説明

フォトマスク、カラーフィルタ基板、画素電極基板、液晶表示装置、カラーフィルタ基板の製造方法及び画素電極基板の製造方法

【課題】液晶表示装置用カラーフィルタ基板や画素電極基板に、ポジ型フォトレジストを用いてセルギャップ制御用の固定スペーサを形成するためのフォトマスクを最適化し、工程条件によるバラツキの少ないカラーフィルタ基板とその製造方法、および画素電極基板とその製造方法を提供し、高品質の液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】液晶表示装置におけるカラーフィルタ基板11、または画素電極基板に、ポジ型フォトレジストを用いて液晶セルギャップ制御用の固定スペーサ5を形成するためのフォトマスク20であって、固定スペーサのフォトマスクパターンとして、遮光部8の周囲に全透過スリットを含むグレートーン部9を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関するものであり、特に液晶セル形成のための固定スペーサを有するカラーフィルタ基板、画素電極基板、及びカラーフィルタ基板と画素電極基板の製造方法、ならびに前記カラーフィルタ基板と画素電極基板の製造に使用するフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面型ディスプレイ装置が多く使われるようになってきており、中でもLCD(液晶表示装置)は、特にカラーフィルタによって色表示を行う多色カラータイプがテレビ、モニタ、携帯端末等の表示パネルに利用が進んでいる。多色カラー化のために一般にマイクロセル構造のカラーフィルタ基板が多用され、カラーフィルタ基板は液晶表示パネルの表示品質を決める上で重要な役割を担っている。
【0003】
LCD(液晶表示装置)は少なくとも一枚を光透過性とする一対の基板間に液晶を封入してなるセル構造を有し、前述の多色カラー表示の場合には、光透過性の基板のセル内面にカラーフィルタが形成される。カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板の一般的構成は、図7に示すように、透明基板1の片側(液晶セルの内面となる側)に遮光性のブラックマトリックスパターン2(BMパターンと略称する。以下同様)とBMパターン2の隙間を規則的に満たすカラーフィルタ画素毎の着色パターン30、31、32の繰り返し配列が正確な位置合わせで形成され、液晶表示方式により、例えばTN(ねじれネマティック)タイプの場合は、BMパターン2と着色パターン30、31、32の繰り返し配列を覆うように透明電極層4を形成する。従来は、カラーフィルタ基板として、ここまでの構成物を指していたが、さらに近年は特に液晶セルの大型化、狭ギャップ化に伴って、セルギャップ制御用に従来はセル化工程で散布していたビーズスペーサに代わり、フォトスペーサ、ポストスペーサなどと呼ばれる、感光性樹脂により選択的に形成される固定スペーサ(PS部と略称する。以下同様)5を配することが多い。また、前記PS部5は、図6のLCDパネルの断面構造を説明する模式図に示すように、カラーフィルタ基板側には設けずに、液晶セル構造を構成するカラーフィルタ基板とは対向側の画素電極基板12上に設けることもできる。
【0004】
前記PS部の形成を写真的方法により行う場合の一般的な例を図2に示す。従来の限定的な機能を有するカラーフィルタ基板(PS部未形成)10に、新たなPS部を付加した構成物全体としてのカラーフィルタ基板(PS部形成)11を形成する一例である。フォトマスク20は透明基板21に形成された遮光部8がカラーフィルタ基板(PS部未形成)10上に作る新たなPS部のパターンに対応しており、透明基板21の遮光部8とは反対側から照射される照射光40が遮光部8の無い部分を通って、カラーフィルタ基板(PS部未形成)10上に塗布されたポジ型フォトレジスト7を選択的に露光して現像溶解性を与える。その後、現像、洗浄、ベイクの工程を経て、遮光部パターンがカラーフィルタ10上に焼き付け固定される。
【0005】
PS部5はBMパターン2上に重なるよう、選択的に決められた配置で形成され、液晶セルギャップを一定に保持する機能を有するものである。セルギャップを得るための充分な高さを確保する目的で、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の着色パターン30、31、32をBMパターン2上で重ねて、PS部のみの高さを補うことも可能である(特許文献1参照)。
【0006】
