説明

フッ素化合物及びその製造方法、並びにそれを含む電解質

【課題】難燃性であり、且つリチウム塩に対して充分な溶解性を有する溶媒を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるフッ素化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化合物及びその製造方法、並びにそれを含む電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、高エネルギー密度を有しているため、携帯用電子機器及び電気自動車への応用が盛んに行われている。
上記リチウム二次電池の電解質用溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の種々の化合物が提案されている。通常、これら溶媒に種々のリチウム塩を0.5〜2モル/Lの濃度で溶解させ、リチウム二次電池の電解質として使用する。
【0003】
しかしながら、エチレンカーボネート等の化合物は引火点が低いため、これら化合物を非水系の電解質溶媒として使用した場合に、引火及び発火のおそれがあり、安全性に大きな問題を有していた。
この問題を解決するため、引火点が高いヘテロ元素を有する電解質用溶媒が提案されているが(特許文献1〜9)、これらの溶媒は電解質の溶解性が十分でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−037024号公報
【特許文献2】特開平9−097627号公報
【特許文献3】特開平11−026015号公報
【特許文献4】特開2000−294281号公報
【特許文献5】特開2001−052737号公報
【特許文献6】特開平11−307123号公報
【特許文献7】特開2008−218387号公報
【特許文献8】特開2006−210022号公報
【特許文献9】特開2007−234339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、難燃性であり、且つリチウム塩に対して充分な溶解性を有する溶媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下のフッ素化合物が提供される。
1.下記式(1)で表されるフッ素化合物。
【化1】

(式中、A及びAは、それぞれ水素原子、又は下記式(1’)で表される置換基であり、A及びAの少なくとも1つは、下記式(1’)で表される置換基である。
Aは、−O−R、又は−NRであり、R、R及びRは、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基である。)
−C2x+1 (1’)
(式中、xは、2〜5の整数であり、A及びAが共に式(1’)で表される置換基である場合、2つのxはそれぞれ同じでも異なってもよい。)
2.式(2)で表されるアルコール及び式(3)で表される化合物を塩基性物質存在下で反応させる1に記載のフッ素化合物の製造方法。
【化2】

(式中、A、A及びAは、前記式(1)と同様である。
Yは、F、Cl、Br又はIである。)
3.2に記載の製造方法により得られるフッ素化合物。
4.1又は3に記載のフッ素化合物及びリチウム塩を含む電解質。
5.4に記載の電解質を含むリチウム電池。
6.5に記載のリチウム電池を備える装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、難燃性であり、且つリチウム塩に対して充分な溶解性を有する溶媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1で調製した2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルメチルカーボネートのH−NMRスペクトルである。
【図2】実施例2で調製した2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルジメチルカーバメートのH−NMRスペクトルである。
【図3】実施例11で製造した電池の電圧と放電容量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のフッ素化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【化3】

(式中、A及びAは、それぞれ水素原子、又は下記式(1’)で表される置換基であり、A及びAの少なくとも1つは、下記式(1’)で表される置換基である。
Aは、−O−R、又は−NRであり、R、R及びRは、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基である。)
−C2x+1 (1’)
(式中、xは、2〜5の整数であり、A及びAが共に式(1’)で表される置換基である場合、2つのxはそれぞれ同じでも異なってもよい。)
【0010】
R、R及びRの炭素数1〜10のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。
上記炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
尚、R、R及びRのアルキル基は、直鎖でも分岐でもよい。
【0011】
式(1’)のxは、2〜5の整数であり、好ましくは3又は4である。
式(1’)のxが1である場合、本発明のフッ素化合物は、発火点が低く、難燃性とならない。
【0012】
本発明のフッ素化合物の具体例を以下に示す。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0013】
本発明のフッ素化合物は、式(2)で表されるアルコール及び式(3)で表される化合物を塩基性物質存在下で反応させることにより得られる。
【化8】

(式中、A、A及びAは、式(1)と同様である。
Yは、F、Cl、Br又はIであり、好ましくはClである。)
【0014】
式(2)で表されるアルコールの具体例を以下に示す。
【化9】

