説明

フッ素含有ナノコンポジット粒子およびその製造方法

【課題】シリカの化学的、熱的安定性とフッ素化合物の優れた撥水・溌油・防汚・触媒特性を活かす材料であって、フッ素低分子界面活性剤を原料とする新規なフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の提供。
【解決手段】(A)シリカナノ粒子と、(B)式(1):


(式中、Tは、SOQまたはCOOQであり、Qは、水素、リチウム、ナトリウムまたはカリウム等であり、Rfは、炭素数が2〜8個のフルオロアルキル基である)で示されるフッ素含有界面活性剤と、官能性アルコキシシランの加水分解物との混合物および/または該混合物の脱水縮合物を含むことを特徴とする、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子およびその利用に関する。さらに本発明は、ガラス基材の表面を処理するための表面処理組成物および表面処理方法に関し、より詳しくは、新規なシリカナノコンポジット粒子を含む表面処理膜をガラス基材の表面に形成し、ガラス基材の表面に、一般環境においては防汚性を、洗浄環境等の水中においては、高洗浄性を付与することのできる表面処理組成物および表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フッ素含有オリゴマーの撥水・撥油性を利用した表面処理を行うことで、防汚機能を付与する技術が知られている(特許文献1)。また、フッ素含有オリゴマーの表面に親水機能を付与することで、汚れが表面に付着しても、水洗により容易に汚れを除去する、という技術も従来から知られている(特許文献2)。一方、酸化チタン等の光触媒に関して、防汚性や親水性を有する光触媒膜が形成された基材も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−255720号公報
【特許文献2】特開2003―253250号公報
【特許文献3】特開2001−70801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記フッ素含有オリゴマーは、ガラス等の無機材料の表面に、撥油性及び撥水性(時間経過と共に親水性に変わる)の機能を有する表面処理を行い、防汚性を付与するものであるが、原料である使用するオリゴマーがやや複雑な分子構造を有することと、フッ素系の過酸化物の使用が必須であるため、量産化が困難であった。
【0005】
また、光触媒膜を用いる場合には、汚れが落ちやすいという機能は有するものの、一般的に、汚れに対する耐性が特に優れている、というものではないため、防汚という観点においては、その機能の優位性が認められるものではなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、シリカの化学的、熱的安定性とフッ素化合物が持つ優れた撥水・撥油・防汚・触媒特性を活かす材料であって、低コストで容易に得ることができる低分子量のフッ素含有界面活性剤を原料とする新規なフッ素含有シリカナノコンポジット粒子を提供すること、このフッ素含有シリカナノコンポジット粒子を含む表面処理組成物を用い、表面処理膜をガラス基材の表面に形成することにより、従来よりも優れた一般環境における防汚性と水中における高洗浄性を付与し、さらに耐熱性に優れた表面処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決したフッ素含有シリカナノコンポジット粒子とその製造方法、およびこのフッ素含有シリカナノコンポジット粒子を用いた表面処理組成物および表面処理方法に関する。
(I) (A)シリカナノ粒子と、
(B)式(1):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Tは、SOQまたはCOOQであり、Qは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、Rfは、炭素数が2〜8個のフルオロアルキル基である)で示されるフッ素含有界面活性剤と、官能性アルコキシシランの加水分解物との混合物および/または該混合物の脱水縮合物
を含むことを特徴とする、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子。
(II) (B)成分の官能性アルコキシシランが、式(2):
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Rは、水素、メチル基、エチル基、ヘキシル基またはフェニル基であり、Rは、メチル基またはエチル基である。pおよびqは、整数であり、p+q=4である。)で示される化合物である、上記(I)記載のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子。
(III) (B)成分の官能性アルコキシシランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシランおよびトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、上記(I)または(II)記載のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子。
(IV) (1)式のTがSOHまたはSOKであり、Rが直鎖である、上記(I)〜(III)のいずれか記載のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子。
(V) 熱重量分析において、昇温速度が10℃/分で、室温から800℃まで加熱したときの重量減少が、シリカ粒子を用いて測定したときの重量減少の±50%以内である、上記(I)〜(IV)のいずれか記載のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子。
(VI) (A)シリカナノ粒子と、
(B1)式(1):
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、Tは、SOQまたはCOOQであり、Qは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、Rfは、炭素数が2〜8個のフルオロアルキル基である)で示されるフッ素含有界面活性剤と、
(B2)官能性アルコキシシラン
を混合した後、
(B1)成分および/または(B2)成分を加水分解および/または脱水縮合させる
ことを特徴とする、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子の製造方法。
(VII) (A)シリカナノ粒子と、
(B1)式(1):
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、Tは、SOQまたはCOOQであり、Qは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、Rfは、炭素数が2〜8個のフルオロアルキル基である)で示されるフッ素含有界面活性剤と、
(B2)官能性アルコキシシランと、
(C)溶剤と、
(D)アルカリ触媒または酸触媒と
を含有する、表面処理組成物。
(VIII) (B2)成分が、式(2):
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、Rは、水素、メチル基、エチル基、ヘキシル基またはフェニル基であり、Rは、メチル基またはエチル基である。pおよびqは、整数であり、p+q=4である。)で示される化合物である、上記(VII)記載の表面処理組成物。
(IX) (1)式のTが、SOHまたはSOKであり、Rが、直鎖である、上記(VII)または(VIII)記載の表面処理組成物。
(X) 上記(VII)〜(IX)記載の表面処理組成物を、ガラス基材の表面に塗布し、塗膜を形成する工程と、前記塗膜と前記ガラス基材を加熱処理し、表面処理膜を形成する工程を、この順で含む、ガラス基材の表面処理方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明(I)によれば、一般環境(空気中)においては撥水・撥油機能により汚れがつき難く(高防汚性)、また洗浄環境(水中)においては親水性により油汚れを除去しやすい(高洗浄性)という、相反する特性を有するフッ素含有シリカナノコンポジット粒子が得られる。また、原料物質である特定のフッ素含有界面活性剤は、比較的単純な分子構造であるので、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子を容易かつ低コストで製造することができる。
【0019】
本発明(V)によれば、高温でも熱安定性のよいフッ素含有シリカナノコンポジット粒子が得られる。
【0020】
本発明(VI)によれば、比較的単純な分子構造を有する特定のフッ素含有界面活性剤を原料として用いるので、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子を容易かつ低コストで製造でき、しかも製造したフッ素含有シリカナノコンポジット粒子は優れた防汚性と高洗浄性を有する。
【0021】
本発明(VII)によれば、比較的単純な分子構造を有する特定のフッ素含有界面活性剤を原料として用いるフッ素含有シリカナノコンポジット粒子により、容易かつ低コストで、ガラス基材の表面に優れた防汚性及び高洗浄性を付与できる表面処理組成物が得られる。
【0022】
本発明(X)によれば、上記表面処理組成物により、容易かつ低コストで、ガラス表面に優れた防汚性及び高洗浄性を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1、2に関する反応スキーム1を示す図である。
【図2】実施例5、6で得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の熱重量分析の結果を示す図である。
【図3】原料に用いたシリカナノ粒子の熱重量分析の結果を示す図である。
【図4】実施例7〜11で得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の熱重量分析の結果を示す図である。
【図5】実施例7で得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の重メタノール溶液中における19F NMR測定の結果を示す図である。
【図6】HOS(CFSOHの19F NMR測定の結果を示す図である。
【図7】実施例12〜16で得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の熱重量分析の結果を示す図である。
【図8】実施例12で得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の重メタノール溶液中における19F NMR測定の結果を示す図である。
【図9】HOS(CFSOHの19F NMR測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量基準の%である。
【0025】
〔フッ素含有シリカナノコンポジット粒子〕
本発明のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子は、(A)シリカナノ粒子と、
(B)式(1):
【0026】
【化6】

