説明

フラッシュパネルの製造方法

【課題】 タッカー針を使用せず、手間を少なくして生産性に優れたフラッシュパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のフラッシュパネルの製造方法は、木質の角材等からなる芯材12の一つの面に接着剤を塗布する工程と、芯材12を木質の面材11の上の所望の位置に、接着剤を塗布した面と面材11が接着するように配置する工程と、芯材12の接着剤を塗布した対面に接着剤を塗布し、もう一枚の木質の面材11を貼り合わせ、プレス機で圧締して大板のフラッシュパネルを形成する工程と、芯材12のうち中枠として配置された芯材の長手方向に沿って大板のフラッシュパネルを切断し、複数枚の所望の大きさのフラッシュパネルに分割する工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具や扉等に用いられる木質のフラッシュパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家具や扉等の屋内建具に広く用いられるフラッシュ構造は、芯材で骨組みを作り、その骨組みの両面に化粧板などの面材を貼り合わせて形成したもので、中が空洞なので軽量であるという特徴がある。また、構造的にも十分な強度を有し、無垢材と比較しても、反りや歪みが少ない。しかも、無垢材よりも経済的であり、使用する材料を少なくすることができるので、森林資源を保護するといったエコの視点からも、有利な構造であると言える。
【0003】
図3に一般的なフラッシュパネル10の構造図を示す。製造の工程としては、所定の長さの芯材12を用意し、タッカー針13等を用いて芯組する。その後、芯組された芯材12の表面と裏面に接着剤を塗布し、そこに面材11,11を貼り合わせる。それをプレス機で圧締して、フラッシュパネル10ができる。最後に、仕上げとして端部を切り落として所定の寸法にしたり、他のパネル等と接合するための穴を開けたり、必要な金具等を取り付けたりして、製品として使用できる状態になる。なお、フラッシュパネルの片面が壁などの境界の場合、面材を片面のみしか設けない場合もあるが、その場合も同じように製造される。
【0004】
このように、フラッシュ構造は、環境面や経済面等で有利ではあるが、製作には手間がかかるという課題がある。
【0005】
また、図4は芯材12をタッカー針13で留めて芯組した平面図である。このようにタッカー針13で芯材12どうしを留めると、製造工程において、芯組だけを先にまとめてしておくことができるなどの利点はあるが、タッカー針等の金属片を用いて仮留めをすると、(1)タッカー針の打ち込みが浅い場合には、面材と芯材との間に隙間が生じ、プレスした際にその周辺が山になり外観不良になるおそれがある、(2)タッカー針の位置が悪いと、仕上げのときに鋸歯が当たって歯を傷めたり、場合によっては火花が発生して集塵ダクトを通じて集塵サイロに入り込み、火災につながるおそれがある、(3)リサイクルボードに転用する場合に、タッカー針等の金属片を取り除く必要があり煩雑である、といった問題がある。
【0006】
なお、フラッシュパネルのリサイクルについて言及した文献(例えば、特許文献1参照)では、リサイクルボードの製造用原料にする際に、ドアノブなどの金具を外すことについては記載されているが、タッカー針を取り除くことまで言及しているものは見あたらなかった。
【特許文献1】特開2002−240005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、斯かる実情に鑑み、タッカー針を使用せず、手間を少なくして生産性に優れたフラッシュパネルの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフラッシュパネルの製造方法は、木質の角材等からなる芯材の一つの面に接着剤を塗布する工程と、前記芯材を木質の面材の上の所望の位置に、接着剤を塗布した面と面材が接着するように配置する工程と、前記芯材の接着剤を塗布した対面に接着剤を塗布し、もう一枚の木質の面材を貼り合わせ、プレス機で圧締して大板のフラッシュパネルを形成する工程と、前記芯材のうち中枠として配置された芯材の長手方向に沿って大板のフラッシュパネルを切断し、複数枚の所望の大きさのフラッシュパネルに分割する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
