説明

フィルム材料の製造方法、下偏光板の製造方法、下偏光板、液晶表示パネルおよび表示装置

【課題】入射光の進行方向を変化させ得る保護フィルムを安価に製造し得る製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、拡散成分57とともに熱可塑性樹脂56aを加熱して押し出してフィルム材料90を形成する押し出し工程と、フィルム材料が、ベルト部材86bと、ベルト部材に対向して配置された成型ロール84と、の間で加圧されながら、当該ベルト部材および成型ロールの間を通過する、加圧工程と、を備える。加圧工程において、フィルム材料は、その移動経路に沿った或る長さLの区間NZにわたって加圧される。また加圧工程において、保護フィルム55のベルト部材に接触していた側をなす面55aが平坦面となるように冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子と接着されて液晶表示パネル用の下偏光板をなすようになる下偏光板用の保護フィルムの製造方法に係り、とりわけ、液晶表示パネルへ入射した光の進行方向を変化させ得る保護フィルムの製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、液晶表示パネル用の下偏光板の製造方法に係り、とりわけ、液晶表示パネルへ入射した光の進行方向を変化させ得る下偏光板の製造方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、このような製造方法によって作製された保護フィルムを含む下偏光板、液晶表示パネルおよび表示装置、並びに、このような製造方法によって作製された下偏光板を含む液晶表示パネルおよび表示装置に関する。
【背景技術】
【0004】
今日、液晶表示パネルと、液晶表示パネルを背面側から照明する面光源装置と、を含んでなる表示装置が広く普及している。
【0005】
面光源装置は、光源と、光源からの光の進行方向を変化させるための多数の光学シートと、を含んでいる。図9に示された面光源装置120の一例のように、多くの場合、多数の光学シートの中には、光源からの光を拡散させて光源の像を隠す(目立たなくさせる)光拡散シート29、拡散板28と、光の進行方向を正面方向へ絞り込み正面方向輝度を向上させる機能(集光機能)を有した集光シート30,35と、が含まれている。
【0006】
一方、液晶表示パネルは、画素毎に液晶の配向を制御し得る液晶セルと、液晶セルの入光側に配置された下偏光板と、液晶セルの出光側に配置された上偏光板と、を有している。各偏光板は、特定の偏光成分の光を透過させ、前記特定の偏光成分以外の成分の光を吸収する偏光子と、偏光子に接着され偏光子を保護する保護フィルムと、を有している。
【0007】
このうち保護フィルムは、通常、コスト上の制約から単なる透光性フィルムによって構成されており、透過光に対して積極的に光学的作用を及ぼすことはない。また、光学的機能を付与された保護フィルムが存在しない訳ではないが、偏光子との接着性や偏光子を保護する保護機能を考慮すると、実際上、保護フィルムの偏光子に対面しない側の面を単にマット面化したといった程度にとどまっている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−258013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、保護フィルムの一方の表面をマット面化する程度では、保護フィルムに十分な拡散機能を付与することはできない。その一方で、光の進行方向を積極的に変化させる機能を有した保護フィルムを安価に製造することができれば、実際の表示装置について、輝度特性や視野角特性についての設計の自由度を格段に向上させることができる。また、面光源装置に組み込まれる光学シートの数を削減し得る可能性もあり、この場合、面光源装置および表示装置の製造コストを直接的に削減することができるとともに、面光源装置および表示装置の薄型化も可能となる。
【0010】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、液晶表示パネルへ入射した光の進行方向を変化させ得る下偏光板用の保護フィルムを安価に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による保護フィルムの製造方法は、下偏光板用の保護フィルムの製造方法であって、
拡散成分とともに熱可塑性樹脂を加熱して押し出し、前記熱可塑性樹脂と前記熱可塑性樹脂内に分散された前記拡散成分とを有する層を含むフィルム材料が形成される、押し出し工程と、
形成された前記フィルム材料が、ベルト部材と、前記ベルト部材に対向して配置された成型ロールと、の間で加圧されながら、当該ベルト部材および成型ロールの間を通過する、加圧工程と、を備え、
前記加圧工程において、フィルム材料は、その移動経路に沿った或る長さの区間にわたって、前記成型ロールおよび前記ベルト部材によって加圧され、且つ、前記フィルム材料からなる保護フィルムの前記ベルト部材に接触していた側をなす面が平坦面となるように冷却される。
【0012】
本発明による保護フィルムの製造方法において、前記フィルム材料が前記成型ロールおよび前記ベルト部材によって加圧されるようになる前記或る長さをL(mm)とし、前記フィルム材料の移動速度をF(mm/秒)とし、前記ベルト部材の温度をT(℃)として、次の式(a)が満たされるようにしてもよい。
0.16≦L/(F×T)×100≦0.96 ・・・式(a)
【0013】
本発明による保護フィルムの製造方法の前記加圧工程において、前記熱可塑性樹脂と前記熱可塑性樹脂内に分散された前記拡散成分とを有する前記層が前記ベルト部材に接触しながら、前記フィルム材料が前記成型ロールおよび前記ベルト部材の間を通過するようにしてもよい。
【0014】
本発明による保護フィルムの製造方法において、前記熱可塑性樹脂と前記熱可塑性樹脂内に分散された前記拡散成分とを有する前記層が、前記フィルム材料からなる前記保護フィルムの一方の面を形成し、前記保護フィルムの前記一方の面についてJISB0601(1982年)に準拠して測定された粗さRaが、0.9μm以下となってもよい。
【0015】
本発明による保護フィルムの製造方法において、前記フィルム材料からなる前記保護フィルムの前記ベルト部材に接触していた側をなす面についてJISB0601(1982年)に準拠して測定された粗さRaが、0.9μm以下となってもよい。
【0016】
本発明による保護フィルムの製造方法において、前記フィルム材料からなる前記保護フィルムの前記成型ロールに接触していた側をなす面についてJISB0601(1982年)に準拠して測定された粗さRaが、0.4μm以下となってもよい。
【0017】
本発明による保護フィルムの製造方法の前記押し出し工程において、第2の熱可塑性樹脂も加熱して押し出され、前記熱可塑性樹脂と前記熱可塑性樹脂内に分散された前記拡散成分とを有する前記層と、この前記層に積層され前記第2の熱可塑性樹脂からなる第2層と、を含むフィルム材料が形成されるようにしてもよい。
【0018】
本発明による保護フィルムの製造方法において、前記熱可塑性樹脂と前記熱可塑性樹脂内に分散された前記拡散成分とを有する前記層のみからなる保護フィルムが製造されるようにしてもよい。
【0019】
本発明による保護フィルムの製造方法において、前記加圧工程の後に、前記フィルム材料の前記成型ロールに接触していた面に、前記拡散成分の存在に対応した凹凸が形成されるようにしてもよい。
【0020】
本発明による保護フィルムの製造方法の前記加圧工程において、前記フィルム材料の前記成型ロールに接触する側に、前記成型ロールによって、凹凸面が賦型されるようにしてもよい。
【0021】
本発明による保護フィルムの製造方法の前記加圧工程において、前記フィルム材料の前記成型ロールに接触する側に、前記成型ロールにより、並べて配置された単位プリズムによって構成されるプリズム面が形成されるようにしてもよい。このような本発明による保護フィルムの製造方法において、複数の単位プリズムが、フィルム材料のフィルム面と平行な配列方向に沿って並べられ、各単位プリズムは、前記フィルム面と平行であるとともに前記配列方向と交差する方向に延びていてもよい。
【0022】
本発明による保護フィルムの製造方法において、前記フィルム材料からなる前記保護フィルムのヘイズ値が60%以上90%以下となるようにしてもよい。
【0023】
本発明による保護フィルムの製造方法において、前記フィルム材料からなる前記保護フィルムについて、温度40℃、湿度90%RH、24時間での透湿度が、10g/m2・24hr以上となるようにしてもよい。
【0024】
本発明による保護フィルムの製造方法において、前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート系樹脂であってもよい。
【0025】
本発明による下偏光板の製造方法は、
上述してきた本発明による保護フィルムの製造方法のいずれかによって製造された保護フィルムと、偏光子と、を接着する工程を備え、
前記偏光子が、前記保護フィルムの前記ベルト部材に接触していた側から、当該フィルム材料に接着される。
