説明

フマル酸と3−(2−ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)フェノールとの塩及びその結晶形

3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩は極めて良好な作用を有する鎮痛薬である。結晶質の形状Bは、化学的及び物理的に極めて安定であることが証明され、そして有効物質及び医薬組成物の製造のために特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは1:1の組成の、フマル酸と3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)−フェノールとの塩、上記塩の安定した結晶形並びにその製造方法、医薬組成物及び組成物中での医薬有効物質としての上記塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許公開(EP−A1)第0753506号明細書には、鎮痛作用を有する3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールが記載されている。上記明細書中では、遊離塩基から塩を製造することもできることも述べられていて、その際、フマル酸も可能なアニオンとして述べられている。この実施例中では、もっぱら塩酸塩、つまり一価のアニオンとの塩が製造されている。この欧州特許公開(EP−A1)第0753506号明細書は、3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールが二価のアニオンとどのような化学量論で存在できるのか、例えばヘミ塩又は1:1塩として存在するのかは示唆されていない。3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−塩酸塩のより詳細な研究により、その結晶質の固体物質が特徴的な多形を特徴とし、複数の準安定の結晶形を形成することが明らかとなった。さらに、この塩酸塩は水和物及び溶媒和物を形成する傾向が著しく強く、このことは特別な結晶形を適切に製造するために重大な欠点である。この結晶質の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−塩酸塩は、さらに極めて吸湿性であることが明らかである。3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−塩酸塩の上記の特性プロフィールは、この有効物質を用いて、貯蔵の期間にわたって維持される再現可能な特性を有する医薬組成物を提供することが極めて難しいことを明らかにしている。この目的を達成するために、少なくとも費用のかかる保護手段が必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
驚くべきことに、3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールがフマル酸と、結晶質の固体物質としてフマル酸塩を形成すること、好ましくは組成においてフマル酸塩と3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールとの1:1の割合の結晶性の固体物質として形成することが見出された。さらに意外にも、フマル酸塩は吸湿性ではなく、空気中でも安定であり、水和物又は溶媒和物を形成しないことが見出された。さらに意外にも、3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩は、低温でも又は高温でも安定な若干の形態を形成することができ、その際、形態Bが室温で安定な形状であることも見出された。高温で安定な形態Aは、同様に形態Bに転移することができ、この場合、両方の形態は低温で混合した形で存在することもできる。この結晶形Bは、100℃より低い温度で高い化学的耐性により特徴付けられる。さらに、3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩は有用な生物学的特性、例えば水を含めた極性及びプロトン性の溶媒中で良好な可溶性、及び良好なバイオアベライビリティを有する。3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩は、その特性プロフィールに基づいて、医薬組成物の調製のために極めて良好に適している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の対象は、フマル酸と3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールとの塩、好ましくは式I
【0005】
【化1】

で表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩である。
【0006】
式Iで表わされる化合物のような本発明による化合物は、シクロヘキサン環の1位及び2位にそれぞれキラルC原子を有している。式Iで表わされる化合物のような本発明による化合物は、全ての立体異性体及び立体異性体の混合物を含む。フェニル環とジメチルアミノメチル基とのトランス配置を有するジアステレオマー又は鏡像異性のジアステレオマーの混合物(1R,2R−又は1S,2S−配置)が有利であり、その際、絶対配置(1R,2R)を有する上記エナンチオマーがさらに特に好ましい。
【0007】
3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールの(1R,2R)エナンチオマーの構造を次に記載する:
【0008】
【化2】

式Iで表わされる化合物は、欧州特許公開(EP−A1)第0753506号明細書中に一般に塩の製造について記載された方法と同様に、遊離塩基から及び水の存在でのフマル酸との反応から得ることができる。遊離塩基の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールは、例えば欧州特許公開(EP−A1)第0753506号明細書の実施例9及び10に記載された塩酸塩から単離することができる。このために塩酸塩は有機溶媒中に溶かされ、水性無機塩基、例えばアルカリ金属塩基又はアルカリ金属炭酸水素塩(例えばLiOH、NaOH、KOH、NaHCO及びKHCO)を添加し、有機相を分離する。この有機相を乾燥し、この塩基を通常のように単離するか又は場合により溶媒の濃縮による濃縮後に塩形成のために直接使用することができる。
【0009】
本発明による他の対象は、3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールとフマル酸を一緒にし、その際、好ましくは上記成分の少なくとも1種を溶解した形で又は懸濁した形で存在させる、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の製造方法である。
【0010】
本発明による他の対象は、次の工程を有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の製造方法である:
a) 3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールを溶媒中に溶解させるか又は懸濁させるか、又は3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールを固体として存在させ 、
b) 上記溶液、懸濁液又は固体 をフマル酸、溶媒中のフマル酸の懸濁液又は溶液と混合し、場合により冷却して、低温で維持し、
c) 式Iで表わされる化合物を単離し、
その際、好ましくは、処理工程において温度は90℃を超えず、そして工程a)とb)を交換してもよい。
【0011】
意外にも、温度を制御し、かつ90℃を超える温度、好ましくは60℃を超える温度、特に好ましくは40℃を超える温度を適用しない場合に、上記塩形成は一方だけの結晶形、つまり形態Bが生じることが見出された。
【0012】
本発明の他の対象は、従って、次の工程を有する、結晶形Bの形の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の製造方法である:
a) 3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールを溶媒中に溶解させるか又は懸濁させるか、又は3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールを固体として存在させ 、
b) 上記溶液、懸濁液又は固体 をフマル酸、溶媒中のフマル酸の懸濁液又は溶液と混合し、場合により冷却して、結晶形Bが完全に形成されるまで、低温で維持し、ついで
c) 結晶形Bの形の式Iで表わされる化合物を単離し、
その際、処理工程において温度は90℃を超えず、そして工程a)とb)を交換してもよい。
【0013】
この温度は、処理工程b)中で混合の際に好ましくは70℃を上回らず、好ましくは60℃を上回らず、さらに好ましくは40℃を上回らない。冷却は、約−20℃までの、好ましくは−10℃までの、特に好ましくは0℃までの温度を意味することができる。処理工程a)による溶解の場合のこの温度は、一般に処理工程b)による混合の場合の温度よりも高い。溶解の際に40℃を超える温度を適用する場合に、上記溶液は混合の前に40℃以下に冷却され、場合によりこの温度で数時間維持する。
【0014】
遊離塩基とフマル酸とは1:1のモル比で使用することができるか、又はフマル酸は過剰量で使用することもでき、例えば1.3までのモル比で、好ましくは1.1までのモル比で使用することもできる。遊離塩基の過剰量を使用する場合に、塩基対フマル酸のモル比を2:1に調節する場合であってもヘミフマル酸塩は形成されない。
【0015】
3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールの溶液中の量は、例えば溶液に対して5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、特に10〜50質量%、特に好ましくは15〜40質量%であることができる。3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールの溶液を加熱し、引き続き、場合によりフマル酸との混合のために望ましい温度に冷却することができる。
【0016】
3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール及びフマル酸のための不活性の(適合した)溶媒は、例えば、脂肪族、環式脂肪族及び芳香族の炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン)、脂肪族ハロゲン炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン又はテトラクロロエタン)、ニトリル(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル)、エーテル(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、ケトン(アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン)、カルボン酸エステル及びラクトン(酢酸エチルエステル又は酢酸メチルエステル、バレロラクトン)、N−置換ラクタム(N−メチルピロリドン)、カルボン酸アミド、(ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド)、非環式尿素(ジメチルイミダゾリン)、及びスルホキシド及びスルホン(ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシド、テトラメチレンスルホン)及びアルコール(メタノール、エタノール、1−又は2−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル又はジエチレングリコールモノエチルエーテル)及び水である。この溶媒は単独で又は少なくとも2種の溶媒の混合物の形で使用することもできる。好ましくは、当業者に周知である生理学的に問題のない溶媒が使用される。
【0017】
処理工程b)中での混合は、一方の溶液を他方の溶液にゆっくりと添加するか又は迅速に添加することによって行うことができる。一方又は両方の溶液を加熱することもできる。しかしながら、この混合は、一方の溶液又は両方の溶液を室温で存在させるか、又は冷却して、例えば−20℃まで、好ましくは−10〜+10℃、さらに好ましくは5〜+5℃に冷却して行うこともできる。混合の後に、加熱及び再び冷却することができ、これを所定の時間の間にさらに撹拌することができる。結晶の形成は種結晶の添加によって促進することもできる。
【0018】
原則として、混合の間に既に白色の沈殿物が形成され、この沈殿物は結晶質で良好に濾過することができる。この単離は、デカンテーション、濾過又は遠心分離によって行うことができる。この結晶質の残留物は次いでさらに、例えば加熱、真空乾燥又は真空中での加熱、又は場合により加熱された不活性のガス流(空気、窒素、希ガス)を用いて乾燥することができる。式Iで表わされる化合物は高収率でかつ高純度で得られる。原則として、ほかの精製工程は必要ないか又はわずかな精製工程、例えば再結晶だけが必要であり、かつ上記生成物は医薬組成物の製造のために直接使用することができる。
【0019】
本発明による他の対象は、上記の方法のいずれか1つにより得られる、フマル酸と3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールとの塩、特に式Iの塩である。
【0020】
式Iで表わされる化合物及び本発明による製造方法は、相応する塩酸塩と比べて著しい及び部分的に予期しない利点を提供する。水和物及び溶媒和物はキャラクタリゼーションされないため、使用可能な溶媒の選択は広範囲でありかつ重要ではない。空気中での及び水分に対するこの安定性は、特別な保護措置なしで開放状態で取り扱うことができる。自発的な塩形成及び結晶質の沈殿物の形成並びにその良好な濾過適性は、工業的規模での方法を可能にする。
【0021】
式Iで表わされる化合物は、結晶質の固体としての塩形成の本発明による方法の場合に、一方の多形の形態で優先的に得られ、これは以後、形態Bと表す。式Iで表わされる化合物の非晶質の形態は、簡単に、例えば凍結乾燥により又は溶液の急速な冷却によって得られる。式Iの非晶質の化合物は極めて不安定であり、水分の存在で結晶化する傾向がある。40℃を超える温度では、結晶形Bと、高温で熱力学的に安定の結晶形Aとからなる混合物を形成することができる。この非晶質の形態は、結晶形の適切な製造のための出発材料として特に適している。
【0022】
一般式Iで表わされる化合物が結晶質の固体として多形の形態で形成され、これは3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩から適切に製造することができ、その安定性に基づいて特に医薬組成物の調製のための有効物質として適していることが見出された。エナンチオマーは同じX線回折図及びラマンスペクトルを生じ、従って同じ多形の形態を形成することは公知である[例えばZ. Jane Li et al.著、J. Pharm. Sci., Vol. 88(3), 第337 〜 346頁 (1999)参照]。従って、本発明の範囲内で、全てのエナンチオマーの多形の形態が含まれる。
【0023】
本発明による他の対象は、次の特有の反射を有する特徴的なX線回折パターンを有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形Bである:
【0024】
【表1】

