説明

フットスイッチの支持構造

【課題】フットスイッチを装置本体に連結係合したままで、非使用時と使用時のポジション変更を足で容易に行う。
【解決手段】装置本体101の側壁部102に設けられたフットスイッチ2の係止部3と、フットスイッチ2の前部に設けられ係止部3に対して上下方向に移動自在に係合可能な係合部23と、を備え、フットスイッチ2の非使用時にあっては、係合部23よりも下方に形成され側壁部102に当接する支点部6に作用するフットスイッチ2の重力により、係止部3と係合部23との間、および側壁部102と支点部6との間で生ずる保持力が作用することで、フットスイッチ2を床に当接しないように係止保持し、フットスイッチ2の使用時にあっては、フットスイッチ2の後部を床に着けて支持するとともにフットスイッチ2の前部を装置本体101に設けられたストッパ部5で支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フットスイッチの支持構造に関し、特に、非使用時における第1の係合状態と使用時における第2の係合状態を備えたフットスイッチの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科用医療装置には、衛生上の観点等からスイッチのオンオフを足で行うフットスイッチが装置本体に装着されているものがある。例えば、歯科用レーザ治療装置は、キャスターで自在に移動させて非使用時と使用時を使い分けることができるようになっている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
このような歯科用レーザ治療装置に装着するフットスイッチは、非使用時に装置本体を移動させる場合には自在に移動できるように装置本体に収容され、使用時には、操作しやすく装置本体が床上で不用意に移動しないようにすることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−161440号公報
【特許文献2】特開2007−97758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非使用時にはフットスイッチを装置本体に収容し、使用時には床に着けて操作できるようにしようとすると、足で行う操作が煩雑になって非使用時と使用時のポジション変更がしづらくなり、収容スペースを確保するために装置本体の基台部が大きくなり、収容構造が複雑になるという問題が生じやすい。
一方、使用時にフットスイッチを装置本体に収容したままで操作すると安定した操作性を確保しにくくなるほか、装置本体が不用意に移動してしまうという問題が生じやすい。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題点を解決すべく、フットスイッチを装置本体に連結したままで、非使用時と使用時のポジション変更を足で容易に行うことができ、しかも、非使用時にあって装置本体を移動させる場合には、装置本体に保持されて一体として自在に移動でき、使用時にあってフットスイッチを操作する場合には、フットスイッチを床に着けて使用することで安定した操作性を確保するフットスイッチの支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、床上を移動自在な移動手段を有する装置本体を制御するフットスイッチの支持構造であって、前記装置本体の側壁部に設けられた前記フットスイッチの係止部と、前記フットスイッチの前部に設けられ前記係止部に対して上下方向に移動自在に係合可能な係合部と、を備え、前記フットスイッチの非使用時にあっては、前記係止部に前記係合部が係合された第1の係合状態において、当該係合部よりも下方に形成され前記装置本体の側壁部に当接する支点部を有し、この支点部に作用する前記フットスイッチの重力により、前記係止部と前記係合部との間、および前記側壁部と前記支点部との間で生ずる保持力が作用することで、当該フットスイッチを前記床に当接しないように係止保持し、前記フットスイッチの使用時にあっては、前記第1の係合状態よりも前記フットスイッチが下方に位置する前記係止部と前記係合部との第2の係合状態において、前記フットスイッチの後部を前記床に着けて支持するとともに前記フットスイッチの前部を前記装置本体に設けられたストッパ部で支持、または前記フットスイッチの底面を前記床に着けて支持することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るフットスイッチの支持構造は、第1の係合状態におけるフットスイッチの非使用時にあっては、当該フットスイッチを前記床に着かないように装置本体で係止保持しているため、フットスイッチと一緒に装置本体をスムーズに移動することができる。
