説明

フィルム支持装置及びめっき被膜付きフィルムの製造装置

【課題】フィルムの搬送速度を上げても、フィルムの汚れを低減させることができるフィルム支持装置及びめっき被膜付きフィルムの製造装置を提供する。
【解決手段】めっき槽60Aと洗浄槽70Aとの間に感光ウエブ18を空中搬送させる支持装置200Aが配置されている。支持装置200Aには、感光ウエブ18の導電面18Aに接触する導電面支持ローラ202、204と、これらの間に感光ウエブ18の裏面18Bに接触する裏面支持ローラ206とが設けられている。導電面支持ローラ202、204と裏面支持ローラ206には、それぞれ洗浄装置210、212、214が配設されており、導電面支持ローラ202、204と裏面支持ローラ206の下部が洗浄液217に浸漬される洗浄液受け槽218、220、222と、洗浄液217の水面を一定に保つオーバーフロー堰226、228、230とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状長尺のフィルムを搬送しながらフィルム導電面にめっき被膜を形成するめっき被膜付きフィルムの製造装置に用いられ、めっき浴を通過して次工程へ空中搬送されるフィルムを支持するフィルム支持装置、及びこのフィルム支持装置を備えためっき被膜付きフィルムの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状長尺のフィルムに連続的にめっきを行う際には、複数のローラにフィルムを張架してローラの回転によりフィルムを一定方向に搬送し、めっき浴槽を通過させる。このように複数のローラでフィルムを搬送するとき、めっき浴槽の下流側でローラにめっき液成分の析出物や汚れが固着するという問題がある。
【0003】
ローラを洗浄するために、下記特許文献1では、フィルムの導電面に接触する2本のローラに洗浄装置を設けた構成が開示されている。この構成では、2本のローラを洗浄装置で洗浄することにより、ローラの汚れを低減させることができる。
【特許文献1】特開2007−270322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、フィルムに連続的にめっきを行う際に、生産性の向上のため、フィルムの搬送速度を上げる必要が出てきている。しかし、特許文献1に記載の態様で、搬送速度を上げると、フィルムの汚れが悪化し、生産性を上げることが難しい。
【0005】
この理由について、本発明者らが鋭意検討したところ、以下の要因が判っている。すなわち、従来の汚れは、フィルムの導電面に固着したものであり、この導電面に接する2本のローラを特許文献1に記載の洗浄装置で洗浄すれば良く、搬送速度を上げた場合は、2本のローラの水洗量を上げれば対応できると考えていた。しかし、水洗量を上げてもフィルムの汚れが増加した。鋭意検討の結果、搬送速度を上げた場合のフィルムの汚れの増加は、フィルムが搬送されるめっき浴からのめっき液の持ち出しが増えることで、下流側の液槽内の液への汚染が高まることが主因であることが判ってきた。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルムの搬送速度を上げても、フィルムの汚れを低減させることができるフィルム支持装置及びめっき被膜付きフィルムの製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、フィルムの導電面をカソード給電ローラに接触させ、前記導電面にめっき被膜を形成する電解めっき浴の下流側に配置され、次工程へ空中搬送される前記フィルムを支持するフィルム支持装置であって、前記フィルムの導電面に接触する少なくとも2本のフィルム導電面支持部材と、前記フィルム導電面支持部材の間に配置され、前記導電面と反対側の前記フィルムの裏面に接触する少なくとも1本のフィルム裏面支持部材と、前記フィルム導電面支持部材と前記フィルム裏面支持部材をそれぞれ洗浄する洗浄手段と、を有することを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、電解めっき浴の下流側では、少なくとも2本のフィルム導電面支持部材がフィルムの導電面に接触し、フィルム導電面支持部材の間で少なくとも1本のフィルム裏面支持部材が導電面と反対側のフィルムの裏面に接触しており、フィルムがフィルム導電面支持部材及びフィルム裏面支持部材に支持された状態で次工程へ空中搬送される。フィルムの導電面に接触するフィルム導電面支持部材と、フィルムの裏面に接触するフィルム裏面支持部材は、洗浄手段によってそれぞれ洗浄される。これによって、フィルムの導電面のみならず、フィルムの裏面に付着しためっき液が次工程に持ち込まれることが低減される。従って、めっき液が次工程又はその下流側の液(例えば、防錆剤など)と反応して汚れの成分が増加することが低減される。このため、フィルムの搬送速度を上げても、フィルムの汚れを低減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフィルム支持装置において、前記フィルム導電面支持部材と前記フィルム裏面支持部材は、それぞれローラで構成されており、前記洗浄手段は、洗浄液で満たされ、かつ、前記ローラの下部が前記洗浄液に浸漬される洗浄液受け槽と、前記洗浄液受け槽に新たな洗浄液を供給すると共に、前記洗浄液受け槽内の前記洗浄液を排出させる洗浄液供給排出手段と、を有することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、フィルム導電面支持部材とフィルム裏面支持部材は、それぞれローラで構成されており、ローラの下部が、洗浄液受け槽に満たされた洗浄液に浸漬されている。洗浄液受け槽には、洗浄液供給排出手段によって新たな洗浄液が供給されると共に、洗浄液受け槽内の洗浄液が排出される。これにより、ローラの回転に伴い、ローラの下部が洗浄液によって洗浄され、ローラの周面が清浄な状態に保たれる。このため、フィルムの導電面のみならず、フィルムの裏面に付着しためっき液が次工程に持ち込まれることがより一層低減される。
【0011】
