説明

フラットケーブル防水コネクタ

【課題】フラットケーブルに引っ張り力が作用する場合であっても、防水性能の低下を防ぐことができるフラットケーブル防水コネクタを提供すること。
【解決手段】導体配線11aが絶縁フィルム12bによって被覆される絶縁被覆部12を有してなるフラットケーブル10と、導体配線11aに接合される端子20と、端子20と接続相手端子とが接続されるように接続相手コネクタに嵌合されるコネクタハウジング50とを有してなるフラットケーブル防水コネクタ1において、導体配線11aと端子20との接合部60を覆うようにフラットケーブル10の延在方向端部12cに一体成形されてなる樹脂モールド部30を有し、樹脂モールド部30は、接合部60を覆う防水モールド部31および防水モールド部31に比してフラットケーブル10の延在方向奥側でフラットケーブル10を覆う保持モールド部32を有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブル防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、狭い空間での配索を可能とするものとして可撓性を有してなる平板状のフラットケーブルが用いられる。このフラットケーブルは、接続相手コネクタの端子と接続される端子が、フラットケーブルの導体配線が露出された部分に接続されるようになっている。このような導体配線と端子の接合部は防水処理を施す必要がある。このため、例えば特許文献1には、防水性能を有するフラットケーブル防水コネクタが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−123513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたフラットケーブル防水コネクタは、フラットケーブルの長手方向の前端部寄りに、導体の間に位置する透孔が形成されると共に、透孔を含むフラットケーブルの外周に、フラットケーブルの前端部に向かって先細りとなる抜きテーパが設けられた合成樹脂製の成形部が全周に亘って一体成形されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたフラットケーブル防水コネクタは、成形部の全長にわたってフラットケーブルに透孔が設けられているので、フラットケーブルが引っ張られる方向に外力が作用した場合、成形部の全長にわたって外力が作用することによって、成形部の全長にわたってフラットケーブルとの密着力が低下してしまい、結果的に防水性能が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フラットケーブルに引っ張り力が作用する場合であっても、防水性能の低下を防ぐことができるフラットケーブル防水コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1にかかるフラットケーブル防水コネクタは、導体配線が絶縁フィルムによって被覆される絶縁被覆部を有してなるフラットケーブルと、前記導体配線に接合される端子と、前記端子と接続相手端子とが接続されるように接続相手コネクタに嵌合されるコネクタハウジングとを有してなるフラットケーブル防水コネクタにおいて、前記導体配線と前記端子との接合部を覆うように前記フラットケーブルの延在方向端部に一体成形されてなる樹脂モールド部を有し、前記樹脂モールド部は、前記接合部を覆う防水モールド部および前記防水モールド部に比して前記フラットケーブルの延在方向奥側で前記フラットケーブルを覆う保持モールド部を有してなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2にかかるフラットケーブル防水コネクタは、上記の発明において、前記防水モールド部は、前記コネクタハウジングの内部壁面に密着されるシール部を有してなり、前記保持モールド部は、前記コネクタハウジング内に嵌め込まれる形状を有してなり、前記フラットケーブルは、前記絶縁被覆部に形成された開口であり、かつ前記保持部に覆われる位置に配置される開口部、あるいは前記絶縁被覆部の短手方向で向かい合う両側端部に形成された切り欠きであり、かつ前記保持部に少なくとも一部が覆われる位置に配置される一対の切り欠き部を有してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3にかかるフラットケーブル防水コネクタは、上記の発明において、前