【0026】
本発明による下偏光板の製造方法において、前記保護フィルムと前記偏光子とは水貼りによって貼合されるようにしてもよい。
【0027】
本発明による下偏光板の製造方法が、互いに接着された前記保護フィルムおよび前記偏光子を有するウェブ状の材料を切断し又は打ち抜いて、当該ウェブ状の材料から下偏光板が順次得られる工程を、さらに備えるようにしてもよい。
【0028】
本発明による下偏光板の製造方法の前記接着する工程において、ウェブ状または枚葉状の前記偏光子とウェブ状の前記保護フィルムとが接着されるようにしてもよい。
【0029】
本発明による下偏光板は、
上述してきた本発明による保護フィルムの製造方法のいずれかによって製造された保護フィルムと、
前記保護フィルムに接着された偏光子と、を備え、
前記偏光子は、前記保護フィルムの前記ベルト部材に接触していた側から、当該保護フィルムに接着されている。
【0030】
本発明による液晶表示パネルは、
上述してきた本発明による下偏光板の製造方法のいずれかによって製造された下偏光板、或いは、上述した本発明による下偏光板と、
上偏光板と、
前記下偏光板と前記上偏光板との間に配置された液晶セルと、を備える。
【0031】
本発明による表示装置は、
上述した本発明による液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルを背面側から照明する面光源装置と、を備える。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、液晶表示パネルへ入射した光の進行方向を変化させることができる下偏光板用の保護フィルムを安価に製造することができる。このため、実際の表示装置の輝度特性や視野角特性についての設計の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、表示装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の表示装置の液晶表示パネルに組み込まれた下偏光板を示す断面図である。
【図3】図3は、図2の部分拡大図であって、下偏光板の保護フィルムの作用を説明するための図である。
【図4】図4は、保護フィルムの製造方法および保護フィルムの製造装置の一例を説明するための図である。
【図5】図5は、図3に対応する図であって、保護フィルムおよび下偏光板の一変形例を説明するための図である。
【図6】図6は、保護フィルムおよび下偏光板の他の変形例を説明するための斜視図である。
【図7】図7は、図6の下偏光板が組み込まれた表示装置の概略構成を示す断面図である。
【図8】図8は、実施例および比較例に係る表示装置について測定された正面方向に対する輝度比の角度分布を示すグラフである。
【図9】図9は、図1に対応する図であって、従来の表示装置を示す斜視図である。
【図10】図10は、図7に対応する図であって、従来の表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0035】
図1〜図4は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図4は、下偏光板の保護フィルムの製造方法を説明するための図である。一方、図1〜図3は、図4の製造方法で作成され得る保護フィルム、並びに、この保護フィルムを用いて作製され得る下偏光板、液晶表示パネルおよび表示装置の一例を説明するための図である。まず、図1〜図3を参照して、本実施の形態で作製され得る保護フィルム、下偏光板、液晶表示パネルおよび面光源装置について説明し、その後、保護フィルムの製造方法を説明する。
【0036】
図1に示された表示装置10は、液晶表示装置であって、液晶表示パネル40と、液晶表示パネル40の背面側(観察者側とは反対側)に配置された面光源装置20と、を有している。面光源装置20は、液晶表示パネル40を背面側から面状に照明する装置である。一方、液晶表示パネル40は、面光源装置20からの光の透過または遮断を画素毎に制御するシャッターとして機能し、画像を形成する装置である。
【0037】
面光源装置20は、従来既知の直下型やエッジライト型のバックライトを用いることができる。図1に示された面光源装置20は、直下型のバックライトとして構成されており、光源25と、光源25を背面側から覆う反射板22と、光源25の観察者側に配置されたシート状の光学部材28,30,35と、を有している。光源25は、一例として、並列配置された直線状の冷陰極管25aから構成されている。シート状の光学部材として、光源側から観察者側に向けて、拡散板28、第1集光シート30および第2集光シート35が設けられている。なお、後述するように面光源装置20については種々の変更が可能であり、例えば、光源25の発光部が、二次元配列されたLEDから構成されていてもよい。
【0038】
拡散板28は、光源25からの光を拡散させて光源25の構成に応じた明るさのむらを均一化させるための部材である。この拡散板28は、光源25および反射板22とともに、いわゆるバックライトユニットを形成している。
【0039】
二つの集光シート30,35は、輝度特性を調節するための部材であって、典型的には、正面方向輝度を向上させるように機能する。より具体的には、集光シート30,35は、透過光の進行方向と正面方向ndとによってなされる角度が、集光シート30,35への入射前よりも集光シート30,35からの出射後において、小さくなる傾向が生じるように、当該透過光の進行方向を変化させる。
【0040】
具体的な構成として、図示された二つの集光シート30,35は、それぞれ、シート状の本体部32,37と、本体部32,37上に配列された複数の単位光学要素33,38と、を有している。単位光学要素33,38は、配列方向に沿って並べて配列され、且つ、当該配列方向と交差(より具体的には、直交)する方向へ直線状に延びている。また、各単位光学要素33,38は、その長手方向に直交する断面において、出光側に突出する三角形形状となっている。本例では、第1の集光シート30は第2の集光シート35と同一に構成されている。
【0041】
このような構成からなる、集光シート30,35は、主として、単位光学要素33,38の配列方向と平行な方向に沿った成分の光に対して、集光機能を発揮する。そして、図1に示された例では、入光側に位置する第1の集光シート30の単位光学要素33の配列方向は、出光側に位置する第2の集光シート35の単位光学要素38の配列方向と直交している。これにより、二つの集光シート30,35を透過する光は、異なる二方向から、集光されるようになる。なお、図示する例において、出光側に位置する第2の集光シート35の単位光学要素38の配列方向は、光源25をなす冷陰極管25aの配列方向と平行となっている。
【0042】
以上のようなシート状部材28,30,35の構成により、光源25の発光管25aで発光された光は、明るさの面内分布が均一化し且つ正面方向に輝度のピークがくるように、進行方向を偏向される。これにより面光源装置20は、発光面20aから面状に光を発光して、液晶表示パネル40を背面側から照明するようになる。
【0043】
なお、本明細書において、「出光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25の発光部25aから液晶表示パネル40を経て観察者へ向かう光の進行方向における下流側(観察者側、図1においては紙面の上側)のことであり、「入光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25の発光部25aから液晶表示パネル40を経て観察者へ向かう光の進行方向における上流側のことである。
【0044】
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。一具体例として、「保護フィルム」には、「保護シート」と呼ばれる部材も含まれる。
【0045】
さらに、本明細書において、「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。そして、本実施の形態においては、各集光シート30,35のシート面、液晶表示パネル40のパネル面、後述する下偏光板50の板面、後述する保護フィルム55のフィルム面、表示装置10の表示面10a、および、面光源装置の発光面20a等は、互いに平行となっている。また、本明細書において、「正面方向」とは、表示装置10の表示面10aへの法線方向ndと平行な方向のことを指す。
【0046】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「三角形」、「平行」、「直交」、「対称」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差を含めて解釈することとする。
【0047】
さらに、本明細書における「単位光学要素」、「単位形状要素」、「単位プリズム」および「単位レンズ」とは、屈折や反射等の光学的作用を光に及ぼして、当該光の進行方向を変化させる機能を有した要素のことを指し、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。同様に、「プリズム」および「レンズ」は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