請求項3に記載の発明に係るめっき被膜付きフィルムの製造装置は、フィルムの導電面をカソード給電ローラに接触させ、前記導電面にめっき被膜を形成する電解めっき浴と、前記電解めっき浴の下流側に配置される請求項1又は請求項2に記載のフィルム支持装置と、を有することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、電解めっき浴の下流側に、次工程へフィルムを空中搬送する請求項1又は請求項2に記載のフィルム支持装置が設けられており、フィルム導電面支持部材とフィルム裏面支持部材が洗浄手段によってそれぞれ洗浄される。これによって、フィルムの導電面のみならず、フィルムの裏面に付着しためっき液が次工程に持ち込まれることが低減される。このため、めっき液が次工程又はその下流側の液(例えば、防錆剤など)と反応して汚れの成分が増加することが低減され、フィルムの搬送速度を上げても、フィルムの汚れを低減することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のめっき被膜付きフィルムの製造装置において、前記フィルム支持装置の下流側に設けられ、前記フィルムを洗浄する洗浄槽を備え、前記フィルムは前記フィルム支持装置に支持されて空中搬送されることにより、前記洗浄槽内の液のめっき金属濃度が50ppm以下に調整されることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、フィルム支持装置の下流側に、フィルムを洗浄する洗浄槽が設けられており、フィルムがフィルム支持装置に支持されて空中搬送されることにより、洗浄槽内の液のめっき金属濃度が50ppm以下(より好ましくは50ppm以下)に調整される。これにより、めっき液が洗浄槽の下流側の液(例えば、防錆剤など)と反応して汚れの成分が増加することがより一層低減される。従って、フィルムの搬送速度を上げても、フィルムの汚れを低減することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載のめっき被膜付きフィルムの製造装置において、前記フィルムの導電面と前記カソード給電ローラとを濡れた状態で接触させて給電する濡れ給電手段を有することを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、濡れ給電手段により、フィルムの導電面とカソード給電ローラとを濡れた状態で接触させて給電するので、フィルムの導電面を形成する細線が放電によりスパークすることが抑制される。このため、細線の断線などの発生を抑制することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のめっき被膜付きフィルムの製造装置において、前記濡れ給電手段は、前記フィルムの導電面と前記カソード給電ローラとの接触部の上流側に設けられ、濡れ給電用液で満たされ、かつ、前記カソード給電ローラの一部が前記濡れ給電用液に浸漬される濡れ給電用液受け槽を有することを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、フィルムの導電面とカソード給電ローラとの接触部の上流側で、カソード給電ローラの一部が濡れ給電用液受け槽に満たされた濡れ給電用液に浸漬されており、カソード給電ローラの周面に濡れ給電用液が付着する。そして、カソード給電ローラの回転に伴い、濡れ給電用液が付着したカソード給電ローラの周面がフィルムの導電面と接触し、フィルムの導電面とカソード給電ローラとが濡れた状態で給電される。従って、フィルムの導電面とカソード給電ローラとの接触部の上流側に、濡れ給電用液受け槽を設けるという簡易な構成で、フィルムの導電面とカソード給電ローラとを濡れた状態で接触させて給電することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載のめっき被膜付きフィルムの製造装置において、前記洗浄槽の下流側に、前記フィルムを圧接しながら液切りする液切りローラを備え、前記液切りローラの材質が、ポリオレフィン及びポリウレタンのいずれか一方であることを特徴としている。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、洗浄槽の下流側に、フィルムを圧接しながら液切りする液切りローラが設けられており、フィルムに付着した液が液切りローラによって液切りされる。その際、液切りローラの材質が、ポリオレフィン及びポリウレタンのいずれか一方であることにより、めっき液が洗浄槽の下流側の工程へ持ち込まれることがより効果的に低減される。このため、めっき液が洗浄槽の下流側の液と反応して汚れの成分が増加することがより効果的に低減され、フィルムの搬送速度を上げても、フィルムの汚れを低減することができる。
この材質は、吸水性が良く、適度な硬度と耐薬品性を有しており、これらの物性が汚れの低減効果を有していると考えている。
また、本発明の態様はロール搬送で特に効果を得ることができる。これはシート搬送では、先端と後端の影響による液持ち込みが大きく、本発明の態様の効果が発現し難いと考えている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記のように構成したので、フィルムの導電面及び裏面に付着しためっき液が次工程及びその下流側の工程に持ち込まれることを抑制でき、めっき液が次工程又はその下流側の液と反応して汚れの成分が増加することを低減することができる。従って、フィルムの搬送速度を上げても、フィルムの汚れを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルム支持装置としての支持装置200Aが搭載されためっき被膜付きフィルムの製造装置10を示す概略構成図である。
このめっき被膜付きフィルムの製造装置10は、図1に示すように、露光装置12、現像装置14、支持装置200Aを備えた電解めっき装置16、後処理装置17及び巻取装置19から構成されている。
【0024】
まず、露光装置12について説明する。露光装置12は、被めっき素材として、銀塩含有層(好ましくは、ハロゲン化銀乳剤層)が設けられた帯状の長尺フィルムからなる感光ウエブ18を搬送しながら、所望の細線状パターン(例えば、格子状、ハニカム状などのパターン)露光を行う装置である。このパターン露光により、感光ウエブ18の銀塩含有層の露光部には細線状のパターンが形成される。
【0025】
露光装置12には、感光ウエブ18の搬送路に沿って複数の搬送ローラ対20が設けられており、これらの搬送ローラ対20は、駆動ローラとニップローラとから構成される。
露光装置12には、搬送方向の最上流部に供給部21が設けられている。供給部21には、ローラ状に巻かれた長尺の感光ウエブ18を収納するマガジン22がセットされる。感光ウエブ18には、感光ウエブ18を引き出して下流側に向けて搬送するための引出ローラ22Aが設けられている。
【0026】
