フィルム外装電池およびフィルム外装電池の製造方法
フィルム外装電池1の外装体フィルム2a、2bの熱融着された接合部には厚さt1の平坦面6’と、厚さt2の溝6とが形成されている。溝6は、この溝6を角部にして辺2cを収納部2a1側に折り曲げてフィルム外装電池1の投影面積を小さくするためのものであり、平坦面6’よりΔt=t1−t2だけ薄く形成されている。このため、厚さt1の部分を折り曲げた場合に比べて外装体フィルム2a、2bの外周側6aの伸びが少なくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する外装材に電池要素を収納したフィルム外装電池およびフィルム外装電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器等の電源としての電池には、軽量化、薄型化が強く要求されている。そこで、電池の外装材に関しても、軽量化、薄型化に限界のある従来の金属缶に代わり、さらなる軽量化、薄型化が可能であるラミネートフィルムが使用されるようになってきた。このラミネートフィルムは、金属缶に比べて自由な形状を採ることが可能で、金属薄膜フィルム、または金属薄膜と熱融着性樹脂フィルムとを積層してなるものである。
【0003】
電池の外装材に用いられるラミネートフィルムの代表的な例としては、金属薄膜であるアルミニウム薄膜の片面にヒートシール層である熱融着性樹脂フィルムを積層するとともに、他方の面に保護フィルムを積層した3層ラミネートフィルムが挙げられる。
【0004】
外装材にラミネートフィルムを用いたフィルム外装電池は、一般に、正極、負極、および電解質等で構成される電池要素を、熱融着性樹脂フィルムが内側になるようにして外装材で包囲し、電池要素の周囲で外装材を熱融着することによって電池要素を気密封止(以下、単に封止という)している。熱融着性樹脂フィルムには、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムが用いられ、保護フィルムには、例えばナイロンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられる。
【0005】
なお、電池要素としては、リチウム電池やニッケル水素電池などの化学電池のほかに、キャパシタのような蓄電機能を持ったものも、ラミネートフィルムを外装材として用いられる。
【0006】
フィルム外装電池は、電池要素の正極および負極を外装材の外部へ引き出すために、正極および負極にはそれぞれリード端子が接続され、これらリード端子を外装材から突出させている。電池要素へのリード端子の接続は、電池要素の封止に先立って、超音波溶接などによって行われる。また、電池要素の封止は、2枚の外装材で電池要素を挟み、外装材の周縁部を熱融着する。外装材の熱融着は、まず、外装材の3辺を先に熱融着して袋状にする。その後、外装材の内部から空気を排気することで外装材の内部を真空にし、大気圧によって外装材を電池要素に密着させ、この状態で残りの1辺を熱融着する。
【0007】
電池要素がある程度の厚みを持っている場合には、一方の外装材を、電池要素を収納し易いように、深絞り成形によって鍔付きの容器状に形成しておき、この容器状に形成した外装材を電池要素の上から被せ、鍔部を熱融着により接合することが一般に行われている。
【0008】
フィルム外装電池内部への外部の水分等の浸入や、フィルム外装電池内部の電解液等の外部への逸散を防ぐため、外装体フィルムにはバリア層としてアルミニウムなどの金属薄膜が用いられているが、電池要素周囲の接合部の端部は熱融着樹脂フィルム層が露出するため、樹脂そのものの分子輸送現象に基づくリークパスの原因となってしまう。そこで、フィルム外装電池の封止信頼性向上のためには、接合部の幅を広くして透過経路を長くし、抵抗を大きくすることによってリークを減少させることが可能であるが、そのためにフィルム外装電池の投影面積が大きくなるという問題があった。そこで、接合部を電池要素収納部側に折り曲げて投影面積を小さくすることが特開2002−25514号公報において提案されている。
【発明の開示】
【0009】
しかしながら、上述した従来のフィルム外装電池の接合部の折り曲げは、ラミネートフィルムの厚みによって折り曲げの内側と外側でフィルムの伸びが異なるため、外側の層が伸びに追随しきれないために、折り曲げ部分にクラックなどのダメージが生じてしまうことがあるという問題があった。以下に、この現象について図1、図2および図3を参照して説明する。
【0010】
例えば図1に示すように、フィルム外装電池101は投影面積を小さくするために、対向する2辺の接合部を電池要素収納部側に略直角に折り曲げられた形状を有している。図2に示す折り曲げ前の接合部付近の断面図のように、ラミネートフィルムを構成する保護フィルム102c、金属薄膜102d、熱融着製樹脂フィルム102eの各層とも接合部の厚みの変動はほとんどない。
【0011】
しかし、図3に示すように、この接合部を根元から略直角に電池要素収納部側に折り曲げると、折り曲げ部の外周側106aの層が薄く引き延ばされ、クラックが発生する原因となる恐れがある。金属薄膜102d層にクラックが発生すると、そのクラックを通してのリークパスが発生し、そのクラックからの電池内部への短い透過経路ができてしまい、フィルム外装電池101としての性能や信頼性が損なわれる恐れがある。
【0012】
以上の課題を解決するため本発明は、接合部を折り曲げる際に生じる外装材の損傷を防止することが可能な、可撓性を有する外装材に電池要素を収納したフィルム外装電池およびフィルム外装電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するために本発明のフィルム外装電池は、正極と負極を対向させた構造を有する電池要素と、少なくとも熱融着性樹脂層と金属薄膜層とが積層され、前記熱融着性樹脂層を内側にして前記電池要素を包囲し、周縁の接合部が熱融着されることで前記電池要素を封止する外装体フィルムを有し、前記接合部の少なくとも1辺が折り曲げられているフィルム外装電池において、接合部に少なくとも1つの折り曲げ部が形成されており、折り曲げ部の厚みが、接合部における折り曲げ部の周囲の厚みよりも薄いことを特徴とする。
【0014】
上記のとおり構成された本発明のフィルム外装電池は、接合部に厚みが薄くなっている折り曲げ部が形成されている。すなわち、折り曲げ部はその厚みが薄くなっているので、折り曲げ部にて折り曲げた際に折り曲げの外周側が過度に引き延ばされない。このため、外装体フィルムの引き延ばしによるクラックの発生を防止することができる。また、折り曲げ部が存在することにより、曲げる位置が確定するため、不都合な位置を折り曲げてしまうことがない。これにより、折り曲げ後のフィルム外装電池の寸法を揃えることが容易となる。
【0015】
また、本発明のフィルム外装電池は、折り曲げ部が溝であってもよいし、接合部の少なくとも一方の面に溝が形成されているものであってもよい。
【0016】
また、本発明のフィルム外装電池は、接合部に複数の折り曲げ部が形成されており、各折り曲げ部毎に接合部が折り曲げられているものであってもよい。
【0017】
本発明のフィルム外装電池は、正極と負極を対向させた構造を有する電池要素と、少なくとも熱融着性樹脂層と金属薄膜層とが積層され、熱融着性樹脂層を内側にして電池要素を包囲し、周縁の接合部が熱融着されることで電池要素を封止する外装体フィルムを有し、接合部の少なくとも1辺が折り曲げられているフィルム外装電池において、接合部に複数の折り曲げ部が形成されており、折り曲げ部の厚みが、接合部における折り曲げ部の周囲の厚みよりも薄く、折り曲げ部が接合部の少なくとも一方の面に形成された溝であり、各折り曲げ部毎に接合部が折り曲げられていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のフィルム外装電池は、電池要素が、化学電池、キャパシタのいずれかであってもよい。
【0019】
本発明のフィルム外装電池の製造方法は、内部に電池要素を収納している外装体フィルムの、電池要素の周辺に形成されている接合部の少なくとも1つが折り曲げられているフィルム外装電池の製造方法において、接合部に、接合部における周囲の厚みよりも薄い、少なくとも1つの折り曲げ部を形成する工程と、接合部を折り曲げ部にて折り曲げる工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
