説明

フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法

【課題】面材表面への樹脂組成物のしみ出しがなく、外観が良好なフェノール樹脂発泡体積層板をより低コストで製造しうる方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、フェノール樹脂、界面活性剤、炭化水素を含有する発泡剤、硬化剤からなる樹脂組成物を、平均表面温度が35℃以上100℃以下の範囲に調整された下面材上に吐出し、上面を上面材で覆って樹脂組成物を発泡硬化せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
織布又は不織布を面材として使用したフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂発泡体積層板は、フェノールとホルマリンをアルカリ性触媒により付加、縮合したレゾール型フェノール樹脂に界面活性剤、発泡剤、硬化触媒を混合し、常温で、もしくは加熱せしめることにより製造される。フェノール樹脂発泡体積層板の表面材としては、可撓性面材が好ましく、特に発泡体積層板としての取り扱い易さの点からは、合成繊維不織布或いは織布を用いるのが好ましく、更に経済性の点からは合成繊維不織布が好んで使用されるが、合成繊維不織布を使用しても、フェノール樹脂発泡体積層板に占める面材の原材料コスト比率が大きいため、より低目付け量とした面材を使用することでフェノール樹脂発泡体積層板のコストダウンを図ることが求められていた。
【0003】
しかしながら、低目付け量の面材を使用すると、製造時に面材からの樹脂組成物のしみ出しが起きやすくなり、フェノール樹脂発泡体積層板の製品表面に変色(赤色)痕が残り、製品品位上の外観不良をもたらすのみならず、樹脂が付着することで製造設備を汚してしまう。
【0004】
特許文献1では、ガラス不織布を用いたフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法が提案されており、ガラス不織布の表面側に、接着材層を介して不燃紙を配することで、フェノール樹脂が発泡体表面にしみ出すことを防止しているが、高性能のフェノール樹脂発泡体積層板を製造するためには、硬化反応で発生する水分を速やかに系外に放出する必要性があるため、表面側に樹脂しみ出し防止層を設けることにより、性能低下を引き起こしてしまう。また、面材を積層させることで、むしろ面材のコストアップという結果をもたらすため、目的に反することになる。
【0005】
そこで、特許文献2においては、フェノール樹脂発泡体積層板の面材として、繊維径を限定した織布又は不織布を使用することにより、より目付け量の低い面材を用いる技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特公平6−049297号公報
【特許文献2】特許第3523196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、面材表面への樹脂組成物のしみ出しがなく、外観が良好なフェノール樹脂発泡体積層板をより低コストで製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも、フェノール樹脂、界面活性剤、炭化水素を含有する発泡剤、硬化剤からなる樹脂組成物を、混合部にて混合し、走行する下面材上に連続的に吐出し、その上面を上面材で被覆した後、上記樹脂組成物を発泡硬化せしめるフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法であって、少なくとも上記下面材が織布又は不織布であり、少なくとも、樹脂組成物を下面材上に吐出する位置において、該下面材の平均表面温度が35℃以上100℃以下の範囲に調整されていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、上記下面材の繊維径が1μm以上20μm以下であり、且つ、目付け量が5g/m2以上60g/m2以下であることを好ましい態様として含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造設備を樹脂組成物で汚すことなく、面材からの樹脂組成物のしみ出しのない、外観良好なフェノール樹脂発泡体積層板を、より目付け量の低い面材を用いてコストダウンを図りながら提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明により製造されるフェノール樹脂発泡体積層板とは、上面材と下面材との間にフェノール樹脂発泡体が挟持され、一体化してなる積層板であり、係るフェノール樹脂発泡体とは、多数の気泡が硬化反応によって成形されたフェノール樹脂中に一様に分散した状態で存在する発泡体である。
【0012】
本発明におけるフェノール樹脂発泡体の独立気泡率は90%以上であり、好ましくは95%以上である。独立気泡率が90%未満であるとフェノール樹脂発泡体中の発泡剤が空気と置換して断熱性能が低下する傾向が生じるという懸念がある。
【0013】