そして、供給部21からの感光ウエブ18の搬送方向下流側は、露光ユニット24が設けられている。この露光ユニット24により、感光ウエブ18に露光が行われる。露光ユニット24は、フォトマスクを利用した連続面露光ユニットであってもよく、レーザービームによる走査露光ユニットあってもよい。露光装置12は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の露光装置を適用することができる。
【0027】
次に、現像装置14について説明する。現像装置14は、露光装置12の搬送方向の下流側に配置され、所望の細線状パターン露光が施された感光ウエブ18を現像・定着・洗浄を行う装置である。
【0028】
現像装置14には、搬送方向の上流側から順に、現像槽26、漂白定着槽28、及び水洗槽30が設けられており、水洗槽30は、第1水洗槽30A、第2水洗槽30B、第3水洗槽30C、及び第4水洗槽30Dからなる。現像槽26には、例えば、現像液26Lが所定量貯蔵され、漂白定着槽28には、漂白定着液28Lが所定量貯蔵され、第1水洗槽30A〜第4水洗槽30Dには、洗浄液30Lが所定量貯蔵されている。各処理槽26〜30内のローラとガイドによって感光ウエブ18が各処理槽26〜30の液内を搬送されることで、現像・定着・洗浄の各処理が行われるようになっている。また、現像槽26の最上流側には、駆動ローラ32Aと従動ローラ32Bとを備えた搬入ローラ対32が配置されており、この搬入ローラ対32は、露光装置12から搬出される感光ウエブ18を現像液26L内に案内している。
【0029】
ここで、現像・定着・洗浄の各処理は、銀塩写真フィルム、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理技術を適用することができる。現像液26L、漂白定着液28L、洗浄液30Lもこれらに準じて適宜適用することができる。なお、定着処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる。
なお、現像装置14では、各処理槽26〜30の液内を通過した感光ウエブ18は、乾燥させずに現像装置14から排出されるようになっている。
【0030】
次に、電解めっき装置16について説明する。電解めっき装置16は、露光・現像を施され、細線状の金属銀部が形成された感光ウエブ18(フィルム)に対し、電解めっき処理を施し、当該金属銀部に導電性金属層を形成させめっき(導電性金属部)を形成する装置である。すなわち、感光ウエブ18の金属銀部が形成された面が導電面18Aであり、感光ウエブ18の金属銀部が形成された面と反対側が裏面18Bとなっている(図2参照)。
【0031】
電解めっき装置16には、感光ウエブ18の搬送方向上流側に、水洗槽30を通過した後の感光ウエブ18の水分を除去する水分除去装置40Aが配設されている。水分除去装置40Aには、感光ウエブ18の両側にエアーナイフ装置42、44が配置されており、感光ウエブ18の両側からエアーナイフを吹き付けることで、感光ウエブ18に付着した水分を除去する。
【0032】
図1及び図2に示されるように、水分除去装置40Aを通過した感光ウエブ18は、ガイドローラ46とガイドローラ48によって案内され、感光ウエブ18の導電面18A(金属銀部)に接触しながら給電を行うカソード給電ローラ50Aに搬送される。感光ウエブ18を挟んでカソード給電ローラ50Aと対向する位置には、感光ウエブ18の導電面18Aをカソード給電ローラ50Aに押圧して接触させる弾性ローラ52Aが配設されている。この弾性ローラ52Aは、回転可能に支持された芯金の外周面にゴムなどからなる弾性体層を備えるものであり、弾性ローラ52Aの両端部を支持する支持部材53を図示しない押圧手段によって押圧することによって、弾性ローラ52Aがカソード給電ローラ50Aに押圧されるようになっている。弾性ローラ52Aを押圧することで、感光ウエブ18とカソード給電ローラ50Aとを密着させることができる。
【0033】
また、カソード給電ローラ50Aと感光ウエブ18との接触部に対して、カソード給電ローラ50Aの回転方向上流側には、感光ウエブ18の導電面18Aとカソード給電ローラ50Aとを濡れた状態で接触させて給電する濡れ給電装置150Aが設けられている。この濡れ給電装置150Aについては後に詳述する。濡れ給電装置150Aによってカソード給電ローラ50Aの周面に濡れ給電用液が供給され、カソード給電ローラ50Aの回転により、濡れ給電用液が付着したカソード給電ローラ50Aが感光ウエブ18の導電面18Aと接触する。これによって、感光ウエブ18の導電面18Aとカソード給電ローラ50Aとが濡れた状態で接触して給電されるようになっている。
【0034】
カソード給電ローラ50Aより感光ウエブ18の搬送方向下流側には、めっき液61で満たされためっき槽60Aが配置されている。めっき槽60Aのめっき液61中には液中ローラ62Aが設けられており、液中ローラ62Aの周面に感光ウエブ18が巻き掛けられている。この工程では、カソード給電ローラ50Aに接触させた感光ウエブ18の導電面18Aをめっき槽60Aのめっき液61中で液中ローラ62Aにより搬送する。銅ボールを積層充填したケース64Aをアノード電極にして、カソード電極をカソード給電ローラ50Aとして、直流電源(整流器)66Aにより給電し、感光ウエブ18に層状のめっき被膜を形成する。本実施形態では、直流電源66Aにより、カソード給電ローラ50Aからアノード電極であるケース64Aへ給電し、感光ウエブ18にめっき被膜を形成する。
【0035】
ここで、電解めっき処理として、例えば、プリント配線板などで用いられている電解めっき技術を適用することができ、電解めっきは電解銅めっきであることが好ましい。本実施形態では、めっき液61として、電解銅めっき浴液が適用されている。電解銅めっき浴としては、硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴、ホウフッ化銅浴等が挙げられる。電解銅めっき液に含まれる化学種としては、硫酸銅や塩化銅、めっき液の安定性、導電性を高め、均一電着性の増加を図る硫酸、アノードの溶解促進及び添加剤の補助効果作用の塩素、浴の安定化やめっき緻密性を向上させるための添加剤としてポリエチレンオキサイド、ビピリジン等が挙げられる。
【0036】
なお、めっき槽60Aの下部には循環パイプ(図示省略)が連結されており、めっき槽60A内のめっき液61が循環パイプに供給され、フィルター(図示省略)を通すことでめっき液61中の異物が除去され、めっき槽60A内に戻される構成となっている。
【0037】
