説明

フライス削りのための装置

【課題】本発明は、フライス削りのための装置、及びこの装置を設定し、製造する方法を提供する。
【解決手段】一組の切れ刃又は座は、一組内で、第一の切れ刃(118,120)に交わる半径と、回転軸のまわりの回転方向(R)で第一の切れ刃に最も近く位置する別の切れ刃(118,120)に交わる半径との間の第一の角度(θ1,θ2)が、第一の切れ刃に交わる半径と、回転方向(R)と反対の方向で第一の切れ刃に最も近く位置する別の切れ刃に交わる半径との間の第二の角度(θ1,θ2)と異なり、第一及び第二の角度が回転軸と直交する径方向平面にあるように配置され、第一及び第二の角度内に、それぞれ、同一組の他の切れ刃が存在しない装置であって、一組内で、少なくとも一つの切れ刃の回転軸への径方向距離(d1, d2)が少なくとも一つの他の切れ刃の回転軸への径方向距離(d1, d2)と異なり、回転軸への径方向距離が径方向平面にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライス削りのための装置、及びこの装置を設定し、製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の装置がフライス削りする材料は、例えばチタン、鋼、アルミニウム、鋳物、その他の材料であり、装置は、回転可能な主軸又はホルダーに結合でき、回転軸を規定するフライス削りカッター本体を含み、該フライス削りカッター本体は少なくとも一組の接線方向に間隔をあけた複数の切れ刃又は少なくとも一つの切れ刃を有するフライス削りインサートのための接線方向に間隔をあけた複数の座を備え、該一組の切れ刃は被削材のある共通の表面を加工するように配置され、該一組の切れ刃又は座は、第一の切れ刃に交わる半径と、回転軸のまわりの回転方向で第一の切れ刃に最も近く位置している別の切れ刃に交わる半径との間の第一の角度が、第一の切れ刃に交わる半径と、前記回転方向と逆の方向で第一の切れ刃に最も近く位置している別の切れ刃に交わる半径との間の第二の角度と異なり、該第一と第二の角は該回転軸と直交する径方向平面にあり、該第一と第二の角度のそれぞれの内部には同一組の他の切れ刃は存在しないように配置されている。本発明はさらに、このようなタイプの装置を設定及び/又は製造する方法に関する。
【0003】
チタン、鋼、アルミニウム、又は鋳物などの材料のフライス削り、特に正面フライス削り又はエンドミル削りにおける安定性を高めるために、同じ径方向平面における、すなわちフライス削りカッター本体の回転軸が垂直である場合は同じ水平面におけるフライス削りインサートを、二つの隣接するフライス削りインサートの間の角度が異なる又は不規則になるように、すなわちフライス削りカッター本体の周のまわりで二つの隣接するフライス削りインサートの間の回転方向又は周縁方向の距離が異なる又は不規則になるように配置するやり方が従来から知られている。このようなフライス削りインサートの角度変位又はフライス削りインサートの不均一ピッチは不均等ピッチと呼ばれる。不均等ピッチは、複数のフライス削りインサートの配置間隔を変化させることができ、自己振動の発生と不安定になるリスクを減らすことができ、可能な限り限界的な切削条件(限界切削係合)で加工できる、配置が得られる。
【0004】
特許文献1は、三つのフライス削りインサートが回転軸から少し異なる径方向距離に位置し、それらのフライス削りインサートが被削材の異なる深さにある異なる角度を有する三つの異なる表面を加工するようになっているプランジング加工の方法を開示している。三つのフライス削りインサートを異なるピッチで配置できることが示されている。
【0005】
特許文献2は、三つのフライス削りインサートの径方向の一組のうちのあるフライス削りインサートが、フライス削りカッター本体の回転軸から同じ径方向の一組の他の二つのフライス削りインサートに対してより大きな径方向距離に位置しているフライス削り工具を開示している。一組、径方向の一組、又は径方向セットとは、それらが本質的に同じ径方向平面にあることを意味し、径方向平面とはそのフライス削り工具の回転軸に直交する平面である。
【0006】
特許文献3は、不均等ピッチのフライス削り工具を開示している。そこでは、あるフライス削りインサートが同一組の他の二つのフライス削りインサートに対して角度で変位しており、それによってフライス削りインサートの間に異なる角度が定められる。
【0007】
特許文献4は、ある溝における第一のフライス削りインサートが同じ溝における他のフライス削りインサートと異なる長さを有するフライス削り工具を開示している。
【0008】
特許文献5と特許文献6は、エンドミル削りカッター又はシャンクエンドミルであって、そのエンドミル削りカッターの周縁の切れ刃がそれぞれ異なる軸方向逃げ角及び径方向逃げ角を有するものを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】アメリカ合衆国特許番号第5,876,155号
【特許文献2】欧州特許第1276580号明細書
【特許文献3】アメリカ合衆国特許番号第7,399,146号
【特許文献4】国際公開第2005/058534号パンフレット
【特許文献5】アメリカ合衆国公開特許出願第2004/0170480 A1号
【特許文献6】国際公開第2007/077535号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、チタン、鋼、アルミニウム、鋳物、その他の材料の、改良されたより効率的なフライス削りを提供することである。別の目的は、チタン、鋼、アルミニウム、鋳物、その他の材料の、改良されたより効率的な正面フライス削り又はエンドミル削りを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記の目的は、特許請求の範囲の請求項1に係わる装置によって達成される。すなわち、一組内で、少なくとも一つの切れ刃の回転軸までの径方向距離が少なくとも一つの他の切れ刃の回転軸までの径方向距離と異なる、ここで回転軸までの径方向距離は径方向平面にある。
【0012】
ある特定の切れ刃に交わる半径と、その特定の切れ刃に最も近くに位置する別の切れ刃に交わる半径との間に形成される角度は、回転軸と直交する径方向平面にあり、その角度内には同じ一組の別の切れ刃は存在せず、この角度は、以下において角度θと呼ばれる。ある特定の切れ刃と、フライス削りカッター本体の動作回転方向でその特定の切れ刃に最も近く位置する別の切れ刃の間に形成される角度θは、以下ではその特定の切れ刃に“属する”かのように、“その切れ刃の角度θ”と呼ばれる。ある切れ刃の角度θは、その切れ刃が回転方向の先頭にあって被削材を切削したとき、被削材によって切り出される“切片”又は切りくずがどれほど大きくなるかに影響する。角度θが大きいほど、切片は大きくなる。
【0013】
切れ刃又は座の一組とは、一般にフライス削りカッター本体の回転軸に対して同じ軸方向レベルにある切れ刃又は座、又は、そのフライス削りカッター本体の回転軸が垂直に延びている場合、一般に同じ垂直レベルにある切れ刃又は座を意味する。複数の切れ刃又は座とは、二つ以上の切れ刃又は座を意味する。接線方向に間隔をあけた切れ刃又は座とは、周縁方向に間隔をあけた切れ刃又は座又は回転軸のまわりに間隔をあけた切れ刃又は座を指す。
【0014】
