説明

フラボン誘導体の製造方法およびシアル酸転移酵素阻害剤

【課題】新規なシアル酸転移酵素阻害剤の提供。
【解決手段】下記式:


[式中、RはHまたはOHであり、nは1、2または3である]で表される化合物を製造する方法、ならびにかかる化合物を有効成分とするシアル酸転移酵素阻害剤。このシアル酸転移酵素阻害剤は、炎症、がん転移、ウイルス感染症の予防/治療剤として、例えばインフルエンザの予防/治療剤として、あるいはこれらの疾患の発症メカニズムの解明に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラボン誘導体の製造方法、ならびにフラボン誘導体を有効成分とするシアル酸転移酵素阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シアル酸転移酵素は生体内で糖蛋白質や糖脂質の糖鎖にシアル酸を転移する酵素であり、癌の進行や転移、炎症、免疫応答、ウイルス感染などにおける関与が示唆されている。しかしながら、シアル酸転移酵素に対して阻害活性を有する物質はほとんど知られていない。特開平8−198891および特開平8−198892は、シアル酸転移酵素阻害活性をもつシアル酸誘導体を開示する。また、特開平10−330364は、ペニシリウム属の微生物により産生されるある種のリン脂質がシアル酸転移酵素阻害活性をもつことを開示する。シアル酸転移酵素阻害活性を有するフラボン誘導体やカテキン誘導体はこれまでに全く報告がない。
【特許文献1】特開平8−198891
【特許文献2】特開平8−198892
【特許文献3】特開平10−330364
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者らは、茶の成分であるカテキン類やテアフラビン類の種々の誘導体を化学合成してシアル酸転移酵素阻害活性を測定したところ、驚くべきことに、ある種のフラボン誘導体が高いシアル酸転移酵素阻害活性を有することを見いだした。さらにこれらのフラボン誘導体を合成する方法を見いだして、本発明を完成させた。
【0004】
すなわち、本発明は、一般式(I):
【化13】

[式中、RはHまたはOHであり、nは1、2または3である]
で表される化合物を製造する方法を提供する。この方法は、
(a)次式(II):
【化14】

で表される化合物の水酸基を保護して、次式(III):
【化15】

[式中、Rは水酸基の保護基である]
で表される化合物を製造し;
(b)次式(IV):
【化16】

[式中、nは上で定義されるとおりである]
で表される化合物に保護基を導入して、次式(V):
【化17】

[式中、Rは水酸基の保護基であり、Rはアシル基の保護基であり、nは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造し;
(c)式(III)の化合物と式(V)の化合物を反応させて、次式(VI):
【化18】

[式中、R、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造し;
(d)式(VI)の化合物の保護基Rを除去して、次式(VII):
【化19】

[式中、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造し;
(e)式(VII)の化合物を環化させて、次式(VIII):
【化20】

[式中、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造し;
(f)任意に、式(VIII)の化合物のクロモン環の3位を酸化して、次式(VIII’):
【化21】

[式中、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造し;
(g)式(VIII)または(VIII’)の化合物の水酸基の保護基を除去して、一般式(I):
【化22】

の化合物を得る、
の各工程を含む方法を提供する。
【0005】
好ましくは、本発明の方法において製造される一般式(I)の化合物は、下記のいずれかの化合物:
【化23】

である。
【0006】
別の観点においては、本発明は、下記のいずれかの式:
【化24】

で表される化合物を有効成分とするシアル酸転移酵素阻害剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によりシアル酸転移酵素阻害活性を有するフラボン誘導体を簡便かつ大量に合成することが可能となる。本発明のシアル酸転移酵素阻害剤は、炎症、がん転移、ウイルス感染症の予防/治療剤として、例えばインフルエンザの予防/治療剤として、あるいはこれらの疾患の発症メカニズムの解明に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、一般式(I):
【化25】

[式中、RはHまたはOHであり、nは1、2または3である]
で表される化合物を製造する方法を提供する。式(I)のフラボン誘導体は、天然のフラボンまたはフラボノールと異なり、A環に水酸基を有さないことを特徴とする。驚くべきことに、このような構造を有するフラボン誘導体が、高いシアル酸転移酵素阻害活性を有することが見いだされた。
【0009】
本発明の製造方法においては、出発物質として、式:
【化26】

で表される2’−ヒドロキシアセトフェノンを用いる。この化合物は市販されている。
【0010】
本発明の方法の工程(a)においては、式(II)で表される化合物の水酸基を保護して、次式(III):
【化27】