また、てこの原理を応用して、フットスイッチの重力による支点部に作用するモーメントを利用してフットスイッチを係止保持しているため、足先でフットスイッチを持ち上げて支点部に作用するモーメントを解放することで、係止保持状態を容易に解除することができる。
【0009】
ここで、「保持力」とは、摩擦力や凹部と凸部の係合による摺動抵抗等に基づく作用によりフットスイッチを保持する力を意味する広い概念をいう。また、「係合」の用語は、両者が関わりあった状態をいい、両者が接触する場合や隙間を有して連結された状態を含む広い概念として使用する。
【0010】
そして、本発明に係るフットスイッチの支持構造は、係止保持状態を解除する足先の簡易な操作により労せずに、フットスイッチを係止保持状態から移動可能状態にして下方に移動させることで、前記第1の係合状態よりも前記係止部と前記係合部が下方に位置する第2の係合状態に移行させることができる。
【0011】
第2の係合状態におけるフットスイッチの使用時にあっては、前記フットスイッチの後部を前記床に着けて支持するとともに前記フットスイッチの前部を前記装置本体に設けられたストッパ部で支持、または前記フットスイッチの底面を前記床に着けて支持することで、前記フットスイッチの下方移動が規制され、フットスイッチを安定して支持することができる。
【0012】
また、フットスイッチが装置本体に係合された状態で床に着いているので、フットスイッチを足で保持した状態で操作することで、装置本体が不用意に移動してしまうことを防止することができる。
【0013】
このようにして、本発明に係るフットスイッチの支持構造は、フットスイッチを装置本体に連結係合したままで、非使用時と使用時のポジション変更を足で容易に行うことができ、しかも、非使用時にあって装置本体を移動させる場合には、装置本体に保持されて一体として自在に移動することができるとともに、使用時にあってはフットスイッチを床に着けて使用することで安定した操作性を確保することができる。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のフットスイッチの支持構造であって、前記非使用時における第1の係合状態において、前記フットスイッチの前部の下方移動を規制する受け部を前記装置本体の側壁部に設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、前記フットスイッチの前部の下方移動を規制する受け部を設けたことで、装置本体を移動する際に振動等が発生した場合でも、フットスイッチをより安定してする保持することができる。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のフットスイッチの支持構造であって、前記係止部または係合部の表面は、樹脂材料および金属材料よりも摩擦抵抗の大きなゴム部材を備え、このゴム部材を介して前記係止部と前記係合部を係合させていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、ゴム部材を介して前記係止部と係合部を係合させることで、保持力を増大させ、より安定してフットスイッチを係止保持することができる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフットスイッチの支持構造であって、前記係止部には、段階状に形成されたラチェット歯が形成され、このラチェット歯により前記係止部と前記係合部が係合されていることを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、ラチェット歯により前記係止部と前記係合部が係合されていることで、より安定してフットスイッチを係止保持することができる。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフットスイッチの支持構造であって、前記第1の係合状態において、前記フットスイッチを足で持ち上げることにより前記支点部に作用する重力を解放することで、前記第1の係合状態における係止保持状態を解除して当該第1の係合状態から前記第2の係合状態に移行させることを特徴とする。