【0027】
(式中、Tは、SOQまたはCOOQであり、Qは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、Rfは、炭素数が2〜8個のフルオロアルキル基である)で示されるフッ素含有界面活性剤と、官能性アルコキシシランの加水分解物との混合物および/または該混合物の脱水縮合物を含むことを特徴とする。
【0028】
(A)成分としては、平均粒径が5〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであるとより好ましい。ここで、平均粒径は、動的光散乱法によって測定する。また、(A)成分の形状は、球状、だ円球状等が挙げられるが、球状が好ましい。
【0029】
(A)成分は、単独でも2種以上を併用しても用いてもよい。
【0030】
(B)成分のフッ素含有界面活性剤は、式(1):
【0031】
【化7】

【0032】
(式中、Tは、SOQまたはCOOQであり、Qは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、Rfは、炭素数が2〜8個のフルオロアルキル基である)で示され、フルオロアルキル基(Rf)の両末端がスルホン酸もしくはスルホン酸塩であるか、または一末端がスルホン酸もしくはスルホン酸塩であり、他末端がカルボン酸もしくはカルボン酸塩である。フルオロアルキル基は、直鎖である必要はなく、分岐していてもよい。フルオロアルキル基の炭素数は、電解フッ素化工程での収率、および後工程で使用する溶媒等への溶解性の観点から選択され、この炭素数は、2〜5であると好ましい。また、Rは、直鎖であると好ましい。
【0033】
(B)成分のフッ素含有界面活性剤としては、式(1a):
【0034】
【化8】