上記の表中にはピーク位置(2シータでの)並びに上記ピークの相対強度が示されている。この場合に最も強いピークを100の相対強度に標準化した。
【0025】
本発明による他の対象は、d値(オングストローム)で表わされる 、次の特有の特徴的な曲線:
9,3(vs), 7,0(m), 6.7(s), 5,37(s), 5,21(s), 4,64(s), 4,52(s), 4,28(vs), 4,23(s), 4,19(s), 3,94(m) 3,78(m), 3,52 m), 3,49(m), 3,33(s), 3,30(m), 3,06(s), 2,83(m)を有する、2゜〜35゜の2θの範囲内での特徴的なX線回折パターンを有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形である(以後、形態Bと表す)。
【0026】
上記及び後記の括弧内の省略形は次の意味を表す:(vs)=極めて強い強度、(s)=強い強度、(m)=平均的な強度、(w)=弱い強度、及び(vw)=極めて弱い強度。ラマンスペクトルの表中での省略形の「sh」は、ショルダーを意味する。
【0027】
本発明による他の対象は、波数(cm−1)で表わされる 、次の特徴的な極性を有する特徴的なラマンスペクトルを有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形である:
【0028】
【表2】

(以後、形態Bと表す)。
【0029】
他の本発明の対象は、波数(cm−1)で表わされる 、ラマンスペクトルにおいて171(m)で特徴的なバンドを有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形Bである。
【0030】
本発明の対象は、図1に図示されたようなX線回折パターンを有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形Bでもある。
【0031】
本発明の対象は、図2に図示されたようなラマンスペクトルを有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形Bでもある。
【0032】
この結晶形Bは、例えば約40℃までの低い温度で熱力学的に最も安定な形態であり、かつ付加的に優れた化学的及び物理的安定性を示す。多形Bは、そればかりか90%までの高い相対空気湿度での空気湿度の影響に対して敏感でなくかつ長期間にわたっても安定である。この多形は、吸水性、水和物の形成及び標準状態で他の結晶形への転移は観察されない。多形Bは空気中で及び水分の存在で相転移も示さない。しかしながら、多形Bは高めた圧力下で又は粉砕時に変化し、かつ高めた圧力の作用下で結晶形Aへの転移が観察される。多形Bは吸湿性でもなく、少量の表面水だけを吸収する。多形Bはこの条件下で溶媒和物も形成せず、溶媒と接触した場合でも転移は観察されない。極性溶媒中での可溶性は極めて良好である。融点は約176℃であり、溶融エンタルピーは10℃/分の加熱速度でDSCで測定して約113J/gである。結晶形Aへの転移温度は約40℃より高い。多形Bは所望の平均粒径を有する固体粉末として製造することができ、この平均粒径は原則として1μm〜約500μmの範囲内にある。結晶形Bはその特性のために薬学的調製物の製造のために最良に適している。
【0033】
式Iで表わされる化合物は、結晶形Bに極めて類似した他の結晶形B′を形成し、これは再現可能に製造することができ、かつ例えばX線回折パターンにおいて主に19〜19.4゜の2θでのピークの強度及び位置により区別される。この特性はほとんど形態Bに一致する。
【0034】
式Iで表わされる化合物は、高温での熱力学的に安定の他の結晶形Aを形成し、これは標準状態で空気中で及び空気湿度の遮断下で同様に安定である。この結晶形Aも取扱可能であり、これは薬学的調製物の製造のために使用することができる。
【0035】
本発明の他の対象は、次の特有の反射を有する特徴的なX線回折パターンを有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形Aである:
【0036】
【表3】

上記の表中にはピーク位置(2シータでの)並びに上記ピークの相対強度が示されている。この場合に最も強いピークを100の相対強度に標準化した。
【0037】
本発明の他の対象は、d値(オングストローム)で表わされる 、次の特有の特徴的な曲線:
9,3(vs), 7,0(m), 6,7(s), 5,36(vs), 5,20(m) 4,64(vs), 4,53(s), 4,26(vs), 4,18(s), 3,95(m), 3,78(m), 3,57(m), 3,50(s), 3,46(m), 3,33(s), 3,05(m), 2,83(m)を有する、2゜〜35゜の2θの範囲内での特徴的なX線回折パターンを有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形である(以後、形態Aと表す)。
【0038】
本発明の他の対象は、波数(cm−1)で表わされる 、次の特徴的な曲線を有する特徴的なラマンスペクトルを有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形である:
【0039】
【表4】

