説明

フラットケーブル

【課題】コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性が良好なフラットケーブルを提供する。
【解決手段】接続部材21の複数の接続端子23は、接続導体部24が0.3mm以下のピッチで配列された平角導体2からなる接続電極12と同一ピッチで配列され、幅広部25が配列方向に直交する方向へ交互にずらされて互いに隙間をあけて千鳥状に配置され、接続電極12と接続導体部24とが導電性ペースト15を介して導通接続され、補強基材14と接続基材22とが接着剤16によって接着され、接続電極12及び接続導体部24はその幅寸法W1,W4以下の範囲で導電性ペースト15に接触し、接着剤16は、その一部が接続電極12と接続導体部24の導電性ペースト16が塗布されていない部分に接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器などの配線に用いられるフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
限られたスペースで高密度の配線が可能な配線部材として、所定の間隔を隔てて配列された複数の錫メッキ軟銅箔からなる導体と、導体を両面から挟むように一体的に固定する絶縁性テープとからなる被覆部を有するフラットケーブルが用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたフラットケーブルでは、導体の配列ピッチが0.3mm以下とされている。
【0003】
また、導体のそれぞれに、長手方向に沿って幅広部と幅狭部とが形成されており、隣り合っている導体同士では、一方の導体の幅広部と他方の導体の幅狭部とが隣り合っている部分を有すると共に、一方の導体の幅狭部と他方の導体の幅広部とが隣り合っている部分を有するフラットケーブルも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−208821号公報
【特許文献2】特開2004−319247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のフラットケーブルは、その端部で導体が露出されて接続電極部とされ、この導体からなる接続電極部を有する接続部にコネクタが接続される。すると、コネクタの接続端子がフラットケーブルの導体からなる接続電極部に押し付けられて電気的に導通される。
【0006】
ところが、近年では、特許文献1に記載のフラットケーブルのように、例えば、0.3mm以下の狭ピッチの導体ピッチを有するものが要求されており、このような狭ピッチのフラットケーブルでは、端末で露出された導体からなる接続電極部とコネクタの接続端子とが位置ずれして接続不良が生じるおそれがある。
【0007】
この場合、特許文献2に記載のフラットケーブルのように、導体のそれぞれに、長手方向に沿って幅広部と幅狭部とを形成し、この幅広部を、コネクタの接続端子が接触される接続電極部とすれば、コネクタの接続端子との接続の向上を図ることができる。
しかし、長手方向に沿って幅広部と幅狭部とが形成された導体を配列させたフラットケーブルは、その製造時に、高精度に導体を配列しなければならず、製造が困難であり、コストアップを招いてしまう。
【0008】
本発明の目的は、コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性が良好なフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することのできる本発明のフラットケーブルは、平面上に配列された複数本の導体にその配列面の両面から絶縁フィルムが貼り合わされ、端部に接続部材が貼り付けられたフラットケーブルであって、前記端部で前記導体の一方側の面が基材で覆われ、他方側の面が前記絶縁フィルムに覆われずに接続電極とされ、
前記導体は、0.3mm以下のピッチで並列され、
前記接続部材は、絶縁材からなる接続基材と、前記接続基材の一方の面に並列に配置された複数の接続端子とを備え、
前記接続端子は、前記導体よりも大きな幅寸法を有する幅広部と、前記幅広部よりも小さい幅寸法を有する接続導体部とからなり、
複数の前記接続端子は、前記接続導体部が前記導体と同一ピッチで配列され、前記幅広部が配列方向に直交する方向へ交互にずらされて互いに隙間をあけて千鳥状に配置され、
前記接続電極と前記接続端子の前記接続導体部とが導電性ペーストを介して導通接続され、
前記基材と前記接続基材とが接着剤によって接着されてなり、