【0035】
(式中、Q、Rfは、式(1)と同義である)が、好ましく、酸強度の観点から、HOS(CFSOH、KOS(CFSOKがより好ましい。また、HOS(CFCOOHも好ましい。
【0036】
(B)成分のフッ素含有界面活性剤は、電解フッ素化法により、当業者に公知の方法で、合成することができる。
【0037】
(B)成分のフッ素含有界面活性剤は、単独でも2種以上を併用しても用いてもよい。
【0038】
(B)成分の官能性アルコキシシランは、多官能性アルコキシシランであると好ましく、式(2):
【0039】
【化9】

【0040】
(式中、Rは、水素、メチル基、エチル基、ヘキシル基またはフェニル基であり、Rは、メチル基またはエチル基である。pは3または4であり、pおよびqは、整数であり、p+q=4である。)で表される化合物であると、より好ましい。また、式(2)において、pが3のとき、qは1、Rは、メチル基、エチル基またはヘキシル基であるか、pが4のとき、qは0であると、さらに好ましい。
【0041】
ここで、式(2)において、pが3のとき、式〔RSi(OR〕で示されるトリアルコキシシランとなり、例えば、トリエトキシシラン、トリエトキシ(メチル)シラン、トリエトキシ(フェニル)シラン、トリメトキシシラン、トリメトキシ(メチル)シランおよびトリメトキシ(フェニル)シラン等が挙げられる。pが4のときには、qは0で、式〔Si(OR〕のテトラアルコキシシランとなり、例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)等が挙げられる。これらのうち、テトラアルコキシシランが、さらにより好ましく、TMOS及びTEOSは、液状であって特定のフッ素含有界面活性剤との相溶性が高いので特に好ましく、これらを使用することにより、本発明のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子を均質なものとすることができる。
【0042】
(B)成分の官能性アルコキシシランとして、上記の種々の多官能性アルコキシシランを2種以上混合して用いることもできる。例えば、テトラアルコキシシランに若干のトリアルコキシシランを添加する、あるいはテトラアルコキシシランの一部をトリアルコキシシランと置換する場合には、フルオロアルキル基含有界面活性剤と官能性アルコキシシランの相溶性が増加して、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子構造中の架橋性が向上し、これを用いた表面処理組成物の塗膜の硬化性、耐久性を向上させる。さらには、コロイダルシリカあるいは珪酸ソーダの添加や、多官能アルコキシシランとの置換、そしてカルシウム・リン化合物の添加によっても同様の効果が発現できる。
【0043】
(B)成分は、上記フッ素含有界面活性剤と官能性アルコキシシランの加水分解物との混合物および/または該混合物の脱水縮合物である。ここで、この加水分解物は、後述する方法で、官能性アルコキシシランを、当業者に既知の方法で加水分解したものであり、脱水縮合物は、フッ素含有界面活性剤および/または該加水分解物を加熱処理等により脱水縮合したものである。なお、加水分解物は、未反応の官能性アルコキシシランを含み得る。
【0044】
本発明のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子は、(A)および(B)成分の合計100質量部に対して、(A)成分を2〜90質量部含むことが、製造上の観点から好ましく、5〜70質量部がより好ましい。
【0045】
また、(A)および(B)成分の合計100質量部に対して、(B)成分のフッ素系界面活性剤を2〜90質量部含むことが、好ましく、5〜70質量部がより好ましい。(B)成分のフッ素系界面活性剤の含有割合が2質量部より過小である場合には、防汚性や高洗浄性などの機能付与が困難となる。他方、(B)成分のフッ素系界面活性剤を90質量部を超える割合で含有させても、含有量に見合う処理効果が得られない。
【0046】
(A)および(B)成分の合計100質量部に対して、(B)成分の官能性アルコキシシランの加水分解物を8〜96質量部含むことが、製造上の観点から好ましい。20〜80質量部がより好ましい。
【0047】
また(B)成分のフッ素含有界面活性剤と官能性アルコキシシランとの質量比は、1:1〜1:20が好ましく、1:1〜1:10が、より好ましい。(B)成分のフッ素含有界面活性剤に対する官能性アルコキシシランの含有割合が上記より過小である場合には、フッ素含有界面活性剤と官能性アルコキシシランの相溶性が悪化し、相分離が起こったり、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子が白濁したりする可能性が高くなり、均一なフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の形成が困難となり得る。他方、この割合が過大である場合には、フッ素低分子界面活性剤の割合が相対的に過小となり、所期の効果をフッ素含有シリカナノコンポジット粒子に付与することが困難となり得る。
【0048】
なお、本発明のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子には、その効果が損なわれない限度において、上記の必須成分以外に各種の任意成分が含有されていてもよい。
【0049】
本発明のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子は、熱重量分析において、空気雰囲気中、昇温速度が10℃/分で、室温から800℃まで加熱したときの重量減少が、0〜8質量%であり、原料のシリカナノ粒子とほぼ同等、すなわち該シリカナノ粒子を用いて測定したときの重量減少の±50%以内であると、高温でも熱安定性がよく好ましい。この重量減少は、多くの場合−20〜50%の範囲で観察される。なお、該シリカナノ粒子を測定したときより重量減少が、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子の場合より減少する原因としては、該シリカナノ粒子に吸着した水分等が考えられる。本発明のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子は、スルホン酸基を有するフッ素化合物を含有するため、ナフィオンのような固体電解質の材料としての可能性も考慮されている。すなわち、高温での熱安定性により、本発明のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子は、燃料電池等の固体電解質向け材料としての応用が期待される。
【0050】
本発明のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の製造方法は、(A)シリカナノ粒子と、(B1)式(1):
【0051】
【化10】

