説明

フラットケーブルハーネス

【課題】フラットケーブルハーネスを提供する。
【解決手段】電子機器に接続されるコネクタ6が端末に取り付けられたフラットケーブルハーネス1において、フラット状に並べられた複数の電線2に電線2の長手方向の所定長さにわたり樹脂繊維糸3が織り合わされた織合部4と、織合部4の長手方向の一部にわたり織合部4の内部に樹脂が充填され、かつ織合部4の周囲を前記樹脂が覆うように前記樹脂で成形された防水栓5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐屈曲性、耐捻回性、耐U字スライド性に優れ、かつ、防水性及び作業性に優れたフラットケーブルハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、ノートパソコン、薄型液晶テレビ、PDA(携帯情報端末)、カメラ、プリンタ等の電子機器には、その電子機器の一部と他の一部、例えば、本体と液晶ディスプレイ表示部が相対的に可動な構造のものがある。本体に対して液晶ディスプレイ表示部を折り畳みできる構造を開閉式構造、回動できる構造を回動式構造、平行にずらせることができる構造をスライド式構造という。
【0003】
従来、開閉式構造では、本体と液晶ディスプレイ表示部との間をつなぐ可動部用配線材には、FPC(フレキシブルプリント基板)が使われている。FPCは、可撓性であるため開閉に耐えられると共に、フィルムで構成されているので、フラット状であり、場所をとらない。
【0004】
しかし、FPCは、小さい曲げ半径での単純曲げには弱いため、大きな曲げ半径を作って曲げる必要がある。したがって、開閉式構造であって薄型化された電子機器に好適とは言えない。
【0005】
また、FPCは、捻回した状態では、電気特性が不安定であり、EMI(不要輻射)特性が劣化する。したがって、FPCは、回動式構造を採用して高機能化、多機能化する電子機器には適切でない。
【0006】
また、FPCは、フィルムで構成されているため、捻回するとフィルム上の配線回路にダメージが生じるため、回動式構造のヒンジ内に丸めて通すことが不可能である。
【0007】
これに対して、複数の電線をフラット状に並べ、この電線を縦糸としポリエステル糸を横糸として織り込んだフラットケーブルハーネスが知られている(特許文献1、2)。このフラットケーブルハーネスにより、FPCよりも耐屈曲性、耐捻回性、耐U字スライド性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−101934号公報
【特許文献2】特開2005−141923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年の電子機器では、開閉式構造、回動式構造、スライド式構造でありながら、かつ防水構造のものが求められている。しかし、前述のフラットケーブルハーネスは防水性が考慮されていないため、防水構造の電子機器の可動部用配線材には採用することができない。
【0010】
また、前述のフラットケーブルハーネスにおいて、耐屈曲性、耐捻回性、耐U字スライド性をより高めるためには電線を擦れから保護するために、横糸の織り込みピッチを密にする必要がある。一方、フラットケーブルハーネスの端末にコネクタを装着する際の横糸除去の作業を容易にするには横糸の織り込みピッチを粗にする必要がある。このため横糸の織り込みピッチを粗にしても不具合があり、密にしても不具合があるというジレンマがある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、耐屈曲性、耐捻回性、耐U字スライド性に優れ、かつ、防水性及び作業性に優れたフラットケーブルハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、電子機器に接続されるコネクタが端末に取り付けられたフラットケーブルハーネスにおいて、フラット状に並べられた複数の電線に前記電線の長手方向の所定長さにわたり樹脂繊維糸が織り合わされた織合部と、前記織合部の長手方向の一部にわたり前記織合部の内部に樹脂が充填され、かつ前記織合部の周囲を前記樹脂が覆うように前記樹脂で成形された防水栓とを備えたものである。
【0013】
前記防水栓の外周に、防水パッキンを嵌め込むための溝が形成されてもよい。
【0014】
前記防水栓がVQMまたはEDPMより形成されると共に、前記防水栓に電子機器に嵌合される溝が形成されてもよい。
【0015】