前記接続電極及び前記接続導体部はその幅寸法以下の範囲で前記導電性ペーストに接触し、
前記接着剤は、その一部が前記接続電極と前記接続導体部の前記導電性ペーストが塗布されていない部分に接触していることを特徴とする。
【0010】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記接着剤が、その一部が前記接続電極と前記接続端子との間に充填され、前記接続電極と前記接続端子とが前記接着剤で接着されていることが好ましい。
【0011】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記接続基材が透明であることが好ましい。
【0012】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記接続基材の前記接続端子が並列されている前記一方の面と反対側の面に補強材が貼られていることが好ましい。
【0013】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記基材が補強材であって、前記補強材が前記接続電極の端部と前記導電性ペーストの端部を覆っていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフラットケーブルによれば、接続部材の接続端子に、導体よりも大きな幅寸法に形成された幅広部があり、その幅広部が配列方向に直交する方向へ交互にずらされて互いに隙間をあけて千鳥状に配置されているので、導体のピッチが狭ピッチであったとしても、コネクタの端子を接続端子の幅広部へ確実に接触させて導通させることができる。
これにより、コネクタの接続端子との確実な導通を確保するために複雑形状の導体を高精度に配置した構造のフラットケーブルと比較して、コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性を高めることができる。
【0015】
また、接続電極と接続端子とが導電性ペーストを介して導通されているので、接続部における接続部材と導通不良がない。接続電極と接続端子との間の導電性ペーストがない部分に接着剤が充填されて接続電極と接続端子が接着されると接着がより強固となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】フラットケーブルの一実施形態を示す平面図である。
【図2】フラットケーブルの側断面図である。
【図3】フラットケーブルの一端における側断面図である。
【図4】フラットケーブルの一端における横断面図である。
【図5】図3におけるA矢視図である。
【図6】接続部材の平面図である。
【図7】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の側断面図である。
【図8】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の側断面図である。
【図9】フラットケーブルの製造方法を説明する斜視図である。
【図10】フラットケーブルを製造する途中の長尺フラットケーブルの平面図である。
【図11】製造途中のフラットケーブルの平面図である。
【図12】製造途中のフラットケーブルの側断面図である。
【図13】異なる製造方法での製造途中のフラットケーブルの側断面図である。
【図14】異なる製造方法での製造途中のフラットケーブルの側断面図である。
【図15】製造途中のフラットケーブルの一端における側断面図である。
【図16】製造途中のフラットケーブルの一端における横断面図である。
【図17】フラットケーブルへの導電性ペースト及び接着剤の転写工程を説明する横断面図である。
【図18】フラットケーブルへの導電性ペースト及び接着剤の転写工程を説明する横断面図である。
【図19】フラットケーブルへの接続部材の接続について説明する接続部の横断面図である。
【図20】フラットケーブルへの接続部材の接続について説明する接続部の側断面図である。
【図21】接続電極と接続端子の接続導体部との接続箇所における導体ペースト及び接着剤を示す図であって、(a)及び(b)は、それぞれ拡大断面図である。
【図22】接続部材の作製方法を説明する平面図である。
【図23】他の構造のフラットケーブルの側断面図である。
【図24】他の構造のフラットケーブルの一端における側断面図である。
【図25】端部に補強材を貼り付けた他の構造のフラットケーブルの一端における側断面図である。