【0048】
次に、液晶表示パネル40について説明する。液晶表示パネル40は、上述したように、一対の偏光板45,50と、一対の偏向板45,50の間に配置された液晶セル41と、を有している。このうち偏光板45,50は、入射した光を直交する偏光成分に分解し、一方の偏光成分を透過させ、もう一方の偏光成分を吸収する機能(吸収型の偏光分離機能)を有している。
【0049】
一方、液晶セル41は、一対の透明基板と、この透明基板間に設けられた液晶層と、を有している。液晶層に対して、一つの画素を形成する領域毎に、電界印加がなされ得るようになっている。そして、電界印加された液晶層の配向は変化するようになる。入光側に配置された下偏光板50を透過した特定方向(透過軸と平行な方向)の偏光成分は、一例として、液晶セル40のうちの電界印加されている液晶層の領域を通過する際にその偏光方向を90°回転させ、電界印加されていない液晶層を通過する際にその偏光方向を維持する。このため、液晶層の各領域への電界印加の有無によって、下偏光板50を透過した特定方向の偏光成分が、下偏光板50の出光側に配置された上偏光板45をさらに透過するか、あるいは、上偏光板45で吸収されて遮断されるか、を制御することができる。尚、本明細書に於いて、「上偏光板45」及び「下偏光板50」における「上下」とは、液晶セル41に対して出光側、即ち画像観察者側を「上」、入光側を「下」と呼称している。
【0050】
ここで、図2および図3を参照して、下偏光板50についてさらに詳述しておく。下偏光板50は、吸収型の偏光分離機能を発揮し得る偏光子51と、偏光子51と接着された保護フィルム55と、を有している。図3に示すように、保護フィルム55は、液晶セル41に対面しない側から、言い換えると入光側から偏光子51に積層されており、偏光子51を外部から保護するようになっている。
【0051】
また、偏光子51および保護フィルム55に隣接するようにして偏光子51および保護フィルム55の間に位置し、偏光子51および保護フィルム55を互いに接着する接着層(図示せず)を、設けるようにしてもよい。偏光子51および保護フィルム55の密着性を高めるための接着層は、従来既知の種々の接着剤を用いて形成され得る。一具体例として、例えばポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水性接着剤を用いて接着層を形成することができる。なお、本明細書における接着は、粘着や糊付けを含む概念であり、同様に、本明細書における接着剤とは、粘着剤や糊を含む概念である。
【0052】
今日まで種々の偏光子が開発されてきており、これらの任意の偏光子を偏光子51として用いることができる。一具体例として、ポリビニルアルコール系フィルムを基材とした偏光子51を用いることができる。ポリビニルアルコール系フィルムを基材とした偏光子51は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や染料などの二色性色素を吸着あるいは染色させ、その後、一軸延伸して配向させることによって、光の吸収異方性をポリビニルアルコール系フィルムに付与され得る。
【0053】
次に、保護フィルム55について説明する。図3によく示されているように、保護フィルム55は、熱可塑性樹脂56aからなる主部56と、主部56中に分散された拡散成分57と、を有している。主部56をなす熱可塑性樹脂56aとして、優れた光学特性を有する種々の樹脂材料、例えば、ポリカーボネート系樹脂を用いることができる。ポリカーボネート系樹脂は、低リタデーションである点においても、偏光板50に用いられる材料としても好適である。
【0054】
一方、拡散成分57は、主部56とは異なる屈折率を有した粒状物、あるいは、それ自体が反射性を有した粒状物等から構成され得る。この拡散成分57をなす粒状物は、金属化合物であってもよいし、気体を含有した多孔質物であってもよいし、さらには、単なる気泡であってもよい。また、粒状物からなる拡散成分57の形状は、特に問われることはない。したがって、拡散成分57は、図示された例のように球状(粒子状)である必要はなく、例えば回転楕円体形状や線状等の種々の形状を有することができる。
【0055】
この保護フィルム55は、主部56中に分散された拡散成分57に起因して、光を拡散させる拡散機能を発現することができる。内添された拡散成分57に起因した保護フィルム55の拡散機能の程度は、主部56をなす熱可塑性樹脂、主部56の厚み、拡散成分57の構成、拡散成分57の濃度等を適宜設定することにより、極めて広い範囲内で調節可能である。具体的には、単なる表層部をマット面化しただけでは通常到達することが不可能な程度、例えば60%以上90%以下の範囲内に、保護フィルム55のヘイズ値を設定することも可能である。
【0056】
図2および図3に示されているように、保護フィルム55の偏光子51に対面するようになる出光側面55aは、平坦面として形成されており。これにより、空気等の混入を防止しながら、保護フィルム55と偏光子51とを安定して積層および接着することが可能となる。その一方で、図示する例においては、保護フィルム55の偏光子51に対面する側とは反対側の入光側面55bは、凹凸面として形成されている。入光側面55bに設けられた凹凸は、主部56中に分散された拡散成分57に起因しており、より具体的には、拡散成分57が露出して或いは拡散成分57の輪郭が浮き出て形成されている。
【0057】
保護フィルム55の入光側面55bは、下偏光板50の入光側面をなすだけでなく、液晶表示パネル40の入光面40bを形成している。このため、図示された保護フィルム55は、上述した主部56中に分散された拡散成分57だけでなく、入光側面55bの凹凸にも起因して、拡散機能も発現するようになる。
【0058】
なお、本明細書において、保護フィルム55の偏光子51に対面する側の面55aに対して用いる「平坦(面)」とは、保護フィルム55と偏光子51との安定した積層および接着を確保し得る程度の平坦(面)を指す。例えば、保護フィルム55の偏光子51に対面する側の面55aの表面粗さが、JISB0601(1982年)に準拠して中心線平均粗さRaとして測定された場合に、0.9μm以下であれば平坦と言える。
【0059】
このように保護フィルム55が拡散成分57を内添されているにもかかわらず、保護フィルム55の出光側面50aが平坦であることから、いわゆる「水貼り」によって、保護フィルム55および偏光子51を積層および接着することができる。具体的には、水、或いは、界面活性剤等の好適な添加剤が混合された水溶液(または、懸濁液)を間に介在させた状態で、保護フィルム55および偏光子51を互いに重ね合わせていく。これにより、空気等の異物の混入を防止しながら、保護フィルム55および偏光子51を積層することができる。またこの際、水あるいは水溶液(または懸濁液)に接着剤(例えば糊等)を混合しておくことにより、あるいは、保護フィルム55および偏光子51の少なくとも一方に接着層を予め設けておき、保護フィルム55および偏光子51を積極的に接着するようにしてもよい。
【0060】
なお、「水貼り」後に、保護フィルム55および偏光子51からの水分の除去を促進するため、保護フィルム55の透湿度が、温度40℃、湿度90%RHでの状況下で、10g/m2・24hr以上となっていることが好ましい。ただし、透湿度が高すぎると、吸湿に起因した反りや曲がりが発生し得るため、透湿度が、温度40℃、湿度90%RHで測定して400g/m2・24hr以下であることが好ましい。なお、本明細書における透湿度とは、JISZ0208に準拠してカップ法を用いて測定された数値を指す。
【0061】
次に、主に図4を参照して、以上のような構成からなる保護フィルム55の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、保護フィルム55が、押し出し加工によって得られる押し出し材からなるフィルム材料90として形成されている。
【0062】
まず、保護フィルム55の製造に用いられ得る押し出し装置80について説明する。図4に示すように、押し出し装置80は、ダイ82aを含む押し出し機82と、成型ロール84と、成型ロール84に対向して配置されたバックアップ手段86と、成型ロール84およびバックアップ手段86の下流側に配置された誘導手段88と、を有している。誘導手段88は、一対のガイドロール88aとして構成されている。
【0063】
成型ロール84は、円柱状の外形状を有しており、本例において、成型ロール84の円柱状の外周面は平滑面となっている。ただし、押し出し材90の表面に積極的に賦型を行いたい場合には、成型ロール84の円柱状の外周面に賦型すべき形状に対応した溝を形成してもよい。円柱状の成型ロール84は、当該円柱の中心を通過する回転軸線を中心として回転可能となっている。
【0064】