前記PS部5の製造方法として、ポジ型フォトレジストにより形成するための提案が多くなされているが、問題点が多く、現状ではPS部の形成にネガ型フォトレジストを使うことも多い。ポジ型フォトレジストを使う方が、安い材料費で処理できる利点があるにも拘らず、必ずしも実現できていない理由は、図3に説明するように、PS部51、52に示す高さの制御の困難さと、PS部53に示す上面の凹みによる品質異常のためである。すなわち、平面サイズが30μm未満の小型のPS部51、52においては、厚く塗布されたフォトレジスト膜に対する露光量や露光ギャップの変動が敏感に現像厚さ、すなわちPS部の高さのバラツキdとなって現れてしまい、セルギャップ制御用として特に重要な一定高さを与えるPS部の機能を損なう。また、平面サイズが30μm以上の大型のPS部53においては、PS部の上面に凹みeが発生し、液晶セル作製工程において、配向膜を塗布する際に品質異常を引き起こすという不具合が生じる。
【0007】
一方、上記のような、厚く塗布されたフォトレジスト膜の厚さの制御に関して、充分な露光量を与える領域と遮光する領域との中間の露光量を与えて、突起部の高さを中間レベルに作る方法がある。フォトマスク上に中間濃度のパターンを形成する方法としては、ドット(網点)配列やライン・アンド・スペースのような遮光膜の微細パターンの集合により、微細パターン領域全体の平均として、半透光部に相当させる一般的なグレートーンマスクのタイプと、膜特性として半透過性を有する膜の直接成膜とパターニング手段で均一な半透光部を形成するハーフトーンマスクのタイプがあり、適宜利用されている(特許文献2)。
【0008】
また、図7において、PS部5の下地に当たる部分をBMパターン2上の着色パターン30、31、32の内、2層以上の重ねにより盛り上げて、結果的にPS部を高く形成する手法では、PS部5としての工程で作る専用層の厚さは必ずしも特に厚くする必要は無いので、上記のポジ型フォトレジストを使う場合の不具合は概ね回避できる。しかしながら、着色パターン30、31、32を積層させてBMパターン2上を部分的に盛り上げる場合は、各着色パターンを形成する材料の塗布の精度と重ねの位置合わせの精度を共に極めて高精度に制御することが特別に重要になり、生産工程を安定させる上での困難を伴うことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3651874号公報
【特許文献2】特開2007−248988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記の問題点に鑑みて提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、液晶表示装置用カラーフィルタ基板や画素電極基板に、ポジ型フォトレジストを用いてセルギャップ制御用の固定スペーサを形成するためのフォトマスクを最適化し、工程条件によるバラツキの少ないカラーフィルタ基板とその製造方法、および画素電極基板とその製造方法を提供し、高品質の液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、液晶表示装置におけるカラーフィルタを有するカラーフィルタ基板、または、液晶表示装置のアクティブ駆動用のスイッチング素子および画素電極を有する画素電極基板に、ポジ型フォトレジストを用いて液晶セルギャップ制御用の固定スペーサを形成するためのフォトマスクであって、固定スペーサのフォトマスクパターンとして、遮光部の周囲に全透過スリットを含むグレートーン部を有することを特徴とするフォトマスクである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記固定スペーサの平面形状を凸型の単純多角形または円、長円等の円型とし、そのサイズを前記固定スペーサの輪郭内に収納可能な最大円の直径で表して、30〜50μmに形成するため、前記全透過スリットの幅を5〜7μmとし、前記遮光部とグレートーン部の全体サイズを30μm以上とすることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクである。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のフォトマスクを用い、前記固定スペーサをカラーフィルタ基板上に選択的に設けたことを特徴とするカラーフィルタ基板である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記固定スペーサのカラーフィルタ画素中央部最表面からの高さを、2.0〜3.8μmとすることを特徴とする請求項3に記載のカラーフィルタ基板である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載のフォトマスクを用い、前記固定スペーサを画素電極基板上に選択的に設けたことを特徴とする画素電極基板である。