図4に示されるように、濡れ給電装置150Aは、カソード給電ローラ50Aと感光ウエブ18との接触部に対して、カソード給電ローラ50Aの回転方向上流側に、濡れ給電用液151で満たされた濡れ給電用液受け槽152を備えている。カソード給電ローラ50Aは、周面の一部が濡れ給電用液受け槽152内の濡れ給電用液151に浸漬されるように配置されている。
【0038】
図5に示されるように、カソード給電ローラ50Aの軸部162は、両端部に配置されたフレーム164にベアリングを介して支持されており、感光ウエブ18との接触部で感光ウエブ18の搬送に従動して回転可能となっている。濡れ給電用液受け槽152の長手方向の一端部側には、供給管154が接続されており、ポンプ156により濡れ給電用液151が供給されるようになっている。濡れ給電用液受け槽152の長手方向の他端部側には、濡れ給電用液151の液面を規定するオーバーフロー堰158が設けられている。オーバーフロー堰158の外側(長手方向の他端部)には、濡れ給電用液受け槽152の底部に排出管160が接続されている。これによって、濡れ給電用液151がオーバーフロー堰158の高さで満たされると共に、オーバーフロー堰158の上端部からオーバーフローした濡れ給電用液151が排出管160から排出されるようになっている。濡れ給電用液151としては、例えば、Auめっき、Agめっき、Cuめっき、Niめっき、Fe−Niめっき、Ni−Coめっき、Ni−Znめっき、Ni−Crめっき、Cu−Ni−Crめっきの液などを用いることができる。好ましくは、Cuめっき、Niめっき、Ni−Znめっきの液に用いることが良い。
【0039】
このような濡れ給電装置150Aでは、濡れ給電用液受け槽152の濡れ給電用液151がカソード給電ローラ50Aの周面に供給され、カソード給電ローラ50Aの回転により、濡れ給電用液151が付着したカソード給電ローラ50Aが感光ウエブ18の導電面18Aと接触する。これによって、感光ウエブ18の導電面18Aとカソード給電ローラ50Aとが濡れた状態で接触して給電されるようになっている。このような給電により、感光ウエブ18の導電面18Aを形成する細線が放電によりスパークすることが抑制され、細線の断線などの発生が抑制される。
【0040】
図1及び図2に示されるように、めっき槽60Aより感光ウエブ18の搬送方向下流側には、洗浄液71で満たされた洗浄槽70Aが配設されている。めっき槽60Aと洗浄槽70Aとの隣接部の上方には、感光ウエブ18を空中搬送させるように支持する支持装置200Aが配設されている。
【0041】
支持装置200Aは、感光ウエブ18の搬送方向における上流側と下流側で感光ウエブ18の導電面18Aに接触するフィルム導電面支持部材としての2本の導電面支持ローラ202、204と、2本の導電面支持ローラ202、204の間で感光ウエブ18の裏面18Bに接触するフィルム裏面支持部材としての裏面支持ローラ206と、を備えている。導電面支持ローラ202と裏面支持ローラ206と導電面支持ローラ204は、図2に示す感光ウエブ18の搬送方向と直交する方向から見て略千鳥状に配置されており、感光ウエブ18が搬送方向上流側から導電面支持ローラ202、裏面支持ローラ206、導電面支持ローラ204の順番で接触する。すなわち、感光ウエブ18の導電面18Aが導電面支持ローラ202に巻き掛けられ、その下流側で感光ウエブ18の裏面18Bが裏面支持ローラ206に巻き掛けられ、その下流側で感光ウエブ18の導電面18Aが導電面支持ローラ204に巻き掛けられている。導電面支持ローラ202と裏面支持ローラ206と導電面支持ローラ204は、感光ウエブ18の移動に伴って従動回転する。
【0042】
また、洗浄槽70A内には、液中ローラ72Aが設けられており、感光ウエブ18の裏面18Bが巻き掛けられている。これにより、感光ウエブ18は、めっき槽60Aのめっき液61内を通過した後、支持装置200Aの導電面支持ローラ202と、裏面支持ローラ206と、導電面支持ローラ204によって空中搬送され、洗浄槽70Aの洗浄液71内に搬送される。なお、本実施形態では、洗浄液71として、純水が用いられている。
【0043】
図3に示されるように、支持装置200Aは、導電面支持ローラ202と導電面支持ローラ204をそれぞれ洗浄する洗浄手段としての洗浄装置210、212と、裏面支持ローラ206を洗浄する洗浄手段としての洗浄装置214と、を備えている。洗浄装置210、212は、感光ウエブ18の上流側と下流側で略対称に構成されている。
【0044】
洗浄装置210には、導電面支持ローラ202の下方部に、洗浄液217が満たされた樋状の洗浄液受け槽218が配設されており、導電面支持ローラ202の下部が洗浄液217に浸漬されている。同様に、洗浄装置212には、導電面支持ローラ204の下方部に、洗浄液217が満たされた樋状の洗浄液受け槽220が配設されており、導電面支持ローラ204の下部が洗浄液217に浸漬されている。また、洗浄装置214には、裏面支持ローラ206の下方部に、洗浄液217が満たされた樋状の洗浄液受け槽222が配設されており、裏面支持ローラ206の下部が洗浄液217に浸漬されている。これらの洗浄液受け槽218、220、222は、導電面支持ローラ202、204及び裏面支持ローラ206の長手方向に沿って配置され、導電面支持ローラ202、204及び裏面支持ローラ206の全長が収まる長さに形成されている。
【0045】
洗浄液受け槽218、220、222には、洗浄液217を供給する供給管224がそれぞれ接続されている。供給管224は、洗浄槽70Aと接続された1本の配管225から3本に分岐されており、図2に示されるように、ポンプ236により洗浄槽70A内の洗浄液71が汲み上げられ、洗浄液217として洗浄液受け槽218、220、222に供給されるようになっている。
なお、本実施形態では、洗浄槽70A内の洗浄液71が汲み上げられるが、洗浄液受け槽218、220、222に専用の洗浄液217が供給される構成でもよい。また、専用の洗浄液217として、例えば、純水を用いることができる。
【0046】
洗浄液受け槽218の側部には、洗浄液217の液面を規定するオーバーフロー堰226が設けられている。そして、オーバーフロー堰226で洗浄液受け槽218内の洗浄液217をオーバーフローさせて洗浄液217の量を一定に保つように構成されている。同様に、洗浄液受け槽220、222の側部にも、洗浄液217の液面を規定するオーバーフロー堰228、230がそれぞれ設けられている。そして、オーバーフロー堰228、230で洗浄液受け槽220、222内の洗浄液217をオーバーフローさせて洗浄液217の量を一定に保つように構成されている。導電面支持ローラ202、204及び裏面支持ローラ206は、洗浄液217内に直径の略1/2〜1/10が浸漬されるように設定されている。