バックアップ手段86は、二以上の支持ロール86aと、二以上の支持ロール86a間に架け渡された無縁のベルト部材(ベルト)86bと、を有している。図示する例では、バックアップ手段86は、二つの支持ロール86aを有している。各支持ロール86aは、円柱状に形成され、当該円柱の中心を通過する回転軸線を中心として回転可能となっている。各支持ロール86aの回転軸線は、互いに平行であり、且つ、成型ロール84の回転軸線とも平行になっている。そして、二以上の支持ロール86aは、回転軸線を中心として回転することにより、当該支持ロール86aに架け渡されたベルト部材86bを駆動することができる。
【0065】
図示する例において、二つの支持ロール86aのうちの一方は、成型ロール84に対向して配置されたニップローロール86a1として構成されている。二つの支持ロール86aのうちの他方は、ニップローロール86a1との間で、ベルト部材86bの移動経路を確定する調整ロール86a2として構成されている。
【0066】
図4に示すように、ニップローロール86a1と調整ロール86a2との間にあるベルト部材86bは、成型ロール84からの押圧によって、成型ロール84の外輪郭に対応して変形するようになっている。このため、後述するようにベルト部材86bと成型ロール84との間を通過するフィルム材料90が、その移動経路に沿った或る長さLのニップ区間NZにわたって、ベルト部材86bと成型ロール84とによって加圧され続けることになる。図4に示す構成では、例えば、ニップ区間NZの長さLは、支持ロール86a、とりわけ調整ロール86a2の位置を調整することによって、適宜調整され得る。
【0067】
このような成型ロール84、ニップロール86a1、調整ロール86a2およびベルト部材86bは、種々の材料を用いて構成される。例えば、成型ロール84、ニップロール86a1および調整ロール86a2については、金属製のロールや、中心部が金属製であるとともに表層部が弾性体(例えばゴム)からなるロール等を用いることができる。また、ベルト部材86bとしては、耐久性を有した金属製の無縁ベルト、例えば、クロム合金やニッケル合金などの金属合金製のベルト状の部材を、用いることができる。
【0068】
次に、このような押し出し装置80を用いて、上述した保護フィルム55を製造する方法について説明する。まず、主部56をなすようになる熱可塑性樹脂(例えば、ペレット状の熱可塑性樹脂材料)56aを、拡散成分57をなすようになる粒状物57aとともに、押し出し機82に投入する。主部56をなすようになる熱可塑性樹脂56aは、押し出し機82内でガラス転移点温度以上に加熱され、加熱されて軟化した樹脂材料が押し出し機82によって押し出される。
【0069】
一例として、ガラス転移点温度が140℃近辺となるポリカーボネート系樹脂が、保護フィルム55の主部56をなすようになる熱可塑性樹脂56aとして用いられる場合、ダイ82aを通過した直後の熱可塑性樹脂56aの温度が300℃程度となるように、押し出し機82内で熱可塑性樹脂56aを加熱するようにしてもよい。また、押し出し加工によって保護フィルム55を作製する場合、拡散成分57をなすようになる粒状物57aの平均粒径(体積相当法で算出された粒径の算術平均、以下同様)を1μm〜12μmとし、拡散成分57をなすようになる粒状物57aの含有量が0重量%を超え40重量%以下とすることができる。
【0070】
このようにして、熱可塑性樹脂56aと熱可塑性樹脂56a内に分散された拡散成分57とを有したフィルム材料90が、押し出し材として、形成される。この際、押し出し機82のダイ82aにおいて、フィルム材料90の厚みは所望の厚さに制御され得る。
【0071】
なお、後述するように、いわゆる共押し出しによってフィルム材料90を形成し、当該フィルム材料90が、熱可塑性樹脂56aと熱可塑性樹脂56a内に分散された拡散成分57aとを有した層と、当該層に積層された第2の層と、を含むようにすることもできる。しかしながらここでは、本発明による一実施の形態のより良い理解の便宜から、図2に示された保護フィルム55を作製すべく、熱可塑性樹脂56aと熱可塑性樹脂56a内に分散された拡散成分57aとを有した層(本例では、拡散層とも呼ばれるべき層)のみからなるフィルム材料90が、押し出し材として形成される例について説明する。
【0072】
押し出し機82から押し出されたフィルム材料90は、成型ロール84とバックアップ手段86との間に進む。この際、成型ロール84はフィルム材料90の移動速度F(mm/秒)に同期した周速度で回転しており、また、バックアップ手段86のベルト部材86bもフィルム材料90の移動速度に同期した速度で駆動されている。加えて、成型ロール84は、バックアップ手段86のニップロール86a1に対向して配置され、当該ニップロール86a1との間でベルト部材86bを介してフィルム材料90を加圧(挟圧)するように位置決めされている。また、バックアップ手段86の調整ロール86a2は、ニップロール86a1との間で支持するベルト部材86bが、成型ロール84の外輪郭に沿って変形するように位置決めされている。この結果、フィルム部材90は、ベルト部材86bおよび成型ロール84に支持された状態で、ベルト部材86bと成型ロール84との間を通過し、且つ、成型ロール84とニップロール86a1との間の位置を始点とする所定長さLの区間NZを進む間、ベルト部材86bおよび成型ロール84によって加圧された状態となる。
【0073】
フィルム部材90は、ベルト部材86bおよび成型ロール84の間で加圧されることによって、厚みを調整される。また、フィルム部材90は所定長さLの区間NZを進む間にわたって加圧されるため、拡散成分57をなす粒状物57aは熱可塑性樹脂材料56aの内部に安定して押し込まれるようになる。
【0074】
さらに、通常、成型ロール84の温度およびベルト部材86bの温度Tは、押し出し機82から押し出されてきたフィルム材料90の温度よりも低い。したがって、フィルム部材90は、ベルト部材86bおよび成型ロール84の間で加圧されながら、且つ、接触しているベルト部材86bおよび成型ロール84に熱を奪われることになる。すなわち、フィルム部材90は、ベルト部材86bおよび成型ロール84の間で加圧されながら、積極的に冷却されることになる。
【0075】
このうち、ベルト部材86bは、成型ロール84と比較して熱容量が小さい。したがって、ベルト部材86bは、フィルム材料90から熱を吸収したとしても、フィルム材料90に接触してない間に十分な放熱を行う。このため、ベルト部材86bが再度フィルム材料90に接触する際には、ベルト部材86bの温度は十分に低下しており、ベルト部材86bはフィルム材料90の冷却を促進する。結果として、フィルム材料90がバックアップ手段86のベルト部材86bから離間する際に、フィルム材料90のベルト部材86b側の表層部だけでなくフィルム材料90の内部まで、熱可塑性樹脂56aについてのガラス転移点温度以下の温度に到達するよう、ベルト部材86bによって、当該ベルト部材86に接触している側からフィルム材料90を十分に冷却することができる。
【0076】
この結果、フィルム材料90のベルト部材86bに接触していた面90aの側では、その後、大きな温度低下が生じない。また、主部56をなすようになる熱可塑性樹脂56aについてのガラス転移点温度以下の温度まで低下している場合、当該熱可塑性樹脂56aは或る程度の変形抵抗を有するようになる。このため、主部56をなすようになる熱可塑性樹脂56aの熱膨張率と、拡散成分57をなすようになる粒状物57aの熱膨張率との差に起因した熱変形等が生じにくくなる。すなわち、ベルト部材86bおよび成型ロール84の間で加圧から解放された後に、フィルム材料90の熱可塑性樹脂56a(保護フィルム55の主部56)の部分が後退し、粒状物57a(拡散成分57)の輪郭が浮き上がってくることが抑制され、フィルム材料90のベルト部材86bに接触していた面90aを平坦な面に維持することができる。
【0077】
この点について、本件発明者らが鋭意研究を重ねた結果として、以下の式(b)が満たされる場合に、拡散成分56(粒状物56a)を含んだ熱可塑性樹脂57aからなるフィルム材料90のベルト部材86bに接触していた側をなす表面90aを、フィルム材料90が室温まで冷却された後においても、平坦面にし得ることが確認された。なお、式(b)において、「L」は、フィルム材料90が成型ロール84およびベルト部材86aによって加圧されるようになる区間NZのフィルム材料90の移動経路に沿った長さ(mm)である。また、式(b)における「F」は、フィルム材料90の移動速度(mm/秒)であり、式(b)における「T」は、ベルト部材86bの温度(℃)である。
0.16≦L/(F×T)×100≦0.96 ・・・式(b)
【0078】
式(b)における「L/(F×T)×100」の値は、拡散成分56(粒状物56a)を含んだ熱可塑性樹脂57aからなるフィルム材料90に対するベルト部材86bからの冷却能力が大きくなるにつれて、大きくなる。この「L/(F×T)×100」の値が0.16を下回ると、フィルム材料90のベルト部材に接触している側の温度が十分に下がりきらず、最終的にフィルム材料90からなる保護フィルム55のベルト部材に接触していた側の面に、拡散成分57の存在に対応した凹凸が形成されるようになった。また、フィルム材料90のベルト部材に接触している表面90aの温度すら十分に下がりきらず、結果として、フィルム材料90がベルト部材86bからスムースに離れることができず、フィルム材料90のベルト部材に接触していた側の面90aに、フィルム材料90の進行方向と直交する幅方向に概ね沿った筋模様(横向きの段)が形成されることもあった。一方、「L/(F×T)×100」の値が0.96を上回ると、フィルム材料90に対するベルト部材86からの冷却能力と、成型ロール84からの冷却能力とが大きく異なるようになり、結果として、除去仕切れない大きな反りや曲がり等の変形が発生した。