(以後、形態Aと表す)。
【0040】
他の本発明の対象は、波数(cm−1)で表わされる 、ラマンスペクトルにおいて1644(w)及び1705(sh,m)で特徴的なバンドの一方又は両方を有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形Aである。
【0041】
本発明の対象は、図3に図示されたようなX線回折パターンを有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形Aでもある。
【0042】
本発明の対象は、さらに図4に図示されたようなラマンスペクトルを有する、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形Aでもある。
【0043】
この結晶形Aは、高めた温度で、例えば少なくとも約40℃又はそれ以上で熱力学的に安定な形である。多形Aはさらに空気湿度の存在でも高めた温度で優れた化学的安定性を示す。この物理的安定性は比較的低い、それというのも高めた圧力で、既に室温でも、水分の影響あり又はなしで、多形Bへの転移が生じるためである。しかしながら、吸水性も水和物の形成も観察されない。多形Aは溶媒和物も形成しない。溶媒との接触の際に、結晶形Bへの転移は生じることがある。極性溶媒中での可溶性は極めて良好であり、多形Bの可溶性と同等である。融点は約175.5℃であり、溶融エンタルピーは10℃/分の加熱速度でDSCで測定して約111J/gである。多形Aは所望の平均粒径を有する固体粉末として製造することができ、この平均粒径は原則として1μm〜約500μmの範囲内にある。この結晶形Aの乾燥した保護ガス下(例えば窒素)での貯蔵が推奨される。
【0044】
この多形の形態Aを結晶形B(B′)に転移させることも、その逆も可能である。この形態AとBとは、約40〜60℃の転移温度又は転移温度範囲で互変系を形成する。本発明の対象は、従って、この結晶形AとBとの任意の混合比での混合物でもある。形態A及びBの結晶格子は極めて類似していて、例えば、ラマンスペクトル及びX線回折パターンがわずかな相違だけを有することから明らかである。同じ位置のピークの異なる強度の他に、形態Aは21゜の2θの領域で2つのピークを示し、形態Bは3つのピークを示す。
【0045】
記載された融点及び溶融エンタルピーに関しては、示差走査熱量測定(DSC)で異なる結晶形に対して極めて類似の値が見られたことを補足して述べておく。形態Bから出発するX線回折パターンの温度依存する記録の場合に、温度が上昇する場合にまず結晶形Aへの完全な転移が行われ(約50℃)、次いで約150℃で新たな、高温でも及び融点まで安定の形態Cへの転移が観察されることが見られた。従って、この形態Cの融点及び溶融エンタルピーについての値を特定することはあり得ないわけではない。
【0046】
この多形の形態は、塩の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩から公知の結晶化プロセス、例えば懸濁液(相平衡の調節)の撹拌、沈殿、再結晶、又は溶媒の蒸発によりにより製造することができる。結晶核形成剤を用いた種結晶添加あり又はなしで、希釈された、飽和された又は過飽和の溶液を使用することもでき。溶液を形成させる温度は、100℃までであることができる。この結晶化は、約−100℃〜30℃、好ましくは−30℃〜20℃に冷却することにより開始させることができ、その際、冷却を連続的又は段階的に行うことができる。溶液又は懸濁液の製造のために、非晶質の又は結晶質の出発材料を使用することができ、溶液中で高い濃度を達成しかつ他の結晶形が得られる。
【0047】
本発明の対象は、
a) 粉末状の、固体の、非晶質の形態の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩を、水蒸気を含む不活性ガスで、結晶形Bが完全に形成されるまで処理するか;又は
b) 非晶質の形態の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩の溶媒中の懸濁液を担体として製造し、結晶形Bが完全に形成されるまで撹拌するか;又は
c) 3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩を溶媒中に溶解させ、引き続き沈殿させ、場合により結晶形Bが完全に形成されるまで撹拌し;
その際、工程a)、b)及びc)中の温度は、高くても90℃、好ましくは高くても60℃、特に好ましくは高くても40℃であることを特徴とする、3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩の結晶形Bの製造方法である。
【0048】
工程a)及びb)中での温度は好ましくは高くても40℃であり、この方法は特に好ましくは室温で実施される。不活性ガスは、例えば空気、窒素及び希ガスであり、その際、空気は経済的な理由から特に好ましい。上記ガスの相対湿度は、例えば40〜90%、好ましくは60〜90%である。処理工程a)中の処理時間は、主に粒径及び相対湿度に依存し、例えば5〜100時間であることができる。処理工程a)において、相対空気湿度が低すぎ及び(又は)処理時間が短すぎる場合には、形態Aの他に多形Bも形成することができる。単離の後に、結晶質の残留物を通常のように乾燥することができ、その際、好ましくは40℃を超える温度は避けられる。
【0049】
処理工程b)は、好ましくは、約−20℃〜40℃で、特に好ましくは5℃〜25℃(ほぼ室温)で実施される。挙げることができる溶媒は上記されている。処理工程b)における処理時間は、5〜100時間であることができる。単離の後に、使用された溶媒又は溶媒混合物は通常のように公知の乾燥方法で除去することができる。
【0050】
処理工程c)において、結晶形A、B又は非晶質の形態の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩を、溶液の製造のために使用することができる。溶液中の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩の濃度は、選択された温度及び溶媒に依存する。溶解した量は、例えば溶媒に対して0.5〜50、好ましくは0.5〜30、さらに好ましくは0.5〜20、特に好ましくは1〜15質量%であることができる。溶解させるための温度は、70℃まで、好ましくは60℃まで、さらに好ましくは40℃までであることができる。この溶液は、高い溶解能を有する溶媒、例えば水、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドン及びプロピレングリコールが使用される場合に、室温でも製造することができる。沈殿は、冷却、部分的又は完全な溶媒の除去、沈殿剤の添加(非溶媒、例えばヘプタン又はメチル−t−ブチルエーテル)又はこれらの手段の組み合わせにより行うことができる。冷却は、−20℃までの、好ましくは0℃までのゆっくりとした冷却又は急冷を意味することができる。上記溶媒の除去は、加熱により、ガス流中に置くことにより、真空をかけることにより又は上記の手段の組み合わせにより行うことができる。溶媒を除去するための加熱は、処理工程c)において、高くても40℃、好ましくは高くても30℃の温度を意味する。処理工程c)による沈殿方法の場合には、好ましくは得られる懸濁液は、長時間にわたり−20℃の温度で、好ましくは0℃〜10℃の温度で後撹拌され、できる限り形成された結晶形Aを多形の形態Bに転移させる。
【0051】
多形の形態Bの製造は相対的にあまり重要ではない。この製造のために蒸発方法も使用することができる。この方法の場合に、溶媒の選択及び特に蒸発温度を留意しなければならない。室温付近での温度の場合に、主に多形の形態Bが形成される。40℃を超える温度、好ましくは50℃からの温度では、主に多形の形態Aが形成される。さらに、結晶形A及びBの混合物の形成を室温でも観察することができる。
【0052】
結晶形Aの適切な製造のために、基本的に結晶形Bの製造のためと同じ方法を使用することができるが、その際に個々の処理工程中の温度は40℃を超えるように維持される。この温度は、例えば50℃〜120℃、好ましくは50℃〜100℃であることができる。冷却の後でより低温で維持することは、好ましくは2日を超えない、好ましくは1日を超えない。
【0053】
本発明の他の対象は、
a) 粉末状の、固体の、非晶質の形態の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩を、水蒸気を含む不活性ガスで、結晶形Aが完全に形成されるまで処理するか;又は
b) 非晶質の形態の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩の溶媒中の懸濁液を担体として製造し、結晶形Aが完全に形成されるまで撹拌するか;又は
c) 3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩を溶媒中に溶解させ、引き続き沈殿させ、場合により結晶形Aが完全に形成されるまで撹拌し;
その際、処理工程a)、b)及びc)中で温度は90℃より高く、好ましくは60℃より高く、特に好ましくは40℃より高く、結晶形を冷却の後に単離することを特徴とする、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形Aの製造方法である。
【0054】
3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩は、有利な全体の特性プロフィールに基づき、医薬組成物のための、さらに特に鎮痛する医薬のための有効物質として特に優れている。従って、本発明の対象は、医薬中の有効物質としての、好ましくは鎮痛剤中の有効物質としての式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の使用でもある。この全体の出願明細書においてと同様に、ここでも、フェニル環とジメチルアミノメチル基とのトランス配置を有するジアステレオマー又は鏡像異性のジアステレオマーの混合物(1R,2R−又は1S,2S−配置)が有利であり、その際、絶対配置(1R,2R)を有する上記エナンチオマーがさらに特に好ましい。
【0055】
本発明による他の対象は、有効量の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩及び薬学的担体又は薬学的希釈剤を含有する、医薬組成物である。
【0056】
この有効物質中で、式Iで表わされる化合物は結晶形A、結晶形B又は形態AとBとの混合物として存在することができる。結晶形Bが含まれているのが好ましい。
