説明

フェライトクランプ

【課題】結束バンドで容易に固定することができるフェライトクランプを提供すること。
【解決手段】それぞれが開環状に形成された一対の分割コア3a、3bと、前記分割コア3a、3bをそれぞれ包持する一対のケース部5a、5bと、を備え、前記ケース部5a、5b同士を閉じ合わせた状態にすると、前記ケース部5a、5bに包持された前記一対の分割コア3a、3bが電線29を挿通させるための挿通孔25を有した環状の磁性体コア27となるフェライトクランプ1であって、前記ケース部5a、5bのうち、前記分割コア3a、3bの外周面を包持する部分に、外側に向けて凸となる突出部19aを有することを特徴とするフェライトクランプ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子機器等の電線に外嵌され、電線がアンテナとなって拾う雑音電流、あるいは外部で発生し電線を介して電子機器に流れ込む雑音電流等を吸収するフェライトクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線に流れる雑音を吸収する機器として、電線の周囲に磁性体であるフェライトコアを外嵌させ、このフェライトコアにより電線に流れる雑音電流を吸収するフェライトクランプが知られている。
【0003】
このフェライトクランプとしては、プラスチック製のケース内にフェライトコアを固定したものがある。具体的には、筒状のフェライトコアを軸方向に半分に分割したもの(分割コア)を、ヒンジにより連結された一対のケース部に嵌め込み、電線をその両側からケース部ごと分割コアで挟んで、フェライトクランプを電線の途中に取り付けるものが用いられている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−5804号公報
【特許文献2】実開平3−59693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フェライトクランプを電線に取り付けた状態で一対のケース部が分離してしまわないように、図8に示すように、ケース部P1、P3の外周部を結束バンドP5で固定する場合がある。結束バンドP5で固定する作業は、結束バンドP5の一端に設けられたロック用部品P7に、結束バンドP5の他端を挿入して形成した輪の中にフェライトクランプのケース部P1、P3を入れておき、結束バンドP5におけるロック用部品P7とは反対側の端を引っ張ることで輪を縮め、ケース部P1、P3の外周部を締め付ける。
【0006】
このとき、ケース部の外周形状は一般に円形であり、エッジがないため、結束バンドの端を引っ張るとき、結束バンドの輪がケース部の外周に沿って回転してしまい、作業性が悪い。
【0007】
また、ケース部の内部には、一対の分割コアが接合された状態を維持するために、分割コアのそれぞれを、反対側の分割コアに向けて付勢する樹脂バネが設けられている。一対の分割コアがしっかり接合した状態を長期間維持するためには、樹脂バネの強さ(板圧)を高くする必要がある。一対のケース部を閉じるときは、樹脂バネの板圧に抗して樹脂バネを押し込むことが必要になるが、樹脂バネの板圧が高いと、一対のケース部を閉じるときに大きな力を要し、片手で一対のケース部を閉じることが困難になる等、作業性が低下する。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、上述した課題のいずれかを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)請求項1のフェライトクランプは、それぞれが開環状に形成された一対の分割コアと、前記分割コアをそれぞれ包持する一対のケース部とを備え、前記ケース部同士を閉じ合わせた状態にすると、前記ケース部に包持された前記一対の分割コアが電線を挿通させるための挿通孔を有した環状の磁性体コアとなるフェライトクランプであって、前記ケース部のうち、前記分割コアの外周面を包持する部分に、外側に向けて凸となる突出部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明のフェライトクランプは、ケース部のうち、分割コアの外周面を包持する部分に、外側に向けて凸となる突出部を有する。そのため、閉じ合わされた一対のケース部を結束バンドで締め付けるとき、突出部が結束バンドに形成された歯状の凹凸と噛み合う。その結果、結束バンドを締めるとき、結束バンドが一対のケース部の外周面上を滑って回転してしまうようなことがないので、作業性が向上する。