【0015】
式(3)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【化10】

【0016】
本発明のフッ素化合物の製造に用いる塩基性物質は、特に制限されず、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルアミノピリジン等の三級アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等を用いることができる。
上記塩基性物質のうち、好ましくは三級アミンであり、より好ましくはトリエチルアミン又はピリジンである。
【0017】
式(2)で表されるアルコール及び式(3)で表される化合物の混合比は、好ましくは式(3)で表される化合物の配合量が、式(2)で表されるアルコールに対して0.9〜2.0倍モルであり、より好ましくは0.9〜1.3倍モルであり、最も好ましくは等モル量である。
また、塩基性物質の配合量は、通常、式(2)で表されるアルコール又は式(3)で表される化合物に対して、1.0〜1.5倍モルであり、好ましくは1.0〜1.1倍モルである。
【0018】
式(2)で表されるアルコールと式(3)で表される化合物の反応温度は、通常0〜80℃であり、好ましくは5〜60℃であり、より好ましくは20〜40℃である。反応時間は、反応温度によって異なるが、通常、10分〜3時間の範囲である。
尚、反応圧力は、減圧状態〜加圧状態のいずれでもよいが、通常、常圧である。
【0019】
塩基性物質存在下、式(2)で表されるアルコールと式(3)で表される化合物を反応させて得られる生成物から、不溶物である塩酸塩等を除去した後、適当な有機溶媒で抽出して減圧蒸留することにより、本発明のフッ素化合物を回収することができる。
また、事前に上記生成物をアルカリ水溶液で洗浄し、エーテル、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出することにより、本発明のフッ素化合物を回収することもできる。
【0020】
本発明のフッ素化合物は、難燃性であり、リチウム塩の溶解性に優れることから、例えば液系リチウム電池の電解質溶媒として好適に用いることができる。
【0021】
本発明の電解質は、本発明のフッ素化合物及びリチウム塩を含む。
本発明の電解質が含むリチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiN(CSO、LiAsF、LiSbF、LiAlF、LiGaF、LiInF、LiClO、LiN(CFSO、LiCFSO、LiN(CFSO)(CSO)等が挙げられる。
【0022】
本発明の電解質中のリチウム塩の含有量は、例えば0.3〜2.5モル/Lであり、好ましくは0.5〜2.2モル/Lである。
【0023】
本発明の電解質は、他の溶媒をさらに含んでもよい。
上記他の溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンテンカーボネート、2,3−ペンテンカーボネート、1,3−ジオキサ−2−シクロヘキサノン、4−メチル−1,3−ジオキサ−2−シクロヘキサノン、4−イソプロピル−5,5−ジメチル−1,3−ジオキサ−2−シクロヘキサノン、シクロヘキシルカーボネート等の環状炭酸エステル;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ブチルメチルカーボネート等の非環状炭酸エステル;又はβ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状エステル等が挙げられる。
【0024】
本発明の電解質は、リチウム電池の電解液として好適に用いることができる。
本発明のリチウム電池は、本発明の電解質を含む電池であり、具体的には正極集電体、正極、電解質、負極及び負極用集電体を備える電池である。
【0025】
本発明のリチウム電池は、一次電池でも二次電池でもよい。また、本発明のリチウム電池は、その形状は特に限定されず、コイン型、シート型、角型又は円筒型のいずれでもよく、その大きさも特に限定されない。
【0026】
正極集電体は、電流を取り出すため、電池内部の正極に接触するように設けられている。
正極集電体は、好ましくは金属材料で形成され、特に好ましくは、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、リチウム、又はこれらの合金等で形成される。
【0027】
正極には、電池分野で公知の正極活物質を用いることができる。
上記正極活物質としては、例えば硫化物系では、硫化チタン(TiS)、硫化モリブデン(MoS)、硫化鉄(FeS、FeS)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni)等が使用できる。また、酸化物系では、酸化ビスマス(Bi)、鉛酸ビスマス(BiPb)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V13)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)等が挙げられる。これらを混合して用いることも可能である。
上記の他には、セレン化ニオブ(NbSe)を用いることができる。LiCoOやLiNiO等の遷移金属複合酸化物を用いると好ましい。
【0028】
上記正極は、導電助剤をさらに含んでもよい。導電助剤としては、カーボンブラックが好ましい。
また、上記正極は、結着剤をさらに含んでもよい。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
【0029】
本発明の電解質は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の有機高分子製多孔質セパレータに保持させた状態で、正極と負極の間に設けられる。
上記セパレータとしては、所定のイオン透過度、機械的強度、絶縁性等を併せ持つシート状又はフィルム状セパレータを用いることができる。
【0030】
セパレータの具体例としては、例えば微多孔膜、織布、不織布等の多孔性のシート状又はフィルム状セパレータが挙げられる。微多孔膜は単層膜及び多層膜(複合膜)のいずれでもよい。セパレータの材料には各種樹脂材料を使用できるが、耐久性、シャットダウン機能、電池の安全性等を考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。
尚、上記単層膜は1種の材料からなり、多層膜(複合膜)は同一又は異なる単層膜の積層体である。
【0031】
負極には、電池分野で公知の負極活物質を用いることができる。
上記負極活物質としては、炭素材料を用いることができ、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等を用いることができる。これらを混合して用いてもよい。
【0032】
また、負極活物質として、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体、又はこれら金属と他の元素、化合物と組合わせた合金を用いることができる。黒鉛等の炭素材料、又はSn、Si等の金属微粒子を負極活物質として用いると好ましい。
【0033】
上記負極は、さらに結着剤を含んでもよい。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
【0034】
負極用集電体は、電気を取り出すため、電池内部の負極に接触するように設けられている。
負極集電体は、好ましくは金属材料で形成され、特に好ましくは、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、リチウム、又はこれらの合金等で形成される。
【0035】
本発明のリチウム電池を備える装置としては、ノートパソコン、PDA等の携帯情報機器;ポータブルオーディオプレイヤー、ポータブルテレビ、ポータブルビデオプレイヤー、ビデオカメラ、携帯ラジオ等の携帯AV機器;携帯電話、カーナビゲーション、無線機等の携帯通信機器;携帯ゲーム機器等の玩具;電動工具、懐中電灯、置時計等の日用品が挙げられる。また、普通自動車、自動二輪車、電動アシスト二輪車等の輸送機器、非常用電源装置も挙げられる。
上記のほか、本発明のフッ素化合物は不燃性であるので、リチウムイオン電池の電解液の引火点が低いことが障害となっていた装置にも用いることができる。
【実施例】
【0036】
実施例1
[2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルメチルカーボネートの合成]
温度計、攪拌装置及び還流冷却器の備わった500ml三口フラスコに2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタノール100.2g(0.50モル)及びトリエチルアミン50.7g(0.50モル)を入れた。フラスコを氷で冷却しながらクロロ蟻酸メチル47.3g(0.50モル)を1時間かけて滴下した。このときのフラスコ内の温度は13〜25℃であった。
滴下終了後、生成した白色固体を濾別し、固体をさらにアセトンで洗浄した。洗浄液をろ液と合わせて蒸留し(15.2kPa、75℃)、生成物である2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルメチルカーボネート(100.6g、78%)を得た。
上記生成物の構造を、H−NMRにより確認した。得られたチャートを図1に示す。尚、NMRスペクトルの測定は、400MHz核磁気共鳴装置を用いて、重クロロホルム中、室温にてテトラメチルシランを基準にして行った。
【化11】