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、前記フットスイッチを足で持ち上げることにより前記支点部に作用する重力を解放することで、前記第1の係合状態から前記第2の係合状態に移行させるため、非使用時と使用時のポジション変更を足で容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るフットスイッチの支持構造は、フットスイッチを装置本体に連結係合したままで、非使用時と使用時のポジション変更を足で容易に行うことができ、しかも、非使用時にあって装置本体を移動させる場合には、装置本体に保持されて一体として自在に移動でき、使用時にあってフットスイッチを操作する場合には、フットスイッチを床に着けて使用することで安定した操作性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るフットスイッチの支持構造を適用したレーザ治療装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るフットスイッチの非使用時の状態を示す図であり、図3のX−X断面における正面断面図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】非使用時の状態を示す部分断面斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るフットスイッチの使用時の状態を示す図6のY−Y断面における正面断面図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るフットスイッチの変形例を示す正面断面図であり、非使用時の状態を示す。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るフットスイッチの変形例を示す正面断面図であり、使用時の状態を示す。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るフットスイッチの支持構造の動作を説明するための正面断面図であり、(a)は非使用時の状態、(b)は非使用時における係合を解除した状態、(c)は使用時の状態を示す。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るフットスイッチの支持構造を説明するための正面断面図であり、(a)はフットスイッチの係合を解除した状態、(b)は非使用時の状態、(c)は使用時の状態を示す。
【図11】本発明の実施形態に係るフットスイッチの支持構造における変形例を説明するための係止部と係合部の係合状態を示す断面図であり、(a)は係合部をラチェット歯で支持する係合状態、(b)は係合部を棚状の支持部材で支持する係合状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の実施形態に係るフットスイッチ2の支持構造1について、歯科用のレーザ治療装置100に適用する場合を例として、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る歯科用のレーザ治療装置100は、図1に示すように、図示しないレーザ発振器等を収容する装置本体101と、装置本体101の側壁部102に装着されてレーザ治療装置100におけるレーザ光の照射をオンオフ制御するフットスイッチ2と、を備えている。
【0025】
装置本体101は、基台部103に装着され床FLの上を自在に移動するための移動手段であるキャスター104と、上部に配設された多関節のマニピュレータ105と、マニピュレータ105の先端部に配設されたレーザを照射する照射口106と、を備えている。
【0026】
フットスイッチ2は、図2に示すように、平坦面からなる底面21aを有するベース部21と、ドーム状に形成されたフットスイッチカバー22と、フットスイッチカバー22の前部先端部に形成された肉厚部からなる係合部23と、足F(図9(c)参照)で踏んで操作する操作部24と、を備えている。
なお、フットスイッチ2において、説明の便宜上、装置本体101に近い方を前部(先端側)、装置本体101から遠い方を後部(後端側)といい、重力W(図9(a)参照)の方向を上下という。
【0027】
フットスイッチカバー22は、ベース部21の前部、左右の側部、および上部を覆うように後方に開口部を有する袋状をなした樹脂部材からなり、ベース部21に一体として固定されている。
かかる構成により、医師等の使用者(不図示)は、足Fをフットスイッチカバー22の中に入れて操作し(図9(b)、(c)参照)、足Fを中に入れた状態で、足Fを上げるとフットスイッチカバー22を保持しながらフットスイッチ2を持ち上げることができる(図9(b)参照)。また、使用者は、踵F1をつけた状態で操作部24を足先F2で操作してレーザ治療装置100におけるレーザ光の照射をオンオフ制御することができる(図9(b)、(c)参照)。
【0028】
フットスイッチカバー22の下部先端部には、所定の剛性を有する厚肉部からなる底面先端部25が形成され、底面先端部25の下面25aが、ベース部21の底面21aと面一となるように、フットスイッチカバー22がベース部21に固定されている。