【0011】
前記突出部は、ケース部の外表面に形成される。この突出部は、例えば、図1、図3における突出部19a、図6、図7における突出部41aのように、周囲よりもケース部の外側に向けて突出した凸部とすることができる。また、突出部は、このような凸部に限定されず、結束バンドに形成された歯状の凹凸における凹部に入り込むことができるものであれば、広く該当する。例えば、図5における端部37a(板状部材の端面における角)のようなものでもよい。
(2)請求項2のフェライトクランプは、それぞれが開環状に形成された一対の分割コアと、前記分割コアをそれぞれ包持する一対のケース部とを備え、前記ケース部同士を閉じ合わせた状態にすると、前記ケース部に包持された前記一対の分割コアが電線を挿通させるための挿通孔を有した環状の磁性体コアとなるフェライトクランプであって、前記ケース部のうち、前記分割コアの外周面を包持する部分に、周囲よりも外側に張り出しているとともに、内側に弾性変形可能な弾性変形部が形成されており、前記弾性変形部は、内側に弾性変形したとき、前記分割コアを、他方の前記分割コアの方向に押し込むことを特徴とする。
【0012】
本発明のフェライトコアは、上記の弾性変形部を備えている。結束バンドで弾性変形部を外側から締め付けたとき、弾性変形部は内側に押し込まれ、分割コアを他方の分割コアの方向に押し付ける。その結果、一対の分割コアの接合圧を維持し、長期信頼性を向上させることができる。
【0013】
また、上記の機構により一対の分割コアの接合圧を維持できるので、一対のケース部の内部に、分割コアを相互に押し付ける力を生じさせるバネ機構を必ずしも設けなくてもよい。また、バネ機構を設けるとしても、そのバネ圧を強くする必要がない。その結果、一対のケース部材を閉じ合わせるとき、バネ機構のバネ圧に抗して一対のケース部材を閉じるために要する力が小さくて済む。
(3)請求項3のフェライトクランプは、請求項2に記載のフェライトクランプであって、前記弾性変形部は、その外周面に、外側に向けて凸となる突出部を有することを特徴とする。
【0014】
本発明のフェライトクランプは、弾性変形部の外周面に、外側に向けて凸となる突出部を有する。そのため、閉じ合わされた一対のケース部を結束バンドで締め付けるとき、突出部が結束バンドに形成された歯状の凹凸と噛み合う。その結果、結束バンドを締めるとき、結束バンドが一対のケース部の外周面上を滑って回転してしまうようなことがないので、作業性が向上する。
【0015】
前記突出部は、例えば、図1、図3における突出部19a、図6、図7における突出部41aのように、周囲よりもケース部の外側に向けて突出した凸部とすることができる。また、突出部は、このような凸部に限定されず、結束バンドに形成された歯状の凹凸における凹部に入り込むことができるものであれば、広く該当する。例えば、図5における端部37a(板状部材の端面における角)のようなものでもよい。
(4)請求項4のフェライトクランプは、請求項2又は3記載のフェライトクランプであって、前記弾性変形部上を通る経路において結束バンドを案内するガイド部を前記ケース部の外周面に備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のフェライトクランプは、ガイド部を備えることにより、結束バンドを適切な位置(例えば、弾性変形部の上を通り、一対のケース部の外周上を一周する位置)にガイドできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】フェライトクランプ1全体の斜視図である。
【図2】ケース部5a、及び分割コア3aを表す側断面図である。
【図3】フェライトクランプ1の側断面図である。
【図4】フェライトクランプ1を結束バンド31で締め付ける方法を表す説明図であり、(a)はフェライトクランプ1を結束バンド31で未だ締め付けていない状態を表し、(b)はフェライトクランプ1を結束バンド31で締め付けた状態を表す。
【図5】弾性変形部11aを表す斜視図である。
【図6】弾性変形部11aを表す斜視図である。
【図7】弾性変形部11aを表す斜視図である。
【図8】従来のフェライトクランプの固定方法を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