【0047】
洗浄液受け槽218、220、222のオーバーフロー堰226、228、230の外側には、オーバーフローした洗浄液217が流れる排出管232がそれぞれ設けられており、排出管232は1本の配管233に繋がっている。これにより、オーバーフロー堰226、228、230の上端部からオーバーフローした洗浄液217が排出管232、配管233を通って排出されるようになっている。なお、図示を省略するが、導電面支持ローラ202、204及び裏面支持ローラ206の周面に長手方向に沿ってそれぞれ当接するフレキシブルブレードを設けてもよい。これにより、導電面支持ローラ202、204及び裏面支持ローラ206の周面に付着した汚れや付着物を掻き落とすことができる。
【0048】
洗浄槽70Aの上方側には、感光ウエブ18の搬送方向下流側(搬出位置)に、感光ウエブ18の表裏に圧接される1対の液切りローラ240(スクイズローラ)が配設されている。液切りローラ240は、感光ウエブ18の移動に伴って従動回転する。液切りローラ240は、ポリオレフィン及びポリウレタンのいずれか一方で形成されている。この液切りローラ240によって感光ウエブ18に付着した洗浄液71が液切りされるように構成されている。洗浄槽70Aを通過した感光ウエブ18は、液中ローラ72Aと上部に配置された支持ローラ80に案内されて搬送される。
【0049】
図1では図示を省略するが、電解めっき装置16では、カソード給電ローラ50A及び濡れ給電装置150Aと、めっき槽60Aと、支持装置200Aと、洗浄槽70Aと、液切りローラ240とを備えたユニットが複数配置されており(本実施形態では9ユニット)、上記のような工程が複数回繰り返されることで、感光ウエブ18の導電面18Aに所定の厚さの銅めっきが形成される。
【0050】
さらに、感光ウエブ18の搬送方向下流側には、ニッケルめっきを施すためのカソード給電ローラ50B及び濡れ給電装置150Bと、めっき槽60Bと、洗浄槽70Bと、液切りローラ240とを備えたユニットが複数配置されており(本実施形態では9ユニット)、上記と同様の工程が複数回繰り返されることで、感光ウエブ18の導電面18Aに所定の厚さのニッケルめっきが形成される。
【0051】
次いで、図1に示されるように、めっきが施された感光ウエブ18は、フィルム張力を検出できるローラ125を介して、めっき液を除去する洗浄液115(水)の入った水洗部114、めっき被膜を保護する防錆処理液117の入った防錆処理部116を経て、過剰な防錆処理液を除去する洗浄液119(水)の入った水洗部118に搬送される。さらに、めっきが施された感光ウエブ18は、水分を除去する乾燥炉をもつ乾燥工程部120を経て、速度調整部121を経て、バランスローラ部122を経て、張力調整された後、アキュムレータ123を通してロール状フィルム124Aとする。このようにして、感光ウエブ18の細線状金属銀部にめっき(導電性金属部)が形成される。このような工程により、めっき被膜付きフィルムを得ることができる。
【0052】
実質的なフィルム搬送張力は、5N/m以上200N/m以下とすることが好ましい。実際に張力を5N/m未満にすると、フィルムが蛇行し始め、搬送経路の制御がうまくいかなかった。また200N/mを超えると、フィルムの形成されるめっき被膜金属が内部歪みを持つために、製品にカールが発生するなどの問題があった。
【0053】
なお、電解めっき装置16のめっき槽の数は、所望のめっき膜厚(導電性金属部の厚み)に応じて複数セット増設してもよい。この数に応じて、所望のめっき膜厚(導電性金属部の厚み)を容易に得ることができる。
【0054】
上記のような支持装置200Aでは、めっき槽60Aの下流側で、感光ウエブ18が導電面支持ローラ202、裏面支持ローラ206、導電面支持ローラ204の順に支持された状態で洗浄槽70Aへ空中搬送される。導電面支持ローラ202、204及び裏面支持ローラ206の下部は、それぞれ洗浄液受け槽218、220、222内の洗浄液217に浸漬されており、導電面支持ローラ202、204及び裏面支持ローラ206の回転に伴い、洗浄液217によって洗浄され、導電面支持ローラ202、204及び裏面支持ローラ206の周面が清浄な状態に保たれる。これによって、感光ウエブ18の導電面18Aのみならず、感光ウエブ18の裏面18Bに付着しためっき液61が洗浄槽70A及びその下流側の工程に持ち込まれることが低減される。このため、洗浄槽70A及びその下流側の工程の液と反応して汚れの成分が増加することを低減することができる。このような作用は、めっき槽60Bの下流側においても同様であり、例えば、ニッケルめっきにおいて、ニッケルが下流側の防錆剤と反応して汚れの成分が増加することを低減することができる。従って、感光ウエブ18の搬送速度を上げても、感光ウエブ18の汚れを低減することができる。
【0055】
また、洗浄装置210、212、214では、洗浄液217は導電面支持ローラ202、204及び裏面支持ローラ206の下部にのみ接触するので少量で済み、導電面支持ローラ202、204及び裏面支持ローラ206に付着しためっき液などの汚れを少量の洗浄液217で効率よく確実に洗浄することができる。
【0056】
また、感光ウエブ18がめっき槽60A、60Bの下流側で、支持装置200A、200Bに支持されて空中搬送され、洗浄槽70A、70Bに導入されることにより、洗浄槽70A、70Bの洗浄液71のめっき金属濃度を50ppm以下に調整することができる。めっき金属濃度が50ppm以下に調整されることにより、めっき液61が洗浄槽70A、70Bの下流側の液(例えば、防錆剤など)と反応して汚れの成分が増加することを低減することができる。
【0057】
さらに、電解めっき装置16では、濡れ給電装置150A、150Bによって、感光ウエブ18の導電面18Aとカソード給電ローラ50A、50Bとを濡れた状態で接触させて給電するので、感光ウエブ18の導電面18Aを形成する細線が放電でスパークすることが抑制される。このため、感光ウエブ18の導電面18Aを形成する細線の断線などの発生を抑制することができる。
【0058】