【0057】
式Iで表わされる化合物の量は、主に製剤のタイプ及び投与の期間の間の所望の薬用量に依存する。本発明による塩のそれぞれの患者に投与すべき量は可変であることができ、例えば患者の体重又は年齢並びに適用種類、適応症及び疾患の重さの度合に依存する。通常では、患者の体重1kg当たり、少なくとも1種のこのような化合物0.005〜5000mg、好ましくは0.05〜500mgが適用される。
【0058】
経口の製剤は固形製剤、例えば錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤であることができる。経口の製剤は液状製剤、例えば溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤であることができる。液状及び固形製剤は、式Iで表わされる化合物を固形又は液状食品中に混入することも含む。さらに、液体は腸管外適用のための、例えば注入又は注射用の溶液剤をも含む。
【0059】
式Iで表わされる化合物及び結晶形は、粉末(微粉化した粒子)、顆粒、懸濁剤又は溶液剤として直接使用することができるか、又は他の薬学的に許容し得る添加剤又は成分と混合し、次いで粉末化し、この粉末を、硬質ゼラチン又は軟質ゼラチンからなるカプセル内へ充填するか、錠剤、丸剤又はトローチ剤に圧縮成形するか、又はこの粉末を担体中に懸濁させるか、又は懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤の製造のために溶かすことができる。錠剤、丸剤又はトローチ剤は、圧縮成形の後に被覆を設けることができる。
【0060】
多様な製剤タイプのための薬学的に許容し得る添加物及び成分は、それ自体公知である。これは、例えば、結合剤、例えば合成又は天然のポリマー、医薬用担体、離型剤、界面活性剤、甘味剤及び香料、被覆剤、保存剤、着色剤、増粘剤、助剤、抗菌剤及び多様な製剤タイプのための担体であることができる。
【0061】
結合剤の例は、アラビアゴム、トラガカントゴム、アカシアゴム及び生分解性ポリマー、例えばジカルボン酸、アルキレンジオール、ポリアルキレングリコール及び(又は)脂肪族ヒドロキシカルボン酸のホモポリエステル又はコポリエステル、ジカルボン酸、アルキレンジアミン及び(又は)脂肪族アミノカルボン酸のホモポリアミド又はコポリアミド;相応するポリエステル−ポリアミド−コポリマー、ポリアンヒドリド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン及びポリカーボネートである。この生分解性ポリマーは、線状でも、分枝状でも又は架橋されていてもよい。特別な例は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸及びポリ−d,l−乳酸/グリコール酸である。ポリマーの他の例は、水溶性ポリマー、例えばポリオキサアルキレン(ポリオキサエチレン、ポリオキサプロピレン及びこれらのコポリマー)、ポリアクリルアミド及びヒドロキシアルキル化ポリアクリルアミド、ポリフマル酸及びそのエステル又はそのアミド、ポリアクリル酸及びそのエステル又はそのアミド、ポリビニルアルコール及びそのエステル又はそのエーテル、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリドン及び天然のポリマー、例えばキトサンである。
【0062】
医薬用担体の例は、リン酸塩、例えばリン酸二カルシウムである。
【0063】
滑剤の例は、天然油又は合成油、脂肪、ワックス又は脂肪酸塩、例えばステアリン酸マグネシウムである。
【0064】
界面活性剤(表面活性剤)は、アニオン性、カチオン性、両性又は中性であることができる。界面活性剤の例は、レシチン、リン脂質、オクチルスルファート、オクチルスルファート、デシルスルファート、ドデシルスルファート、テトラデシルスルファート、ヘキサデシルスルファート及びオクタデシルスルファート、オレイン酸ナトリウム又はカプリン酸ナトリウム、1−アシルアミノエタン−2−スルホン酸、例えば1−オクタノイルアミノエタン−2−スルホン酸、1−デカノイルアミノエタン−2−スルホン酸、1−ドデカノイルアミノエタン−2−スルホン酸、1−テトラデカノイルアミノエタン−2−スルホン酸、1−ヘキサデカノイルアミノエタン−2−スルホン酸、及び1−オクタデカノイルアミノエタン−2−スルホン酸、胆汁酸、その塩及びその誘導体、例えばコール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸及びグリココール酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、マレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、硫酸化ヒマシ油、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン及びラウリルベタイン、脂肪アルコール、コレステロール、グリセリンモノステアラート又はグリセリンジステアラート、グリセリンモノオレアート又はグリセリンジオレアート、グリセリンモノパルミタート又はグリセリンジパルミタート、及びポリオキシエチレンステアラートである。
【0065】
甘味剤の例は、スクロース、フルクトース、ラクトース又はアスパルテームである。
【0066】
香料の例は、ペパーミント、ウィンターグリーン油又は果実アロマ、例えばチェリーアロマ又はオレンジアロマである。
【0067】
被覆剤の例は、ゼラチン、ワックス、セラック、糖又は生分解性ポリマーである。
【0068】
保存剤の例は、メチルパラベン又はプロピルパラベン、ソルビン酸、クロロブタノール及びフェノールである。
【0069】
助剤の例は、香料である。
【0070】
増粘剤の例は、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル及び脂肪アルコールである。
【0071】
液体担体の例は、水、アルコール(エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、ポリトリアジン及び油である。固体担体の例は、タルク、アルミナ、微結晶セルロース、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び類似の固体である。
【0072】
本発明による組成物は、等張剤、例えば糖、生理学的緩衝剤及び塩化ナトリウムを含有することができる。
【0073】
本発明による組成物は、水性環境中で分解して飲用溶液又は飲用懸濁液を形成する発泡錠剤又は発泡粉末として調製することもできる。
【0074】
シロップ剤又はエリキシル剤は、式Iで表わされる化合物、甘味剤としての糖、例えばスクロース又はフルクトース、保存剤(例えばメチルパラベン)、着色剤及び矯味剤(例えば香料)を含有することができる。
【0075】
本発明による組成物は、胃腸管の体液との接触で遅延されかつ制御された有効物質放出を示す製剤であることもでき、血清中での有効物質のほぼ一定でかつ有効なレベルが維持される。式Iで表わされる化合物は、この目的で生分解性ポリマー、水溶性ポリマー又は両方のポリマーのポリマーマトリックス中に、場合により適当な界面活性剤と一緒に埋め込むことができる。埋め込みとは、この関連において、ポリマーマトリックス中での微小粒子の混入を意味する。遅延されかつ制御された有効物質放出を示す製剤は、分散液及びエマルションの公知の被覆技術による分散可能な微小粒子又は乳化された微小液滴のカプセル化によっても得ることができる。
【0076】
式Iで表わされる化合物は、混合療法のために少なくとも1種の他の医薬有効物質と一緒に使用することもできる。このために、少なくとも1種の他の有効物質を、本発明による組成物中に付加的に分散又は溶解させることができる。
【0077】
本発明の対象は、医薬組成物の製造のための、特に疼痛状態の治療のための、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の使用でもある。
【0078】
本発明による他の対象は、疼痛を患う患者に有効量の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩を投与する、疼痛状態の治療方法である。
【0079】
好ましくは本発明による医薬(本発明による医薬組成物)は、疼痛、好ましくは急性疼痛、慢性疼痛、ニューロパシー性疼痛及び内臓性疼痛からなるグループから選択される疼痛、偏頭痛、鬱病、神経変性性疾患、好ましくはパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病及び多発性硬化症からなるグループから選択される神経変性性疾患、認識疾患、好ましくは認識不足状態、特に好ましくは注意欠陥症候群(ADS)、パニック発作、てんかん、咳、尿失禁、下痢、掻痒、精神分裂症、脳虚血、筋肉痙攣、痙攣、摂食障害、好ましくは多食症、悪液質、拒食症及び肥満症からなるグループから選択される摂食障害、アルコール乱用及び(又は)ドラッグ乱用(特にニコチン乱用及び(又は)コカイン乱用)及び(又は)薬物乱用、アルコール依存症及び(又は)ドラッグ依存症(特にニコチン依存症及び(又は)コカイン依存症)及び(又は)薬物依存症の予防及び(又は)治療のため、好ましくはアルコール依存症及び(又は)ドラッグ依存症(特にニコチン依存症及び(又は)コカイン依存症)及び(又は)薬物依存症の場合の禁断症状、薬物に対する、特にオピオイドに対する耐性現象の発生、胃食道逆流症候群の予防及び(又は)防止のため、利尿のため、抗ナトリウム利尿のため、心臓血管系の影響のため、不安解消のため、覚醒向上のため、性欲増進のため、運動能力の調節のため及び局部麻酔のために適している。
【0080】
好ましくは本発明による医薬(本発明による医薬組成物)は、疼痛、好ましくは急性疼痛、慢性疼痛、ニューロパシー性疼痛又は内臓性疼痛、鬱病、てんかん、パーキンソン病、アルコール乱用及び(又は)ドラッグ乱用(特にニコチン乱用及び(又は)コカイン乱用)及び(又は)薬物乱用、アルコール依存症及び(又は)ドラッグ依存症(特にニコチン依存症及び(又は)コカイン依存症)及び(又は)薬物依存症の予防及び(又は)治療のため、好ましくはアルコール依存症及び(又は)ドラッグ依存症(特にニコチン依存症及び(又は)コカイン依存症)及び(又は)薬物依存症の場合の禁断症状の予防及び(又は)防止のため、薬物に対する、特にオピオイドに対する耐性現象の発生の予防及び(又は)防止のため、又は不安解消のために特に適している。
【0081】