1刃送りとは、一つの刃/切れ刃/インサートあたりの送りを示す用語又は寸法である。例えば、フライス削り工具が一回転、すなわち360度、回る間に被削材がフライス削り工具に対して1 mm送られ、そのフライス削り工具が同じ径方向平面に10個の切れ刃を有する場合、1刃送りは0.10 mm/刃となる。通常の1刃送りは0.15 mm/刃である。1刃送りは、すなわち、fz=vf/(n×z)によっても定義することができる、ここでfzは1刃送り、vfは送り速度、nは回転数、zはフライス削りカッターのフライス削りインサートの数である。
【0015】
本発明の発明者は、上述した従来の技術における不均等ピッチには問題があると認識していた。切れ刃とフライス削りインサートがフライス削りカッター本体の回転軸のまわりに不均一に分布しているため、フライス削り作業の間にそれらに異なる負荷がかかり、その結果、より大きな負荷がかかるフライス削りインサートと切れ刃の使用寿命が減少し、それはさらに、フライス削りカッターとフライス削りシステム全体の使用寿命を限定し、フライス削りインサート又はフライス削りカッター本体を交換しなければならず、フライス削り作業の中断が生ずるために、生産性が低下する。
【0016】
本発明の発明者は、さらに、不均等ピッチを有するフライス削りカッター本体において、フライス削りカッター本体の回転軸への一つ以上の切れ刃の径方向距離の設定が、切れ刃が回転軸への異なる径方向距離を有するように行われるならば、もっと均一な切りくず厚さが得られること、それはフライス削りインサートと切れ刃への負荷がもっと均一になり、したがってフライス削り工具の負荷が減少し摩耗が減少することを意味すると認識していた。本発明によって、従来技術における対応するシステムに比べて、フライス削りインサート又は工具はそれほど頻繁に交換する必要がなくなり、フライス削りインサートとフライス削りシステムは中断されることなく長時間運転でき、それによって生産性は大きく向上する。
【0017】
さらに詳しく言うと、フライス削りカッター本体における複数の切れ刃の一組において、第一の切れ刃があり、フライス削りカッター本体の回転と反対の方向で第一の切れ刃に最も近く位置する別の第二の切れ刃があり、フライス削りカッター本体の回転の方向で第一の切れ刃に最も近く位置する別の第三の切れ刃がある。第一の切れ刃と第二の切れ刃は異なるピッチで配置されている、言い換えると、第一の切れ刃の第一の角度θ1は、第二の切れ刃の第二の角度θ2と異なる。
【0018】
上で述べたように、第一の切れ刃の第一の角度θ1は、第一の切れ刃に交わる半径と第三の切れ刃に交わる半径の間の角度と定義できる。第二の切れ刃の第二の角度θ2は、第二の切れ刃に交わる半径と第一の切れ刃に交わる半径の間の角度と定義できる。
【0019】
本発明によると、第一の切れ刃と第二の切れ刃は、異なるピッチを有するという他に、言い換えると異なる角度θを有するという他に、フライス削りカッター本体の回転軸への径方向距離も異なる。もっと詳しく言うと、第一の切れ刃の回転軸への径方向距離と第二の切れ刃の回転軸への径方向距離は、それぞれの角度θ1, θ2に関連して設定される。第一の切れ刃の第一の角度θ1は第二の切れ刃の第二の角度(θ2)より小さい。ここで第二の切れ刃はフライス削りカッター本体の回転方向(R)と反対方向で第一の切れ刃に最も近く位置しており、角度θは上で説明したように定義される。第一の切れ刃の回転軸への径方向距離と第二の切れ刃の回転軸への径方向距離は、このような特定ピッチ(角度θ)に合わせて、第一の切れ刃の径方向距離が第二の切れ刃の径方向距離よりも長くなるように設定される。これは、第二の切れ刃の角度θの方が大きいために第二の切れ刃が切り出す切りくずが第一の切れ刃が切り出す切りくずより大きな切りくず厚さを有する傾向に、第二の切れ刃の回転軸への径方向距離を第一の切れ刃よりも短く設定することによって対抗するという点で有利になる。さらに、二つのフライス削りインサートへのより均等な負荷が達成される。言い換えると、従来知られている工具に見られる切りくず厚さの変動という欠点が、本発明による切れ刃の径方向位置決めによって全く解消される又は少なくとも本質的に減少する。
【0020】
フライス削りカッター本体の切れ刃の不均等ピッチ、すなわち同一の一組内の異なる角度θを、その一組内の切れ刃の回転軸への径方向距離の異なる設定と本発明に従って組み合わせることにより、不均等ピッチから上述のようなプラスの効果が得られる、すなわち、自己振動の発生と不安定になるリスクが減少し、可能な限り限界的な切削条件(限界切削係合)で加工できるインサートの配置が得られ、同時にフライス削りインサートと切れ刃への負荷を減らし、摩耗を減らすことが達成され、生産性の向上が得られる。限界切削係合は、通常、限界軸方向切削深さと限界径方向切削深さの組み合わせを包含するが、たいていの場合一方の限界切削深さが支配的であり、限界係合を主に定める。
【0021】
フライス削りインサート又は切れ刃をこのように径方向で設定することによって、角度θの差をさらに大きくしてもフライス削りインサートに不均等な負荷がかからないようにすることができ、フライス削りカッター本体を異なるタイプのフライス削り作業及び異なる材料のフライス削りに適合させて設計するさいの高い柔軟性が得れれる。これにより、チタン、鋼、アルミニウム、鋳物、その他の材料のフライス削りが改良され、より効率的になる。
【0022】
それぞれの切れ刃の回転軸への径方向設定がどのようにして有利に行われるかを示す例が、発明の詳細な記述において詳しく説明される。装置は、切れ刃又は座を有する一組又は複数組、すなわち二つ以上の組、を含むことができる。
【0023】
本発明に係わる装置のある有利な実施形態によると、同一組内の切れ刃は径方向平面と交わる。
【0024】
本発明に係わる装置の別の有利な実施形態によると、それぞれの切れ刃は逃げ面に隣接して設けられ、同一組の中で、それぞれの逃げ面が回転軸とある角度を成し、それは同一組の他の切れ刃の逃げ面の対応する角度と本質的に同じ大きさである。
【0025】
本発明に係わる装置のさらに別の有利な実施形態によると、同一組の中のフライス削りインサートは本質的に等しい大きさの軸方向傾斜角度を有し、有利な形では同一組の中のフライス削りインサートは本質的に等しい大きさの径方向傾斜角度を有する。
【0026】
本発明に係わる装置の別の有利な実施形態によると、同一組の中のフライス削りインサートは本質的に同様な幾何的基本形状を有する。
【0027】
本発明に係わる装置の別の有利な実施形態によると、同一組の中のフライス削りインサートは本質的に同一である。
【0028】
本発明に係わる装置の別の有利な実施形態によると、一組内で、第一の切れ刃の回転軸への径方向距離は、その一組の他の切れ刃のうち前記回転方向と反対の方向で第一の切れ刃に最も近く位置するものの回転軸への径方向距離と異なる。この実施形態によって、自己振動は減少し、安定性は改善され、限界切削係合をさらに大きくすることができ、負荷はさらに減少し、それによって材料のフライス削りがさらに効率的になる。
【0029】
本発明に係わる装置のさらに別の有利な実施形態によると、第一の角度は第二の角度と少なくとも1パーセント、さらに有利には少なくとも2パーセント、さらにもっと有利には少なくとも3パーセント異なる。
【0030】
本発明に係わる装置のもう一つの有利な実施形態によると、フライス削りカッター本体は少なくとも一組の接線方向に間隔をあけた複数の切れ刃を備える。
【0031】