記一対の切り欠き部の各切り欠き部は、前記絶縁被覆部の短手方向で向かい合う側端部の各側端部に形成された矩形状の切り欠きであり、前記保持モールド部は、前記フラットケーブルの延在方向に交わる方向の各切り欠き部の一辺を覆うように形成されてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4にかかるフラットケーブル防水コネクタは、上記の発明において、前記フラットケーブルは、複数の前記導体配線を有してなり、前記開口部は、前記複数の導体配線の各導体配線の間に配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5にかかるフラットケーブル防水コネクタは、上記の発明において、前記シール部は、該防水モールド部の外周に沿って配置され、弾性を有してなる環状シール部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1にかかるフラットケーブル防水コネクタは、前記導体配線と前記端子との接合部を覆うように前記フラットケーブルの延在方向端部に一体成形されてなる樹脂モールド部を有し、前記樹脂モールド部は、前記接合部を覆う防水モールド部および前記防水モールド部に比して前記フラットケーブルの延在方向奥側で前記フラットケーブルを覆う保持モールド部を有してなるので、前記保持モールド部に対して引っ張り力が作用し易くなる。一方、前記防水モールド部に対して引っ張り力が作用し難くなる。このため、前記防水モールド部と前記フラットケーブルとの剥離を防ぎ、結果的に前記フラットケーブルに引っ張り力が作用する場合であっても、防水性能の低下を防ぐことができる。
【0013】
本発明の請求項2にかかるフラットケーブル防水コネクタは、前記防水モールド部が、前記コネクタハウジングの内部壁面に密着されるシール部を有してなり、前記保持モールド部が、前記コネクタハウジング内に嵌め込まれる形状を有してなり、前記フラットケーブルは、前記絶縁被覆部に形成された開口であり、かつ前記保持モールド部に覆われる位置に配置される開口部、あるいは前記絶縁被覆部の短手方向で向かい合う両側端部に形成された切り欠きであり、かつ前記保持モールド部に少なくとも一部が覆われる位置に配置される一対の切り欠き部を有してなるので、前記保持モールド部を形成する樹脂が前記開口部あるいは前記切り欠き部に埋め込まれ、この埋め込まれた樹脂によって前記フラットケーブルが引っ張り力に対して前記保持モールド部に保持されるようになっている。このため、前記保持モールド部に引っ張り力がより作用し易くなる。一方、前記防水モールド部に対して引っ張り力がより作用し難くなる。このため、前記防水モールド部と前記フラットケーブルとの剥離を防ぎ、結果的に前記フラットケーブルに引っ張り力が作用する場合であっても、防水性能の低下を防ぐことができる。
【0014】
本発明の請求項3にかかるフラットケーブル防水コネクタは、前記一対の切り欠き部の各切り欠き部が、前記絶縁被覆部の方向で向かい合う側端部の各側端部に形成された矩形状の切り欠きであり、前記保持モールド部が、前記フラットケーブルの延在方向に交わる方向の各切り欠き部の一辺を覆うように形成されてなるので、前記保持モールド部に覆われた前記切り欠き部の一辺が前記保持モールド部と引っ掛かる部分として機能し、前記フラットケーブルが引っ張り力に対してより強く前記保持モールド部に保持される。
【0015】
本発明の請求項4にかかるフラットケーブル防水コネクタは、前記フラットケーブルが、複数の前記導体配線を有してなり、前記開口部は、前記複数の導体配線の各導体配線の間に配置されるので、前記開口部を効率的に配置させることができる。
【0016】
本発明の請求項5にかかるフラットケーブル防水コネクタは、前記シール部が、該防水モールド部の外周に沿って配置され、弾性を有してなる環状シール部材であるので、前記防水モールド部が前記コネクタハウジングの内部壁面に確実に密着され、結果的に、防水性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタの分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示したフラットケーブルおよびフラットケーブルに接合された端子の斜視図である。
【図3】図3は、図1に示したフラットケーブル防水コネクタの要部平面図である。
【図4】図4は、図1に示したフラットケーブル防水コネクタの製造方法を示した図である。