上記のとおり構成された本発明のフィルム外装電池は、接合部に、厚みが薄くなっている折り曲げ部を形成する。このため、折り曲げに要する力が軽減される。また、折り曲げ部が存在することにより曲げる位置が確定するため、不都合な位置を折り曲げてしまうことがない。これにより、折り曲げ後のフィルム外装電池の寸法を揃えることが容易となる。さらには、折り曲げ部にて折り曲げた際に折り曲げの外周側が過度に引き延ばすことがないので、外装体フィルムの引き延ばしによるクラックが発生しにくい、信頼性のあるフィルム外装電池を製造することができる。
【0021】
また、本発明のフィルム外装電池の製造方法は、接合部の少なくとも一方の面を、凸部を有する部材で押圧することで折り曲げ部を形成する工程を含むものであってもよいし、熱融着性を有する外装体フィルムの接合部を、部材による加熱および押圧により熱融着して接合する工程を含むものであってもよい。
【0022】
また、本発明のフィルム外装電池の製造方法は、電池要素として、化学電池、キャパシタのいずれかを用意する工程を含むものであってもよい。
【0023】
以上説明したように本発明は、外装体フィルム接合部の折り曲げられる部分を薄く形成しているため、折り曲げ作業が容易になり、また折り曲げた際の外周側の伸びが少なくなるため、外装材の損傷を防止できる。本発明は、これにより、接合部の途中にクラックが入って電池内部への短い透過経路ができるのを防止でき、また、水分浸入や電解液逸散が加速してしまうのを防止できるので、電池の性能や信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来のフィルム外装電池の斜視図である。
【図2】図1に示したフィルム外装電池の長辺接合部の折り曲げ前の断面図である。
【図3】図1に示したフィルム外装電池の長辺接合部の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態によるフィルム外装電池の斜視図である。
【図5】図4に示したフィルム外装電池の分解斜視図である。
【図6】図4に示したフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【図7】図4に示したフィルム外装電池の長辺接合時の状態を示す断面図である。
【図8】図4に示したフィルム外装電池の長辺接合部の折り曲げ前の断面図である。
【図9】図4に示したフィルム外装電池の長辺接合部の断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態によるフィルム外装電池の斜視図である。
【図11】図10に示したフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【図12】図10に示したフィルム外装電池の分解斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施形態による他のフィルム外装電池の斜視図である。
【図14】図13に示したフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【図15】図13に示したフィルム外装電池の分解斜視図である。
【図16】本発明の第3の実施形態によるフィルム外装電池の斜視図である。
【図17】図16に示したフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【図18】本発明の第3の実施形態による他のフィルム外装電池の斜視図である。
【図19】図18に示したフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【図20】本発明の実施例における電池要素の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図4は本発明の第1の実施形態によるフィルム外装電池の外観を示す斜視図、図5は図4に示すフィルム外装電池の構成を示す分解斜視図、図6は図4に示すフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。なお、図5には、本発明の特徴である溝が形成されていない状態のフィルム外装電池を示している。
【0026】
図5に示すように、本実施形態のフィルム外装電池1は、セパレータ10を介して積層された正極電極板8および負極電極板9を有する積層型の電池要素5(図20参照)と、電池要素5を電解液とともに収納する矩形形状の外装体フィルム2a、2bと、電池要素5の正極体および負極体のそれぞれに接続された正極リード端子3および負極リード端子4とを有する。
【0027】
外装体フィルム2a、2bとしては、金属薄膜と熱融着性樹脂とを積層したラミネートフィルムなど、フィルム外装電池に一般に用いられる周知の外装材を用いることができる。本実施形態の外装体フィルム2a、2bは保護フィルム2f、金属薄膜2dおよび熱融着性フィルム2eが積層してなる(図8参照)ものである。
【0028】
この外装体2aは電池要素5を収納するための収納部2a1が形成されている。収納部2a1は、例えば深絞り成形によって形成されるものであってもよい。電池要素5は、外装体2aの収納部2a1に収納され、外装体フィルム2bとともに電池要素5を上下から挟んで包囲し、これら外装体フィルム2a、2bの周縁部を熱融着することで封止される。この際、外装体フィルム2a、2bは、その3辺をまず熱融着して袋状にしておく。袋状となった外装体フィルム2a、2bは、その中に電解液を注液後、開放している残りの1辺から内部の空気が排気される。袋状の外装体フィルム2a、2bは、その後、残りの1辺を熱融着することで気密封止される。
【0029】
外装体フィルム2a、2bは、図7の接合部熱融着時の断面図に示す、凸部7aおよび平坦部7bを有する熱融着ヘッド7を用いて熱融着がなされる。熱融着ヘッド7は、図7に示すように、外装体フィルム2a、2bを両側から挟み込んで熱融着する。図8に熱融着後の接合部の一部断面図を示す。平坦部7bによって熱融着された部分は厚さt1の平坦面6’として形成され、凸部7aによって熱融着された部分は厚さt2の溝6として形成される。すなわち、外装体フィルム2a、2bの溝6の部分は、平坦面6’よりΔt=t1−t2だけ薄くなる。溝6は、図6に示すように、正極リード端子3および負極リード端子4が突出していない、向かい合う2つの長辺である辺2cに形成されている。この溝6は、辺2cを収納部2a1側に折り曲げてフィルム外装電池1の投影面積を小さくするための折り曲げ部である。
【0030】
本実施形態のフィルム外装電池1の場合、辺2cに、平坦面6’よりもΔtだけ薄くなった部分である溝6を折り曲げることで、折り曲げに要する力が軽減される。また、溝6が存在することにより曲げる位置が確定するため、不都合な位置を折り曲げてしまうことがない。これにより、折り曲げ後のフィルム外装電池1は、その寸法を揃えることが容易となる。
【0031】
また、本実施形態によれば、以上のように作業性を向上させる効果がある他、溝6が平坦面6’よりもΔtだけ薄い厚さt2となっているため、厚さt1の部分を折り曲げた場合に比べて外装体フィルム2a、2bの外周側6aの伸びを少なくすることができる。このため、本実施形態は、折り曲げた部分の外周側6aの過度の引き延ばしによるクラックの発生を防止することができ、信頼性を向上させることができる。
【0032】
以上のように、辺2cに溝6を形成した本実施形態のフィルム外装電池1は、折り曲げ作業性が向上すること、寸法を揃えられること、さらには、フィルム外装電池1としての信頼性を向上させることができる。
【0033】
なお本実施形態では、対向する2つの辺2cに溝6を形成して折り曲げる構成を示したが、溝6の形成は任意の1辺以上としてもよい。また、溝6は辺の長さすべてに渡って形成されてなくても良く、例えば辺の端部には形成しなくても良い。また、正極リード端子3と負極リード端子4は異なる2辺以上から突出させてもよい。また、接合部の折り曲げは電池要素5収納部とは反対側に略180°折り曲げるなど、任意の方向や角度としても良い。また、本実施形態は、辺2cの両面に凸部7aを有する熱融着ヘッド7により溝6を形成した例を示したが、片面のみに形成するものであってもよい。
[第2の実施形態]
次に、図10〜図15を用いて本発明の第2の実施形態によるフィルム外装電池に関して説明する。なお、本実施形態のフィルム外装電池の基本的構造、溝の形成方法および構造は第1の実施形態でフィルム外装電池と同様であるため、詳細の説明は省略する。
【0034】
第1の実施形態は、2枚の外装体フィルムで電池要素を収納し、その周囲4辺を熱融着して封止する構成を示したが、本実施形態のフィルム外装電池11、21は、1枚の外装体フィルム12、22を折り曲げて電池要素15、25を収納し、周囲3辺を熱融着して封止している。
【0035】
