説明

フォトマスクブランク及びフォトマスクの製造方法、並びに半導体装置の製造方法

【課題】遮光膜の深さ方向でのドライエッチング速度を最適化させ良好なパターン精度が得られるフォトマスクブランクを提供する。
【解決手段】本発明のフォトマスクブランクは、透光性基板上に遮光膜を有し、該遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、遮光膜をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のフォトマスクブランクであって、上記遮光膜の透光性基板側におけるドライエッチング速度を、遮光膜の表面側におけるドライエッチング速度よりも遅くさせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクブランク上に形成されるレジスト膜を電子線描画する際に最適な遮光膜、及び、遮光パターン形成のためのドライエッチング処理用に遮光膜の膜特性を最適化させたフォトマスクブランク及びフォトマスクの製造方法、並びに半導体装置の製造方法に関する。また本発明は、遮光膜パターン形成のためのドライエッチング処理用に遮光膜のドライエッチング速度を最適化させたフォトマスクブランク及びフォトマスクの製造方法、並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚ものフォトマスクと呼ばれている基板が使用される。このフォトマスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる遮光性の微細パターンを設けたもので、このフォトマスクの製造には、ガラス基板等の透光性基板上に遮光膜を有するフォトマスクブランクが用いられる。このフォトマスクブランクを用いたフォトマスクの製造は、フォトマスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン露光(又はパターン描画)を施す露光工程(又は描画工程)と、所望のパターン露光(又はパターン描画)に従って前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する現像工程と、レジストパターンに沿って前記遮光膜をエッチングするエッチング工程と、残存したレジストパターンを剥離除去する工程とを有して行われている。上記現像工程では、フォトマスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し所望のパターン露光(又はパターン描画)を施した後に現像液を供給して、現像液に可溶なレジスト膜の部位を溶解し、レジストパターンを形成する。また、上記エッチング工程では、このレジストパターンをマスクとして、たとえばウェットエッチングによって、レジストパターンの形成されていない遮光膜が露出した部位を溶解し、これにより所望のマスクパターンを透光性基板上に形成する。こうして、フォトマスクが出来上がる。
【0003】
特許文献1には、ウェットエッチングに適したマスクブランクとして、透明基板上に、クロム炭化物を含有するクロム膜を遮光膜として備えたフォトマスクブランクが記載されている。また、特許文献2には、同じくウェットエッチングに適したマスクブランクとして、透明基板上に、ハーフトーン材料膜と金属膜との積層膜を有し、この金属膜は、表面側から透明基板側に向かってエッチングレートが異なる材料で構成される領域が存在しており、例えばCrN/CrCの金属膜(透明基板側から順にCrN、CrCが積層された金属膜。以下同じ。)とCrONの反射防止膜からなるハーフトーン型位相シフトマスクブランクが記載されている。
【0004】
ところで、半導体装置のパターンを微細化するに当たっては、フォトマスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィーで使用される露光光源波長の短波長化が必要となる。半導体装置製造の際の露光光源としては、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、更にはF2エキシマレーザー(波長157nm)へと短波長化が進んでいる。
その一方で、フォトマスクやフォトマスクブランクにおいては、フォトマスクに形成されるマスクパターンを微細化するに当たっては、フォトマスクブランクにおけるレジスト膜の薄膜化と、フォトマスク製造の際のパターニング手法として、従来のウェットエッチングに替わってドライエッチング加工が必要になってきている。
【0005】
しかし、レジスト膜の薄膜化とドライエッチング加工は、以下に示す技術的な問題が生じている。
一つは、フォトマスクブランクのレジスト膜の薄膜化を進める際、遮光膜の加工時間が1つの大きな制限事項となっていることである。遮光膜の材料としては、一般にクロム系の材料が用いられ、クロムのドライエッチング加工では、エッチングガスに塩素ガスと酸素ガスの混合ガスが用いられている。レジストパターンをマスクにして遮光膜をドライエッチングでパターニングする際、レジストは有機膜でありその主成分は炭素であるので、ドライエッチング環境である酸素プラズマに対しては非常に弱い。遮光膜をドライエッチングでパターニングする間、その遮光膜上に形成されているレジストパターンは十分な膜厚で残っていなければならない。一つの指標として、マスクパターンの断面形状を良好にするために、ジャストエッチングタイムの2倍(100%オーバーエッチング)程度を行っても残存するようなレジスト膜厚にしなければならない。例えば、一般には、遮光膜の材料であるクロムと、レジスト膜とのエッチング選択比は1以下となっているので、レジスト膜の膜厚は、遮光膜の膜厚の2倍以上の膜厚が必要となることになる。遮光膜の加工時間を短くする方法として、遮光膜の薄膜化が考えられる。遮光膜の薄膜化については、特許文献3に提案されている。
【0006】
特許文献3には、フォトマスクの製造において、透明基板上のクロム遮光膜の膜厚を薄膜化することにより、エッチング時間を短くでき、クロムパターンの形状を改善することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭62−32782号公報
【特許文献2】特許第2983020号公報
【特許文献3】特開平10−69055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、遮光膜の膜厚を薄くしようとすると、遮光性が不十分となるため、このようなフォトマスクを使用してパターン転写を行っても、転写パターン不良が発生してしまう。遮光膜は、その遮光性を十分確保するためには、所定の光学濃度が必要となるため、上記特許文献3のように遮光膜の膜厚を薄くするといっても、自ずと限界が生じる。
また、上記特許文献1に記載されたクロム炭化物を含有するクロム膜を遮光膜とする場合、ドライエッチング速度が低下する傾向があり、ドライエッチングによる遮光膜の加工時間の短縮化を図ることができない。
【0009】
さらに、上記特許文献2に記載された膜厚方向でウェットエッチングレートが異なるCrN/CrCの金属膜においては、CrC膜をCrN膜よりも厚くする必要があった。その理由は、第1に、上層のCrC膜と下層のCrN膜はいずれもウェットエッチングレートが良好であるが、下層中に窒素が含まれていると、ウェットエッチング処理した場合、アンダーカットが大きくなるという問題が生じるため、CrN膜の膜厚を相対的に薄くする必要があったからである。第2に、従来露光装置において使用されている波長であるi線(365nm)やKrFエキシマレーザー(248nm)においては、CrN膜の吸収係数が小さいため、遮光膜として所望の光学濃度を得るには、遮光性の高いCrC膜を厚めにする必要があったからである。第3に、遮光膜上にレジストパターンを形成するための露光(描画)は電子線を用いるのが一般的であるが、特許文献2に記載されたCrN/CrCの金属膜上に形成された酸素を含むCrON膜は一般に絶縁性が高く、その際のチャージアップを抑制するためにはCrC膜を厚めにして遮光膜のシート抵抗を小さくする必要があったからである。しかし、特許文献2のマスクブランクは、上記金属膜中の炭素含有率が高くなり、ドライエッチングによりパターニングを行う場合、エッチング速度が低下するので、遮光膜の加工時間を短縮できないという問題があり、ドライエッチング処理用には好適ではない。また、特許文献2のマスクブランクをドライエッチング処理に用いた場合、遮光膜の深さ方向に向かって、最初はドライエッチング速度が速く、主にCrC膜の領域では遅くなり、最後にCrN膜の領域では再び速くなるため、パターンの断面形状を劣化させたり、グローバルローディング現象が起こりやすいという問題がある。また、近年のパターン微細化に対応するため、レジストパターンの解像性を向上させるために、解像性の高い化学増幅型レジストが使用されてきている。そしてこの化学増幅型レジストを電子線により描画する際に、電子線の加速電圧を50keV以上の加速電圧で電子線描画するため、遮光膜の導電性を向上させチャージアップを確実に抑制する必要がある。
【0010】
そこで本発明は、従来の問題点を解決するべくなされたものであり、その目的とするところは、第一に、遮光膜上にレジストパターンを形成するための電子線描画によるチャージアップを抑制できるフォトマスクブランク、及びフォトマスクの製造方法を提供することである。第二に、遮光膜の深さ方向でのドライエッチング速度を最適化させることでグローバルローディング現象を低減でき、良好なパターン精度が得られるフォトマスクブランク及びフォトマスクの製造方法を提供することである。第三に、遮光膜のドライエッチング速度を高めることで、ドライエッチング時間が短縮でき、レジスト膜の膜減りを低減することができ、その結果、レジスト膜を薄膜化して解像性、パターン精度(CD精度)を向上でき、ドライエッチング時間の短縮化による断面形状の良好な遮光膜のパターンが形成することができるフォトマスクブランク、及びフォトマスクの製造方法を提供することである。第四に、遮光膜に必要な遮光性能を有しつつ、遮光膜の薄膜化により、断面形状の良好な遮光膜のパターンが形成することができるフォトマスクブランク、及びフォトマスクの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)透光性基板上に主にクロムを含む材料からなる遮光膜を有するフォトマスクブランクにおいて、前記遮光膜は、水素を含む材料からなることを特徴とするフォトマスクブランクである。
(構成2)前記遮光膜に含まれる水素の含有量は、1原子%以上であることを特徴とする構成1記載のフォトマスクブランクである。
(構成3)前記遮光膜は、該遮光膜表面側から前記透光性基板側の深さ方向の略全域に水素が含まれていることを特徴とする構成1又は2記載のフォトマスクブランクである。
(構成4)前記遮光膜は、該遮光膜表面側から前記透光性基板側に向かって水素の含有量が異なる領域を有することを特徴とする構成1乃至3の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成5)前記遮光膜は、該遮光膜表面側から前記透光性基板側に向かって連続的に又は段階的に水素の含有量が減少していることを特徴とする構成4記載のフォトマスクブランクである。
(構成6)前記遮光膜の上層部に酸素を含む反射防止層を有することを特徴とする構成1乃至5の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成7)前記遮光膜の膜厚は、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定されていることを特徴とする構成1乃至6の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成8)前記フォトマスクブランクは、前記遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のフォトマスクブランクであることを特徴とする構成1乃至7の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成9)前記透光性基板と前記遮光膜との間に、ハーフトーン型位相シフター膜が形成されていることを特徴とする構成1乃至8の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成10)前記遮光膜の膜厚は、前記ハーフトーン型位相シフター膜との積層構造において、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定されていることを特徴とする構成9記載のフォトマスクブランクである。
(構成11)構成1乃至10の何れか一に記載のフォトマスクブランクにおける前記遮光膜をパターニングして前記透光性基板上に遮光膜パターンを形成することを特徴とするフォトマスクの製造方法である。
(構成12)構成9又は10に記載のフォトマスクブランクにおける前記遮光膜をエッチングによりパターニングして遮光膜パターンを形成した後、該遮光膜パターンをマスクにして、エッチングにより前記ハーフトーン型位相シフター膜をパターニングして前記透光性基板上にハーフトーン型位相シフター膜パターンを形成することを特徴とするフォトマスクの製造方法である。
(構成13)前記遮光膜のパターニングは、前記遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により行うことを特徴とする構成11又は12記載のフォトマスクの製造方法である。
(構成14)前記遮光膜のパターニングは、前記遮光膜上に電子線描画用レジスト膜を形成し、該電子線描画用レジストに所定の電子線描画及び現像処理によって形成されるレジストパターンをマスクにしてドライエッチング処理により行うことを特徴とする構成11乃至13の何れか一に記載のフォトマスクの製造方法である。
(構成15)構成11乃至14の何れか一に記載のフォトマスクにおける前記遮光膜パターン又は前記ハーフトーン型位相シフター膜パターンをフォトリソグラフィー法により、半導体基板上にパターンを転写することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0012】
(構成16)透光性基板上に、遮光膜をスパッタリングにより形成するフォトマスクブランクの製造方法において、前記フォトマスクブランクは、前記遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のフォトマスクブランクであって、前記遮光膜は、前記透光性基板側に形成する層の成膜速度よりも、該遮光膜の表面側に形成する層の成膜速度を遅くして形成することを特徴とするフォトマスクブランクの製造方法である。
(構成17)前記遮光膜の透光性基板側に形成する層と前記遮光膜の表面側に形成する層の成膜速度の比率(透光性基板側に形成する層:遮光膜の表面側に形成する層)を、2.5:1〜4.0:1とすることを特徴とする構成16記載のフォトマスクブランクの製造方法である。
(構成18)前記遮光膜はクロムを含む材料からなり、更に、酸素と窒素の少なくとも一方の元素を含むことを特徴とする構成16又は17記載のフォトマスクブランクの製造方法である。
(構成19)前記遮光膜の上層部に酸素を含む反射防止層を形成することを特徴とする構成16乃至18の何れか一に記載のフォトマスクブランクの製造方法である。
(構成20)前記遮光膜の表面側に形成する層が、前記反射防止層であることを特徴とする構成19記載のフォトマスクブランクの製造方法である。
(構成21)前記遮光膜の膜厚は、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定されていることを特徴とする構成16乃至20の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成22)前記透光性基板と前記遮光膜との間に、ハーフトーン型位相シフター膜を形成することを特徴とする構成16乃至21の何れか一に記載のフォトマスクブランクの製造方法である。
(構成23)前記遮光膜の膜厚は、前記ハーフトーン型位相シフター膜との積層構造において、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定されていることを特徴とする構成22記載のフォトマスクブランクの製造方法である。
(構成24)構成16乃至23の何れか一に記載のフォトマスクブランクにおける前記遮光膜をドライエッチングによりパターニングして前記透光性基板上に遮光膜パターンを形成することを特徴とするフォトマスクの製造方法である。
(構成25)構成22又は23に記載のフォトマスクブランクにおける前記遮光膜をドライエッチングによりパターニングして遮光膜パターンを形成した後、該遮光膜パターンをマスクにして、ドライエッチングにより前記ハーフトーン位相シフター膜パターンを形成することを特徴とするフォトマスクの製造方法である。
(構成26)構成24又は25に記載のフォトマスクにおける前記遮光膜パターン又は前記ハーフトーン型位相シフター膜パターンをフォトリソグラフィー法により、半導体基板上にパターンを転写することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0013】
(構成27)透光性基板上に遮光膜を有するフォトマスクブランクにおいて、前記フォトマスクブランクは、前記遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のフォトマスクブランクであって、前記遮光膜の透光性基板側におけるドライエッチング速度を、前記遮光膜の表面側におけるドライエッチング速度よりも遅くさせるようにしたことを特徴とするフォトマスクブランクである。
(構成28)前記遮光膜の表面側から透光性基板側に向かってドライエッチング速度を遅くさせるようにしたことを特徴とする構成27記載のフォトマスクブランクである。
(構成29)前記遮光膜は、主にクロムを含む材料からなることを特徴とする構成27又は28記載のフォトマスクブランクである。
(構成30)前記遮光膜は、更に酸素を含み、表面側から透光性基板側に向かって酸素の含有量が減少していることを特徴とする構成27乃至29の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成31)前記遮光膜は、更に窒素を含むことを特徴とする構成27乃至30の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成32)前記遮光膜は、表面側から透光性基板側に向かう膜厚方向の略全域に窒素が含まれていることを特徴とする構成31記載のフォトマスクブランクである。
(構成33)前記遮光膜の上層部に酸素を含む反射防止層を形成することを特徴とする構成27乃至32の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成34)前記透光性基板と前記遮光膜との間に、ハーフトーン型位相シフター膜が形成されていることを特徴とする構成27乃至33の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成35) 透光性基板上に遮光膜を有するフォトマスクブランクにおいて、前記フォトマスクブランクは、前記遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のフォトマスクブランクであって、前記遮光膜は、表面側から透光性基板側に向かう膜厚方向の略全領域に窒素が含まれ、且つ、表面側から透光性基板側に向かって酸素の含有量が減少していることを特徴とするフォトマスクブランクである。
(構成36)前記遮光膜は、主にクロムを含む材料からなることを特徴とする構成35記載のフォトマスクブランクである。
(構成37)前記遮光膜は、該遮光膜中に含まれるクロムの割合を1としたときに、前記窒素は、表面側から透光性基板側に向かって0.5〜0.8の割合で含有されていることを特徴とする構成36記載のフォトマスクブランクである。