また、洗浄槽70A、70Bの感光ウエブ18の搬出位置に1対の液切りローラ240が配設されており、感光ウエブ18の搬送に伴って液切りローラ240が従動回転する。液絞りローラ240に感光ウエブ18が挟持されて搬送されることにより、感光ウエブ18に付着した洗浄液71が液切りされる。この液切りローラ240が、ポリオレフィン及びポリウレタンのいずれか一方であることにより、感光ウエブ18の液切りがより確実となる。これにより、めっき液61が洗浄槽70A、70Bの下流側の工程へ持ち込まれることがより一層低減される。このため、めっき液61が洗浄槽70Aの下流側の液と反応して汚れの成分が増加することをより一層低減することができる。
【0059】
なお、上記実施形態の液切りローラ240は、洗浄槽70A、70Bの洗浄液に浸漬された感光ウエブ18の液切りを行うものであるが、これに限定されず、他の洗浄槽に浸漬された感光ウエブ18の液切りを行うときにも適用可能である。また、洗浄槽に限定されず、液体の液切りを行うものであれば適用可能である。
なお、上記実施形態では、2本の導電面支持ローラ202、204の間に1本の裏面支持ローラ206が設けられているが、導電面支持ローラと裏面支持ローラの本数はこれに限定されず、導電面支持ローラを3本以上、或いは裏面支持ローラを2本以上設けてもよい。
また、洗浄装置は、導電面支持ローラと裏面支持ローラを洗浄可能な構成であれば、洗浄液を吹き付ける方式などの他の洗浄手段を用いてもよい。また、導電面支持ローラと裏面支持ローラは、洗浄手段によって洗浄できる構成であれば、ローラに限らず他の形状の支持部材を用いてもよい。
【0060】
次に、感光ウエブ18について説明する。被めっき素材としての感光ウエブ18は、例えば、光透過性支持体上に銀塩(例えばハロゲン化銀)が含有した銀塩含有層を設けた、感光材料からなる長尺フレキシブル基材である。また、銀塩含有層上には保護層が設けられていてもよく、この保護層とは例えばゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために銀塩含有層上に形成される。保護層の厚みは0.02〜20μmであることが好ましい。
これらの銀塩含有層や保護層の組成などは、銀塩写真フィルム、印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に適用されるハロゲン化銀乳剤層(銀塩含有層)や保護層を適宜適用することができる。
特に、感光ウエブ18(感光材料)としては、銀塩写真フィルム(銀塩感光材料)が好ましく、白黒銀塩写真フィルム(白黒銀塩感光材料)が最もよい。また、銀塩含有層に適用する銀塩としては、特にハロゲン化銀が最も好適である。
【0061】
一方、光透過性支持体としては、単層のプラスチックフィルムや、これを2層以上組み合わせた多層フィルムを適用することができる。プラスチックフィルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
【0062】
また、ディスプレイ用の電磁波遮蔽材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合における光透過性支持体の全可視光透過率は70〜100%が好ましい。
感光ウエブ18の幅は、例えば、20cm以上とし、厚みは50〜200μmとすることがよい。
【0063】
また、感光ウエブ18には、露光・現像後、その露光部に金属銀部が形成されるが、この金属銀部に含まれる金属銀の質量が、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、その後の電解めっき処理で高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0064】
露光及び現像処理により形成された金属銀部に導電性を付与するために、上述の電解めっき装置16によって、金属銀部に導電性金属部を形成させる電解めっき処理を行う。すなわち、めっき被膜付きフィルムの製造装置10では、被めっき素材として、銀塩含有層が設けられた感光ウエブ18を用い、これの銀塩含有層に露光・現像を行って被めっき部として所望の細線状金属銀部を形成する。この細線状金属銀部は、銀塩含有層に露光・現像して形成されるため、非常に細い細線でパターン化された細線状金属銀部となる。このような感光ウエブ18に対し、電解めっき処理を施すと、細線状金属銀部上に導電性金属部が形成される。このため、得られる電磁波遮蔽材料は、非常に細い細線でパターン化された細線状金属部と大面積の光透過部とを有することとなる。
【0065】
なお、上記実施形態のフィルム支持装置は、フィルム上の金属銀部に電解めっきを施すめっき被膜付きフィルムの製造装置に適用するものであるが、これに限定するものではない。例えば、フィルムに、通常の電気めっき、無電解めっきを行うとき、又はプリント配線板の液切り乾燥に適用することもできる。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0067】
[実施例1]
(ハロゲン化銀感光材料の作製)
ハロゲン化銀感光材料は特開2006−352073号公報の実施例1に記載の試料を調整しポリエチレンテレフタレート(PET)からなる支持体上に塗布した。
PET支持体の厚さは90μm、幅75cmのものを用いた。幅75cmのPET支持体に70cmの幅で10000m分塗布を行い、塗布の中央部65cmを残すように両端を5cmずつ切り落としてロール状のハロゲン化銀感光材料を得た。
【0068】
(露光)
ハロゲン化銀感光材料の露光は特開2004−1244号公報の発明に記載のDMD(デジタル・ミラー・デバイス)を用いた露光ヘッドを65cm幅になるように並べ、感光材料の感光層上にレーザー光が結像するように露光ヘッドおよび露光ステージを湾曲させて配置し、感材送り出し機構および巻取り機構を取り付けた上、露光面のテンション制御および巻取り、送り出し機構の速度変動が露光部分の速度に影響しないようにバッファー作用を有する撓みを設けた連続露光装置にて行った。露光の波長は400nmで、ビーム形は12μmの略正方形、およびレーザー光源の出力は100μJであった。
露光のパターンは、線幅8μmの格子状のパターンが45度の角度になるようにし、ピッチが300μm間隔で幅65cm長さ500m連続するように行った。
【0069】
(現像処理)・現像液1L処方(補充液も同組成)
ハイドロキノン 22 g
亜硫酸ナトリウム 25 g
炭酸カリウム 33 g
エチレンジアミン・四酢酸 2 g
臭化カリウム 4 g
ポリエチレングリコール4000 1 g
水酸化カリウム 4 g
エリソルビン酸ナトリウム 3 g
ジエチレングリコール 5 g
pH 10.2に調整
【0070】
・定着液1L処方(補充液も同組成)
チオ硫酸アンモニウム液(75%) 300 ml