【0052】
(式中、Tは、SOQまたはCOOQであり、Qは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、Rfは、炭素数が2〜8個のフルオロアルキル基である)で示されるフッ素含有界面活性剤と、
(B2)官能性アルコキシシラン
を混合した後、
(B1)および/または(B2)成分を加水分解および/または脱水縮合させる
ことを特徴とする。
【0053】
(A)成分については、上記のとおりである。
【0054】
(B1)成分については、上記(B)成分において記載したフッ素含有界面活性剤のとおりであり、(B2)成分については、上記(B)成分において記載した官能性アルコキシシランのとおりである。
【0055】
フッ素含有シリカナノコンポジット粒子は、具体的には、溶剤中に、(A)成分、(B1)成分、(B2)成分を加えた後、この溶剤を撹拌している中に、アルカリ触媒もしくは酸触媒を含む水溶液を添加し、官能性アルコキシシランを加水分解物とし、必要に応じて、この溶媒を加熱工程等により、フッ素含有界面活性剤と官能性アルコキシシラン加水分解物の混合物の一部または全部を、脱水縮合物にすることによって、容易に製造することができる。溶剤、アルカリ触媒、酸触媒については後述する。
【0056】
脱水縮合ための加熱工程における加熱方法としては、オーブンによる加熱など、特に制限されるものではない。加熱条件としては、例えば常温〜200℃で5〜120分間が挙げられ、好ましい条件として常温〜100℃で5〜60分間が挙げられる。
【0057】
フッ素含有界面活性剤と、官能性アルコキシシランの加水分解物との混合物は、加熱処理されることにより、フッ素含有界面活性剤および/または官能性アルコキシシランの加水分解物が、脱水縮合して、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子が形成される。ここで、常温以下では上記反応を進行させるには足りず、200℃以上では加熱処理により、加水分解前および/または脱水縮合前の物質の分解反応が起こり、反応物であるフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の形成が困難となる。なお、この加熱処理後には、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子に、高温での安定性が付与される。
【0058】
〔表面処理組成物〕
本発明の表面処理組成物は、 (A)シリカナノ粒子と、
(B1)式(1):
【0059】
【化11】