前記防水栓の内部に、前記防水栓を補強する金属台座が埋め込まれてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐屈曲性、耐捻回性、耐U字スライド性に優れ、かつ、防水性及び作業性に優れたフラットケーブルハーネスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を示すフラットケーブルハーネスの上面図である。
【図2】図1のフラットケーブルハーネスの防水栓付近の横断面図である。
【図3】本発明のフラットケーブルハーネスの電線に用いられる同軸線の横断面図である。
【図4】本発明のフラットケーブルハーネスの電線に用いられる絶縁ワイヤの横断面図である。
【図5】本発明のフラットケーブルハーネスの電線に用いられる4心対角同軸線の横断面図である。
【図6】屈曲試験を説明する図である。
【図7】捻回試験を説明する図である。
【図8】U字スライド試験を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1に示されるように、本発明に係るフラットケーブルハーネス1は、電子機器(図示せず)に接続されるコネクタ6が端末に取り付けられたフラットケーブルハーネス1において、フラット状に並べられた複数の電線2に電線2の長手方向の所定長さにわたり樹脂繊維糸3が織り合わされた織合部4と、織合部4の長手方向の一部にわたり織合部4の内部に樹脂が充填され、かつ織合部4の周囲を前記樹脂が覆うように前記樹脂で成形された防水栓5とを備えたものである。
【0020】
本実施形態では、フラットケーブルハーネス1は、図示しない電子機器の相対的に可動となっている一部と他の一部、例えば、本体と液晶ディスプレイ表示部の間をつなぐ可動部用配線材である。フラットケーブルハーネス1の両端末には、それぞれ電子機器の内部に配置された相手コネクタに接続されるコネクタ6が取り付けられる。
【0021】
防水栓5は、図示しない電子機器の本体と液晶ディスプレイ表示部のハウジングにフラットケーブルハーネス1を通すためにそれぞれのハウジングに形成されるハーネス取込口に挿入することにより、電子機器の防水を図るためのものである。防水栓5は、コネクタ6の近傍に配置される。
【0022】
本実施形態では、織合部4とコネクタ6との間に、電線2に樹脂繊維糸3が織り合わされない余長部7が形成されている。余長部7の長さは電子機器内部におけるフラットケーブルハーネス1の配線長により決められる。余長部7は、電子機器内部に収容される部分であり、電子機器の開閉、回動、スライドによらず屈曲、捻回、U字スライドが生じない部分である。
【0023】
図1では、樹脂繊維糸3が電線2に対して単に交差しているよう示されているが、実際には、織合部4は、電線2を縦糸とし樹脂繊維糸3を横糸として織られたものである。例えば、樹脂繊維糸3は、1番端の電線2の上から2番目の電線2の下に入り、2番目の電線2の下から3番目の電線2の上に出るというように、電線2の1本ごとに交互に上下して交差している。樹脂繊維糸3は、反対端の電線2で折り返されて、前述の上下交差とは上下関係が互い違いになるよう電線2の1本ごとに交互に上下して交差している。このように、1条の樹脂繊維糸3が複数の電線2を1本ずつ縫って固定するような織り込みが長手方向に繰り返されている。樹脂繊維糸3の織り込み形状は、図示のジグザグ状に限らず、螺旋状や電線2に対して直角に交わる形状がある。
【0024】
樹脂繊維糸3としては、例えば、PET糸がある。PET糸は、直径15〜25μmの単線が複数本集合されたマルチ素線である。PET糸は、20%以上の伸びを得ることができるので、電線2を締め付けて電線2にダメージを与えることがなく、耐熱性にも優れている。また、PET糸は、耐屈曲性、耐捻回性、耐U字スライド性に優れるため、電子機器のヒンジ部で30万回以上の繰り返し屈曲と捻回に耐え、30万回以上の繰り返しU字スライドに耐えることができる。
【0025】
樹脂繊維糸3の太さの規格は、フラットケーブルハーネス1を電子機器の狭いヒンジ部に通すことができ、かつ、繰り返しの捻回に耐えられるよう、20〜100d(デニール)が望ましい。
【0026】
電線2の長手方向に表れる樹脂繊維糸3のピッチ、すなわち織りピッチは、場所により異なる。織合部4の両端部近傍には、樹脂繊維糸3の織りピッチが広い粗部8が形成され、織合部4の中間部分には、樹脂繊維糸3の織りピッチが狭い密部9が形成されている。粗部8における織りピッチは、複数の電線2がばらけずにフラット状に保持され、かつ、横糸除去の作業が容易になる程度である。密部9における織りピッチは、電子機器とフラットケーブルハーネス1との擦れによるダメージが防止され、かつ、フラットケーブルハーネス1の柔軟性が得られて電子機器の開閉、回動、スライドを円滑に行うことができる程度である。