本発明による医薬(本発明による医薬組成物)は、疼痛、好ましくは急性疼痛、慢性疼痛、ニューロパシー性疼痛又は内臓性疼痛の予防及び(又は)治療のためにさらに特に適している。
【0082】
特に有利なのは、それぞれ場合により純粋な立体異性体、特にエナンチオマー又はジアステレオマー、そのラセミ体の形で又は上記立体異性体の混合物、特にエナンチオマー及び(又は)ジアステレオマーの任意の混合比での混合物の形での少なくとも1種の本発明による塩、並びに場合により1種又は数種の薬学的に許容される助剤の、疼痛、好ましくは急性疼痛、慢性疼痛、ニューロパシー性疼痛及び内臓性疼痛からなるグループから選択される疼痛、偏頭痛、鬱病、神経変性性疾患、好ましくはパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病及び多発性硬化症からなるグループから選択される神経変性性疾患、認識疾患、好ましくは認識不足状態、特に好ましくは注意欠陥症候群(ADS)、パニック発作、てんかん、咳、尿失禁、下痢、掻痒、精神分裂症、脳虚血、筋肉痙攣、痙攣、摂食障害、好ましくは多食症、悪液質、拒食症及び肥満症からなるグループから選択される摂食障害、アルコール乱用及び(又は)ドラッグ乱用(特にニコチン乱用及び(又は)コカイン乱用)及び(又は)薬物乱用、アルコール依存症及び(又は)ドラッグ依存症(特にニコチン依存症及び(又は)コカイン依存症)及び(又は)薬物依存症の予防及び(又は)治療のため、好ましくはアルコール依存症及び(又は)ドラッグ依存症(特にニコチン依存症及び(又は)コカイン依存症)及び(又は)薬物依存症の場合の禁断症状、ドラッグ及び(又は)医薬に対する耐性現象の発生、特にオピオイドに対する耐性現象の発生、胃食道逆流症候群の予防及び(又は)防止のため、利尿のため、抗ナトリウム利尿のため、心臓血管系の影響のため、不安解消のため、覚醒向上のため、性欲増進のため、運動能力の調節のため及び局部麻酔のための医薬の製造のための使用である。
【0083】
本発明による医薬は、液状、半固体又は固体の医薬剤形として、例えば注射溶液、滴剤、液剤、シロップ剤、スプレー剤、懸濁剤、錠剤、パッチ剤、カプセル剤、プラスター、坐剤、軟膏、クリーム、ローション剤、ゲル、エマルション、エアロゾルの形で又は多粒子の形で、例えばペレット又は顆粒剤の形、場合によりタブレットに圧縮成形され、カプセルに充填され又は液体中に懸濁されて存在しかつそれ自体も投与することができる。
【0084】
場合により純粋な立体異性体、特にエナンチオマー又はジアステレオマー、そのラセミ体の形の又は上記立体異性体の混合物、特にエナンチオマー又はジアステレオマーの任意の混合比での混合物の形の、少なくとも1種の本発明による塩の他に、本発明による医薬は、通常の他の生理学的に許容される薬学的助剤を含有し、上記薬学的助剤は好ましくは担持材料、充填剤、溶媒、希釈剤、界面活性剤、着色剤、保存剤、崩壊剤、離型剤、潤滑剤、香料及び結合剤からなるグループから選択することができる。
【0085】
生理学的に許容される助剤の選択並びにその使用されるべき量は、上記医薬が、経口、皮下、腸管外、静脈内、腹腔内、皮内、筋肉内、点鼻、バッカル、直腸又は局所、例えば皮膚、粘膜及び目の感染に対して適用されるかどうかに依存する。経口適用のために、好ましくは錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、ペレット剤、滴剤、液剤及びシロップ剤の形の調製物が適しており、腸管外、局所及び吸入適用のために、溶液、懸濁液、容易に再構築可能な乾燥調製物並びにスプレー剤が適している。
【0086】
適当な経皮適用製剤は、溶解した形又はプラスターの形のデポー製剤でもあり、場合により皮膚浸透を促進する薬剤が添加されている。
【0087】
経口又は経皮適用することができる製剤形は、それぞれ本発明による塩を遅延放出することができる。
【0088】
本発明による医薬の製造は、従来の技術から周知の通常の手段、装置、手法及び方法を用いて、例えば“Remington’s Pharmaceutical Sciences”, 編者A.R. Gennaro, 第17版, Mack Publishing Company, Easton, Pa, 1985, 特に第8部、第76章〜第93章に記載されているように行われる。相応する記載はこれにより本願明細書に援用され、この開示の一部と見なされる。
【0089】
本発明による塩のそれぞれの患者に投与すべき量は可変であることができ、例えば患者の体重又は年齢並びに適用種類、適応症及び疾患の重度に依存する。通常では、患者の体重1kg当たり、少なくとも1種のこのような化合物0.005〜5000mg、好ましくは0.05〜500mgが適用される。
【0090】
次の実施例は本発明をより詳細に説明する。
【0091】
全てのDSC測定の場合に(他に記載がない場合には)加熱速度は10℃/分であり;この記載された温度はピーク最大値である。
【0092】
A) (+)−(1R,2R)−3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩の製造
実施例A1:結晶形Bとしての製造
(+)−(1R,2R)−3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール0.0694gを酢酸エチル0.50ml中に溶かす。並行してフマル酸0.0356gno酢酸エチル20ml中の第2の溶液を調製する。上記第2の溶液を40℃で第1の溶液に滴加し、撹拌しながら混合し、その際、すぐに白色の沈殿物が形成される。この混合物を撹拌しながら23℃に冷却し、その際、粘性の残留物が形成される。この残留物を40℃に数回加熱し、その後で白色の固体が残留するまで5℃に冷却する。次いで、上記沈殿物をガラスフリットを通して濾別し、2分間の間に空気を十分に吸わせることにより上記残留物を乾燥させる。(+)−(1R,2R)−3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩0.0810mg(理論値の78%)が、融点約176℃の白色の結晶質の固体として得られ、溶融エンタルピーは10℃/分の加熱速度で示差走査熱量測定(DSC)で測定して約113J/gである。この結晶質の固体は多形の形態Bであり、このX線回折パターンは図1に示されている。このラマンスペクトルは図2に示されている。
【0093】
二倍量の(+)−(1R,2R)−3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールを使用する場合でも、同様に1:1−フマル酸塩だけが形成される。
【0094】
実施例A2:結晶形Bとしての製造
フマル酸0.81g(7.0mmol)を酢酸エチルエステル400ml中に溶かし、(+)−(1R,2R)−3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール1.64g(7mmol)の酢酸エチルエステル10ml中の溶液中に滴下する。滴下箇所で白濁が生じる。しかしながら固体の沈殿物は生じない。まず最初に油状物が堆積し、これがゆっくりと結晶化する。上記油状物をガラスフラスコの壁部から掻き落とし、油状の懸濁液を50〜60℃で回転蒸発器で維持し、この場合に結晶化が進行する。冷蔵庫中での冷却の際に、白色の、粘性の沈殿物が堆積する。この混合物を新たに50℃で回転蒸発器で維持し、次いで冷蔵庫中で3日間貯蔵する。次いでこの懸濁液を再度回転蒸発器で50℃に加熱し、次いで室温に冷却する。結晶質の沈殿物を濾別し、酢酸エチルエステルで洗浄し、次いで空気流中で乾燥させる。棒状の結晶の収率は、理論値の95.3%である。このDSC分析は、吸熱シグナル(ピーク)を175.6℃で示す。50℃で真空(100mbar)での乾燥の後に、次の特性が得られる:156.6及び174.5℃でDSCピーク、X線回折パターンは形態Bに一致する。
【0095】
実施例A3:結晶形Bとしての製造
フマル酸8.92gを酢酸エチルエステル120ml中に懸濁し、この懸濁液を55〜60℃に加熱する。(+)−(1R,2R)−3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール17.96gを酢酸エチルエステル108ml中に60℃で溶かし、ゆっくりと懸濁液に滴下する。滴下箇所ではすぐに固体が生じる。この懸濁液を、溶液の完全な添加の後に、さらに4時間60℃で、700rpmの撹拌機の回転数でさらに撹拌する。次いで、さらに1時間70℃に加熱し、その後でこの懸濁液を撹拌しながら室温に冷却する。結晶質の固体を濾別し、酢酸エチルエステルで洗浄し、もう1回酢酸エチルエステル中に懸濁し、次いで濾別し、空気中で乾燥させる。この収量は26.69gである(理論値の99.3%)。このX線回折パターンは形状Bに一致する。このDSC分析は、吸熱シグナル(ピーク)を175.1℃で示す。
【0096】
実施例A4:3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩の製造
a) 製造
3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール(HPLC分析による純度は75.9%)23.16gを、1Lのフラスコ中で酢酸エチルエステル588ml中に溶かし、この溶液を55℃に加熱する。次いで、撹拌しながらフマル酸8.75gを1回で添加する。生成したフマル酸のアグロメレートをスパチュラで破砕する。次いで55℃で4時間、冷却後にさらに2時間20℃で撹拌する。その後、結晶質の沈殿物をフィルターフリットで濾別し、酢酸エチルエステル20mlで1回洗浄し、空気の十分な吸収で乾燥させる。熱分析(DSC)で、幅広の吸熱シグナルが153.8℃で見られる。この純度(フェノールに対する)はHPLC分析により89.4%である。この収量は18.4gである(理論値の70.0%)。
【0097】
b) 撹拌洗浄による精製
A4a)により製造された粗製生成物をガラスフラスコ中に計り入れ、溶媒を添加し、40℃で90分間超音波(100%音波周波数)で処理する。次いで4℃で1時間貯蔵し、次いで生成された固体を吸引濾過する。空気中で乾燥された残留物を収率の測定のために秤量し、この純度をHPLC分析により決定する。この結果を次の表1に示す。次の省略形を使用する:EtAcは酢酸エチル、EtOHはエタノール、PrOHはi−プロパノール、AcNiはアセトニトリル、Tolはトルエン、Hexはn−ヘキサン、DiEtはジエチルエーテル、BuMeはt−ブチルメチルエーテル、Aceはアセトン、MeEtはメチルエチルケトン、THFはテトラヒドロフラン。
【0098】
表1
【0099】
【表5】