1.フェライトクランプ1の構成
フェライトクランプ1の構成を図1〜図3に基づいて説明する。図1はフェライトクランプ1全体の斜視図であり、図2は後述するケース部5a、及び分割コア3aを表す側断面図であり、図3はフェライトクランプ1の側断面図である。
【0019】
フェライトクランプ1は、それぞれが開環状に形成された一対の分割コア3a、3bと、分割コア3a、3bをそれぞれ包持する一対のケース部5a、5bとを備える。
ケース部5a、5bは、薄肉の円筒が中心軸を含む平面に沿って切断された形状(略舟形)の箱体であり、これらのケース部5a、5b内に、それぞれ、分割コア3a、3bが嵌め込まれる。ケース部5a、5bは、弾性を有する樹脂から成る。ケース部5a、5bの内周面には、それぞれ、突起6a、6bが形成されており、分割コア3a、3bの外周面には、対応する溝部8a、8bが形成されている。ケース部5aに分割コア3aを嵌め込むときは、突起6aと溝部8aが係合することで、分割コア3aの位置が安定する。また、ケース部5bに分割コア3bを嵌め込むときは、突起6bと溝部8bが係合することで、分割コア3bの位置が安定する。
【0020】
ケース部5a、5bの軸方向(図2、図3において紙面に直交する方向)の両端には、軸方向と直交する側壁部7a、7bが設けられている。この側壁部7a、7bには、図1に示すようにケース部5a、5bを閉じた時に略円形の貫通孔12となる半円状の開口部9a、9bがそれぞれ設けられている。
【0021】
また、ケース部5aのうち、分割コア3aの外周面を保持する部分である外周面10aには弾性変形部11a、13aが設けられており、ケース部5bのうち、分割コア3bの外周面を保持する部分である外周面10bには弾性変形部11b、13bが設けられている。弾性変形部11a、13a、11b、13bの構造は基本的に同様であるので、ここでは、弾性変形部11aを例にとって説明する。
【0022】
弾性変形部11aは、ケース部5aに略コの字型の切り込み15aを入れて形成され、接続辺17aのみにおいて、ケース部5aの本体と接続している板状の部分である。この接続辺17aは、ケース部5aの軸方向と平行であって、切り込み15aよりも、ケース部5aとケース部5bとの当接部に近い位置にある。弾性変形部11aのうち、接続辺17aと反対側には、外側に向けて凸となる突出部19aが形成されている。図3に示す断面で見たときの突出部19aの位置は、ケース部5aの頂点(図3において最も上側の部分)と、ケース部5bに当接する部分との間である。

この突出部19aを外側から内側に向けて押すと、弾性変形部11aは、弾性変形により、ケース部5aの内部に押し込まれる。突出部19aの大きさは、後述する結束バンド31に設けられた歯状の凹凸に入り込み、引っかかる大きさである。弾性変形部13a、11b、13bも弾性変形部11aと同様に形成され、それぞれ、突出部19aと同様の突出部20a、19b、20bを備えている。
【0023】
また、ケース部5aには、弾性変形部11aの接続辺17a及び突出部19aを両側から挟むように、一対の板状部材であるガイド板21a、23aが立設されている。
図1、図3に示すように、分割コア3aを包持したケース部5aと、分割コア3bを包持したケース部5bを閉じ合わせた状態にすると、分割コア3a、3bが電線を挿通させるための挿通孔25を有した環状の磁性体コア27となる。また、ケース部5a、5bは、一体のケースとなって、その内部に磁性体コア27を収容する。磁性体コア27の挿通孔25と、ケース部5a、5bにおいて形成される貫通孔12とは同軸上に並び、これらに電線を挿通することができる。
【0024】
分割コア3a、3bの材質は、公知のフェライトである。分割コア3a、3bは、公知の成形方法により、上述した形状に成形できる。
2.フェライトクランプ1の使用方法
フェライトクランプ1の使用方法を図4に基づいて説明する。図4(a)はフェライトクランプ1を結束バンド31で締め付けていない状態を表し、図4(b)はフェライトクランプ1を結束バンド31で締め付けた状態を表す。
【0025】
