説明

フィールド機器

【課題】外部メモリ異常時における機器制御部の処理を簡易にし、異常なデータによる動作の暴走を防ぐことを可能とするフィールド機器を実現する。
【解決手段】初期値データを保持する内部メモリと、前記初期値データがコピーされた外部メモリと、外部メモリアクセス部を介して前記外部メモリにアクセスする機器制御部とを具備するフィールド機器において、
前記外部メモリアクセス部は、前記外部メモリからのデータ不正情報を取得し、前記内部メモリより当該不正データの初期値データを取得して復旧させる、復旧処理手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期値データを保持する内部メモリと、前記初期値データがコピーされた外部メモリと、外部メモリアクセス部を介して前記外部メモリにアクセスする機器制御部とを具備するフィールド機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のフィールド機器が接続された制御システムの構成例を示す機能ブロック図である。プラントに配置されてプロセスの測定や制御を担当する複数のフィールド機器10A,10B,…10Nは、フィールドバス20に接続されている。
【0003】
これらフィールド機器は、フィールドバス20を介して上位の制御ステーション30と通信する。更に、制御ステーション30は制御バス40を介して操作・監視装置50と通信し、階層的な分散型制御システムが形成されている。
【0004】
フィールド機器10Aを代表として内部の機能構成を説明する。信号処理の中枢は、CPU100である。CPU100は、プロセス量Pをディジタル値に変換するセンサ200と通信して測定値を取得し、制御演算した結果を上位インターフェース300を介して上位装置に通知する。
【0005】
CPU100は、機器の動作に必要なデータが保存されている外部メモリ400にアクセスして制御演算に必要な情報を取得する。外部メモリ400は、データの書き込みが可能なROM(PROM、EPROM,EEPROM等)で実現されている。
【0006】
CPU100は、内部メモリ101と、機器制御部102と、この機器制御部が外部メモリにアクセスするための外部メモリアクセス部103とを具備する。内部メモリ101は、揮発メモリ(RAM)領域101Aと、不揮発メモリ(ROM)領域101Bよりなる。不揮発メモリ領域101Bには、出荷時に機器の動作に必要なデータの初期値がインストールされる。
【0007】
内部メモリ100の不揮発メモリ領域101Bにインストールされたデータの初期値は、フィールド機器の出荷時に、外部メモリ400にコピーされる。以降、機器制御部102は、機器の動作に必要な作業用のデータは外部メモリアクセス部103を介して外部メモリ400にアクセスして取得する。
【0008】
図4は、従来のデータ復旧動作を説明する機能ブロック図である。機器制御部は102は、外部メモリアクセス部103を通して、外部メモリ400よりデータαを取得し、機器の動作を行う。外部メモリ400に保持されるデータは、種々の要因で初期値から逸脱した不正値に書き換えられる可能性がある。
【0009】
データαが不正である場合、外部メモリ400から発信されるデータ不正情報は、外部メモリアクセス部103を経由して機器制御部102の復旧処理手段102Aに通知される。
【0010】
復旧処理手段102Aは、外部メモリアクセス部103よりデータαが不正である情報を受けると、内部メモリ100の不揮発メモリ領域101Bにアクセスし、インストールされているデータの初期値α’を取得する。
【0011】
その後、機器制御部102は、動作に必要なデータαを使用せず、内部メモリ101に保存されているデータαの初期値であるα’を使って、動作の復旧を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平07−84890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来構成のフィールド機器では次のような問題がある。
(1)外部メモリ400に保存しているデータαを用いて機器の動作を行う場合、データαに対して外部メモリアクセス部103にアクセスする毎に、毎回機器制御部102がその正常判断を行う必要があった。従って異常処理の実行を毎回判断する必要があり、煩雑である。
【0014】
(2)また、動作を復旧するためにデータα’が必要である場合、機器制御部102が毎回その読み込みを行う必要があり、動作復旧に必要な処理が多くなり、機器の保守性が低下する。
【0015】
本発明の目的は、外部メモリ異常時における機器制御部の処理を簡易にし、異常なデータによる動作の暴走を防ぐことを可能とするフィールド機器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)初期値データを保持する内部メモリと、前記初期値データがコピーされた外部メモリと、外部メモリアクセス部を介して前記外部メモリにアクセスする機器制御部とを具備するフィールド機器において、
前記外部メモリアクセス部は、前記外部メモリからのデータ不正情報を取得し、前記内部メモリより当該不正データの初期値データを取得して復旧させる、復旧処理手段を備えることを特徴とするフィールド機器。
【0017】
(2)前記内部メモリ、前記機器制御部、前記外部メモリアクセス部は、CPU内に実装されており、前記外部メモリはCPU外に実装される書き込み可能な不揮発メモリであることを特徴とする(1)に記載のフィールド機器。
【0018】
(3)前記外部メモリアクセス部は、前記外部メモリの故障を認識して前記機器制御部に通知することを特徴とする(1)または(2)に記載のフィールド機器。
【0019】
(4)前記機器制御部の演算結果は、フィールドバスを介して上位装置に通知されて階層的な制御システムを形成することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のフィールド機器。
【0020】