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、前記固定スペーサの画素電極中央部最表面からの高さを、2.0〜3.8μmとすることを特徴とする請求項5に記載の画素電極基板である。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、請求項3〜6のいずれかに記載のカラーフィルタ基板または画素電極基板を具備することを特徴とする液晶表示装置である。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1または2に記載のフォトマスクを用い、プロキシミティ露光方式によりパターン形成し、前記固定スペーサをカラーフィルタ基板上に選択的に設けることを特徴とするカラーフィルタ基板の製造方法である。
【0019】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1または2に記載のフォトマスクを用い、プロキシミティ露光方式によりパターン形成し、前記固定スペーサを画素電極基板上に選択的に設けることを特徴とする画素電極基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
液晶表示装置用カラーフィルタ基板にセルギャップ制御用の固定スペーサを形成するに際して、スペーサの平面サイズが小さい場合には露光ギャップや露光量の変動がスペーサの出来上がり高さに大きく影響し、また、スペーサの平面サイズが大きい場合にはスペーサ上面の平坦となるべき部分が凹むため、液晶セル作製工程において配向膜を塗布する際に品質異常が生じるなど、ポジ型フォトレジストをスペーサとして有効に使いこなす上での困難があったが、本発明の請求項1に記載したフォトマスクにより、高品質の固定スペーサをポジ型フォトレジストでカラーフィルタ基板上または画素電極基板上に形成することができる。
【0021】
また、請求項2に記載した発明によれば、本発明のカラーフィルタ基板または画素電極基板を構成する固定スペーサに特に適した平面サイズを安定的にかつ高品質で実現するためのフォトマスクの構造を規定することができる。
【0022】
また、請求項3または5に記載した発明によれば、高品質の固定スペーサを均一に有するカラーフィルタ基板または画素電極基板を少ない材料コストで得ることができ、得られるカラーフィルタ基板または画素電極基板は、液晶セル化工程に異常なく適合し、高品質の液晶セルの作製に寄与することができる。
【0023】
また、請求項4または6に記載した発明によれば、本発明のカラーフィルタ基板または画素電極基板を構成する固定スペーサに特に適した高さを安定的にかつ高品質で実現することができるので、得られるカラーフィルタ基板または画素電極基板は、液晶セル化工程に異常なく適合し、高品質の液晶セルの作製にさらに寄与することができる。
【0024】
また、請求項7に記載した発明によれば、品質の安定したカラーフィルタ基板または画素電極基板を具備する液晶表示装置を高品質に提供できる。
【0025】
また、請求項8または9に記載した発明によれば、高品質の固定スペーサを均一に有するカラーフィルタ基板または画素電極基板を少ない材料コストと安定的なプロセスで得ることができるので、高い歩留まりにより、生産性を向上することができる上、カラーフィルタ基板や画素電極基板の仕様変更に対しても、製造プロセス条件を大きく変更することなく容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のフォトマスクと対応するPS部との関係を説明するための断面概念図である。
【図2】カラーフィルタ基板にPS部を形成する一般的な方法を説明するための断面概念図である。
【図3】従来のPS部の断面形状が不具合を生じる状況を説明するための断面概念図である。
【図4】本発明のカラーフィルタ基板にPS部が最適な断面形状で形成される状況を説明するための断面概念図である。
【図5】本発明のフォトマスクにより、一個のPS部を形成するためのフォトマスクパターンの一例を説明するための平面概念図である。
【図6】本発明の液晶表示装置の一例を説明するための断面概念図である。
【図7】カラーフィルタ基板の一般的構成を説明するための断面概念図である。
【図8】カラーフィルタ基板上に形成されるPS部の高さを説明するための断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、図面に従って説明する。
【0028】