[式中、Rは水酸基の保護基である]
で表される化合物を製造する。
【0011】
としては、フェノール性水酸基の保護基として一般に使用されるいずれの基を用いてもよく、例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基、ニトロベンゼンスルホニル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、直鎖または分枝鎖のC1−4アルキル基、ベンジル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。Rとして特に好ましいものはt-ブチルジフェニルシリル基である。
【0012】
反応は、非プロトン性溶媒中で塩基の存在下で、式(II)の化合物を式:R−L(Lは脱離基である)と反応させることにより行う。非プロトン性溶媒としては、アセトニトリル、塩化メチレン、トルエン、THF、DMF等が挙げられる。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール等の有機塩基や炭酸カリウム等の無機塩基を用いることができる。
【0013】
本発明の方法においては、別の出発物質として次式(IV):
【化28】

[式中、nは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を用いる。式(IV)の化合物としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸などが挙げられ、いずれも市販されている。
【0014】
本発明の方法の工程(b)においては、式(IV)で表される化合物に保護基を導入して、次式(V):
【化29】

[式中、Rは水酸基の保護基であり、Rはアシル基の保護基であり、nは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造する。
【0015】
としては、フェノール性水酸基の保護基として一般に使用されるいずれの基、例えば、上述のRとして用いられる任意の基を用いることができる。なお、RとRは、後の工程(d)において保護基Rを脱保護する条件下でRが脱保護されないように選択する。
【0016】
としては、アシル基の保護基として一般に使用される任意の基を用いることができる。Rとして特に好ましいものはベンゾトリアゾールである。ベンゾトリアゾールを用いる場合、反応は、式(V)の化合物をR基で保護した後、非プロトン性溶媒中で塩化チオニルと反応させて酸クロリドとし、非プロトン性溶媒中で塩基の存在下でベンゾトリアゾールと反応させることにより行う。
【0017】
本発明の方法の工程(c)においては、それぞれ工程(a)および(b)で得られた式(III)の化合物と式(V)の化合物を反応させて、次式(VI):
【化30】

[式中、R、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造する。反応は、非プロトン性溶媒中で塩基の存在下で行い、好ましくは低温下で行う。塩基としては、例えば、リチウムヘキサメチルジシラジドを用いることができる。
【0018】
本発明の方法の工程(d)においては、式(VI)の化合物の保護基Rを除去して、次式(VII):
【化31】

[式中、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造する。
【0019】
反応は、通常の脱保護条件下であって、Rのみが脱保護され、Rは脱保護されないような条件下で行う。当業者は、RとRの組み合わせに基づいて、このような条件を容易に選定することができる。なお、この工程は酢酸の存在下で行うことにより、副生成物の生成を抑制することができる。
【0020】
次に、本発明の方法の工程(e)においては、式(VII)の化合物を環化させて、次式(VIII):
【化32】

[式中、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造する。環化反応は、非プロトン性溶媒中で酸性条件下で、トリフルオロ酢酸等の酸化剤を用いて行う。この環化反応により、A環に水酸基を有さないフラボノイド骨格を得ることができる。
【0021】
本発明の方法の工程(f)においては、式(VIII)の化合物のクロモン環の3位を酸化して、次式(VIII’):
【化33】

[式中、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造する。工程(f)は任意の工程であり、式(I)においてRがOHである場合に実施する。反応は、非プロトン性溶媒中でジメチルジオキシラン等の酸化剤を用いて行う。
【0022】
本発明の方法の工程(g)においては、工程(e)または(f)で得られた式(VIII)または(VIII’)の化合物の水酸基の保護基を除去して、目的とする一般式(I):
【化34】

の化合物を得る。反応は、通常の脱保護条件下で行う。
【0023】
以上のようにして得られる一般式(I)の化合物としては、例えば下記の化合物:
【化35】

が挙げられる。
【0024】
本発明においては、上記の化合物がいずれも高いシアル酸転移酵素阻害活性を有することが見いだされた。すなわち、別の観点において本発明は、以下の化合物:
【化36】