底面先端部25の前面25bは、略垂直方向に沿って形成され、図2に示す第1の係合状態(図9(a)参照)において、カバー部材108の側面108aと当接して後記する支点部6を構成する。
【0029】
係合部23は、フットスイッチ2の前部の上部に配設され略直方体形状をなした所定の剛性を有する厚肉部からなり(図4を併せて参照)、係合部23の後面23aが装置本体101の側壁部102に設けられたハンガー部材31の前面31aに面当たりで当接して係合するようになっている。
【0030】
装置本体101の側壁部102の下端部には、側壁部102から横方向に張り出すように断面形状が矩形の突出部102aが水平方向に沿って形成されている。そして、側壁部102は、突出部102aを覆うカバー部材108を備えている(図4を併せて参照)。
また、側壁部102には、突出部102aから斜め上方に向かって延びるように設けられたフットスイッチ2の係止部3を構成するハンガー部材31が配設されている。
【0031】
ハンガー部材31は、略矩形の板状に形成された金属部材からなり(図4を併せて参照)、フットスイッチ2が上方から脱落するのを防止するために、上縁部が前方に折り曲げられた形状をなしている。ハンガー部材31は、フットスイッチ2の係合部23を係止する係止部3を構成する部材であり、ハンガー部材31の前面31aが係合部23の後面23aに当接して、フットスイッチ2を係止するようになっている。
つまり、係止部3は、フットスイッチ2の係合部23を係止する部分であり、本実施形態においては、ハンガー部材31の前面31aが係合部23の後面23aに当接する部分である。
【0032】
カバー部材108の側面108aには、フットスイッチ2が上方に位置する非使用時における第1の係合状態(図2〜図4、図9(a)参照)において、フットスイッチ2の底面先端部25の下面25aを受けてフットスイッチ2の下方移動を規制する受け部4が形成されている(図4を併せて参照)。
【0033】
一方、フットスイッチ2の底面先端部25の前面25bは、カバー部材108の側面108aと面当たりで当接して支点部6を構成する。
支点部6は、具体的には、フットスイッチ2の底面先端部25の前面25bであり、略垂直方向に延びる平面である。
【0034】
なお、本実施形態においては、支点部6を略垂直方向に延びる平面として構成したが、これに限定されるものではなく、平面ではなく狭い範囲の線や点であってもよいし、受け部4とも概念が重複するが垂直方向ではなく略水平方向に延びる平面として構成してもよく、略垂直方向に延びる平面と略水平方向に延びる平面との2面で構成することもできる。
【0035】
また、本実施形態においては、側壁部102の下端部を覆うカバー部材108を設けて受け部4を形成したが、これに限定されるものではなく、カバー部材108を設けずに側壁部102に直接受け部4を形成することもできる。
【0036】
カバー部材108の上面108bには、フットスイッチ2が下方に位置する使用時における第2の係合状態(図5、図6、図9(c)参照)において、係合部23の下面23bを面当たりで受けて下方移動を規制するストッパ部5が形成されている(図4を併せて参照)。
【0037】
かかる構成により、図5と図6に示すように、使用時においてフットスイッチ2を傾斜させた状態で安定して保持することができるため、使用者の足首F3(図9(c)参照)にかかる負担を軽減して操作性を向上させることができる。
【0038】
[非使用時の支持構造]
本発明の実施形態に係るフットスイッチ2の支持構造1は、図2〜図4に示すように、フットスイッチ2の非使用時にあっては、係止部3を構成するハンガー部材31に係合部23が係合された第1の係合状態において(図9(a)参照)、係合部23よりも下方に形成され装置本体101の側壁部102に配設されたカバー部材108に当接する支点部6を有している。
【0039】
なお、本実施形態においては、受け部4を設けて上下方向の移動をより確実に規制して振動等に対する安定性を確保するようにしたが、これに限定されるものではなく、床FL等の状態により振動等が生じない場合には受け部4を設けずに、係止部3(図9(a)の左向きの三角印参照)と支点部6(図9(a)の右向きの三角印参照)の2箇所でフットスイッチ2を係止保持することも可能である。
【0040】