【図5】図5は、図1に示したフラットケーブル防水コネクタの製造方法を示した図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態の変形例のフラットケーブル防水コネクタを示した分解斜視図である。
【図7】図7は、図6に示したフラットケーブルおよびフラットケーブルに接合された端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明にかかるフラットケーブル防水コネクタの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタ1の分解斜視図である。図2は、図1に示したフラットケーブル10およびフラットケーブル10に接合された端子20の斜視図である。図3は、図1に示したフラットケーブル防水コネクタ1の要部平面図である。
なお、便宜上、図中の互いに直交する矢印の方向を前後左右上下方向とする。
フラットケーブル防水コネクタ1は、図1に示すように、フラットケーブル10、三つの端子20、樹脂モールド部30、およびコネクタハウジング50を有してなる。
【0020】
まず、図2を用いてフラットケーブル10について説明する。
フラットケーブル10は、導体部11および絶縁被覆部12を有してなる。
導体部11は、銅あるいは銅合金等からなり、かつ可撓性を有する導体配線11aを三本有してなる。これら三本の導体配線11aの各導体配線11aは、端子20の並列間隔に応じて並設されている。
なお、この実施の形態では、導体部11が三本の導体配線11aを有してなるものを例示したが、これに限らない。すなわち、導体配線11aの数は一本以上であればよい。
【0021】
絶縁被覆部12は、導体部11がポリプロピレン等の絶縁フィルム12bによって被覆された部分である。
この絶縁被覆部12は、一対の切り欠き部13および開口部14を有してなる。一対の切り欠き部13は、絶縁被覆部12の短手方向で向かい合う両側端部12a、かつ後述する保持モールド部32に少なくとも一部が覆われる位置に配置された矩形状の切り欠きである。より具体的には、一対の切り欠き部13の各切り欠き部13は、フラットケーブル10の延在方向に交わる方向の切り欠き部13の一辺13aが保持モールド部32によって覆われるようになっている。
開口部14は、絶縁被覆部12に形成された開口であり、かつ後述する保持部に覆われる位置に配置される。この実施の形態では、開口部14は、三本の導体配線11aの各導体配線11a間に1箇所ずつ、計2箇所に配置される。
【0022】
このような、フラットケーブル10は、図2に示すように、導体部11が絶縁フィルム12bによって平板状に被覆されることによって可撓性を有するようになっている。また、このフラットケーブル10は、端子20と接続される側の端部である延在方向端部12cの絶縁フィルム12bが除去され、各導体配線11aが露出された状態になっており、この露出された各導体配線11aに各端子20が接合されるようになっている。
【0023】
次に、三つの端子20について説明する。
三つの端子20の各端子20は、導体配線11aに対応した形状をなし、各導体配線11aに超音波溶接、圧着等の方法によって接合される。この実施の形態では、各端子20が雄型端子であり、導体配線11aと接合される側の端部20aと対向する端部20bが図示しない相手接続端子に接続されるようになっている。
なお、この実施の形態では、フラットケーブル防水コネクタ1が、三つの端子20を有してなるものを例示したが、これに限らない。すなわち、端子20は導体配線11aの本数に応じた数だけ設ければよい。
【0024】
次に、コネクタハウジング50について説明する。
コネクタハウジング50は、対向する両端のうち一端側から端子20と図示しない接続相手端子とが接続されるように図示しない接続相手コネクタが嵌合され、他端側から樹脂モールド部30が挿入されるものである。
このコネクタハウジング50は、図示しない相手接続コネクタと嵌合される第一の嵌合部51と、樹脂モールド部30と嵌合する第二の嵌合部52とを有してなる。
【0025】
第一の嵌合部51は、横断面の外形が長円形状の筒状をなし、内部に図示しない接続相手コネクタが嵌入されるようになっている。すなわち、図示しない接続相手コネクタが第一の嵌合部51に嵌入されることによって、端子20が図示しない接続相手端子に接続されるようになっている。
【0026】