また、面材を片面だけに有するフラッシュパネルの製造方法では、木質の角材等からなる芯材の一つの面に接着剤を塗布する工程と、前記芯材を木質の面材の上の所望の位置に、接着剤を塗布した面と面材が接着するように配置する工程と、芯材と面材をプレス機で圧締して大板のフラッシュパネルを形成する工程と、前記芯材のうち中枠として配置された芯材の長手方向に沿って大板のフラッシュパネルを切断し、複数枚の所望の大きさのフラッシュパネルに分割する工程と、を有することを特徴とすれば良い。
【0010】
また、接着剤を面材に塗布してフラッシュパネルを製造する方法としては、木質の面材の片面に接着剤を塗布する工程と、面材の接着剤を塗布した面の所望の位置に、木質の角材等からなる芯材を配置する工程と、もう一枚の木質の面材の片面に接着剤を塗布し、前記芯材の上に貼り合わせ、プレス機で圧締して大板のフラッシュパネルを形成する工程と、前記芯材のうち中枠として配置された芯材の長手方向に沿って大板のフラッシュパネルを切断し、複数枚の所望の大きさのフラッシュパネルに分割する工程と、を有することを特徴とすれば良い。ここで、芯材を接着剤が塗布された面材の上に配置するときに、芯材で囲まれた部分にコア材を充填しても良い。
【0011】
また、前記芯材のうち、中枠として配置された芯材の幅は、外枠として配置された芯材の幅よりも太くすべきであり、外枠の芯材の2倍以上の幅にするのが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大板で製作したフラッシュパネルを複数枚に分割することにより、1枚ずつ製作するよりも生産性を向上させることができるという優れた効果を奏する。これは、面材を片面だけに有するフラッシュパネルでも同様の効果が得られる。
【0013】
また、芯材で囲まれた部分にコア材を充填することで、プレス圧が均等にかかるため、プレス圧により芯材のある部分と芯材のない部分でプレス跡が残るという現象を解消することができる。また、中枠として用いられる芯材は、プレス後に長手方向に切断されることから、外枠として用いられる芯材よりも太くすべきで、特にその幅が外枠の芯材の2倍以上であれば、芯材がずれることよる製作誤差等を吸収することができ、タッカー針を用いなくてもプレス時に芯材の動きを抑えられるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は大板で組み立てたフラッシュパネル10の分割位置15を示す図である。このように大板でフラッシュパネル10を製作し、その後、中枠の芯材12の長手方向に中心線付近で切断することで、大板1枚から複数枚のフラッシュパネルを製造することができる。本例では、分割位置15で切断して、1枚の大板のフラッシュパネル10を6枚のパネルに分割している。そして、分割された各々のフラッシュパネル10は、所定の寸法になるように端部を切り落としたり、他のパネル等と接合するために必要な穴を開けたりして製品に仕上げられる。これは、面材を片面だけに有するフラッシュパネルの場合でも同様の製造方法で製作することができる。
【0016】
大板でフラッシュパネル10を製作する場合、外枠に用いられる芯材12は従来のものより長く、また、中枠に用いられる芯材12はプレス後に長手方向に切断されることから、従来のものより太い芯材が用いられることになる。このように芯材が大きければ、製作過程中に芯材がほとんど動かないので、タッカー針等で芯材を留めて芯組をする必要はなく、芯材12を面材11の上に接着剤で貼り付けて直接配置することができる。ここで、接着剤の種類は特に限定はしないが、芯材12と面材11の間に厚みがなく密着するものが望ましい。また、接着剤は、芯材に塗布しても良いし、面材に塗布しても良い。
【0017】
このように大板で製作すれば、芯材をタッカー針で留めなくても、芯材の動きを抑制することはできるのだが、芯組時やプレス時に芯材の位置が僅かにずれる可能性はある。このようなずれによる誤差を吸収するために、中枠に配置された芯材の幅は、外枠に配置された芯材の幅の2倍以上にしておくのが望ましい。
【0018】
また、大板で一度に圧締すれば、一枚一枚圧締するよりも手間を減らすことができる。ここで、大板のフラッシュパネルは複数枚のフラッシュパネルに分割されるので、分割する作業は手間を増やすようにも思われる。しかし、パネルを1枚ずつ製作するときでも、結局は正寸にするために端部を切断したりして、仕上げをする必要がある。したがって大板を分割する作業は、手間を増やすことにはならず、場合によっては手間を減らすことも可能である。