【0060】
(式中、Tは、SOQまたはCOOQであり、Qは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、Rfは、炭素数が2〜8個のフルオロアルキル基である)で示されるフッ素含有界面活性剤と、
(B2)官能性アルコキシシランと、
(C)溶剤と、
(D)アルカリ触媒または酸触媒と
を含有する。
【0061】
(A)成分については、上記のとおりである。
【0062】
(B1)成分については、上記(B)成分において記載したフッ素含有界面活性剤のとおりであり、(B2)成分については、上記(B)成分において記載した官能性アルコキシシランのとおりである。
【0063】
(C)成分としては、(B1)成分と(B2)成分を共に溶解することができる液体の中から選択することができ、(B1)成分や(B2)成分の種類によっても異なるが、メタノール、エタノール、IPA、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ベンゼン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、アセトンなどの有機溶剤を例示することができ、これらのうち、メタノール及びエタノール等のアルコール類が好ましい。
【0064】
(C)成分は、単独でも2種以上を併用しても用いてもよい。
【0065】
(D)成分は、(B1)成分および(B2)成分の加水分解および/または脱水縮合を効率的に行わせるために、添加される。ここで、加水分解は、主に(B2)成分により起こると考えられる。脱水縮合は、主として(B2)成分の加水分解物によるが、(B2)成分の加水分解物と(B1)成分との間でも起こり得ると考えられ、さらに(B1)成分同士の間でも起こり得る。
【0066】
(D)成分のアルカリ触媒としては、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重曹、炭酸水素カリウムなどを挙げることができる。アルカリ触媒、無機酸触媒のいずれも水溶液にすることが、加水分解等の反応を均質に起こさせる観点から好ましい。この場合、アルカリ触媒の場合には、(D)成分100質量部に対して、10〜90質量部であることが好ましい。(D)成分は、アルカリ触媒が好ましく、アンモニウム水が、加熱工程時に揮発しやすいため、特に好ましい。なお、(D)成分の添加により、(B2)の加水分解が保存中に起こり、表面処理組成物の粘性が過度に高くなる場合には、表面処理組成物を低温で保存することが好ましい。
【0067】
(D)成分は、単独でも2種以上を併用しても用いてもよい。
【0068】
本発明の表面処理組成物の(A)、(B1)、(B2)、(C)および(D)成分の合計100質量部に対して、(A)成分を10〜80質量部含むことが、高温での熱安定性等の物性の観点から好ましい。
【0069】
本発明の表面処理組成物の(A)、(B1)、(B2)、(C)および(D)の合計100質量部に対して、(B1)成分は0.2〜20質量部含むことが好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。(B1)成分の含有割合が0.2質量部より過小である場合には、防汚性や高洗浄性などの機能付与が困難となる。他方、(B1)成分の含有割合が20質量部を超えても、含有量に見合う処理効果が得られない。
【0070】
本発明の表面処理組成物の(A)、(B1)、(B2)、(C)および(D)成分の合計100質量部に対して、(B2)成分は2〜50質量部含むことが、製造上の観点から好ましく、5〜30質量部がより好ましい。
【0071】
また(B1)成分と(B2)成分との質量比は、1:1〜1:20が好ましく、1:1〜1:10が、より好ましい。(B1)成分に対する(B2)成分の含有割合が、上記より過小である場合には、(B1)成分と(B2)成分の相溶性が悪化し、相分離が起こったり、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子が白濁したりする可能性が高くなり、均一なフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の形成が困難となり得る。他方、この割合が過大である場合には、フッ素低分子界面活性剤の割合が相対的に過小となり、所期の効果をガラス表面に付与することが困難となり得る。
【0072】
本発明の表面処理組成物の(A)、(B1)、(B2)、(C)および(D)成分の合計100質量部に対して、(C)成分を5〜90質量部含むことが、製造上の観点から好ましい。
【0073】
(D)成分がアルカリ触媒であるときには、表面処理組成物の(A)、(B1)、(B2)、(C)および(D)成分の合計100質量部に対して、(D)成分は0.01〜30質量部含むことが好ましく、1〜20質量部がより好ましい。0.01質量部より少ないと、触媒としての効果が得られず、30質量部より多いと(B1)成分と(B2)成分の相溶性が著しく悪化し、均一な表面処理組成物を得ることが難しくなる。
【0074】
なお、本発明の表面処理組成物には、その効果が損なわれない限度において、上記の必須成分以外に各種の任意成分が含有されていてもよい。
【0075】
本発明の表面処理組成物は、(B1)成分と(B2)成分を、(C)成分に溶解させた後、(A)成分、(D)成分を加えることにより、容易に製造することができる。ここに、製造方法の一例を示せば、(B1)成分を、適量の(C)成分に溶解してなる溶液と、(B2)成分とを室温下に攪拌混合して均質化させ、次いで、(A)成分と(D)成分を加えて混合溶液を作製した後、残部の成分(C)を添加して、この混合溶液を希釈する方法を挙げることができる。
【0076】
本発明の表面処理組成物は、ガラス基材の表面処理に使用することができ、当該ガラス基材の表面に、防汚性(撥水及び撥油性)並びに高洗浄性(親水性)の相反する特性を付与することを可能とする。
【0077】
〔ガラス基材の表面処理方法〕