本発明におけるフェノール樹脂発泡体の密度は、発泡剤の割合、硬化時のオーブン温度等の条件により所望の値を選択できるが、10kg/m3以上100kg/m3以下であり、好ましくは20kg/m3以上60kg/m3以下である。密度が10kg/m3未満だと圧縮強度等の機械的強度が小さくなり、発泡体の取り扱い時に破損が起こりやすくなり、表面脆性も増加する。逆に密度が100kg/m3を超えると樹脂部の伝熱が増大し断熱性能が低下する恐れがある。
【0014】
本発明におけるフェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、0.015W/m・K以上0.040W/m・K以下である。
【0015】
本発明におけるフェノール樹脂発泡体は、少なくともフェノール樹脂に、界面活性剤、炭化水素を含有する発泡剤、酸硬化触媒(硬化剤)を添加し、これらを一様に分散させてなる樹脂組成物をオーブン等を用いて硬化させることによって得られる。
【0016】
本発明で使用するフェノール樹脂としては、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物によって合成したレゾール型フェノール樹脂の他、酸触媒によって合成したノボラック型フェノール樹脂、アンモニアによって合成したアンモニアレゾール型フェノール樹脂、又はナフテン酸鉛などにより合成したベンジルエーテル型フェノール樹脂等が挙げられ、中でもレゾール型フェノール樹脂が好ましい。レゾール型フェノール樹脂は、フェノールとホルマリンを原料としてアルカリ触媒により40〜100℃の温度範囲で加熱して重合させる。また、必要に応じてレゾール樹脂重合時に尿素等の添加剤を添加しても良い。尿素を添加する場合は予めアルカリ触媒でメチロール化した尿素をレゾール樹脂に混合することがより好ましい。合成後のレゾール樹脂は、通常過剰の水を含んでいるので、発泡に際し、発泡に適した水分量まで調整される。また、フェノール樹脂に、脂肪族炭化水素または高沸点の脂環式炭化水素またはそれらの混合物や、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の粘度調整用の希釈剤、その他必要に応じて添加剤を添加することもできる。
【0017】
本発明に用いられる面材としては、樹脂組成物との接着強度(面材剥離強度)、製品強度、及び取り扱い易さ(可撓性)といった点の他にも、硬化反応で発生する水分を速やかに系外に放出する必要性があり、これらを考慮すると、少なくとも下面材が、好ましくは上下面材が織布又は不織布であることが相応しい。また、繊維の断面形状は限定されず、扁平糸からなる織布又は不織布を用いると、面材からの樹脂組成物のしみ出し抑制効果を一段と高めることができる。さらに、面材の素材に関しても限定されるものではない。
【0018】
本発明において面材として用いられる織布又は不織布の繊維径は、1μm以上20μm以下であることが好ましい。繊維径が20μmより大きいと、面材からの樹脂組成物のしみ出し率が大きくなる上、面材からの樹脂組成物の剥離強度が低下し、製品から面材が剥がれやすくなる。剥離強度を上げるには、目付け量を上げると良いが、その場合はコストが上がるため、好ましくない。また繊維径を、1μmより小さくすることは、面材製造時の経済性を低下させることとなり好ましくない。
【0019】
本発明において、好ましい面材の目付け量は5g/m2以上60g/m2の範囲である。目付け量が5g/m2より小さくなると、面材からの樹脂組成物のしみ出し率が大きくなるため好ましくない。また、目付け量が60g/m2を超えると、高価なものとなり、経済性の面から好ましくない上、剥離強度も低下する。
【0020】
本発明において好ましい面材の目付け量は、従来よりも低い範囲にある。これは、樹脂組成物が面材に接触する際に、面材の表面の温度が所定の範囲に調整されていることから、従来よりも低い目付け量、即ち樹脂組成物が浸透しやすい面材であっても、面材に接触した樹脂組成物が面材によって加熱されて表面側にしみ出す前に硬化するためである。
【0021】
本発明により得られるフェノール樹脂発泡体積層板の面材剥離強度は、後述する所定の測定方法において、400g以上1000g以下であることが好ましい。
【0022】
また、本発明により得られるフェノール樹脂発泡体積層板における面材からの樹脂しみ出し率とは、樹脂組成物を下面材上へ吐出することから、下面材側について、一定面積当たり、表層側へ樹脂組成物がしみ出した面積割合と定義する。面材からの樹脂しみ出し率は0%であることが最も好ましく、30%を超えると、総じて、製品の表面外観不良及び設備を汚すことになるので、30%以下に抑制することが好ましい。
【0023】
本発明においては、樹脂組成物を下面材上に吐出する位置において、該下面材の平均表面温度が35℃以上100℃以下になるように調整する。より好ましくは、45℃以上80℃以下である。このように下面材の表面温度を加温・制御することは、樹脂組成物が下面材の厚み方向、表層部側へしみ出す前に、硬化を完了させることができるため、面材からの樹脂組成物のしみ出しを抑制することが可能となる。35℃未満では、樹脂組成物が面材からしみ出す前に面材中において樹脂組成物の硬化を完了させることが困難となり、また、100℃を超えると、樹脂組成物の発泡・硬化反応が促進されすぎるため、樹脂組成物が十分に面材内に浸透しないうちに面材内の樹脂組成物が硬化してしまい、面材剥離強度が低下する。尚、本発明においては、樹脂組成物を吐出する下面材について上記のように平均表面温度を調整するが、好ましくは、樹脂組成物の上面を上面材にて覆う際にも、該上面材の平均表面温度を下面材と同様に35℃以上100℃以下の範囲に調整することにより、同様の効果、即ち、十分な剥離強度としみ出し防止を図ることができる。尚、その場合、平均表面温度は上下面材それぞれにおいて単独に調整することができ、この範囲内で上下面材表面の温度差をつけても構わない。