図7におけるカラーフィルタ基板の一般的構成を説明する断面概念図の中で、PS部を有しない従来のカラーフィルタ基板上に新たにPS部5を形成するための一般的方法を図2の断面概念図により説明する。透明基板1上にBMパターン2および着色パターン30、31、32を形成後、透明電極層4を形成したカラーフィルタ基板(PS部未形成)10上にポジ型フォトレジスト7を塗布形成する。ポジ型フォトレジスト7はPS部5を作るための材料であり、その高さ精度を含む形状品質や弾性特性を考慮して選択すれば良い。例えば、市販のノボラック樹脂系のポジ型フォトレジストを乾燥時の高さで3〜4μm程度塗布するが、これに限定されるものではない。塗布方法は、フォトレジストの使用効率が良く均一に塗布できれば、特に限定されない。
【0029】
図2において、ポジ型フォトレジスト7を塗布・乾燥したカラーフィルタ基板10に対向させて、フォトマスク20のパターン面を対向面と位置合わせしつつ接近させ、フォトマスク裏面からのレジスト感光用の照射光40により、露光する。露光工程では、一般的にカラーフィルタ製造に使用されるプロキシミティ露光の一括露光機により、高輝度で平行光を得やすい超高圧水銀ランプからのg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)を主波長として、露光ギャップ100〜150μm程度でフォトレジスト
感度に応じて露光される。その後、現像、洗浄、ベイクの工程を経て、フォトマスクの遮光部8に対応する突起状のパターンがPS部5としてフォトレジストで形成される。
【0030】
ここで、前述したPS部の形状不具合の状況を、図3に従って更に詳細に説明すると、平面サイズが30μm未満のPS部51、52においては、厚く塗布されたフォトレジスト膜に対する露光量やプロキシミティ露光方式の露光ギャップの変動が敏感に影響し、現像厚さ、正確にはベイク後のPS部の高さを変動させ、バラツキdとなって現れてしまう。このため、セルギャップ制御用として特に重要な一定高さを与える機能を損なう。また、平面サイズが30μm以上のPS部53においては、PS部の上面に凹みeが発生し、液晶セル作製工程における配向不良となって品質異常を引き起こす。
【0031】
上記の現象は、いずれもベイクによるパターン端部の盛り上がりが関与していることを発見した。例えば正八角形の遮光パターンの例で説明すれば、ベイクによる周縁端部の盛り上がりが大きい傾向が特に認められるが、平面サイズが30μm未満のPS部の場合には、必ずしもPS部上面の凹みにまで至らず、むしろ露光条件の変動が最終の高さバラツキに大きく影響する傾向が強い。一方、平面サイズが30μm以上のPS部の場合には、PS部上面の凹みの発生となる。以上の知見より、フォトマスクパターンの端部に露光条件の変動や熱的な変形を緩和させる領域を設けることが、上記の各平面サイズ別に共通の改善方策と成り得ることを考察し、実験によりその有効性を確認した。鋭意検討した結果、特に平面サイズが30μm以上のPS部を上面の凹み無く形成するのに好都合なフォトマスクの設計指針を見出すに至った。
【0032】
図1に、本発明のフォトマスクと対応するPS部との関係を説明するための断面概念図を示す。本発明のフォトマスクは、液晶表示装置におけるカラーフィルタを有するカラーフィルタ基板11、または、液晶表示装置のアクティブ駆動用のスイッチング素子および画素電極を有する画素電極基板12(後述する図6)に、ポジ型フォトレジスト7を用いて液晶セルギャップ制御用の固定スペーサ(PS部5)を形成するためのフォトマスク20であって、固定スペーサのフォトマスクパターンとして、遮光部8の周囲に全透過スリットを含むグレートーン部9を有することを特徴とするものである。
【0033】
フォトマスクの透明基板21は、図2に示すように、露光機からのレジスト感光用の照射光40の内、少なくとも、PS部5に用いるフォトレジスト7の感光性を利用する領域の波長の光を通すものであり、溶融石英ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。また、遮光部8は、従来より主にスパッタリング法で形成されている金属クロム膜、または金属クロムに酸化クロムを積層した低反射膜の薄膜をフォトエッチング法によりパターン化するのが一般的であり、エッチング手段はウェット方式でもドライ方式でも良い。また、グレートーン部9は、前記遮光部8と同一の材料で、かつ遮光部形成と同時の工程で、スリット等のパターン上の工夫により形成することができる。
【0034】
図4に、本発明のカラーフィルタ基板にPS部が最適な断面形状で形成される状況を説明するための断面概念図を示す。前記PS部5として、例えば正八角形の水平断面を有する台形状の突起物をカラーフィルタ基板11上に形成し、便宜的に多種サイズをPS部51、52、53のように、同一図面上に表示する。PS部の平面サイズを、下底部の対向する2辺間の距離を差渡しの径とみなして代表させると、この平面サイズが前述の2分類される各平面サイズの対象となる。本発明においては、PS部の平面サイズが30μm未満のPS部51、52と30μm以上のPS部53のいずれにも共通の改善方策を実施しているが、中でも、PS部の平面サイズが30μm以上のPS部53の形成に有力な方法である。上記の各PS部に対応するフォトマスク上のパターンの内、遮光部をそれぞれ81、82、83、グレートーン部をそれぞれ91、92、93と表す。