本発明の処理方法は、ガラス基材の表面に、本発明の表面処理組成物を塗布し、塗膜を形成する工程と、前記表面処理組成物による塗膜を加熱処理し、表面処理膜を形成する工程を、この順で含む。塗布工程において、ガラス基材の表面への表面処理組成物の塗布方法としては、当該表面処理組成物中にガラス基材を浸漬する浸漬法、スプレー、刷毛、ローラなど塗布手段を使用する、あるいは印刷手法を用いる方法など特に制限されるものではない。なお、この塗布工程の終了後、無機材料の表面に形成された塗膜から溶剤を除去するために乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥条件としては、処理組成物を構成する溶剤の種類及び含有割合などによっても異なるが、例えば、常温で1〜24時間が挙げられる。
【0078】
表面処理組成物中の(B2)成分は、一般的には、塗布中および/または乾燥中に加水分解される。加水分解に必要な水は、(D)成分に含まれる水や空気中の水分等から供給される。この塗布・乾燥中で加水分解が十分に起こらない場合には、次の加熱工程まで加水分解が続く。
【0079】
前記塗膜形成後の加熱工程における加熱方法としては、オーブンによる加熱など、特に制限されるものではない。加熱条件としては、例えば常温〜200℃で5〜120分間が挙げられ、好ましい条件として常温〜100℃で5〜60分間が挙げられる。
【0080】
ガラス基材の表面に塗布された塗膜が加熱処理されることにより、(B1)成分および/または(B2)成分が加水分解および/または脱水縮合して、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子を含む表面処理層が形成される。ここで、常温以下では上記反応を進行させるには足りず、200℃以上では加熱処理により、加水分解前および/または脱水縮合前の物質の分解反応が起こり、反応物であるフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の形成が困難となる。なお、この加熱処理後には、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子に、高温での安定性が付与される。
【0081】
また、この表面処理組成物は、アルカリ触媒のもとで加水分解および/または脱水縮合反応を行うことで、酸触媒のもとで反応を行った場合と比較して、表面処理膜の耐久性を向上させることができる。この結果、水あるいは熱水を用いた食器洗浄機などの洗浄操作にともなう、化学的、物理的な作用に対して、表面処理膜により付与される防汚性(撥水及び撥油性)及び高洗浄性(親水性)が著しく損なわれることはなくなる。このように、アルカリ触媒のもとで反応を行うことで得た当該表面処理膜は、酸触媒のもとで反応を行うことで得たものと比較して、優れた洗浄耐久性を有する。さらには、表面処理膜の透明性向上、そして反応時間短縮に伴う、生産性の向上寄与が効果として認められる。
【0082】
本発明の表面処理組成物により形成される表面処理層は、一般環境(空気中)においては表面に露出するフルオロアルキル基(フッ素)の作用で高い撥水及び撥油性を有することから、優れた防汚性を発揮する。洗浄時(水中)においてはフッ素に代わってスルホン酸基が表面に出て親水性になり、油汚れと表面処理層の間に水が進入することで油が表面から浮き出すので、優れた洗浄性を有することとなる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
〔実施例1、2〕
フッ素含有界面活性剤として0.2gのHOS(CFSOHをメタノール約30mlに溶かし、メタノールシリカゾル(30%ナノシリカ、平均粒子サイズ:11nm)3.33gおよびテトラエトキシシラン0.5mlを加え、最後に攪拌しながら28%アンモニア水0.5mlを加えて5時間反応を行った。次いで、アンモニア水を除去するためにエバポレーターにより溶媒を除去し、メタノールを10ml加えて一晩中攪拌し分散させた。さらに、遠心分離器でメタノールにより数回洗浄し、再びメタノールを10ml加えて一晩攪拌し分散させた。その後、動的光散乱法によりそれぞれ粒子サイズの測定を行った。
【0085】
図1に反応スキーム1を示す。表1に、反応スキーム1に従って作製したときの、フッ素含有界面活性剤の種類とフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の収率、動的光散乱法による平均粒子径(大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計(型番:DLS−7000HL)を用いて測定)を示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表1に示すように、実施例1、2ともに平均粒子径が約94、54nmのフッ素含有シリカナノコンポジット粒子が得られた。
【0088】
〔実施例3、4〕
0.5gのシリカナノ粒子と、0.30gのXOS(CFSOXで示されるフッ素含有界面活性剤と、0.25mlのSi(OCと、10mlのメタノールと、0.5mlの28質量%アンモニア水を、マグネチックスターラーを用いて混合し、表面処理組成物を作製した。
【0089】
作製した表面処理組成物を、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルムの両面にキャストし、塗布膜を作製した。この塗布膜を室温下12日間、真空下処理して、表面処理膜を作製した。ここで、裏面とは、PPMAフィルムのウラ面である。
【0090】
〔表面処理膜の評価1〕
得られた表面処理膜の上にドデカン(以下、油という)25μlを滴下させ、ガラス基板と油滴の接触部位で形成される角度(単位:度)を、ERMA製G−1−1000接触角測定器により測定を行った。この接触角値が高いほど、空中において油を弾きやすい、すなわち高い防汚性を有するということができる。(以降、ガラス基板と油滴の形成する角度を水中油滴接触角(度)あるいは単に水中油滴角(度)と呼ぶ。)
【0091】
〔表面処理膜の評価2〕
得られた表面処理膜の上に前記油を滴下させ、さらにそのガラス基板を水中に浸漬し、ガラス基板と油滴の接触角度を前記接触角測定器により測定を行った。この接触角値が高いほど、水中において油が容易にとれる、すなわち高い洗浄性を有するということができる。この接触角測定は、水中に浸漬後、30分経過するまで、5分間隔で行った。
【0092】
表2に、前記の評価1,2の結果(空中油滴接触角は「油」と、水中油滴角測定結果は「水」と記す)を示す。本発明の表面処理を行ったガラス基板は、特に初期状態において、高い防汚性及び高洗浄性を有することが理解される。
【0093】
【表2】