図10〜図12の例は、外装体フィルム12を折り曲げてなる辺に対向する1辺に溝16を形成し、その接合部を電池要素15を収納している収納部12a1側に折り曲げている。図10はフィルム外装電池の外観を示す斜視図であり、図11は図10に示すフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図であり、図12は図10に示すフィルム外装電池の構成を示す分解斜視図である。
【0036】
図10〜図12に示すフィルム外装電池11は、図12の分解斜視図に示すように外装体フィルム12が、正極リード端子13および負極リード端子14が突出している辺に隣接する辺12c’の折り返し部12’にて折り曲げられている。このフィルム外装電池11は、図11に示すように折り返し部12’以外の3辺が熱融着により接合されており、折り返し部12’に対向する辺12cにのみ溝16が形成されている。この溝16の形成方法および構成は第1の実施形態で示した方法と基本的に同様である。フィルム外装電池11も、溝16に沿って辺12cが収納部12a1側に折り曲げられることで、図10に示す、1辺だけが折り曲げられたフィルム外装電池11となる。
【0037】
一方、図13〜図15の例は、外装体フィルム22を折り曲げてなる辺と対向する辺とに正極リード端子23および負極リード端子24の突出部を設け、その他の2辺に溝26を設けて、これらその他の2辺を折り曲げている。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるので、その説明は省略する。図13はフィルム外装電池の外観を示す斜視図であり、図14は図13に示すフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図、図15は図13に示すフィルム外装電池の構成を示す分解斜視図である。
【0038】
図13〜図15に示すフィルム外装電池21は、図15の分解斜視図に示すように、外装体フィルム22が、正極リード端子23および負極リード端子24が突出している辺に対向する辺22c’の折り返し部22’にて折り曲げられている。フィルム外装電池21は、図14に示すように折り返し部22’以外の3辺が熱融着により接合されている。そしてこの辺22c’と、正極リード端子23および負極リード端子24が突出する辺以外の2つの辺22cのそれぞれに溝26が形成されている。これら溝26の形成方法および構成も第1の実施形態で示した方法と基本的に同様である。フィルム外装電池21も、溝26に沿って各辺22cが収納部22a1側に折り曲げられることで、図13に示すように第1の実施形態のフィルム外装電池1と同様2辺が折り曲げられたフィルム外装電池21となる。
【0039】
以上、辺12c、辺22cに溝16、26が形成された本実施形態のフィルム外装電池11、21は、第1の実施形態のフィルム外装電池1と同様に、折り曲げ作業性の向上および寸法を揃えることができる。
【0040】
また、本実施形態のフィルム外装電池11、21は、1枚の外装体フィルム12、22を折り曲げて電池要素を収納することで、2枚の外装体フィルムを用いて電池要素を収納したときと比べて、リークパスとなりうる熱融着性樹脂フィルム2eの露出する辺を減らすことができ、外部水分の浸入や電解液の逸散によるフィルム外装電池11、22の性能や信頼性の低下をより防止することができる。
【0041】
なお、本実施形態においても、溝は辺の長さすべてに渡って形成されてなくても良く、例えば辺の端部には形成しなくてもよい。また、本実施形態のフィルム外装電池は、正極リード端子と負極リード端子を異なる2辺以上から突出させてもよい。また、接合部の折り曲げは電池要素収納部とは反対側に略180°折り曲げるなど、任意の方向や角度としても良い。また、溝16、26は両面への形成、あるいは片面のみへの形成のいずれであってもよい。
[第3の実施形態]
次に、図16〜図19を用いて本発明の第3の実施形態によるフィルム外装電池に関して説明する。なお、本実施形態のフィルム外装電池の基本的構造、溝の形成方法および構造は第1の実施形態でフィルム外装電池と同様であるため、詳細の説明は省略する。
【0042】
本発明の第3の実施形態によるフィルム外装電池は、外装体フィルムの熱融着部を複数回折り返してフィルム外装電池の投影面積をより小さくしたものであり、図16および図17には1つの辺に溝が2本形成された例を、また、図18および図19には1つの辺に溝が3本形成された例をそれぞれ示す。
【0043】
図16は、本発明の第3の実施形態による、1つの辺に溝が2本形成されたフィルム外装電池の外観を示す斜視図であり、図17は、図16に示すフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【0044】
図17に示すように、正極リード端子33および負極リード端子34が突出していない2つの辺32cにはそれぞれ2本の溝36a、36bが略平行に形成されている。溝36aは上述した各実施形態と同様に辺32cを収納部32a1側に折り曲げるためのものである。溝36aよりも外側に形成された溝36bは、溝36aを角部にして折り曲げて立てた辺32cをさらに折り返すためのものである。すなわち、溝36bは、山状に折り曲げられた辺32cの頂部に位置することとなる。フィルム外装電池31は、これら溝36a、36bに沿って辺32cを折り曲げているので投影面積がより小さくなる。
【0045】
一方、図18は、本発明の第3の実施形態による、1つの辺に溝が3本形成されたフィルム外装電池の外観を示す斜視図であり、図19は、図18に示すフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【0046】
図18に示すように、正極リード端子43および負極リード端子44が突出していない2つの辺42cにはそれぞれ3本の溝46a、46b、46cが略平行に形成されている。溝46aは上述した各実施形態と同様に辺42cを収納部42a1側に折り曲げるためのものである。溝46aよりも外側に形成された溝46b、46cは、互いに近接して形成されており、溝46aを角部にして折り曲げて立てた辺42cをさらに折り返すためのものである。すなわち、本例も辺42cを山状に折り返すわけであるが、図16および図17に示した例のように1箇所で180°近く折り曲げるのではなく、溝46b、46cの2箇所をそれぞれ90°近くで折り曲げることで、鋭角な折り曲げによる外装体フィルムへのダメージをより低減している。フィルム外装電池41も、これら溝46a、46b、46cに沿って辺42cを折り曲げているので投影面積がより小さくなる。
【0047】
以上、辺32cに溝36a、36b、辺42cに溝46a、46b、46cが形成された本実施形態のフィルム外装電池31、41は、第1の実施形態のフィルム外装電池1と同様に、折り曲げ作業性の向上、寸法を揃えることおよびフィルム外装電池としての信頼性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態のフィルム外装電池は、外装体フィルム32、42を山状に折り曲げて電池要素を収納することで投影面積がより小さくなる。
【0049】
なお、本実施形態においても、溝は辺の長さ全てに渡って形成されてなくても良く、例えば辺の端部には形成しないものであってもよい。また、正極リード端子と負極リード端子は異なる2辺以上から突出させてもよい。また、接合部の折り曲げは電池要素収納部とは反対側に折り曲げるなどしてもよく、形成する溝の本数は3本以上であってもよい。
【0050】
また、上述した各実施形態では、折り曲げ部をいわゆる溝形状のものとしたが、折り曲げ部の厚みが、折り曲げ部以外の接合部の厚みよりも薄ければどのような形状であってもよい。例えば、折り曲げ部はなだらかな凹形状であってもよい。
【0051】
また、上述した各実施形態では、溝が、折り曲げの外周側と内周側の溝形状が概ね同形状のものを一例に示したがこれに限定されるものではなく、外周側の溝と内周側の溝の断面形状が異なるものであってもよい。例えば、外周側の溝の底部を内周側より広く形成する、あるいはその逆であってもよい。また、各実施形態では、両面が凹形状の溝を例に示したがこれに限定されるものではなく、折り曲げの外周側、あるいは内周側のいずれか一方のみが凹形状となっているものであってもよい。
【0052】
[実施例]
次に、本発明の具体的な実施例について、上述した第1の実施形態のフィルム外装電池1を例に挙げて、第1の実施形態の説明に用いた図を参照しつつ説明する。
【0053】
〈正極の製作〉