【0037】
得られた生成物の表面張力を測定したところ、表面張力は18.38mN/mであった。尚、表面張力は実験科学講座1版7巻界面化学11頁記載の液滴法により測定した。
また、得られた生成物の引火点をPM法で測定したところ、引火点は100℃以上であった。
【0038】
実施例2
[2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルジメチルカーバメートの合成]
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた500ml三口フラスコに、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタノール100.2g(0.50モル)、トリエチルアミン50.7g(0.50モル)、及びジメチルカルバミン酸クロライド53.8g(0.50モル)を入れ、60℃で5時間加熱攪拌を行った。
室温に冷却した後、析出した白色固体を濾別し、濾別した固体をアセトンで洗浄した。洗浄液をろ液と合わせ蒸留し(沸点:常圧で147〜149℃)、生成物である2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルジメチルカーバメート(112.4g、83%)を得た。
尚、生成物の構造は、H−NMRにより確認した。得られたチャートを図2に示す。
【化12】

【0039】
得られた生成物の表面張力を測定したところ、表面張力は22.27mN/mであった。
また、得られた生成物の引火点をPM法で測定したところ、引火点は100℃以上であった。
表面張力の測定方法は、実施例1と同様である。
【0040】
比較例1
[2,2,2−トリフルオロエチルジメチルカーバメートの合成]
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた1リットル三口フラスコに2,2,2−トリフルオロエタノール210g(2.1モル)、ジメチルカルバミン酸クロライド215.1g(2.0モル)及びピリジン158.2g(2.0モル)を入れ60℃で5時間、加熱攪拌した。
室温に冷却した後、析出した白色固体を濾別し、濾別した固体をアセトンで洗浄した。洗浄液とろ液とを合わせ蒸留し(沸点:常圧で138℃)、生成物である2,2,2−トリフルオロエチルジメチルカーバメート(243g、71%)を得た。
尚、生成物の構造は、H−NMRにより確認した。
【化13】