(構成38)前記遮光膜の上層部に酸素を含む反射防止層を形成することを特徴とする構成35乃至37の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成39)前記透光性基板と前記遮光膜との間に、ハーフトーン型位相シフター膜が形成されていることを特徴とする構成35乃至38の何れか一に記載のフォトマスクブランクである。
(構成40)構成27乃至39の何れか一に記載のフォトマスクブランクにおける前記遮光膜をドライエッチングによりパターニングして前記透光性基板上に遮光膜パターンを形成することを特徴とするフォトマスクの製造方法である。
(構成41)構成34又は39に記載のフォトマスクブランクにおける前記遮光膜をドライエッチングによりパターニングして遮光膜パターンを形成した後、該遮光膜パターンをマスクにして、ドライエッチングにより前記ハーフトーン型位相シフター膜をパターニングして前記透光性基板上にハーフトーン型位相シフター膜パターンを形成することを特徴とするフォトマスクの製造方法である。
(構成42)構成40又は41に記載のフォトマスクにおける前記遮光膜パターン又は前記ハーフトーン型位相シフター膜パターンをフォトリソグラフィー法により、半導体基板上にパターンを転写することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0014】
構成1にあるように、本発明のフォトマスクブランクは、透光性基板上に主にクロムを含む材料とする遮光膜を有するフォトマスクブランクにおいて、前記遮光膜は、水素を含む材料としている。
このように、主にクロムを含む材料からなる遮光膜中に水素を含むことにより、遮光膜のシート抵抗を小さくして、導電性を向上させることができる。これにより、遮光膜上にレジストパターンを形成するための電子線によるパターン描画を行っても、遮光膜に電荷がたまりチャージアップするのを抑制することができ、正確なパターン描画ができなかったり、放電による遮光膜パターン破壊を防止することができる。また、ドライエッチング処理に適した遮光膜とするため、ドライエッチング速度を低下させる炭素の含有量を低減させ、膜厚も所定の膜厚に設定された遮光膜としても、遮光膜中に水素を含むことにより、遮光膜の導電性を向上することができる。また、遮光膜中に水素を含むことにより、ドライエッチング時間を短縮でき、レジスト膜の膜減りを低減することができる。その結果、レジスト膜の薄膜化が可能となり、パターンの解像性、パターン精度(CD精度)を向上することができる。更に、ドライエッチング時間の短縮化により、断面形状の良好な遮光膜パターンが形成できるフォトマスクブランクを提供することができる。
【0015】
また、遮光膜の導電性、及びドライエッチング時間の短縮化の点で、構成2にあるように、遮光膜に含まれる水素の含有量は、1原子%以上が好ましい。
また、遮光膜の導電性、及びドライエッチング時間の短縮化の点で、構成3にあるように、前記遮光膜は、該遮光膜表面側から透光性基板側の深さ方向の略全域に水素が含まれていることが好ましい。
構成4にあるように、本発明のフォトマスクブランクは、前記遮光膜は、該遮光膜表面側から前記透光性基板側に向かって水素の含有量が異なる領域を有する構成としても良い。例えば、遮光膜の表面側の領域に水素の含有量を多くして導電性を高め、チャージアップの抑制効果を向上させることができる。また、構成5にあるように、遮光膜の表面側から透光性基板側(つまり深さ方向)に向かって例えば水素の含有量が連続的に又は段階的に減少している組成傾斜膜とすることにより、ドライエッチング速度を遮光膜の深さ方向に向かって遅くさせることができる。これによって、ドライエッチング時のグローバルローディング現象による線幅エラーを低減することができる。
【0016】
構成6にあるように、前記遮光膜はその上層部に酸素を含む反射防止層を有することができる。このような反射防止層を有することにより、露光波長における反射率を低反射率に抑えることができるので、マスクパターンを被転写体に転写するときに、投影露光面との間での多重反射を抑制し、結像特性の低下を抑制することができる。また、フォトマスクブランクやフォトマスクの欠陥検査に用いる波長(例えば、257nm、364nm、488nm等)に対する反射率を低く抑えることができるので、欠陥を検出する精度が向上する。
構成7にあるように、本発明のフォトマスクブランクにおいては、例えばバイナリマスク用フォトマスクブランクの場合、前記遮光膜の膜厚は、露光光に対して光学濃度2.5以上となるように設定される。
また、構成8にあるように、本発明のフォトマスクブランクは、前記遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のフォトマスクブランクとする。遮光膜中に水素を含むことにより、ドライエッチング速度を高めることができるので、エッチング時間が短縮でき、レジスト膜の膜減りを低減することができる。その結果、レジスト膜を薄膜化して解像性、パターン精度(CD精度)を向上でき、エッチング時間の短縮化による断面形状の良好な遮光膜のパターンを形成することができる。
【0017】
また、構成9にあるように、透光性基板と遮光膜との間に、ハーフトーン型位相シフター膜を形成しても良い。
その場合、構成10にあるように、遮光膜はハーフトーン型位相シフター膜との積層構造において、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定される。
構成11にあるように、構成1乃至10の何れか一に記載のフォトマスクブランクにおける遮光膜をパターニングして透光性基板上に遮光膜パターンを形成するフォトマスクの製造方法によれば、パターンの解像性及び、位置精度が良好で且つ、断面形状の良好な遮光膜パターンが形成されたフォトマスクを得ることができる。
また、構成12にあるように、構成9又は10に記載のフォトマスクブランクにおける遮光膜をエッチングによりパターニングして遮光膜パターンを形成した後、遮光膜パターンをマスクにして、エッチングによりハーフトーン型位相シフター膜をパターニングして、透光性基板上にハーフトーン型位相シフター膜パターンを形成するフォトマスクの製造方法によれば、断面形状の良好なハーフトーン型位相シフター膜パターンを精度良く形成されたフォトマスクを得ることができる。
【0018】
構成13にあるように、前記遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により行うフォトマスクの製造方法によれば、ドライエッチング時間を短縮でき、断面形状の良好な遮光膜パターンが精度良く形成されたフォトマスクを得ることができる。
構成14にあるように、遮光膜のパターニングを、前記遮光膜上に電子線描画用レジスト膜を形成し、電子線描画用レジスト膜に所定の電子線描画及び現像処理によって形成されるレジストパターンをマスクにしてドライエッチング処理により行うフォトマスクの製造方法によれば、遮光膜上にレジストパターンを形成するための電子線によるパターン描画を行っても、遮光膜に電荷がたまりチャージアップするのを抑制することができ、正確なパターン描画ができなかったり、放電による遮光膜パターン破壊を防止することができる。
また、構成15にあるように、構成14又は15に記載のフォトマスクにおける前記遮光膜パターン又は前記ハーフトーン型位相シフター膜パターンをフォトリソグラフィー法により、半導体基板上にパターンを転写するので、半導体基板上に形成される回路パターンにより欠陥のない半導体装置を製造することができる。
【0019】
構成16にあるように、本発明のフォトマスクブランクの製造方法は、透光性基板上に、遮光膜をスパッタリングにより形成するフォトマスクブランクの製造方法において、前記フォトマスクブランクは、前記遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のフォトマスクブランクであって、前記遮光膜は、前記透光性基板側に形成する層の成膜速度よりも、該遮光膜の表面側に形成する層の成膜速度を遅くして形成する。
このように、遮光膜の透光性基板側に形成する層の成膜速度よりも、遮光膜の表面側に形成する層の成膜速度を遅くすることで、遮光膜の深さ方向(つまり遮光膜の表面側から透光性基板側)に向かってドライエッチング速度を遅くさせるように制御することができる。これにより、グローバルローディング現象を低減させ、パターン精度を向上させることができる。
透光性基板側のドライエッチング速度が、表面側のドライエッチング速度に近づくにつれ、パターン粗密によるCDバイアス差、即ち、グローバルローディングエラーが大きくなる。そのため、透光性基板側のドライエッチング速度を、表面側のドライエッチング速度に対し適度に遅くすると、グローバルローディングエラーが低減し、パターン精度を向上させることができる。
具体的には、構成17にあるように、遮光膜の透光性基板側に形成する層と遮光膜の表面側に形成する層の成膜速度を2.5:1〜4.0:1とすると好適である。
【0020】
構成18にあるように、本発明によるフォトマスクブランクは、前記遮光膜はクロムを含む材料からなり、更に、酸素と窒素の少なくとも一方の元素を含むことが好ましい。クロムとこれらの元素とを含む材料からなる遮光膜は、クロム単体からなる遮光膜よりもドライエッチング速度が速くなり、ドライエッチング時間の短縮化を図ることができる。ドライエッチング速度を速くできることで、遮光膜のパターニングに必要なレジスト膜の膜厚を薄くすることができ、遮光膜のパターン精度(CD精度)が良好になる。また、このような元素を含むクロム系材料の遮光膜は、パターンの微細化を達成する上で有効な200nm以下の露光波長においては、膜厚を厚くしなくてもある程度の薄膜で所望の光学濃度(例えば2.5以上であることが好ましい)を得ることができる。つまり、遮光膜に必要な遮光性能を有しつつ、遮光膜の薄膜化を達成することが可能になる。
【0021】
構成19にあるように、前記遮光膜はその上層部に酸素を含む反射防止層を形成することができる。このような反射防止層を形成することにより、露光波長における反射率を低反射率に抑えることができるので、マスクパターンを被転写体に転写するときに、投影露光面との間での多重反射を抑制し、結像特性の低下を抑制することが出来る。また、フォトマスクブランクやフォトマスクの欠陥検査に用いる波長(例えば257nm、364nm、488nm等)に対する反射率を低く抑えることができるので、欠陥を検出する精度が向上する。
構成20にあるように、遮光膜の上層部に酸素を含む反射防止膜を形成する場合、前記透光性基板側に形成する層の成膜速度よりも成膜速度を遅くしたステップにより反射防止層を形成することができる。酸素を含む反射防止層は、酸素含有ガス雰囲気中で成膜されるが、例えば酸素含有ガス雰囲気中で反応性スパッタによりCrO膜を成膜する場合、成膜装置のパワーを上げて成膜速度を速めると、膜の欠陥が増加するという問題が発生するため、膜の欠陥を低減するためには成膜速度を遅くすることが好適である。
【0022】
構成21にあるように、本発明のフォトマスクブランクにおいては、例えばバイナリマスク用フォトマスクブランクの場合、前記遮光膜の膜厚は、露光光に対して光学濃度2.5以上となるように設定される。
また、構成22にあるように、透光性基板と遮光膜との間に、ハーフトーン型位相シフター膜を形成しても良い。
その場合、構成23にあるように、遮光膜は、ハーフトーン型位相シフター膜との積層構造において、露光光に対して光学濃度2.5以上となるように設定される。
構成24にあるように、構成16乃至23の何れか一に記載の製造方法により得られるフォトマスクブランクにおける遮光膜をドライエッチング処理を用いてパターニングする工程を有するフォトマスクの製造方法によれば、ドライエッチング時間を短縮でき、断面形状の良好な遮光膜パターンが精度良く形成されたフォトマスクを得ることができる。
構成25にあるように、構成22又は23に記載のフォトマスクブランクにおける前記遮光膜をドライエッチングによりパターニングして遮光膜パターンを形成した後、該遮光膜パターンをマスクにして、ドライエッチングにより前記ハーフトーン位相シフター膜パターンを形成するフォトマスクの製造方法によれば、断面形状の良好なハーフトーン型位相シフター膜パターンを精度良く形成されたフォトマスクを得ることができる。
構成26にあるように、構成24又は25に記載のフォトマスクにおける前記遮光膜パターン又は前記ハーフトーン型位相シフター膜パターンをフォトリソグラフィー法により、半導体基板上にパターンを転写するので、半導体基板上に形成される回路パターンに欠陥のない半導体装置を製造することができる。
【0023】
構成27にあるように、本発明のフォトマスクブランクは、透光性基板上に遮光膜を有するフォトマスクブランクにおいて、前記フォトマスクブランクは、前記遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のフォトマスクブランクであって、前記遮光膜の透光性基板側におけるドライエッチング速度を、前記遮光膜の表面側におけるドライエッチング速度よりも遅くさせるようにした。
このように、遮光膜の透光性基板側におけるドライエッチング速度を、遮光膜の表面側におけるドライエッチング速度よりも遅くすることで、グローバルローディング現象を低減させ、パターン精度やパターンの断面形状を向上させることができる。
遮光膜における透光性基板側のドライエッチング速度が、表面側のドライエッチング速度に近づくにつれ、パターン粗密によるCDバイアス差、即ち、グローバルローディングエラーが大きくなる。そのため、遮光膜の透光性基板側のドライエッチング速度を、表面側のドライエッチング速度に対し適度に遅くすると、グローバルローディングエラーが低減し、パターン精度を向上させることができる。
【0024】
構成28にあるように、遮光膜のドライエッチング速度は、遮光膜の表面側から透光性基板側に向かってドライエッチング速度を遅くすると好適である。例えば、遮光膜のドライエッチング速度を、遮光膜の表面側から透光性基板側に向かって段階的及び/又は連続的にドライエッチング速度を遅くすることができる。
また、遮光膜の材料は、露光光に対して遮光機能を有する材料であれば良く、例えば、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン等の遷移金属を含む材料とすることができる。構成29にあるように、遮光膜の材料は、主にクロムを含む材料が好適である。
構成30にあるように、本発明のフォトマスクブランクは、更に酸素を含むことが好ましく、この場合、遮光膜の表面側から透光性基板側(深さ方向)に向かって酸素の含有量が減少している領域を有することが好適である。クロムと酸素を含む材料からなる遮光膜は、クロム単体からなる遮光膜よりもドライエッチング速度が速くなり、ドライエッチング時間の短縮化を図ることができる。ドライエッチング速度を速くできることで、遮光膜のパターニングに必要なレジスト膜の膜厚を薄くすることができ、遮光膜のパターン精度(CD精度)が良好になる。そして、遮光膜の深さ方向に向かって酸素の含有量が減少していることにより、遮光膜の深さ方向に向かってドライエッチング速度を遅くさせるように制御することができるので、グローバルローディング現象を低減させ、パターン精度を向上させることができる。
【0025】
構成31にあるように、本発明のフォトマスクブランクは、更に窒素を含むことが好ましい。クロムを含む材料からなる遮光膜中に更に窒素を含むことにより、クロム単体からなる遮光膜よりもドライエッチング速度が速くなり、ドライエッチング時間の短縮化を図ることができる。ドライエッチング速度を速くできることで、遮光膜のパターニングに必要なレジスト膜の膜厚を薄くすることができ、遮光膜のパターン精度(CD精度)が良好になる。また、窒素を含むクロム系材料の遮光膜は、パターンの微細化を達成する上で有効な200nm以下の露光波長においては、膜厚を厚くしなくてもある程度の薄膜で所望の光学濃度(例えば2.5以上であることが好ましい)を得ることができ、遮光膜に必要な遮光性能を有しつつ、遮光膜の薄膜化を達成することが可能になる。尚、前述のように遮光膜中に酸素を含み(構成4)、更に窒素を含むことにより、構成5による効果が更に好適に発揮される。
特に、構成32にあるように、遮光膜は、表面側から透光性基板側に向かう膜厚方向の略全域に窒素が含まれていると好適である。更に好ましくは、遮光膜は、表面側から透光性基板側に向かう膜厚方向において均一か、ほぼ均一に窒素が含まれていることが望ましい。具体的には、遮光膜中に含まれる、即ち表面側から透光性基板側に向かって含まれるクロムの割合(組成比)を1としたときに、表面側から透光性基板側に向かって0.5〜0.8の割合で窒素が含有されている状態が好ましい。
【0026】
構成33,38にあるように、前記遮光膜はその上層部に酸素を含む反射防止層を形成することができる。このような反射防止層を形成することにより、露光波長における反射率を低反射率に抑えることができるので、マスクパターンを被転写体に転写するときに投影露光面との間で多重反射を抑制し、結像特性の低下を抑制することが出来る。また、フォトマスクブランクやフォトマスクの欠陥検査に用いる波長(例えば257nm、364nm、488nm等)に対する反射率を低く抑えることができるので、欠陥を検出する精度が向上する。
また、構成34,39にあるように、透光性基板と遮光膜との間に、ハーフトーン型位相シフター膜を形成しても良い。
構成35にあるように、本発明のフォトマスクブランクは、透光性基板上に遮光膜を有するフォトマスクブランクにおいて、 前記フォトマスクブランクは、前記遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のフォトマスクブランクであって、前記遮光膜は、表面側から透光性基板側に向かう膜厚方向の全領域に窒素が含まれ、且つ、表面側から透光性基板側に向かって酸素の含有量が減少する構成にした。
このように、遮光膜に、表面側から透光性基板側に向かう膜厚方向の略全域に窒素が含まれているので、ドライエッチング速度を速くでき、遮光膜のパターニングに必要なレジスト膜の膜厚を薄くすることができる。従って、遮光膜のパターン制度(CD精度)が良好になる。更に、遮光膜の表面側から透光性基板側に向かって酸素の含有量が減少させることで、グローバルローディング現象を低減させ、パターン精度やパターンの断面形状を向上させることができる。
【0027】
また、上述と同様に、遮光膜の材料は、露光光に対して遮光機能を有する材料であれば良く、例えば、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン等の遷移金属を含む材料とすることができ、構成36にあるように、遮光膜の材料は、主にクロムを含む材料が好適である。
尚、遮光膜は、表面側から透光性基板側に向かう膜厚方向において均一か、ほぼ均一に窒素が含まれていることが望ましい。具体的には、構成37にあるように、遮光膜中に含まれる、即ち表面側から透光性基板側に向かって含まれるクロムの割合(組成比)を1としたときに、表面側から透光性基板側に向かって0.5〜0.8の割合で窒素が含有されている状態が好ましい。
構成40にあるように、構成27乃至39の何れか一に記載のフォトマスクブランクにおける遮光膜を、ドライエッチング処理を用いてパターニングする工程を有するフォトマスクの製造方法によれば、ドライエッチング時間を短縮でき、断面形状の良好な遮光膜パターンが精度良く形成されたフォトマスクを得ることができる。
構成41にあるように、構成34又は39に記載のフォトマスクブランクにおける前記遮光膜をドライエッチングによりパターニングして遮光膜パターンを形成した後、該遮光膜パターンをマスクにして、ドライエッチングにより前記ハーフトーン型位相シフター膜をパターニングして前記透光性基板上にハーフトーン型位相シフター膜パターンを形成するフォトマスクの製造方法によれば、断面形状の良好なハーフトーン型位相シフター膜パターンを精度良く形成されたフォトマスクを得ることができる。
