説明

フラップ式駐車場用車両検知装置

【課題】 駐車車両の底部の形状によっては、車両検知センサの送信コイルから送信された磁力線が適切に受信コイルに到達せず、車両検知できない場合があるといった問題を解消して、安定した車両検知性能を確保できるように工夫したフラップ式駐車場用車両検知装置を提供する。
【解決手段】 車両検知部20をフラップ式駐車装置10のフラップ板11が起立及び倒伏の回動動作の支点となる端部軸受け構造部13に連接して配置し、送信コイル22および受信コイル23は前記車両検知部20のベース板21上の長手方向に間隔を空けて設置し、当該ベース板21は幅方向を前記フラップ板11の端部軸受け構造部13をベース板21の裏面側に位置させ、且つ、ベース板21の長片の一端がフラップ装置取り付け面と接するか若しくは近接する方向の傾斜姿勢とするよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラップ式駐車場に用いて好適な車両検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駐車エリア毎に設けたフラップ式駐車場装置が進入して来た車両を検知すると、フラップ板を駐車車両の底面部側で起立回動するか、若しくは、フラップ板を駐車車両の底面部に当接回動させることにより、料金精算以前の駐車車両の退出を阻止するように構成したフラップ式駐車場において、駐車車両の在車の有無を検出する車両検知装置に関しては、駐車エリア内の地中に埋設するループコイル式、或いは、磁気センサー方式のものが一般的である。
【0003】
しかし、昨今では駐車車両の退出を阻止するフラップ装置と、車両検知装置とを一体に装備した一体型の装置が徐々にその需要を増しつつある。一体型の装置は、フラップ装置と検知装置が一体であるため、設置工事が簡単に行なえると共に、工場出荷段階で車両検知装置を含めて装置全体をまとめて検査できるといった、品質管理上のメリットを備えていて、今後、更に普及するものと予想されている。
【0004】
以下に記載する特許文献1は、上記一体型装置の一例を示したものである。この特許文献1の発明では、駐車車両の前後タイヤ間に起立して車両を鎖錠する鎖錠装置(フラップ装置)内に、車両検知の確実性が向上できるように車両検知センサを組み込む様にした駐車車両の退出阻止装置として、鎖錠装置(フラップ装置)の駐車区画の中央に向けて延設される鎖錠部(フラップ板)の延設端部側に、回転軸の軸受部をカバーで覆ったカバー部を設け、このカバー部内に送信コイルを含む送信ユニットと受信コイルを含む受信ユニットからなる車両検知センサを収納配置する構成としている。
【特許文献1】特開2007−205018
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の駐車車両の退出阻止装置においては、駐車車両の底部の形状と駐車した位置に依っては、駐車車両の底部の凸部と軸受部の周辺構造物が極めて接近した位置関係になった場合などに、車両検知センサの送信コイルから送信された磁束が駐車車両の底部の凸部と軸受部の周辺構造物を経由してしまうため、磁束が適切に受信コイルに到達せず、その結果車両検知できない場合があるといった、誤作動の問題があった。
【0006】
上記従来の構成を図面と共に説明すると、図9は従来のフラップ式駐車装置100の構成を説明した斜視図であって、図9において、フラップ式駐車場の駐車エリアPAの幅を示す枠線LX上には、フラップ板101を駆動する駆動部110が位置し、車両の進入時にフラップ板101にタイヤが乗り上げ易くするためのスロープ部102と、その反対側にはフラップ板101がそれぞれ平行に駐車エリアPAの長手方向中央付近に位置していて、フラップ板101の先端部には、端部軸受け構造部103が樹脂製のカバー部104の内部に位置する状態で配置されている。さらにその最端部のカバー部104の内部には、送信コイル105と受信コイル106よりなる符号100Xで全体的に示した車両検知装置が配置されている。車両検知装置100Xにはベース板107上にお互いに一定角度向き合う方向に傾斜するように上記の送信コイル105と受信コイル106が固定されており、送信コイル105及び受信コイル106は図示しない配線によってスロープ部102の内部を通って駆動部110に接続され、駆動部110の中にやはり図示しない制御回路が搭載されている。
【0007】