【0079】
式(b)が満たされる場合には、後述するように誘導手段88での矯正によって除去され得る程度の曲がりや反りしか発生しなかった。また、押し出し成型で透明光学フィルムを作製する際における通常の条件および材料を採用した上で、式(b)が満たされるようにして、フィルム材料90(保護フィルム55)を作製した場合、フィルム材料90が、ベルト部材86bおよび成型ロール86の間を通過する間に、少なくともフィルム材料90のベルト部材86bに接触している側の表面90aの温度を、熱可塑性樹脂56bのガラス転移点温度Tg未満の温度、さらには、熱可塑性樹脂56bのガラス転移点温度Tgの9割以下の温度(つまり、(Tg×0.9)以下の温度)まで、低下させることができた。
【0080】
そして最終的には、フィルム材料90からなる保護フィルム55のベルト部材86bに接触していた側の面90aを平坦面とすることができ、これにより、上述したように、いわゆる「水貼り」によって、保護フィルム55および偏光子51を積層および接着することができるようになる。具体的には、押し出し成型で透明光学フィルムを作製する際における通常の条件および材料の範囲内でフィルム材料90(保護フィルム55)を作製した場合、後述する実施例においても説明するように、製造されたフィルム材料90(保護フィルム55)のベルト部材86bに接触していた側をなす表面についてJISB0601(1982年)に準拠して測定された粗さRaが、0.05μm以上0.9μm以下となった。
【0081】
一方、成型ロール84は、ベルト部材86bと比較して熱容量が格段に大きく、また、多くの場合に加熱されている。すなわち、フィルム材料90が成型ロール84から受ける冷却量は、フィルム材料90がバックアップ手段86の無縁ロール86bから受ける冷却効果よりも小さくなることもある。
【0082】
この場合、フィルム材料90が成型ロール84から離間する際、フィルム材料90が成型ロール84側の表層部のみにおいて、温度が熱可塑性樹脂56aについてのガラス転移点温度以下まで低下し、フィルム材料90の内部温度は当該ガラス転移点温度以上に維持される。この結果、フィルム材料90の成型ロール84に接触していた面90bの側では、その後、主部56をなすようになる熱可塑性樹脂56aについてのガラス転移点温度を跨いだ大きな温度低下が生じ、これにともなって、主部56をなすようになる熱可塑性樹脂56aの熱膨張率と、拡散成分57をなすようになる粒状物57aの熱膨張率との差に起因した熱変形等が生じる。典型的には、フィルム材料90の成型ロール84に接触していた面90bでは、主部56をなすようになる熱可塑性樹脂56aの部分が後退し、拡散成分57をなすようになる粒状物57aが浮き上がるようになる。すなわち、図2および図3に示すように、得られた保護フィルム55の成型ロール84に接触していた面90bには、拡散成分57の存在に対応した凹凸が形成されるようになる。
【0083】
成型ロール84から離間したフィルム材料90は、その後、誘導手段88によって、冷却されるとともに、適度なテンションを付加されて反りや曲がりを矯正されながら、誘導される。以上のようにして、熱可塑性を有した樹脂56aを拡散成分57として粒状物57aとともに押し出してなるフィルム材料90からなる保護フィルム55が作製される。なお、保護フィルム55の平坦な出光側面55aは、フィルム材料90のバックアップ手段86のベルト部材86bに接触していた面90aによって形成され、保護フィルム55の凹凸が設けられた入光側面55bは、フィルム材料90の成型ロール84に接触していた面90bによって形成される。
【0084】
上述してきた製造方法によれば、ウェブ状の保護フィルム55(ウェブ状のフィルム材料90)が作製され得る。このため、ウェブ状の保護フィルム55に、作製されるべき下偏光板50に対応した大きさ(一枚取り又は複数枚取り)となっている枚葉状の偏光子41を順次接着していくことにより、あるいは、ウェブ状に形成された偏光子41を接着していくことにより、ウェブ状の材料が得られ、このウェブ状材料は、互いにつなぎあわされた多数の下偏光板50を含んでいる。そして、このウェブ状材料を切断(または打ち抜き等の適切な取り出し加工)していくことにより、下偏光板が順次得られるようになる。
【0085】
すなわち、上述した製造方法によれば、ウェブ状の保護フィルム55を作製することができ、且つ、この保護フィルム55をロール・トゥ・ロールで取り扱いながら下偏光板550を効率的に作製していくことができる。これにより、上述した方法によれば、保護フィルム55を安価に製造することを可能にするだけでなく、作製された保護フィルム55を用いることによって下偏光板50の製造を容易にし、結果として、下偏光板50を極めて安価に作製することを可能にし得る。
【0086】
なお、ここで説明した例では、図2および図3に示されているように、偏光子51に対面する一方の面(出光側面)55aが平坦面として形成され、その一方で、他方の面(入光側面)55bが凹凸面として形成されている保護フィルム55が製造される例を示した。具体的には、フィルム材料90のベルト部材86bに接触していた側の面を平坦面とし、フィルム材料90の成型ロール84に接触していた側の面を凹凸面とする例を示した。しかしながら、押し出し材としてのフィルム材料90に対する成型ロール84からの冷却能力を増大させることによって、フィルム材料90のベルト部材86bに接触していた側の面だけでなく、フィルム材料90の成型ロール84に接触していた側の面をも、平坦面として形成することができる。
【0087】
そもそも、上述してきた実施の形態のように、成型ロール84によって、フィルム材料90に対して賦型を積極的に行わない場合には、賦型率を高めることを目的として成型ロール86を高温に維持しておく必要もない。とりわけこの場合、フィルム材料90に対する成型ロール84からの冷却能力を大幅に増大させることも可能であり、結果として、フィルム材料90からなる保護フィルム55の成型ロール84に接触していた側の面を平坦面とすることができる。具体的には、押し出し成型で透明光学フィルムを作製する際における通常の条件および材料の範囲内でフィルム材料90(保護フィルム55)を作製した場合に、製造されたフィルム材料90(保護フィルム55)の成型ロール84に接触していた側をなす表面についてJISB0601(1982年)に準拠して測定された粗さRaを、0.01μm以上かつ0.4μm以下とすることができた。
【0088】
次に、主として図3を参照しながら、上述した製造方法によって製造された保護フィルム55に主として起因する表示装置10の作用について説明する。
【0089】
図1において、光源25で発光された光は、直接または反射板22で反射した後に観察者側に進み、拡散板28に入射して等方拡散される。拡散板28での等方拡散により、明るさの面内分布が均一化されるようになる。拡散板28で拡散された光は、その後、第1の集光シート30に入射する。
【0090】
第1の集光シート30に入射した光は、当該集光シート30から出射する際に、単位光学要素33の出光側面(プリズム面)において屈折する。この屈折により、正面方向ndに対して傾斜した方向に進む光の進行方向(出射方向)は、主として、第1の集光シート30へ入射する直前における光の進行方向と比較して、正面方向ndに対する角度が小さくなるように、曲げられる。このようにして、第1集光シート30は、光源25からの光に対して集光機能を発揮する。なお、第1集光シート30によって集光される光は、主として第1集光シート30の単位光学要素33の配列方向に沿った成分である。
【0091】
第1集光シート30から出射した光は、次に、第2集光シート35へ入射する。第2集光シート35は、第1集光シート30と同様に、第2集光シート35を透過する光に対して集光機能を発揮する。ただし、第2集光シート35によって集光される光は、主として第2集光シート35の単位光学要素38の配列方向に沿った成分であり、第1集光シート30によって集光される成分とは直交する成分である。したがって、二枚の集光シート30,35を透過することによって、異なる二方向に沿った面内での輝度の角度分布をそれぞれ調節することができる。
【0092】
以上のようにして、光源25からの光が、第2集光シート35の出光面によって形成された面光源装置20の発光面20aから出射する。結果として、面光源装置20は、液晶表示パネル40を面状に照明するようになる。液晶表示パネル40は、面光源装置20からの光を画素毎に選択的に透過させる。これにより、透過型表示装置10の観察者が、映像を観察することができるようになる。
【0093】