構成42にあるように、構成40又は41に記載のフォトマスクにおける前記遮光膜パターン又は前記ハーフトーン型位相シフター膜パターンをフォトリソグラフィー法により、半導体基板上にパターンを転写するので、半導体基板上に形成される回路パターンに欠陥のない半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、遮光膜上にレジストパターンを形成するための電子線描画したときのチャージアップを抑制することができ、マスクパターンの放電破壊を防止することができるフォトマスクブランクを提供することができる。
また、本発明によれば、遮光膜の深さ方向でのドライエッチング速度を最適化させることでグローバルローディング現象を低減でき、良好なパターン精度が得られるフォトマスクブランクを提供することができる。
また、本発明によれば、遮光膜の深さ方向に向かってドライエッチング速度を遅くさせるようにして遮光膜の深さ方向でのドライエッチング速度を最適化させることでグローバルローディング現象を低減でき、良好なパターン精度が得られるフォトマスクブランクを提供することができる。
また、本発明によれば、遮光膜のドライエッチング速度を高めることで、ドライエッチング時間が短縮でき、レジスト膜の膜減りを低減することができる。その結果、レジスト膜の薄膜化が可能となり、パターンの解像性、パターン精度(CD精度)を向上することができる。更に、ドライエッチング時間の短縮化により、断面形状の良好な遮光膜パターンが形成できるフォトマスクブランクを提供することができる。
また、本発明によれば、遮光膜に必要な遮光性能を有しつつ、遮光膜の薄膜化により、断面形状の良好な遮光膜のパターンが形成することができるフォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のフォトマスクブランクの一実施の形態を示す断面図である。
【図2】フォトマスクブランクを用いたフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係るフォトマスクブランク及びこのフォトマスクブランクを用いたフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明により得られるハーフトーン型位相シフトマスクの断面図である。
【図5】実施例1の遮光膜のラザフォード後方散乱分析による結果を示す図である。
【図6】実施例6の遮光膜のラザフォード後方散乱分析による結果を示す図である。
【図7】実施例10の遮光膜のオージェ分光分析による結果を示す図である。
【図8】実施例10の遮光膜のラザフォード後方散乱分析による結果を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 透光性基板
2 遮光膜
3 レジスト膜
4 ハーフトーン型位相シフター膜
5 遮光層
6 反射防止層
2a 遮光膜のパターン
3a レジストパターン
10、30 フォトマスクブランク
20、40 フォトマスク
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述する。
[第1の実施の形態]
図1は本発明のフォトマスクブランクの第1の実施の形態を示す断面図である。
図1のフォトマスクブランク10は、透光性基板1上に遮光膜2を有するバイナリマスク用フォトマスクブランクの形態のものである。
上記フォトマスクブランク10は、前記遮光膜2上に所定の電子線描画及び現像処理によって形成されるレジストパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜2をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のマスクブランクである。
ここで、透光性基板1としては、ガラス基板が一般的である。ガラス基板は、平坦度及び平滑度に優れるため、フォトマスクを使用して半導体基板上へのパターン転写を行う場合、転写パターンの歪み等が生じないで高精度のパターン転写を行える。
【0032】
上記遮光膜2はクロムを含む材料からなり、且つ、水素を含む。クロム系材料からなる遮光膜2中に水素が含まれることにより、遮光膜のシート抵抗を小さくして、導電性を向上させることができる。これにより、遮光膜上にレジストパターンを形成するための電子線によるパターン描画を行っても、遮光膜に電荷がたまりチャージアップするのを抑制することができ、チャージアップによる正確なパターン描画ができなかったり、放電による遮光パターン破壊を防止することができる。
遮光膜2中の水素の含有量は、1原子%以上の範囲が好適である。水素の含有量が1原子%未満であると、遮光膜のシート抵抗を小さくして導電性を高める効果が得られにくい。遮光膜は、その上に形成するレジスト膜を電子線描画しパターニングする際にチャージアップしない程度の導電性を有する必要があるが、そのためには遮光膜のシート抵抗は、例えば、150Ω/□以下、好ましくは、100Ω/□以下、更に好ましくは50Ω/□以下とするのが良い。
【0033】
また、遮光膜2中の水素の含有量が1原子%未満であると、遮光膜のドライエッチング速度を速める効果が得られにくい。
遮光膜2中に含まれる水素の含有量は、好ましくは、3原子%以上、より好ましくは5原子%以上が望ましい。水素の含有量が15原子%を超えると、耐薬性(耐酸性、耐アルカリ性)が悪化するので好ましくない。
遮光膜2中には、さらに酸素や、窒素、炭素を含んでも良い。
遮光膜2中に酸素を含む場合、酸素の含有量は、5〜80原子%の範囲が好適である。酸素の含有量が5原子%未満であると、クロム単体よりもドライエッチング速度を速める効果が得られにくい。一方、酸素の含有量が80原子%を超えると、波長200nm以下の例えば、ArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度(2.5以上)を得るためには膜厚を厚くする必要が生じてしまう。好ましい酸素の含有量は、10〜50原子%とすることが望ましい。
【0034】
また、遮光膜2中に窒素を含む場合、窒素の含有量は、15〜80原子%の範囲が好適である。窒素の含有量が15原子%未満であると、クロム単体よりもドライエッチング速度を高める効果が得られにくい。一方、窒素の含有量が80原子%を超えると、波長200nm以下の例えば、ArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度(2.5以上)を得るためには膜厚を厚くする必要が生じてしまう。好ましい窒素の含有量は、20〜50原子%とすることが望ましい。
また、遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含んでも良い。その場合の含有量は、酸素と窒素の合計が、10〜80原子%の範囲とするのが好適である。また、遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含む場合の酸素と窒素の含有比は、特に制約はされず、吸収係数等の兼ね合いで適宜決定される。
【0035】
また、遮光膜2中に炭素を含む場合、炭素の含有量は、1〜20原子%の範囲が好適である。炭素は、水素と同様に導電性を高める、即ちシート抵抗を小さくする効果、及び、反射率を低減させる効果がある。しかし、遮光膜中に炭素が含まれていると、ドライエッチング速度が低下し、遮光膜をドライエッチングによりパターニングする際に要するドライエッチング時間が長くなり、レジスト膜を薄膜化することが困難となる。以上の点から、炭素の含有量は、1〜20原子%が良く、さらに好ましくは、3〜15原子%以下が望ましい。
【0036】
また、上記遮光膜2は、単層であることに限られず、多層でも良い。いずれの膜にも、即ち、遮光膜2表面側から透光性基板1側の深さ方向の略全域に水素が含まれているものが良い。また、さらに、いずれの膜にも酸素及び/又は窒素を含むことが好ましい。例えば、遮光膜2は、表層部(上層部)に反射防止膜を含むものであっても良い。その場合、反射防止層としては、酸素を含む材料があげられ、例えば、CrOH、CrCOH、CrNOH、CrCH、CrCONH等の材料が好ましい。反射防止層を設けることによって、露光波長における反射率を例えば20%以下、好ましくは15%以下に抑えることができるので、マスクパターンを被転写体に転写するときに、投影露光面との間での多重反射を抑制し、結像特性の低下を抑制することができる。さらに、フォトマスクブランクやフォトマスクの欠陥検査に用いられる波長(例えば、257nm、364nm、488nm等)に対する反射率を例えば30%以下とすることができ、欠陥を高精度で検出することができる。特に、反射防止層として炭素を含む膜とすることにより、露光波長に対する反射率を低減させ、且つ、上記検査波長(特に257nm)に対する反射率が20%以下とすることができるので望ましい。具体的には、炭素の含有量は、5〜20原子%とすることが好ましい。炭素の含有量が5原子%未満の場合、上記波長に対する反射率を低減させる効果が小さくなり、また、炭素の含有量が20原子%を超える場合、ドライエッチング速度が低下し、遮光膜をドライエッチングによりパターニングする際に要するドライエッチング時間が長くなり、レジスト膜を薄膜化することが困難となるので好ましくない。尚、炭素を含む反射防止層は、レジストパターンを形成するための電子線によりパターン描画時のチャージアップを抑制できる機能を有しているが、炭素を含む反射防止層の膜厚を薄くしても、本発明における遮光膜は水素を含有することにより導電性を確保し、さらにドライエッチング速度を高めているので不都合はない。また、ドライエッチングにより遮光膜をパターニングする際のパターンの断面形状を良好にする点等から、遮光膜のドライエッチング速度は、2.5Å/秒以上、更には3Å/秒以上が好ましい。また、上記遮光膜2は、その上に形成されるレジストパターンをマスクにしてドライエッチングによってパターニングする際にレジスト膜の膜減りが起こっても、遮光膜のパターニング終了時点でレジスト膜が残存するように、ドライエッチング処理において、レジストとの選択比が1を超える材料とすることが好ましい。選択比は、ドライエッチング処理に対するレジストの膜減り量と遮光膜の膜減り量の比(=遮光膜の膜減り量/レジストの膜減り量)で表される。好ましくは、遮光膜パターンの断面形状の悪化防止や、グローバルローディング現象を抑える点から、遮光膜は、レジストとの選択比が1を超え10以下、更に好ましくは、1を超え5以下とすることが望ましい。
【0037】
尚、反射防止層は必要に応じて透光性基板側にも設けても良い。
また、上記遮光膜2は、水素の含有量が深さ方向で異なり、表層部の反射防止層と、それ以外の層(遮光層)で連続的又は段階的に傾斜した組成傾斜膜としても良い。この場合、前述のように、遮光膜2の表面側の反射防止層の領域に水素の含有量を多くして遮光膜の導電性を高めたり、深さ方向に向かって水素の含有量を減少することで、遮光膜の深さ方向におけるドライエッチング速度を遅くさせるようにしても良い。この場合、ドライエッチング時のグローバルローディング現象により線幅エラーを低減することができる。また、遮光膜2の深さ方向の一部の領域において、水素の含有量が減少している組成傾斜膜としても良い。さらに、遮光膜2として、クロムと水素以外に、窒素、酸素、炭素等の元素を含む場合においても、遮光膜の深さ方向で異なり、また、深さ方向に連続的に又は段階的に組成傾斜した組成傾斜膜としても良い。このような遮光膜を組成傾斜膜とするためには、例えば、前述のスパッタリング成膜時のスパッタガスの種類(組成)を成膜中に切り替える方法、成膜時のスパッタガスのガス圧を変化させる方法等が挙げられる。
【0038】
また、上記遮光膜2の膜厚は、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定される。具体的には、上記遮光膜2の膜厚は、90nm以下であることが好ましい。その理由は、近年におけるサブミクロンレベルのパターンサイズへのパターンの微細化に対応するためには、膜厚が90nmを超えると、ドライエッチング時のパターンのマイクロローディング現象等によって、微細パターンの形成が困難となる場合が考えられるためである。膜厚をある程度薄くすることによって、パターンのアスペクト比(パターン幅に対するパターン深さの比)の低減を図ることができ、グローバルローディング現象及びマイクロローディング現象による線幅エラーを低減することができる。さらに、膜厚をある程度薄くすることによって、特にサブミクロンレベルのパターンサイズのパターンに対し、パターンへのダメージ(倒壊等)を防止することが可能となる。本発明における遮光膜2は、200nm以下の露光波長においては、膜厚を90nm以下の薄膜としても所望の光学濃度(例えば、2.5以上)を得ることができる。遮光膜2の膜厚の下限については、所望の光学濃度が得られる限りにおいては薄くすることができる。
【0039】
上記遮光膜2の形成方法は、特に制約する必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましい。スパッタリング成膜法によると、均一な膜厚の薄膜を形成することができるので、本発明には好適である。透光性基板1上に、スパッタリング成膜法によって上記遮光膜2を成膜する場合、スパッタターゲットとしてクロム(Cr)ターゲットを用い、チャンバー内に導入するスパッタガスは、アルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスに、炭化水素ガスや水素ガス、更に必要に応じて酸素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガス、一酸化二窒素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等のガスを混合したものを用いる。
【0040】
アルゴンガス等の不活性ガスに水素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに水素を含む遮光膜を形成することができ、アルゴンガス等の不活性ガスに炭化水素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに炭素を含む遮光膜或いはクロムに水素と炭素を含む遮光膜を形成することができる。また、アルゴンガス等の不活性ガスに酸素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに酸素を含む遮光膜を形成することができ、アルゴンガス等の不活性ガスに窒素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに窒素を含む遮光膜を形成することができる。さらに、アルゴンガス等の不活性ガスに酸素ガスと窒素ガス、又は一酸化窒素ガス、又は一酸化二窒素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに酸素と窒素を含む遮光膜を形成することができる。
尚、遮光膜2中に含まれる水素の含有量を調整するには、水素ガスの流量、炭化水素ガスの流量、炭化水素ガスの種類、スパッタガス圧などの条件を選択することにより調整することができる。
【0041】
また、フォトマスクブランクとしては、後述する図2(a)にあるように、上記遮光膜2の上に、レジスト膜3を形成した形態であっても構わない。レジスト膜3の膜厚は、遮光膜のパターン精度(CD精度)を良好にするためには、できるだけ薄い方が好ましい。本実施の形態のような所謂バイナリマスク用フォトマスクブランクの場合、具体的には、レジスト膜3の膜厚は、300nm以下が好ましい。さらに好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは150nm以下とすることが望ましい。レジスト膜の膜厚の下限は、レジストパターンをマスクにして遮光膜をドライエッチングしたときに、レジスト膜が残存するように設定される。上述の点を考慮すると、レジスト膜の膜厚は、10nm以上300nm以下、15nm以上200nm以下、20nm以上150nm以下とすることが好ましい。また、高い解像度を得るために、レジスト膜3の材料はレジスト感度の高い化学増幅型レジストが好ましい。特に、レジスト膜を50keV以上の電子線描画してレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングすることで、フォトマスクを製造する際に用いられるフォトマスクブランクに適している。
【0042】
次に、図1に示すフォトマスクブランク10を用いたフォトマスクの製造方法を説明する。
このフォトマスクブランク10を用いたフォトマスクの製造方法は、フォトマスクブランク10の遮光膜2を、ドライエッチングを用いてパターニングする工程を有し、具体的には、フォトマスクブランク10上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン露光(パターン描画)を施す工程と、所望のパターン露光に従って前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンに沿って前記遮光膜をエッチングする工程と、残存したレジストパターンを剥離除去する工程とを有する。
【0043】
図2は、フォトマスクブランク10を用いたフォトマスクの製造工程を順に示す断面図である。
図2(a)は、図1のフォトマスクブランク10の遮光膜2上にレジスト膜3を形成した状態を示している。尚、レジスト材料としては、ポジ型レジスト材料でも、ネガ型レジスト材料でも用いることができる。
次に、図2(b)は、フォトマスクブランク10上に形成されたレジスト膜3に対し、所望のパターン露光(パターン描画)を施す工程を示す。パターン露光は、電子線描画装置などを用いて行われる。上述のレジスト材料は、電子線又はレーザーに対応する感光性を有するものが使用される。上記遮光膜2は導電性を有しているので、電子線描画時のチャージアップを防止できる。
次に、図2(c)は、所望のパターン露光に従ってレジスト膜3を現像してレジストパターン3aを形成する工程を示す。該工程では、フォトマスクブランク10上に形成したレジスト膜3に対し所望のパターン露光を施した後に現像液を供給して、現像液に可溶なレジスト膜の部位を溶解し、レジストパターン3aを形成する。
【0044】
次いで、図2(d)は、上記レジストパターン3aに沿って遮光膜2をエッチングする工程を示す。本発明のフォトマスクブランクはドライエッチングに好適であるため、エッチングはドライエッチングを用いることが好適である。該エッチング工程では、上記レジストパターン3aをマスクとして、ドライエッチングによって、レジストパターン3aの形成されていない遮光膜2が露出した部位を除去し、これにより所望の遮光膜パターン2a(マスクパターン)を透光性基板1上に形成する。
このドライエッチングには、塩素系ガス、又は、塩素系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスからなるドライエッチングガスを用いることが本発明にとって好適である。本発明におけるクロムと水素と酸素、窒素等の元素とを含む材料からなる遮光膜2に対しては、上記のドライエッチングガスを用いてドライエッチングを行うことにより、ドライエッチング速度を高めることができ、ドライエッチング時間の短縮化を図ることができ、断面形状の良好な遮光膜パターンを形成することができる。ドライエッチングガスに用いる塩素系ガスとしては、例えば、Cl,SiCl,HCl、CCl、CHCl等が挙げられる。
【0045】
尚、クロムに少なくとも酸素を含む材料からなる遮光膜の場合、遮光膜中の酸素とクロムと塩素系ガスとの反応により塩化クロミルが生成されるため、ドライエッチングに塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスからなるドライエッチングガスを用いる場合、遮光膜に含まれる酸素の含有量に応じ、ドライエッチングガス中の酸素の含有量を低減させることができる。このように酸素の量を低減させたドライエッチングガスを用いてドライエッチングを行うことにより、レジストパターンに悪影響を与える酸素の量を低減することができ、ドライエッチング時のレジストパターンへのダメージを防止できるため、遮光膜のパターン精度の向上したフォトマスクが得られる。なお、遮光膜に含まれる酸素の含有量によっては、ドライエッチングガス中の酸素の量をゼロとした酸素を含まないドライエッチングガスを用いることも可能である。