を有効成分とするシアル酸転移酵素阻害剤を提供する。
【0025】
本発明にしたがって得られる化合物のシアル酸転移酵素阻害活性は、定法にしたがって測定することができる。例えば、下記の実施例に示されるように、プレート表面に糖鎖含有ポリマーをコーティングしておき、ここに種々の濃度の試験化合物の存在下でシアル酸転移酵素と基質であるCMP-Neu5Acとを加えてインキュベーションする。プレートを洗浄した後、標識したアグルチニンを加えて、糖鎖に付加したシアル酸を定量することにより、試験化合物のシアル酸転移酵素阻害活性を測定することができる。
【0026】
本発明において、シアル酸転移酵素阻害剤とは、本発明にしたがうフラボン誘導体または薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる担体もしくは賦形剤とともに含む医薬組成物を表す。シアル酸転移酵素は生体内で糖蛋白質や糖脂質の糖鎖にシアル酸を転移することから、本発明のシアル酸転移酵素阻害剤は、炎症、がん転移、ウイルス感染症の予防/治療や、その発症メカニズムの解明に有用である。
【0027】
薬学的に許容しうる塩としては、薬理学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属等の塩、アンモニアや各種有機塩基等の塩類を挙げることができる。
【0028】
本発明のシアル酸転移酵素阻害剤は、当業者に公知の方法で製剤化することができる。例えば、薬学的に許容しうる担体もしくは賦形剤、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。
【0029】
本発明のシアル酸転移酵素阻害剤の適当な投与経路には、限定されないが、経口、直腸内、経粘膜、または腸内投与、または筋肉内、皮下、骨髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射が含まれる。投与経路および投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択することができる。経口または経鼻投与が好ましい。経口投与用には,例えば,化合物をカプセル剤,錠剤および液体製剤(シロップ剤,エリキシル剤および濃縮ドロップ剤など)のような慣用の経口投与形に製剤することができる。吸入用には,本発明の化合物を乾燥粉体または適当な溶液,懸濁液,またはエアロゾルとして製剤することができる。粉体および溶液は,当該技術分野において知られる適当な添加物とともに製剤することができる。非経口投与用には、本発明の化合物またはその塩を当該技術分野においてよく知られる薬学的に許容しうるベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0030】
本発明のシアル酸転移酵素阻害剤の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
実施例1 フラボン誘導体の製造方法
1-[2-(tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)フェニル]エタノン(2)の合成
【化37】

Ar 雰囲気下、0 °C で 1 (5.0 g, 36.7 mmol) に DMF (7.3 mL)、塩化tert-ブチルジフェニルシリル(11.1 g, 40.4 mmol)、イミダゾール(3.75 g, 55.1 mmol) を加え、100 °Cで 4 時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、n-ヘキサン で三回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、MgSO4で乾燥、減圧下濃縮した。その後、再結晶 (n-ヘキサン / EtOAc) により精製し、無色個体の 1-[2-(tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)フェニル]エタノン(2) (7.65 g, 56%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.73 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.58 (dd, J = 7.3, 1.8 Hz, 1H), 7.50-7.30 (m, 6H), 6.96 (td, J= 7.3, 1.8 Hz, 1H), 6.88 (t, J= 7.3 Hz, 1H), 6.47 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 2.77 (s, 3H), 1.09 (s, 9H)
【0033】
(1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)[4-(ベンジルオキシ)フェニル]メタノン (5) の合成
【化38】

Ar 雰囲気下、0 °C で 3 (10.0 g, 43.8 mmol) に CH2Cl2(100 mL)、SOCl2(4.8 mL, 65.7 mmol)、DMF (1.4 mL, 17.5 mmol) を加え、0 °C で 2 時間攪拌した。その後、減圧下濃縮し、無色個体の塩化4-(ベンジルオキシ)ベンゾイル(4) を含む粗精製物を得た。続いて、Ar 雰囲気下、0 °C で 4 を含む粗精製物にCH2Cl2 (150 mL)、Et3N (6.1 mL, 44 mmol)、1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール(5.2 g, 43.8 mmol) を加え、0 °C で 1 時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、EtOAc で三回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、MgSO4で乾燥、減圧下濃縮した。その後、再結晶 (n-ヘキサン / CH2Cl2) により精製し、無色個体の (1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)[4-(ベンジルオキシ)フェニル]メタノン (5) (9.1 g, 2 工程 62%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.38 (d, J= 8.0 Hz, 1H), 8.30 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 8.16 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.69 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.54 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.50-7.30 (m, 5H), 7.14 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 5.21 (s, 2H)
【0034】
1-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-3-[2-(tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)フェニル]プロパン-1,3-ジオン (6) の合成
【化39】