少なくとも一組の接線方向に間隔をあけた複数の切れ刃を備える本発明に係わる装置の別の有利な実施形態によると、切れ刃はフライス削りカッター本体と一体になっている。一体になった切れ刃を有するフライス削りカッター本体に不均等ピッチと切れ刃の径方向設定の新規な組み合わせを適用することによって、このタイプの効率的なフライス削りカッター本体が得られ、それによって上述した対応する理由により生産性が改善される。
【0032】
切れ刃がフライス削りカッター本体と一体になった本発明に係わる装置のさらに別の有利な実施形態によると、フライス削りカッター本体は第一の端部及びそれと反対側の第二の端部を有し、回転軸は二つの端部の間に延び、フライス削りカッター本体は第一の端部から第二の端部へ延びる複数の溝を含み、それぞれの切れ刃は二つの溝の間に配置されている。
【0033】
本発明に係わる装置のもう一つの有利な実施形態によると、フライス削りカッター本体には、少なくとも一組の少なくとも一つの切れ刃を有するフライス削りインサートのための接線方向に間隔をあけた複数の座が設けられる。有利な形として、座は、少なくとも一つの切れ刃を有し着脱可能に装着されるフライス削りインサートを装着するように配置される。着脱可能に装着されるフライス削りインサートを有するフライス削りカッター本体に不均等ピッチと切れ刃の径方向設定の新規な組み合わせを適用することによって、特に効率的なこのタイプのフライス削りカッター本体が得られ、それによって上述した対応する理由により生産性が改善される。
【0034】
有利な形としては、フライス削りインサートはそれぞれ複数の切れ刃を備え、したがって対応する複数の異なる作用位置に刃先交換可能である。例えば、フライス削りインサートはそれぞれ二つの切れ刃を備え、したがって対応する二つの異なる作用位置に、又はそれぞれ四つの切れ刃を備え、したがって対応する四つの異なる作用位置に刃先交換可能であってもよいが、フライス削りインサートはそれぞれただ一つの切れ刃を備えていてもよいし、別の個数の切れ刃を備えていてもよい。それぞれの作用位置において、フライス削りインサートは本質的に軸方向に延びる主切れ刃と、主切れ刃のただ一つの端から本質的に径方向に延びる副切れ刃を有することができる。フライス削りでは、主切れ刃と副切れ刃の両方が被削材と係合することができるが、フライス削りインサートの一次的な作用切れ刃としてフライス削りの主要部分をになうのは主切れ刃である。本出願において“切れ刃”という場合、それは主切れ刃を指す。切れ刃とフライス削りカッター本体の回転軸との間の径方向距離は、主切れ刃から回転軸までの径方向距離を指す。
【0035】
座は、フライス削りインサートを、有利な形としては着脱可能なフライス削りインサートを、装着するように配置される。座は通常、フライス削りインサートの幾何形状に対応するポケットの形をしている。座にフライス削りインサートを装着するために、装着部材が用いられる。従来技術ではいろいろな装着部材が用いられている、例えば通常の固定ねじでフライス削りインサートの中心孔に挿入され座のねじ溝つき孔に受け入れられて係合するようになっているもの、などである。装着部材の別の例としては、座にフライス削りインサートを固定するクランプがある。
【0036】
フライス削りカッター本体が少なくとも一組の接線方向に間隔をあけた複数の座を備えている本発明に係わる装置の別の有利な実施形態によると、それぞれの座は肩面を有し、それにフライス削りインサートを圧しつけてフライス削りカッター本体の回転軸に対するフライス削りインサートの径方向位置を固定することができ、一組内で少なくとも一つの肩面の回転軸への径方向距離が少なくとも一つの他の肩面の回転軸への径方向距離と異なる。これは、着脱可能に装着されるフライス削りインサートを有するフライス削りカッター本体において、それぞれの切れ刃を径方向に設定して不均等ピッチと切れ刃の径方向設定の新規な組み合わせを達成するのに効率的なやり方である。最初にフライス削りカッター本体がある仕様に従って形成され、オペレーターはフライス削りインサートを何の問題もなく交換できる。
【0037】
フライス削りカッター本体が少なくとも一組の接線方向に間隔をあけた複数の座を備えている本発明に係わる装置のさらに別の有利な実施形態によると、それぞれのフライス削りインサートは、そのフライス削りインサートの切れ刃が結合する逃げ面及び逃げ面の反対側の第二の表面を有し、一組内で、少なくとも一つのフライス削りインサートの逃げ面と第二の表面の間の距離が、少なくとも一つの他のフライス削りインサートの逃げ面と第二の表面の間の距離と異なっている。これは、それぞれの切れ刃を径方向に設定して、着脱可能に装着されるフライス削りインサートを有するフライス削りカッター本体において不均等ピッチと切れ刃の径方向設定の新規な組み合わせを達成するための別の、そして多くの場合有利なやり方である。必要な場合にオペレーターがフライス削りインサートを交換するのを助けるために、フライス削りインサートと座にいろいろな仕方で表示を付すことができる。
【0038】
本発明に係わる装置のさらに別の有利な実施形態によると、フライス削りインサートはそれぞれ前記逃げ面と前記第二の表面の間の切りくず受け面及び切りくず受け面の反対側の下面を有し、一組内で、少なくとも一つの切削用インサートの切りくず受け面と下面の間の距離が少なくとも一つの他の切削用インサートの対応する距離と異なる。このようにして、切れ刃の径方向の設定並びに不均等ピッチに関して柔軟な設定が得られ、切れ刃の径方向の設定と不均等ピッチを、例えば厚いフライス削りインサートを薄いフライス削りインサートに代える、又はその逆、などによって変えることができる。
【0039】
本発明に係わる装置の別の有利な実施形態によると、座はそれぞれ底面を有し、それにフライス削りインサートの下面を圧しつけることができ、底面を接線方向にセットして角度θと不均等ピッチを設定し、それによって切れ刃の径方向位置を変えることができる。本発明に係わる装置のさらに別の有利な実施形態によると、それぞれの座は、座の底面に配置される中間要素を受け入れるように配置され、フライス削りインサートの下面をそれに圧しつけた後に中間要素に配置することができる。この中間要素の厚さを設定する又は中間要素を全く除去することによって、角度θと不均等ピッチを設定して調整することができ、それによって切れ刃の径方向位置も変えられる。
【0040】
フライス削りカッター本体が、少なくとも一つの切れ刃を有するフライス削りインサートの装着のために少なくとも一組の接線方向に間隔をあけた複数の座を備えている本発明に係わる装置のもう一つの有利な実施形態によると、それぞれの座はフライス削りインサートの径方向位置をフライス削りカッター本体の回転軸に対して設定するための設定手段と、フライス削りインサートの周縁位置をフライス削りカッター本体に対して設定するための設定手段を有する。
【0041】
本発明に係わる装置のある有利な実施形態によると、一組の切れ刃は、同一組の他の切れ刃によって切り出される切りくずの切りくず厚さと本質的に同じ切りくず厚さを有する切りくずを被削材から切り出すように配置される。一組の切れ刃は、それぞれの切れ刃がその角度θに関連して正しい回転軸への径方向距離に配置され、好適には選択された1刃送りも考慮に入れて配置される。選択された1刃送りとは、装置が最適化される1刃送りであるが、装置は他の1刃送りで用いて機能が改善されることもある。
【0042】