【0046】
図2(e)は、残存したレジストパターン3aを剥離除去することにより得られたフォトマスク20を示す。こうして、断面形状の良好な遮光膜パターンが精度良く形成されたフォトマスクが出来上がる。
尚、本発明は以上説明した実施の形態には限定されない。即ち、透光性基板上に遮光膜を形成した、所謂バイナリマスク用フォトマスクブランクに限らず、例えば、ハーフトーン型位相シフトマスクの製造に用いるためのフォトマスクブランクであってもよい。この場合、後述する第二の実施の形態に示すように、透光性基板上のハーフトーン位相シフター膜上に遮光膜が形成される構造となり、ハーフトーン位相シフター膜と遮光膜とを合わせて所望の光学濃度(例えば2.5以上)が得られればよいため、遮光膜自体の光学濃度は例えば2.5よりも小さい値とすることもできる。
【0047】
[第2の実施の形態]
次に、図3(a)を用いて本発明のフォトマスクブランクの第2の実施の形態を説明する。
図3(a)のフォトマスクブランク30は、透光性基板1上に、ハーフトーン型位相シフター膜4とその上の遮光層5と反射防止層6とからなる遮光膜2を有する形態のものである。透光性基板1、遮光膜2については、上記第1の実施の形態で説明したので省略する。
上記ハーフトーン型位相シフター膜4は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものであって、所定の位相差を有するものである。このハーフトーン型位相シフター膜4は、該ハーフトーン型位相シフター膜4をパターニングした光半透過部と、ハーフトーン型位相シフター膜4が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回りこんだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。
【0048】
このハーフトーン型位相シフター膜4は、その上に形成される遮光膜2とエッチング特性が異なる材料とすることが好ましい。例えば、ハーフトーン型位相シフター膜4としては、モリブデン、タングステン、タンタル、ハフニウムなどの金属、シリコン、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、ハーフトーン型位相シフター膜4は、単層でも複数層であっても構わない。
この第2の実施の形態における上記遮光膜2は、ハーフトーン型位相シフト膜と遮光膜とを合わせた積層構造において、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定する。そのように設定される遮光膜2の膜厚は、50nm以下であることが好ましい。その理由は、上記第1の実施の形態と同様であって、ドライエッチング時のパターンのマイクロローディング現象等によって、微細パターンの形成が困難となる場合が考えられるからである。また、本実施の形態において、上記反射防止層6上に形成するレジスト膜の膜厚は、250nm以下が好ましい。さらに好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは150nm以下とすることが望ましい。レジスト膜の膜厚の下限は、レジストパターンをマスクにして遮光膜をドライエッチングしたときに、レジスト膜が残存するように設定される。上述の点を考慮すると、レジスト膜の膜厚は、10nm以上300nm以下、15nm以上200nm以下、20nm以上150nm以下とすることが好ましい。また、前述の実施の形態の場合と同様、高い解像度を得るために、レジスト膜の材料はレジスト感度の高い化学増幅型レジストが好ましい。特に、レジスト膜を50keV以上の電子線描画してレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングすることで、フォトマスクを製造する際に用いられるフォトマスクブランクに適している。
【0049】
[第3の実施の形態]
本発明により得られるフォトマスクブランクの第3の実施の形態を示す断面図は、前述の図1と同様であるので、本実施の形態においても図1を参照して説明する。
フォトマスクブランク10は、透光性基板1上に遮光膜2を有するバイナリマスク用フォトマスクブランクの形態のものである。
上記フォトマスクブランク10は、前記遮光膜2上に形成されるレジストパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜2をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のマスクブランクである。
ここで、透光性基板1としては、ガラス基板が一般的である。ガラス基板は、平坦度及び平滑度に優れるため、フォトマスクを使用して半導体基板上へのパターン転写を行う場合、転写パターンの歪み等が生じないで高精度のパターン転写を行える。
【0050】
上記遮光膜2は、その上に形成されるレジストパターンをマスクにしてドライエッチングによってパターニングする際にレジスト膜の膜減りが起こっても、遮光膜のパターニング終了時点でレジスト膜が残存するように、ドライエッチング処理において、レジストとの選択比が1を超える材料とすることが好ましい。選択比は、ドライエッチング処理に対するレジストの膜減り量と遮光膜の膜減り量の比(=遮光膜の膜減り量/レジストの膜減り量)で表される。好ましくは、遮光膜パターンの断面形状の悪化防止や、グローバルローディング現象を抑える点から、遮光膜は、レジストとの選択比が1を超え10以下、更に好ましくは、1を超え5以下とすることが望ましい。
具体的な遮光膜2の材料としては、クロムと、クロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる添加元素とを含む材料が挙げられる。このようなクロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる添加元素としては、酸素と窒素の少なくとも一方の元素を含むことが好ましい。
また、遮光膜2の材料は、上記クロムを含む材料に限らず、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン等の遷移金属を含む材料とすることができる。更には、遮光膜2が多層の場合は、遮光膜2を構成する全ての層において、上記遷移金属を含む材料としてもよいし、また各層毎に違う遷移金属を含む材料としてもかまわない。
【0051】
遮光膜2中に酸素を含む場合の酸素の含有量は、5〜80原子%の範囲が好適である。酸素の含有量が5原子%未満であると、クロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる効果が得られ難い。一方、酸素の含有量が80原子%を超えると、波長200nm以下の例えばArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度(例えば2.5以上)を得るためには膜厚を厚くする必要が生じてしまう。また、好ましい遮光膜2中の酸素の含有量は特に10〜50原子%の範囲とするのが好ましい。
また、遮光膜2中に窒素を含む場合の窒素の含有量は、15〜80原子%の範囲が好適である。窒素の含有量が20原子%未満であると、クロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる効果が得られ難い。また、窒素の含有量が80原子%を超えると、波長200nm以下の例えばArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度(例えば2.5以上)を得るためには膜厚を厚くする必要が生じてしまう。
【0052】
また、遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含んでもよい。その場合の含有量は、酸素と窒素の合計が10〜80原子%の範囲とするのが好適である。また、遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含む場合の酸素と窒素の含有比は、特に制約はされず、吸収係数等の兼ね合いで適宜決定される。
また、遮光膜2中に炭素を含む場合、炭素の含有量は、1〜20原子%の範囲が好適である。炭素は導電性を高める効果、反射率を低減させる効果がある。しかし、遮光膜中に炭素が含まれていると、ドライエッチング速度が低下し、遮光膜をドライエッチングによりパターニングする際に要するドライエッチング時間が長くなり、レジスト膜を薄膜化することが困難となる。以上の点から、炭素の含有量は、1〜20原子%が好ましく、さらに好ましくは、3〜15原子%が望ましい。
【0053】
上記遮光膜2の形成方法は、特に制約する必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することが出来るので、本発明には好適である。透光性基板1上に、スパッタリング成膜法によって上記遮光膜2を成膜する場合、スパッタターゲットとしてクロム(Cr)ターゲットを用い、チャンバー内に導入するスパッタガスは、アルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスに酸素、窒素もしくは二酸化炭素、一酸化窒素等のガスを混合したものを用いる。アルゴンガス等の不活性ガスに酸素ガス或いは二酸化炭素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに酸素を含む遮光膜を形成することができ、アルゴンガス等の不活性ガスに窒素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに窒素を含む遮光膜を形成することができ、またアルゴンガス等の不活性ガスに一酸化窒素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに窒素と酸素を含む遮光膜を形成することができる。また、アルゴンガス等の不活性ガスにメタンガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに炭素を含む遮光膜を形成することができる。
【0054】
本発明においては、上記遮光膜2の成膜工程は、透光性基板側に形成する層の成膜速度よりも遮光膜の表面側に形成する層の成膜速度を遅くすることを特徴としている。
このように、透光性基板側に形成する層の成膜速度よりも遮光膜の表面側に形成する層の成膜速度を遅くすることで、遮光膜の深さ方向(つまり遮光膜の表面側から透光性基板側)に向かってドライエッチング速度を遅くさせるように制御することができ、これによりグローバルローディング現象を低減させ、パターン精度を向上させることができる。
このように遮光膜の成膜速度を変更する時点は、遮光膜の深さ方向でのドライエッチング速度を上述のように好適に制御できるように、適宜決定される。例えば、遮光膜の成膜中にスパッタガスの種類(組成)を変更することにより遮光膜組成を変えるタイミングと合わせて遮光膜の成膜速度を変更するようにしても良い。尚、遮光膜のドライエッチング速度は、遮光膜の材料によっても異なるので、遮光膜を深さ方向での組成傾斜膜とした場合、組成傾斜によるドライエッチング速度の変化を考慮して、上述の成膜速度を変更するタイミングを決定するのがよい。また、遮光膜の深さ方向でドライエッチング速度が段階的に変わるようにしても良いし、連続的に変わるようにしても良い。
【0055】
遮光膜の成膜速度を変更する方法としては、例えば成膜装置のパワー(スパッタ電力)、スパッタ電力密度を変更する方法が最も簡易である。通常、成膜装置のパワー(スパッタ電力)、スパッタ電力密度を上げると成膜速度を速め、パワー(スパッタ電力)、スパッタ電力密度を下げると成膜速度を遅くすることができる。この場合、成膜装置のパワー(スパッタ電力)、スパッタ電力密度をどの程度に変更するかは、遮光膜の深さ方向に向かってドライエッチング速度を遅くさせるように好適に制御できるよう、適宜決定される。勿論、この方法に限定されるわけではなく、この他にも例えば成膜時のガス圧力などを変更することによって成膜速度を変えるようにしても良い。
【0056】
上記遮光膜2の膜厚は、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定される。具体的には、上記遮光膜2の膜厚は、90nm以下であることが好ましい。その理由は、近年におけるサブミクロンレベルのパターンサイズへのパターンの微細化に対応するためには、膜厚が90nmを超えると、ドライエッチング時のパターンのマイクロローディング現象等によって、微細パターンの形成が困難となる場合が考えられるためである。膜厚をある程度薄くすることによって、パターンのアスペクト比(パターン幅に対するパターン深さの比)の低減を図ることができ、グローバルローディング現象及びマイクロローディング現象による線幅エラーを低減することができる。さらに、膜厚をある程度薄くすることによって、特にサブミクロンレベルのパターンサイズのパターンに対し、パターンへのダメージ(倒壊等)を防止することが可能になる。本発明における遮光膜2は、200nm以下の露光波長においては、膜厚を90nm以下の薄膜としても所望の光学濃度(例えば2.5以上)を得ることができる。遮光膜2の膜厚の下限については、所望の光学濃度が得られる限りにおいては薄くすることができる。
【0057】
また、上記遮光膜2は、単層であることに限られず、多層でもよいが、何れの膜にも酸素及び/又は窒素を含むことが好ましい。例えば、遮光膜2は、表層部(上層部)に反射防止層を含むものであってもよい。その場合、反射防止層としては、例えばCrO,CrCO,CrNO,CrCON等の材質が好ましく挙げられる。反射防止層を設けることによって、露光波長における反射率を例えば20%以下、好ましくは15%以下に抑えることができるので、マスクパターンを被転写体に転写するときに、投影露光面との間での多重反射を抑制し、結像特性の低下を抑制することができる。さらに、フォトマスクブランクやフォトマスクの欠陥検査に用いる波長(例えば257nm、364nm、488nm等)に対する反射率を例えば30%以下とすることが、欠陥を高精度で検出する上で望ましい。特に、反射防止層として炭素を含む膜とすることにより、露光波長に対する反射率を低減させ、且つ、上記検査波長(特に257nm)に対する反射率が20%以下とすることができるので望ましい。具体的には、炭素の含有量は、5〜20原子%とすることが好ましい。炭素の含有量が5原子%未満の場合、反射率を低減させる効果が小さくなり、また、炭素の含有量が20原子%超の場合、ドライエッチング速度が低下し、遮光膜をドライエッチングによりパターニングする際に要するドライエッチング時間が長くなり、レジスト膜を薄膜化することが困難となるので好ましくない。
【0058】
尚、酸素含有ガス雰囲気中で反応性スパッタによりCrO膜等の反射防止層を成膜する場合、成膜装置のパワーを上げて成膜速度を速めると、膜の欠陥が増加するという問題が発生するため、膜の欠陥を低減するためには成膜速度を遅くすることが好適である。
尚、反射防止層は必要に応じて透光性基板側にも設けてもよい。
また、上記遮光膜2は、クロムと、窒素、酸素、炭素等の元素の含有量が深さ方向で異なり、表層部の反射防止層と、それ以外の層(遮光層)で段階的、又は連続的に組成傾斜した組成傾斜膜としても良い。このような遮光膜を組成傾斜膜とするためには、例えば前述のスパッタリング成膜時のスパッタガスの種類(組成)を成膜中に適宜切替える方法が好適である。
【0059】
また、フォトマスクブランクとしては、前述の図2(a)にあるように、上記遮光膜2の上に、レジスト膜3を形成した形態であっても構わない。レジスト膜3の膜厚は、遮光膜のパターン精度(CD精度)を良好にするためには、できるだけ薄い方が好ましい。本実施の形態のような所謂バイナリマスク用フォトマスクブランクの場合、具体的には、レジスト膜3の膜厚は、300nm以下が好ましい。さらに好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは150nm以下とすることが望ましい。レジスト膜の膜厚の下限は、レジストパターンをマスクにして遮光膜をドライエッチングしたときに、レジスト膜が残存するように設定される。上述の点を考慮すると、レジスト膜の膜厚は、10nm以上300nm以下、15nm以上200nm以下、20nm以上150nm以下とすることが好ましい。また、高い解像度を得るために、レジスト膜3の材料はレジスト感度の高い化学増幅型レジストが好ましい。特に、レジスト膜を50keV以上の電子線描画してレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングすることで、フォトマスクを製造する際に用いられるフォトマスクブランクに適している。
【0060】
本実施の形態に係るフォトマスクブランク10を用いたフォトマスクの製造方法は、フォトマスクブランク10の遮光膜2を、ドライエッチングを用いてパターニングする工程を有し、具体的には、フォトマスクブランク10上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン露光(パターン描画)を施す工程と、所望のパターン露光に従って前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンに沿って前記遮光膜をエッチングする工程と、残存したレジストパターンを剥離除去する工程とを有する。即ち、前述の図2に示すフォトマスクブランク10を用いたフォトマスクの製造工程と同様にして製造される。こうして本実施の形態のフォトマスクブランク10を用いて、断面形状の良好な遮光膜パターンが精度良く形成されたフォトマスクが出来上がる。
尚、本発明は以上説明した実施の形態には限定されない。即ち、透光性基板上に遮光膜を形成した、所謂バイナリマスク用フォトマスクブランクに限らず、例えば、ハーフトーン型位相シフトマスクの製造に用いるためのフォトマスクブランクであってもよい。この場合、後述する第4の実施の形態に示すように、透光性基板上のハーフトーン位相シフター膜上に遮光膜が形成される構造となり、ハーフトーン位相シフター膜と遮光膜とを合わせて所望の光学濃度(例えば2.5以上)が得られればよいため、遮光膜自体の光学濃度は例えば2.5よりも小さい値とすることもできる。
【0061】
[第4の実施の形態]
次に、本発明のフォトマスクブランクの第4の実施の形態を説明する。本実施の形態の断面図は前述の図3(a)(実施の形態2)と同様であるので、図3(a)を参照して説明する。
図3(a)のフォトマスクブランク30は、透光性基板1上に、ハーフトーン型位相シフター膜4とその上の遮光層5と反射防止層6とからなる遮光膜2を有する形態のものである。本実施の形態における透光性基板1、遮光膜2については、上記第3の実施の形態で説明したので省略する。
上記ハーフトーン型位相シフター膜4は、前述の第2の実施の形態と同様、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものであって、所定の位相差を有するものである。
【0062】
このハーフトーン型位相シフター膜4は、その上に形成される遮光膜2とエッチング特性が異なる材料とすることが好ましい。例えば、ハーフトーン型位相シフター膜4としては、モリブデン、タングステン、タンタル、ハフニウムなどの金属、シリコン、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、ハーフトーン型位相シフター膜4は、単層でも複数層であっても構わない。