また、本実施形態においては、ハンガー部材31を金属部材で構成し、フットスイッチカバー22を樹脂部材で構成したが、これに限定されるものではなく種々の材料を適用することができ、係止部3を構成するハンガー部材31、または係合部23や支点部6を構成するフットスイッチカバー22の当該表面に、樹脂材料および金属材料よりも摩擦抵抗が大きいゴム部材を貼着等により設けて、摩擦力に起因する保持力を増大させることで、受け部4を設けずに、係止部3(図9(a)の左向きの三角印参照)と支点部6(図9(a)の右向きの三角印参照)の2箇所でフットスイッチ2を安定して支持することも可能である。さらに、ゴム部材に限定されるものではなく、要するに必要な摩擦力を確保することができるものであれば、ハンガー部材31やフットスイッチカバー22に適用された金属部材や樹脂部材よりも摩擦抵抗が大きい同種または異種の金属部材や樹脂部材を貼着等により設けて保持力を増大させることも可能である。
【0041】
[使用時の支持構造]
本発明の実施形態に係るフットスイッチ2の支持構造1は、図5と図6に示すように、フットスイッチ2の使用時にあっては、非使用時における第1の係合状態(図2〜図4参照)よりもフットスイッチ2が下方に位置する第2の係合状態において、フットスイッチ2の底面後部26を床FLに着けて支持するとともに、フットスイッチ2の係合部23の下面23bを装置本体101のカバー部材108の上面108bに設けられたストッパ部5で支持する。
【0042】
つまり、第2の係合状態は、第1の係合状態(図2〜図4参照)よりも係合部23がハンガー部材31の前面31aに沿って下方に移動した位置にあり、フットスイッチ2の底面後部26を床FLに着けて支持し、フットスイッチ2の前部(係合部23)をストッパ部5で支持するポジションである。
【0043】
かかる構成により、第2の係合状態では、フットスイッチ2を床FLに対して傾斜させて保持することで、医師等の使用者(不図示)が踵F1をつけたまま操作部24を足先F2で操作することができる。このため、操作の際の負担を軽減して安定した操作性を確保することができる(図9(b)、(c)参照)。
また、係止部3と係合部23が連結された状態でフットスイッチ2の底面後部26が床FLに着いているので、フットスイッチ2を足Fで踏んだ状態で保持することで、装置本体101が不用意に移動してしまうことを防止することができる。
【0044】
[ベタ置きにする形態]
前記した図5および図6に示す実施形態においては、使用時において、フットスイッチ2の底面後部26を床FLに着け、フットスイッチ2の前部である係合部23の下面23bをストッパ部5で支持することで、フットスイッチ2を傾斜させて支持したが、これに限定されるものではなく、図8に示すように、係止部3と係合部23とが係合した状態で、フットスイッチ2のベース部21の底面21aを床FLにベタ置きにしてフットスイッチ2を支持することもできる。
図7と図8は、本発明の第1の実施形態における使用時における第2の係合状態の他の実施例を示す図であり、図7は非使用時の状態、図8は使用時の状態を示す。
【0045】
図8に示すように、フットスイッチ2をベタ置きにした状態では、フットスイッチ2が水平状態で保持され、フットスイッチ2の底面21aが広範囲に安定して床FLに接地するようになっている。
なお、この状態において、係合部23とハンガー部材31は僅かに隙間を形成して連結係合された状態になっているが、連結した状態で係合部23とハンガー部材31の間に隙間が生じないようにしてもよい。
【0046】
また、このフットスイッチ2をベタ置きにした状態において、係合部23の下面23bと側壁部102に形成された突出部102aの上面に僅かに隙間を形成するようにしたが、係合部23の下面23bを側壁部102の突出部102aの上面で支持するようにしてもよい。
【0047】
以上のように構成されたフットスイッチ2の支持構造1の動作について、図9を参照しながら説明する。参照する図9の(a)は非使用時における第1の係合状態、(b)は非使用時における第1の係合状態から係止保持状態を解除するときの動作を示し、(c)は使用時における第2の係合状態を示す。なお、図9において、フットスイッチ2の支持箇所を三角印で表示した。
【0048】
図9(a)に示すように、非使用時における第1の係合状態では、フットスイッチ2の前部の上部に位置する係合部23をハンガー部材31の係止部3で支持し、フットスイッチ2の前部の下部に位置する底面先端部25を支点部6と受け部4で支持している。
【0049】
具体的には、フットスイッチ2の重力Wにより支点部6の回りにモーメントMが作用し、係止部3と係合部23との間(具体的には、ハンガー部材31の前面31aと係合部23の後面23aが当接する部分、図9(a)の左向きの三角印参照)、および装置本体101の側壁部102と支点部6(フットスイッチ2の底面先端部25の前面25b、図9(a)の右向きの三角印参照)との間、並びに、フットスイッチ2の底面先端部25の下面25aを受ける受け部4で生ずる保持力(反力や摩擦力、図9(a)の上向きの三角印参照)が発生することで、フットスイッチ2を床FLに当接しないように安定して係止保持する(図9(a)参照)。