送信コイル105及び受信コイル106を用いた車両検知装置100Xの原理については周知の技術であり、基本的には送信コイル105と受信コイル106とベース板107間で磁気ループを形成し、その周辺に駐車車両CR等の磁性体が位置した場合に、磁気ループの状態が変化することで受信コイル106の磁束の状態の変化を検出するものであるが、ベース板107の役割としては磁束の漏洩を防止して検出距離を増加する目的に加えて、駐車エリアPAの地面内部にあるかもしれない構造物、配線、鉄筋などにより車両検出性能が左右されることを防止する目的もある。また、特に寒冷地においてロードヒーティング用のヒートパイプやヒータは、磁気式の車両検知装置を安定的に動作させる上では、確実にその影響を排除する必要がある。その様な目的で使用されるベース板107は軟磁性体が好適であり、鉄、ケイ素鉄、パーマロイ等の比透磁率が高い材料が用いられている。
【0008】
次に、図10の記載に基づいて上記従来の車両検知装置100Xの動作を説明する。
図10(1)には、駐車車両CRが無い場合の車両検知装置100Xの状態を示し、送信コイル105から送信された磁力線MCをモデル的に示しており、この状態での磁力線MCは受信コイル106の近傍では低レベルであり、受信コイル106で磁気検知がされていない状態である。また、送信コイル105と受信コイル106の間には前述した端部軸受け構造部103があるが、図面上奥側に位置しており、送信コイル105と受信コイル106の中心位置を結ぶ面上からは隔たっているため、通常はこの端部軸受け構造部103の影響は無い。
【0009】
図10(2)は駐車車両が有る場合の車両検知装置100Xの状態を示し、送信コイル105から送信された磁力線MCをモデル的に示しており、磁力線MCは車両底部CXの磁性体により磁気ループを形成するために、受信コイル106にも到達することになり、受信コイル106で磁気の検知がなされている。この図の様に平坦な車両底部CXであれば、このモデル的な磁束の状態となって確実に車両検知が可能であるが、実際の駐車車両は平坦な底部を有しているとは限らず、車両によって複雑な形状をしていることは容易に想像がつくが、基本的にはいくら凹凸があったとしても、その表面を磁束が通過してベース板107の範囲内でループが形成されることになるため、車両が無い状態との差異は、受信コイル106で確実に検知が可能であるとされている。
【0010】
図10(3)の(イ)と(ロ)は、車両の底部に突起CZが路面に向けて出っ張っている状態を示した正面図と側面図であって、図示の状態であっても、確実に車両が検知されている状態を示す。
【0011】
図10(4)の(イ)と(ロ)は、車両の底部に突起CZが駐車エリアPAの路面PXに向けて出っ張っている状態を示した正面図と側面図であって、その突起CZの近傍に端部軸受け構造部103が位置している状態を示す。この様な位置関係にあると、送信コイル105から送信された磁力線MCは車両底部CXの突起CZに引き寄せられた後、端部軸受け構造部103を通ってベース板107に戻るといった磁気ループを形成することがある。この場合、当初図10(1)で示した状態での受信コイル106上の磁気検出状態と同等な検出状態となってしまい、駐車車両が有るのに無いという車両検知出力のままで、要するに車両検知ミスを引き起こすことがある。
【0012】
これを回避するためには、送信コイル105と受信コイル106の中心を結ぶ面に対して、端部軸受け構造部103が車両底部CXの凹凸によって影響されないよう距離を遠くに隔たて構成すればよいが、そうすると車両検知装置100Xの横幅が大きくなってしまい、装置がコストアップしてしまうという問題点もある。
【0013】
車両検知装置100Xを単独でフラップ装置100の端部軸受け構造部103から離して取り付けてもよいが、配線を埋設する必要があり、取り付け部も単独で設けることになると、取り付け用のナットなどが磁気ループに影響する不具合も別途考慮しなければならない。
【0014】
従って本発明の技術的課題は、駐車車両の底部の形状によっては、車両検知装置の送信コイルから送信された磁力線が適切に受信コイルに到達せず、車両検知できない場合があるといった問題を解消し、安定した車両検知性能を確保できるフラップ式駐車場用車両検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1) 上記の技術的課題を解決するために、本発明の請求項1に係るフラップ式駐車場用車両検知装置は、送信コイルから受信コイルに向かう磁束の変化に従って、駐車エリアに駐車する車両の存在が検出されると、フラップ装置のフラップ板を駐車車両の底面部側で起立回動させるか、若しくは、フラップ板を駐車車両の底面部に当接回動させて、料金精算以前の駐車車両の退出を阻止するように構成したフラップ式駐車場用車両検知装置であって、前記フラップ装置の一端に車両検知部を取り付け、この検知部内には、前記送信コイルと受信コイルとを、前記駐車車両の入退方向に間隔をあけると共に、互いに一定角度で向き合うように前後方向に傾斜させ、且つ、前記駐車車両の入退方向に対して直交する左右横方向に傾斜する傾斜姿勢状態に取り付けて構成したことを特徴としている。