【0027】
図2(a)〜図2(c)に示されるように、防水栓5は、織合部4の両端部の粗部8の余長部7側に配置され、織合部4の周囲を覆うように形成される。防水栓5は、ゴム弾性に優れて、小型モールド成形(成型)に優れたラバー系の高MFR樹脂、VQM(シリコーンゴム)、EDPM(エチレンプロピレンゴム)により成形される。このとき、樹脂12は、織合部4との接着界面から織合部4の内部の電線2と樹脂繊維糸3の隙間に流れ込んで充填される。そのため、毛細管現象により樹脂繊維糸3を伝って電子機器内に水が浸入するおそれがない。
【0028】
図2(a)、図2(b)に示されるように、高MFR樹脂より形成される防水栓5の外周には、防水パッキン10を嵌め込むための溝11が形成される。溝11の大きさは防水栓5をハーネス取込口に挿入したとき所定の水密性能が守れるよう防水パッキン10の仕様に従う。防水栓5の内部に、防水栓5を補強する金属台座(図示せず)が埋め込まれてもよい。また、図2(c)に示されるように、防水栓5をVQMまたはEDPMにより形成し、溝11を設けてもよい。これらのゴムは優れた弾力性を有するため、溝11に電子機器のケース等を嵌合させることにより、優れた防水性が得られる。
【0029】
防水栓5の形状は、図示した2つの実施形態のものに限らない。防水栓5は、ハーネス取込口に密に嵌合するように、ハーネス取込口と形状を合わせて形成される。
【0030】
電線2には、図3に示した同軸線31、図4に示した絶縁ワイヤ41、図5に示した4心対角同軸線51などを用いることができる。
【0031】
図3に示されるように、同軸線31は、複数の導体素線を撚ってなる内部導体32と、内部導体32を覆う内部絶縁体33と、内部絶縁体33の外周に設けられた外部導体(シールド)34と、外部導体34を覆う外部絶縁体35とからなる。
【0032】
図4に示されるように、絶縁ワイヤ41は、複数の導体素線を撚ってなる導体42と、導体42を覆う絶縁体43とからなる。
【0033】
図5に示されるように、4心対角同軸線51であるLVDS用4心対角同軸線(Quad-X)51は、複数の導体素線を撚ってなる内部導体52を絶縁体53で覆った4本の絶縁ワイヤ54が対角に並べられ、その外周に内部ジャケット55、外部導体56、外部ジャケット57が順に設けられたものである。
【0034】
電線2の外径は、電子機器の薄型化に対応すること、電線2をヒンジ部に通すことを考慮すると、0.5mm以下が望ましい。
【0035】
電線2の本数は、一般的な携帯電話機の場合、同軸線31なら20〜70本、4心対角同軸線51なら5〜18本程度であるが、本発明は電線2の本数を限定しない。
【0036】
次に、本発明のフラットケーブルハーネス1の作用効果を説明する。
【0037】
本発明のフラットケーブルハーネス1は、織合部4において電線2に樹脂繊維糸3が織り合わされているため、耐屈曲性、耐捻回性、耐U字スライド性に優れている。加えて、密部9においては、織りピッチが狭くなっているので電子機器とフラットケーブルハーネス1との擦れによる電線2のダメージが防止される。一方、粗部8においては織りピッチが広くなっているため、粗部8において電線2をコネクタ6に取り付ける場合、横糸除去の作業が容易になる。さらに、本実施形態では、防水栓5よりコネクタ6側は、樹脂繊維糸3が織り合わされていない余長部7となっているので、電線2をコネクタ6に取り付けるとき横糸除去の作業が不要である。
【0038】
本発明のフラットケーブルハーネス1は、織合部4の周囲を覆う防水栓5を有するので、フラットケーブルハーネス1を電子機器に取り付けたとき、防水栓5がハーネス取込口に挿入されることにより、優れた防水性を発揮する。防水栓5に防水パッキン10を嵌め込むための溝11が形成されることで、防水パッキン10を嵌め込むのが容易となると共に、溝11の底面、壁面の複数箇所で水密が図れるので、防水性がいっそう良くなる。また、防水栓5の内部に、防水栓5を補強する金属台座が埋め込まれることで、防水栓5が変形しにくくなり、防水性が向上する。
【0039】
本発明のフラットケーブルハーネス1は、防水栓5において織合部4の内部にまで樹脂が充填されるので、織合部4の内部の防水が確実に実現される。
【0040】
本発明のフラットケーブルハーネス1は、防水栓5が織合部4を覆うように樹脂で成形されるので、織合部4が完成した後であれば、コネクタ6が取り付けられる前でも、コネクタ6が取り付けられた後でも防水栓5を作成することができる。
【0041】