本実施の形態における上記遮光膜2は、ハーフトーン型位相シフト膜と遮光膜とを合わせた積層構造において、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定する。そのように設定される遮光膜2の膜厚は、50nm以下であることが好ましい。その理由は、上記第1の実施の形態と同様であって、ドライエッチング時のパターンのマイクロローディング現象等によって、微細パターンの形成が困難となる場合が考えられるからである。遮光膜の膜厚を50nm以下とすることにより、ドライエッチング時のグローバルローディング現象及びマイクロローディング現象による線幅エラーを更に低減することができる。また、本実施の形態において、上記反射防止層6上に形成するレジスト膜の膜厚は、250nm以下が好ましい。さらに好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは150nm以下とすることが望ましい。レジスト膜の膜厚の下限は、レジストパターンをマスクにして遮光膜をドライエッチングしたときに、レジスト膜が残存するように設定される。上述の点を考慮すると、レジスト膜の膜厚は、10nm以上250nm以下、15nm以上200nm以下、20nm以上150nm以下とすることが好ましい。また、前述の実施の形態の場合と同様、高い解像度を得るために、レジスト膜の材料はレジスト感度の高い化学増幅型レジストが好ましい。特に、レジスト膜を50keV以上の電子線描画してレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングすることで、フォトマスクを製造する際に用いられるフォトマスクブランクに適している。
【0063】
[第5の実施の形態]
次に、本発明により得られるフォトマスクブランクの第5の実施の形態を説明する。第5の実施の形態の断面図は前述の図1と同様であるので、図1を参照して説明する。
本実施の形態のフォトマスクブランク10は、透光性基板1上に遮光膜2を有するバイナリマスク用フォトマスクブランクの形態のものである。
上記フォトマスクブランク10は、前記遮光膜2上に形成されるレジストパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜2をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のマスクブランクである。
ここで、透光性基板1としては、ガラス基板が一般的である。ガラス基板は、平坦度及び平滑度に優れるため、フォトマスクを使用して半導体基板上へのパターン転写を行う場合、転写パターンの歪み等が生じないで高精度のパターン転写を行える。
【0064】
上記遮光膜2は、その上に形成されるレジストパターンをマスクにしてドライエッチングによってパターニングする際にレジスト膜の膜減りが起こっても、遮光膜のパターニング終了時点でレジスト膜が残存するように、ドライエッチング処理において、レジストとの選択比が1を超える材料とすることが好ましい。選択比は、ドライエッチング処理に対するレジストの膜減り量と遮光膜の膜減り量の比(=遮光膜の膜減り量/レジストの膜減り量)で表される。好ましくは、遮光膜パターンの断面形状の悪化防止や、グローバルローディング現象を抑える点から、遮光膜は、レジストとの選択比が1を超え10以下、更に好ましくは、1を超え5以下とすることが望ましい。
【0065】
また、上記遮光膜2の透光性基板側におけるドライエッチング速度を、遮光膜2の表面側におけるドライエッチング速度よりも遅くさせるようにしている。これにより、グローバルローディング現象を低減させ、パターン精度やパターンの断面形状を向上させることができる。好ましくは、上記遮光膜2の表面側から透光性基板側(深さ方向)に向かってドライエッチング速度を遅くさせるようにしている。このように、ドライエッチング速度を遮光膜の深さ方向に向かって遅くさせるように制御するためには、例えば遮光膜中に酸素を含むことが好適である。酸素を含むクロム系遮光膜は、クロム単体の遮光膜よりもドライエッチング速度が速くなるとともに、酸素の含有量が遮光膜の深さ方向に向かって減少するような組成傾斜膜とすることにより、ドライエッチング速度を遮光膜の深さ方向に向かって遅くさせるように制御することができるからである。
具体的な遮光膜2の材料としては、クロムと、クロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる添加元素とを含む材料が挙げられ、このようなクロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる添加元素としては、上述のように少なくとも酸素を含むことが好ましい。
また、遮光膜2の材料は、上記クロムを含む材料に限らず、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン等の遷移金属を含む材料とすることができる。更には、遮光膜2が多層の場合は、遮光膜2を構成する全ての層において、上記遷移金属を含む材料としてもよいし、また各層毎に違う遷移金属を含む材料としてもかまわない。
【0066】
遮光膜2中に酸素を含む場合の酸素の含有量は、5〜80原子%の範囲が好適である。酸素の含有量が5原子%未満であると、クロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる効果が得られ難い。一方、酸素の含有量が80原子%を超えると、波長200nm以下の例えばArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度(例えば2.5以上)を得るためには膜厚を厚くする必要が生じてしまう。また、ドライエッチングガス中の酸素の量を低減するという観点からは、遮光膜2中の酸素の含有量は特に60〜80原子%の範囲とするのが好ましい。
【0067】
また、遮光膜2中に、クロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる添加元素として、窒素を含むことも好ましい。遮光膜2中に窒素を含む場合の窒素の含有量は、20〜80原子%の範囲が好適である。窒素の含有量が20原子%未満であると、クロム単体よりもドライエッチング速度が速くなる効果が得られ難い。また、窒素の含有量が80原子%を超えると、波長200nm以下の例えばArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度(例えば2.5以上)を得るためには膜厚を厚くする必要が生じてしまう。
また、遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含んでもよい。その場合の含有量は、酸素と窒素の合計が10〜80原子%の範囲とするのが好適である。また、遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含む場合の酸素と窒素の含有比は、特に制約はされず、吸収係数等の兼ね合いで適宜決定される。
【0068】
また、遮光膜2中に炭素を含む場合、炭素の含有量は、1〜20原子%が好適である。炭素は導電性を高める効果、反射率を低減させる効果がある。しかし、遮光膜中に炭素が含まれていると、ドライエッチング速度が低下し、遮光膜をドライエッチングによりパターニングする際に要するドライエッチング時間が長くなり、レジスト膜を薄膜化することが困難となる。以上の点から、炭素の含有量は、1〜20原子%が良く、さらに好ましくは、3〜15原子%が望ましい。
【0069】
上記遮光膜2の形成方法は、特に制約する必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することが出来るので、本発明には好適である。透光性基板1上に、スパッタリング成膜法によって上記遮光膜2を成膜する場合、スパッタターゲットとしてクロム(Cr)ターゲットを用い、チャンバー内に導入するスパッタガスは、アルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスに酸素、窒素もしくは二酸化炭素、一酸化窒素等のガスを混合したものを用いる。アルゴンガス等の不活性ガスに酸素ガス或いは二酸化炭素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに酸素を含む遮光膜を形成することができ、アルゴンガス等の不活性ガスに窒素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに窒素を含む遮光膜を形成することができ、またアルゴンガス等の不活性ガスに一酸化窒素ガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに窒素と酸素を含む遮光膜を形成することができる。また、アルゴンガス等の不活性ガスにメタンガスを混合したスパッタガスを用いると、クロムに炭素を含む遮光膜を形成することができる。
【0070】
上記遮光膜2の膜厚は、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定される。具体的には、上記遮光膜2の膜厚は、90nm以下であることが好ましい。その理由は、近年におけるサブミクロンレベルのパターンサイズへのパターンの微細化に対応するためには、膜厚が90nmを超えると、ドライエッチング時のパターンのマイクロローディング現象等によって、微細パターンの形成が困難となる場合が考えられるためである。膜厚をある程度薄くすることによって、パターンのアスペクト比(パターン幅に対するパターン深さの比)の低減を図ることができ、グローバルローディング現象及びマイクロローディング現象による線幅エラーを低減することができる。さらに、膜厚をある程度薄くすることによって、特にサブミクロンレベルのパターンサイズのパターンに対し、パターンへのダメージ(倒壊等)を防止することが可能になる。本発明における遮光膜2は、200nm以下の露光波長においては、膜厚を90nm以下の薄膜としても所望の光学濃度(例えば2.5以上)を得ることができる。遮光膜2の膜厚の下限については、所望の光学濃度が得られる限りにおいては薄くすることができる。
【0071】
また、上記遮光膜2は、単層であることに限られず、多層でもよいが、何れの膜にも酸素及び/又は窒素を含むことが好ましい。例えば、遮光膜2は、表層部(上層部)に反射防止層を含むものであってもよい。その場合、反射防止層としては、例えばCrO,CrCO,CrNO,CrCON等の材質が好ましく挙げられる。反射防止層を設けることによって、露光波長における反射率を例えば20%以下、好ましくは15%以下に抑えることができるので、マスクパターンを被転写体に転写するときに投影露光面との間で多重反射を抑制し、結像特性の低下を抑制することが出来る。さらに、フォトマスクブランクやフォトマスクの欠陥検査に用いる波長(例えば257nm、364nm、488nm等)に対する反射率を例えば30%以下とすることが、欠陥を高精度で検出する上で望ましい。特に、反射防止層として炭素を含む膜とすることにより、露光波長に対する反射率を低減させ、且つ、上記検査波長(特に257nm)に対する反射率が20%以下とすることができるので望ましい。具体的には、炭素の含有量は、5〜20原子%とすることが好ましい。炭素の含有量が5原子%未満の場合、反射率を低減させる効果が小さくなり、また、炭素の含有量が20原子%超の場合、ドライエッチング速度が低下し、遮光膜をドライエッチングによりパターニングする際に要するドライエッチング時間が長くなり、レジスト膜を薄膜化することが困難となるので好ましくない。
【0072】
尚、反射防止層は必要に応じて透光性基板側にも設けてもよい。
また、上記遮光膜2は、クロムと、酸素、窒素、炭素等の元素の含有量が深さ方向で異なり、表層部の反射防止層と、それ以外の層(遮光層)で段階的、又は連続的に組成傾斜した組成傾斜膜としても良い。このような遮光膜を組成傾斜膜とするためには、例えば前述のスパッタリング成膜時のスパッタガスの種類(組成)を成膜中に適宜切替える方法が好適である。
尚、遮光膜のドライエッチング速度を深さ方向に向かって遅くさせるように制御するため、例えば遮光膜中に酸素を含み、酸素の含有量を遮光膜の深さ方向に向かって減少するような組成傾斜膜とする場合を説明したが、これに限らず、例えば遮光膜中に水素を含有し、水素含有量が遮光膜の深さ方向で異なる組成傾斜膜としたり、或いは、遮光膜の成膜速度を成膜中に適宜変更することにより、遮光膜のドライエッチング速度を深さ方向に向かって遅くさせるように制御してもよい。
【0073】
また、フォトマスクブランクとしては、前述の図2(a)にあるように、上記遮光膜2の上に、レジスト膜3を形成した形態であっても構わない。レジスト膜3の膜厚は、遮光膜のパターン精度(CD精度)を良好にするためには、できるだけ薄い方が好ましい。本実施の形態のような所謂バイナリマスク用フォトマスクブランクの場合、具体的には、レジスト膜3の膜厚は、300nm以下が好ましい。さらに好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは150nm以下とすることが望ましい。レジスト膜の膜厚の下限は、レジストパターンをマスクにして遮光膜をドライエッチングしたときに、レジスト膜が残存するように設定される。上述の点を考慮すると、レジスト膜の膜厚は、10nm以上300nm以下、15nm以上200nm以下、20nm以上150nm以下とすることが好ましい。また、高い解像度を得るために、レジスト膜3の材料はレジスト感度の高い化学増幅型レジストが好ましい。特に、レジスト膜を50keV以上の電子線描画してレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングすることで、フォトマスクを製造する際に用いられるフォトマスクブランクに適している。
【0074】
本実施の形態のフォトマスクブランク10を用いたフォトマスクの製造方法は、フォトマスクブランク10の遮光膜2を、ドライエッチングを用いてパターニングする工程を有し、具体的には、フォトマスクブランク10上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン露光(パターン描画)を施す工程と、所望のパターン露光に従って前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンに沿って前記遮光膜をエッチングする工程と、残存したレジストパターンを剥離除去する工程とを有し、具体的には前述の図2に示すフォトマスクブランク10を用いたフォトマスクの製造工程と同様にして製造される。こうして、本実施の形態のフォトマスクブランク10を用いて、断面形状の良好な遮光膜パターンが精度良く形成されたフォトマスクが出来上がる。
尚、本発明は以上説明した実施の形態には限定されない。即ち、透光性基板上に遮光膜を形成した、所謂バイナリマスク用フォトマスクブランクに限らず、例えば、ハーフトーン型位相シフトマスクの製造に用いるためのフォトマスクブランクであってもよい。この場合、後述する第6の実施の形態に示すように、透光性基板上のハーフトーン位相シフター膜上に遮光膜が形成される構造となり、ハーフトーン位相シフター膜と遮光膜とを合わせて所望の光学濃度(例えば2.5以上)が得られればよいため、遮光膜自体の光学濃度は例えば2.5よりも小さい値とすることもできる。
【0075】
[第6の実施の形態]
次に、本発明のフォトマスクブランクの第6の実施の形態を説明する。第6の実施の形態の断面図は前述の図3(a)(第2の実施の形態)と同様であるので、図3(a)を参照して説明する。
本実施の形態のフォトマスクブランク30は、透光性基板1上に、ハーフトーン型位相シフター膜4とその上の遮光層5と反射防止層6とからなる遮光膜2を有する形態のものである。本実施の形態における透光性基板1、遮光膜2については、上記第5の実施の形態で説明したので省略する。
上記ハーフトーン型位相シフター膜4は、前述の実施の形態と同様、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものであって、所定の位相差を有するものである。
【0076】
このハーフトーン型位相シフター膜4は、その上に形成される遮光膜2とエッチング特性が異なる材料とすることが好ましい。例えば、ハーフトーン型位相シフター膜4としては、モリブデン、タングステン、タンタル、ハフニウムなどの金属、シリコン、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、ハーフトーン型位相シフター膜4は、単層でも複数層であっても構わない。
この第6の実施の形態における上記遮光膜2は、ハーフトーン型位相シフト膜と遮光膜とを合わせた積層構造において、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定する。そのように設定される遮光膜2の膜厚は、50nm以下であることが好ましい。その理由は、上記第1の実施の形態と同様であって、ドライエッチング時のパターンのマイクロローディング現象等によって、微細パターンの形成が困難となる場合が考えられるからである。また、本実施の形態において、上記反射防止層6上に形成するレジスト膜の膜厚は、250nm以下が好ましい。さらに好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは150nm以下とすることが望ましい。レジスト膜の膜厚の下限は、レジストパターンをマスクにして遮光膜をドライエッチングしたときに、レジスト膜が残存するように設定される。上述の点を考慮すると、レジスト膜の膜厚は、10nm以上250nm以下、15nm以上200nm以下、20nm以上150nm以下とすることが好ましい。また、前述の実施の形態の場合と同様、高い解像度を得るために、レジスト膜の材料はレジスト感度の高い化学増幅型レジストが好ましい。特に、レジスト膜を50keV以上の電子線描画してレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングすることで、フォトマスクを製造する際に用いられるフォトマスクブランクに適している。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。以下の実施例1〜5は、本発明の第1及び第2の実施の形態に対応する実施例である。併せて、実施例に対する比較例についても説明する。
(実施例1)
前述の図2は、本実施例に係るフォトマスクブランク及びこのフォトマスクブランクを用いたフォトマスクの製造工程を示す断面図である。本実施例のフォトマスクブランク10は、同図(a)に示すように、透光性基板1上に遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2からなる。
このフォトマスクブランク10は、次のような方法で製造することができる。
インライン型スパッタリング装置を用いて、スパッタターゲットにクロムターゲットを使用し、アルゴンガスと窒素ガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:30体積%、N:30体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行って透光性基板1上に遮光層を形成し、その後、アルゴンガスとメタンガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:54体積%、CH:6体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、引き続き、アルゴンガスと一酸化窒素ガスの混合ガス(Ar:90体積%、NO:10体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行うことによって、反射防止層を形成し、合成石英ガラスからなる透光性基板1上に遮光膜2を形成した。尚、上記遮光層成膜時のスパッタリング装置のパワーは1.16kW、全ガス圧は0.17パスカル(Pa)、反射防止層成膜時のスパッタリング装置のパワーは0.33kW、全ガス圧は0.28パスカル(Pa)の条件で遮光膜を形成した。この遮光膜の膜厚は、67nmであった。遮光膜について、ラザフォード後方散乱分析法により組成分析を行った結果、窒素(N)は32.5原子%、酸素(O)は12.8原子%、水素(H)は5.9原子%が含まれているクロム(Cr)膜であった。また、オージエ電子分光法により組成分析を行った結果、上記遮光膜中には炭素(C)が8.0原子%含まれていた。