【0035】
PS部は液晶セルを構成するための固定スペーサとしての機能を発揮させる必要から、一定の高さおよび形状と弾性特性を均一に有することが望まれる。そのため、平面サイズが小さ過ぎることは、機能上からも製作歩留まりの観点からも好ましくない。実際には、固定スペーサのサイズが20μm以上であることが望ましい。
【0036】
本発明のフォトマスク20で、カラーフィルタ基板11上のPS部5、51、52、53に対応するパターンは、図1、および図4に示すとおり、遮光部8、81、82、83のパターンを覆うようにグレートーン部9、91、92、93を形成している。図5に、その構造を平面概念図を用いて説明する。例えば、正八角形の遮光部8の周囲を全透過スリットを含むグレートーン部9で取り囲むように覆う。フォトマスクのパターンがPS部の形成にその効果を発揮するためには、遮光部とグレートーン部のサイズも限定した方が良い。実験的検討の結果、平面サイズを30μm〜50μmとして、しかも上面の凹みを発生させないようにPS部を形成するためのフォトマスクパターンは、前記遮光部の周囲に設けるグレートーン部の全透過スリットの幅cを5〜7μmとし、前記遮光部とグレートーン部の全体サイズaを30μm以上とすることが最適であるとの知見を得た。
【0037】
なお、グレートーン部の遮光線幅wを1〜2μmと細くすることを前提として、遮光部サイズbは、フォトマスクパターンにおける遮光部とグレートーン部の全体サイズaと遮光部サイズbとの間に、フォトレジストで形成されるPS部の平面サイズpが位置する関係となる。すなわち、数式で表すと、a≧p≧b という関係にある。
【0038】
前記固定スペーサとして設けるPS部の平面形状は、前述の正八角形や一般的な円形に限定されるものではなく、凸型の単純多角形または円、長円等の円型であれば、使用できる。ここで、凸型とは、多角形の全ての頂点の内角が180度未満であるものを言う。また、単純多角形とは、互いに交差しない閉じた多辺連続チェインで囲まれた領域を言う。上記の一般化した形状において、PS部の平面サイズpとは、前記PS部の輪郭内に収納可能な最大円の直径で定義することができる。
【0039】
本発明のフォトマスクは、上記の検討の結果、前記固定スペーサの平面形状を凸型の単純多角形または円、長円等の円型とし、そのサイズを前記固定スペーサの輪郭内に収納可能な最大円の直径で表して、30〜50μmに形成するためのフォトマスクであって、前記遮光部の周囲に設けるグレートーン部の全透過スリットの幅を5〜7μmとし、前記遮光部とグレートーン部の全体サイズを30μm以上とすることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクとなる。
【0040】
前記固定スペーサとして設けるPS部の高さは、液晶表示装置のセルギャップを考慮して、2.0〜3.8μmとするのが適当である。但し、図8のカラーフィルタ基板上に形成されるPS部の高さを説明するための断面概念図に示すように、BMパターン2上に着色パターン31、32が重なって盛り上がり形成され、その盛り上がり部分に透明電極層4を介してPS部5を形成する場合は、PS部の高さfは前記盛り上がり部分の高さgだけ低く設定することができる。すなわち、最も低位置にあるカラーフィルタ画素中央部の最表面からPS部上底までの高さhを上記の2.0〜3.8μmとすれば、前記盛り上がり部分が無い場合と同等になる。
【0041】
本発明のフォトマスクを用いて、前記固定スペーサをカラーフィルタ基板上にフォトリソグラフィー方式で選択的に設けることができる。露光工程では100〜150μmの露光ギャップを保持したプロキシミティ露光方式が適している。その結果、液晶表示装置を構成する最適なカラーフィルタ基板を提供できる。
【0042】
上記の説明では、主にカラーフィルタ基板上にPS部を形成する場合について述べたが
、画素電極基板上にPS部を形成する場合も、同様に本発明のフォトマスクを用いて、PS部を形成するポジ型フォトレジストをフォトリソグラフィー法により加工して形成することができる。
【0043】
また、カラーフィルタ基板上の場合と同様に、画素電極基板上においても、PS部の画素電極中央部最表面からの高さを2.0〜3.8μmとすることが、液晶表示装置のセルギャップを考慮して最適である。
【0044】