本発明に係わる装置のもう一つの有利な実施形態によると、フライス削りカッター本体は、材料のエンドミル削り及び/又は正面フライス削りに合わせて配置される。本発明の発明者は、不均等ピッチと切れ刃の径方向設定の新規の組み合わせが材料のエンドミル削り及び/又は正面フライス削りにおいて特に効率的であり、材料のフライス削りがさらに効率的になると認識していた。
【0043】
上述した実施形態において、フライス削りカッター本体又は工具本体は、フライス削りインサートの材料よりも柔らかい材料から製造されることが有利である。例えば、フライス削りインサートは超硬合金から製造され、フライス削りカッター本体は鋼から製造される。切れ刃がフライス削りカッター本体と一体化されている実施形態では、フライス削りカッター本体並びに切れ刃を超硬合金から製造することができる。
【0044】
本発明の上述した目的は、請求項1〜11のいずれか1項によって定められる、又は上述した実施形態のいずれかによる材料のフライス削りのための装置を設定及び/又は製造する方法を提供することによっても達成され、この方法は次のステップによって特徴づけられる。すなわち、同一組における切れ刃の数を決定するステップと、一組内で、決定された数の切れ刃のうちの一つの切れ刃と交わる各半径の間で形成されるそれぞれの角度を設定するステップであって、それらの角度はフライス削りカッター本体の回転軸と直交する同じ径方向平面にあり、フライス削り作業の1刃送りを決定するステップと、一組内で、決定された1刃送りと径方向平面における切れ刃の間の設定された角度に基づいて少なくとも一つの切れ刃の回転軸への径方向距離を設定するステップであって、回転軸への径方向距離は径方向平面にあるステップと、により特徴づけられる。設定された又は製造された装置は、決定された1刃送りで最適化されるが、装置を他の1刃送りで使用して機能が改善されることもある。
【0045】
本発明は、また、フライス工具が切れ刃を備えた着脱可能なインサートを含み、そのインサートがフライス削りカッター本体に結合されている分割フライス工具、すなわちフライス削りカッター本体がフライス削りインサートを含む着脱可能なフライス削りカッター本体部分を含み、それがフライス削りカッター本体に結合できる、又はフライス削りカッター本体が別のユニット又はホルダーに結合され、それがさらに主軸に結合される分割フライス工具、にも適用できる。
【0046】
本発明に係わる装置及び方法は、チタン、鋼、アルミニウム、及び鋳物などの金属材料で特に有利であり効率的である。
【0047】
本発明に係わる装置及び方法のその他の有利な実施形態、及び本発明のその他の利点は、実施形態についての詳細な説明で見られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係わる装置の第一の実施形態を下から斜めに見て示す概略斜視図である。
【図2A】図1の装置の概略底面図である。
【図2B】本発明に係わる装置の第二の実施形態を示す概略底面図である。
【図3】本発明に係わる装置の第三の実施形態を下から斜めに見て示す概略斜視図であり、フライス削りインサートの装着を図示している。
【図4】装着部材を有する着脱可能なフライス削りインサートを示す概略斜視図である。
【図5】図3の装置の概略底面図である。
【図6】本発明に係わる装置の第四の実施形態を下から斜めに見て示す概略斜視図である。
【図7】図6の装置の概略底面図である。
【図8】本発明に係わる方法の様態を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明に係わる装置の第一の実施形態を示し、それは金属の切りくず除去加工のためのフライス削り工具という形であって、回転可能な工具ホルダーに取り付けるための背部104と前方主部106を有するフライス削りカッター本体102を含み、前方主部の包絡面108は、図示例では円筒状の基本形を有するが、別の回転対称な基本形、例えば円錐状の基本形であってもよい。フライス削りカッター本体102は、フライス削りカッター本体102の長手方向中心軸でもある回転軸x-xを規定し、一組の着脱可能に装着されるフライス削りインサート114,116のための接線方向に間隔をあけた二つの座110,112,又はポケットを備えている、すなわち、この一組の座110,112は、フライス削りカッター本体102の周縁方向の周り、又は回転方向に間隔をあけている。フライス削りインサート114,116はそれぞれ少なくとも一つのフライス削り作業で作用位置にある切れ刃118,120を備え、さらにこの実施形態では第二の切れ刃を備えており、フライス削りインサート114,116はそれぞれ四つの切れ刃を備え、したがって四つの異なる作用位置に刃先交換可能である。しかし、フライス削りインサートはただ一つの切れ刃を備えていても、他の個数の切れ刃を備えていてもよい。この実施形態では、すべてのフライス削りインサート114,116は同じ寸法を有する。一組の中の座110,112は一般にフライス削りカッター本体102の回転軸x-xに対して同じ軸方向レベルにあり、一組の中の切れ刃118,120は被削材のある共通表面を、例えばエンドミル削り又は正面フライス削りで加工するように配置される。この実施形態並びに図2B及び図3〜5の実施形態では、フライス削りインサート114,116は、作用位置に主切れ刃118,120を有し、それがフライス削りカッター本体102の背部104とフライス削りカッター本体102の前部106の端部の間に延びており、別の言い方では、本質的に軸方向に延びており、さらに主切れ刃118,120のただ一つの端から本質的に径方向に延びる副切れ刃を有する。副切れ刃の長さは、主切れ刃118,120よりもかなり短い。フライス削りインサート114,116の一次的に作用する切れ刃は主切れ刃118,120であり、本出願で“切れ刃”という用語が用いられる場合、それは主切れ刃を意味する。以下で論じられる切れ刃とフライス削りカッター本体の回転軸の間の径方向距離とは、主切れ刃から回転軸までの径方向距離を指す。
【0050】
図1の装置の概略底面図を示す図2Aを参照して説明する。ここでRはフライス削りカッター本体102の動作回転の方向を示す。フライス削りインサート114,116はそれぞれ、フライス削りインサート114,116の切れ刃118,120が結合している逃げ面122,124と、逃げ面122,124の反対側の第二の表面126,128を有する。また、フライス削りインサート114,116はそれぞれ、前記逃げ面122,124と前記第二の表面126,128の間の切りくず受け面130,132と、切りくず受け面130,132の反対側の下面134,136を有する。座110,112はそれぞれ底面138,140を有し、それにフライス削りインサート114,116の下面134,136を圧しつけることができる。座110,112はそれぞれ中間要素142,144を備え、座110,112の底面138,140をそれに配置できる。座110,112は回転軸x-xのまわりで互いに対して変位されて、回転軸x-xに直交する同じ径方向平面で第一の切れ刃118で175°という角度θ、θ1、が得られ、第二の切れ刃120で185°という角度θ、θ2、が得られるようになる、ここでθ1はθ2と異なる。座110,112は、同一組内のフライス削りインサート114,116の切れ刃118,120が、切れ刃118,120の角度θ、θ1、θ2、がある径方向平面と交わるように配置される。フライス削りインサート114,116はそれぞれ本質的に軸方向に延びる溝146,148に隣接し、溝がフライス削りインサート114,116の上流側の区域で切りくず排出溝の役目をする。