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25 g
1,3-ジアミノプロパン・四酢酸 8 g
酢酸 5 g
アンモニア水(27%) 1 g
pH 6.2に調整
【0071】
上記処理剤を用いて露光済みハロゲン化銀感光材料を、富士フイルム社製自動現像機FG−710PTSを用いて処理条件としては現像32℃で27秒、定着30℃で27秒、第一水洗(イオン交換水 0.75L/min)30℃で13秒、第二水洗(流水 10L/min)25℃で13秒の処理を行った。
ランニング処理条件として、感光材料の処理量を1300m2/日で現像液の補充量を500ml/m2、定着液の補充量を640ml/m2で3日間のランニング処理を行った。
【0072】
(めっき処理)
上記処理により銀メッシュパターンが形成されたフィルム(感光ウエブ18)に対して、図2に示すめっき槽60Aと実質的に同じ機能槽構成である合計18槽のめっき槽を備えた電解めっき装置を使用して電解めっきを行った。その際、各槽の電流値を表1に示すように調整して試料番号101〜108の電解めっき処理フィルム試料を作成した。電解めっき装置は、後述する工程になるように連続構成となっている。なお、フィルム(感光ウエブ18)の銀メッシュ面が下向きとなるように(銀メッシュ面が給電ローラと接するように)、電解めっき装置に取り付けた。めっき槽60Aのサイズは、各浴ともに80cm×80cm×80cmであった。
【0073】
【表1】

【0074】
表1では、試料番号101〜104がフィルムを空中搬送させる際にフィルムの導電面に接触する2本の支持ローラを用いた比較例であり、試料番号105〜108がフィルムを空中搬送させる際にフィルムの導電面、裏面に接触する3本の支持ローラ202、204、206を用いた本発明である。
なお、カソード給電ローラ50A、50Bとして、鏡面仕上げしたステンレス製ローラ(10cmφ、長さ100cm)を使用し、支持ローラ202、204、206およびその他の搬送ローラとしては、5cmφ、長さ100cmのローラを使用した。また、支持ローラ202、204、206の高さを調製することで、ライン速度が違っても一定の液中処理時間が確保されるようにした。
【0075】
また入り口側のカソード給電ローラ50Aとフィルムの銀メッシュ面とが接している面の最下部とめっき液面との距離(図2に示す距離La)を9cmとした。また、ライン搬送速度は、2〜3.5m/分に変更して処理した。
【0076】
めっき処理におけるめっき液及び防錆液の組成、めっき槽は以下のとおりである。
・硬膜液 (補充液も同組成)
グルタルアルデヒド 25g
純水を加えて 1L
【0077】
・銅めっき1〜9液の組成 (補充液も同組成)
硫酸銅5水塩 230g
硫酸(47%) 200mL
荏原ユージライト(株)製のCu−Brite21 20ml
純水を加えて 1L
pH −0.1
・銅めっき10〜18液の組成 (補充液も同組成)
硫酸銅5水塩 230g
硫酸(47%) 200mL
純水を加えて 1L
pH −0.1
注 *;pHメーターの読み取り値
【0078】
・黒化第1液 (補充液も同組成)
硫酸ニッケル6水塩 120g
チオシアン酸アンモニウム 20g
硫酸亜鉛7水塩 4g
硫酸ナトリウム 16g
純水を加えて 1L
pH(硫酸と水酸化ナトリウムでpH調整) 5.0
・黒化第2液 (補充液も同組成)
硫酸ニッケル6水塩 120g
チオシアン酸アンモニウム 20g
硫酸亜鉛7水塩 30g
硫酸ナトリウム 16g
純水を加えて 1L
pH(硫酸と水酸化ナトリウムでpH調整) 5.0
【0079】
・防錆液
上村工業(株)製のスルカップAT−21 100ml
純水を加えて 1L
【0080】
以下に、めっき槽60Aの処理時間を示す。なお、各槽で適用した電流値は下記の表1に示す。表1において、電解通電量を電流値(A)で示した。
また、全ての銅めっき液、水洗及び防錆の温度は25〜30℃、硬膜液は35℃、黒化液は33℃、乾燥温度は50℃〜70℃で処理を行った。
【0081】
硬膜 40秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき1 40秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき2 40秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき3 40秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき4 40秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき5 40秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき6 40秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき7 40秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき8 40秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき9 40秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき10 60秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき11 60秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき12 60秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき13 60秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき14 60秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき15 60秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき16 60秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき17 60秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