第二の嵌合部52は、横断面の外形が矩形状の筒状をなし、内部に樹脂モールド部30が嵌入されるようになっている。この第二の嵌合部52は、ガイド切り欠き部52aおよびハウジング開口部52bを有してなる。
ガイド切り欠き部52aは、第二の嵌合部52の上壁52cに開口端52dから上壁52c内側に向けて形成された矩形状の切り欠きである。このガイド切り欠き部52aは、第二の嵌合部52の上壁52cの2箇所に形成されてなる。各ガイド切り欠き部52aは、樹脂モールド部30がコネクタハウジング50内に挿入される際、樹脂モールド部30の後述する各上部突起部42をガイドするようになっている。
ハウジング開口部52bは、第二の嵌合部52の両側壁52eに形成された一対の開口である。このハウジング開口部52bは、樹脂モールド部30の後述する各側部突起部43に係合するようになっている。
【0027】
なお、コネクタハウジング50の形状は、第一の嵌合部51の横断面の外形が長円形状の筒状をなし、第二の嵌合部52の横断面の外形が矩形状の筒状をなすものを例示したが、これに限らない。すなわち、対向する両端のうち一端側から端子20と図示しない接続相手端子とが接続されるように図示しない接続相手コネクタが嵌合され、他端側から樹脂モールド部30が挿入される形状を有していればその他の形状であってもよい。
【0028】
次に、樹脂モールド部30について説明する。
樹脂モールド部30は、導体配線11aと端子20との接合部60を覆うようにフラットケーブル10の延在方向端部12cに一体成形されてなる。
この樹脂モールド部30は、接合部60を覆う防水モールド部31および防水モールド部31に比してフラットケーブル10の延在方向奥側でフラットケーブル10を覆う保持モールド部32を有してなる。
【0029】
防水モールド部31は、シール部材保持部31aを有してなる。
シール部材保持部31aは、防水モールド部31の外周に沿って形成された溝部であり、ゴム材等からなり弾性を有する環状シール部材33が嵌め込まれる部分である。環状シール部材33は、コネクタハウジング50の内部壁面52fに密着され、シール部として、コネクタハウジング50と防水モールド部31との間を密着して塞ぐものである。
【0030】
保持モールド部32は、フラットケーブル10が保持される部分である。この
保持モールド部32は、コネクタハウジング50内に嵌め込まれる形状を有してなる。より具体的には、樹脂モールド部30の後端縁30aに沿って立設され、横断面の外形が矩形状のフランジ状壁41と、このフランジ状壁41の上縁面41aの2箇所に上縁面41aから突起された上部突起部42と、フランジ状壁41の両側縁面41bからと突起された一対の側部突起部43とを有してなる。
【0031】
2箇所の上部突起部42各上部突起部42は、コネクタハウジング50の各ガイド切り欠き部52aに対応したほぼ直方体形状をなしている。このような各上部突起部42が各ガイド切り欠き部52aにガイドされることによって樹脂モールド部30がコネクタハウジング50内に位置決めされながら挿入されるようになっている。
【0032】
一対の側部突起部43の各側部突起部43は、ほぼランス形状をなし、コネクタハウジング50の各ハウジング開口部52bに係合するようになっている。このような各側部突起部43と各ハウジング開口部52bとが係合することによって、コネクタハウジング50内の所定位置で樹脂モールド部30が固定されるようになっている。すなわち、各側部突起部43と各ハウジング開口部52bとが係合することによって、樹脂モールド部30が、コネクタハウジング50内の所定位置に固定されるようになっている。
【0033】
また、保持モールド部32は、図3に示すように、フラットケーブル10の2箇所に形成された開口部14を覆うように形成されてなる。さらに保持モールド部32は、フラットケーブル10の延在方向に交わる方向の各切り欠き部13の一辺13aを覆うように形成されてなる。
【0034】
このように、保持モールド部32が防水モールド部31に比してフラットケーブル10の延在方向奥側でフラットケーブル10を覆うので、保持モールド部32に対して引っ張り力が作用し易くなる。一方、防水モールド部31に対して引っ張り力が作用し難くなる。
また、保持モールド部32に覆われる位置に2箇所の開口部14が配置されているので、保持モールド部32を形成する樹脂が各開口部14に埋め込まれ、この埋め込まれた樹脂によってフラットケーブル10が引っ張り力に対して保持モールド部32に保持されるようになっている。このため、保持モールド部32に対して引っ張り力がより作用し易くなり、防水モールド部31に対して引っ張り力がより作用し難くなっている。