【0051】
あるいはまた、回転軸x-xのまわりの座110,112の変位は、フライス削りインサートの接線方向での異なる厚さ又は中間要素の異なる厚さによって定められることもある。上述の実施形態では、例えば第一の切れ刃118の中間要素142が接線方向で第二の切れ刃120の中間要素144よりも厚いことがある。
【0052】
座110,112はそれぞれ肩面150,152を有し、それに第二の表面126,128を有するフライス削りインサート114,116が圧しつけられてフライス削りカッター本体の回転軸x-xに対するフライス削りインサート114,116の径方向位置を固定し、それによってまた回転軸x-xに対する切れ刃118,120の径方向位置を固定することができる。第一の座110の肩面150と回転軸x-xの間の径方向距離はd11であり、第二の座112の肩面152と回転軸x-xの間の径方向距離はd22である。本発明によって均等な切りくず厚さを達成するために、径方向距離d22は径方向距離d11より小さく、径方向距離d11、d22のこの差により、第二の切れ刃120の回転軸x-xへの径方向距離d2は第一の切れ刃118の回転軸x-xへの径方向距離d1より小さくなる。回転軸x-xへの上記径方向距離d11、d22、d1、d2は、切れ刃118,120の角度θと同じ径方向平面にある。
【0053】
第一の切れ刃118が回転軸x-xまでの公称径方向距離d1にあるとき、d2はd1を選択された1刃送りの約2%だけ減らすことによって得られる。通常の1刃送り0.30 mmで公称径方向距離d1が30 mmでは、d2は29.993 mmに設定できる。選択された1刃送りとは、フライス削りカッター本体/装置が最適化される1刃送りを指すが、フライス削りカッター本体/装置は他の1刃送りで用いても受容できるフライス削りを達成できる。
【0054】
切れ刃118,120の回転軸x-xへの径方向距離d1、d2が図2Aの角度θと組み合わせて等しい大きさであった場合、第二の切れ刃120は第一の切れ刃118よりも切りくず厚さが顕著に大きい切りくずを切り出したであろうし、その結果、第二のフライス削りインサート116にはより大きな負荷がかかったであろう、すなわちフライス削りインサート114,116に不均等な負荷がかかる。第二の切れ刃120が径方向内側へ回転軸x-xの方へずれることによって、あるいはまた、第一の切れ刃118が回転軸x-xから径方向外側へずれることにより、第二の切れ刃120は第一の切れ刃118が切り出す切りくずの切りくず厚さに対応する切りくず厚さを有する切りくずを切り出し、二つのフライス削りインサート114,116への均等な負荷が達成される。言い換えると、従来知られている工具に見られるような切りくず厚さの変動は、本発明による切れ刃の径方向位置決めによって完全に除去される又は少なくとも本質的に減少する。
【0055】
図2Bには、本発明に係わる装置の第二の実施形態が、金属切りくず除去加工用のフライス削り工具という形で底面図で示されている。これは図1のフライス削り工具に全体として対応するものであるが、それぞれの座210,212から中間要素が除かれている。Rはフライス削りカッター本体202の動作回転の方向を表す。さらに、座210,212は別の変位を有し、ここでは回転軸x-xのまわりで互いに対して変位して、第一の切れ刃218は170°という角度θ、θ1、を得ており、第二の切れ刃220は190°という角度θ、θ2、を得ている。ここでは、θ1はθ2より20°小さい。座210,212は、同一組内のフライス削りインサート214,216の切れ刃218,220が、切れ刃218,220の角度θ、θ1、θ2が位置する径方向平面と交わるように配置される。
【0056】
この第二の実施形態では、第一の座210の肩面250と回転軸x-xの間の径方向距離が、第二の座212の肩面252と回転軸x-xの間の径方向距離と等しい大きさであり、その代わりに、一組内で第一のフライス削りインサート214の逃げ面222と第二の表面226の間の距離が第二のフライス削りインサート216の逃げ面224と第二の表面228の間の距離より大きい、すなわち、第一のフライス削りインサート214は第二のフライス削りインサート216よりも径方向に長い延長を有する。フライス削りインサート214,216のこの差により、第一の切れ刃218から回転軸x-xへの径方向距離d1は、前記回転方向Rと反対方向で第一の切れ刃218に最も近く位置する第二の切れ刃220から回転軸x-xへの径方向距離d2より大きくなる。前記回転軸x-xへの径方向距離d1、d2は切れ刃218,220の角度θ、θ1、θ2と同一の径方向平面にある。θ1が170°でθ2が190°であり、第一の切れ刃218が回転軸x-xへの公称径方向距離d1にあるとき、d2は選択された1刃送りの約5.6%をd1から減じて得られる。通常の1刃送り0.15 mmで公称径方向距離d1が30 mmの場合、d2は29.9916 mmに設定できる。本発明による切れ刃の径方向位置決めによって、従来知られていた工具に見られる切りくず厚さの変動という欠点が、完全に解消される又は少なくとも本質的に減少する。
【0057】
それぞれの切れ刃の回転軸への径方向距離の上記パーセンテージは、単なる例であり、フライス削りカッター本体が使用される1刃送り、又は1刃送りの間隔によって他のパーセンテージが有利になることがある。図8を参照して、切れ刃の回転軸への径方向距離を有利な仕方で設定するやり方の例をさらに詳しく説明する。
【0058】
図1〜2Bでは、フライス削りインサート114,116,214,216は正の軸方向傾斜角度を有する、すなわち、フライス削りインサート114,116,214,216の切りくず受け面130,132の下方部分すなわち前方主部106,206の端部に最も近い部分、は、フライス削りインサート114,116,214,216の切りくず受け面130,132の上方部分すなわちフライス削りカッター本体102,202の動作回転の方向で背部104に最も近い部分、に先行している。別の言い方で、フライス削りインサートはフライス削りカッター本体の動作回転の方向に対して側面図で見て後方/上向きに傾いている。図1〜2Bで、フライス削りインサートはさらに、負の径方向傾斜角度を有する。ここで、軸方向傾斜角度は一組のすべてのフライス削りインサートで本質的に等しい大きさであり、ここで径方向傾斜角度は一組のすべてのフライス削りインサートで本質的に等しい大きさである。
【0059】
角度θと径方向距離は、それぞれの切れ刃118,120,218,220の上方コーナー146(図1を見よ)に交わる径方向平面にあり、上方コーナー146はフライス削りカッター本体102,202の背部104に近い位置にある。
【0060】