【0050】
このように、第1の係合状態における非使用時にあっては、フットスイッチ2を床FLに着かないように装置本体101で係止保持しているため、フットスイッチ2が移動のための障害とならないから装置本体101をフットスイッチ2と一緒に自在に移動することができる。
【0051】
このとき、フットスイッチ2の重力Wによる支点部6の回りに作用するモーメントMを利用して係止保持しているため、図9(a)に示す非使用時の状態から、図9(b)に示すように、足先F2でフットスイッチ2を持ち上げて重力W(図9(a)参照)を解放し、支点部6に作用するモーメントMを消失させることで、係止保持状態を容易に解除することができる。
【0052】
このようにして、足先F2の簡易な操作により労せずに係止保持状態を解除して、フットスイッチ2を下方に移動させることで、図9(c)に示すように、第1の係合状態(図9(a)参照)よりも係止部3と係合部23が下方に位置する第2の係合状態に移行させることができる。
【0053】
第2の係合状態における使用時にあっては、フットスイッチ2の底面後部26を床FLに着けて支持するとともにフットスイッチ2の前部(係合部23)を装置本体101に設けられたストッパ部5で支持することで、フットスイッチ2の下方移動が規制され、フットスイッチ2を安定して支持することができる。
【0054】
また、フットスイッチ2が装置本体101に係合された状態で床FLに着いているので、フットスイッチ2を足Fで保持した状態で操作することで、装置本体101が不用意に移動してしまうことを防止することができる。
【0055】
なお、第2の係合状態から第1の係合状態に移行させる場合には、逆の動作により図9(c)から図9(b)のように操作して図9(a)の状態まで移行させる。
【0056】
以上、ハンガー部材31(図4参照)を装置本体101に設けて係止部3を構成する第1の実施形態について説明したが、本発明は前記した第1の実施形態に限定されず、係止部3および係合部23の構成が異なる第2の実施形態を採用することもできる。
以下、本発明に係る第2の実施形態について図10を参照しながら説明する。第2の実施形態においては、係止部3′および係合部23′の構成が相違し、他の構成は第1の実施形態と同様であるので、主として、係止部3′および係合部23′の構成について説明し他の構成の詳細な説明は省略する。
【0057】
第2の実施形態は、図10(a)に示すように、第1の実施形態において係止部3を構成したハンガー部材31(図4参照)と同じような形状のハンガー部材31′を用いて係合部23′を構成したものである。
つまり、第2の実施形態は、フットスイッチ2′の前部にハンガー部材31′からなる係合部23′を配設し、装置本体101′の側壁部102′にハンガー部材31′を係止保持する係止部3′(3a,3b)を設けた構成である。
【0058】
ハンガー部材31′は、例えば先端部を折り曲げて形成された端面部31a′と、端面部31a′に対して直角をなした平面からなる折曲部31b′を備え、下方に向けて垂下するように、フットスイッチ2′の前部に固定されている。
ここで、ハンガー部材31′における端面部31a′と折曲部31b′は、それぞれ係合部23′を構成し、端面部31a′が第1の係合状態における係合部23′であり、折曲部31b′が第2の係合状態における係合部23′である。
【0059】
ハンガー部材31′を係止する係止部3′は、側壁部102′の下端部に形成された突出部102a′の内側に配設され、上部に形成された第1の係止部3aと、下部に形成された第2の係止部3bと、を備えている。
第1の係止部3aは、側壁部102′における壁面から内側に向けて水平方向に棚状に形成され、第1の係合状態(図10(b)参照)において端面部31a′を係止する部材である。
第2の係止部3bは、側壁部102′の下端部に形成された突出部102a′の底部に台状に形成され、第2の係合状態(図10(c)参照)において折曲部31b′を係止する部材である。
【0060】
続いて、本発明の実施形態における変形例について図11を参照しながら説明する。
つまり、第1の実施形態においては、ハンガー部材31を略矩形の板状に形成したが(図4参照)、これに限定されるものではなく、図11(a)に示すような段階状に形成されたラチェット歯32aを設けたハンガー部材32や、図11(b)に示すような係合部232を支持する棚状の部材からなる支持部材33aを設けたハンガー部材33を採用することもできる。
【0061】