Ar 雰囲気下、-78 °C で 2 (1.0 g, 2.7 mmol) に THF (14 mL)、5 (879 mg, 2.67 mmol)、LiHMDS (14 mL, 14 mmol, 1 M溶液、THF中) を加え、-78 °C で 1 時間攪拌した。水を加えた後、EtOAc で三回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 20 : 1) により精製し、白色固体の 1-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-3-[2-(tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)フェニル]プロパン-1,3-ジオン (6) (1.56 g, quant.) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 17.0 (s, 1H), 7.88 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.75-7.70 (m, 5H), 7.50-7.30 (m, 11H), 6.56 (dd, J = 8.0, 1.2 Hz, 1H), 5.13 (s, 2H), 1.03 (s, 9H)
【0035】
1-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン (7)の合成
【化40】

室温で 6 (450 mg, 0.77 mmol) に THF (2.5 mL)、AcOH (44μL, 0.77 mmol)、TBAF (0.8 mL, 0.8 mmol, 1M溶液、THF中) を加え、室温で 5 分間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、Et2O で三回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、MgSO4で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 10 : 1) により精製し、黄色個体の1-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン (7) (260 mg, 98%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 15.8 (s, 1H), 12.1 (s, 1H), 7.92 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.77 (dd, J = 8.6, 1.8 Hz, 1H), 7.50-7.30 (m, 6H), 7.06 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.00 (dd, J = 8.6, 1.8 Hz, 1H), 6.91 (t, J = 8.6 Hz, 1H), 6.77 (s, 1H), 5.16 (s, 2H)
【0036】
2-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-4H-クロメン-4-オン(8)の合成
【化41】

Ar 雰囲気下、0 °C で 7 (300 mg, 0.88 mmol) に THF / MeOH = 5 / 1 (3 mL)、TFA (1.14 mL, 15.3 mmol) を加え、50 °C で 1.5 時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮した後、再結晶 (n-ヘキサン: CH2Cl2)により精製し、白色個体の 2-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-4H-クロメン-4-オン(8) (180 mg, 62%) を得た。
化合物8 のスペクトルデータは文献に記載のデータとよく一致した(Guz, N. R.; Stermitz, F. R.; Johnson, J. B.; Beeson, T. D.; Willen, S.; Hsiang, J.-F.; Lewis, K. J. Med. Chem. 2001, 44, 261-268)。
【0037】
2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン(9)の合成
【化42】

H2雰囲気下、室温で 8 (100 mg, 0.30 mmol) に EtOH (12 mL)、10% Pd(OH)2 (5 mg) を加え、60 °C で1 時間攪拌した。反応液を セライト で濾過した後、減圧下濃縮した。その後、再結晶 (Et2O) により無色個体の2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン(9) (71 mg, 99%) を得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 8.02 (dd, J = 8.6, 1.4 Hz, 1H), 7.95 (d, J = 8,6 Hz, 2H), 7.83-7.70 (m, 2H), 7.47 (td, J = 8.6, 1.4 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.85 (s, 1H)
【0038】
2-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-3-ヒドロキシ-4H-クロメン-4-オン (10)の合成
【化43】

Ar 雰囲気下、室温で 8 (100 mg, 0.30 mmol) に CH2Cl2 (5 mL)、DMDO (9 mL, 0,09-0.11 M in acetone) を加え、30 °C で 2 時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (CH2Cl2) により精製し、淡褐色固体の2-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-3-ヒドロキシ-4H-クロメン-4-オン (10) (93.6 mg, 89%) を得た。
化合物10 のスペクトルデータは文献記載のデータとよく一致した(Sobottka, A. M.; Werner, W.; Blaschke, G.; Kiefer, W.; Nowe, U.; Dannhardt, G.; Schapoval, E. E. S.; Schenkel, E. P.; Scriba, G. K. E. Arch. Pharm. (Weinheim, Ger.) 2000, 333, 205-210)。
【0039】
3-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン(11)の合成
【化44】

H2雰囲気下、室温で 10 (100 mg, 0.29 mmol) に EtOH (16 mL)、10% Pd(OH)2 (5 mg) を加え、60 °C で1 時間攪拌した。反応液を セライト で濾過した後、減圧下濃縮した。その後、再結晶 (Et2O)により淡黄色個体の3-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン(11) (44 mg, 67%) を得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 10.13 (brs, 1H), 9.32 (brs, 1H), 8.10 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 8.09 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.85-7.65 (m ,2H), 7.44 (t, J= 7.9 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 9.2 Hz, 2H)
【0040】
(1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)[3,4-ビス(ベンジルオキシ)フェニル]メタノン(14)の合成
【化45】