図3は、金属の切りくず除去加工用のフライス削り工具という形で本発明に係わる装置の第三の実施形態を示しており、それは、工作機械(図示せず)に取り付けるための背部304と包絡面308が図示の例では円筒状の基本形をもつ前方主部306を有するフライス削りカッター本体302を含む。フライス削りカッター本体302は、このフライス削りカッター本体302の長手方向の中心軸でもある回転軸y-yを規定し、着脱可能なフライス削りインサート318,320,322,324を装着するための接線方向に間隔をあけた一組の四つの座310,312,314,316を備え、四つのフライス削りインサート318,320,322,324は同じ幾何形状を有する。フライス削りインサート318,320,322,324はそれぞれフライス削り作業で作用位置にある少なくとも一つの切れ刃326,328,330,332及び第二の切れ刃を備え、ここで、フライス削りインサート318,320,322,324はそれぞれ四つの切れ刃を備え、したがって四つの異なる作用位置に刃先交換可能である。この第三の実施形態では、すべてのフライス削りインサート318,320,322,324は同じ寸法を有する。図3と4を参照すると、フライス削りインサート318,320,322,324はそれぞれ、そのフライス削りインサート324の切れ刃332が結合する逃げ面344と、逃げ面344の反対側の第二の表面346を有する。それぞれのフライス削りインサート324はまた、前記逃げ面344と前記第二の表面346の間に、切りくず受け面348と切りくず受け面348の反対側の下面350を有する。一組の切れ刃326,328,330,332は被削材の共通の表面を、例えばエンドミル削り又は正面フライス削りで加工するように配置される。座310,312,314,316はそれぞれ肩面352を有し、第二の表面346を有するフライス削りインサート324はそれに圧しつけられて、フライス削りカッター本体302の回転軸y-yに対するフライス削りインサート318の径方向位置を固定し、それによってフライス削りカッター本体302の回転軸y-yに対する切れ刃332の径方向位置も固定することができる。ここで、それぞれの座310,312,314,316は中間要素354,356,358,360を備え、フライス削りインサート318,320,322,324はそれぞれねじ溝つきねじ要素362によって座310,312,314,316に装着され、ねじ要素362はフライス削りインサート318の中央貫通凹み364に係合し、中間要素360の貫通凹み366を介して座310に配置されたねじ溝つき凹み368に係合する。
【0061】
図5を参照して説明すると、これは図3の装置の概略底面図を示し、Rはフライス削りカッター本体302の動作回転の方向を示す。座310,312,314,316は回転軸y-yのまわりで互いに対して変位されて、第一の切れ刃326は85°という角度θ、θ1、を得ており、第二の切れ刃328は88°という角度θ、θ2、を得ており、第三の切れ刃330は95°という角度θ、θ3、を得ており、第四の切れ刃332は92°という角度θ、θ4、を、回転軸y-yと直交する同じ径方向平面で得ている。この実施形態で、回転軸y−yのまわりでの座310,312,314,316の変位はフライス削りカッター本体302それ自体の設計によって定められている。中間要素354,356,358,360は互いに対して接線方向に同じ厚さを有する。あるいはまた、回転軸のまわりでの角度変位は、フライス削りインサートに接線方向に異なる厚さを与えることによっても得られる。座310,312,314,316は、同一組内の切れ刃326,328,330,332が、切れ刃326,328,330,332の角度θ、θ1、θ2、θ3、θ4が載る径方向平面と交わるように配置される。フライス削りインサート318,320,322,324はそれぞれ本質的に軸方向に延びる溝368,370,372,374に隣接し、それがフライス削りインサート318,320,322,324の上流側の区域で切りくず排出溝の役目をする。
【0062】
第一の切れ刃326の回転軸y-yへの径方向距離はd1であり、第二の切れ刃328の回転軸y-yへの径方向距離はd2であり、第三の切れ刃330の回転軸y-yへの径方向距離はd3であり、第四の切れ刃332の回転軸y-yへの径方向距離はd4である。径方向距離d4は公称径方向距離に選ばれており、調整せずに残される。本発明によって均等な切りくず厚さを得るために、d1はd4を選択された1刃送りの約5.6%だけ増やして得ることができ、d2はd4を選択された1刃送りの約7.8%だけ増やして得ることができ、d3はd4を選択された1刃送りの約2.2%だけ増やして得ることができる。選択された1刃送りが0.15 mmで、公称径方向距離d4が30 mmである場合、d1は30.0084 mm、d2は30.0117 mm、d3は30.0033 mmに設定できる。本発明による切れ刃の径方向位置決めによって、従来知られていた工具で見られる切りくず厚さの変動という欠点が完全に解消される又は少なくとも本質的に減少する。
【0063】
この実施形態では、一組内の切れ刃326,328,330,332の回転軸y-yへの径方向距離d1、d2、d3、d4の上記の差が座310,312,314,316の肩面352を異なる径方向距離d11、d22、d33、d44で配置することによって得られる。どのような径方向距離d11、d22、d33、d44が上記の径方向距離d1、d2、d3、d4を与えるかということは、当業者にはフライス削りインサートの寸法に基づいて認識される。図8を参照して、回転軸への切れ刃の径方向距離を有利な仕方で設定するやり方の例が詳しく説明される。
【0064】
図3と5で、フライス削りインサート318,320,322,324は正の軸方向傾斜角度と負の径方向傾斜角度を有する。ここで、軸方向傾斜角度は一組のすべてのフライス削りインサートで本質的に等しい大きさであり、ここで、径方向傾斜角度は一組のすべてのフライス削りインサートで本質的に等しい大きさである。
【0065】
ここで、角度θと径方向距離は、それぞれの切れ刃326,328,330,332の上方コーナー376(図3を見よ)と交わる径方向平面にあり、ここで上方コーナー376はフライス削りカッター本体302の背部304の近くに位置している。
【0066】
図6は、金属の切りくず除去加工用のシャンクエンドミルの形をしている本発明に係わる装置の第四の実施形態を下から斜めに見た概略斜視図を示す。それは、回転可能な工具ホルダーに取り付けるための背部704と包絡面708が図示の例では円筒状の基本形をもつ前方主部706とを有するフライス削りカッター本体702を含む。フライス削りカッター本体702は、このフライス削りカッター本体702の長手方向の中心軸でもある回転軸z-zを規定し、フライス削りカッター本体702と一体になっていて被削材の共通の表面を加工するように配置された四つの周縁切れ刃710,712,714,716を備える。フライス削りカッター本体702は、四つの溝718,720を含み、その各々が主部706の端部から背部704の方へらせん形に沿って延び、それぞれの切れ刃710,712,714,716は二つの溝718,720の間に配置され、やはり主部706の端部から背部704の方へ延びている。図7を参照すると、Rはフライス削りカッター本体702の動作回転の方向を示しており、本発明にしたがって、切れ刃710,712,714,716は回転軸z-zのまわりで互いに対して変位され、第一の周縁切れ刃710が85°という角度θ、θ1、を得ており、第二の周縁切れ刃712は88°という角度θ、θ2を得ており、第三の周縁切れ刃714は95°という角度θ、θ3を得ており、第四の周縁切れ刃716は92°という角度θ、θ4を、回転軸z-zと直交する同じ径方向平面で得ており、切れ刃710,712,714,716は、切れ刃710,712,714,716の角度θが載っている径方向平面に交わる。
【0067】
