樹脂置換機構10Aは、Tダイ5の上流側であってTダイ5までの距離が比較的近い位置に設けられている。この距離は、溶融樹脂の粘度や添加剤の種類にもよるが、好ましくは0〜30cmであり、より好ましくは0〜10cmである。樹脂置換機構10AをTダイ5から離れた位置に設置すると、樹脂置換機構10AからTダイ5の間の流路内においてその壁面近傍に異物の滞留が生じやすく、これがリップ口5aに異物が蓄積する原因となりやすい。樹脂置換機構10AをTダイ5の直ぐ近くに配置する好適な手段として、樹脂置換機構10Aを内蔵したフィードブロックを作製し、これをTダイ5の上流側に連結することが挙げられる。
【0028】
分岐部15Aにおいて分岐路12A,13AはX軸方向に分かれ、その後、X軸方向に互いに遠ざかるように延びている(図4,5参照)。図5を参照すると、分岐部15Aにおいて、分岐路12Aの延在方向はX軸の矢印方向へのベクトル成分を有し、分岐路13Aの延在方向はこれと反対方向へのベクトル成分を有する。
【0029】
第1の再配置部16Aは、X軸方向に並んでいた分岐路12A,13AをY軸方向に離間した状態で並ぶようにするための部分である(図6参照)。第1の再配置部16Aにおいて分岐路12A,13Aは、上流側から下流側に向けてX軸方向に互いに近づき且つY軸方向に互いに遠ざかるように延びている。
【0030】
第2の再配置部17Aは、分岐路12A,13AのX軸方向の位置関係が第1の再配置部16Aの上流側におけるそれと逆になるようにするための部分である(図7参照)。第2の再配置部17Aにおいて分岐路12A,13Aは、上流側から下流側に向けてX軸方向に互いに遠ざかり且つY軸方向に互いに近づくように延びている。
【0031】
合流部18Aは、分岐路12A,13Aを合流させるための部分である。図8を参照すると、合流部18Aにおいて、分岐路12Aの延在方向はX軸の矢印方向と反対方向へのベクトル成分を有し、分岐路12Bの延在方向はX軸の矢印方向へのベクトル成分を有する。
【0032】
樹脂置換機構10Aを流路8Aに設けることで、樹脂置換機構10Aの上流側において流路8Aの壁面近傍を流れていた溶融樹脂と、流路8Aの中央部を流れていた溶融樹脂とを置換することができる。これにより、図9に示す通り、樹脂置換機構10Aの下流側の流路内においては、異物を含有する可能性が低い溶融樹脂が流路の壁面近傍を流れ、他方、異物を含有する可能性が比較的高い溶融樹脂が流路の中央部を流れることとなる。
【0033】
なお、図9では、説明を分かりやすくするために、樹脂置換機構10Aの入口においてX軸方向の両端の領域Xにのみ色を付し、Y軸方向の両端の領域Yには色を付していない。実際は流路8Aの壁面近傍を通過してきた溶融樹脂は、流路8Aの内周面の全体にわたって存在する。このため、流路8Aの壁面近傍のうち図9において色を付さなかった部分の溶融樹脂は、樹脂置換機構10Aでは置換されずにTダイ5に至ることになる。しかし、この溶融樹脂から形成される部分は、多層成形体20の成形後に耳部としてカットされる。このため、この部分に外観不良などが生じても問題とはならない。
【0034】
上記のような溶融樹脂の置換を行うことにより、Tダイ5のリップ口5aに異物が付着しにくくなり、高品質の多層成形体を安定的に製造することが可能となる。特に、リップ口5aに異物が蓄積すると多層成形体20の最外層20A,20Bに外観不良などの不具合が生じやすいため、最外層用の溶融樹脂を移送する流路8A,8Bに樹脂置換機構10A,10Bをそれぞれ設けることが品質向上及び歩留まり向上に有効である。
【0035】
なお、樹脂置換機構10Aにおける分岐路の本数は、2本に限定されるものではなく、3本以上としてもよいが、当該機構の製造上の観点からして2本であることが好ましい。分岐路12A,13Aの断面形状は、流路8Aの壁面近傍を流れる溶融樹脂を効果的に分断し、その後、再度合流させる観点から、矩形であることが好ましい。図10に示す流路19は、断面形状が円形の流路と矩形の流路とを接続するためのものである。樹脂置換機構10A,10Bの上流側及び下流側に流路19をそれぞれ設けることが好ましい。
【0036】
<多層フィルム又は多層シートの製造方法>
製造装置50を使用して多層成形体(多層フィルム又は多層シート)を製造する方法について説明する。本実施形態に係る方法は、押出機1A,1B,1Cから流路8A,8B,8Cを通じてTダイ5に溶融樹脂をそれぞれ供給する工程と、Tダイ5から溶融樹脂を押し出して多層成形体20を成形する工程とを備える。
【0037】
流路8Aに設けられた樹脂置換機構10Aに溶融樹脂を導入することで、樹脂置換機構10Aの上流側において流路8Aの壁面近傍を流れていた溶融樹脂と、流路8Aの中央部を流れていた溶融樹脂とを置換する。より具体的には、まず、分岐路12A,13Aを通じてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように溶融樹脂を流す。そして、分岐路12A,13A内をそれぞれ流れる溶融樹脂のX軸方向の位置関係を逆転させた後、これらの溶融樹脂をX軸方向に互いに近づくように流して合流させる。樹脂置換機構10Aを通過させた溶融樹脂を、そのままTダイ5へと供給する。なお、流路8A及びこれに設けられた樹脂置換機構10Bについても上記と同様である。
【0038】
多層成形体の原料に使用する熱可塑性樹脂は特に限定されるものではなく、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、ブテン単独重合体、ヘキセン単独重合体、環状オレフィン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−スチレン共重合体、プロピレン−スチレン共重合体、エチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、プロピレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのアクリル系樹脂;ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体等のスチレン系樹脂;塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ化ビニル系樹脂;6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロンなどのアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの飽和エステル系樹脂;ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、セルロース誘導体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの架橋物や変性物などを原料として用いてもよい。上記材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。原料の樹脂に添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0039】