銅めっき18 60秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
黒化第1処理 60秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
黒化第2処理 60秒
水洗 30秒
水洗 30秒
防錆 60秒
水洗 30秒
乾燥 1分 50℃〜70℃
【0082】
(良品率)
点状の欠陥は直径1mm以上をNG、線状の欠点は幅0.2mm以上、長さ10mm以上をNGとした。NG欠点が発生した箇所は1m欠損扱いとし、次の式で良品率を算出した。
良品率(%)= 欠損しなかった処理長(m)/処理長(m)×100
【0083】
[実施例2]
(導電性膜の作製)
導電性膜は特開2006−352073号公報の実施例2に記載の導電性膜aを作製した。
【0084】
(めっき処理)
実施例1と同じ処方の液及び条件で実施した。
各槽で適用した電流値を表2に示すように調整して試料番号201〜205の電解めっき処理フィルム試料を作成した。給電条件、スクイズローラ(液切りローラ)の材質等は表2に示すように設定している。
【表2】

【0085】
表1に示されるように、本発明の電解めっき処理フィルムでは、比較例の電解めっき処理フィルムに比べて、フィルムの搬送速度を速くしても、良品率が高いことが確認された。
表2に示されるように、濡れ給電を行った本発明の電解めっき処理フィルムでは、乾燥給電を行った比較例の電解めっき処理フィルムに比べて、良品率が高いことが確認された。また、スクイズローラの材質をPVA(ポリビニルアルコール)に設定した場合に比べて、PU(ポリウレタン)に設定した場合は、良品率が高いことが確認された。この効果は、水洗槽へのめっき液の持込み量を低減した効果と考えられ、水洗槽のめっき金属濃度が50ppm以下にすることによって、良品率が高いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態におけるめっき被膜付きフィルムの製造装置を示す概略縦断面図である。
【図2】図1に示す製造装置で用いられる電解めっき装置のめっき槽の下流側に配設される支持装置を示す概略構成図である。
【図3】図2に示す支持装置の洗浄液受け槽付近の構成を示す部分拡大図である。
【図4】図1に示す製造装置で用いられる電解めっき装置に配設される濡れ給電装置を示す概略構成図である。
【図5】図4に示す濡れ給電装置のカソード給電ローラの長手方向と直交する方向から見た概略断面図である。
【符号の説明】
【0087】
10 めっき被膜付きフィルムの製造装置
16 電解めっき装置
17 後処理装置
18 感光ウエブ(フィルム)
18A 導電面
18B 裏面
21 供給部
50A カソード給電ローラ
50B カソード給電ローラ
60A めっき槽
60B めっき槽
61 めっき液
70A 洗浄槽
70B 洗浄槽
71 洗浄液
150A 濡れ給電装置
150B 濡れ給電装置
151 給電用液
152 濡れ給電用液受け槽
200A 支持装置(フィルム支持装置)
202 導電面支持ローラ
204 導電面支持ローラ
206 裏面支持ローラ
210 洗浄装置
212 洗浄装置
214 洗浄装置
217 洗浄液
218 洗浄液受け槽
220 洗浄液受け槽
222 洗浄液受け槽
224 供給管(洗浄液供給排出手段)
232 排出管(洗浄液供給排出手段)
236 ポンプ(洗浄液供給排出手段)
240 液切りローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの導電面をカソード給電ローラに接触させ、前記導電面にめっき被膜を形成する電解めっき浴の下流側に配置され、次工程へ空中搬送される前記フィルムを支持するフィルム支持装置であって、
前記フィルムの導電面に接触する少なくとも2本のフィルム導電面支持部材と、
前記フィルム導電面支持部材の間に配置され、前記導電面と反対側の前記フィルムの裏面に接触する少なくとも1本のフィルム裏面支持部材と、
前記フィルム導電面支持部材と前記フィルム裏面支持部材をそれぞれ洗浄する洗浄手段と、
を有することを特徴とするフィルム支持装置。
【請求項2】
前記フィルム導電面支持部材と前記フィルム裏面支持部材は、それぞれローラで構成されており、
前記洗浄手段は、
洗浄液で満たされ、かつ、前記ローラの下部が前記洗浄液に浸漬される洗浄液受け槽と、
前記洗浄液受け槽に新たな洗浄液を供給すると共に、前記洗浄液受け槽内の前記洗浄液を排出させる洗浄液供給排出手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルム支持装置。
【請求項3】
フィルムの導電面をカソード給電ローラに接触させ、前記導電面にめっき被膜を形成する電解めっき浴と、
前記電解めっき浴の下流側に配置される請求項1又は請求項2に記載のフィルム支持装置と、
を有することを特徴とするめっき被膜付きフィルムの製造装置。
【請求項4】
前記フィルム支持装置の下流側に設けられ、前記フィルムを洗浄する洗浄槽を備え、
前記フィルムは前記フィルム支持装置に支持されて空中搬送されることにより、前記洗浄槽内の液のめっき金属濃度が50ppm以下に調整されることを特徴とする請求項3に記載のめっき被膜付きフィルムの製造装置。
【請求項5】
前記フィルムの導電面と前記カソード給電ローラとを濡れた状態で接触させて給電する濡れ給電手段を有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のめっき被膜付きフィルムの製造装置。
【請求項6】
前記濡れ給電手段は、
前記フィルムの導電面と前記カソード給電ローラとの接触部の上流側に設けられ、濡れ給電用液で満たされ、かつ、前記カソード給電ローラの一部が前記濡れ給電用液に浸漬される濡れ給電用液受け槽を有することを特徴する請求項5に記載のめっき被膜付きフィルムの製造装置。
【請求項7】
前記洗浄槽の下流側に、前記フィルムを圧接しながら液切りする液切りローラを備え、
前記液切りローラの材質が、ポリオレフィン及びポリウレタンのいずれか一方であることを特徴とする請求項4に記載のめっき被膜付きフィルムの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−256757(P2009−256757A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110155(P2008−110155)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】