【図26】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の側断面図である。
【図27】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るフラットケーブルの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、フラットケーブル1は、例えば、銅(メッキされた銅を含む)または銅合金の圧延銅箔からなる複数本の平角導体2を備えている。これらの平角導体2は、所定の並列ピッチで平面上に配列されており、平角導体2の配列面の両面にそれぞれ絶縁フィルム3a,3bが貼着(ラミネート)されている。このフラットケーブル1は、平角導体2の並列ピッチが0.3mm以下の狭い狭ピッチのフラットケーブルであり、本例では、平角導体2の幅寸法が0.2mmとされ、並列ピッチが0.3mmとされている。
【0018】
なお、図1では平角導体2を4本有する例を示しているが、平角導体2の本数は適宜変更される。例えば、平角導体2を20本とすることもできる。また、平角導体2の幅寸法、厚さ寸法及び並列ピッチは電流値等に合わせて設定される。
【0019】
絶縁フィルム3a,3bは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリイミドあるいはポリフェニレンサルファイド等の樹脂から形成された基材部分とポリエステル系接着剤または難燃ポリ塩化ビニル系の絶縁性接着剤や難燃ポリオレフィンなどからなる接着層を有している。平角導体2に対して、接着層の面を対向させて2枚の絶縁フィルム3a,3bが貼り合わされている。これにより、平角導体2同士の電気的絶縁を図っている。この絶縁フィルム3a,3bの厚さは、それぞれ0.02mm以上0.15mm以下とすることが好ましい。
【0020】
図1から図4に示すように、フラットケーブル1の長手方向の両端部でフラットケーブル1に接続部材21が接続されている。
フラットケーブル1の端部(接続部)11では、絶縁フィルム3a,3bから平角導体2の一部が突き出ている。これらの突き出た平角導体2が接続電極12とされている。端部11では、接続電極12にその配列面の一方から補強基材(基材)14が貼り付けられており、これにより、平角導体2の接続電極12は、補強基材14上に並列に配置されている。補強基材14には、端部11への貼り付け側に接着剤が塗布されている。それにより、この補強基材14は、一方の絶縁フィルム3aの端部及び接続電極12に接着されている。補強基材14は、ポリエチレンテレフタレート等の絶縁樹脂から形成されたものであり、その厚さは0.03mm以上0.30mm以下とすることが好ましい。この補強基材14を構成する絶縁樹脂としては、透明樹脂が用いられている。これにより、補強基材14は、透明なものとされている。なお、補強基材14に塗布された接着剤としては、ポリエステル系接着剤が用いられる。
【0021】
端部11には、接続部材21が接続されている。この接続部材21は、例えば、フラットケーブル、フレキシブルプリント基板あるいは硬質基板等からなるものであり、絶縁材から形成された接続基材22と、この接続基材22に設けられた複数の接続端子23とを備えている。
【0022】
図5及び図6に示すように、接続端子23は、銅箔からなるものであり、その表面には、錫メッキまたは金メッキが施されている。これらの接続端子23は、直線状の接続導体部24と幅広部25とを有している。
【0023】
接続導体部24は、接続電極12の幅寸法W1と略同一幅寸法W4を有しており、また、その配列のピッチも接続電極12のピッチと同一とされている。つまり、本例では、接続導体部24は、幅寸法が0.2mmとされ、並列ピッチが0.3mmとされている。
【0024】
幅広部25は、接続導体部24の幅寸法W4よりも大きな幅寸法W3を有している。また、それぞれの幅広部25は、配列方向と直交する方向へ交互に位置がずらされており、これにより、これらの幅広部25は、接続基材22上において、互いに隙間をあけて千鳥状に配置されている。ある接続導体部24の幅広部25に隣接する接続導体部24は、当該幅広部25に隣接する部分で幅が細くなっている。
【0025】
接続部材21は、端部11に接続される接着部21aと、コネクタ27に挿抜される挿抜部21bとを有しており、幅広部25は、挿抜部21bに配置されている。
【0026】