本発明のフラットケーブルハーネス1は、防水栓5をVQMまたはEDPMから形成し、電子機器のケース等に嵌合される溝11を設けるようにしてもよい。これらのゴムは優れた弾力性を有するので、Oリングなどの防水パッキン10の役目も兼ね備え、防水性を得ることができる。
【実施例】
【0042】
本発明の効果を確認するため、本発明の実施例サンプルと比較例サンプルを製作し、評価試験を行った。
【0043】
・同軸線31を用いたケーブルハーネス
中心導体32は、φ0.02mmの銀めっき銅合金線を7本撚ったものである。この中心導体32の周囲に0.05mmの肉厚でPFAからなる内部絶縁体33を形成した。この内部絶縁体33の外周にφ0.025mmスズめっき銅合金線を横巻して外部導体34を形成した。この外部導体34の周囲に肉厚0.03mmのPFAからなる外部絶縁体35を形成した。この同軸線31の外径はφ0.27mmである。
【0044】
長さ100mmの同軸線31を40本束ねて、55μm厚のPTFEテープを1/2ラップで巻いて比較例サンプルT1を製作した。
【0045】
長さ100mの同軸線31を40本並列に配置し、直径20μmのPET糸8本を撚り合わせて最終外径60μmとした樹脂繊維糸3を、ジクザグに織り込んだ。このとき、両端末から5mmまでは織り込みピッチPw=10本/cmの粗部8とし、両端末の中間90mmは織り込みピッチPn=18本/cmの密部9として実施例サンプルS1を製作した。
【0046】
・4心対角同軸線51を用いたケーブルハーネス
中心導体52は、φ0.02mmの銀めっき銅合金線を7本撚ったものである。この中心導体52の周囲に0.025mmの肉厚でPFAからなる内部絶縁体53を形成し、絶縁ワイヤ54とした。4本の絶縁ワイヤ54を束ねて撚り合わせ、PFAからなる内部ジャケット55で抑え巻きし、この内部ジャケット55の外周にφ0.03mmスズめっき銅合金線を横巻きして外部導体56を形成し、外部導体56の周囲に、フッ素樹脂から成る0.04mm厚外部ジャケット57とした。この4心対角同軸線51の外径はφ0.44mmである。
【0047】
長さ100mmの4心対角同軸線51を10本束ねて、55μm厚のPTFEテープを1/2ラップで巻いて比較例サンプルT2を製作した。
【0048】
長さ100mmの4心対角同軸線51を10本並列に配置し、直径20μmのPET糸8本を撚り合わせて外径60μmとし、さらに厚さ1μmの銅めっきを施した金属めっき樹脂繊維糸(CuめっきPET糸;金属めっき高抗張力繊維糸)3を、ジクザグに織り込んだ。このとき、両端末から5mmまでは織り込みピッチPw=10本/cmの粗部8とし、両端末の中間90mmは織り込みピッチPn=18本/cmの密部9として実施例サンプルS2を製作した。
【0049】
・絶縁ワイヤ41を用いたケーブルハーネス
中心導体42は、φ0.02mmの銀めっき銅合金線を7本撚ったものである。この中心導体42の周囲に0.05mmの肉厚でPFAからなる内部絶縁体43を形成し、絶縁ワイヤ41とした。
【0050】
長さ100mmの絶縁ワイヤ41を40本並列に配置し、直径20μmのPET糸8本を撚り合わせて最終外径60μmとした樹脂繊維糸3を、ジクザグに織り込んだ。このとき、両端末から5mmまでは織り込みピッチPw=10本/cmの粗部8とし、両端末の中間90mmは織り込みピッチPn=18本/cmの密部9として実施例サンプルS3を製作した。
【0051】
次に、ケーブルハーネスに対する機械特性の評価試験について説明する。
【0052】
図6に示されるように、屈曲試験では、試料ケーブル61を曲げジグ62に挟み込み、曲げジグ62から垂下された試料ケーブル61の下端に錘63を取り付ける。曲げジグ62を#1のように90°左に回転させ、#2のように90°右に回転させて元に戻し、さらに、曲げジグ62を#3のように90°右に回転させ、#4のように90°左に回転させて元に戻す。これにより、試料ケーブル61は所定の引っ張り荷重がかけられた状態で左右に90°ずつの屈曲を繰り返し与えられることになる。
【0053】
試験速度は30回/分とした。屈曲角度は±90°とした。試験サイクルは#1→#2→#3→#4とした。荷重は0.3N(30gf)。曲げ半径は2mmとした。
【0054】
断線検知方法は、試料ケーブル61に常時数Vの電圧を加え、電流値が試験開始時に比べて20%低下した時点を寿命(断線が起きる屈曲回数)とする。
【0055】