【0078】
図5は本実施例の遮光膜のラザフォード後方散乱分析による遮光膜の深さ方向の組成分析結果を示す図である。
この結果によると、遮光膜のうち遮光層は、クロム、窒素及び反射防止層の形成に用いた酸素、炭素が若干混入した組成傾斜膜となった。また反射防止層は、クロム、窒素、及び酸素、並びに、炭素が若干混入した組成傾斜膜となった。また、遮光膜中の水素については、深さ方向全体に含まれており、表面側の反射防止層中の含有量が高く、全体としては遮光膜の深さ方向に向かって水素の含有量が略減少している水素の組成傾斜膜となった。
この遮光膜の露光波長193nmにおける光学濃度は、3.0であった。また、この遮光膜の露光波長193nmにおける反射率は14.8%と低く抑えることができた。さらに、フォトマスクの欠陥検査波長である257nm又は364nmに対しては、それぞれ19.9%、19.7%となり、検査する上でも問題とならない反射率であった。
【0079】
また、この遮光膜のシート抵抗は、4端子法で測定したところ、100Ω/□と小さい値を示していた。
次に、前記フォトマスクブランク10上に、化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムアーチ社製:FEP171、膜厚:250nm)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。尚、上記レジスト膜を塗布後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理を行った。
次にフォトマスクブランク10上に形成されたレジスト膜3に対し、電子線描画装置を用いて、所望のパターン描画(80nmのラインアンドスペースパターン)を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン3aを形成した(図2(b)(c)参照)。
【0080】
次に、上記レジストパターン3aに沿って、遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2のドライエッチング処理を行って遮光膜パターン2aを形成した(図2(d)参照)。ドライエッチングガスとして、塩素(Cl)ガスと酸素(O)ガスの混合ガス(Cl:O=4:1)を用いた。このときのエッチング速度は、3.6Å/秒であり、非常に速いものであった。
本実施例では、遮光膜2全体に水素を含有させることによってエッチング速度を速めるとともに、遮光層に主に窒素を多く含め、反射防止層に主に酸素を多く含めることによって、遮光膜2全体のエッチング速度を速くするようにした。このように、遮光膜2は膜厚が薄い上にエッチング速度が速く、エッチング時間も速いことから、遮光膜パターン2aの断面形状も垂直形状となり良好となった。また、遮光膜パターン2a上にはレジスト膜が残存していた。
最後に残存するレジストパターンを剥離して、フォトマスク20を得た(図2(e)参照)。その結果、透光性基板上に80nmのラインアンドスペースの遮光膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することができた。
【0081】
(実施例2)
インライン型スパッタリング装置を用いて、スパッタターゲットにクロムターゲットを使用し、アルゴンガスと窒素ガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:30体積%、N:30体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行って透光性基板上に遮光層を形成し、その後、アルゴンガスとプロパンガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:57体積%、C:3体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、引き続き、アルゴンガスと一酸化窒素ガスの混合ガス(Ar:90体積%、NO:10体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行うことによって、反射防止層を形成し、合成石英ガラスからなる透光性基板1上に遮光膜2を形成した。尚、上記遮光層成膜時のスパッタリング装置のパワーは1.14kW、全ガス圧は0.17パスカル(Pa)、反射防止層成膜時のスパッタリング装置のパワーは0.33kW、全ガス圧は0.30パスカル(Pa)の条件で遮光膜を形成した。この遮光膜の膜厚は、67nmであった。遮光膜について、ラザフォード後方散乱分析法により組成分析を行った結果、窒素(N)は30.2原子%、酸素(O)は12.0原子%、水素(H)は1.8原子%が含まれているクロム(Cr)膜であった。また、オージエ電子分光法により組成分析を行った結果、上記遮光膜中には炭素(C)が10.1原子%含まれていた。
【0082】
この遮光膜の露光波長193nmにおける光学濃度は、3.0であった。また、この遮光膜の露光波長193nmにおける反射率は13.5%と低く抑えることができた。さらに、フォトマスクの欠陥検査波長である257nm又は364nmに対しては、それぞれ19.8%、20.1%となり、検査する上でも問題とならない反射率であった。
また、この遮光膜のシート抵抗は、4端子法で測定したところ、110Ω/□と小さい値を示していた。
次に、前記フォトマスクブランク上に、化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムアーチ社製:FEP171、膜厚:250nm)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。尚、上記レジスト膜を塗布後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理を行った。
【0083】
次にフォトマスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて、所望のパターン描画(80nmのラインアンドスペースパターン)を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
次に、上記レジストパターンに沿って、遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2のドライエッチング処理を行って遮光膜パターン2aを形成した。ドライエッチングガスとして、塩素(Cl)ガスと酸素(O)ガスの混合ガス(Cl:O=4:1)を用いた。このときのエッチング速度は、3.3Å/秒であり、非常に速いものであった。
【0084】
本実施例では、遮光膜2全体に水素を含有させることによってエッチング速度を速めるとともに、遮光層に主に窒素を多く含め、反射防止層に主に酸素を多く含めることによって、遮光膜2全体のエッチング速度を速くするようにした。このように、遮光膜2は膜厚が薄い上にエッチング速度が速く、エッチング時間も短いことから、遮光膜パターン2aの断面形状も垂直形状となり良好となった。また、遮光膜パターン2a上にはレジスト膜が残存していた。
最後に残存するレジストパターンを剥離して、フォトマスクを得た。その結果、透光性基板上に80nmのラインアンドスペースの遮光膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することができた。
【0085】
(実施例3)
インライン型スパッタリング装置を用いて、スパッタターゲットにクロムターゲットを使用し、アルゴンガスと窒素ガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:30体積%、N:30体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行って透光性基板上に遮光層を形成し、その後、アルゴンガスとメタンガスとヘリウムガスと水素ガスの混合ガス(Ar:44体積%、CH:6体積%、He:40体積%、H:10体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、引き続き、アルゴンガスと一酸化窒素ガスの混合ガス(Ar:90体積%、NO:10体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行うことによって、反射防止層を形成し、合成石英ガラスからなる透光性基板1上に遮光膜2を形成した。尚、上記遮光膜成膜時のスパッタリング装置のパワーは1.18kW、全ガス圧は0.17パスカル(Pa)、反射防止層成膜時のスパッタリング装置のパワーは0.33kW、全ガス圧は0.26パスカル(Pa)の条件で遮光膜を形成した。この遮光膜の膜厚は、67nmであった。遮光膜について、ラザフォード後方散乱分析法により組成分析を行った結果、窒素(N)は35.3原子%、酸素(O)は13.0原子%、水素(H)は8.9原子%が含まれているクロム(Cr)膜であった。また、オージエ電子分光法により組成分析を行った結果、上記遮光膜中には炭素(C)が4.0原子%含まれていた。この遮光膜の露光波長193nmにおける光学濃度は、3.0であった。また、この遮光膜の露光波長193nmにおける反射率は15.0%と低く抑えることができた。さらにフォトマスクの欠陥検査波長である257nm又は364nmに対しては、それぞれ18.2%、18.5%となり、検査する上でも問題とならない反射率であった。
【0086】
また、この遮光膜のシート抵抗は、4端子法で測定したところ、95Ω/□と小さい値を示していた。
次に、前記フォトマスクブランク上に、化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムアーチ社製:FEP171、膜厚:250nm)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。尚、上記レジスト膜を塗布後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理を行った。
次にフォトマスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて、所望のパターン描画(80nmのラインアンドスペースパターン)を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
【0087】
次に、上記レジストパターンに沿って、遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2のドライエッチング処理を行って遮光膜パターン2aを形成した。ドライエッチングガスとして、塩素(Cl)ガスと酸素(O)ガスの混合ガス(Cl:O=4:1)を用いた。このときのエッチング速度は、4.1Å/秒であり、非常に速いものであった。
本実施例では、遮光膜2全体に水素を含有させることによってエッチング速度を速めるとともに、遮光層に主に窒素を多く含め、反射防止層に主に酸素を多く含めることによって、遮光膜2全体のエッチング速度を速くするようにした。このように、遮光膜2は膜厚が薄い上にエッチング速度が速く、エッチング時間も速いことから、遮光膜パターン2aの断面形状も垂直形状となり良好となった。また、遮光膜パターン2a上にはレジスト膜が残存していた。最後に残存するレジストパターンを剥離して、フォトマスクを得た。その結果、透光性基板上に80nmのラインアンドスペースの遮光膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することができた。
【0088】
(実施例4)
図3は、本実施例に係るフォトマスクブランク及びこのフォトマスクブランクを用いたフォトマスクの製造工程を示す断面図である。本実施例のフォトマスクブランク30は、同図(a)に示すように、透光性基板1上に、ハーフトーン型位相シフター膜4とその上の遮光層5と反射防止層6とからなる遮光膜2からなる。
このフォトマスクブランク30は、次のような方法で製造することができる。
合成石英ガラスからなる透光性基板上に、枚葉式スパッタ装置を用いて、スパッタターゲットにモリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=8:92mol%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気(Ar:N=10体積%:90体積%)で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、シリコン、及び窒素を主たる構成要素とする単層で構成されたArFエキシマレーザー(波長193nm)用ハーフトーン型位相シフター膜を膜厚69nmに形成した。尚、このハーフトーン型位相シフター膜は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)でおいて、透過率は5.5%、位相シフト量が略180°となっている。
【0089】
次に、上記ハーフトーン型位相シフター膜上に、実施例1と同様にして総膜厚が48nmの遮光層及び反射防止層からなる遮光膜を形成した。
次に、前記フォトマスクブランク30上に、化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムアーチ社製:FEP171、膜厚:200nm)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。尚、上記レジスト膜を塗布後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理を行った。
次に、前記フォトマスクブランク30上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて、所望のパターン描画(70nmのラインアンドスペースパターン)を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン7を形成した(図3(b)参照)。
次に、上記レジストパターン7に沿って、遮光層5と反射防止層6とならなる遮光膜2のドライエッチングを行って遮光膜パターン2aを形成した(同図(c)参照)。
【0090】
次に、上述の遮光膜パターン2a及びレジストパターン7をマスクに、ハーフトーン型位相シフター膜4のエッチングを行ってハーフトーン型位相シフター膜パターン4aを形成した(同図(d)参照)。このハーフトーン型位相シフター膜4のエッチングにおいては、前記遮光膜パターン2aの断面形状が影響するため、遮光膜パターン2aの断面形状が良好であるために、ハーフトーン型位相シフター膜パターン4aの断面形状も良好となった。
次に、残存するレジストパターン7を剥離後、再度レジスト膜8を塗布し、転写領域内の不要な遮光膜パターンを除去するためのパターン露光を行った後、該レジスト膜8を現像してレジストパターン8aを形成した(同図(e)、(f)参照)。次いで、ウェットエッチングを用いて不要な遮光膜パターンを除去し、残存するレジストパターンを剥離して、フォトマスク40を得た(同図(g)参照)。その結果、透光性基板上に、70nmのラインアンドスペースのハーフトーン型位相シフター膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することが出来た。
【0091】
尚、図3(g)に示す例は、転写領域(マスクパターン形成領域)以外の領域である周辺領域において、位相シフター膜上に遮光膜を形成したものである。この遮光膜は、この周辺領域を露光光が通過できないようにするものである。すなわち、位相シフトマスクは、縮小投影露光装置(ステッパー)のマスクとして用いられるが、この縮小投影露光装置を用いてパターン転写を行うときは、該露光装置に備えられた被覆部材(アパーチャー)によって位相シフトマスクの転写領域のみを露出させるように周縁領域を被覆して露光を行う。しかしながら、この被覆部材を、精度良く転写領域のみを露出させるように設置することは難しく、多くの場合、露出部が転写領域の外周周辺の非転写領域にはみ出てしまう。通常、マスクの非転写領域にはこのはみ出してきた露光光を遮断するために遮光膜が設けられる。ハーフトーン型位相シフトマスクの場合は、位相シフター膜が遮光機能を有しているが、この位相シフター膜は露光光を完全に遮断するものではなく、1回の露光によっては実質的に露光に寄与できない程度の僅かな量ではあるが露光光を通過させる。それゆえ、繰り返しのステップ時にこのはみ出しによって位相シフター膜を通過した露光光がすでにパターン露光がなされた領域に達して重複露光がされたり、或いは他のショットの際に同様にはみ出しによる僅かな露光がなされた部分に重ねて露光する場合が生じる。この重複露光によって、それらが加算されて露光に寄与する量に達して、欠陥が発生する場合があった。マスクパターン形成領域以外の領域である周辺領域において位相シフター膜上に形成された上記遮光膜はこの問題を解消するものである。また、マスクの周辺領域に識別用の符号等を付す場合に、遮光膜があると、付された符号等を認識し易くなる。
【0092】
(実施例5)
実施例4と同じ合成石英ガラスからなる透光性基板上に、枚葉式スパッタ装置を用いて、スパッタターゲットにタンタル(Ta)とハフニウム(Hf)との混合ターゲット(Ta:Hf=90:10at%)を用い、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中で、DCマグネトロンスパッタリングにより、膜厚75ÅのTaHf膜を形成し、次に、Siターゲットを用い、アルゴンと酸素と窒素の混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより、膜厚740ÅのSiON膜(Si:O:N=40:27:33at%)を形成した。つまり、TaHf膜を下層とし、SiON膜を上層とする二層で構成されたArFエキシマレーザー(波長193nm)用ハーフトーン型位相シフター膜を形成した。尚、このハーフトーン型位相シフター膜は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)でおいて、透過率は15.0%と高透過率を有し、位相シフト量が略180°となっている。
【0093】
次に、上記ハーフトーン型位相シフター膜上に、実施例4と同様にして総膜厚が48nmの遮光層及び反射防止層からなる遮光膜を形成した。
このようにして得られたハーフトーン型位相シフトマスク用のフォトマスクブランクを用いて、実施例4と同様に、ハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。但し、本実施例では、図4に示すように、転写領域内の遮光膜パターンを除去せずに、マスクパターンにおける光透過部(マスクパターンが形成されておらず透明基板が露出している部分)との境界部を除く部分に遮光膜を形成させておいた。
その結果、透光性基板上に、70nmのラインアンドスペースのハーフトーン型位相シフター膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することが出来た。
【0094】
図4に示すハーフトーン型位相シフトマスクは、位相シフター膜のマスクパターンが形成されている領域にあって、マスクパターンにおける光透過部(マスクパターンが形成されておらず透明基板が露出している部分)との境界部を除く部分に遮光膜を形成させておくことによって、本来は完全に遮光されることが望ましい部分の遮光をより完全にするようにしたものである。すなわち、マスクパターンが形成されている領域内にあっては、マスクパターンである位相シフター膜に本来要求される機能は、光透過部との境界部のみで位相をシフトさせた光を通過させればよく、他の大部分(上記境界部を除く部分)は、むしろ完全に遮光することが望ましいからである。本実施例のように、露光光に対する透過率が高い位相シフター膜を備える場合には、本実施例のフォトマスクの形態は特に好適である。