【0016】
(2) また、本発明の請求項2に係るフラップ式駐車場用車両検知装置は、前記車両検知部の内部に設けたベース板上に、前記送信コイルと受信コイルを駐車車両の入退方向に間隔あけ、且つ、互いに一定の角度で向き合うように傾斜させて取り付けると共に、これ等送信用と受信用の各コイルを取り付けたベース板の全体を、前記フラップ装置の設置面に対してフラップ板の回動軸方向でフラップ板と反対の横方向に傾斜させて取り付けることにより、前記送信コイルと受信コイルが傾斜姿勢状態に取り付けられていることを特徴としている。
【0017】
(3) また、本発明の請求項3に係るフラップ式駐車場用車両検知装置は、前記送信コイルと受信コイルが左右横方向に傾斜させた傾斜姿勢状態に取り付けられる取り付け角度、又は、前記ベース板がフラップ板の回動軸方向でフラップ板と反対の横横方向に傾斜させて取り付けられる傾斜角度が、前記フラップ装置の設置面に対して25°〜35°であることを特徴としている。
【0018】
(4) また、本発明の請求項4に係るフラップ式駐車場用車両検知装置は、前記傾斜姿勢状態に取り付けられるベース板の裏面に、前記送信コイルと受信コイルを制御する制御部が設けられていることを特徴としている。
【0019】
(5) また、本発明の請求項5に係るフラップ式駐車場用車両検知装置は、前記送信コイルと受信コイルを含む車両検知装置の全体を、合成樹脂製のカバー室で覆い、このカバー室の内部で、且つ、前記ベース板より上側の前記送信コイルおよび受信コイルの周囲部分には、合成樹脂の充填材を充填して構成したことを特徴としている。
【0020】
(6) 更に、本発明の請求項6に係るフラップ式駐車場用車両検知装置は、前記送信コイルと受信コイルを含む車両検知部の全体を覆う合成樹脂製カバー室の内側部に、車両検知部の全体を前記フラップ装置の接地面にボルト/ナットにて固定する取り付け部を設け、前記カバー室の内側面には、ボルト/ナットによる取り付け部の固定操作をカバー室の外部より行うことができる開口部を設けると共に、前記フラップ装置に設けた駐車車両乗り上げのための傾斜を構成するスロープ部材の根端部には、前記開口部を塞ぐカバー室の外部より行うことを可能にするカバー部材を連設したことを特徴としている。
【0021】
上記(1)と(2)で述べた請求項1及び2に係る手段によれば、送信コイルと受信コイルをフラップ板の回動軸方向でフラップ板と反対の横方向に傾斜姿勢状態に取り付けているため、駐車車両の底部の形状と駐車した位置に依って駐車車両の底部の凸部とフラップ板の回動支軸やその軸受け構造物が極めて接近した位置関係になった場合などでも、車両検知センサの送信コイルから送信された磁束が駐車車両の底部の凸部からフラップ板の回動支軸やその軸受け構造物に直接経由する様なことが無く、適切に受信コイルに到達することで、確実に車両検知が可能となる。
【0022】
上記(3)で述べた請求項3に係る手段によれば、駐車車両の検知性能を維持しつつ、ベース板を含む車両検知部全体の幅を従来に比べて大きくせずに実装が可能となる。
【0023】
上記(4)で述べた請求項4に係る手段によれば、送信コイルと受信コイル間の磁束の変化に影響させずに、電気回路部品を近接配置することで車両検知装置がコイルおよび制御回路部を含んだユニット構成となり、且つ、その構成がコンパクトに収納されてスペース効率が良く、車両検知装置として汎用性のある構成となる。
【0024】
上記(5)で述べた請求項5に係る手段によれば、送信コイルと受信コイル間の周辺に樹脂を充填することでカバー室内部の強度の向上と密閉性による防水性の確保ができ、駐車車両のタイヤの乗り上げによる破損やカバー室のクラックがあったとしても、安定的に車両検知装置の動作が維持できる。
【0025】
上記(6)で述べた請求項6に係る手段によれば、車両検知装置全体の取り付け部の構造物や取り付けボルト等が、送信コイルと受信コイル間とベース板及びその周辺に位置する駐車車両の構造物とで構成される磁気ループに対して影響を及ぼすことが無く、安定した車両検知性能が維持できる。即ち、磁気ループ内に取り付けボルト等が位置する場合は、経年変化による錆びや緩み等で、磁気ループ状態が変化するといった影響を防止することができる。