Ar 雰囲気下、0 °C で 12 (11.0 g, 33 mmol) に CH2Cl2(105 mL)、SOCl2(7.2 mL, 99 mmol)、DMF (1.0 mL, 13.2 mmol) を加え、0 °C で 4 時間攪拌した。その後、減圧下濃縮し、無色個体の 塩化3,4-ビス(ベンジルオキシ)ベンゾイル(13) を含む粗精製物を得た。続いて、Ar 雰囲気下、0 °C で 13 を含む粗精製物に CH2Cl2(150 mL)、Et3N (4.6 mL, 33 mmol)、1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール (3.9 g, 33 mmol) を加え、0 °C で12 時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、EtOAc で三回抽出し、有機層を 3M 水酸化ナトリウム水溶液で洗浄、MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、再結晶 (n-ヘキサン / CH2Cl2) により精製し、無色個体の (1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)[3,4-ビス(ベンジルオキシ)フェニル]メタノン(14) (11.4 g, 2 工程、77%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.35 (d, J= 8.6 Hz, 1H), 8.17 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.97 (dd, J = 8.6, 1.8 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.69 (td, J = 8.6, 0.95 Hz, 1H), 7.54 (td, J = 8.6, 0.95 Hz, 1H), 7.53-7.45 (m, 4H), 7.43-7.30 (m, 6H), 7.07 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 5.22 (s, 2H), 5.19 (s, 2H)
【0041】
1-[3,4-ビス(ベンジルオキシ)フェニル]-3-[2-(tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)フェニル]プロパン-1,3-ジオン (15)の合成
【化46】

Ar 雰囲気下、0 °C で 2 (430 mg, 1.15 mmol) に THF (3.5 mL)、14 (500 mg, 1.15 mmol)、LiHMDS (14 mL, 14 mmol, 1 M溶液、THF中) を加え、室温で 2 時間攪拌した。水を加えた後、EtOAc で三回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 20 : 1 −10 : 1) により精製し、白色固体の 1-[3,4-ビス(ベンジルオキシ)フェニル]-3-[2-(tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)フェニル]プロパン-1,3-ジオン (15) (792 mg, quant.) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 16.9 (s, 1H), 7.75-7.65 (m, 6H), 7.61 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.50-7.25 (m, 16 H), 7.00 (td, J = 7.3, 1.9 Hz, 1H), 6.94 (td, J = 7.3, 1.9 Hz, 1H), 6.90 (s, 1H), 6.86 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.56 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 5.22, (s, 2H), 5.13 (s, 2H), 1.01 (s, 9H)
【0042】
1-[3,4-ビス(ベンジルオキシ)フェニル]-3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン (17)の合成
【化47】

室温で 6 (404 mg, 0.59 mmol) に THF (2 mL)、AcOH (35μL, 0.6 mmol)、TBAF (0.6 mL, 0.6 mmol, 1M溶液、THF中) を加え、室温で 10 分間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、EtOAc で三回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、MgSO4で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 10 : 1 to 3 :1) により精製し、黄色個体の 1-[3,4-ビス(ベンジルオキシ)フェニル]-3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン (17) (262 mg, 98%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 15.7 (s, 1H), 12.1 (s, 1H), 7.70 (dd, J = 8.6, 1.9 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.55-7.25 (m, 11H), 7.05-6.85 (m, 4H), 6.65 (s, 1H), 5.26 (s, 2H), 5.25 (s, 2H)
【0043】
2-[3,4-ビス(ベンジルオキシ)フェニル]-4H-クロメン-4-オン(18)の合成
【化48】

Ar 雰囲気下、0 °C で 17 (364 mg, 0.80 mmol) に THF / MeOH = 5 / 1 (3 mL)、TFA (0.7 mL, 9.4 mmol) を加え、50 °C で 1 時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮した後、再結晶 (n-ヘキサン: CH2Cl2) により精製し、白色個体の 2-[3,4-ビス(ベンジルオキシ)フェニル]-4H-クロメン-4-オン(18) (212 mg, 61%) を得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.22 (dd, J = 7.9, 1.6 Hz, 1H), 7.68 (td, J = 7.9, 1.6 Hz, 1H), 7.55-7.30 (m, 14H), 7.03 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.68 (s, 1H), 5.27 (s, 4H)
【0044】
2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン(19)の合成
【化49】