まず、分割コア3aを包持したケース部5aと、分割コア3bを包持したケース部5bが分離した状態とする。次に、図4(a)に示すとおり、電線29が挿通孔25を通るように、ケース部5a、5bを閉じ合わせる。さらに、結束バンド31を、ケース部5aの外周面10a、及びケース部5bの外周面10bに沿って1周するように巻きつけ、図4(b)に示すように、結束バンド31の輪を縮めて、ケース部5a、5bを外側から締め付ける。このとき、結束バンド31の経路は、弾性変形部11a、13a、11b、13bの上を通り、ケース部5aの外周面10a、及びケース部5bの外周面10bを一周する経路である。また、結束バンド31の位置は、弾性変形部11a、13a、11b、13bの両側に設けられた一対のガイド板(弾性変形部11aにおいては、21a、23a)の間を通る位置である。
【0026】
結束バンド31は、ケーブルタイ、ナイロンタイとも称される周知のものであり、例えば、タイラップ(登録商標)、インシュロック(登録商標)等が該当する。結束バンド31は、帯状のバンド31aと、そのバンド31aの片端に設けられたロック用部品31bとから成り、ロック用部品31bにバンド31aの他端(ロック用部品がない方の端)を通して結束する。バンド31aの表面には、歯状の凹凸(図示略)がバンド31aの長手方向に沿って一定間隔で多数形成されており、その歯状の凹凸によって、ロック用部品31bを通過したバンド31aは元の方向に戻らないようになっている。
【0027】
結束バンド31でケース部5a、5bを締め付けたとき、図4(b)に示すように、弾性変形部11aの突出部19aは結束バンド31によって内側に押される。そのため、弾性変形部11aは内側に弾性変形して分割コア3aに当接し、分割コア3aを、分割コア3bの方向に押し付ける。同様に、弾性変形部13aも、結束バンド31によって内側に弾性変形して分割コア3aに当接し、分割コア3aを、分割コア3bの方向に押し付ける。また、弾性変形部11b、13bも、結束バンド31によって内側に弾性変形して分割コア3bに当接し、分割コア3bを、分割コア3aの方向に押し付ける。
【0028】
3.フェライトクランプ1が奏する効果
(1)フェライトクランプ1は、ケース部5a、5bの外周面10a、10bに、外側に向けて凸となる突出部19a、20a、19b、20bを有する。結束バンド31でケース部5a、5bを締め付けるとき、突出部19a、20a、19b、20bが結束バンド31に形成された歯状の凹凸と噛み合う。その結果、結束バンド31を締めるとき、結束バンド31がケース部5a、5bの外周面10a、10b上を滑って回転してしまうようなことがないので、作業性が向上する。
(2)結束バンド31でケース部5a、5bを締め付けたとき、図4(b)に示すように、弾性変形部11a、弾性変形部13aは内側に押し込まれ、分割コア3aを分割コア3bの方向に押し付ける。また、弾性変形部11b、弾性変形部13bは内側に押し込まれ、分割コア3bを分割コア3aの方向に押し付ける。その結果、分割コア3a、3bの接合圧を維持し、長期信頼性を向上させることができる。
【0029】
また、上記の機構により分割コア3a、3bの接合圧を維持できるので、ケース部5a、5bの内部に、分割コア3a、3bを相互に押し付ける力を生じさせるバネ機構(例えば樹脂バネ、金属のバネ等)を必ずしも設けなくてもよい。また、バネ機構を設けるとしても、そのバネ圧を強くする必要がない。その結果、ケース部5a、5bを閉じ合わせるとき、バネ機構のバネ圧に抗してケース部5a、5bを閉じるために要する力が小さくて済む。
(第2の実施形態)
1.フェライトクランプ1の構成及び使用方法
本実施形態におけるフェライトクランプ1の構成は基本的には前記第1の実施形態と同様であるが、弾性変形部11a、13a、11b、13bの構成において相違する。以下ではその相違点を中心に説明し、前記第1の実施形態と同様の部分の説明は省略乃至簡略化する。
【0030】
本実施形態における弾性変形部11aの構成を図5に基づいて説明する。なお、弾性変形部13a、11b、13bの構成も同様である。また、弾性変形部11a、13a、11b、13bの位置は、前記第1の実施形態と同様である。
【0031】