図11(a)に示すように、ハンガー部材32を採用することで、第1の係合状態における不使用時において、フットスイッチ201の前部に形成された係合部231とラチェット歯32aが噛み合って支持することができるため、より安定してフットスイッチ201を係止保持することが可能となる。
【0062】
図11(b)に示すように、先端部が上に折れ曲がった形状をなした支持部材33aを設けたハンガー部材33を採用することで、第1の係合状態における非使用時において、フットスイッチ202の前部に形成された係合部232を棚状の支持部材33aにより上下方向と水平方向の2面で支持することができるため、より安定してフットスイッチ202を係止保持することが可能となる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、種々変形して実施することができる。例えば、前記した実施形態においては、歯科用のレーザ治療装置100に適用したが、本発明は、装置本体を移動させる装置であれば好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 フットスイッチの支持構造
2,2′ フットスイッチ
3,3′ 係止部
3a,3b′ 係止部
4 受け部
5 ストッパ部
6 支点部
21 ベース部
21a 底面
22 フットスイッチカバー
23,23′ 係合部
26 底面後部(後部)
31,31′ ハンガー部材
32 ハンガー部材
32a ラチェット歯
33 ハンガー部材
100 レーザ治療装置
101,101′ 装置本体
102,102′ 側壁部
108 カバー部材(側壁部)
201,202 フットスイッチ
231,232 係合部
FL 床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床上を移動自在な移動手段を有する装置本体を制御するフットスイッチの支持構造であって、
前記装置本体の側壁部に設けられた前記フットスイッチの係止部と、
前記フットスイッチの前部に設けられ前記係止部に対して上下方向に移動自在に係合可能な係合部と、を備え、
前記フットスイッチの非使用時にあっては、
前記係止部に前記係合部が係合された第1の係合状態において、当該係合部よりも下方に形成され前記装置本体の側壁部に当接する支点部を有し、
この支点部に作用する前記フットスイッチの重力により、前記係止部と前記係合部との間、および前記側壁部と前記支点部との間で生ずる保持力が作用することで、当該フットスイッチを前記床に当接しないように係止保持し、
前記フットスイッチの使用時にあっては、
前記第1の係合状態よりも前記フットスイッチが下方に位置する前記係止部と前記係合部との第2の係合状態において、
前記フットスイッチの後部を前記床に着けて支持するとともに前記フットスイッチの前部を前記装置本体に設けられたストッパ部で支持、または前記フットスイッチの底面を前記床に着けて支持することを特徴とするフットスイッチの支持構造。
【請求項2】
前記非使用時における第1の係合状態において、前記フットスイッチの前部の下方移動を規制する受け部を前記装置本体の側壁部に設けたことを特徴とする請求項1に記載のフットスイッチの支持構造。
【請求項3】
前記係止部または係合部の表面は、樹脂材料および金属材料よりも摩擦抵抗の大きなゴム部材を備え、このゴム部材を介して前記係止部と前記係合部を係合させていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフットスイッチの支持構造。
【請求項4】
前記係止部には、段階状に形成されたラチェット歯が形成され、このラチェット歯により前記係止部と前記係合部が係合されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフットスイッチの支持構造。
【請求項5】
前記第1の係合状態において、前記フットスイッチを足で持ち上げることにより前記支点部に作用する重力を解放することで、前記第1の係合状態における係止保持状態を解除して当該第1の係合状態から前記第2の係合状態に移行させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフットスイッチの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−179234(P2012−179234A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44069(P2011−44069)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000141598)株式会社吉田製作所 (117)
【Fターム(参考)】