第一の周縁切れ刃710の回転軸z-zへの径方向距離はd1であり、第二の周縁切れ刃712の回転軸z-zへの径方向距離はd2であり、第三の周縁切れ刃714の回転軸z-zへの径方向距離はd3であり、第四の周縁切れ刃716の回転軸z-zへの径方向距離はd4である。径方向距離d4は公称径方向距離に選ばれており、調整せずに残される。この実施形態の角度θは図3−5による第三の実施形態の角度θに対応しているので、径方向距離d1、d2、d3は0.15 mmという同じ1刃送り及び30 mmのd4という同じ公称径方向距離での対応する距離に設定でき、d1は30.0084 mm、d2は30.0117 mm、d3は30.0033 mmに設定できる。本発明による切れ刃の径方向位置決めによって、従来知られていた工具で見られる切りくず厚さの変動という欠点が完全に解消する又は少なくとも本質的に減少する。
【0068】
上述の実施形態で、フライス削りカッター本体はフライス削りインサートの材料よりも柔らかい材料から製造されることが有利である。フライス削りインサートは、例えば超硬合金から製造され、フライス削りカッター本体は鋼から製造される。上述の実施形態におけるフライス削りカッター本体102,202,302,702はそれぞれエンドミル削り及び/又は正面フライス削りのために配置される。
【0069】
図8は材料のフライス削りのためのフライス削り工具を設定及び/又は製造するための本発明よる方法のいろいろな様態を示す流れ図であり、フライス削り工具は上述したどの種類のものであってもよい。最初に、ステップ901で、同一組に位置させる切れ刃の数、z、を決める。次に、ステップ902で、その一組内で異なる角度θを切れ刃に対して設定する。角度θの設定はいくつかの異なるスキーム又は仕様に従って行うことができ、そのフライス削り工具をどのようなタイプのフライス削り作業に用いるかによる、例えばどんな材料をフライス削りするか、そのフライス削り工具がどれほどの大きさの切削係合で使用されるか、例えばそのフライス削り工具で切削する軸方向深さがどれほどか、などによる。従来技術では、不均等ピッチの設定、すなわち角度θを設定するための方法がいくつかある。ステップ903で、そのフライス削り工具を最適化すべき1刃送り、fz、又は1刃送りfzの間隔、が決定される。公称径方向距離dが決定され、ある切れ刃が基準として選択され、フライス削りカッター本体の回転軸へのその径方向距離が決定された公称径方向距離に設定される。次にステップ904で、一組内で、フライス削りカッター本体の回転軸への他の切れ刃の径方向距離が公称径方向距離に対して、決定された1刃送りfzと設定された角度θに基づいて設定される。基準として選択された切れ刃は調整されないままである。それぞれの切れ刃の回転軸への径方向距離の精密な設定は行われたテストに基づいて実行できる。
【0070】
ある特定切れ刃の径方向距離dnの設定は、
式Δdn=fz{n−〔(Vn×z)/360 °〕}及び公称径方向距離dとの関係から出てくる。ここでn=0での基準切れ刃が回転軸への公称径方向距離dを有し、この基準切れ刃は調整されないままである。また、zは一組の切れ刃の数、fzは決定された1刃送り、nは切れ刃の位置を表し、Vnは径方向平面におけると位置n=0の基準切れ刃の間の角度である。位置nの切れ刃の径方向距離dnは公称径方向距離dとΔdnから式:dn=d+Δdn によって得られる。
【0071】
図5を参照して、この式によると、第一の切れ刃326は位置n=1を有し、第二の切れ刃328は位置n=2を有し、第三の切れ刃330は位置n=3を有し、第四の切れ刃332は位置n=0を有する。第一の切れ刃326では、V11であり、第二の切れ刃328では、V212であり、第三の切れ刃330では、V3123である。図5による第三の切れ刃では、
Δd3=0.15{3−〔(85 °+88 °+95 °)×4/360 °〕}=0.0033 mmとなり、
d3=30+0.0033 mmとなる。
【0072】
これは切れ刃の径方向距離の設定の一例でしかなく、本発明の範囲内で他の式や方法を用いることもできる。Δdnは、好適には決定された1刃送りfzの少なくとも1パーセントである。設定又は製造されるフライス削り工具は決定された1刃送りに対して最適化されるが、フライス削り工具は他の1刃送りで用いても改善された機能を達成することがある。
【0073】
本発明は上で説明した実施形態に限られると考えてはならないし、添付された特許請求の範囲内でいろいろな変更が可能である。例えば切れ刃の数は、上述したものより多くてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な主軸又はホルダーに結合できて回転軸(x-x, y-y, z-z)を規定するフライス削りカッター本体(102;302;702)を含み、
フライス削りカッター本体(102;302;702)は、接線方向に間隔をあけた複数の切れ刃(118,120;326,328,330,332;710,712,714,716)の少なくとも一組、及び少なくとも一つの切れ刃(118,120;326,328,330,332;710,712,714,716)を有するフライス削りインサートのための接線方向に間隔をあけた複数の座(110,112;310,312,314,316)を備え、
一組の切れ刃(118,120;326,328,330,332;710,712,714,716)は被削材のある共通表面を加工するように配置され、
一組の切れ刃(118,120;326,328,330,332;710,712,714,716)又は座(110,112;310,312,314,316)は、第一の切れ刃(118;326;330;710,714)に交わる半径と、回転軸(x-x, y-y, z-z)のまわりの回転方向(R)で第一の切れ刃(118;326;330;710,714)に最も近く位置する別の切れ刃(120;332,328;716,712)に交わる半径との間の第一の角度(θ1;θ1、θ3)が、第一の切れ刃(118;326;330;710,714)に交わる半径と、回転方向(R)と反対の方向で第一の切れ刃(118;326;330;710,714)に最も近く位置する別の切れ刃(120;328,332;712,716)に交わる半径との間の第二の角度(θ2;θ2,θ4)より小さく、
第一及び第二の角度(θ1,θ2,θ11,θ2,θ3,θ4)が回転軸(x-x, y-y, z-z)と直交する径方向平面にあり、
第一及び第二の角度(θ1,θ2,θ11,θ2,θ3,θ4)内に、それぞれ、同一組の他の切れ刃(118,120;218,220;326,328,330,332;710,714)が存在しない装置であって、
一組内で、第一の切れ刃(118;326;330;710,714)の回転軸(x-x, y-y, z-z)への径方向距離(d1;d1,d3)が回転方向(R)と反対の方向で第一の切れ刃(118;326;330;710,714)に最も近く位置する別の切れ刃(120;328,332;712,716)の回転軸(x-x, y-y, z-z)への径方向距離(d2;d2,d4)より大きく、
回転軸(x-x, y-y, z-z)への径方向距離が径方向平面にある、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