本実施例では、スピネル構造を持つマンガン酸リチウム粉末、炭素質であって導電性を付与する材料、およびポリフッ化ビニリデンを90:5:5の質量比でN−メチルピロリドン(NMPと表すことがある)に混合分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーは、ドクターブレードを用いて、正極電極板8となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に均一に塗布された。塗布時には、わずかに未塗布部(アルミニウム箔が露出している部分)が筋状にできるようにした。次に、このスラリーが塗布されたアルミニウム箔を100℃で2時間真空乾燥した。その後、アルミニウム箔のもう一方の面にも同様に、スラリーを塗布し、真空乾燥させた。この際、表裏の未塗布部が一致するようにスラリーの塗布を行った。
【0054】
このようにして両面に活物質を塗布したアルミニウム箔をロールプレスした。これを、活物質の未塗布部を含めて矩形に切り出し、正極電極板8とした。活物質の未塗布部は片側の一部を矩形に残した他は切り取り、残った部分をタブ部とした。
【0055】
〈負極の製作〉
アモルファスカーボン粉末、ポリフッ化ビニリデンを91:9の質量比でNMPに混合、分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーを、ドクターブレードを用いて、負極電極板9となる厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(銅箔が露出している部分)が筋状にできるようにした。次に、このスラリーが塗布されたアルミニウム箔を100℃で2時間真空乾燥した。なお、このとき負極電極板9の単位面積あたりの理論容量と正極電極板8の単位面積あたりの理論容量が1:1となるように、活物質の塗布厚を調整した。その後、銅箔のもう一方の面にも同様に、スラリーを塗布し、真空乾燥した。
【0056】
このようにして両面に活物質を塗布した銅箔をロールプレスした。これを正極電極板8のサイズよりも縦横2mmずつ大きいサイズに、未塗布部を含めて矩形に切り出し、負極電極板9とした。活物質の未塗布部は片側の一部を矩形に残した他は切り取り、残った部分をタブ部とした。
【0057】
〈電池要素の製作〉
上記のようにして作製した正極電極板8と負極電極板9、およびポリプロピレン層/ポリエチレン層/ポリプロピレン層の三層構造を持つマイクロポーラスシートからなるセパレータ10を図20に示すように交互に積層した。この際、最も外側の電極板は負極電極板9となるようにし、その負極電極板9のさらに外側にセパレータ10を設置した(つまり、セパレータ/負極電極板/セパレータ/正極電極板/セパレータ/・・・・・・/負極電極板/セパレータ、という順番に積層した)。
【0058】
次いで、正極電極板8のタブ部と、厚さ0.1mmのアルミニウム板からなる正極リード端子3とを一括して超音波溶接し、正極集電部とした。同様に、負極電極板9のタブ部と、厚さ0.1mmのニッケル板からなる負極リード端子4とを一括して超音波溶接し、負極集電部とした。
【0059】
〈電池要素の封止〉
外装材としては、ナイロン層/アルミニウム層/酸変性ポリプロピレン層/ポリプロピレン層の四層構造を持つアルミラミネートフィルムである2枚の外装体フィルム2a、2bを用いた。外装体フィルム2aに、深絞り成形によってポリプロピレン層側が凹状となるように、電池要素5より一回り大きい凹部を形成することで収納部2a1とした。
【0060】
上記の電池要素5を、正極リード端子3および負極リード端子4のみが外装体フィルム2a、2bから突出するように、2枚の外装体フィルム2a、2bを重ね合わせて電池要素5を収納させて、外装体フィルム2a、2bの周囲3辺を熱融着によって接合した。リード端子が突出する辺と隣接する2つの対向する長辺は、図7に示すように熱融着ヘッド7の融着部表面に凸部を有する熱融着装置を用いて熱融着し、図6の斜視図および図8の断面図に示す溝6を有する接合部を得た。
【0061】
次に、接合していない残りの1辺から、電池要素5を収納した外装体フィルム2a、2bの内部に電解液を注入した。
【0062】
電解液は、1mol/リットルのLiPF6を支持塩とし、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの混合溶媒(質量比50:50)を溶媒とするものを用いた。電解液の注入後、外装体フィルム2a、2bの開放した残りの1辺から内部の空気を排気し、残りの1辺を熱融着することによって電池要素5を封止した。
【0063】
最後に、図9の断面図に示すように、溝6が角部となるように接合部を収納部2a1方向に略直角に折り曲げることで、ラミネートフィルムからなる外装体を有するリチウム二次電池であるフィルム外装電池1が作製された。
【0064】
以上、代表的な幾つかの実施形態、および具体的な実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更され得ることは明らかである。
【0065】
例えば、可撓性を有する外装材として、金属薄膜と熱融着性樹脂とのラミネートフィルムを用いたが、電池要素を封止するのに十分なバリア性を有するものであれば他の材料を用いることもできる。
【0066】
また、電池要素としては、正極板と負極板とを交互に積層した積層型のものを例に挙げたが、本発明は捲回型にも適用することができる。また、電池要素としてリチウム二次電池の電池要素を例にして説明したが、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムメタル一次電池あるいは二次電池、リチウムポリマー電池等、他の種類の化学電池の電池要素、さらにはキャパシタ要素などにも適用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する外装材に電池要素を収納したフィルム外装電池およびフィルム外装電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器等の電源としての電池には、軽量化、薄型化が強く要求されている。そこで、電池の外装材に関しても、軽量化、薄型化に限界のある従来の金属缶に代わり、さらなる軽量化、薄型化が可能であるラミネートフィルムが使用されるようになってきた。このラミネートフィルムは、金属缶に比べて自由な形状を採ることが可能で、金属薄膜フィルム、または金属薄膜と熱融着性樹脂フィルムとを積層してなるものである。
【0003】
電池の外装材に用いられるラミネートフィルムの代表的な例としては、金属薄膜であるアルミニウム薄膜の片面にヒートシール層である熱融着性樹脂フィルムを積層するとともに、他方の面に保護フィルムを積層した3層ラミネートフィルムが挙げられる。
【0004】
外装材にラミネートフィルムを用いたフィルム外装電池は、一般に、正極、負極、および電解質等で構成される電池要素を、熱融着性樹脂フィルムが内側になるようにして外装材で包囲し、電池要素の周囲で外装材を熱融着することによって電池要素を気密封止(以下、単に封止という)している。熱融着性樹脂フィルムには、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムが用いられ、保護フィルムには、例えばナイロンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられる。
【0005】
なお、電池要素としては、リチウム電池やニッケル水素電池などの化学電池のほかに、キャパシタのような蓄電機能を持ったものも、ラミネートフィルムを外装材として用いられる。
【0006】
フィルム外装電池は、電池要素の正極および負極を外装材の外部へ引き出すために、正極および負極にはそれぞれリード端子が接続され、これらリード端子を外装材から突出させている。電池要素へのリード端子の接続は、電池要素の封止に先立って、超音波溶接などによって行われる。また、電池要素の封止は、2枚の外装材で電池要素を挟み、外装材の周縁部を熱融着する。外装材の熱融着は、まず、外装材の3辺を先に熱融着して袋状にする。その後、外装材の内部から空気を排気することで外装材の内部を真空にし、大気圧によって外装材を電池要素に密着させ、この状態で残りの1辺を熱融着する。
【0007】
電池要素がある程度の厚みを持っている場合には、一方の外装材を、電池要素を収納し易いように、深絞り成形によって鍔付きの容器状に形成しておき、この容器状に形成した外装材を電池要素の上から被せ、鍔部を熱融着により接合することが一般に行われている。
【0008】