接続部材21は、その接着部21aが端部11に重ね合わされることにより、接続電極12と接続端子23の接続導体部24とが導電性ペースト15によって導通され、また、補強基材14と接続基材22とが接着剤16によって接着されている。導電性ペースト15は、接続電極12及び接続導体部24の配列方向の幅寸法W2が接続電極12及び接続導体部24の幅寸法W1,W4よりも小さくなるように塗布されている。これにより、接続電極12または接続導体部24の幅方向の端部(肩部12a,24a)は導電性ペースト15が塗布されていない。接着剤16の一部は、導電性ペースト15が塗布されていない肩部12a,24aにも行き渡る。これにより、接続電極12及び接続導体部24が導電性ペーストと接触する部分は、それぞれの幅寸法以下の範囲となる。そして、接続電極12間および接続導体部24間には接着剤16が充填され、それらが導電性ペースト15を介して短絡することがない。
【0027】
なお、図7に示すように、補強材14を絶縁フィルム3aから接続部材21に亘って貼って、補強材14で接続電極12の端部と導電性ペースト15の端部を覆い、それらを保護してもよい。それにより、導電性ペースト15の剥離を防ぐことができる。
【0028】
また、図8に示すように、接続部材21に補強材14を貼ってもよい。補強材14の厚さを調整して接続部材21の厚さをコネクタ27の開口の厚さに合わせる。これにより接続部材21がコネクタ27にしっかりと嵌合されるようになる。
【0029】
導電性ペースト15は、導電粒子と接着剤とから構成されている。導電粒子としては、例えば、銀粉末、カーボン粉末、銅粉末、ニッケル粉末、あるいはこれらの混合粉末などが使用可能である。この導電性ペースト15を構成する接着剤としては、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等のいずれかが使用可能である。特に、導電性ペースト15としては、平均粒径0.5〜5μmの鱗片状銀粉末と、表面に有機物がコーティングされた、平均粒径20nm以下の球状銀粉末とを含む銀ペーストを採用するのが好ましい。銀ペースト中にナノ銀粒子を含有させることにより、接続抵抗が下がり、また、表面の凹凸も小さくなって接続面積が大きくなる。このため、電気的接続の信頼性が向上する。
【0030】
また、接着剤16としては、例えば、約100〜170℃の溶融温度を備えるポリエステル系やポリアミド系ホットメルト接着剤が用いられている。この接着剤16としては、十条ケミカル株式会社製JELCONAD−HM6、東亜合成株式会社製PES310S30、同社製PES375S40等を採用することができる。
【0031】
上記実施形態に係るフラットケーブル1では、図3及び図5に示すように、端部11に接続された接続部材21の挿抜部21bをコネクタ27へ挿し込むことにより、コネクタ27のハウジング28内に収容された接続端子29が接続部材21の接続端子23を構成する幅広部25に圧接して導通する。コネクタ27は、その接続端子29が、接続端子23の幅広部25と同様に、配列方向に直交する方向へ交互にずらされて互いに千鳥状に配置されている。
【0032】
そして、コネクタ27に接続部材21を挿し込んで接続するとき、接続部材21の接続端子23には、平角導体2よりも大きな幅寸法W3に形成された幅広部25が、配列方向に直交する方向へ交互にずらされて互いに隙間をあけて千鳥状に配置されているので、フラットケーブル1の平角導体2のピッチが0.3mm以下の狭ピッチであったとしても、コネクタ27の接続端子29を接続端子23の幅広部25へ確実に接触させて導通させることができる。
【0033】
また、接着剤16の一部が、接続電極12と接続端子23の接続導体部24との間に充填されると、接続電極12及び接続導体部24の導電性ペースト15がない肩部12a,24a同士が接着剤16によって接着されているので、フラットケーブル1と接続部材21の接着不良をなくすことができる。
【0034】
接続部材21の接続端子23は、金メッキを施すのが好ましい。接続端子23に金メッキを施せば、コネクタ27の接続端子29と接続端子23の幅広部25との接触箇所での針状結晶体(ウィスカ)の発生を防止することができ、コネクタ27との電気接続の信頼性をさらに高めることができる。
また、本実施形態のフラットケーブル1では、接続部材21の接続端子23だけに金メッキを施すことができるので、フラットケーブル1の平角導体2を金メッキすることによる無駄をなくし、さらなるコストダウンを図ることができる。
【0035】
次に、上記構造のフラットケーブル1を製造する方法について説明する。