弾性変形部11aは、ケース部5aに略コの字型の切り込み15aを入れて形成され、接続辺17aのみにおいて、ケース部5aの本体と接続している板状の部分である。この接続辺17aは、ケース部5aの軸方向と平行であって、切り込み15aよりも、ケース部5aとケース部5bとの当接部に近い位置にある。弾性変形部11aは、接続辺17aを一端とし、徐々に高くなる傾斜部33aと、傾斜部33aに接続し、平坦である平坦部35aとから成る。平坦部35aは、ケース部5aにおけるその周囲よりも外側に張り出している。平坦部35aのうち、接続辺17aとは反対側の端部37aは鋭い角を形成しており、結束バンド31に形成された歯状の凹凸と噛み合う。また、平坦部35aの裏面における端部37a側には、下向きに突出する突出部39aが形成されている。平坦部35aを結束バンド31により外側から内側に向けて押すと、弾性変形部11aは、弾性変形により、ケース部5aの内部に押し込まれる。そして、突出部39aが分割コア3aを分割コア3bの方向に押し付ける。なお、弾性変形部13a、11b、13bも、弾性変形部11aと同様に形成されている。
【0032】
また、ケース部5aには、弾性変形部11aを両側から挟むように、一対の板状部材であるガイド板21a、23aが立設されている。ガイド板21a、23aは、結束バンド31が弾性変形部11aの上を通るようにガイドする。
【0033】
2.フェライトクランプ1が奏する効果
(1)フェライトクランプ1は、ケース部5a、5bの外周面10a、10bに、弾性変形部11aの端部37a、及び弾性変形部13a、11b、13bにおける同様の端部(以下、弾性変形部11a、13a、11b、13bの端部とする)を備えている。
【0034】
結束バンド31でケース部5a、5bを締め付けるとき、弾性変形部11a、13a、11b、13bの端部が結束バンド31に形成された歯状の凹凸と噛み合う。その結果、結束バンド31を締めるとき、結束バンド31がケース部5a、5bの外周面10a、10b上を滑って回転してしまうようなことがないので、作業性が向上する。
(2)結束バンド31でケース部5a、5bを締め付けたとき、弾性変形部11a、弾性変形部13aは内側に押し込まれ、分割コア3aを分割コア3bの方向に押し付ける。また、弾性変形部11b、弾性変形部13bは内側に押し込まれ、分割コア3bを分割コア3aの方向に押し付ける。その結果、分割コア3a、3bの接合圧を維持し、長期信頼性を向上させることができる。
【0035】
また、上記の機構により分割コア3a、3bの接合圧を維持できるので、ケース部5a、5bの内部に、分割コア3a、3bを相互に押し付ける力を生じさせるバネ機構を必ずしも設けなくてもよい。また、バネ機構を設けるとしても、そのバネ圧を強くする必要がない。その結果、ケース部5a、5bを閉じ合わせるとき、バネ機構のバネ圧に抗してケース部5a、5bを閉じるために要する力が小さくて済む。
(第3の実施形態)
1.フェライトクランプ1の構成及び使用方法
本実施形態におけるフェライトクランプ1の構成は基本的には前記第1の実施形態と同様であるが、弾性変形部11a、13a、11b、13bの構成において相違する。以下ではその相違点を中心に説明し、前記第1の実施形態と同様の部分の説明は省略乃至簡略化する。
【0036】
本実施形態における弾性変形部11aの構成を図6に基づいて説明する。なお、弾性変形部13a、11b、13bの構成も同様である。また、弾性変形部11a、13a、11b、13bの位置は、前記第1の実施形態と同様である。
【0037】
弾性変形部11aは、ケース部5aに略コの字型の切り込み15aを入れて形成され、接続辺17aのみにおいて、ケース部5aの本体と接続している板状の部分である。この接続辺17aは、ケース部5aの軸方向と平行であって、切り込み15aよりも、ケース部5aとケース部5bとの当接部に近い位置にある。弾性変形部11aは、接続辺17aを一端とし、徐々に高くなる傾斜部33aと、傾斜部33aに接続し、平坦である平坦部35aとから成る。平坦部35aは、ケース部5aにおけるその周囲よりも外側に張り出している。平坦部35aのうち、接続辺17aとは反対側の端部には、外側に向けて凸となる突出部41aが形成されている。この突出部41aを外側から内側に向けて押すと、弾性変形部11aは、弾性変形により、ケース部5aの内部に押し込まれる。突出部41aの大きさは、結束バンド31に設けられた歯状の凹凸に入り込み、引っかかる大きさである。弾性変形部13a、11b、13bも、弾性変形部11aと同様に形成されている。また、本実施形態では、ガイド板21a、23aが、平坦部35aの両側に設けられている。ガイド板21a、23aは、平坦部35a上を通る結束バンド31を両側から挟み、ガイドする。
【0038】