H2雰囲気下、室温で 18 (100 mg, 0.23 mmol) に EtOH (14 mL)、10% Pd(OH)2 (5 mg) を加え、60 °C で1 時間攪拌した。反応液を セライト で濾過した後、減圧下濃縮した。その後、再結晶 (Et2O) により淡緑色個体の2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン(19) (36 mg, 62%) を得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 8.08 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 8.85-7.65 (m, 4H), 7.59 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.44 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 7.9 Hz, 1H)
【0045】
2-[3,4-ビス(ベンジルオキシ)フェニル]-3-ヒドロキシ-4H-クロメン-4-オン (20)の合成
【化50】

Ar 雰囲気下、-20 °Cで 18 (100 mg, 0.23 mmol) に CH2Cl2 (3 mL)、DMDO (7 mL, 0,09-0.11 M、アセトン中) を加え、30 °C で 1 時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (CH2Cl2) により精製し、淡褐色固体の 2-[3,4-ビス(ベンジルオキシ)フェニル]-3-ヒドロキシ-4H-クロメン-4-オン (20) (72 mg, 70%) を得た。
化合物20のスペクトルデータは、文献に記載のデータとよく一致した(van Acker, F. A. A.; Hageman, J. A.; Haenen, G. R. M. M.; van der ViJgh, W. J. F.; Best, A.; Menge, W. M. P. B. J. Med. Chem. 2000, 43, 3752-3760)。
【0046】
2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシ-4H-クロメン-4-オン(21)の合成
【化51】

H2雰囲気下、室温で 10 (44 mg, 0.097 mmol) に EtOH (5.6 mL)、10% Pd(OH)2 (3 mg) を加え、60 °C で1 時間攪拌した。反応液を セライト で濾過した後、減圧下濃縮した。その後、再結晶 (Et2O) により淡緑色個体の2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシ-4H-クロメン-4-オン(21) (20 mg, 82%) を得た。1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 8.07 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 8.85-7.65 (m, 3H), 7.59 (dd, J = 7.9, 2.0 Hz, 1H), 7.44 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 8.6 Hz, 1H)
【0047】
(1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)[3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル]メタノン(24)の合成
【化52】

Ar 雰囲気下、0 °C で 22 (10.0 g, 23 mmol) に CH2Cl2(52 mL)、SOCl2(2.5 mL, 35 mmol)、DMF (0.7 mL, 9.0 mmol) を加え、0 °C で 2 時間攪拌した。その後、減圧下濃縮し、無色個体の 塩化s3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)ベンゾイル(23) を含む粗精製物を得た。続いて、Ar 雰囲気下、0 °C で 23 を含む粗精製物に CH2Cl2(80 mL)、Et3N (3.2 mL, 23 mmol)、1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール (2.7 g, 23 mmol) を加え、0 °C で24 時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水を加えた後、EtOAc で三回抽出し、有機層を 3M 水酸化ナトリウム水溶液で洗浄、MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、再結晶 (n-ヘキサン / CH2Cl2) により精製し、無色個体の (1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)[3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル]メタノン(24) (11 g, 2 工程、88%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.36 (d, J= 8.3 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.71 (td, J = 7.3, 1.0 Hz, 1H), 7.68 (s, 2H), 7.56 (td, J= 7.3, 1.0 Hz, 1H), 7.50-7.20 (m, 15H), 5.20 (s, 2H), 5.19 (s, 4H)
【0048】
1-[2-(tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)フェニル]-3-[3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル]プロパン-1,3-ジオン (25)の合成
【化53】

Ar 雰囲気下、0 °Cで 2 (1.0 g, 2.7 mmol) に THF (6.0 mL)、24 (1.73 g, 3.19 mmol)、LiHMDS (11 mL, 11 mmol, 1 M溶液、THF中) を加え、室温で 3.5 時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、CH2Cl2 で三回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン: EtOAc = 20 : 1 − 10 : 1) により精製し、白色固体の 1-[2-(tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)フェニル]-3-[3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル]プロパン-1,3-ジオン (25) (1.83 g, 86%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 16.8 (s, 1H), 7.72 (dd, J = 7.9, 1.2 Hz, 4H), 7.69 (dd, J = 7.3, 1.8 Hz, 1H), 7.45-7.27 (m, 21H), 7.25 (s, 2H), 7.04 (td, J = 7.3, 1.8 Hz, 1H), 6.97 (td, J = 7.3, 1.8 Hz, 1H), 6.89 (s, 1H), 6.57 (dd, J = 7.3, 1.8 Hz, 1H), 5.12 (s, 2H), 5.01 (s, 4H), 1.02 (s, 9H)
【0049】
1-(2-ヒドロキシフェニル)-3-[3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル]プロパン-1,3-ジオン (26)の合成
【化54】