【0026】
更に上記(6)で述べた請求項6に係る手段によれば、車両検知装置全体の取り付け部が、使用状態においてはスロープ部材のカバー部材によって操作不能にカバーされるため、外観上ボルトなどが露出せずにスッキリしていて、いたずらによる取り外し・持ち去りが防止できると共に、このカバー部材によるカバー作用をスロープ部材で構成しているため、コストアップなしで安価に実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上述べた次第で、本発明に係るフラップ式駐車場用車両検知装置よれば、駐車車両の底部の形状によっては、車両検知装置の送信コイルから送信された磁力線が適切に受信コイルに到達せずに、車両検知できない場合があるといった問題を解消し、安定した車両検知性能を確保できるフラップ式駐車場用車両検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明に係るフラップ式駐車場用車両検知装置の実施例を図面と共に詳細に説明するが、ここで説明する実施形態は本発明の好適な具体例であり、技術的に最良と思われる数々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に請求範囲において本発明を限定する記載がない限りはこれらの態様に限定されるものではない。
【0029】
図1は本発明の実施例の車両検知装置を含むフラップ式駐車装置の実施例を示すものであって、図1(1)は平面図、図1(2)は側面図、図1(3)は背面図を示す。これ等の図面において、駐車エリアPAは駐車場敷地内に所定の大きさで区画分けされていることを白線ペイント等のラインLXで示され、駐車エリアPAの車両進入方向奥側には車止めPVが設置され、駐車エリアPAの車両進入方向のほぼ中央には、符号10にて全体的に示したフラップ式駐車装置が設置され、図の様に後進で駐車エリアPAに進入して駐車した駐車車両CRの前後のタイヤCS、CTの間に、フラップ式駐車装置10のフラップ板11が位置する様に配置されている。
【0030】
また、図1においてフラップ式駐車装置10のフラップ板11の端部には、図示しない端部軸受け構造部が構成されているが、それに隣接してフラップ式駐車装置10の最先端部には、符号20にて示した車両検知部が連接されている。車両検知部20は駐車エリアPAの幅方向でほぼ中央に位置しており、駐車車両CRの底部CXを検知する様になっている。更に図中、30は上記フラップ式駐車装置10の根端部に取り付けた駆動部であって、内部には上記のフラップ板11を倒せ状態から起立状態に回動作動する作動機構(図示省略)が収められている。
【0031】
図1において例示した駐車車両CRは例えばオフロード仕様の4輪駆動車であり、駐車車両CRの底部CXには複雑な機構が配置されているが、特徴的なものとしてセンターデフCZがあり、これは前後のタイヤCS、CTの回転数を制御するためのデフであるが、構造的に車両底部CXのほぼ中央で、路面方向にかなり突出した形状をしていることが多い。この様に車両底部CXに著しく突出した構造物がある場合であっても、車両検知部20は正常に車両CRの有無を検出する必要がある。
【0032】
図2は、本発明に係る車両検知装置が実施されたフラップ式駐車装置10の実施例を示した外観図、図3(1)と(2)はその平面図とX−X線に沿った側断面図、図4はスロープ板12を取り外して示した上記フラップ式駐車装置10の外観図を示すものであって、これ等の図面において、符号11Xで示したのは、前記フラップ板11を倒せ状態から起立状態に回動作動する回動レバーで、前記車両検知装置20が駐車車両CRを検知前記駆動部30内に設けた作動機構がこの回動レバー11Xを介して図4の如く前記フラップ板11を起立回動して、上記駐車車両CRを駐車位置に制止する一方、駐車料金の支払いが済むと、上記の作動機構が上記フラップ板11を図2の状態に倒せ回動して、駐車車両CRの退出を可能にする仕組みに成っている。更に図中、20Pは車両検知部20の全体を覆う合成樹脂製のカバー室である。
【0033】
また、図3(2)及び図4、更には、図7において、13は上記フラップ板11の支持軸11Aを回動自在に支持する端部軸受け構造部であって、この端部軸受け構造部13は、図4に示すように前記車両検知部20の内側面に接した状態で駐車エリアPA内の路面上にアンカーボルト13Tを用いて固定されている。