【0024】
本発明に係る面材の表面の加温方法は、加熱装置なら特に限定されるものではなく、熱風送風機や遠赤外線ヒーター等が挙げられる。また、面材加熱方式としては、特に限定されるものではなく、走行する面材幅方向に対して遠赤外線ヒーターを照射する方法、熱風をスリットノズルにて吹き付ける方法、もしくは加温室を設けて樹脂組成物吐出直後に加熱温調する方法、等が挙げられる。
【0025】
本発明で使用するフェノール樹脂のフェノール類対アルデヒド類の出発モル比は1:1から1:4.5が好ましく、より好ましくは1:1.5から1:2.5の範囲内である。本発明においてフェノール樹脂合成の際に好ましく使用されるフェノール類としては、フェノール及び他のフェノール類であり、他のフェノール類の例としては、レゾルシノール、カテコール、o−、m−及びp−クレゾール、キシレノール類、エチルフェノール類、p−tertブチルフェノール等が挙げられる。2核フェノール類もまた使用できる。
【0026】
本発明で好ましく使用されるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド及び他のアルデヒド類であり、他のアルデヒド類の例としては、グリオキサール、アセトアルデヒド、クロラール、フルフラール、ベンズアルデヒド等が挙げられる。添加剤として尿素、ジシアンジアミドやメラミン等を加えてもよい。本発明において、これらの添加剤を加える場合、フェノール樹脂とは添加剤を加えた後のものを指す。
【0027】
レゾール型フェノール樹脂を使用する際には、40℃における粘度が3,000mPa・s以上100,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは5,000mPa・s以上50,000mPa・s以下である。また、水分量は3重量%以上30重量%以下が好ましい。
【0028】
界面活性剤及び発泡剤は、フェノール樹脂に予め添加しておいても良いし、酸硬化触媒と同時に添加しても良い。
【0029】
本発明に用いられる界面活性剤は、一般にフェノール樹脂発泡体の製造に使用されるものを使用できるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的であり、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体であるアルキレンオキサイドや、アルキレンオキサイドとヒマシ油の縮合物、アルキレンオキサイドとノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合生成物、更にはポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系化合物、ポリアルコール類等が好ましい。界面活性剤は一種類で用いても良いし、二種類以上を組み合わせて用いても良い。また、その使用量についても特に制限はないが、フェノール樹脂組成物100重量部当たり0.3〜10重量部の範囲で好ましく使用される。
【0030】
本発明で使用する発泡剤に含まれる炭化水素含有量は50重量%以上であることが望ましく、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。炭化水素の含有量が50重量%未満であると、発泡剤の地球温暖化係数が大きくなり好ましくない。本発明のフェノール樹脂発泡体積層板の製造に用いる発泡剤に含有される炭化水素としては、炭素数が3〜7の環状または鎖状のアルカン、アルケン、アルキンが好ましく、発泡性能、化学的安定性(2重結合を有しない。)及び化合物自体の熱伝導率の観点から、炭素数4〜6のアルカンもしくはシクロアルカンがより好ましい。具体的には、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、シクロヘキサン、等を挙げることができる。その中でも、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタンのペンタン類及びノルマルブタン、イソブタン、シクロブタンのブタン類は本発明のフェノール樹脂発泡体積層板の製造においてその発泡特性が快適である上に、熱伝導率が比較的小さいことから特に好ましい。
【0031】