【0094】
〔実施例5、6〕
表3に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子を作製した。
【0095】
【表3】

【0096】
表4に、得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の収量、収率と動的光散乱法で測定した平均粒子径を示す。
【0097】
【表4】

【0098】
表4に示すように、実施例5、6ともに平均粒径約60、56nmのフッ素含有シリカナノコンポジット粒子が得られた。
【0099】
得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の熱重量分析を、ブルッカー・エイエックスエス製高温型示差走査熱量計(型番:AXS2000SA)を用いて、空気雰囲気中、昇温速度10℃/分で、室温から800℃まで測定した。図2に、その結果を示す。参考として、図3に、原料に用いたシリカナノ粒子の熱重量分析の結果を示す。実施例6のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の重量減少は、原料に用いたシリカ粒子の重量減少の110%以下、すなわち+10%以下であった。また、表5に、このときの重量減少、昇温前後の動的光散乱法で測定した平均粒径を示す。なお、表5には、KOS(CFSOKの理論含有量(質量%)も示す。
【0100】
【表5】

【0101】
表5に示すように、実施例5、6ともに、重量減少が7、5質量%と少なく、KOS(CFSOKが残存していることが示唆される。また、昇温前後での平均粒径もほぼ同じであった。
【0102】
〔実施例7〜11〕
表6に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子を作製した。
【0103】
【表6】

【0104】
表7に、得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の収量、収率と動的光散乱法で測定した平均粒子径を示す。
【0105】
【表7】

【0106】
表7に示すように、実施例7〜11の全てで平均粒径約36〜45nmのフッ素含有シリカナノコンポジット粒子が得られた。
【0107】
得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の熱重量分析を、実施例5と同様に測定した。その結果を図4に示す。また、表8に、このときの重量減少、昇温前後の動的光散乱法で測定した平均粒径を示す。なお、表8には、HOS(CFSOHの理論含有量(質量%)も示す。
【0108】
【表8】

【0109】
表8に示すように、実施例7〜11の全てで、重量減少が7〜9質量%と少なく、HOS(CFSOHが残存していることが示唆される。また、昇温前後での平均粒径もほぼ同じであった。
【0110】
次に、実施例7で得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の重メタノール溶液中における19F NMR測定を、JEOL製FT NMR装置(型番:JNM−400)を用いて行った。この結果を図5に示す。また、比較のために、HOS(CFSOHの19F NMR測定の結果を図6に示す。フッ素含有シリカナノコンポジット粒子が、HOS(CFSOHを含有することを示すCF基(−114ppm、−120ppm)の2本のピークが確認された。
【0111】
〔実施例12〜16〕
表9に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子を作製した。
【0112】
【表9】

【0113】
表10に、得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の収量、収率と動的光散乱法で測定した平均粒子径を示す。
【0114】
【表10】

【0115】
表10に示すように、実施例12〜16の全てで平均粒径約30〜87nmのフッ素含有シリカナノコンポジット粒子が得られた。
【0116】
得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の熱重量分析を、実施例5と同様に測定した。その結果を図7に示す。また、表11に、このときの重量減少、昇温前後の動的光散乱法で測定した平均粒径を示す。なお、表11には、HOS(CFCOOHの理論含有量(質量%)も示す。
【0117】
【表11】