【0034】
次に、上述した車両検知部20の内部構成を図面と共に説明すると、図5(1)は平面図、図5(2)と図5(3)は側面図と正面図、図6(1)は背面側から見た斜視図で、図6(2)は正面側から見た斜視図、図7(1)と(2)は車両検知装置20の動作を説明した側面図と正面図であって、これ等の図面において、21は全体を長四角形状に形成したベース板で、このベース板21は、全体が長方形の略ボックス状に作られた前記車両検知部20の内部に、板面が斜め下方に向けて外向きに傾斜するように全体が傾斜姿勢に取り付けられている。なお、図5(2)における車両検知部20の側面図とは、図1(2)に示したフラップ式駐車装置10の設置状態の背面図と反対方向から見た図であり、同様に図5(3)における正面図とは、図1(3)に示した側面図と同じ方向から見た図である。
【0035】
上記のベース板21の下方に向けて外向きに傾斜する板面には、送信コイル22と受信コイル23が互いにベース板21に対して垂直状態から各々20゜傾斜させ、且つ、その傾斜状態が維持できるように、板面に対して図示しない保持部材によって固定されている。
【0036】
更に具体的に上記ベース板21の取り付け構造を図面と共に説明すると、図7において、長四角形状のベース板21の幅方向をフラップ板11の端部軸受け構造部13がベース板21の裏面側に位置するような方向で傾斜させ、ベース板21の長片の一端がフラップ装置10の取り付け面(駐車エリアPAの路面PX)と接するか若しくは近接する様に傾斜させて構成している。すなわち、ベース板21の上面部よりもフラップ板11の端部軸受け構造部13が突出しない程度に傾斜させればよい。また、送信コイル22及び受信コイル23は、傾斜したベース板21に対して幅方向を垂直に、長手方向は互いに向き合う方向に一定角度傾斜して設置されている。
【0037】
以上の構成によれば、駐車車両CRの底部CXの形状と駐車した位置に依って、駐車車両CRの底部CXの凸部CZとフラップ板11の回動支軸やその軸受け構造物が極めて接近した位置関係になった場合などでも、車両検知装置20の送信コイル22から送信された磁力線MCが、駐車車両CRの底部CXの凸部CZからフラップ板11の回動支軸やその軸受け構造物に直接経由する様なことが無く、適切に受信コイル23に到達することで、確実に車両検知が可能となる。当然、前述した図10(3)の状態の位置関係であっても、確実に車両検知がなされるのは明らかである。
【0038】
この際のベース板21の傾斜角度については前記路面PXに対して25°〜35°の範囲内で、特には30°が好適であり、30°の傾斜角度であれば車両検知装置の高さ(駐車車両CRの地上最低高のスペックよりも低い必要がある)、幅(従来とほぼ同等)、車両検出性能(磁束の分布・広がり状態より、30°程度であれば検出性能が低下しない)の面で必要条件を満たすことが出来る。
【0039】
また、図7において傾斜姿勢のベース板21の裏面には、送信コイル22および受信コイル23の制御手段としての制御部30を配置している。この構成によれば、送信コイル22と受信コイル23間の磁束の変化に影響を及ぼすことなく、電気回路部品を近接配置することで車両検知部20がコイルおよび制御回路を含んだユニット構成となり、且つ、その構成がコンパクトに収納されてスペース効率が良く、車両検知装置として汎用性のある構成となる。
【0040】
更に、送信コイル22・受信コイル23の高周波信号を長く引き回す必要がないため、耐ノイズ性能が向上し、車両検知部20側の発振電流の漏れによって周辺の無線機器に影響を及ぼすようなことも無い。制御部30からは車両検知判定結果のみが出力されればよく(後述の図6参照)、その出力がフラップ式駐車装置10の駆動部を経由してもよいし、図示しない集中管理式の料金精算機等に接続されていてもよい。
【0041】
また、本発明においてベース板21を含む車両検知部20の全体は図2乃至図7に示すように樹脂製のカバー室20Pで覆われ、更に、カバー室20P内部の空間の送信コイル22および受信コイル23側には、図7に示すように樹脂充填材PRを充填することで、強度ならびに防水性を確保することが出来る。その場合、充填樹脂PRはエポキシ樹脂や、一般的なグルーガンで使われているエチレン塩化ビニールや酢酸塩アセテート樹脂などが望ましい。
【0042】
さらに図7において、傾斜姿勢のベース板21裏面側には、ベース板21と一体的にベース板21を含む車両検知部20全体の取り付け部25を構成しており、具体的には、地面から突出させたアンカーボルト25Tをナット25Sで締結することで強度的に頑丈に固定でき、仮に車両CRのタイヤCS,CTに踏まれても、位置がずれたり取り付けがぐらついたりすることが無い。