【0095】
(比較例1)
実施例1において、反射防止層の形成を、アルゴンガスと二酸化炭素ガスの混合ガス(Ar:92体積%、CO:8体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行うことで形成した以外は、実施例1と同様にしてフォトマスクブランクを作製した。尚、反射防止層成膜時のスパッタリング装置のパワーは0.35kW、全ガス圧は0.20パスカル(Pa)の条件で形成した。遮光膜の膜厚は、70nmであった。遮光膜について、ラザフォード後方散乱分析法により組成分析を行った結果、窒素(N)は38.0原子%、酸素(O)は12.1原子%、水素(H)は0%が含まれているクロム(Cr)膜であった。また、オージエ電子分光法により組成分析を行った結果、上記遮光膜中には炭素(C)が10.8原子%含まれていた。
また、この遮光膜のシート抵抗は、4端子法で測定したところ、200Ω/□であった。
次に、得られたフォトマスクブランクを用いて、実施例1と同様にして、フォトマスクを作製した。遮光膜のドライエッチング速度は、2.1Å/秒であり、非常に遅いものであった。このように、本比較例の遮光膜はエッチング速度が遅く、エッチング時間も長くなることから、形成された遮光膜パターンの断面形状も悪かった。また、80nmのラインアンドスペースの遮光膜パターンが正確に形成することができなかった。
【0096】
(半導体装置の製造方法)
実施例1〜5によって得られたフォトマスクを露光装置にセットし、半導体基板上のレジスト膜にパターン転写を行って、半導体装置を作製したところ、半導体基板上に形成された回路パターンの欠陥もなく、良好な半導体装置を得ることができた。
上記実施例1〜5におけるフォトマスク作製過程における電子線描画の際の電子線の加速電圧を50keV以上とした際も、遮光膜の導電性は良好で、形成された遮光膜パターンの断面形状は垂直形状で良好、80nmや70nmのラインアンドスペースパターンも良好に形成されたフォトマスクが得られた。
【0097】
以下の実施例6〜9は、本発明の第3及び第4の実施の形態に対応する実施例である。
(実施例6)
本実施例のフォトマスクブランクは、透光性基板1上に遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2からなる。
このフォトマスクブランクは、次のような方法で製造することができる。
スパッタリング装置を用いて、スパッタターゲットにクロムターゲットを使用し、アルゴンガスと窒素ガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:30体積%、N:30体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行って透光性基板1上に遮光層を形成し、その後、アルゴンガスとメタンガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:54体積%、CH:6体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、引き続き、アルゴンガスと一酸化窒素ガスの混合ガス(Ar:90体積%、NO:10体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行うことによって、反射防止層を形成し、合成石英ガラスからなる透光性基板1上に遮光膜2を形成した。尚、上記遮光層成膜時のスパッタリング装置のパワーは1.16kW、全ガス圧は0.17パスカル(Pa)、反射防止層成膜時のスパッタリング装置のパワーは0.33kW、全ガス圧は0.28パスカル(Pa)の条件で遮光膜を形成した。遮光層と反射防止層の成膜速度の比率は、3.2:1であった。遮光膜の膜厚は、67nmであった。遮光膜について、ラザフォード後方散乱分析法により組成分析を行った結果、窒素(N)は32.5原子%、酸素(O)は12.8原子%、水素(H)は5.9原子%が含まれているクロム(Cr)膜であった。また、オージエ電子分光法により組成分析を行った結果、上記遮光膜中には炭素(C)が8.0原子%含まれていた。
【0098】
図6は本実施例の遮光膜のラザフォード後方散乱分析による遮光膜の深さ方向の組成分析結果を示す図である。
この結果によると、遮光膜のうち遮光層は、クロム、窒素及び反射防止層の形成に用いた酸素、炭素が若干購入した組成傾斜膜となった。また反射防止層は、クロム、窒素、及び酸素、並びに、炭素が若干購入した組成傾斜膜となった。また、遮光膜中の水素については、深さ方向全体に含まれており、表面側の反射防止層中の含有量が高く、全体としては遮光膜の深さ方向に向かって水素の含有量が略減少している水素の組成傾斜膜となった。
この遮光膜の光学濃度は、3.0であった。また、この遮光膜の露光波長193nmにおける反射率は14.8%と低く抑えることができた。さらに、フォトマスクの欠陥検査波長である257nm又は364nmに対しては、それぞれ19.9%、19.7%となり、検査する上でも問題とならない反射率であった。
【0099】
次に、前記フォトマスクブランク上に、化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製:FEP171)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。尚、上記レジスト膜を塗布後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理を行った。
次にフォトマスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画(80nmのラインアンドスペースパターン)を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
次に、上記レジストパターンに沿って、遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2のドライエッチング処理を行って遮光膜パターン2aを形成した。ドライエッチングガスとして、塩素(Cl)ガスと酸素(O)ガスの混合ガス(Cl:O=4:1)を用いた。このときエッチング速度は、反射防止層が4.9Å/秒、遮光層が3.3Å/秒で、遮光膜全体のエッチング速度は、3.6Å/秒であった。遮光膜の深さ方向におけるエッチング速度は、遮光膜の表面側のエッチング速度が速く、透光性基板側が遅い傾向であった。
【0100】
本実施例では、遮光膜2における遮光層の成膜速度よりも、反射防止層の成膜速度を遅くして形成することにより、遮光膜の深さ方向に向かってドライエッチング速度を適度に遅くすることで、グローバルローディングエラーは実用上許容できる数値に収まった。また、遮光膜2における遮光層に主に窒素を多く含め、反射防止層に主に酸素を多く含めることによって、遮光膜2全体のエッチング速度を速くするようにした。このように、遮光膜2は膜厚が薄い上にエッチング速度が速く、エッチング時間も速いことから、遮光膜パターン2aの断面形状も垂直形状となり良好となった。また、遮光膜パターン2a上にはレジスト膜が残存していた。
最後に残存するレジストパターンを剥離して、フォトマスクを得た。その結果、透光性基板上に80nmのラインアンドスペースの遮光膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することができた。
【0101】
(実施例7)
スパッタリングターゲットにクロムターゲットを使用し、アルゴンガスと窒素ガスの混合ガス(Ar:50体積%、N:50体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行って透光性基板1上に遮光層を形成し、その後、アルゴンガスとメタンガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:54体積%、CH:6体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、引き続き、アルゴンガスと一酸化窒素ガスの混合ガス(Ar:90体積%、NO:10体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行うことによって、反射防止層を形成し、合成石英ガラスからなる透光性基板1上に遮光膜2を形成した。尚、上記遮光層成膜時のスパッタリング装置のパワーは0.9kW、全ガス圧は0.2パスカル(Pa)、反射防止層成膜時のスパッタリング装置のパワーは0.33kW、全ガス圧は0.28パスカル(Pa)の条件で遮光膜を形成した。遮光層と反射防止層の成膜速度の比率は、3.8:1であった。遮光膜の膜厚は、65nmであった。
【0102】
次に、前記フォトマスクブランク上に、化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製:FEP171)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。尚、上記レジスト膜を塗布後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理を行った。
次にフォトマスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画(80nmのラインアンドスペースパターン)を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
次に、上記レジストパターンに沿って、遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2のドライエッチング処理を行って遮光膜パターン2aを形成した。ドライエッチングガスとして、塩素(Cl)ガスと酸素(O)ガスの混合ガス(Cl:O=4:1)を用いた。このときエッチング速度は、反射防止層が4.9Å/秒、遮光層が2.9Å/秒で、遮光膜全体のエッチング速度は、3.2Å/秒であった。遮光膜の深さ方向におけるエッチング速度は、遮光膜の表面側のエッチング速度が速く、透光性基板側が遅い傾向であった。
【0103】
本実施例では、遮光膜2における遮光層の成膜速度よりも、反射防止層の成膜速度を遅くして形成することにより、遮光膜の深さ方向に向かってドライエッチング速度を適度に遅くすることで、グローバルローディングエラーは実用上許容できる数値に収まった。また、遮光膜2における遮光層に主に窒素を多く含め、反射防止層に主に酸素を多く含めることによって、遮光膜2全体のエッチング速度を速くするようにした。このように、遮光膜2は膜厚が薄い上にエッチング速度が速く、エッチング時間も速いことから、遮光膜パターン2aの断面形状も垂直形状となり良好となった。また、遮光膜パターン2a上にはレジスト膜が残存していた。
最後に残存するレジストパターンを剥離して、フォトマスクを得た。その結果、透光性基板上に80nmのラインアンドスペースの遮光膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することができた。
【0104】
(実施例8)
図3は、本実施例に係るフォトマスクブランク及びこのフォトマスクブランクを用いたフォトマスクの製造工程を示す断面図である。本実施例のフォトマスクブランク30は、同図(a)に示すように、透光性基板1上に、ハーフトーン型位相シフター膜4とその上の遮光層5と反射防止層6とからなる遮光膜2からなる。
このフォトマスクブランク30は、次のような方法で製造することができる。
合成石英ガラスからなる透光性基板上に、枚葉式スパッタ装置を用いて、スパッタターゲットにモリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=8:92mol%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気(Ar:N=10体積%:90体積%)で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、シリコン、及び窒素を主たる構成要素とする単層で構成されたArFエキシマレーザー(波長193nm)用ハーフトーン型位相シフター膜を膜厚69nmに形成した。尚、このハーフトーン型位相シフター膜は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)でおいて、透過率は5.5%、位相シフト量が略180°となっている。
【0105】
次に、上記ハーフトーン型位相シフター膜上に、実施例6と同様にして総膜厚が48nmの遮光層及び反射防止層からなる遮光膜を形成した。
次に、前記フォトマスクブランク30上に、化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製:FEP171、膜厚:200nm)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。尚、上記レジスト膜を塗布後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理を行った。
次に、前記フォトマスクブランク30上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて、所望のパターン描画(70nmのラインアンドスペースパターン)を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン7を形成した(図3(b)参照)。
次に、上記レジストパターン7に沿って、遮光層5と反射防止層6とからなる遮光膜2のドライエッチングを行って遮光膜パターン2aを形成した(同図(c)参照)。
【0106】
次に、上述の遮光膜パターン2a及びレジストパターン7をマスクに、ハーフトーン型位相シフター膜4のエッチングを行ってハーフトーン型位相シフター膜パターン4aを形成した(同図(d)参照)。このハーフトーン型位相シフター膜4のエッチングにおいては、前記遮光膜パターン2aの断面形状が影響するため、遮光膜パターン2aの断面形状が良好であるために、ハーフトーン型位相シフター膜パターン4aの断面形状も良好となった。
次に、残存するレジストパターン7を剥離後、再度レジスト膜8を塗布し、転写領域内の不要な遮光膜パターンを除去するためのパターン露光を行った後、該レジスト膜8を現像してレジストパターン8aを形成した(同図(e)、(f)参照)。次いで、ウェットエッチングを用いて不要な遮光膜パターンを除去し、残存するレジストパターンを剥離して、フォトマスク40を得た(同図(g)参照)。
その結果、透光性基板上に、70nmのラインアンドスペースのハーフトーン型位相シフター膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することが出来た。また、グローバルローディングエラーは実用上許容できる数値に収まった。
【0107】
(実施例9)
実施例6と同じ合成石英ガラスからなる透光性基板上に、枚葉式スパッタ装置を用いて、スパッタターゲットにタンタル(Ta)とハフニウム(Hf)との混合ターゲット(Ta:Hf=90:10at%)を用い、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中で、DCマグネトロンスパッタリングにより、膜厚75ÅのTaHf膜を形成し、次に、Siターゲットを用い、アルゴンと酸素と窒素の混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより、膜厚740ÅのSiON膜(Si:O:N=40:27:33at%)を形成した。つまり、TaHf膜を下層とし、SiON膜を上層とする二層で構成されたArFエキシマレーザー(波長193nm)用ハーフトーン型位相シフター膜を形成した。尚、このハーフトーン型位相シフター膜は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)でおいて、透過率は15.0%と高透過率を有し、位相シフト量が略180°となっている。
【0108】
次に、上記ハーフトーン型位相シフター膜上に、実施例8と全く同様にして総膜厚が48nmの遮光層及び反射防止層からなる遮光膜を形成した。
このようにして得られたハーフトーン型位相シフトマスク用のフォトマスクブランクを用いて、実施例8と同様に、ハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。但し、本実施例では、図4に示すように、転写領域内の遮光膜パターンを除去せずに、マスクパターンにおける光透過部(マスクパターンが形成されておらず透明基板が露出している部分)との境界部を除く部分に遮光膜を形成させておいた。
その結果、透光性基板上に、70nmのラインアンドスペースのハーフトーン型位相シフター膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することが出来た。また、グローバルローディングエラーは実用上許容できる数値に収まった。
【0109】
(比較例2)
スパッタリングターゲットにクロムターゲットを使用し、アルゴンガスと窒素ガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:30体積%、N:30体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行って透光性基板1上に遮光層を形成し、その後、アルゴンガスとメタンガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:54体積%、CH:6体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、引き続き、アルゴンガスと一酸化窒素ガスの混合ガス(Ar:90体積%、NO:10体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行うことによって、反射防止層を形成し、合成石英ガラスからなる透光性基板1上に遮光膜2を形成した。尚、上記遮光層成膜時のスパッタリング装置のパワーは0.33kW、全ガス圧は0.28パスカル(Pa)、反射防止層成膜時のスパッタリング装置のパワーは0.33kW、全ガス圧は0.28パスカル(Pa)の条件で遮光膜を形成した。遮光層と反射防止層の成膜速度の比率は、1:1であった。遮光膜の膜厚は、70nmであった。
【0110】
次に、前記フォトマスクブランク上に、化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製:FEP171)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。尚、上記レジスト膜を塗布後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理を行った。
次にフォトマスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画(80nmのラインアンドスペースパターン)を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
【0111】
次に、上記レジストパターンに沿って、遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2のドライエッチング処理を行って遮光膜パターン2aを形成した。ドライエッチングガスとして、塩素(Cl)ガスと酸素(O)ガスの混合ガス(Cl:O=4:1)を用いた。このときエッチング速度は、反射防止層が4.2Å/秒、遮光層が4.2Å/秒で、遮光膜全体のエッチング速度は、4.2Å/秒であった。このように遮光膜の深さ方向におけるエッチング速度は、遮光膜の表面側と透光性基板側とでは同一であった。