また、保持モールド部32が各切り欠き部13を形成する辺のうち、フラットケーブル10の延在方向に交わる方向の一辺13aを覆うように樹脂が形成されるので、保持モールド部32に覆われた各切り欠き部13の一辺13aが保持モールド部32に引っ掛かる部分として機能し、フラットケーブル10が引っ張り力に対して保持モールド部32に保持されるようになっている。
【0035】
次に、図4および図5を用いてフラットケーブル防水コネクタ1の製造方法について説明する。図4および図5は、図1に示したフラットケーブル防水コネクタ1の製造方法を示した図である。
まず、作業者は、フラットケーブル10の延在方向端部12cの絶縁フィルム12bを除去し、各導体配線11aの端部を露出させ、この露出された各導体配線11aの端部と各端子20とを超音波溶接、圧着等の方法によって接合する(図4(a)参照)。
【0036】
その後、作業者は、各導体配線11aと各端子20の接合部60を覆うように樹脂モールド部30をフラットケーブル10の延在方向端部12cに一体成形する(図4(b)参照)。この樹脂モールド部30がフラットケーブル10の延在方向端部12cに一体成形されることによって、保持モールド部32を形成する樹脂が、各開口部14に埋め込まれ、かつ切り欠き部13を形成する辺のうち、フラットケーブル10の延在方向に交わる方向の一辺13aを覆うようになっている。
【0037】
その後、作業者は、環状シール部材33をシール部材保持部31aに嵌め込む(図4(c)参照)。
【0038】
その後、作業者は、樹脂モールド部30をコネクタハウジング50内に挿入する(図5(d)参照)。この樹脂モールド部30のコネクタハウジング50内への挿入の際、各上部突起部42が各ガイド切り欠き部52aにガイドされることによって樹脂モールド部30がコネクタハウジング10内に位置決めされながら挿入される。
【0039】
その後、作業者は、一対のハウジング開口部52bの各ハウジング開口部52bを、樹脂モールド部30の各側部突起部43に係合させる(図5(e)参照)。これによって、フラットケーブル防水コネクタ1が完成される。このようにフラットケーブル10がコネクタハウジング50に取り付けられることによって、防水モールド部31が、環状シール部材33を介してコネクタハウジング50の内部壁面52fに密着され、保持モールド部32が、コネクタハウジング50内に嵌め込まれてフラットケーブル10を保持するようになっている。
【0040】
本発明の実施の形態のフラットケーブル防水コネクタ1は、導体配線11aと端子20との接合部60を覆うようにフラットケーブル10の延在方向端部12cに一体成形されてなる樹脂モールド部30を有し、樹脂モールド部30が、接合部60を覆う防水モールド部31および防水モールド31部に比してフラットケーブル10の延在方向奥側でフラットケーブル10を覆う保持モールド部32を有してなるので、保持モールド部32に対して引っ張り力が作用し易くなる。一方、防水モールド部31に対して引っ張り力が作用し難くなる。このため、防水モールド部31とフラットケーブル10との剥離を防ぎ、結果的にフラットケーブル10に引っ張り力が作用する場合であっても、防水性能の低下を防ぐことができる。
【0041】
また、本発明の実施の形態のフラットケーブル防水コネクタ1は、防水モールド部31が、コネクタハウジング50の内部壁面52fに密着される環状シール部材33を有してなり、保持モールド部32が、コネクタハウジング50内に嵌め込まれる形状を有してなり、フラットケーブル10が、絶縁被覆部12に形成された開口であり、かつ保持モールド部32に覆われる位置に配置される開口部14、あるいは絶縁被覆部12の短手方向で向かい合う両側端部に形成された切り欠きであり、かつ保持モールド部32に少なくとも一部が覆われる位置に配置される一対の切り欠き部13を有してなるので、保持モールド部32を形成する樹脂が開口部14あるいは切り欠き部13に埋め込まれ、この埋め込まれた樹脂によってフラットケーブル10が引っ張り力に対して保持モールド部32に保持されるようになっている。このため、保持モールド部32に引っ張り力がより作用し易くなる。一方、防水モールド部31に対して引っ張り力がより作用し難くなる。このため、防水モールド部31とフラットケーブル10との剥離を防ぎ、結果的にフラットケーブル10に引っ張り力が作用する場合であっても、防水性能の低下を防ぐことができる。