本発明では、これら炭化水素を2種類以上混合して使用することもできる。具体的にはペンタン類5〜95重量%とブタン類95〜5重量%との混合物は広い温度範囲で良好な断熱特性を示すので好ましい。その中でもノルマルペンタンまたはイソペンタンとイソブタンの組み合わせは、低温域から高温域までの広い範囲で高断熱性能を有し、これら化合物が安価であるのも使用に際して有利な点といえる。また、発泡剤として炭化水素と、沸点の低い1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン等のHFC類を併用するとフェノール樹脂発泡体の低温特性を向上させることも可能であるが、混合発泡剤としての地球温暖化係数が大きくなるので、HFC類を併用することはそれほど好ましいとはいえない。また、発泡核剤として窒素、ヘリウム、アルゴン、空気などの低沸点物質を発泡剤に添加して使用しても良い。
【0032】
本発明で使用する酸硬化触媒は特に限定はしないが、水を含む酸を使用すると発泡体気泡壁の破壊等が起こる恐れがある。そのため無水リン酸や無水アリールスルホン酸が好ましいと考えられる。無水アリールスルホン酸としてはトルエンスルホン酸やキシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、置換フェノールスルホン酸、キシレノールスルホン酸、置換キシレノールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられ、これらを一種類で用いても、二種類以上の組み合わせでもよい。また、硬化助剤として、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン(o−メチロールフェノール)、p−メチロールフェノール等を添加してもよい。また、これらの硬化触媒を、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の溶媒で希釈してもよい。
【0033】
フェノール樹脂に上記酸硬化触媒を添加したら、ピンミキサー等を使用して出来るだけ速やかに係る酸硬化触媒を一様に分散させる。発泡剤の使用量は、その種類により異なる。例えば、発泡剤にイソペンタン50重量%とイソブタン50重量%の混合物を用いた場合、好ましくはフェノール樹脂100重量部に対して、2重量部以上20重量部以下、より好ましくは4重量部以上17重量部未満で使用される。
【0034】
酸硬化触媒もその種類により使用量は異なり、無水リン酸を用いた場合、好ましくはフェノール樹脂100重量部に対して、5重量部以上30重量部以下、より好ましくは8重量部以上25重量部以下で使用される。パラトルエンスルホン酸一水和物60重量%とジエチレングリコール40重量%の混合物を使用する場合、フェノール樹脂100重量部に対して、好ましくは3重量部以上30重量部以下、より好ましくは5重量部以上20重量部以下で使用される。
【0035】
必要に応じて、窒素等の発泡核剤や、フェノール樹脂発泡体粉、水酸化アルミニウム粉等の増量剤兼固体発泡核剤、可塑剤等を添加しても良い。特に、フェノール樹脂組成物は、液状(湿潤)化した状態で面材と接するよりも、より泡状(毛羽立ち)化した状態で面材と接する方が、面材からのしみ出し抑制を一層高めることができる。
【0036】
上下面材で挟んだ後の樹脂組成物の発泡硬化温度は好ましくは40℃以上130℃以下であり、より好ましくは60℃以上110℃以下である。硬化は一段階で行っても良いし、硬化の具合に合わせて硬化温度を変えて数段階に分けて硬化させても良い。
【実施例】
【0037】
先ず、本発明におけるフェノール樹脂、フェノール樹脂発泡体積層板の組成、構造、特性の評価方法に関して説明する。
【0038】
〔フェノール樹脂の粘度〕
回転粘度計(東機産業(株)製、R−100型、ローター部は3°×R−14)を用い、40℃で3分間安定させた後の測定値とした。
【0039】
〔フェノール樹脂の水分量〕
水分量を測定した脱水メタノール(関東化学(株)製)にフェノール樹脂を3重量%から7重量%の範囲で溶解して、その溶液の水分量を測定して、フェノール樹脂中の水分量を求めた。測定にはカールフィッシャー水分計(京都電子工業(株)製、MKC−510)を用いた。
【0040】
〔フェノール樹脂発泡体の密度〕
20cm角のフェノール樹脂発泡体積層板を試料とし、この試料の面材、サイディング材を取り除いて重量と見かけ容積を測定して求めた値であり、JIS−K−7222に従い測定した。
【0041】
〔熱伝導率〕
フェノール樹脂発泡体積層板サンプル200mm角、低温板5℃、高温板35℃でJIS−A−1412の平板熱流計法に従い測定した。
【0042】
〔面材の繊維径〕
走査電子顕微鏡を利用し、面材の500倍拡大写真を撮影し、焦点深度の浅い方から、即ち、写真の表面側から、繊維10本当たりの平均径を求めることにより評価した。走査型電子顕微鏡の測定条件は、日立製作所電子顕微鏡S−800型を用い、加速電圧20キロボルトにて行った。尚、試料の前処理は、金スパッタリングを3分間、15mAの電流条件で行った。
【0043】
〔面材の目付け量〕
JIS−L−1906“一般長繊維不織布試験方法”の“単位面積当たりの質量”に準じて測定した。
【0044】
〔面材剥離強度〕