本比較例では、遮光膜2における遮光層の成膜速度と反射防止層の成膜速度を同じにして形成したことにより、遮光膜の深さ方向に向かってドライエッチング速度が略一定となり、そのためグローバルローディングエラーが大きくなり、グローバルローディングエラーは実用上許容できる数値に収まらなかった。
(半導体装置の製造方法)
上述の実施例6〜9によって得られたフォトマスクを露光装置にセットし、半導体基板上のレジスト膜にパターン転写を行って、半導体装置を作製したところ、半導体基板上に形成された回路パターンの欠陥もなく、良好な半導体装置を得ることができた。
上記実施例6〜9におけるフォトマスク作製過程における電子線描画の際の電子線の加速電圧を50keV以上とした際も、遮光膜の導電性は良好で、形成された遮光膜パターンの断面形状は垂直形状で良好、80nmや70nmのラインアンドスペースパターンも良好に形成され、さらにグローバルローディングエラーは実用上許容できる数値に収まったフォトマスクが得られた。
【0112】
以下の実施例10〜12は、本発明の第5及び第6の実施の形態に対応する実施例である。
(実施例10)
本実施例のフォトマスクブランクは、透光性基板1上に遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2からなる。
このフォトマスクブランクは、次のような方法で製造することができる。
スパッタリング装置を用いて、スパッタターゲットにクロムターゲットを使用し、アルゴンガスと窒素ガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:30体積%、N:30体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行って透光性基板1上に遮光層を形成し、その後、アルゴンガスとメタンガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:54体積%、CH:6体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、引き続き、アルゴンガスと一酸化窒素ガスの混合ガス(Ar:90体積%、NO:10体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行うことによって、反射防止層を形成し、合成石英ガラスからなる透光性基板1上に遮光膜2を形成した。尚、上記遮光層成膜時のスパッタリング装置のパワーは1.16kW、全ガス圧は0.17パスカル(Pa)、反射防止層成膜時のスパッタリング装置のパワーは0.33kW、全ガス圧は0.28パスカル(Pa)の条件で遮光膜を形成した。遮光層と反射防止層の成膜速度の比率は、3.2:1であった。遮光膜の膜厚は、67nmであった。遮光膜について、ラザフォード後方散乱分析法により組成分析を行った結果、窒素(N)は32.5原子%、酸素(O)は12.8原子%、水素(H)は5.9原子%が含まれているクロム(Cr)膜であった。また、オージエ電子分光法により組成分析を行った結果、上記遮光膜中には炭素(C)が8.0原子%含まれていた。
【0113】
図7は本実施例の遮光膜のオージエ電子分光分析による遮光膜の深さ方向の組成分析結果を示す図である。
この結果によると、遮光膜のうち遮光層は、クロム、窒素及び反射防止層の形成に用いた酸素、炭素が若干混入した組成傾斜膜となった。また反射防止層は、クロム、窒素、及び酸素、並びに、炭素が若干混入した組成傾斜膜となった。
図8は本実施例の遮光膜のラザフォード後方散乱分析法により組成分析を行った結果であり、Crの組成比を1としたときの遮光膜の表面側から透光性基板側のクロム(Cr)、窒素(N)、酸素(O)、水素(H)、炭素(C)の分布を示す図である。図8に示すように、遮光膜は、表面側から透光性基板側に向かう膜厚方向の略全域に窒素(N)が含まれており、更に、表面側から透光性基板側に向かって酸素(O)の含有量が減少していることがわかる。また、表面側から透光性基板側に向かって水素(H)の含有量も減少している。ここで、窒素(N)は、遮光膜中に含まれるクロム(Cr)の割合(組成比)を1としたときに、窒素(N)は、表面側から透光性基板側の略全域において、0.65〜0.67と均一に含まれていた。
この遮光膜の光学濃度は、3.0であった。また、この遮光膜の露光波長193nmにおける反射率は14.8%と低く抑えることができた。さらに、フォトマスクの欠陥検査波長である257nm又は364nmに対しては、それぞれ19.9%、19.7%となり、検査する上でも問題とならない反射率であった。
【0114】
次に、前記フォトマスクブランク上に、化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製:FEP171)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。尚、上記レジスト膜を塗布後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理を行った。
次にフォトマスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画(80nmのラインアンドスペースパターン)を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
次に、上記レジストパターンに沿って、遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2のドライエッチング処理を行って遮光膜パターン2aを形成した。ドライエッチングガスとして、塩素(Cl)ガスと酸素(O)ガスの混合ガス(Cl:O=4:1)を用いた。このときエッチング速度は、反射防止層が4.9Å/秒、遮光層が3.3Å/秒で、遮光膜全体のエッチング速度は、3.6Å/秒であった。遮光膜の深さ方向におけるエッチング速度は、遮光膜の表面側のエッチング速度が速く、透光性基板側が遅い傾向であった。
【0115】
本実施例では、遮光膜2における遮光層の成膜速度よりも、反射防止層の成膜速度を遅くして形成することにより、遮光膜の深さ方向に向かってドライエッチング速度を適度に遅くすることで、グローバルローディングエラーは実用上許容できる数値に収まった。また、遮光膜2における遮光層に主に窒素を多く含め、反射防止層に主に酸素を多く含めることによって、遮光膜2全体のエッチング速度を速くするようにした。このように、遮光膜2は膜厚が薄い上にエッチング速度が速く、エッチング時間も速いことから、遮光膜パターン2aの断面形状も垂直形状となり良好となった。また、遮光膜パターン2a上にはレジスト膜が残存していた。
最後に残存するレジストパターンを剥離して、フォトマスクを得た。その結果、透光性基板上に80nmのラインアンドスペースの遮光膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することができた。
【0116】
(実施例11)
図3は、本実施例に係るフォトマスクブランク及びこのフォトマスクブランクを用いたフォトマスクの製造工程を示す断面図である。本実施例のフォトマスクブランク30は、同図(a)に示すように、透光性基板1上に、ハーフトーン型位相シフター膜4とその上の遮光層5と反射防止層6とからなる遮光膜2からなる。
このフォトマスクブランク30は、次のような方法で製造することができる。
合成石英ガラスからなる透光性基板上に、枚葉式スパッタ装置を用いて、スパッタターゲットにモリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=8:92mol%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気(Ar:N=10体積%:90体積%)で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、シリコン、及び窒素を主たる構成要素とする単層で構成されたArFエキシマレーザー(波長193nm)用ハーフトーン型位相シフター膜を膜厚69nmに形成した。尚、このハーフトーン型位相シフター膜は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)でおいて、透過率は5.5%、位相シフト量が略180°となっている。
【0117】
次に、上記ハーフトーン型位相シフター膜上に、実施例10と同様にして総膜厚が48nmの遮光層及び反射防止層からなる遮光膜を形成した。
次に、前記フォトマスクブランク30上に、化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製:FEP171、膜厚:200nm)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。尚、上記レジスト膜を塗布後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理を行った。
次に、前記フォトマスクブランク30上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて、所望のパターン描画(70nmのラインアンドスペースパターン)を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン7を形成した(図3(b)参照)。
次に、上記レジストパターン7に沿って、遮光層5と反射防止層6とからなる遮光膜2のドライエッチングを行って遮光膜パターン2aを形成した(同図(c)参照)。
【0118】
次に、上述の遮光膜パターン2a及びレジストパターン7をマスクに、ハーフトーン型位相シフター膜4のエッチングを行ってハーフトーン型位相シフター膜パターン4aを形成した(同図(d)参照)。このハーフトーン型位相シフター膜4のエッチングにおいては、前記遮光膜パターン2aの断面形状が影響するため、遮光膜パターン2aの断面形状が良好であるために、ハーフトーン型位相シフター膜パターン4aの断面形状も良好となった。
次に、残存するレジストパターン7を剥離後、再度レジスト膜8を塗布し、転写領域内の不要な遮光膜パターンを除去するためのパターン露光を行った後、該レジスト膜8を現像してレジストパターン8aを形成した(同図(e)、(f)参照)。次いで、ウェットエッチングを用いて不要な遮光膜パターンを除去し、残存するレジストパターンを剥離して、フォトマスク40を得た(同図(g)参照)。
その結果、透光性基板上に70nmのラインアンドスペースのハーフトーン型位相シフター膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することができた。また、グローバルローディングエラーは実用上許容できる数値に収まった。
【0119】
(実施例12)
実施例10と同じ合成石英ガラスからなる透光性基板上に、枚葉式スパッタ装置を用いて、スパッタターゲットにタンタル(Ta)とハフニウム(Hf)との混合ターゲット(Ta:Hf=90:10at%)を用い、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中で、DCマグネトロンスパッタリングにより、膜厚75ÅのTaHf膜を形成し、次に、Siターゲットを用い、アルゴンと酸素と窒素の混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより、膜厚740ÅのSiON膜(Si:O:N=40:27:33at%)を形成した。つまり、TaHf膜を下層とし、SiON膜を上層とする二層で構成されたArFエキシマレーザー(波長193nm)用ハーフトーン型位相シフター膜を形成した。尚、このハーフトーン型位相シフター膜は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)でおいて、透過率は15.0%と高透過率を有し、位相シフト量が略180°となっている。
【0120】
次に、上記ハーフトーン型位相シフター膜上に、実施例11と全く同様にして総膜厚が48nmの遮光層及び反射防止層からなる遮光膜を形成した。
このようにして得られたハーフトーン型位相シフトマスク用のフォトマスクブランクを用いて、実施例11と同様に、ハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。但し、本実施例では、図4に示すように、転写領域内の遮光膜パターンを除去せずに、マスクパターンにおける光透過部(マスクパターンが形成されておらず透明基板が露出している部分)との境界部を除く部分に遮光膜を形成させておいた。
その結果、透光性基板上に70nmのラインアンドスペースのハーフトーン型位相シフター膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することができた。また、グローバルローディングエラーは実用上許容できる数値に収まった。
【0121】
(比較例3)
実施例10と同じ石英ガラスからなる透光性基板上に、インライン型スパッタ装置を用いて、スパッタターゲットにクロムターゲットを使用し、アルゴンと窒素の混合ガス(Ar:50体積%、N:50体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、次にアルゴンとメタンとヘリウムの混合ガス(Ar:54体積%、CH:6体積%、He:40体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行うことによって、遮光層を形成した。引続き、アルゴンと一酸化窒素の混合ガス(Ar:90体積%、NO:10体積%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行うことによって、反射防止層を形成した。このようにして、総膜厚が68nmの遮光層及び反射防止層からなる遮光膜が形成された。
本比較例の遮光膜は、光学濃度が3.0であった。また、この遮光膜の露光波長193nmにおける反射率は12.0%と低く抑えることができた。
【0122】
次に、得られたフォトマスクブランクを用いて、前述の実施例10と同様にして、フォトマスクを作製した。遮光膜のドライエッチング速度は、遮光膜の総膜厚/エッチング時間で1.8Å/秒であり、非常に遅いものであった。このように、本比較例の遮光膜はエッチング速度が遅く、エッチング時間も長くなることから、形成された遮光膜パターンの断面形状も悪かった。また、レジスト膜のダメージも大きかった。その理由は、本比較例の遮光膜は、ウェットエッチングに好適な膜構成となっており、その成膜条件からすると、ウェットエッチング速度を速めるのに好適な炭素の含有量が多く、ウェットエッチングにおいてアンダーカットを抑制するように窒素の含有量が少ないためであると推察され、これがドライエッチング速度を遅くする結果になったものと考えられる。また、遮光膜の深さ方向に向かって、最初はドライエッチング速度が速く、主にCrC膜の領域では遅くなり、最後にCrN膜の領域では再び速くなるため、パターンの断面形状を劣化させたり、グローバルローディング現象が起こりやすかったものと考えられる。
その結果、透光性基板上に80nmのラインアンドスペースの遮光膜パターンが形成されたフォトマスクを作製することができたが、グローバルローディングエラーは実用上許容できる数値に収まらなかった。
【0123】
上述の実施例10〜12において、遮光膜中に含まれるクロム(Cr)の割合(組成比)を1としたときに、窒素(N)を、表面側から透光性基板側の略全域において、0.5〜0.8とした場合においても、ドライエッチング速度を速くできる効果が確認され、それとあいまって、遮光膜の表面側から透光性基板側に向かって酸素の含有量が減少させることとにより、グローバルローディング現象を低減させ、パターン精度やパターンの断面形状を向上させることができることが確認できた。
(半導体装置の製造方法)
実施例10〜12によって得られたフォトマスクを露光装置にセットし、半導体基板上のレジスト膜にパターン転写を行って、半導体装置を作製したところ、半導体基板上に形成された回路パターンの欠陥もなく、良好な半導体装置を得ることができた。
上記実施例10〜12におけるフォトマスク作製過程における電子線描画の際の電子線の加速電圧を50keV以上とした際も、遮光膜の導電性は良好で、形成された遮光膜パターンの断面形状は垂直形状で良好、80nmや70nmのラインアンドスペースパターンも良好に形成され、さらにグローバルローディングエラーは実用上許容できる数値に収まったフォトマスクが得られた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に遮光膜を有するフォトマスクブランクにおいて、
前記フォトマスクブランクは、前記遮光膜上に形成されるマスクパターンをマスクにしてドライエッチング処理により、前記遮光膜をパターニングするフォトマスクの作製方法に対応するドライエッチング処理用のフォトマスクブランクであって、
前記遮光膜の透光性基板側におけるドライエッチング速度を、前記遮光膜の表面側におけるドライエッチング速度よりも遅くさせるようにしたことを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項2】
前記遮光膜の表面側から透光性基板側に向かってドライエッチング速度を遅くさせるようにしたことを特徴とする請求項1記載のフォトマスクブランク。
【請求項3】
前記遮光膜は、主にクロムを含む材料からなることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスクブランク。
【請求項4】
前記遮光膜は、更に酸素を含み、表面側から透光性基板側に向かって酸素の含有量が減少していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
【請求項5】
前記遮光膜は、更に窒素を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
【請求項6】
前記遮光膜は、表面側から透光性基板側に向かう膜厚方向の略全域に窒素が含まれていることを特徴とする請求項5記載のフォトマスクブランク。
【請求項7】
前記遮光膜の上層部に酸素を含む反射防止層を形成することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
【請求項8】
前記透光性基板と前記遮光膜との間に、ハーフトーン型位相シフター膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一に記載のフォトマスクブランクにおける前記遮光膜をドライエッチングによりパターニングして前記透光性基板上に遮光膜パターンを形成することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載のフォトマスクブランクにおける前記遮光膜をドライエッチングによりパターニングして遮光膜パターンを形成した後、該遮光膜パターンをマスクにして、ドライエッチングにより前記位相シフター膜をパターニングして前記透光性基板上に位相シフター膜パターンを形成することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のフォトマスクにおける前記遮光膜パターン又は前記位相シフター膜パターンをフォトリソグラフィー法により、半導体基板上にパターンを転写することを特徴とする半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−215657(P2011−215657A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172420(P2011−172420)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【分割の表示】特願2007−534487(P2007−534487)の分割
【原出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】