【0043】
なお、取り付け部25が車両検知部20の性能に全く影響しないように、取り付け部25は非磁性体で構成するとなお性能が安定し、その場合には非磁性ステンレス等取り付け部を構成してベース板21に対して一体的に固定する様に構成すればよい。
【0044】
また本発明では、スロープ板12の端部には、車両検知部20の側面を一部カバーできるようにカバー部材12Aが略L字状に延長しており、この延長したカバー部材12Aの内部には、前述した端部軸受け構造部13が配置され、端部軸受け構造部13は前述の如く地面より突出したアンカーボルト13Tで固定されている。従って、スロープ板12の取り外しにより、端部軸受け構造部13の取り付けと取り外し、即ち、フラップ板11の取り付けと取り外しが自在に行なえる。
【0045】
更に、図4は本発明の実施例の車両検知部20を含むフラップ式駐車装置10の外観を示し、スロープ板12を外した状態を示す。この状態では車両検知部20の内側面に開口形成した取り付け開口部20Rが外部より操作できるようになる。また、このときにフラップ板11を図の様に起立状態に操作することで、反対側の取り付け開口部20L(図6参照)からも外部より容易に操作することが可能となる。従って、図7に示した取付部25の着脱、即ち、車両検知部20の取り付けと取り外しが可能となる。
【0046】
図5に示した各図は、上述した車両検知部20の構成を内部を透視した状態で説明したものであって、図5(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は正面図を示し、更に図6の各図は、同じく車両検知部20の構成を内部を透視した状態で説明したものであって、図6の(1)は背面側(内側面側)から見た斜視図、(2)は正面側(外側面側)から見た斜視図で、これ等の図面から明らかなように、車両検知部20を構成するカバー室20Pの背面(内側面)には、上述した左右2つの取り付け開口部20R,20Lが開口形成されていて、上述した取り付け部25の着脱作業を可能にしている。
【0047】
尚、図6(1)、(2)において、25Aは上記車両検知部20の底面内側に屈曲形成した上記取り付け部25の構成部材である取り付け板で、この取り付け板25Aには上記左右の取り付け開口部20R,20Lに位置を合わせて前述したアンカーボルト25T用の挿通穴25R,25Lが設けられている。
【0048】
以上の構成から、本発明によれば、車両検知部20の全体の取り付け部25が、使用状態においてはスロープ板12のカバー部材12Aによって操作不能にカバーされているため、外観上ボルトなどが露出せずにスッキリし、いたずらによる取り外し・持ち去りが防止でき、これを従来よりあるスロープ板12で構成しているため、コストアップなしで安価に実現できる。
【0049】
図8は本発明の実施例に係る車両検知部20の制御回路部40の構成を説明したブロック図であって、実施例の車両検知部20では、基本的には発振回路40Aと送信回路40Bを経て数kHzの発振周波数で送信コイル22から交流磁束を送信し、受信コイル23から受信回路41で発生する起電力を増幅回路42にて直流で増幅し、次いで、バンドパスフィルタ43で発振周波数以外のノイズを除去し、一定レベル以上であれば検出部44で車両有りと判定し、判定結果を出力部45がON/OFFで出力する、といった流れで動作する仕組みに成っている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る車両検知装置を備えたフラップ式駐車装置の実施例を示したものであって、(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は背面図。
【図2】本発明に係る車両検知装置を含むフラップ式駐車装置の外観斜視図。
【図3】本発明に係る車両検知装置を含むフラップ式駐車装置の外観を示したもので、(1)は平面図、(2)は(1)のX−X線に沿った断面図。
【図4】本発明に係る車両検知装置を含むフラップ式駐車装置のスロープ板を取り外して示した外観斜視図。
【図5】本発明の実施例に係る車両検知部の外観を示したもので、(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は正面図。
【図6】本発明の実施例に係る車両検知部の外観斜視図を示したもので、(1)は背面側から見た斜視図、(2)は正面側から見た斜視図。