c)撹拌洗浄による精製
A4a)により得られた粗製生成物をガラスフラスコ中に計り入れ、溶媒を添加し、サーモミキサーで50℃で6時間振盪する。次いで、この溶液を一晩中23℃で貯蔵し、濾過し、残留物をそれぞれの溶媒2.5mlで洗浄し、次いで空気中で乾燥させる。この残留物の収率及び純度(HPLC)を決定する。更なる結果を次の表2に示す。
【0100】
表2
【0101】
【表6】

d) 撹拌洗浄による精製
A4a)により得られた粗製生成物をガラスフラスコ中に計り入れ、溶媒を添加し、サーモミキサーで50℃で6時間振盪する。次いで、この溶液を一晩中4℃で貯蔵し、濾過し、残留物をそれぞれの溶媒2.5mlで洗浄し、次いで空気中で乾燥させる。この残留物の収率及び純度(HPLC)を決定する。更なる結果を次の表3に示す。
【0102】
表3
【0103】
【表7】

e) 撹拌洗浄による精製
こうして得られた粗製生成物をガラスフラスコ中に計り入れ、溶媒を添加し、サーモミキサーで50℃で6時間振盪する。次いで、この試料を約17分間で約5℃〜20℃に冷却し、引き続きこの試料を4℃で3日間貯蔵し、濾過し、残留物をそれぞれの溶媒2.5mlで洗浄し、次いで空気中で乾燥させる。この残留物の収率及び純度(HPLC)を決定する。更なる結果を次の表4に示す。
【0104】
表4
【0105】
【表8】

f) 再結晶による精製
A4a)により得られた粗製生成物500mgをガラスフラスコ中に入れ、次いでAce80体積%及びPrOH20体積%からなる溶媒混合物16mlを添加する。回転蒸発器で加熱還流させ、さらに上記溶媒混合物30mlを添加し、回転蒸発器で透明な溶液が形成されるまで維持する。この溶液を一晩中ゆっくりと23℃に冷却し、結晶質の沈殿物を濾別し、空気中で乾燥させる。結晶質の生成物308.8mg(61.8%)が純度97.3%で得られる。
【0106】
結晶質の生成物260mgを新たにAce80体積%とPrOH20体積%からなる溶媒混合物20ml中に懸濁させ、次いで3時間加熱還流させる。引き続きゆっくりと23℃に冷却する。結晶質の沈殿物を濾別し、空気中で乾燥させる。結晶質の生成物210.8mg(42.2%)が純度99.05%で得られる。
【0107】
g)再結晶による精製
A4a)により得られた粗製生成物500mgをガラスフラスコ中に入れ、次いでAce60体積%及びPrOH40体積%からなる溶媒混合物30mlを添加する。透明な溶液が生成されるまで加熱還流し、ヒータのスイッチを切り、この溶液を次いで一晩中室温に冷却する。結晶質の沈殿物を濾別し、空気中で乾燥させる。結晶質の生成物197.9mg(39.6%)が純度97.7%で得られる。
【0108】
実施例A5:3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩の製造
ガラスフラスコ中に3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール(表5の冒頭部では塩基と表す)及びフマル酸を装入し、次いで溶媒又は溶媒混合物を添加する。次いで、6時間加熱振盪器中で55℃で振盪させる。次いで1時間内で30℃に冷却し、室温で一晩中放置する。結晶質の沈殿物を濾別し、次いで空気中で乾燥させる。空気中で乾燥された残留物を収率の測定のために秤量し、この純度をHPLC分析により決定する。この結果を次の表5に示す。EtAcは酢酸エチルである。最良の純度は、1/2当量のフマル酸(89.7mg)の添加の場合に観察されるが、もちろん低い収率の場合である。
【0109】
表5
【0110】
【表9】