室温で 6 (1.7 g, 2.1 mmol) に THF (17 mL)、AcOH (0.12 mL, 2.1 mmol)、TBAF (2.2 mL, 2.2 mmol, 1M 溶液、THF) を加え、室温で 10 分間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、EtOAc で三回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、MgSO4で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 10 : 1 to 5 :1) により精製し、黄色個体の 1-(2-ヒドロキシフェニル)-3-[3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル]プロパン-1,3-ジオン (26) (998 mg, 85%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 15.6 (s, 1H), 12.0 (s, 1H), 7.67 (dd, J = 7.9, 1.2 Hz, 1H), 7.50-7.22 (m, 16H), 7.21 (s, 2H), 7.00 (d, J= 7.9 Hz, 1H), 6.94 (td, J = 7.9, 1.2 Hz, 1H), 6.57 (s, 1H), 5.19 (s, 4H), 5.16 (s, 2H)
【0050】
2-[3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル]-4H-クロメン-4-オン (27)の合成
【化55】

Ar 雰囲気下、0 °C で 7 (610 mg, 1.09 mmol) に THF / MeOH = 5 / 1 (3.6 mL)、TFA (2.4 mL, 8.5 mmol) を加え、50 °C で 3 時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : CH2Cl2= 5 :1) により精製し、無色固体の 2-[3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル]-4H-クロメン-4-オン (27) (466 mg, 79%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.22 (dd, J= 7.9, 1.6 Hz, 1H), 7.70 (td, J= 7.9, 1.6 Hz, 1H), 7.53 (d, J= 7.9 Hz, 1H), 7.50-7.25 (m, 16H), 7.21 (s, 2H), 6.68 (s, 1H), 5.20 (s, 4H), 5.16 (s, 2H)
【0051】
2-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン(28)の合成
【化56】

H2雰囲気下、室温で 27 (100 mg, 0.18 mmol) に EtOH (4 mL)、10% Pd(OH)2 (9 mg) を加え、60 °C で2.5 時間攪拌した。反応液を セライト で濾過した後、減圧下濃縮した。その後、再結晶 (Et2O) により緑色個体の2-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン(28) (26 mg, 54%) を得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 8.08 (dd, J = 7.9, 1.3 Hz, 1H), 7.77 (td, J = 7.9, 1.3 Hz, 1H), 7.66 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.44 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.29 (s, 2H), 6.89 (s, 1H)
【0052】
3-ヒドロキシ-2-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン(30)の合成
【化57】