フィルム外装電池内部への外部の水分等の浸入や、フィルム外装電池内部の電解液等の外部への逸散を防ぐため、外装体フィルムにはバリア層としてアルミニウムなどの金属薄膜が用いられているが、電池要素周囲の接合部の端部は熱融着樹脂フィルム層が露出するため、樹脂そのものの分子輸送現象に基づくリークパスの原因となってしまう。そこで、フィルム外装電池の封止信頼性向上のためには、接合部の幅を広くして透過経路を長くし、抵抗を大きくすることによってリークを減少させることが可能であるが、そのためにフィルム外装電池の投影面積が大きくなるという問題があった。そこで、接合部を電池要素収納部側に折り曲げて投影面積を小さくすることが特開2002−25514号公報において提案されている。
【発明の開示】
【0009】
しかしながら、上述した従来のフィルム外装電池の接合部の折り曲げは、ラミネートフィルムの厚みによって折り曲げの内側と外側でフィルムの伸びが異なるため、外側の層が伸びに追随しきれないために、折り曲げ部分にクラックなどのダメージが生じてしまうことがあるという問題があった。以下に、この現象について図1、図2および図3を参照して説明する。
【0010】
例えば図1に示すように、フィルム外装電池101は投影面積を小さくするために、対向する2辺の接合部を電池要素収納部側に略直角に折り曲げられた形状を有している。図2に示す折り曲げ前の接合部付近の断面図のように、ラミネートフィルムを構成する保護フィルム102c、金属薄膜102d、熱融着製樹脂フィルム102eの各層とも接合部の厚みの変動はほとんどない。
【0011】
しかし、図3に示すように、この接合部を根元から略直角に電池要素収納部側に折り曲げると、折り曲げ部の外周側106aの層が薄く引き延ばされ、クラックが発生する原因となる恐れがある。金属薄膜102d層にクラックが発生すると、そのクラックを通してのリークパスが発生し、そのクラックからの電池内部への短い透過経路ができてしまい、フィルム外装電池101としての性能や信頼性が損なわれる恐れがある。
【0012】
以上の課題を解決するため本発明は、接合部を折り曲げる際に生じる外装材の損傷を防止することが可能な、可撓性を有する外装材に電池要素を収納したフィルム外装電池およびフィルム外装電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するために本発明のフィルム外装電池は、正極と負極を対向させた構造を有する電池要素と、少なくとも熱融着性樹脂層と金属薄膜層とが積層され、前記熱融着性樹脂層を内側にして前記電池要素を包囲し、周縁の接合部が熱融着されることで前記電池要素を封止する外装体フィルムを有し、前記接合部の少なくとも1辺が折り曲げられているフィルム外装電池において、接合部に少なくとも1つの折り曲げ部が形成されており、折り曲げ部の厚みが、接合部における折り曲げ部の周囲の厚みよりも薄いことを特徴とする。
【0014】
上記のとおり構成された本発明のフィルム外装電池は、接合部に厚みが薄くなっている折り曲げ部が形成されている。すなわち、折り曲げ部はその厚みが薄くなっているので、折り曲げ部にて折り曲げた際に折り曲げの外周側が過度に引き延ばされない。このため、外装体フィルムの引き延ばしによるクラックの発生を防止することができる。また、折り曲げ部が存在することにより、曲げる位置が確定するため、不都合な位置を折り曲げてしまうことがない。これにより、折り曲げ後のフィルム外装電池の寸法を揃えることが容易となる。
【0015】
また、本発明のフィルム外装電池は、折り曲げ部が溝であってもよいし、接合部の少なくとも一方の面に溝が形成されているものであってもよい。
【0016】
また、本発明のフィルム外装電池は、接合部に複数の折り曲げ部が形成されており、各折り曲げ部毎に接合部が折り曲げられているものであってもよい。
【0017】
本発明のフィルム外装電池は、正極と負極を対向させた構造を有する電池要素と、少なくとも熱融着性樹脂層と金属薄膜層とが積層され、熱融着性樹脂層を内側にして電池要素を包囲し、周縁の接合部が熱融着されることで電池要素を封止する外装体フィルムを有し、接合部の少なくとも1辺が折り曲げられているフィルム外装電池において、接合部に複数の折り曲げ部が形成されており、折り曲げ部の厚みが、接合部における折り曲げ部の周囲の厚みよりも薄く、折り曲げ部が接合部の少なくとも一方の面に形成された溝であり、各折り曲げ部毎に接合部が折り曲げられていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のフィルム外装電池は、電池要素が、化学電池、キャパシタのいずれかであってもよい。
【0019】
本発明のフィルム外装電池の製造方法は、内部に電池要素を収納している外装体フィルムの、電池要素の周辺に形成されている接合部の少なくとも1つが折り曲げられているフィルム外装電池の製造方法において、接合部に、接合部における周囲の厚みよりも薄い、少なくとも1つの折り曲げ部を形成する工程と、接合部を折り曲げ部にて折り曲げる工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
上記のとおり構成された本発明のフィルム外装電池は、接合部に、厚みが薄くなっている折り曲げ部を形成する。このため、折り曲げに要する力が軽減される。また、折り曲げ部が存在することにより曲げる位置が確定するため、不都合な位置を折り曲げてしまうことがない。これにより、折り曲げ後のフィルム外装電池の寸法を揃えることが容易となる。さらには、折り曲げ部にて折り曲げた際に折り曲げの外周側が過度に引き延ばすことがないので、外装体フィルムの引き延ばしによるクラックが発生しにくい、信頼性のあるフィルム外装電池を製造することができる。
【0021】
また、本発明のフィルム外装電池の製造方法は、接合部の少なくとも一方の面を、凸部を有する部材で押圧することで折り曲げ部を形成する工程を含むものであってもよいし、熱融着性を有する外装体フィルムの接合部を、部材による加熱および押圧により熱融着して接合する工程を含むものであってもよい。
【0022】
また、本発明のフィルム外装電池の製造方法は、電池要素として、化学電池、キャパシタのいずれかを用意する工程を含むものであってもよい。
【0023】
以上説明したように本発明は、外装体フィルム接合部の折り曲げられる部分を薄く形成しているため、折り曲げ作業が容易になり、また折り曲げた際の外周側の伸びが少なくなるため、外装材の損傷を防止できる。本発明は、これにより、接合部の途中にクラックが入って電池内部への短い透過経路ができるのを防止でき、また、水分浸入や電解液逸散が加速してしまうのを防止できるので、電池の性能や信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来のフィルム外装電池の斜視図である。
【図2】図1に示したフィルム外装電池の長辺接合部の折り曲げ前の断面図である。
【図3】図1に示したフィルム外装電池の長辺接合部の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態によるフィルム外装電池の斜視図である。
【図5】図4に示したフィルム外装電池の分解斜視図である。
【図6】図4に示したフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【図7】図4に示したフィルム外装電池の長辺接合時の状態を示す断面図である。
【図8】図4に示したフィルム外装電池の長辺接合部の折り曲げ前の断面図である。
【図9】図4に示したフィルム外装電池の長辺接合部の断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態によるフィルム外装電池の斜視図である。
【図11】図10に示したフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【図12】図10に示したフィルム外装電池の分解斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施形態による他のフィルム外装電池の斜視図である。
【図14】図13に示したフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【図15】図13に示したフィルム外装電池の分解斜視図である。
【図16】本発明の第3の実施形態によるフィルム外装電池の斜視図である。
【図17】図16に示したフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【図18】本発明の第3の実施形態による他のフィルム外装電池の斜視図である。
【図19】図18に示したフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【図20】本発明の実施例における電池要素の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図4は本発明の第1の実施形態によるフィルム外装電池の外観を示す斜視図、図5は図4に示すフィルム外装電池の構成を示す分解斜視図、図6は図4に示すフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。なお、図5には、本発明の特徴である溝が形成されていない状態のフィルム外装電池を示している。