B)非晶質の(+)−(1R,2R)−3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩の製造
実施例B1:凍結乾燥
実施例A1により製造されたフマル酸塩601.2mgを水8ml中に溶かし、その後で−85℃に急冷する。次いで、この温度でかつ0.250mbarの圧力で21時間の間に凍結乾燥させる。定量で固体の白色の残留物が得られ、この残留物は22%の相対空気湿度の存在で25℃で2ヶ月後にもなお非晶質である。示差走査熱量測定(DSC、加熱速度10℃/分)を用いて、55℃付近のガラス転移温度が測定される。118℃の発熱性のピークは結晶化に起因する。この形成れた結晶質の材料は約175.5℃で溶融し、これは多形の形態Aの形成を示唆する。
【0111】
実施例B2:凍結乾燥
実施例A1により製造されたフマル酸塩500.7mgを水8ml中に溶かし、その後で−80℃に急冷する。次いで、この温度でかつ0.570mbarの圧力で20時間の間に凍結乾燥させる。定量的に固体の白色の残留物が得られ、この残留物は非晶質である。
【0112】
C)結晶形Aの製造
この結晶形は、他に記載がない場合に、ラマンスペクトルの比較により決定される。
【0113】
実施例C1:酢酸エチル中での懸濁液の相平衡
例1Aにより製造されたフマル酸塩101mgに酢酸エチル25mlを添加し、撹拌しながら70℃に加熱する。次いで、この温度で2時間撹拌する。その後に、室温に冷却し、濾別し、空気流中で室温で乾燥する。結晶形A87mgが白色粉末として得られる。
【0114】
実施例C2:酢酸エチルからの結晶化
例A1により製造されたフマル酸塩80mgを65℃で酢酸エチル60ml中に溶かす。得られたこの透明な溶液をまず室温に冷却し、この温度で2時間維持する。白色の沈殿物が形成される。この懸濁液を5℃でさらに18時間放置する。次いで、この沈殿物を濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形A55mgが白色粉末の形で得られる。この結晶質の固体は175.5℃の融点を示し、かつ示差走査熱量測定(DSC)により10℃/分の加熱速度で測定して111J/gの溶融エンタルピーを示す。この結晶質の固体は多形の形態Aであり、このX線回折パターンは図3に示されている。このラマンスペクトルは図4に示されている。
【0115】
実施例C3:酢酸エチルからの結晶化
例A1により製造されたフマル酸塩400mgを65℃で2時間の間に酢酸エチル450ml中に溶かす。得られたこの透明な溶液をまず室温に冷却し、この温度で2.5時間維持し、その際、沈殿物は形成されない。この溶液を5℃でさらに4日間放置する。次いで、形成された白色の沈殿物を濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形A301mgが白色粉末の形で得られる。
【0116】
実施例C4:テトラヒドロフラン(THF)から結晶化
例A1により製造されたフマル酸塩50mgを60℃で45分間にTHF4ml中に溶かす。次いで、ドライアイスで冷却するが、その際、沈殿物は形成されない。さらに−18℃で18日間放置する。次いで、形成された白色の沈殿物を濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形A12mgが白色粉末の形で得られる。
【0117】
実施例C5:蒸発によるイソプロパノールからの結晶化
実施例B2により製造された非晶質のフマル酸塩29mgを、室温でイソプロパノール6ml中に溶かし、0.22μmのフィルターで濾過する。その後に、この溶液を50℃で2日間開放した容器中で撹拌する。次いで、室温に冷却し、残りの溶媒を窒素流中で蒸発させる。この固体の残留物は結晶形Aである。
【0118】
D)結晶形Bの製造
実施例D1
実施例B1により製造された非晶質のフマル酸塩80.1mgをアセトン2ml中に懸濁させ、23℃で24時間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B50mgが白色粉末の形で得られる。融点、溶融エンタルピー、X線回折パターン及びラマンスペクトルは、実施例A1に記載した値、パターン及びスペクトルに一致する。
【0119】
実施例D2
実施例B1により製造された非晶質のフマル酸塩80mgをジオキサン2ml中に懸濁させ、23℃で24時間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B35mgが白色粉末の形で得られる。
【0120】
実施例D3
実施例B1により製造された非晶質のフマル酸塩80mgを酢酸エチル2ml中に懸濁させ、23℃で24時間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B50mgが白色粉末の形で得られる。
【0121】
実施例D4
実施例B1により製造された非晶質のフマル酸塩80mgをイソプロパノール2.5ml中に懸濁させ、23℃で24時間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B36mgが白色粉末の形で得られる。
【0122】
実施例D5
実施例B1により製造された非晶質のフマル酸塩80mgをテトラヒドロフラン2ml中に懸濁させ、23℃で24時間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B44mgが白色粉末の形で得られる。
【0123】
実施例D6
実施例B1により製造された非晶質のフマル酸塩80mgを第三ブチルメチルエーテル2ml中に懸濁させ、23℃で24時間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B58mgが白色粉末の形で得られる。
【0124】
実施例D7
実施例B1により製造された非晶質のフマル酸塩40mgを水0.02ml中に懸濁させ、23℃で24時間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B18mgが白色粉末の形で得られる。
【0125】
実施例D8
実施例A1により製造されたフマル酸塩25mg及び実施例C3により製造されたフマル酸塩25mgをイソプロパノール1ml中に懸濁させ、23℃で24時間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B31mgが白色粉末の形で得られる。
【0126】
実施例D9
実施例D2により製造されたフマル酸塩24mg及び実施例A1により製造されたフマル酸塩20mgをイソプロパノール5ml中に懸濁させ、23℃で19時間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B3.3mgが白色粉末の形で得られる。
【0127】
実施例D10
実施例B2により製造された非晶質のフマル酸塩20mgを酢酸エチル2ml中に懸濁させ、23℃で1ヶ月間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B12mgが白色粉末の形で得られる。
【0128】
実施例D11
実施例B2により製造された非晶質のフマル酸塩20mgを酢酸エチル2ml中に懸濁させ、40℃で1ヶ月間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B11mgが白色粉末の形で得られる。
【0129】
実施例D12
実施例B2により製造された非晶質のフマル酸塩20mgをトルエン2ml中に懸濁させ、40℃で1ヶ月間撹拌する。次いで濾別し、この残留物を空気流中で室温で乾燥させる。結晶形B6mgが白色粉末の形で得られる。
【0130】
実施例D13:イソプロパノールからの再結晶
撹拌フラスコ中に、実施例A4aにより製造されたフマル酸塩2.0gをイソプロパノール30ml中に懸濁させ、10分間に約600rpm(1分あたりの回転数)の攪拌機の回転数で80℃に加熱して、透明な溶液を形成させる。上記回転数を800rpmに高め、この温度で10分間撹拌し、その際、終わり頃に短期間上記回転数を1000rpmに高める。次いで、155分間の間にこの温度を冷却速度を速めながら10℃に冷却する。白色の固体を濾別し、空気中で乾燥させる(1.315g、65.8%)。X線粉末回折パターンにより、結晶形Bの曲線だけが測定される。熱量測定(DSC)は、152.4℃及び174.0℃で発熱性のシグナルを示す。熱重量分析の場合に、有意な重量損失は観察されないため、溶媒和された形態は存在しない。この純度は、HPLCで測定して、97.9%である。
【0131】
実施例D13:イソプロパノールからの再結晶
撹拌フラスコ中に、実施例A4aにより製造されたフマル酸塩2.0gをイソプロパノール30ml中に懸濁させ、10分間に約600rpm(1分あたりの回転数)の攪拌機の回転数で80℃に加熱して、透明な溶液を形成させる。上記回転数を800rpmに高め、この温度で10分間撹拌し、その際、終わり頃に短期間上記回転数を1000rpmに高める。次いでこの温度を140分間の間に0.2K/minの線形の冷却速度で10℃に冷却する。白色の固体を濾別し、空気中で乾燥させる(1.318g、65.9%)。X線粉末回折パターンにより、結晶形Bの曲線だけが測定された。熱量測定(DSC)は、151.9℃及び174.2℃で発熱性のシグナルを示す。熱重量分析の場合に、有意な重量損失は観察されないため、溶媒和された形態は存在しない。この純度は、HPLCで測定して、98.0%である。
【0132】
E)安定性試験
実施例E1:高い空気湿度及び低い空気湿度での非晶質の形態の貯蔵
a) 実施例B1により製造された非晶質のフマル酸塩30mgを室温及び75%の相対空気湿度で5日間貯蔵する。その後、非晶質の生成物は完全に結晶形Bに転移されている。
【0133】
b) 実施例B2により製造された非晶質のフマル酸塩30mgを室温及び90%の相対空気湿度で3日間貯蔵する。その後、非晶質の生成物は完全に結晶形Bに転移されている。
【0134】
c) 実施例B2により製造された非晶質のフマル酸塩30mgを室温及び53%の相対空気湿度で2ヶ月間貯蔵する。その後、非晶質の生成物は完全に結晶形Bに転移されている。
【0135】
d) 実施例B2により製造された非晶質のフマル酸塩30mgを室温及び22%の相対空気湿度で2ヶ月間貯蔵する。その後でもなお非晶質の生成物が存在する。
【0136】
実施例E2:高い空気湿度での結晶形Aの貯蔵
実施例C3により製造されたフマル酸塩を室温及び75%の相対空気湿度で貯蔵し、3日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後及び8週間後に試料をラマンスペクトル分析で調査する。結晶形Aは3日後に結晶形Bに転移し、8週間後でもなお結晶形Bが存在する。
【0137】
実施例E3:高い空気湿度での結晶形Bの貯蔵
実施例A1により製造された結晶形Bを室温及び75%の相対空気湿度で貯蔵し、3日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後及び8週間後に試料をラマンスペクトル分析で調査する。この試料は8週間後でもなお実際に変化しない。
【0138】
実施例E4:磨砕条件下での安定性
a) 磨り潰しの際の結晶形A
実施例C3により製造されたフマル酸塩を、乳鉢中で乳棒で5分間磨り潰す。その後で、結晶形A及びBの混合物が存在する。
【0139】
b) 磨り潰しの際の結晶形B
実施例A1による結晶形Bを、乳鉢中で乳棒で5分間磨り潰す。その後で結晶形Bは変化せずに存在する。
【0140】
c) 磨砕の際の結晶形A
実施例A1により製造されたフマル酸塩を、メノウ製ボールミル中に装填し(5mmのメノウボールを用いるRetsch MM200混合ミル)、20Hzで室温で180分間磨砕する。その後で、結晶形A及びBの混合物が存在する。
【0141】
c) 磨砕の際の結晶形A
実施例A1による結晶形Bを用いて、実施例E4c)に従って実施する。180分後に、結晶形A及びBの混合物が存在する。
【0142】
実施例E5:加圧下での安定性
a) 錠剤の圧縮加工時の結晶形A
実施例C3により製造されたフマル酸塩を、錠剤圧縮加工機中に装填し、真空中で100MPaの圧力で60分間圧縮して錠剤にする。その後で、結晶形A及びBの混合物が存在する。
【0143】
b) 錠剤の圧縮加工時の結晶形B
実施例A1による結晶形Bを用いて、実施例E5a)に従って実施する。60分後に、結晶形A及びBの混合物が存在する。
【0144】
実施例E6:吸水性
吸水性を、動的水蒸気吸収(Dynamic Vapor Sorption, DVS)によりSurface Measurement Systems Ltd.社の装置DVS−1で測定する。この試料を白金坩堝中で微量天秤の先端に配置する。次いで、この試料をまず50%の相対空気湿度で釣り合わせ、次いであらかじめ定義された測定プログラムにかける。温度は25℃である。試料の質量変化が測定される。
【0145】
a) 非晶質の形態
この非晶質の形態は、約77%の相対空気湿度まで約6.5質量%の顕著な吸水量を示す。より高い空気湿度の場合にはこの質量は再び低下し、これは結晶化に起因する。試験の完了後に、結晶形Aが存在する。
【0146】
b) 結晶形A
この結晶形Aは、単に約0.2質量%の吸水性を示す。測定サイクルの完了時に、主に結晶形Bが存在する。
【0147】
c) 結晶形B
この結晶形Bは、単に約0.2質量%の吸水性を示す。測定サイクルの完了時に、変化せずに結晶形Bが存在する。
【0148】
実施例E7:高めた温度での安定性
この結晶質の形状は、開放型の又は閉鎖型の容器中で貯蔵され、所定の時間の後の可能な変化はクロマトグラフィー(HPLC)により安定パラメータとして測定する。この結晶形Aは化学的安定性及び結晶性に関して極めて安定であることが判明する。この結晶形Bは化学的安定性に関して極めて安定であることが判明する。この結果は、次の表6に記載されている。
【0149】
表6
【0150】
【表10】