図9に示すように、それぞれ長尺の平角導体2が巻き取られている複数のリール30から平角導体2を送り出して所定の並列ピッチで同一平面上に配列する。そして、これらの平角導体2の配列面の表裏に、リール31から長尺の絶縁フィルム3a,3bを送り出してヒータローラ32間に通して絶縁フィルム3a,3bを加熱すると同時に圧着して貼り合わせて長尺フラットケーブルとする。この長尺フラットケーブルを巻き取りローラ33に巻き取る。絶縁フィルム3bの長手方向の一部に窓部35を形成する。絶縁フィルム3aにも窓部35を形成してもよい。
【0036】
次に、図10に示すように、絶縁フィルム3a,3bの幅方向の余剰部分(耳と呼ばれる部分)を除去するために、長尺フラットケーブルの鎖線C1で示す位置で切断する。これにより、窓部35の幅方向両端部で絶縁フィルム3a,3bが長手方向に繋がった箇所を除去する。
【0037】
さらに、長尺フラットケーブルを、窓部35の中央を通る鎖線C2で示す位置で切断し、所定の長さのフラットケーブル1とする。フラットケーブル1の端部では平角導体2が露出されて接続電極12となる。
絶縁フィルム3a,3bに窓部35が設けられ、それぞれの窓部35が一致するように貼り合わされると、できたフラットケーブル1の端部では、平角導体2が露出される。個片に切断されたフラットケーブル1は、図11及び図12に示すように両端で平角導体2が露出されて接続電極12となる。
【0038】
なお、予め窓部35を形成せずに長尺フラットケーブルを作製し、この長尺フラットケーブルの絶縁フィルム3a,3bの幅方向の余剰部分を除去し、さらに、切断して所定長さのフラットケーブル1とした後に、このフラットケーブル1の両端において、絶縁フィルム3a,3bの両端近傍部分を除去しても良い。
【0039】
この場合、図13に示すように、フラットケーブル1の両端近傍部分における絶縁フィルム3a,3bを、その表裏からカッタ37で切断し、図14に示すように、切断箇所よりも端部側の絶縁フィルム3a,3bを引き抜いて除去する。
【0040】
平角導体2を露出させたら、図15及び図16に示すように、フラットケーブル1の両端における一方側の面に補強基材14を貼り付ける。
【0041】
このように、補強基材14を貼り付けたら、平角導体2からなる接続電極12に、上方側から導電性ペースト15を塗布し、補強基材14の接続電極12の両側方に接着剤16を塗布する。これらの導電性ペースト15及び接着剤16は、直接印刷により塗布したり、転写によって接続部11に塗布したりすることができる。
【0042】
次に、導電性ペースト15及び接着剤16をフラットケーブル1の接続部11へ転写する転写工程を説明する。
図17に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂から形成された転写用の離型フィルム51に、所定のピッチで導電性ペースト15を塗布するとともに、離型フィルム51の導電性ペースト15の側部に接着剤16を塗布した転写フィルム52を用意する。
【0043】
フラットケーブル1の接続部11に、転写フィルム52を重ね合わせ、クッション材53を介して定盤54上に載置させ、上方からヒートツール55を軽く押し付けて加熱する。このようにすると、導電性ペースト15の頂部が接続電極12へ押し付けられて潰されて偏平化し、また、熱によって転写フィルム52側の接着剤16が軟化して離型フィルム51から剥がれてフラットケーブル1の補強基材14または接続電極12上に降下する。
【0044】
このように転写プレスを行った後に、フラットケーブル1を取り出し、図18に示すように、転写フィルム52の離型フィルム51を剥がす。
【0045】
すると、導電性ペースト15が補強基材14と反対方向へ突出するように接続電極12に設けられ、また、接着剤16の一部が接続電極12の肩部12a上にも接着剤16が配置されたフラットケーブル1が得られる。
【0046】
このとき、接続電極12の一方側の面に補強基材14が貼り付けられているので、この補強基材14が下方側となるように配置して導電性ペースト15及び接着剤16を塗布すれば、これらの導電性ペースト15及び接着剤16が流れ落ちることが防止される。
【0047】
次に、フラットケーブル1の接続部11に、接続部材21を接続する。この接続部材21は、接続基材22と、この接続基材22に接着された複数の接続端子23とを備えている。接続端子23は、接続導体部24及び幅広部25を有しており、接続導体部24は、フラットケーブル1の接続電極12と略同一幅寸法で同一ピッチに配列されている。この接続部材21の接続端子23には、金メッキを施すのが好ましい。
【0048】