【0026】
図5に示すように、本実施形態のフィルム外装電池1は、セパレータ10を介して積層された正極電極板8および負極電極板9を有する積層型の電池要素5(図20参照)と、電池要素5を電解液とともに収納する矩形形状の外装体フィルム2a、2bと、電池要素5の正極体および負極体のそれぞれに接続された正極リード端子3および負極リード端子4とを有する。
【0027】
外装体フィルム2a、2bとしては、金属薄膜と熱融着性樹脂とを積層したラミネートフィルムなど、フィルム外装電池に一般に用いられる周知の外装材を用いることができる。本実施形態の外装体フィルム2a、2bは保護フィルム2f、金属薄膜2dおよび熱融着性フィルム2eが積層してなる(図8参照)ものである。
【0028】
この外装体2aは電池要素5を収納するための収納部2a1が形成されている。収納部2a1は、例えば深絞り成形によって形成されるものであってもよい。電池要素5は、外装体2aの収納部2a1に収納され、外装体フィルム2bとともに電池要素5を上下から挟んで包囲し、これら外装体フィルム2a、2bの周縁部を熱融着することで封止される。この際、外装体フィルム2a、2bは、その3辺をまず熱融着して袋状にしておく。袋状となった外装体フィルム2a、2bは、その中に電解液を注液後、開放している残りの1辺から内部の空気が排気される。袋状の外装体フィルム2a、2bは、その後、残りの1辺を熱融着することで気密封止される。
【0029】
外装体フィルム2a、2bは、図7の接合部熱融着時の断面図に示す、凸部7aおよび平坦部7bを有する熱融着ヘッド7を用いて熱融着がなされる。熱融着ヘッド7は、図7に示すように、外装体フィルム2a、2bを両側から挟み込んで熱融着する。図8に熱融着後の接合部の一部断面図を示す。平坦部7bによって熱融着された部分は厚さt1の平坦面6’として形成され、凸部7aによって熱融着された部分は厚さt2の溝6として形成される。すなわち、外装体フィルム2a、2bの溝6の部分は、平坦面6’よりΔt=t1−t2だけ薄くなる。溝6は、図6に示すように、正極リード端子3および負極リード端子4が突出していない、向かい合う2つの長辺である辺2cに形成されている。この溝6は、辺2cを収納部2a1側に折り曲げてフィルム外装電池1の投影面積を小さくするための折り曲げ部である。
【0030】
本実施形態のフィルム外装電池1の場合、辺2cに、平坦面6’よりもΔtだけ薄くなった部分である溝6を折り曲げることで、折り曲げに要する力が軽減される。また、溝6が存在することにより曲げる位置が確定するため、不都合な位置を折り曲げてしまうことがない。これにより、折り曲げ後のフィルム外装電池1は、その寸法を揃えることが容易となる。
【0031】
また、本実施形態によれば、以上のように作業性を向上させる効果がある他、溝6が平坦面6’よりもΔtだけ薄い厚さt2となっているため、厚さt1の部分を折り曲げた場合に比べて外装体フィルム2a、2bの外周側6aの伸びを少なくすることができる。このため、本実施形態は、折り曲げた部分の外周側6aの過度の引き延ばしによるクラックの発生を防止することができ、信頼性を向上させることができる。
【0032】
以上のように、辺2cに溝6を形成した本実施形態のフィルム外装電池1は、折り曲げ作業性が向上すること、寸法を揃えられること、さらには、フィルム外装電池1としての信頼性を向上させることができる。
【0033】
なお本実施形態では、対向する2つの辺2cに溝6を形成して折り曲げる構成を示したが、溝6の形成は任意の1辺以上としてもよい。また、溝6は辺の長さすべてに渡って形成されてなくても良く、例えば辺の端部には形成しなくても良い。また、正極リード端子3と負極リード端子4は異なる2辺以上から突出させてもよい。また、接合部の折り曲げは電池要素5収納部とは反対側に略180°折り曲げるなど、任意の方向や角度としても良い。また、本実施形態は、辺2cの両面に凸部7aを有する熱融着ヘッド7により溝6を形成した例を示したが、片面のみに形成するものであってもよい。
[第2の実施形態]
次に、図10〜図15を用いて本発明の第2の実施形態によるフィルム外装電池に関して説明する。なお、本実施形態のフィルム外装電池の基本的構造、溝の形成方法および構造は第1の実施形態でフィルム外装電池と同様であるため、詳細の説明は省略する。
【0034】
第1の実施形態は、2枚の外装体フィルムで電池要素を収納し、その周囲4辺を熱融着して封止する構成を示したが、本実施形態のフィルム外装電池11、21は、1枚の外装体フィルム12、22を折り曲げて電池要素15、25を収納し、周囲3辺を熱融着して封止している。
【0035】
図10〜図12の例は、外装体フィルム12を折り曲げてなる辺に対向する1辺に溝16を形成し、その接合部を電池要素15を収納している収納部12a1側に折り曲げている。図10はフィルム外装電池の外観を示す斜視図であり、図11は図10に示すフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図であり、図12は図10に示すフィルム外装電池の構成を示す分解斜視図である。
【0036】
図10〜図12に示すフィルム外装電池11は、図12の分解斜視図に示すように外装体フィルム12が、正極リード端子13および負極リード端子14が突出している辺に隣接する辺12c’の折り返し部12’にて折り曲げられている。このフィルム外装電池11は、図11に示すように折り返し部12’以外の3辺が熱融着により接合されており、折り返し部12’に対向する辺12cにのみ溝16が形成されている。この溝16の形成方法および構成は第1の実施形態で示した方法と基本的に同様である。フィルム外装電池11も、溝16に沿って辺12cが収納部12a1側に折り曲げられることで、図10に示す、1辺だけが折り曲げられたフィルム外装電池11となる。
【0037】
一方、図13〜図15の例は、外装体フィルム22を折り曲げてなる辺と対向する辺とに正極リード端子23および負極リード端子24の突出部を設け、その他の2辺に溝26を設けて、これらその他の2辺を折り曲げている。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるので、その説明は省略する。図13はフィルム外装電池の外観を示す斜視図であり、図14は図13に示すフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図、図15は図13に示すフィルム外装電池の構成を示す分解斜視図である。
【0038】
図13〜図15に示すフィルム外装電池21は、図15の分解斜視図に示すように、外装体フィルム22が、正極リード端子23および負極リード端子24が突出している辺に対向する辺22c’の折り返し部22’にて折り曲げられている。フィルム外装電池21は、図14に示すように折り返し部22’以外の3辺が熱融着により接合されている。そしてこの辺22c’と、正極リード端子23および負極リード端子24が突出する辺以外の2つの辺22cのそれぞれに溝26が形成されている。これら溝26の形成方法および構成も第1の実施形態で示した方法と基本的に同様である。フィルム外装電池21も、溝26に沿って各辺22cが収納部22a1側に折り曲げられることで、図13に示すように第1の実施形態のフィルム外装電池1と同様2辺が折り曲げられたフィルム外装電池21となる。
【0039】
以上、辺12c、辺22cに溝16、26が形成された本実施形態のフィルム外装電池11、21は、第1の実施形態のフィルム外装電池1と同様に、折り曲げ作業性の向上および寸法を揃えることができる。
【0040】
また、本実施形態のフィルム外装電池11、21は、1枚の外装体フィルム12、22を折り曲げて電池要素を収納することで、2枚の外装体フィルムを用いて電池要素を収納したときと比べて、リークパスとなりうる熱融着性樹脂フィルム2eの露出する辺を減らすことができ、外部水分の浸入や電解液の逸散によるフィルム外装電池11、22の性能や信頼性の低下をより防止することができる。
【0041】
なお、本実施形態においても、溝は辺の長さすべてに渡って形成されてなくても良く、例えば辺の端部には形成しなくてもよい。また、本実施形態のフィルム外装電池は、正極リード端子と負極リード端子を異なる2辺以上から突出させてもよい。また、接合部の折り曲げは電池要素収納部とは反対側に略180°折り曲げるなど、任意の方向や角度としても良い。また、溝16、26は両面への形成、あるいは片面のみへの形成のいずれであってもよい。