【図7】本発明の実施例に係る車両検知部の動作を説明したものであって、(1)は側面図、(2)は正面図。
【図8】本発明の実施例の車両検知装置のブロック図。
【図9】従来のフラップ式駐車装置を示した外観斜視図。
【図10】従来の車両検知装置の動作説明図。
【符号の説明】
【0051】
PA 駐車エリア
PX 路面
CR 駐車車両
CS,CT 前後のタイヤ
CZ センターデフ
10 フラップ式駐車装置
11 フラップ板
11A 支持軸
12 スロープ板
12A カバー部材
13 端部軸受け構造部
13T アンカーボルト
20 車両検知部
20P 合成樹脂製カバー室
PR 合成樹脂の充填材
20L,20R 取り付け開口部
21 ベース板
22 送信コイル
23 受信コイル
25 取り付け部
25T アンカーボルト
30 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信コイルから受信コイルに向かう磁束の変化に従って、駐車エリアに駐車する車両の存在が検出されると、フラップ装置のフラップ板を駐車車両の底面部側で起立回動させるか、若しくは、フラップ板を駐車車両の底面部に当接回動させて、料金精算以前の駐車車両の退出を阻止するように構成したフラップ式駐車場用車両検知装置であって、
前記フラップ装置の一端に車両検知部を取り付け、この検知部内には、前記送信コイルと受信コイルとを、前記駐車車両の入退方向に間隔をあけると共に、互いに一定角度で向き合うように前後方向に傾斜させ、且つ、前記駐車車両の入退方向に対して直交する左右横方向に傾斜する傾斜姿勢状態に取り付けて構成したことを特徴とするフラップ式駐車場用車両検知装置。
【請求項2】
前記車両検知部の内部に設けたベース板上に、前記送信コイルと受信コイルを駐車車両の入退方向に間隔あけ、且つ、互いに一定の角度で向き合うように傾斜させて取り付けると共に、これ等送信用と受信用の各コイルを取り付けたベース板の全体を、前記フラップ装置の設置面に対してフラップ板の回動軸方向でフラップ板と反対の横方向に傾斜させて取り付けることにより、前記送信コイルと受信コイルが傾斜姿勢状態に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のフラップ式駐車場用車両検知装置。
【請求項3】
前記送信コイルと受信コイルが左右横方向に傾斜させた傾斜姿勢状態に取り付けられる取り付け角度、又は、前記ベース板がフラップ板の回動軸方向でフラップ板と反対の横方向に傾斜させて取り付けられる傾斜角度が、前記フラップ装置の設置面に対して25°〜35°であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフラップ式駐車場用車両検知装置。
【請求項4】
前記傾斜姿勢状態に取り付けられるベース板の裏面に、前記送信コイルと受信コイルを制御する制御部が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のフラップ式駐車場用車両検知装置。
【請求項5】
前記送信コイルと受信コイルを含む車両検知部の全体を、合成樹脂製のカバー室で覆い、このカバー室の内部で、且つ、前記ベース板より上側の前記送信コイルおよび受信コイルの周囲部分には、合成樹脂の充填材を充填して構成したことを特徴とする請求項1、2、3または4に記載のフラップ式駐車場用車両検知装置。
【請求項6】
前記送信コイルと受信コイルを含む車両検知部の全体を覆う合成樹脂製カバー室の内側部に、車両検知部の全体を前記フラップ装置の接地面にボルト/ナットにて固定する取り付け部を設け、前記カバー室の内側面には、ボルト/ナットによる取り付け部の固定操作をカバー室の外部より行うことができる取り付け開口部を設けると共に、前記フラップ装置に設けた駐車車両乗り上げのための傾斜を構成するスロープ部材の根端部には、前記取り付け開口部を塞ぐカバー部材を連設したことを特徴とする請求項2、3、4または5に記載のフラップ式駐車場用車両検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−31495(P2010−31495A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193045(P2008−193045)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000101617)アマノ株式会社 (174)
【Fターム(参考)】