平坦部35aを結束バンド31により外側から内側に向けて押すと、弾性変形部11aは、弾性変形により、ケース部5aの内部に押し込まれ、分割コア3aを分割コア3bの方向に押し付ける。なお、弾性変形部13a、11b、13bも、弾性変形部11aと同様に形成されている。
【0039】
2.フェライトクランプ1が奏する効果
(1)フェライトクランプ1は、ケース部5a、5bの外周面10a、10bに、弾性変形部11aの突出部41a、及び弾性変形部13a、11b、13bにおける同様の突出部(以下、弾性変形部11a、13a、11b、13bの突出部とする)を備えている。
【0040】
結束バンド31でケース部5a、5bを締め付けるとき、弾性変形部11a、13a、11b、13bの突出部が結束バンド31に形成された歯状の凹凸と噛み合う。その結果、結束バンド31を締めるとき、結束バンド31がケース部5a、5bの外周面10a、10b上を滑って回転してしまうようなことがないので、作業性が向上する。
(2)結束バンド31でケース部5a、5bを締め付けたとき、弾性変形部11a、弾性変形部13aは内側に押し込まれ、分割コア3aを分割コア3bの方向に押し付ける。また、弾性変形部11b、弾性変形部13bは内側に押し込まれ、分割コア3bを分割コア3aの方向に押し付ける。その結果、分割コア3a、3bの接合圧を維持し、長期信頼性を向上させることができる。
【0041】
また、上記の機構により分割コア3a、3bの接合圧を維持できるので、ケース部5a、5bの内部に、分割コア3a、3bを相互に押し付ける力を生じさせるバネ機構を必ずしも設けなくてもよい。また、バネ機構を設けるとしても、そのバネ圧を強くする必要がない。その結果、ケース部5a、5bを閉じ合わせるとき、バネ機構のバネ圧に抗してケース部5a、5bを閉じるために要する力が小さくて済む。
(第4の実施形態)
1.フェライトクランプ1の構成及び使用方法
本実施形態におけるフェライトクランプ1の構成は基本的には前記第1の実施形態と同様であるが、弾性変形部11a、13a、11b、13bの構成において相違する。以下ではその相違点を中心に説明し、前記第1の実施形態と同様の部分の説明は省略乃至簡略化する。
【0042】
本実施形態における弾性変形部11aの構成を図7に基づいて説明する。なお、弾性変形部13a、11b、13bの構成も同様である。また、弾性変形部11a、13a、11b、13bの位置は、前記第1の実施形態と同様である。
【0043】
弾性変形部11aは、ケース部5aに略コの字型の切り込み15aを入れて形成され、接続辺17aのみにおいて、ケース部5aの本体と接続している板状の部分である。この接続辺17aは、ケース部5aの軸方向と平行であって、切り込み15aよりも、ケース部5aとケース部5bとの当接部に近い位置にある。弾性変形部11aは、接続辺17aを一端とし、徐々に高くなる傾斜部33aと、傾斜部33aに接続し、平坦である平坦部35aとから成る。平坦部35aは、ケース部5aにおけるその周囲よりも外側に張り出している。平坦部35aのうち、中央付近には、外側に向けて凸となる突出部41aが形成されている。この突出部41aを外側から内側に向けて押すと、弾性変形部11aは、弾性変形により、ケース部5aの内部に押し込まれる。突出部41aの大きさは、結束バンド31に設けられた歯状の凹凸に入り込み、引っかかる大きさである。また、平坦部35aのうち、傾斜部33aとは反対側の端部には、ゲート状のバンド通し穴43aが形成されている。バンド通し穴43aは、平坦部35a上を通る結束バンド31をその中に通し、ガイドする。
【0044】
平坦部35aを結束バンド31により外側から内側に向けて押すと、弾性変形部11aは、弾性変形により、ケース部5aの内部に押し込まれ、分割コア3aを分割コア3bの方向に押し付ける。なお、弾性変形部13a、11b、13bも、弾性変形部11aと同様に形成されている。
【0045】
2.フェライトクランプ1が奏する効果
(1)フェライトクランプ1は、ケース部5a、5bの外周面10a、10bに、弾性変形部11aの突出部41a、及び弾性変形部13a、11b、13bにおける同様の突出部(以下、弾性変形部11a、13a、11b、13bの突出部とする)を備えている。
【0046】
結束バンド31でケース部5a、5bを締め付けるとき、弾性変形部11a、13a、11b、13bの突出部が結束バンド31に形成された歯状の凹凸と噛み合う。その結果、結束バンド31を締めるとき、結束バンド31がケース部5a、5bの外周面10a、10b上を滑って回転してしまうようなことがないので、作業性が向上する。