なお、ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・ビニルシクロヘキサン共重合体、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(ブテン−1)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0040】
上記の樹脂から使用すべき原料を適宜選択し、これらを押出機1A,1B,1Cに供給することによって、通常、厚み5〜500μm程度の多層フィルム又は厚み500μm〜50mm程度の多層シートを製造する。上記製造方法によれば、溶融樹脂を樹脂置換機構10A,10Bを通過させて樹脂の置換を行うことで、Tダイ5のリップ口5aに異物が付着しにくくなり、高品質の多層成形体を安定的に製造できる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、最外層20A,20Bをなす溶融樹脂を移送する流路8A,8Bの両方に樹脂置換機構を設ける場合を挙げたが、例えば、最外層20Aに異物による欠陥が生じても製品の性質上、特に問題とならない場合は、最外層20B用の流路8Bのみに樹脂置換機構を設けてもよい。また、場合によっては、多層成形体20の中間層20C用の流路8Cに樹脂置換機構を設けてもよい。
【0042】
更に上記実施形態においては、ダイとしてTダイを備えた場合を挙げたが、Tダイに限定されるものではなく、環状ダイ(クロスヘッドダイ)を備えてもよい。
【0043】
本発明に係る装置及び方法は、2層又は4層以上の多層成形体を製造するのに適用してもよい。更に図11に示すように、本発明は単層のフィルム又はシート(単層成形体)を製造するのに適用してもよい。図11に示す製造装置60は、フィルム又はシートを製造するためのものであり、押出機1Aと、Tダイ6と、押出機1とTダイ6とを連通する流路8と、樹脂置換機構10とを備える。樹脂置換機構10は、上述の樹脂置換機構10Aと同様の構成を有する。製造装置60及びこれを用いたフィルム又はシートの製造方法によれば、樹脂置換機構10が流路8内の溶融樹脂を置換することにより、Tダイ6のリップ口6aに異物が付着しにくくなり、高品質の単層成形体を安定的に製造できる。
【符号の説明】
【0044】
1A,1B,1C…押出機、5,6…ダイ、8,8A,8B,8C …流路、10,10A,10B…樹脂置換機構、12A,13A…分岐路、12B,13B…分岐路、20…多層成形体(多層フィルム又は多層シート)、20A,20B…多層成形体の最外層、50…多層成形体の製造装置、60…単層成形体の製造装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム又はシートの製造装置であって、
溶融樹脂を移送するための押出機と、
前記押出機からの溶融樹脂をフィルム状又はシート状にするためのダイと、
前記押出機と前記ダイとを連通する流路と、
前記流路の途中に設けられ、前記流路が複数の分岐路に分かれた後、前記複数の分岐路が再度合流する構成を有し、前記流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構と、
を備え、
前記ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、
前記樹脂置換機構は、前記ダイに向けて溶融樹脂がZ方向に移送される位置に、前記流路から供給される溶融樹脂をX軸方向に分離させる第1及び第2の分岐路を少なくとも有し、
前記第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している、製造装置。
【請求項2】
多層フィルム又は多層シートの製造装置であって、
溶融樹脂をそれぞれ移送するための複数の押出機と、
前記複数の押出機からの溶融樹脂をフィルム状又はシート状にするためのダイと、
前記複数の押出機と前記ダイとをそれぞれ連通する複数の流路と、
前記複数の流路のうち少なくとも前記多層フィルム又は前記多層シートの最外層をなす溶融樹脂を移送する流路の途中に設けられ、当該流路が複数の分岐路に分かれた後、前記複数の分岐路が再度合流する構成を有し、当該流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構と、
を備え、
前記ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、
前記樹脂置換機構は、前記ダイに向けて溶融樹脂がZ方向に移送される位置に、当該流路から供給される溶融樹脂をX軸方向に分離させる第1及び第2の分岐路を少なくとも有し、
前記第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している、製造装置。
【請求項3】
フィルム又はシートの製造方法であって、
押出機からダイに流路を通じて溶融樹脂を供給する工程と、前記ダイから溶融樹脂を押し出してフィルム又はシートを得る工程とを備え、
前記ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、
前記流路の途中には、複数の分岐路に分かれた後、前記複数の分岐路が再度一つの流路となって溶融樹脂を前記ダイに向けてZ方向に移送し、前記流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構が設けられており、
前記樹脂置換機構が少なくとも有する第1及び第2の分岐路に溶融樹脂を導入することにより、前記第1及び第2の分岐路内の溶融樹脂は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように流れてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流する、製造方法。