(5)前記機器制御部の演算結果は、無線手段を介して上位装置に通知されて階層的な制御システムを形成することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のフィールド機器。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)データ異常の判断を外部メモリアクセス部103で行う。データαに異常があった場合は、復旧に必要な初期データα’を外部メモリアクセス部103に自動的に返すようにしたため、機器制御部102の記述が簡単になり、機器の信頼性が向上する。
【0022】
(2)また、外部メモリ400自体の故障も、外部メモリアクセス部103で認識するため、データαを読むタイミングとは別のタイミングで認識することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用したフィールド機器が接続された制御システムの一実施例を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明のデータ復旧動作を説明する機能ブロック図である。
【図3】従来のフィールド機器が接続された制御システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【図4】従来のデータ復旧動作を説明する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用したフィールド機器が接続された制御システムの一実施例を示す機能ブロック図である。図3で説明した従来構成と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
本発明は、データαが異常かどうかは外部メモリアクセス部103で認識が可能である点に着目している。従って、本発明の復旧処理手段500は、外部メモリアクセス手段103内に形成されている構成を特徴としている。
【0026】
データαが異常である場合、データαの初期値であるα’を、外部メモリアクセス部103内の復旧処理手段500から内部メモリ101の不揮発メモリ領域101Bにアクセスすることで取得する。この取得データα’を機器制御部102へ返すことにより動作に必要なデータとしての初期値データを機器制御部102に自動的に与える。
【0027】
図2は、本発明のデータ復旧動作を説明する機能ブロック図である。以下に処理の手順を説明する。本例では、機器の動作にデータαが必要なものとする。またその初期値をデータα’とする。またデータαが何らかの要因により、異常であるものとする。
【0028】
(1)機器制御部102が外部メモリアクセス部103に対し、データαの読み込みを要求する。
(2)外部メモリアクセス部103が外部メモリ400よりデータαを読み込む。
(3)外部メモリアクセス部103がデータαの異常を検出する。
(4)外部メモリアクセス部103は、データαの初期値であるデータα’を内部メモリ101より読み込む。
(5)外部メモリアクセス部103は、データα’を機器制御部102に返す。
(6)機器制御部102は、データα’を用いて、機器の動作の復旧を試みる。
【0029】
また、外部メモリ400自体の故障も、外部メモリアクセス部103で認識することが可能である。従って、データαを読むタイミングとは別のタイミングで外部メモリ400自体の故障を認識することが可能である。
【0030】
このように、機器制御部が外部メモリにアクセスするフィールド機器において、外部メモリアクセス部が外部メモリ故障を判断し、外部メモリに保存されているデータに異常がある場合は、外部メモリアクセス部が内部メモリの初期データを返すことにより、動作の暴走を防ぎ、機器制御部の処理を単純化することができる。
【0031】
図1の実施形態では、フィールド機器10Aにおける機器制御部102の演算結果は、フィールドバス20を介して上位装置に通知されるが、機器制御部102の演算結果を無線手段を介して上位装置に通知するシステム構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
10A,10B,…10N フィールド機器
20 フィールドバス
30 制御ステーション
40 制御バス
50 操作・監視装置
100 CPU
101 内部メモリ
101A 揮発メモリ領域
101B 不揮発メモリ領域
102 機器制御部
103 外部メモリアクセス手段
300 上位インターフェース
400 外部メモリ
500 復旧処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期値データを保持する内部メモリと、前記初期値データがコピーされた外部メモリと、外部メモリアクセス部を介して前記外部メモリにアクセスする機器制御部とを具備するフィールド機器において、
前記外部メモリアクセス部は、前記外部メモリからのデータ不正情報を取得し、前記内部メモリより当該不正データの初期値データを取得して復旧させる、復旧処理手段を備えることを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記内部メモリ、前記機器制御部、前記外部メモリアクセス部は、CPU内に実装されており、前記外部メモリはCPU外に実装される書き込み可能な不揮発メモリであることを特徴とする請求項1に記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記外部メモリアクセス部は、前記外部メモリの故障を認識して前記機器制御部に通知することを特徴とする請求項1または2に記載のフィールド機器。
【請求項4】
前記機器制御部の演算結果は、フィールドバスを介して上位装置に通知されて階層的な制御システムを形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィールド機器。
【請求項5】
前記機器制御部の演算結果は、無線手段を介して上位装置に通知されて階層的な制御システムを形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィールド機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−43127(P2012−43127A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183024(P2010−183024)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】