(2)結束バンド31でケース部5a、5bを締め付けたとき、弾性変形部11a、弾性変形部13aは内側に押し込まれ、分割コア3aを分割コア3bの方向に押し付ける。また、弾性変形部11b、弾性変形部13bは内側に押し込まれ、分割コア3bを分割コア3aの方向に押し付ける。その結果、分割コア3a、3bの接合圧を維持し、長期信頼性を向上させることができる。
【0047】
また、上記の機構により分割コア3a、3bの接合圧を維持できるので、ケース部5a、5bの内部に、分割コア3a、3bを相互に押し付ける力を生じさせるバネ機構を必ずしも設けなくてもよい。また、バネ機構を設けるとしても、そのバネ圧を強くする必要がない。その結果、ケース部5a、5bを閉じ合わせるとき、バネ機構のバネ圧に抗してケース部5a、5bを閉じるために要する力が小さくて済む。
【0048】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、弾性変形部は、ケース部5a、5bのうちの一方のみに設けてもよい。
【0049】
また、ケース部5aに設ける弾性変形部の数は、2には限定されず、例えば、1、3、5・・・であってもよい。ケース部5bについても同様である。
また、ケース部5a、5bは、完全に分離できるものであってもよいし、ヒンジを介して接合され、開閉可能なものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1・・・フェライトクランプ、3a、3b・・・分割コア、5a、5b・・・ケース部、
6a、6b・・・突起、7a、7b・・・側壁部、8a、8b・・・溝部、
9a・・・開口部、10a、10b・・・外周面、11a、13a、
11b、13b・・・弾性変形部、12・・・貫通孔、15a・・・切り込み、
17a・・・接続辺、19a、20a、19b、20b・・・突出部、
21a、23a・・・ガイド板、25・・・挿通孔、27・・・磁性体コア、
29・・・電線、31・・・結束バンド、33a・・・傾斜部、35a・・・平坦部、37a・・・端部、39a・・・突出部、41a・・・突出部、
43a・・・バンド通し穴、P1、P3・・・ケース部、P5・・・結束バンド、
P7・・・ロック用部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが開環状に形成された一対の分割コアと、
前記分割コアをそれぞれ包持する一対のケース部と、
を備え、
前記ケース部同士を閉じ合わせた状態にすると、前記ケース部に包持された前記一対の分割コアが電線を挿通させるための挿通孔を有した環状の磁性体コアとなるフェライトクランプであって、
前記ケース部のうち、前記分割コアの外周面を包持する部分に、外側に向けて凸となる突出部を有することを特徴とするフェライトクランプ。
【請求項2】
それぞれが開環状に形成された一対の分割コアと、
前記分割コアをそれぞれ包持する一対のケース部と、
を備え、
前記ケース部同士を閉じ合わせた状態にすると、前記ケース部に包持された前記一対の分割コアが電線を挿通させるための挿通孔を有した環状の磁性体コアとなるフェライトクランプであって、
前記ケース部のうち、前記分割コアの外周面を包持する部分に、周囲よりも外側に張り出しているとともに、内側に弾性変形可能な弾性変形部が形成されており、
前記弾性変形部は、内側に弾性変形したとき、前記分割コアを、他方の前記分割コアの方向に押し込むことを特徴とするフェライトクランプ。
【請求項3】
前記弾性変形部は、その外周面に、外側に向けて凸となる突出部を有することを特徴とする請求項2に記載のフェライトクランプ。
【請求項4】
前記弾性変形部上を通る経路において結束バンドを案内するガイド部を前記ケース部の外周面に備えることを特徴とする請求項2又は3記載のフェライトクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−99707(P2012−99707A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247320(P2010−247320)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】