下面材剥離強度について、以下のような測定方法にて評価した(図1)。先ず、幅50mm、長さ120mm(製品流れ方向)の発泡体積層板サンプルにおいて、上面材を剥離した後、下面材側から25mmの厚みの評価用サンプルを準備する。次に長さ方向20mmの位置にカッターにて上面材が配置していた側から厚み方向に20mmの切り込みを入れた後、その切り込み位置にて、評価用サンプルを厚み方向に慎重に手で割る(この際に下面材が剥がれないように長手方向の力を加えないようにする)。評価用サンプルの長手方向切り込み側を下にして、反対側の端をクランプ1で、水平面と45°の角度になるよう保持する。クランプ1で保持しない側の評価用サンプルの端をペーパークリップ4にて挟持し、クリップ4の先に金属ワイヤ5で繋がれた容器6をセットする。次にポンプを用いて、空の容器6内に、100g/分の投入速度で、水を連続的に投入していく。面材3が長手方向に、切り込み位置から50mm以上剥離した時点での容器内水重量を秤量し、その重量を、面材剥離強度値とする。
【0045】
〔面材からの樹脂しみ出し率〕
製品の下面材上に樹脂組成物がしみ出した箇所をペンで囲んで印をつけた後、発泡体積層板の0.3m×0.3mのエリアをデジタルカメラで撮影し、色調補正後、ピクセルカウンターソフトを利用し樹脂組成物がしみ出した箇所の画素数と0.3m×0.3mエリア全体の画素数を各々カウントし、下記計算式にてしみ出し面積比率として求めた。
【0046】
面材からの樹脂しみ出し率(%)=(囲んだ部分の画素数/0.3m×0.3mエリア全体の画素数)×100
【0047】
次に、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
<フェノール樹脂の合成>
反応器に52重量%ホルムアルデヒド3500kgと99重量%フェノール2510kgを仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで50重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えながら昇温して、反応を行わせた。オストワルド粘度が60センチストークス(25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を570kg(ホルムアルデヒド仕込み量の15モル%に相当)添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50重量%水溶液でpHを6.4に中和した。
【0049】
この反応液を、60℃で脱水処理して粘度及び水分量を測定したところ、40℃における粘度は5,800mPa・s、水分量は5重量%であった。これをフェノール樹脂A−Uとする。
【0050】
(実施例1)
フェノール樹脂A−U:100重量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドのブロック共重合体(BASF製、プルロニックF−127)を2.0重量部の割合で混合した。
【0051】
フェノール樹脂100重量部に対して、発泡剤としてイソペンタン50重量%とイソブタン50重量%の混合物7重量部、酸硬化触媒としてキシレンスルホン酸80重量%とジエチレングリコール20重量%の混合物を11重量部からなる組成物を25℃に温調したミキシングヘッドに供給し、マルチポート分配管を通して、移動する下面材上に供給した。
【0052】
面材としてはポリエステル製不織布(旭化成せんい(株)製「スパンボンドE05020」、目付け量20g/m2、厚み0.11mm)を使用した。平均繊維径は13μmであった。
【0053】
下面材上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物は、上面材で被覆されると同時に、上下面材で挟み込むようにして、85℃のスラット型ダブルコンベアへ送り、15分の滞留時間で硬化させた後、110℃のオーブンで2時間キュアしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。上下面材は、各々、樹脂組成物が吐出される位置より上流側で、加温室へ導かれ熱風により加熱、温度制御されることで、樹脂組成物が下面材上へ吐出される幅方向4点の位置における、非接触式赤外放射温度計測定による上下面材の表面温度を50〜55℃に調整した(下面材実測値は、52℃であった)。また、スラット型ダブルコンベアは、硬化中に発生する水分を外部に放出できるように設計したものである。上下面材で被覆した樹脂組成物は、スラット型ダブルコンベアにより上下方向から面材を介して適度に圧力を加えることで板状に成形し、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0054】
(実施例2)
樹脂組成物が下面材上へ吐出される幅方向4点の位置における、非接触式赤外放射温度計測定による上下面材の表面温度を35〜40℃に調整した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。尚、下面材の平均表面温度の実測値は、36℃であった。
【0055】
(実施例3)
樹脂組成物が下面材上へ吐出される幅方向4点の位置における、非接触式赤外放射温度計測定による上下面材の表面温度を95〜100℃に調整した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。尚、下面材平均表面温度の実測値は、98℃であった。
【0056】
(実施例4)