【0042】
また、本発明の実施の形態のフラットケーブル防水コネクタ1は、一対の切り欠き部13の各切り欠き部13が、絶縁被覆部12の短手方向で向かい合う側端部12aの各側端部12aに形成された矩形状の切り欠きであり、保持モールド部32が、フラットケーブル10の延在方向に交わる方向の各切り欠き部13の一辺を覆うように形成されてなるので、保持モールド部32に覆われた切り欠き部13の一辺が保持モールド部32と引っ掛かる部分として機能し、フラットケーブル10が引っ張り力に対してより強く前記保持モールド部32に保持される。
【0043】
また、本発明の実施の形態のフラットケーブル防水コネクタ1は、フラットケーブル10が、3本の導体配線11aを有してなり、開口部14は、3本の導体配線11aの各導体配線11aの間に配置されるので、開口部14を効率的に配置させることができる。
【0044】
また、本発明の実施の形態のフラットケーブル防水コネクタ1は、弾性を有してなる環状シール部材33が防水モールド部31の外周に沿って配置されるので、防水モールド部31がネクタハウジング50の内部壁面52fに確実に密着され、結果的に、防水性能を高めることができる。
【0045】
(変形例)
ここで、図6および図7を用いて本発明の実施の形態の変形例について説明する。図6は、本発明の実施の形態の変形例のフラットケーブル防水コネクタ2を示した分解斜視図である。図7は、図6に示したフラットケーブル70およびフラットケーブル70に接合された端子20の斜視図である。
本発明の実施の形態のフラットケーブル防水コネクタ1は、開口部14が各導体配線11a間に1箇所ずつ、計2箇所に形成されてなるものを例示したが、この変形例のフラットケーブル防水コネクタ2では、開口部71が、絶縁被覆部12の短手方向で向かい合う両側端部12aに配置される点で実施の形態のフラットケーブル防水コネクタ1と異なる。
なお、その他の構成は実施の形態と同様であり、実施の形態と同一構成部分には同一符号を付している。
このようなフラットケーブル防水コネクタ2は、各開口部71が保持モールド部32に覆われる位置に配置されているので、すなわち保持モールド部32を形成する樹脂が各開口部71に埋め込まれ、この埋め込まれた樹脂によってフラットケーブル10が引っ張り力に対して保持モールド部32に保持されるようになっているので実施の形態と同様な効果を奏することができる。
【0046】
なお、本発明の実施の形態のフラットケーブル防水コネクタ1,2は、保持モールド部32が樹脂モールド部30の後端縁30aに沿って立設され、横断面の外形が矩形状のフランジ状壁41と、このフランジ状壁41の上縁面41aの2箇所に上縁面41aから突起された上部突起部42と、フランジ状壁41の両側縁面41bからと突起された一対の側部突起部43とを有してなるものを例示したが、これに限らない。すなわち、フラットケーブル10,70の延在方向で防水モールド部31に比してフラットケーブル10の延在方向端部12cから離れて配置され、コネクタハウジング50内に嵌め込まれる形状を有してなることによってフラットケーブル10,70を保持することができればその他の形状であってもよい。
【0047】
また、本発明の実施の形態のフラットケーブル防水コネクタ1,2は、フラットケーブル10,70が切り欠き部13および開口部14,71を有してなるものを例示したが、これに限らない。すなわち、フラットケーブル10,70が、保持モールド部32に保持されていればよい。
【0048】
また、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタ1,2は、矩形状の切り欠き部13を有するものを例示したが、これに限らず、その他の形状の切り欠きを形成してもよい。例えば、U字状の切り欠きであってもよい。
【0049】
また、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタ1,2は、保持モールド部32によって各切り欠き部13の一部が覆われるものを例示したが、これに限らない。例えば、切り欠き部13の全体が保持モールド部32に覆われるようにしてもよい。この場合、切り欠き部13に埋め込まれた保持モールド部32の樹脂が引っ張り力に対してフラットケーブル10,70を保持モールド部32に保持するように機能する。
【0050】