【請求項4】
多層フィルム又は多層シートの製造方法であって、
複数の押出機からダイに複数の流路を通じて溶融樹脂をそれぞれ供給する工程と、前記ダイから溶融樹脂を押し出して多層フィルム又は多層シートを得る工程とを備え、
前記ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、
前記複数の流路のうち少なくとも前記多層フィルム又は前記多層シートの最外層をなす溶融樹脂を移送する流路の途中には、複数の分岐路に分かれた後、前記複数の分岐路が再度一つの流路となって溶融樹脂を前記ダイに向けてZ方向に移送し、当該流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構が設けられており、
前記樹脂置換機構が少なくとも有する第1及び第2の分岐路に溶融樹脂を導入することにより、前記第1及び第2の分岐路内の溶融樹脂は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように流れてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流する、製造方法。
【請求項1】
フィルム又はシートの製造装置であって、
溶融樹脂を移送するための押出機と、
前記押出機からの溶融樹脂をフィルム状又はシート状にするためのダイと、
前記押出機と前記ダイとを連通する流路と、
前記流路の途中に設けられ、前記流路が複数の分岐路に分かれた後、前記複数の分岐路が再度合流する構成を有し、前記流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構と、
を備え、
前記ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、
前記樹脂置換機構は、前記ダイに向けて溶融樹脂がZ方向に移送される位置に、前記流路から供給される溶融樹脂をX軸方向に分離させる第1及び第2の分岐路を少なくとも有し、
前記第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している、製造装置。
【請求項2】
多層フィルム又は多層シートの製造装置であって、
溶融樹脂をそれぞれ移送するための複数の押出機と、
前記複数の押出機からの溶融樹脂をフィルム状又はシート状にするためのダイと、
前記複数の押出機と前記ダイとをそれぞれ連通する複数の流路と、
前記複数の流路のうち少なくとも前記多層フィルム又は前記多層シートの最外層をなす溶融樹脂を移送する流路の途中に設けられ、当該流路が複数の分岐路に分かれた後、前記複数の分岐路が再度合流する構成を有し、当該流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構と、
を備え、
前記ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、
前記樹脂置換機構は、前記ダイに向けて溶融樹脂がZ方向に移送される位置に、当該流路から供給される溶融樹脂をX軸方向に分離させる第1及び第2の分岐路を少なくとも有し、
前記第1及び第2の分岐路は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように延びてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流している、製造装置。
【請求項3】
フィルム又はシートの製造方法であって、
押出機からダイに流路を通じて溶融樹脂を供給する工程と、前記ダイから溶融樹脂を押し出してフィルム又はシートを得る工程とを備え、
前記ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、
前記流路の途中には、複数の分岐路に分かれた後、前記複数の分岐路が再度一つの流路となって溶融樹脂を前記ダイに向けてZ方向に移送し、前記流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構が設けられており、
前記樹脂置換機構が少なくとも有する第1及び第2の分岐路に溶融樹脂を導入することにより、前記第1及び第2の分岐路内の溶融樹脂は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように流れてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流する、製造方法。
【請求項4】
多層フィルム又は多層シートの製造方法であって、
複数の押出機からダイに複数の流路を通じて溶融樹脂をそれぞれ供給する工程と、前記ダイから溶融樹脂を押し出して多層フィルム又は多層シートを得る工程とを備え、
前記ダイから押し出される溶融樹脂の厚み方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向としたXYZ直交座標系を設定した場合、
前記複数の流路のうち少なくとも前記多層フィルム又は前記多層シートの最外層をなす溶融樹脂を移送する流路の途中には、複数の分岐路に分かれた後、前記複数の分岐路が再度一つの流路となって溶融樹脂を前記ダイに向けてZ方向に移送し、当該流路を流れる溶融樹脂の位置を変更する樹脂置換機構が設けられており、
前記樹脂置換機構が少なくとも有する第1及び第2の分岐路に溶融樹脂を導入することにより、前記第1及び第2の分岐路内の溶融樹脂は、上流側においてX軸方向に互いに遠ざかり、その後、互いに近づくように流れてX軸方向の位置関係が逆転し、下流側においてX軸方向に互いに近づいて合流する、製造方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図2】
【図9】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図2】
【図9】
【公開番号】特開2011−235546(P2011−235546A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109341(P2010−109341)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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