[第3の実施形態]
次に、図16〜図19を用いて本発明の第3の実施形態によるフィルム外装電池に関して説明する。なお、本実施形態のフィルム外装電池の基本的構造、溝の形成方法および構造は第1の実施形態でフィルム外装電池と同様であるため、詳細の説明は省略する。
【0042】
本発明の第3の実施形態によるフィルム外装電池は、外装体フィルムの熱融着部を複数回折り返してフィルム外装電池の投影面積をより小さくしたものであり、図16および図17には1つの辺に溝が2本形成された例を、また、図18および図19には1つの辺に溝が3本形成された例をそれぞれ示す。
【0043】
図16は、本発明の第3の実施形態による、1つの辺に溝が2本形成されたフィルム外装電池の外観を示す斜視図であり、図17は、図16に示すフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【0044】
図17に示すように、正極リード端子33および負極リード端子34が突出していない2つの辺32cにはそれぞれ2本の溝36a、36bが略平行に形成されている。溝36aは上述した各実施形態と同様に辺32cを収納部32a1側に折り曲げるためのものである。溝36aよりも外側に形成された溝36bは、溝36aを角部にして折り曲げて立てた辺32cをさらに折り返すためのものである。すなわち、溝36bは、山状に折り曲げられた辺32cの頂部に位置することとなる。フィルム外装電池31は、これら溝36a、36bに沿って辺32cを折り曲げているので投影面積がより小さくなる。
【0045】
一方、図18は、本発明の第3の実施形態による、1つの辺に溝が3本形成されたフィルム外装電池の外観を示す斜視図であり、図19は、図18に示すフィルム外装電池の接合部折り曲げ前の状態を示す斜視図である。
【0046】
図18に示すように、正極リード端子43および負極リード端子44が突出していない2つの辺42cにはそれぞれ3本の溝46a、46b、46cが略平行に形成されている。溝46aは上述した各実施形態と同様に辺42cを収納部42a1側に折り曲げるためのものである。溝46aよりも外側に形成された溝46b、46cは、互いに近接して形成されており、溝46aを角部にして折り曲げて立てた辺42cをさらに折り返すためのものである。すなわち、本例も辺42cを山状に折り返すわけであるが、図16および図17に示した例のように1箇所で180°近く折り曲げるのではなく、溝46b、46cの2箇所をそれぞれ90°近くで折り曲げることで、鋭角な折り曲げによる外装体フィルムへのダメージをより低減している。フィルム外装電池41も、これら溝46a、46b、46cに沿って辺42cを折り曲げているので投影面積がより小さくなる。
【0047】
以上、辺32cに溝36a、36b、辺42cに溝46a、46b、46cが形成された本実施形態のフィルム外装電池31、41は、第1の実施形態のフィルム外装電池1と同様に、折り曲げ作業性の向上、寸法を揃えることおよびフィルム外装電池としての信頼性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態のフィルム外装電池は、外装体フィルム32、42を山状に折り曲げて電池要素を収納することで投影面積がより小さくなる。
【0049】
なお、本実施形態においても、溝は辺の長さ全てに渡って形成されてなくても良く、例えば辺の端部には形成しないものであってもよい。また、正極リード端子と負極リード端子は異なる2辺以上から突出させてもよい。また、接合部の折り曲げは電池要素収納部とは反対側に折り曲げるなどしてもよく、形成する溝の本数は3本以上であってもよい。
【0050】
また、上述した各実施形態では、折り曲げ部をいわゆる溝形状のものとしたが、折り曲げ部の厚みが、折り曲げ部以外の接合部の厚みよりも薄ければどのような形状であってもよい。例えば、折り曲げ部はなだらかな凹形状であってもよい。
【0051】
また、上述した各実施形態では、溝が、折り曲げの外周側と内周側の溝形状が概ね同形状のものを一例に示したがこれに限定されるものではなく、外周側の溝と内周側の溝の断面形状が異なるものであってもよい。例えば、外周側の溝の底部を内周側より広く形成する、あるいはその逆であってもよい。また、各実施形態では、両面が凹形状の溝を例に示したがこれに限定されるものではなく、折り曲げの外周側、あるいは内周側のいずれか一方のみが凹形状となっているものであってもよい。
【0052】
[実施例]
次に、本発明の具体的な実施例について、上述した第1の実施形態のフィルム外装電池1を例に挙げて、第1の実施形態の説明に用いた図を参照しつつ説明する。
【0053】
〈正極の製作〉
本実施例では、スピネル構造を持つマンガン酸リチウム粉末、炭素質であって導電性を付与する材料、およびポリフッ化ビニリデンを90:5:5の質量比でN−メチルピロリドン(NMPと表すことがある)に混合分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーは、ドクターブレードを用いて、正極電極板8となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に均一に塗布された。塗布時には、わずかに未塗布部(アルミニウム箔が露出している部分)が筋状にできるようにした。次に、このスラリーが塗布されたアルミニウム箔を100℃で2時間真空乾燥した。その後、アルミニウム箔のもう一方の面にも同様に、スラリーを塗布し、真空乾燥させた。この際、表裏の未塗布部が一致するようにスラリーの塗布を行った。
【0054】
このようにして両面に活物質を塗布したアルミニウム箔をロールプレスした。これを、活物質の未塗布部を含めて矩形に切り出し、正極電極板8とした。活物質の未塗布部は片側の一部を矩形に残した他は切り取り、残った部分をタブ部とした。
【0055】
〈負極の製作〉
アモルファスカーボン粉末、ポリフッ化ビニリデンを91:9の質量比でNMPに混合、分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーを、ドクターブレードを用いて、負極電極板9となる厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(銅箔が露出している部分)が筋状にできるようにした。次に、このスラリーが塗布されたアルミニウム箔を100℃で2時間真空乾燥した。なお、このとき負極電極板9の単位面積あたりの理論容量と正極電極板8の単位面積あたりの理論容量が1:1となるように、活物質の塗布厚を調整した。その後、銅箔のもう一方の面にも同様に、スラリーを塗布し、真空乾燥した。
【0056】
このようにして両面に活物質を塗布した銅箔をロールプレスした。これを正極電極板8のサイズよりも縦横2mmずつ大きいサイズに、未塗布部を含めて矩形に切り出し、負極電極板9とした。活物質の未塗布部は片側の一部を矩形に残した他は切り取り、残った部分をタブ部とした。
【0057】
〈電池要素の製作〉
上記のようにして作製した正極電極板8と負極電極板9、およびポリプロピレン層/ポリエチレン層/ポリプロピレン層の三層構造を持つマイクロポーラスシートからなるセパレータ10を図20に示すように交互に積層した。この際、最も外側の電極板は負極電極板9となるようにし、その負極電極板9のさらに外側にセパレータ10を設置した(つまり、セパレータ/負極電極板/セパレータ/正極電極板/セパレータ/・・・・・・/負極電極板/セパレータ、という順番に積層した)。
【0058】
次いで、正極電極板8のタブ部と、厚さ0.1mmのアルミニウム板からなる正極リード端子3とを一括して超音波溶接し、正極集電部とした。同様に、負極電極板9のタブ部と、厚さ0.1mmのニッケル板からなる負極リード端子4とを一括して超音波溶接し、負極集電部とした。
【0059】
〈電池要素の封止〉
外装材としては、ナイロン層/アルミニウム層/酸変性ポリプロピレン層/ポリプロピレン層の四層構造を持つアルミラミネートフィルムである2枚の外装体フィルム2a、2bを用いた。外装体フィルム2aに、深絞り成形によってポリプロピレン層側が凹状となるように、電池要素5より一回り大きい凹部を形成することで収納部2a1とした。
【0060】
上記の電池要素5を、正極リード端子3および負極リード端子4のみが外装体フィルム2a、2bから突出するように、2枚の外装体フィルム2a、2bを重ね合わせて電池要素5を収納させて、外装体フィルム2a、2bの周囲3辺を熱融着によって接合した。リード端子が突出する辺と隣接する2つの対向する長辺は、図7に示すように熱融着ヘッド7の融着部表面に凸部を有する熱融着装置を用いて熱融着し、図6の斜視図および図8の断面図に示す溝6を有する接合部を得た。