Ar 雰囲気下、0 ℃で 27 (300 mg, 0.555 mmol) に CH2Cl2 (30 mL)、DMDO (60 mL, 0,09-0.11 M、アセトン中) を加え、室温で 2 時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮した後、淡褐色固体の 3-ヒドロキシ-2-[3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル]-4H-クロメン-4-オン(29) を含む粗精製物を得た。
続いて、H2雰囲気下、室温で 29 を含む粗精製物にEtOH (23 mL)、10% Pd(OH)2 (23 mg) を加え、70 ℃で 1 時間攪拌した。反応液をセライトで濾過した後、減圧下濃縮した。その後、再結晶 (MeOH) により緑色個体の3-ヒドロキシ-2-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン(30) (83.5 mg, 60%) を得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 8.15 (dd, J = 7.9, 1.3 Hz, 1H), 7.84 (td, J = 7.9, 1.3 Hz, 1H), 7.73 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.51 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.37 (s, 2H), 6.97 (s, 1H)
【0053】
実施例2 フラボン誘導体のシアル酸転移酵素阻害活性試験
フラボン誘導体のシアル酸転移酵素阻害活性を以下の方法で測定した。シアル酸転移酵素としては、組換え体ヒト由来シアル酸転移酵素(hST6Gal I)、およびラット由来シアル酸転移酵素(rST6Gal I、Calbiochem)を用いた。Universal bind, 1x8 stripwellTM プレート (COSTAR(登録商標), #29306009) に0.005 μMのLacNAc-5AP-γPGA含有PBS溶液を35 μl/ウエル加え、遮光した状態で37℃で一晩インキュベーションした後、UV254 nmを1分間照射し固層化した。未結合の溶液を除去し、2% (w/v) BSA含有PBS溶液を300 μl/ウエル加え、3時間以上, 4℃でブロッキングした。BSA含有PBS溶液を除去し、0.05% (w/v) Tween20含有PBS溶液を300 μl/ウエル加え洗浄した。同様の洗浄を3回繰り返した。プレートを氷上に置き、最終濃度がhST6Gal Iについては [3 micro U hST6Gal I, 50 mM カコジル酸ナトリウムバッファー(pH 6.5) , 2 mM MnCl2, 0.5% (w/v) Triton CF-54, 0-15 μM CMP-Neu5Ac] に、rST6Gal Iについては [10 micro U rST6Gal I, 50 mM カコジル酸ナトリウムバッファー(pH 6.5) , 2 mM MnCl2, 0.5% (w/v) Triton CF-54, 0-15 μM CMP-Neu5Ac]になるようにそれぞれ調製し、適宜希釈した試験化合物を加えて、50 μl/ウエル, 1時間, 37℃で酵素反応させた。反応溶液を除去し、0.05% (w/v) Tween20含有PBS溶液を300 μl/ウエル加え洗浄した。同様の洗浄を3回繰り返した。1mg/mlビオチン化Sambucus sieboldiana アグルチニン (SSA) (J-オイルミルズ, #300442) 含有PBS溶液を0.02% (w/v) Tween20含有PBS溶液で1,000倍希釈し、50 μl/ウエル, 1時間, 室温で反応させた。レクチン溶液を除去し、0.05% (w/v) Tween20含有PBS溶液を300 μl/ウエル加え洗浄した。同様の洗浄を3回繰り返した。アルカリホスファターゼ(AP) 標識ストレプトアビジン(Promega, V559C #18181908) を0.02% (w/v) Tween20含有PBS溶液で10,000倍希釈し、50 μl/ウエル, 1時間, 室温で反応させた。ストレプトアビジン-AP溶液を除去し、0.05% (w/v) Tween20含有PBS溶液を300 μl/ウエル加え洗浄した。同様の洗浄を3回繰り返した。基質溶液 [1 mg/ml p-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム, 50 mM MgCl2, 100mM ジエタノールアミンバッファー(pH 9.8) ] を100 μl/ウエル, 30分間, 37℃で反応させた後415 nm における吸光度を測定した (対照492 nm)。結果を図1および図2に示す。
【0054】
図に示されるように、フラボン誘導体はシアル酸転移酵素阻害活性を有していた。最も強い活性を示したトリデオキシ体は、天然に存在しないだけでなく、これまでに報告がない化合物である。これらのシアル酸転移酵素阻害活性を示す化合物は、生体内でシアル酸が関与する疾患(炎症、がん転移、ウイルス感染症)に対して有効な治療薬となることが期待できる化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明のフラボン誘導体のシアル酸転移酵素阻害活性を示す。
【図2】図2は、本発明のフラボン誘導体のシアル酸転移酵素阻害活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、RはHまたはOHであり、nは1、2または3である]
で表される化合物を製造する方法であって、
(a)次式(II):
【化2】

で表される化合物の水酸基を保護して、次式(III):
【化3】

[式中、Rは水酸基の保護基である]
で表される化合物を製造し;
(b)次式(IV):
【化4】

[式中、nは上で定義されるとおりである]
で表される化合物に保護基を導入して、次式(V):
【化5】

[式中、Rは水酸基の保護基であり、Rはアシル基の保護基であり、nは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造し;
(c)式(III)の化合物と式(V)の化合物を反応させて、次式(VI):
【化6】

[式中、R、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造し;
(d)式(VI)の化合物の保護基Rを除去して、次式(VII):
【化7】

[式中、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造し;
(e)式(VII)の化合物を環化させて、次式(VIII):
【化8】

[式中、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造し;
(f)任意に、式(VIII)の化合物のクロモン環の3位を酸化して、次式(VIII’):
【化9】

[式中、Rおよびnは上で定義されるとおりである]
で表される化合物を製造し;
(g)式(VIII)または(VIII’)の化合物の水酸基の保護基を除去して、一般式(I):
【化10】

の化合物を得る、
の各工程を含む方法。
【請求項2】
一般式(I)の化合物が、下記のいずれかの化合物:
【化11】

である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
下記のいずれかの式:
【化12】

で表される化合物を有効成分とするシアル酸転移酵素阻害剤。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−53067(P2010−53067A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219288(P2008−219288)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 学会名 日本薬学会第128年会 主催 社団法人日本薬学会 会期 平成20年3月26日〜28日
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【Fターム(参考)】