また、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタ1,2は、開口部14,71が各導体配線11a間に1箇所ずつ、計2箇所に形成されてなるものを例示したが、開口部14,71の数はこれに限らない。すなわち、開口部14,71が少なくとも1箇所に設けられていればよい。例えば、開口部14,71が導体配線11a間の1箇所のみ形成されるようにしてもよい。
【0051】
また、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブル防水コネクタ1,2は、防水モールド部31の外周に沿って形成されたシール部材保持部31aに環状シール部材33が嵌め込まれるものを例示したが、これに限らない。すなわち、防水モールド部31が防水機能を有していればよい。例えば、防水モールド部31が、隙間の埋め込み性を有する材料からなるものであれば、環状シール部材33を有さなくてもよい。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
1、2 フラットケーブル防水コネクタ
10、70 フラットケーブル
11 導体部
11a 導体配線
12 絶縁被覆部
12a 側端部
12b 絶縁フィルム
12c 延在方向端部
13 切り欠き部
13a 一辺
14、71 開口部
20 端子
20a、20b 端部
30 樹脂モールド部
31 防水モールド部
31a シール部材保持部
32 保持モールド部
30a 後端縁
33 環状シール部材
41 フランジ状壁
41a 上縁面
41b 側縁面
42 上部突起部
43 側部突起部
50 コネクタハウジング
51 第一の嵌合部
52 第二の嵌合部
52a ガイド切り欠き部
52b ハウジング開口部
52c 上壁
52d 開口端
52e 側壁
52f 内部壁面
60 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体配線が絶縁フィルムによって被覆される絶縁被覆部を有してなるフラットケーブルと、前記導体配線に接合される端子と、前記端子と接続相手端子とが接続されるように接続相手コネクタに嵌合されるコネクタハウジングとを有してなるフラットケーブル防水コネクタにおいて、
前記導体配線と前記端子との接合部を覆うように前記フラットケーブルの延在方向端部に一体成形されてなる樹脂モールド部を有し、
前記樹脂モールド部は、
前記接合部を覆う防水モールド部および前記防水モールド部に比して前記フラットケーブルの延在方向奥側で前記フラットケーブルを覆う保持モールド部を有してなることを特徴とするフラットケーブル防水コネクタ。
【請求項2】
前記防水モールド部は、
前記コネクタハウジングの内部壁面に密着されるシール部を有してなり、
前記保持モールド部は、
前記コネクタハウジング内に嵌め込まれる形状を有してなり、
前記フラットケーブルは、
前記絶縁被覆部に形成された開口であり、かつ前記保持モールド部に覆われる位置に配置される開口部、あるいは前記絶縁被覆部の短手方向で向かい合う両側端部に形成された切り欠きであり、かつ前記保持モールド部に少なくとも一部が覆われる位置に配置される一対の切り欠き部を有してなることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル防水コネクタ。
【請求項3】
前記一対の切り欠き部の各切り欠き部は、
前記絶縁被覆部の短手方向で向かい合う側端部の各側端部に形成された矩形状の切り欠きであり、
前記保持モールド部は、
前記フラットケーブルの延在方向に交わる方向の各切り欠き部の一辺を覆うように形成されてなることを特徴とする請求項2に記載のフラットケーブル防水コネクタ。
【請求項4】
前記フラットケーブルは、
複数の前記導体配線を有してなり、
前記開口部は、
前記複数の導体配線の各導体配線の間に配置されることを特徴とする請求項2、3または4に記載のフラットケーブル防水コネクタ。
【請求項5】
前記シール部は、
該防水モールド部の外周に沿って配置され、弾性を有してなる環状シール部材であることを特徴とする請求項2、3、または4に記載のフラットケーブル防水コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−38040(P2013−38040A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175614(P2011−175614)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】