ところで本実施の形態おいては、液晶表示パネル40の下偏光板50の保護フィルム55が拡散機能を発揮するようになっている。とりわけ、保護フィルム55は、主部56と、主部56中に分散された拡散成分57と、を有している。この内添された拡散成分57に起因した保護フィルム55での拡散は、賦型によって表面をマット面化すること或いは表層部に粒状物を倍ダー樹脂で固定することによって表面をマット面化することに起因した拡散と比較して、程度(拡散の強さ)および質(拡散の均一性)において格段に優れる。具体的には、単に表面がマット化されたに過ぎない場合には、図3に二点鎖線で示すように、素抜けしてしまう光L33が生じてしまう。その一方で、本実施の形態による保護フィルム55には、平面方向だけでなく厚さ方向にも拡散成分57が分散している。このため、保護フィルム55の入光側面55bでの凹凸形状によって十分に拡散されなかった光L31,L32も、その後において拡散成分57に到達した際に、拡散成分57と主部56との界面での屈折または拡散成分57の表面での反射によって、進行方向を変更され得る。
【0094】
以上のようにして、面光源装置20からの光を保護フィルム55で或る程度拡散させることができる。これにより、二枚の集光シート30,35によって集光された後での、輝度の角度分布をなだらかに変化させるようにすることができる。
【0095】
また、上述したように、集光シート30,35を用いた場合、集光シート30,35の単位光学要素33,38での屈折によって、正面方向輝度が集中的に高くなるように輝度の角度分布に変化をもたらすことができる。ただしその一方で、集光シート30,35を用いた場合、カットオフ(観察角度(正面方向ndに対する観察方向の角度)を大きくしていくと、或る観察角度から観察される映像の明るさが急激に低下してしまう現象)やサイドローブ(輝度の角度分布において、正面方向から大きく傾斜した角度域に第2のピークが生じる現象)といった不具合も生じ得る。このような不具合の発生は、とりわけ図示された例のように、集光シート30,35の単位光学要素33,38が、その長手方向に沿った断面において、三角形形状となっている場合に、顕著となっていた。そして、このような不具合を改善することを目的として、拡散成分57が内添されていない下偏光板150を含む液晶表示パネル150を用いて構成された従来の面光源装置120では、図9に示すうように、出光側の第2集光シート35のさらに出光側に、拡散機能を有した拡散シート29が設けられることも多かった。
【0096】
一方、本実施の形態では、液晶表示パネル40の下偏光板50が、優れた拡散機能を発揮し得るとともに当該拡散機能の程度(強さ)を広い範囲で調節され得る保護フィルム55を、含んでいる。このため、保護フィルム55の拡散機能を、従来の面光源装置120に含まれていた拡散シート29と同程度の拡散機能を発揮し得るように調節することにより、表示装置全体としての光学特性を維持しながら、この拡散シート29を面光源装置120から省くことが可能となる。結果として、表示装置10(面光源装置20)に含まれるシート状部材の数を減ずることが可能となり、この場合、表示装置10(面光源装置20)の製造コストを直接的に低減することができるとともに、表示装置10(面光源装置20)を薄型化することができる。
【0097】
なお、図9に示された従来の表示装置110は、拡散シート29の有無および下偏光板150の構成を除き、図1に示された上述の表示装置10と同様に構成され得る。このため、図9に示された従来の表示装置120に対して、上述した実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用い、重複する説明を省略する。
【0098】
以上のような本実施の形態によれば、拡散成分57を含有する押し出し材からなるフィルム材料90が或る長さLの区間NZを通過する間に、当該フィルム材料90を成型ロール84およびベルト部材86bとの間で加圧しながら、フィルム材料90のベルト部材86bに接触する面90aが最終的に平坦面となるようにフィルム材料90を冷却している。このような製造方法によれば、拡散成分57を含有するとともに少なくとも一方の面が平坦となっているフィルム材料90(保護フィルム55)を、いわゆる押し出し加工によって、安価に製造することができる。そして、このフィルム材料90は、水貼りによって偏光子51と好適に接着され得る点において、下偏光板用の保護フィルム55としての使用に適している。同時に、このフィルム材料90は、光の進行方向を変化させることができる点においても下偏光板用の保護フィルム55としての使用に適している。具体的には、このフィルム材料90を下偏光板用の保護フィルム55として用いた場合、表示装置10の輝度特性や視野角特性についての設計の自由度を格段に向上させることでき、さらには、面光源装置20に組み込まれるシート状部材(光学シート)の数を削減し得る可能性もある。この場合、面光源装置20および表示装置10の製造コストを直接的に削減することができるとともに、面光源装置20および表示装置10の薄型化も可能となる。
【0099】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を適宜参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いており、重複する説明を省略する。
【0100】
上述した実施の形態において、内添された拡散成分57に対応した凹凸が入光側面55bに形成された保護フィルム55を、製造する例を示したが、これに限られない。既に説明したように、成型ロール84の側からの冷却能力を調整することによって、保護フィルム55の両面を平坦な面としてもよい。
【0101】
また、上述した実施の形態において、保護フィルム55の入光側面55bに、拡散成分57の存在に起因して形成された凹凸が設けられている例、すなわち、拡散成分57の輪郭が浮かび上がって凹凸が形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、図5に示すように、保護フィルム55の入光側面55bに、賦型により凹凸を形成してもよい。上述した保護フィルムの製造方法において、外周面に凹凸模様が形成された成型ロール84を用いた場合、成型ロール84の凹凸模様がフィルム材料90の成型ロール84に接触する側の面90bに転写され、これにより、フィルム材料90の成型ロール84に接触する側の面90b(すなわち、保護フィルム55の入光側面55b)に凹凸を形成することができる。また、保護フィルム55の入光側面55bに賦型によって凹凸を形成する場合、保護フィルム55の入光側面55bに、拡散成分57の存在に起因した凹凸が形成されないようにしてもよいし(図5に示された例)、或いは、賦型による凹凸に加えて拡散成分57の存在に起因した凹凸が形成されるようにしてもよい。
【0102】
さらに、保護フィルム55の入光側面55bが、図6および図7に示すように、並べて配置された単位プリズム60によって形成されたプリズム面として構成されていてもよい。このような保護フィルム55は、上述した保護フィルム55の製造方法において、単位プリズムに対応した断面形状を有する溝が外周面に形成された成型ロール84を用いることによって、作製することができる。図6および図7に示された例において、保護フィルムは、シート状の本体部59と、本体部59の入光側面59bに並列配置された単位プリズム60と、を有している。各単位プリズム60は、その配列方向と直交する方向に直線状に延びている。また、図6および図7に示された例において、各単位プリズム60は、その長手方向に直交する断面において、三角形形状または三角形形状の頂角を面取りしてなる形状となっている。このような保護フィルム55は、集光機能を発揮することができる。
【0103】
図7には、集光機能を期待された保護フィルム55の使用態様の一例が示されている。図7に示された例において、面光源装置20は、導光板21と、導光板21の側方に配置された光源25と、導光板21の背面に配置された反射シート22aと、を有し、いわゆるエッジライト型のバックライトとして構成されている。光源25からの光は、導光板21の側面(入射面)から導光板21内に入射し、導光板21の一対の主面間で反射を繰り返しながら導光板21内を導光方向に沿って進む。導光板21には、図示しない光取り出し要素、例えば、反射シート22aに対面する導光板21の裏面に設けられた白色ドットや、導光板21内に分散された拡散成分等が設けられており、出光量が導光方向に沿って概ね均一となるように、導光板21内を進む光が導光板21から観察者側へ出射していく。この際、図7に示すように、導光板21から出射する多くの光L71は、正面方向ndから大きく傾斜した方向に向けて出射するようになる。
【0104】
このような導光板21に対して、保護フィルム55の単位プリズム60は、その配列方向が導光板21の導光方向と平行となるように配置されている。また、単位プリズム60は、導光板21の側へ向けて、保護フィルム55から突出している。そして、正面方向ndから大きく傾斜した方向に沿って液晶表示パネルに向かう光L71は、単位プリズム60の一方の面を介して保護フィルム55へ入射し、その後、単位プリズム60の他方の面で反射(とりわけ、全反射)して進行方向を正面方向nd側へ偏向する。このようにして、保護フィルム55は集光機能を発揮することができる。
【0105】