【0061】
次に、接合していない残りの1辺から、電池要素5を収納した外装体フィルム2a、2bの内部に電解液を注入した。
【0062】
電解液は、1mol/リットルのLiPF6を支持塩とし、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの混合溶媒(質量比50:50)を溶媒とするものを用いた。電解液の注入後、外装体フィルム2a、2bの開放した残りの1辺から内部の空気を排気し、残りの1辺を熱融着することによって電池要素5を封止した。
【0063】
最後に、図9の断面図に示すように、溝6が角部となるように接合部を収納部2a1方向に略直角に折り曲げることで、ラミネートフィルムからなる外装体を有するリチウム二次電池であるフィルム外装電池1が作製された。
【0064】
以上、代表的な幾つかの実施形態、および具体的な実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更され得ることは明らかである。
【0065】
例えば、可撓性を有する外装材として、金属薄膜と熱融着性樹脂とのラミネートフィルムを用いたが、電池要素を封止するのに十分なバリア性を有するものであれば他の材料を用いることもできる。
【0066】
また、電池要素としては、正極板と負極板とを交互に積層した積層型のものを例に挙げたが、本発明は捲回型にも適用することができる。また、電池要素としてリチウム二次電池の電池要素を例にして説明したが、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムメタル一次電池あるいは二次電池、リチウムポリマー電池等、他の種類の化学電池の電池要素、さらにはキャパシタ要素などにも適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極を対向させた構造を有する電池要素と、少なくとも熱融着性樹脂層と金属薄膜層とが積層され、前記熱融着性樹脂層を内側にして前記電池要素を包囲し、周縁の接合部が熱融着されることで前記電池要素を封止する外装体フィルムを有し、前記接合部の少なくとも1辺が折り曲げられているフィルム外装電池において、
前記接合部に少なくとも1つの折り曲げ部が形成されており、前記折り曲げ部の厚みが、前記接合部における前記折り曲げ部の周囲の厚みよりも薄いことを特徴とするフィルム外装電池。
【請求項2】
前記折り曲げ部が溝である請求項1に記載のフィルム外装電池。
【請求項3】
前記接合部の少なくとも一方の面に前記溝が形成されている請求項2に記載のフィルム外装電池。
【請求項4】
前記接合部に複数の前記折り曲げ部が形成されており、前記各折り曲げ部毎に前記接合部が折り曲げられている請求項1に記載のフィルム外装電池。
【請求項5】
前記接合部に複数の前記折り曲げ部が形成されており、前記各折り曲げ部毎に前記接合部が折り曲げられている請求項2に記載のフィルム外装電池。
【請求項6】
正極と負極を対向させた構造を有する電池要素と、少なくとも熱融着性樹脂層と金属薄膜層とが積層され、前記熱融着性樹脂層を内側にして前記電池要素を包囲し、周縁の接合部が熱融着されることで前記電池要素を封止する外装体フィルムを有し、前記接合部の少なくとも1辺が折り曲げられているフィルム外装電池において、
前記接合部に複数の折り曲げ部が形成されており、前記折り曲げ部の厚みが、前記接合部における前記折り曲げ部の周囲の厚みよりも薄く、前記折り曲げ部が前記接合部の少なくとも一方の面に形成された溝であり、前記各折り曲げ部毎に前記接合部が折り曲げられていることを特徴とするフィルム外装電池。
【請求項7】
前記電池要素が、化学電池、キャパシタのいずれかである請求項1に記載のフィルム外装電池。
【請求項8】
内部に電池要素を収納している外装体フィルムの、前記電池要素の周辺に形成されている接合部の少なくとも1つが折り曲げられているフィルム外装電池の製造方法において、
前記接合部に、前記接合部における周囲の厚みよりも薄い、少なくとも1つの折り曲げ部を形成する工程と、
前記接合部を前記折り曲げ部にて折り曲げる工程とを含むことを特徴とするフィルム外装電池の製造方法。
【請求項9】
前記接合部の少なくとも一方の面を、凸部を有する部材で押圧することで前記折り曲げ部を形成する工程を含む請求項8に記載のフィルム外装電池の製造方法。
【請求項10】
熱融着性を有する前記外装体フィルムの前記接合部を、前記部材による加熱および押圧により熱融着して接合する工程を含む請求項8に記載のフィルム外装電池の製造方法。
【請求項11】
前記電池要素として、化学電池、キャパシタのいずれかを用意する工程を含む請求項8に記載のフィルム外装電池の製造方法。
【請求項1】
正極と負極を対向させた構造を有する電池要素と、少なくとも熱融着性樹脂層と金属薄膜層とが積層され、前記熱融着性樹脂層を内側にして前記電池要素を包囲し、周縁の接合部が熱融着されることで前記電池要素を封止する外装体フィルムを有し、前記接合部の少なくとも1辺が折り曲げられているフィルム外装電池において、
前記接合部に少なくとも1つの折り曲げ部が形成されており、前記折り曲げ部の厚みが、前記接合部における前記折り曲げ部の周囲の厚みよりも薄いことを特徴とするフィルム外装電池。
【請求項2】
前記折り曲げ部が溝である請求項1に記載のフィルム外装電池。
【請求項3】
前記接合部の少なくとも一方の面に前記溝が形成されている請求項2に記載のフィルム外装電池。
【請求項4】
前記接合部に複数の前記折り曲げ部が形成されており、前記各折り曲げ部毎に前記接合部が折り曲げられている請求項1に記載のフィルム外装電池。
【請求項5】
前記接合部に複数の前記折り曲げ部が形成されており、前記各折り曲げ部毎に前記接合部が折り曲げられている請求項2に記載のフィルム外装電池。
【請求項6】
正極と負極を対向させた構造を有する電池要素と、少なくとも熱融着性樹脂層と金属薄膜層とが積層され、前記熱融着性樹脂層を内側にして前記電池要素を包囲し、周縁の接合部が熱融着されることで前記電池要素を封止する外装体フィルムを有し、前記接合部の少なくとも1辺が折り曲げられているフィルム外装電池において、
前記接合部に複数の折り曲げ部が形成されており、前記折り曲げ部の厚みが、前記接合部における前記折り曲げ部の周囲の厚みよりも薄く、前記折り曲げ部が前記接合部の少なくとも一方の面に形成された溝であり、前記各折り曲げ部毎に前記接合部が折り曲げられていることを特徴とするフィルム外装電池。
【請求項7】
前記電池要素が、化学電池、キャパシタのいずれかである請求項1に記載のフィルム外装電池。
【請求項8】
内部に電池要素を収納している外装体フィルムの、前記電池要素の周辺に形成されている接合部の少なくとも1つが折り曲げられているフィルム外装電池の製造方法において、
前記接合部に、前記接合部における周囲の厚みよりも薄い、少なくとも1つの折り曲げ部を形成する工程と、
前記接合部を前記折り曲げ部にて折り曲げる工程とを含むことを特徴とするフィルム外装電池の製造方法。
【請求項9】
前記接合部の少なくとも一方の面を、凸部を有する部材で押圧することで前記折り曲げ部を形成する工程を含む請求項8に記載のフィルム外装電池の製造方法。
【請求項10】
熱融着性を有する前記外装体フィルムの前記接合部を、前記部材による加熱および押圧により熱融着して接合する工程を含む請求項8に記載のフィルム外装電池の製造方法。
【請求項11】
前記電池要素として、化学電池、キャパシタのいずれかを用意する工程を含む請求項8に記載のフィルム外装電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【国際公開番号】WO2005/036674
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514556(P2005−514556)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014364
【国際出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(302036862)NECラミリオンエナジー株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/014364
【国際出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(302036862)NECラミリオンエナジー株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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