【0019】
また、芯組にタッカー針を使わない場合、手間を省くことができるだけでなく、タッカー針の打ち込みが浅い場合に生じる芯材と面材の間の隙間を発生させないとか、切断時にタッカー針と鋸の歯が接触することによって、鋸の歯を傷めたり、火花が散って火災を発生させる心配もないといった効果が得られる。そして、タッカー針のような金属片を使用しないフラッシュパネルであれば、リサイクルボードにする際に金属片を取り除く作業が不要になるため、リサイクルに適しているといった効果も得られる。
【0020】
図2はコア材14を使用したフラッシュパネル10の内部を示した図である。コア材14は、接着剤をほぼ全面に塗布した面材11の上に芯材12を配置した後、芯材12で囲まれた領域に充填される。コア材14は軽量だが、プレス圧を均等にかけることができるといった効果を奏する。これによりプレス圧によって芯材のある部分と芯材のない部分でプレス跡が残るという現象を解消することができる。また、プレスするときに芯材が動くのを防ぐ効果もある。コア材14の種類としては紙製のハニカムコア等があるが、本発明の効果を得るためには、特に材質や形状を限定する必要はない。ただし、リサイクルのし易さを考慮して材質を決めるのが望ましいと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】大板で組み立てたフラッシュパネルの分割位置を示す図である。
【図2】コア材を使用したフラッシュパネルの内部を示す図である。
【図3】一般的なフラッシュパネルの構造を示す図である。
【図4】芯材をタッカー針で留めて芯組した平面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 フラッシュパネル
11 面材
12 芯材
13 タッカー針
14 コア材
15 分割位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質の角材等からなる芯材の一つの面に接着剤を塗布する工程と、
前記芯材を木質の面材の上の所望の位置に、前記接着剤を塗布した面と前記面材が接着するように配置する工程と、
前記芯材の接着剤を塗布した対面に接着剤を塗布し、もう一枚の木質の面材を貼り合わせ、プレス機で圧締して大板のフラッシュパネルを形成する工程と、
前記芯材のうち中枠として配置された芯材の長手方向に沿って前記大板のフラッシュパネルを切断し、複数枚の所望の大きさのフラッシュパネルに分割する工程と、
を有することを特徴とするフラッシュパネルの製造方法。
【請求項2】
面材を片面だけに有するフラッシュパネルの製造方法であって、
木質の角材等からなる芯材の一つの面に接着剤を塗布する工程と、
前記芯材を木質の面材の上の所望の位置に、前記接着剤を塗布した面と前記面材が接着するように配置する工程と、
前記芯材と前記面材をプレス機で圧締して大板のフラッシュパネルを形成する工程と、
前記芯材のうち中枠として配置された芯材の長手方向に沿って前記大板のフラッシュパネルを切断し、複数枚の所望の大きさのフラッシュパネルに分割する工程と、
を有することを特徴とするフラッシュパネルの製造方法。
【請求項3】
木質の面材の片面に接着剤を塗布する工程と、
前記面材の接着剤を塗布した面の所望の位置に、木質の角材等からなる芯材を配置する工程と、
もう一枚の木質の面材の片面に接着剤を塗布し、前記芯材の上に貼り合わせ、プレス機で圧締して大板のフラッシュパネルを形成する工程と、
前記芯材のうち中枠として配置された芯材の長手方向に沿って前記大板のフラッシュパネルを切断し、複数枚の所望の大きさのフラッシュパネルに分割する工程と、
を有することを特徴とするフラッシュパネルの製造方法。
【請求項4】
前記芯材を前記面材の接着剤を塗布した面に配置するときに、前記芯材で囲まれた部分にコア材を充填することを特徴とする請求項3に記載のフラッシュパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−269299(P2009−269299A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122155(P2008−122155)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(392023016)マルフジ建材株式会社 (4)
【Fターム(参考)】