面材として、ポリエステル不織布(目付け量6g/m2の試作品、厚み0.05mm)を使用し、樹脂組成物が下面材上へ吐出される幅方向4点の位置における、非接触式赤外放射温度計測定による上下面材の平均表面温度を95〜100℃に調整した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。尚、面材の平均繊維径は8μmであり、下面材の平均表面温度の実測値は、97℃であった。
【0057】
(実施例5)
面材として、ポリエステル不織布(目付け量60g/m2の試作品、厚み0.21mm)を使用し、樹脂組成物が下面材上へ吐出される幅方向4点の位置における、非接触式赤外放射温度計測定による上下面材の平均表面温度を35〜40℃に調整した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。尚、面材の平均繊維径は18μmであり、下面材の平均表面温度の実測値は、36℃であった。
【0058】
(実施例6)
面材として、ポリエステル不織布(目付け量20g/m2の試作品、厚み0.15mm)を使用し、樹脂組成物が下面材上へ吐出される幅方向4点の位置における、非接触式赤外放射温度計測定による上下面材の平均表面温度が95〜100℃に調整される以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。尚、面材の平均繊維径は20μmであり、下面材の平均表面温度の実測値は、98℃であった。
【0059】
(実施例7)
面材として、ポリエステル不織布(目付け量12g/m2、厚み0.09mmの試作品)を使用し、樹脂組成物が下面材上へ吐出される幅方向4点の位置における、非接触式赤外放射温度計測定による上下面材の平均表面温度が35〜40℃に調整される以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。尚、面材の平均繊維径は10μmであり、下面材の平均表面温度の実測値は、36℃であった。
【0060】
(比較例1)
熱風による加温室を利用しない(この時の、樹脂組成物が下面材上へ吐出される幅方向4点の位置における、非接触式赤外放射温度計測定による下面材の平均表面温度は26℃であった)以外は、実施例7と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。面材の平均繊維径は10μmであった。
【0061】
(比較例2)
面材として、ポリエステル不織布(目付け量60g/m2の試作品、厚み0.21mm)を使用し、樹脂組成物が下面材上へ吐出される幅方向4点の位置における、非接触式赤外放射温度計測定による上下面材の平均表面温度が100〜105℃に調整される以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。尚、面材の平均繊維径は20μmであり、下面材の平均表面温度の実測値は、105℃であった。
【0062】
上記実施例及び比較例に用いた、下面材の平均表面温度、面材の繊維径、面材目付け量、面材剥離強度と、得られたフェノール樹脂発泡体積層板の面材からの樹脂しみ出し率、製品物性、並びに総合評価を表1に示す。
【0063】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板は、壁断熱材、屋根断熱材、室内の間仕切り断熱材、冷凍冷蔵庫用断熱材等として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例における面材剥離強度の測定方法の説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 クランプ
2 評価用サンプルの発泡体部
3 評価用サンプルの下面材
4 ペーパークリップ
5 金属ワイヤ
6 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、フェノール樹脂、界面活性剤、炭化水素を含有する発泡剤、硬化剤からなる樹脂組成物を、混合部にて混合し、走行する下面材上に連続的に吐出し、その上面を上面材で被覆した後、上記樹脂組成物を発泡硬化せしめるフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法であって、少なくとも上記下面材が織布又は不織布であり、少なくとも、樹脂組成物を下面材上に吐出する位置において、該下面材の平均表面温度が35℃以上100℃以下の範囲に調整されていることを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【請求項2】
上記下面材の繊維径が1μm以上20μm以下であり、且つ、目付け量が5g/m2以上60g/m2以下であることを特徴とする請求項1記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−262475(P2009−262475A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116774(P2008−116774)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】