これに対して、図10に示すように、従来の下偏光板150を含む液晶表示パネル140との組み合わせで用いられる従来のエッジライト型面光源装置220には、多くの場合、導光板21の出光側にプリズムシート(反射型プリズムシート、逆プリズムシート)129が設けられていた。このため、保護フィルム55の集光機能を、図10に示された従来の面光源装置220に含まれていたプリズムシート(反射型プリズムシート、逆プリズムシート)129の集光機能と同様にすることにより、表示装置全体としての光学特性を維持しながら、このプリズムシート129を面光源装置220から省くことが可能となる。同様に、図10に示された従来の面光源装置220には、プリズムシート129のさらに出光側に拡散シート29が設けられているが、保護フィルム55が拡散成分57を含有している場合には、この拡散成分57に起因した拡散機能の程度を適宜調節することによって、拡散シート29も省くことが可能となる。これにより、図6および図7の保護フィルム55を用いることによって、表示装置10の製造コストを大幅に減ずることができるとともに、表示装置10を大幅に薄型化することができる。
【0106】
なお、本変形例で説明した単位プリズム60の構成は単なる例示であって、要望される光学特性に応じて種々の変更が可能である。また、図10に示された従来の表示装置210のうち、既に説明した構成と同一に構成され得る部分に対しては、当該既に説明した構成に対して用いた符号と同一の符号を用いており、重複する説明を省略する。
【0107】
さらに、上述した保護フィルムの製造方法において、熱可塑性樹脂56aと、熱可塑性樹脂56aに分散された拡散成分57(粒状物57a)と、を有した層のみからなるフィルム材料90が、押し出し材として、形成される例を示したが、これに限られない。押し出し工程において、第2の熱可塑性樹脂も加熱して熱可塑性樹脂56aと同時に押し出され、熱可塑性樹脂56aと熱可塑性樹脂56a内に分散された拡散成分57とを有する層(拡散層)と、この層(拡散層)に積層された第2の熱可塑性樹脂からなる第2層と、を含むフィルム材料が、形成されるようにしてもよい。
【0108】
さらに、上述した実施の形態において、下偏光板50が、偏光子51と、偏光子51に入光側から接着された保護フィルム55と、からなる例を示したが、これに限られず、偏光子51の出光側にも、保護フィルムが設けられていてもよい。また、光の位相差を補償するための位相差板が下偏光板50と液晶セル41との間に設けられることもがあるが、この場合、下偏光板50の出光側の保護フィルムが、位相差板の入光側の保護フィルムを兼ねるようにしてもよい。
【0109】
さらに、上述した実施の形態において、面光源装置20の光源25の発光部25aが、線状に延びる冷陰極管からなる例を示したが、これに限られない。光源25として、点状のLED(発光ダイオード)や面状のEL(電場発光体)等からなる発光部を有するようにしてもよい。また、上述した実施の形態において、保護フィルム55、下偏光板50および液晶表示パネル40が直下型の面光源装置20との組み合わせに適用されている例を示したが、既に図6及び図7を参照しながら説明したように、これに限られない。エッジライト型(サイドライト型等とも呼ばれる)の面光源装置とともに、上述した保護フィルム55、下偏光板50および液晶表示パネル40を用いることもできる。
【0110】
さらに、上述した実施の形態において、面光源装置20および透過型表示装置10の全体構成の一例を説明したが、これに限られない。例えば、反射型の偏光分離フィルム等の更なる光学シート等を、追加で、面光源装置20および透過型表示装置10に組み込むようにしてもよいし、あるいは、集光シート30,35等のシート状部材のうちのいずれか一以上を削除または他のシート状部材と交換してもよい。
【0111】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0113】
<<調査1>>
種々の条件で、図4を参照しながら説明した装置を用いて図4を参照しながら説明した方法により、熱可塑性樹脂を粒状部とともに加熱して押し出し、熱可塑性樹脂からなる主部と、粒状物からなる拡散成分であって主部中に分散された拡散成分と、を有する保護フィルムを作製した。この際、製造条件を種々変更して、複数の保護フィルムを作製した。作製された各保護フィルムに対して、ベルト部材に接触していた側の表面の粗さRaおよび成型ロールに接触していた側の表面の粗さRa、反りや曲がり等の変形の有無、偏光子との水貼りによる接着性について、調査した。
【0114】
〔保護フィルムの構成および製造方法〕
保護フィルムは、熱可塑性樹脂からなる主部と、粒状物からなる拡散成分であって主部中に分散された拡散成分と、を有する層のみからなるようにした。各保護フィルムとも、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート系樹脂を使用し、粒状物としてスチレン系微粒子を用いた。スチレン系微粒子の平均粒径(一次粒径)はφ5μmとし、保護フィルム内に15重量%だけ含有されるようにした。また、保護フィルムの厚さは、80μmとした。
【0115】
各保護フィルムについて、保護フィルムをなすようになるフィルム材料が成型ロールおよびベルト部材によって加圧される区間NZのフィルム材料の移動経路に沿った長さL〔単位:mm〕(図4における区間NZの長さL)、保護フィルムをなすようになるフィルム材料の移動速度F〔単位:m/min〕(押し出し速度に相当)、および、ベルト部材の温度T〔単位:℃〕を種々変更した。表1に、各保護フィルムの製造に採用した条件を示す。さらに、表1には、各保護フィルムを作製するための条件(加圧区間の長さL、フィルム材料の移動速度Fおよびベルト部材の温度T)が、上述した式(b)を満たすか否かについても示している。
0.16≦L/(F×T)×100≦0.96 ・・・式(b)
【0116】
一方、各保護フィルムの間で、その他の条件は、次の条件で互いに同一とした。
・押し出し機内での加熱温度:300℃
・成型ロールの温度:135℃
・成型ロールとバックアップ手段のニップロールとの間での押圧力(線圧):16kgf/mm
【0117】
〔評価〕
作製された各保護フィルムに対して、ベルト部材に接触していた側の表面(「ベルト側面」)の粗さ及び成型ローラに接触していた側の表面(ロール側面)の粗さを測定した。粗さは、JISB0601(1982年)に準拠して測定された中心線平均粗さRaとして評価した。粗さRaの測定結果を表1に示す。
【0118】
また、保護フィルムの反りや曲がり等の変形の有無を評価した。下偏光板用の保護フィルムとしての使用において、問題が生じる程度に変形しているサンプルについて変形「×」と評価し、問題が生じる程度の変形が生じていないサンプルについて変形「○」と評価した。評価結果を表1に示す。
【0119】
さらに、偏光子との水貼りによる接着性について、評価した。この際、偏光子として、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させ、その後、一軸延伸して配向させることによって、光の吸収異方性をポリビニルアルコール系フィルムに付与してなる偏光子を用いた。偏光子と保護フィルムを水貼りする際の一般的な手順(条件)によって空気や異物等の混入を防止しながら水貼りすることができたサンプルについて、水貼り「○」と評価し、偏光子と保護フィルムを水貼りする際の一般的な手順(条件)で水貼りした場合に空気や異物等の混入が生じたサンプルについて、水貼り「×」と評価した。
【0120】
【表1】

【0121】
<<調査2>>
実施例に係る表示装置および比較例に係る表示装置を作製し、光学特性を比較した。実施例に係る表示装置および比較例に係る表示装置は、以下のように作製した。
【0122】
〔表示装置〕
(実施例)
実施例に係る表示装置として図1に示された構成の表示装置を作製した。面光源装置の光源および反射板は、市販されている液晶テレビ(シャープ株式会社製「アクオス」32インチ)に組み込まれていたものを利用した。拡散板として、住友化学株式会社製の拡散板(ヘイズ値:88%、全光線透過率:55%)を用いた。第1集光シートおよび第2集光シートは、同一の光学シート(大日本印刷株式会社製「UPVII」)を利用し、上述した実施の形態と同様に、単位光学要素の配列方向が互いに直交するようにして配置した。
【0123】
また、液晶表示パネルの液晶セルは、市販されている液晶テレビ(シャープ株式会社製「アクオス」32インチ)に組み込まれていたものを利用した。上偏光板は、偏光子と、偏光子の両側にそれぞれ水貼りされた一対の保護フィルムと、を有する偏光板を利用した。上偏光板の偏光子として、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させ、その後、一軸延伸して配向させることによって、光の吸収異方性をポリビニルアルコール系フィルムに付与してなる偏光子を用いた。上偏光板の一対の保護フィルムとして、トリアセチルセルロース製フィルム(TAC製フィルム)を用いた。
【0124】