図19及び図20に示すように、接続部材21の接着部21aをフラットケーブル1の接続部11に重ね合わせる。接続電極12が接続端子23で完全に覆われるように重ね合わせる。接続電極12と接続導体部24とが導電性ペースト15によって導通され、また、補強基材14と接続基材22とが接着剤16によって接着される。また、接着剤16は、その一部が接続電極12と接続導体部24との間に行き渡り、これにより、これらの接続電極12と接続導体部24とが接着剤16によって接着される。
【0049】
フラットケーブル1の接続部11に接続部材21を貼り合わせる際には、図21(a)に示すように、まず、接着剤16よりも突出した導電性ペースト15に接続部材21の接続導体部24が当接して接続電極12と接続導体部24との導通が確保される。さらに、フラットケーブル1の接続部11へ接続部材21を押し付けると、図21(b)に示すように、導電性ペースト15が接続電極12と接続導体部24とによって挟持されて押し潰される。これにより、導電性ペースト15は、接続導体部24に対して良好に接触した状態となる。このとき、導電性ペースト15の幅寸法W2が接続電極12及び接続導体部24の幅寸法W1よりも小さい(図4参照)ので、導電性ペースト15が押し潰されて側方へ広がったとしても、隣接する接続電極12同士または隣接する接続導体部24の幅の範囲内にあるか、多少はみ出たとしても接着剤16に押さえ込まれて隣接する接続電極12または接続端子23に至らない。つまり、隣接する接続電極12間や隣接する接続端子23間を導電性ペースト15が短絡させるような不具合も防止される。
【0050】
接着剤16が接続部材21の接続導体部24間に入り込み、接続部材21の接続基材22に接触する。これにより、フラットケーブル1には、接続部材21が接着不良や短絡などの不具合なく良好に接続される。
【0051】
補強基材14が透明であるときは、接続部材21と接続する際には、この接続部材21に対して上方からフラットケーブル1を被せるように重ね合わせるのが好ましい。このようにすると、上方側からフラットケーブル1の透明な補強基材14を通して接続電極部12と接続端子23の接続導体部24との位置を目視でまたは画像データを電子機器で自動判断して位置合わせすることができる。
【0052】
また、上記の貼り付け工程では、フラットケーブル1の接続部11に導電性ペースト15及び接着剤16を塗布し、接続部11に接続部材21を重ねて貼り合わせたが、接続部材21に導電性ペースト15及び接着剤16を塗布し、この接続部材21にフラットケーブル1の接続部11を重ねて貼り合わせても良い。導電性ペースト15と接着剤16とを接続部材21に転写する方法は上述の説明と同様である。接続部材21に導電性ペースト15および接着剤16を塗布する場合は、接続基材22を透明にすると、接続電極23と接続端子12との位置合わせが容易となって好ましい。
【0053】
フレキシブルプリント基板や硬質基板から接続部材21を作製するには、図22に示すように、接続基材22となる絶縁材から形成された基板60上に、エッチング処理等によって、接続導体部24及び幅広部25を有する接続端子23となる導体パターンを形成し、その後、基板60を切断して複数の接続部材21とすれば良い。なお、接続端子23に金メッキ等のメッキ処理を施す場合は、切断前に行うのが好ましい。このように、基板60に対してエッチング処理等で導体パターンを形成すれば、複雑で精密な形状の接続端子23を高精度かつ容易に形成することができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、端部で絶縁フィルム3a,3bを除去することにより表裏が露出した平角導体2の一方側の面に補強基材14を貼り付けて接続部11を構成したが、図23及び図24に示すように、他方の絶縁フィルム3bだけを除去して平角導体2を露出させて接続電極12としても良い。この場合、端部を除去しない一方の絶縁フィルム3aが基材となる。この場合、少なくとも基材となる絶縁フィルム3aとして透明なフィルムを用いると、接続相手の配線部材21との接続時に、この絶縁フィルム3aを通して接続電極12と接続端子23の接続導体部24との位置合わせを容易にかつ高精度に行うことができる。または、接続部材21の接続基材22を透明とすることにより、絶縁フィルム3aを透明にしなくても、接続部材21を通して接続端子23の接続導体24と接続電極12との位置合わせを容易にかつ高精度に行うこともできる。
【0055】