図6は、本発明の液晶表示装置の一例を説明するための断面概念図である。図では、透明基板41、アクティブ駆動用スイッチング素子13(通常はTFTを使用)、画素電極14にPS部5を形成した画素電極基板12上に、液晶配向のための配向膜15を形成し、対向側にはカラーフィルタ基板(PS部未形成)10の表面に配向膜15を形成して配置し、前記両基板間に液晶16を封入して封止剤17にてセル構造を閉じる。両基板の外側には偏光板18等の光学層を適宜配し、画素電極基板側の外部にバックライト19を設ける。本発明に係るPS部5の形成工程以外は、通常の液晶表示装置の製造工程と同様に行うことができる。
【0045】
上記のように、本発明のカラーフィルタ基板または画素電極基板を用いて、液晶表示装置を作製することができる。本発明と同様の構成のカラーフィルタ基板または画素電極基板を従来の方法で提供されて作製される液晶表示装置の場合と同様に作製されるが、本発明では、品質の安定した液晶表示装置を高品質に提供できる。例えば、カラーフィルタ基板または画素電極基板のPS部の品質が、高さのバラツキが無く、また、平面サイズが大きい場合のPS部上面の凹みの発生が無いため、液晶表示装置を作製する過程で、配向膜塗布における品質異常を引き起こさない。
【符号の説明】
【0046】
1、21、41・・・透明基板
2・・・BMパターン
4・・・透明電極層
5・・・PS部
7・・・ポジ型フォトレジスト
8・・・遮光部
9・・・グレートーン部
10・・・カラーフィルタ基板(PS部未形成)
11・・・カラーフィルタ基板(PS部形成)
12・・・画素電極基板
13・・・アクティブ駆動用スイッチング素子
14・・・画素電極
15・・・配向膜
16・・・液晶
17・・・封止剤
18・・・偏光板
19・・・バックライト
20・・・フォトマスク
30、31、32・・・着色パターン
40・・・レジスト感光用の照射光
51、52、53・・・PS部
81、82、83・・・遮光部
91、92、93・・・グレートーン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置におけるカラーフィルタを有するカラーフィルタ基板、または、液晶表示装置のアクティブ駆動用のスイッチング素子および画素電極を有する画素電極基板に、ポジ型フォトレジストを用いて液晶セルギャップ制御用の固定スペーサを形成するためのフォトマスクであって、固定スペーサのフォトマスクパターンとして、遮光部の周囲に全透過スリットを含むグレートーン部を有することを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
前記固定スペーサの平面形状を凸型の単純多角形または円、長円等の円型とし、そのサイズを前記固定スペーサの輪郭内に収納可能な最大円の直径で表して、30〜50μmに形成するため、前記全透過スリットの幅を5〜7μmとし、前記遮光部とグレートーン部の全体サイズを30μm以上とすることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフォトマスクを用い、前記固定スペーサをカラーフィルタ基板上に選択的に設けたことを特徴とするカラーフィルタ基板。
【請求項4】
前記固定スペーサのカラーフィルタ画素中央部最表面からの高さを、2.0〜3.8μmとすることを特徴とする請求項3に記載のカラーフィルタ基板。
【請求項5】
請求項1または2に記載のフォトマスクを用い、前記固定スペーサを画素電極基板上に選択的に設けたことを特徴とする画素電極基板。
【請求項6】
前記固定スペーサの画素電極中央部最表面からの高さを、2.0〜3.8μmとすることを特徴とする請求項5に記載の画素電極基板。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載のカラーフィルタ基板または画素電極基板を具備することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載のフォトマスクを用い、プロキシミティ露光方式によりパターン形成し、前記固定スペーサをカラーフィルタ基板上に選択的に設けることを特徴とするカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載のフォトマスクを用い、プロキシミティ露光方式によりパターン形成し、前記固定スペーサを画素電極基板上に選択的に設けることを特徴とする画素電極基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−145376(P2011−145376A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4764(P2010−4764)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】