図7に示されるように、捻回試験では、試料ケーブル71を固定チャック部72と捻回チャック部73で把持する。固定チャック部72と捻回チャック部73との間が捻回部74となる。捻回チャック部73を#1のように180°左旋回させ、#2のように180°右旋回させて元に戻し、さらに、捻回チャック部73を#3のように180°右旋回させ、#4のように90°左旋回させて元に戻す。これにより、試料ケーブル71は捻回部74において左右に180°ずつの捻回を繰り返し与えられることになる。
【0056】
試験速度は30回/分とした。屈曲角度は±180°とした。試験サイクルは#1→#2→#3→#4とした。捻回部長さは10mmとした。
【0057】
断線検知方法は、試料ケーブル71に常時数Vの電圧を加え、電流値が試験開始時に比べて20%低下した時点を寿命(断線が起きる捻回回数)とする。
【0058】
図8に示されるように、スライド試験では、試料ケーブル81にU字状の折り返し部82を形成する。試料ケーブル81の先端部83を#1のように折り返し部82のほうへ直線移動させ、#2のように折り返し部82と反対方向に直線移動させて元に戻す。これにより、試料ケーブル81は所定の長さ範囲にわたりU字状の折り返しを繰り返し与えられることになる。
【0059】
試験速度は30回/分とした。スライド内幅は4mmとした。試験サイクルは#1→#2とした。ストローク長は60mmとした。
【0060】
断線検知方法は、試料ケーブル81に常時数Vの電圧を加え、電流値が試験開始時に比べて20%低下した時点を寿命(断線が起きるスライド回数)とする。
【0061】
これらの評価試験を実施例サンプルS1〜S3及び比較例サンプルT1,T2について実施した結果、以下の評価が得られた。
【0062】
屈曲試験においては、比較例サンプルT1,T2は5万回で断線したのに対し、実施例サンプルS1〜S3は30万回以上でも断線せず、フラット状の形状も乱れなかった。
【0063】
捻回試験においては、比較例サンプルT1,T2は1万回で断線したのに対し、実施例サンプルS1〜S3は25万回以上でも断線せず、フラット状の形状は乱れなかった。
【0064】
スライド試験においては、比較例サンプルT1,T2は10万回で断線したのに対し、実施例サンプルS1〜S3は20万回以上でも断線せず、フラット状の形状は乱れなかった。
【0065】
以上の評価試験の結果から、本発明は、携帯電話機、ノートパソコン、薄型液晶テレビ、PDA(携帯情報端末)、カメラ、プリンタ等の電子機器に使用される電気特性、機械特性に優れるフラットケーブルハーネス1を提供することができることが分かる。
【0066】
また、同軸線31、4心対角同軸線51をそれぞれ用いたケーブルハーネスの両端部に防水栓5と防水パッキン10またはVQMよりなる防水栓5を取り付け、防水性能を確認したところ、JIS C0920 IPX7を満たしており、十分な防水性能を有していることが分かった。
【符号の説明】
【0067】
1 フラットケーブルハーネス
2 電線
3 樹脂繊維糸
4 織合部
5 防水栓
6 コネクタ
7 余長部
8 粗部
9 密部
10 防水パッキン
11 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に接続されるコネクタが端末に取り付けられたフラットケーブルハーネスにおいて、フラット状に並べられた複数の電線に前記電線の長手方向の所定長さにわたり樹脂繊維糸が織り合わされた織合部と、前記織合部の長手方向の一部にわたり前記織合部の内部に樹脂が充填され、かつ前記織合部の周囲を前記樹脂が覆うように前記樹脂で成形された前記電子機器に挿入可能な防水栓とを備えたことを特徴とするフラットケーブルハーネス。
【請求項2】
前記防水栓の外周に、防水パッキンを嵌め込むための溝が形成されたことを特徴とする請求項1記載のフラットケーブルハーネス。
【請求項3】
前記防水栓がVQMまたはEDPMより形成されると共に、前記防水栓に電子機器に嵌合される溝が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のフラットケーブルハーネス。
【請求項4】
前記防水栓の内部に、前記防水栓を補強する金属台座が埋め込まれたことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のフラットケーブルハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−100651(P2011−100651A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255055(P2009−255055)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】