【0041】
得られた生成物の表面張力を測定したところ、表面張力は31.43mN/mであった。
また、得られた生成物の引火点をPM法で測定したところ、引火点は38℃以上であった。
表面張力の測定方法は、実施例1と同様である。
【0042】
実施例3〜10及び比較例2〜3
表1に記載の配合比(モル比)に従って、フッ素化化合物及びリチウム塩からなる電解質を調製し、調製した電解質のイオン伝導度及び引火点を評価した。結果を表1に示す。
上記イオン伝導度は、交流4端子法により、室温にてイオン伝導度の測定を行った。インピーダンス測定装置としては、東陽テクニカ製のSI1280Bを用い、周波数は10〜10(Hz)の範囲とした。
【0043】
尚、表1中では、実施例1で調製した2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルメチルカーボネートを「化合物1」と表記し、実施例2で調製した2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルジメチルカーバメートを「化合物2」と表記し、比較例1で調製した2,2,2−トリフルオロエチルジメチルカーバメートを「化合物3」と表記した。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例11
[電解液の調製]
実施例1において調製した2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルメチルカーボネート10gにLiPF6を1g加えて電解液を調製した。
【0046】
[正極電極の作製]
正極活物質としてLiCoOを85重量部、導電助剤としてカーボンブラックを10重量部、及び結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)5重量部をN−メチル−2−ピロリドンに分散させスラリーを調製した。
調製したスラリーを厚さ20μmのアルミ箔上に塗布し、これを110℃で2時間真空乾燥し正極電極を得た。
【0047】
[負極電極の作製]
負極活物質として黒鉛を90重量部、結着剤としてPVDFを10重量部をN−メチル−2−ピロリドンに分散させスラリーを調製した。調製したスラリーを厚さ12μmの銅箔に塗布し、これを110℃で2時間真空乾燥し負極電極を得た。
【0048】
[電池の作製]
2032サイズのコインセルに、打抜いた上記正極電極、セパレーター及び上記負極電極を入れ、そこに調製した電解液を加えて電池を製造した。
製造した電池について、その性能を評価した。具体的には、充電電流密度0.2mA/cmで4.2Vまで定電流充電を行い、4.2Vから充電電流密度が0.01mA/cmになるまで定電圧充電を行った。その後、放電電流密度0.2mA/cmで2.5Vまで放電を行い、製造した電池の初回放電容量を測定した。充放電の結果を図3に示す。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のフッ素化合物は、リチウム電池の電解液として好適に用いることができる。本発明のフッ素化合物は、難燃性であり、且つリチウム塩に対して充分な溶解性を有することから、本発明のフッ素化合物を電解液として用いた本発明の電池は、ノートパソコン、PDA等の携帯情報機器;ポータブルオーディオプレイヤー、ポータブルテレビ、ポータブルビデオプレイヤー、ビデオカメラ、携帯ラジオ等の携帯AV機器;携帯電話、カーナビゲーション、無線機等の携帯通信機器;携帯ゲーム機器等の玩具;電動工具、懐中電灯、置時計等の日用品に好適に用いることができる。
また、本発明の電池は、普通自動車、自動二輪車、電動アシスト二輪車等の輸送機器、非常用電源装置等の電池としても用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるフッ素化合物。
【化14】

(式中、A及びAは、それぞれ水素原子、又は下記式(1’)で表される置換基であり、A及びAの少なくとも1つは、下記式(1’)で表される置換基である。
Aは、−O−R、又は−NRであり、R、R及びRは、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基である。)
−C2x+1 (1’)
(式中、xは、2〜5の整数であり、A及びAが共に式(1’)で表される置換基である場合、2つのxはそれぞれ同じでも異なってもよい。)
【請求項2】
式(2)で表されるアルコール及び式(3)で表される化合物を塩基性物質存在下で反応させて請求項1に記載のフッ素化合物を合成するフッ素化合物の製造方法。
【化15】

(式中、A、A及びAは、前記式(1)と同様である。
Yは、F、Cl、Br又はIである。)
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法により得られるフッ素化合物。
【請求項4】
請求項1又は3に記載のフッ素化合物及びリチウム塩を含む電解質。
【請求項5】
請求項4に記載の電解質を含むリチウム電池。
【請求項6】
請求項5に記載のリチウム電池を備える装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−32203(P2011−32203A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179205(P2009−179205)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】