一組内で、第一の切れ刃(118;326;330;710,714)の回転軸(x-x, y-y, z-z)への径方向距離(d1;d1,d3)と回転方向(R)と反対の方向で第一の切れ刃(118;326;330;710,714)に最も近く位置する別の切れ刃(120;328,332;712,716)の回転軸(x-x, y-y, z-z)への径方向距離(d2;d2,d4)が、それぞれの第一及び第二の角度(θ1,θ2;θ1,θ2,θ3,θ4)に関連して、第一の切れ刃(118120;326328,330332;710,712,714716)と回転方向(R)と反対の方向で第一の切れ刃(118;326;330;710,714)に最も近く位置する別の切れ刃(120;328,332;712,716)が、被削材から本質的に同じ切りくず厚さを有する切りくずを切り出すように設定され、回転軸(x-x, y-y, z-z)への径方向距離が径方向平面にある、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第一の角度(θ1;θ1,θ3)が第二の角度(θ2;θ2,θ4)と少なくとも1パーセント異なる、ことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の装置。
【請求項4】
フライス削りカッター本体が少なくとも一組の接線方向に間隔をあけた複数の切れ刃(118120;218,220;326328,330332;710,712,714716)を備えている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
切れ刃(710,712,714,716)がフライス削りカッター本体(702)と一体である、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
フライス削りカッター本体(702)が第一の端部(706)及び反対側の第二の端部(704)を有し、フライス削りカッター本体(702)の回転軸(z-z)が二つの端部(704,706)の間に延びており、フライス削りカッター本体(702)が第一の端部(706)から第二の端部(704)の方へ延びている複数の溝(718,720)を含み、それぞれの切れ刃(710,712,714,716)は二つの溝(718,720)の間に配置されている、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
フライス削りカッター本体(102;202;302)が、少なくとも一つの切れ刃(118,120;218,220;326,328,330,332)を有するフライス削りインサート(114,116;214,216;318,320,322,324)のために、接線方向に間隔をあけた複数の座(110,112;210,212;310,312,314,316)の少なくとも一組を備えている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
座(110,112;310,312,314,316)はそれぞれ肩面(150,152;352)を有し、フライス削りインサートを肩面に圧しつけてフライス削りカッター本体(102;302)の回転軸(x-x; y-y)に対するフライス削りインサート(114,116;318,320,322,324)の径方向位置を固定することができ、一組内で、第一の切れ刃(118;326,330)を担う第一のフライス削りインサート(114;318,322)を圧しつけることができる少なくとも第一の肩面(150;352)の回転軸(x-x; y-y)への径方向距離(d11;d11,d33)が、回転方向(R)と反対の方向で第一の切れ刃(118;326,330)に最も近く位置している別の切れ刃(120;328,332)を担う別のフライス削りインサート(116;320,324)を圧しつけることができる少なくとも一つの別の肩面(152;352)の回転軸(x-x; y-y)への径方向距離(d22;d22,d44)より大きい、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
フライス削りインサート(214,216)は、フライス削りインサート(214,216)の切れ刃(218,220)が結合する逃げ面(222,224)と、逃げ面(222,224)の反対側の第二の表面(226,228)を有し、一組内で、第一の切れ刃(218)を担う少なくとも第一のフライス削りインサート(214)の逃げ面(222)と第二の表面(226)の間の距離が、回転方向(R)と反対の方向で第一の切れ刃(218)に最も近く位置する別の切れ刃(220)を担う少なくとも別のフライス削りインサート(216)の逃げ面(224)と第二の表面(228)の間の距離より大きい、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
一組の切れ刃(118,120;218,220;326,328,330,332;710,712,714,716)が、被削材から、同一組の他の切れ刃(118,120;218,220;326,328,330,332;710,712,714,716)によって切り出される切りくずの切りくず厚さと本質的に同じ切りくず厚さを有する切りくずを切り出すように配置されている、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
フライス削りカッター本体(102;202;302;702)が、材料のエンドミル削り及び/又は正面フライス削りのために配置されている、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項によって定められるような材料のフライス削りのための装置を設定及び/又は製造する方法であって、
同一組における切れ刃の数を決定するステップ(901)と、
シリ−ズ内で、第一の切れ刃(118;326330;710,714)に交わる半径と、回転軸(x-x; y-y; z-z)のまわりの回転方向(R)で第一の切れ刃(118;326330;710,714)に最も近く位置する別の切れ刃(120;332,328;716,712)に交わる半径との間の第一の角度(θ1;θ1,θ3)を、第一の切れ刃(118;326330;710,714)に交わる半径と、回転方向(R)と反対の方向で第一の切れ刃(118;326330;710,714)に最も近く位置する別の切れ刃(120;332,328;716,712)に交わる半径との間の第二の角度(θ2;θ2,θ4)より小さく設定するステップ(902)であって、第一及び第二の角度(θ1,θ2;θ1,θ2,θ3,θ4)は回転軸(x-x; y-y; z-z)と直交する径方向平面にあり、第一及び第二の角度(θ1,θ2;θ1,θ2,θ3,θ4)内に、それぞれ、同一組の他のどんな切れ刃(118120;218,220;326,328,330332;710,712,714,716)も存在しないステップと、
フライス削り作業の1刃送りを決定するステップ(903)と、
一組内で、第一の切れ刃(118;326330;710,714)の回転軸(x-x; y-y; z-z)への径方向距離を、回転方向(R)と反対の方向で第一の切れ刃(118;326330;710,714)に最も近く位置している別の切れ刃(120;328,332;712,716)の回転軸(x-x; y-y; z-z)への径方向距離(d2; d2, d4)より大きく、決定された1刃送り及び径方向平面で切れ刃の間に設定された角度に基づいて、設定するステップ(904)であって、回転軸への径方向距離は径方向平面にあるステップと、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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