また、図25に示すように、絶縁フィルム3aの外面側に補強材61を貼り付けて接続部11を補強してもよい。補強材61で接続部11を補強すれば、コネクタ27への挿し込み時における接続部11の変形を防止することができる。この補強材61としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等からなる透明な絶縁樹脂から形成したものが用いられる。また、絶縁フィルム3aと接着させる接着剤としては、ポリエステル系接着剤が用いられる。
【0056】
また、図26に示すように、補強材14を絶縁フィルム3aおよび接続部材21に貼って、補強材14で接続電極12の端部と導電性ペースト15の端部を覆い、それらを保護してもよい。それにより、導電性ペースト15の剥離を防ぐことができる。この補強材14としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等からなる絶縁樹脂フィルムが用いられる。また、絶縁フィルム3aと接着させる接着剤としては、ポリエステル系接着剤が用いられる。絶縁フィルム3a、補強材14、接着剤とも透明なものを使用すれば各接続電極12を透視することができて、各接続電極12と各接続端子23との位置合わせが容易にできる。
【0057】
また、図27に示すように、接続部材21に補強材14を貼ってもよい。補強材14の厚さを調整して接続部材21の厚さをコネクタ27の開口の厚さに合わせる。これにより接続部材21がコネクタ27にしっかりと嵌合されるようになる。
【符号の説明】
【0058】
1:フラットケーブル、2:平角導体(導体)、3a:絶縁フィルム(基材)、3b:絶縁フィルム、11:接続部、12:接続電極、14:補強基材(基材)、15:導電性ペースト、16:接着剤、21:接続部材、22:接続基材、23:接続端子、24:接続導体部、25:幅広部、W1,W2,W3,W4:幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上に配列された複数本の導体にその配列面の両面から絶縁フィルムが貼り合わされ、端部に接続部材が貼り付けられたフラットケーブルであって、前記端部で前記導体の一方側の面が基材で覆われ、他方側の面が前記絶縁フィルムに覆われずに接続電極とされ、
前記導体は、0.3mm以下のピッチで並列され、
前記接続部材は、絶縁材からなる接続基材と、前記接続基材の一方の面に並列に配置された複数の接続端子とを備え、
前記接続端子は、前記導体よりも大きな幅寸法を有する幅広部と、前記幅広部よりも小さい幅寸法を有する接続導体部とからなり、
複数の前記接続端子は、前記接続導体部が前記導体と同一ピッチで配列され、前記幅広部が配列方向に直交する方向へ交互にずらされて互いに隙間をあけて千鳥状に配置され、
前記接続電極と前記接続端子の前記接続導体部とが導電性ペーストを介して導通接続され、
前記基材と前記接続基材とが接着剤によって接着されてなり、
前記接続電極及び前記接続導体部はその幅寸法以下の範囲で前記導電性ペーストに接触し、
前記接着剤は、その一部が前記接続電極と前記接続導体部の前記導電性ペーストが塗布されていない部分に接触していることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のフラットケーブルであって、
前記接着剤が、その一部が前記接続電極と前記接続端子との間に充填され、前記接続電極と前記接続端子とが前記接着剤で接着されていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフラットケーブルであって、
前記接続基材が透明であることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のフラットケーブルであって、
前記接続基材の前記接続端子が並列されている前記一方の面と反対側の面に補強材が貼られていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のフラットケーブルであって、
前記基材が補強材であって、前記補強材が前記接続電極の端部と前記導電性ペーストの端部を覆っていることを特徴とするフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−4314(P2013−4314A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134476(P2011−134476)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】