一方、下偏光板は、偏光子と、偏光子の入光側に配置された保護フィルムと、偏光子の出光側に配置された保護フィルムと、を有する偏光板を利用した。下偏光板の偏光子は、上偏光板の偏光子と同一のものを利用した。下偏光板の出光側保護フィルムは、拡散成分が分散されていない、ポリカーボネート製の押し出しフィルムを用い、水貼りによって偏光子に積層した。
【0125】
一方、下偏光板の偏光子の入光側に積層された保護フィルムは、上述の調査1で作製したサンプル5を用いた。下偏光板の入光側保護フィルム(サンプル4)のヘイズ値は86.2%となった。また、押し出し加工によって得られた厚さが80μmである下偏光板用の入光側保護フィルムについての透湿度は、温度40℃、湿度90%RH、24時間で、60g/m2・24hrとなった。
【0126】
(比較例)
比較例に係る表示装置として図9に示された構成の表示装置を作製した。比較例に係る表示装置は、面光源装置において、出光側の集光シートのさらに出光側にヘイズ値が87%の拡散シート(恵和製)を設けたこと、液晶表示パネルの下偏光板の入光側保護フィルムをトリアセチルセルロース製フィルム(TAC製フィルム)としたことを除き、実施例に係る表示装置と同一の部材を用いて同一に構成した。
【0127】
〔評価方法〕
各表示装置で全面白表示した状態で、輝度の角度分布を測定した。測定結果を図8に示す。輝度の角度分布の測定にはトプコン製のBM−8を用いた。また、輝度の角度分布については、入光側の集光シートの単位光学要素の配列方向と正面方向との両方向に平行な面内で種々の方向から輝度を測定することによって水平方向Hにおける輝度分布を作成するとともに、出光側の集光シートの単位光学要素の配列方向(冷陰極管の配列方向)と正面方向との両方向に平行な面内で種々の方向から輝度を測定することによって垂直方向Vにおける輝度分布も作成した。
【0128】
実施例に係る表示装置についての正面方向輝度の測定結果は、比較例に係る表示装置についての正面方向輝度の測定結果の107%となった。また、輝度の角度分布における半値角を調査したところ次のようになった。なお、半値角とは、ピークとなる正面方向輝度の半分の輝度が得られる測定方向の正面方向に対する傾斜角度のことである。実施例に係る表示装置については、水平方向輝度分布Hでの半値角が29°となり、垂直方向輝度分布Vでの半値角が26°となった。一方、比較例に係る表示装置については、水平方向輝度分布Hでの半値角が34°となり、垂直方向輝度分布Vでの半値角が24°となった。
【符号の説明】
【0129】
10 表示装置
20 面光源装置
29 拡散シート
40 液晶表示パネル
50 下偏光板
51 偏光子
55 保護フィルム
55a 出光側面(一側面)
55b 入光側面(他側面)
56 主部
56a 熱可塑性樹脂
57 拡散成分
57a 粒状物
59 本体部
60 単位プリズム
80 押し出し装置
82 押し出し機
82a ダイ
84 成型ロール
86 バックアップ手段
86a 支持ロール
86a1 ニップロール
86a2 調整ロール
86b ベルト部材
88 誘導手段
88a ガイドロール
90 フィルム材料
120 面光源装置
140 液晶表示パネル
220 面光源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下偏光板用の保護フィルムの製造方法であって、
拡散成分とともに熱可塑性樹脂を加熱して押し出し、前記熱可塑性樹脂と前記熱可塑性樹脂内に分散された前記拡散成分とを有する層を含むフィルム材料が形成される、押し出し工程と、
形成された前記フィルム材料が、ベルト部材と、前記ベルト部材に対向して配置された成型ロールと、の間で加圧されながら、当該ベルト部材および成型ロールの間を通過する、加圧工程と、を備え、
前記加圧工程において、フィルム材料は、その移動経路に沿った或る長さの区間にわたって、前記成型ロールおよび前記ベルト部材によって加圧され、且つ、前記フィルム材料からなる保護フィルムの前記ベルト部材に接触していた側をなす面が平坦面となるように冷却される、保護フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記フィルム材料が前記成型ロールおよび前記ベルト部材によって加圧されるようになる前記或る長さをL(mm)とし、前記フィルム材料の移動速度をF(mm/秒)とし、前記ベルト部材の温度をT(℃)として、次の式(1)が満たされる、請求項1に記載の保護フィルムの製造方法。
0.16≦L/(F×T)×100≦0.96 ・・・式(1)
【請求項3】
前記加圧工程において、前記熱可塑性樹脂と前記熱可塑性樹脂内に分散された前記拡散成分とを有する前記層が前記ベルト部材に接触しながら、前記フィルム材料が前記成型ロールおよび前記ベルト部材の間を通過する、請求項1または2に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記フィルム材料からなる前記保護フィルムの前記ベルト部材に接触していた側をなす面についてJISB0601(1982年)に準拠して測定された粗さRaが、0.9μm以下となる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記フィルム材料からなる前記保護フィルムの前記成型ロールに接触していた側をなす面についてJISB0601(1982年)に準拠して測定された粗さRaが、0.4μm以下となる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記押し出し工程において、第2の熱可塑性樹脂も加熱して押し出され、前記熱可塑性樹脂と前記熱可塑性樹脂内に分散された前記拡散成分とを有する前記層と、この前記層に積層され前記第2の熱可塑性樹脂からなる第2層と、を含むフィルム材料が形成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂と前記熱可塑性樹脂内に分散された前記拡散成分とを有する前記層のみからなる保護フィルムが製造される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記加圧工程の後に、前記フィルム材料の前記成型ロールに接触していた面に、前記拡散成分の存在に対応した凹凸が形成される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記加圧工程において、前記フィルム材料の前記成型ロールに接触する側に、前記成型ロールによって、凹凸面が賦型される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記加圧工程において、前記フィルム材料の前記成型ロールに接触する側に、前記成型ロールにより、並べて配置された単位プリズムによって構成されるプリズム面が形成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項11】
複数の単位プリズムが、フィルム材料のフィルム面と平行な配列方向に沿って並べられ、各単位プリズムは、前記フィルム面と平行であるとともに前記配列方向と交差する方向に延びている、請求項10のいずれか一項に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート系樹脂である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載された製造方法によって製造された保護フィルムと、偏光子と、を接着する工程を備え、
前記偏光子が、前記保護フィルムの前記ベルト部材に接触していた側から、当該フィルム材料に接着される、下偏光板の製造方法。
【請求項14】
前記保護フィルムと前記偏光子とは水貼りによって貼合される、請求項13に記載の下偏光板の製造方法。
【請求項15】
互いに接着された前記保護フィルムおよび前記偏光子を有するウェブ状の材料を切断し又は打ち抜いて、当該ウェブ状の材料から下偏光板が順次得られる工程を、さらに備える、請求項13または14に記載の下偏光板の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載された製造方法によって製造された保護フィルムと、
前記保護フィルムに接着された偏光子と、を備え、
前記偏光子は、前記保護フィルムの前記ベルト部材に接触していた側から、当該保護フィルムに接着されている、下偏光板。
【請求項17】
請求項13〜15のいずれか一項に記載された製造方法によって製造された下偏光板、或いは、請求項16に記載された下偏光板と、
上偏光板と、
前記下偏光板と前記上偏光板との間に配置された液晶セルと、を備える、液晶表示パネル。
【請求項18】
請求項17に記載された液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルを背面側から照明する面光源装置と、を備える表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−53170(P2012−53170A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194209(P2010−194209)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】