1) 結晶形の測定
実施例E8:フマル酸塩及び塩酸塩(比較例)の吸水性
吸水性を、動的水蒸気吸収(Dynamic Vapor Sorption, DVS)によりSurface Measurement Systems Ltd.社の装置DVS−1で測定する。この試料を白金坩堝中で微量計の先端に配置する。次いで、この試料をまず50%の相対空気湿度で釣り合わせ、次いであらかじめ定義された測定プログラムにかける。温度は25℃である。試料の質量変化を、相対空気湿度のそれぞれ10%〜90%までの段階的な上昇により測定する。
【0151】
a) (+)−(1R,2R)−3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩(形態B)
0.13%の明らかにわずかな吸水率が見られる。吸収された湿分は約10%の相対空気湿度で再び完全に放出される。
【0152】
b) (+)−(1R,2R)−3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−塩酸塩(形態D)
相対空気湿度が約75%にまで向上する場合に、約2質量%の吸水率が観察される。90%までの相対空気湿度の更なる向上により、全体で約5質量%の吸水率が生じる。約10%の相対空気湿度の段階的な低減による脱着の際に、あらかじめ吸水された、つまり全体で8.5%の量よりも多くの水が放出される。可変の水和物が存在することが予想される。
【0153】
実施例E9:フマル酸塩及び塩酸塩(比較例)の湿潤貯蔵及び乾燥
実施例E8によるフマル酸塩及び塩酸塩を、まず25℃及び75%及び95%の相対空気湿度で7日間貯蔵し、その後7日間乾燥庫中で真空中で50℃で乾燥させる。貯蔵を開始する前に、X線回折パターン(XRD)、転移温度(Tp)、の測定のためのDSC、乾燥重量(TG)及びKarl−Fischerによる含水量(WG)を測定し、及び同じ値を湿潤貯蔵及び乾燥の後に測定する。X線回折パターンは、湿潤貯蔵及び乾燥後の結晶形A及びDの変化を示さない。塩酸塩についての出発値はTp=116.27℃、TG=6.35%及びWG8.00%である。フマル酸塩についての出発値はTp=93.11℃及び175.14℃、TG=0及びWG=0.2%である。この結果は、表7(75%の相対空気湿度)及び表8(95%の相対空気湿度)中に示されている。
【0154】
表7(75%)
【0155】
【表11】

表8(95%)
【0156】
【表12】

装置、方法
示差走査熱量測定(DSC):装置の名称Perkin Elmer DSC 7又はPerkin Elmer Pyris 1。金坩堝又はアルミニウム坩堝中で可変測定(加熱速度)。
【0157】
粉末X線回折パターン(PXRD):
PXRDは、Philips 1710粉末X線回折計を用いて実施し、その際、CuKα放射線を使用する。D間隔は、2θ値から計算し、その際1.54060オングストロームの波長を基本にする。一般にこの2θ値は±0.1〜0.2゜のエラー率を有する。従って、このd間隔値における実験的なエラーは、曲線(ピーク)の位置に依存する。
【0158】
ラマンスペクトル分析
FTラマンスペクトルはBruker RFS 100 FT−ラマンシステムを用いて記録され、これはNd:YAGレーザー(波長1064nm)及び液体窒素で冷却されたゲルマニウム検出器を用いて運転される。それぞれの試料は2cm−1の分解で64の走査を累算される。一般に、100mWのレーザー出力を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】図1は多形の形態BのX線回折パターンを示す。
【図2】図2は多形の形態Bのラマンスペクトルを示す。
【図3】図3は多形の形態AのX線回折パターンを示す。
【図4】図4は多形の形態Aのラマンスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フマル酸と3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールとの塩、好ましくは式I
【化1】

で表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩。
【請求項2】
式Iで表わされる化合物が、フェニル環及びジメチルアミノメチル基のトランス配置を有するジアステレオマー又は鏡像異性のジアステレオマーの混合物(1R,2R配置又は1S,2S配置)として、好ましくは絶対配置(1R,2R)を有するエナンチオマーとして存在する、請求項1記載の塩。
【請求項3】
請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の製造方法において、成分3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールとフマル酸を一緒にし、その際、好ましくは上記成分の少なくとも1種を溶解した形で又は懸濁した形で存在させることを含む、上記式Iで表わされるフマル酸塩の製造方法。
【請求項4】
次の工程:
a) 3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールを溶媒中に溶解させるか又は懸濁させるか、又は3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールを固体として存在させ、
b) 上記溶液、懸濁液又は固体をフマル酸、溶媒中のフマル酸の懸濁液又は溶液と混合し、場合により冷却して、低温で維持し、ついで
c) 式Iで表わされる化合物を単離する工程を含み、
その際、好ましくは、この処理工程で、温度は90℃を超えず、そして工程a)とb)を交換してもよい、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩を製造するための、請求項3記載の方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の方法にしたがって得られる、フマル酸と3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールとの塩。
【請求項6】
d値(オングストローム)で表わされる、次の特有の特徴的な曲線:9,3(vs), 7,0(m), 6.7(s), 5,37(s), 5,21(s), 4,64(s), 4,52(s), 4,28(vs), 4,23(s), 4,19(s), 3,94(m) 3,78(m), 3,52(m), 3,49(m), 3,33(s), 3,30(m), 3,06(s), 2,83(m)を有する、2゜〜35゜の2θの範囲内での特徴的なX線回折パターンを有する、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形B。
【請求項7】
図1に図示されたようなX線回折パターンを有する、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形B。
【請求項8】
波数(cm-1)で表わされる、次のバンド:171(m)を有するラマンスペクトルにより特徴付けられる、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形B。
【請求項9】
図2に図示されたようなラマンスペクトルを有する、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形B。
【請求項10】
d値(オングストローム)で表わされる、次の特有の特徴的な曲線:9,3(vs), 7,0(m), 6,7(s), 5,36(vs), 5,20(m) 4,64(vs), 4,53(s), 4,26(vs), 4,18(s), 3,95(m), 3,78(m), 3,57(m), 3,50(s), 3,46(m), 3,33(s), 3,05(m), 2,83(m)を有する、2゜〜35゜の2θの範囲内での特徴的なX線回折パターンを有する、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形A。
【請求項11】
図3に図示されたようなX線回折パターンを有する、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形A。
【請求項12】
それぞれ波数(cm-1)で表わされる、次の一方又は両方のバンド:1644(w)及び1705(sh,m)を有するラマンスペクトルにより特徴付けられる、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形A。
【請求項13】
図4に図示されたようなラマンスペクトルを有する、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形A。
【請求項14】
次の工程
a) 3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールを溶媒中に溶解させるか又は懸濁させるか、又は3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールを固体として存在させ 、
b) 上記溶液、懸濁液又は固体をフマル酸、溶媒中のフマル酸の懸濁液又は溶液と混合し、場合により冷却して、結晶形Bが完全に形成されるまで低温で維持し、ついで
c) 式Iで表わされる化合物を単離する工程を含み、
その際、この処理工程で、温度は90℃を超ない、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形Bの製造方法。
【請求項15】
a) 粉末状の、固体の、非晶質の形態の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩を、水蒸気を含む不活性ガスで、結晶形Bが完全に形成されるまで処理するか、又は
b) 非晶質の形態の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩の溶媒中の懸濁液を担体として製造し、そして結晶形Bが完全に形成されるまで撹拌するか、又は
c) 3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩を溶媒中に溶解させ、引き続き沈殿させ、そして場合により結晶形Bが完全に形成されるまで撹拌し、
この場合、処理工程a)、b)及びc)において、温度は高くても90℃である、3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩の結晶形Bの製造方法。
【請求項16】
請求項14又は15記載の方法にしたがって得られる、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形B。
【請求項17】
3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩が配置(1R,2R)で存在する、請求項6〜9又は請求項16のいずれか1つに記載の結晶形B。
【請求項18】
a) 粉末状、固形の、非晶質形態の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩を、結晶形Aが完全に形成されるまで、水蒸気を含む不活性ガスで処理するか、又は
b) 非晶質の形態の3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩の溶媒中の懸濁液を担体として製造し、結晶形Aが完全に形成されるまで撹拌するか、又は
c) 3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩を溶媒中に溶解させ、引き続き沈殿させ、場合により結晶形Aが完全に形成されるまで撹拌し、
この場合、処理工程a)、b)及びc)において、温度は90℃より高く、そして上記結晶形は冷却後に単離される、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形Aの製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法にしたがって得られる、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の結晶形A。
【請求項20】
3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノール−フマル酸塩が配置(1R,2R)で存在する、請求項10〜13又は請求項19のいずれか1つに記載の結晶形A。
【請求項21】
有効量の、請求項1記載の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩及び薬学的担体又は薬学的希釈剤を含有する、医薬組成物。
【請求項22】
式Iで表わされる化合物が結晶形A、結晶形B、又は形態AとBの混合物として存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
式Iで表わされる化合物が結晶形Bとして含まれている、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
医薬組成物、特に疼痛状態の治療のための医薬組成物の製造への、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の使用。
【請求項25】
医薬中の有効物質としての、好ましくは鎮痛剤中の有効物質としての、式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩の使用。
【請求項26】
疼痛を患う患者に、有効量の式Iで表わされる3−[2−(ジメチルアミノ)メチル−(シクロヘキシ−1−イル)]−フェノールフマル酸塩を投与する、疼痛状態の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−502758(P2009−502758A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521895(P2008−521895)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007161
【国際公開番号】WO2007/009793
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(390035404)グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (127)
【Fターム(参考)】