【0118】
表11に示すように、実施例12〜16の全てで、重量減少が6〜8質量%と少なく、KOS(CFCOOHが残存していることが示唆される。また、昇温前後での平均粒径もほぼ同じであった。
【0119】
実施例12で得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の上記熱重量分析の昇温前後でのゼータ電位を、マイクロテック・ニチオン製ゼータ電位測定装置(型番:Zeecom/ZC−2000)を用い、測定した。表12に、この結果を示す。また、比較のために、原料として用いたSiOの動的光散乱法で測定した平均粒子径とゼータ電位を示す。
【0120】
【表12】

【0121】
表12に示すように、実施例12においては、昇温後においても、SiOより低いゼータ電位を示した。
【0122】
次に、実施例12で得られたフッ素含有シリカナノコンポジット粒子の重メタノール溶液中における19F NMR測定の結果を図8に示す。また、比較のために、HOS(CFCOOHの19F NMR測定の結果を図9に示す。フッ素含有シリカナノコンポジット粒子が、HOS(CFCOOHを含有することを示すCF基(−114ppm、−119ppm、−122ppm)の3本のピークが確認された。
【0123】
上記実施例に示すように、本発明のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子は、超微細で、かつ高温でも安定であり、また、本発明の表面処理を行ったガラス基板は、高い防汚性及び高洗浄性を有することがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリカナノ粒子と、
(B)式(1):
【化12】

(式中、Tは、SOQまたはCOOQであり、Qは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、Rfは、炭素数が2〜8個のフルオロアルキル基である)で示されるフッ素含有界面活性剤と、官能性アルコキシシランの加水分解物との混合物および/または該混合物の脱水縮合物
を含むことを特徴とする、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子。
【請求項2】
(B)成分の官能性アルコキシシランが、式(2):
【化13】

(式中、Rは、水素、メチル基、エチル基、ヘキシル基またはフェニル基であり、Rは、メチル基またはエチル基である。pおよびqは、整数であり、p+q=4である。)で示される化合物である、請求項1記載のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子。
【請求項3】
(B)成分の官能性アルコキシシランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシランおよびトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1または2記載のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子。
【請求項4】
式(1)のTがSOHまたはSOKであり、Rが直鎖である、請求項1〜3のいずれか1項記載のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子。
【請求項5】
熱重量分析において、昇温速度が10℃/分で、室温から800℃まで加熱したときの重量減少が、シリカナノ粒子を用いて測定したときの重量減少の±50%以内である、請求項1〜4のいずれか1項記載のフッ素含有シリカナノコンポジット粒子。
【請求項6】
(A)シリカナノ粒子と、
(B1)式(1):
【化14】

(式中、Tは、SOQまたはCOOQであり、Qは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、Rfは、炭素数が2〜8個のフルオロアルキル基である)で示されるフッ素含有界面活性剤と、
(B2)官能性アルコキシシラン
を混合した後、
(B1)成分および/または(B2)成分を加水分解および/または脱水縮合させる
ことを特徴とする、フッ素含有シリカナノコンポジット粒子の製造方法。
【請求項7】
(A)シリカナノ粒子と、
(B1)式(1):
【化15】

(式中、Tは、SOQまたはCOOQであり、Qは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、Rfは、炭素数が2〜8個のフルオロアルキル基である)で示されるフッ素含有界面活性剤と、
(B2)官能性アルコキシシランと、
(C)溶剤と、
(D)アルカリ触媒または酸触媒と
を含有する、表面処理組成物。
【請求項8】
(B2)成分が、式(2):
【化16】

(式中、Rは、水素、メチル基、エチル基、ヘキシル基またはフェニル基であり、Rは、メチル基またはエチル基である。pは3または4である。pおよびqは、整数であり、p+q=4である。)で示される化合物である、請求項7記載の表面処理組成物。
【請求項9】
(1)式のTがSOHまたはSOKであり、Rが直鎖である、請求項7または8記載の表面処理組成物。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項記載の表面処理組成物を、ガラス基材の表面に塗布し、塗膜を形成する工程と、前記塗膜と前記ガラス基材を加熱処理し、表面処理膜を形成する工程を、この順で含む、ガラス基材の表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−209280(P2010−209280A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59464(P2009−59464)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(597065282)三菱マテリアル電子化成株式会社 (151)
【出願人】(504229284)国立大学法人弘前大学 (162)
【Fターム(参考)】